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高レベル放射性廃液ガラス固化体の長期健全性に関 する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

高レベル放射性廃液ガラス固化体の長期健全性に関 する研究

稲垣, 八穂広

https://doi.org/10.11501/3080214

出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第4章 α照射によるガラス固化体の機械的性質の変化に関する研究

4.1.緒言

高レベル放射性廃液ガラス固化体の機械的性質は、 輸送及ぴ地層処分時のガラス固化体 の割れ等の破損に直接関係する重要な物性である。 特に、 地層処分においては、 ガラス固 化体の表面積はその浸出速度を支配する重要な因子の1つである(4・1),( 4-2)ことより、 ガラス 固化体の破損による表面積の増加は、 ガラス固化体から地下水への放射性核種の浸出を促 進させることになる。 よって、 処分期間中の照射によるガラス固化体の機械的性質の変化 は、 ガラス固化体の健全性およびその浸出挙動の予測評価において重要な評価項目のlつ となる。

ガラス固化体の照射による機械的性質の変化については、 これまでにいくつかのガラス 固化体について加速照射を用いた研究が報告されており(4・3)( 4-4 ),( 4・5),(4-6)、 α照射によっ て、 ガラス固化体の硬度、 ヤング率は低下し、 破壊靭性は増加することが報告されている。

しかし、 これまでの研究では、 ガラス表面からα線、 イオン等を照射する方法が主であり、

実際のガラス固化体が封じ込めた核種の崩壊によって受ける内部照射の効果を正確に評価 しているとは言えない。 つまり、 ガラス表面からの照射では、 ガラス表面近傍の入射粒子 の飛程付近にのみ照射欠陥が形成されるのに対し、 内部照射ではガラス全体に一様に照射 欠陥が形成されることから、 両者で機械的性質の変化挙動が異なることが考えられる。 一 方、 α照射によるガラス固化体の機械的性質の変化の原因としては、 弾性衝突による原子 のはじき出し、 反跳核の飛程に沿った応力の発生、 ガスバブル生成等のマイクロストラク チャ変化等の効果が考えられているが、 これらの現象がガラス固化体の機械的性質にどの ように影響するかというメカニズムの詳細についてはまだ明かにされていない部分が多い。

この様なことから、 ガラス固化体の長期健全性を正確に評価するためには、 これまでの加 速照射による実験結果に加えて、 ガラス固化体の内部照射による機械的性質変化、 および そのメカニズムについて明かにする必要がある。

そこで本章では、 α崩壊によるガラス固化体の機械的性質の変化およびそのメカニズム を解明することを目的とし、 実験的、 解析的研究を行った。 まず、 模擬ガラス固化体に短

(3)

半減期のアクチノイド元素をドープしてα加速照射(内部照射)を行った後、庄子圧入法 を用いて、硬度、 ヤング率、破壊靭性の変化を測定し、 これら機械的性質の変化を照射線 量の関数として求めた。 次に、このガラス固化体を用いて、いくつかの条件で照射後焼鈍 を行い、照射による機械的性質変化の回復挙動を焼鈍温度、焼鈍時間の関数として求めた。

これらの結果から、α崩壊によるガラス固化体の機械的性質の変化挙動およびその物理化 学的メカニズムについて考察した。

4.2. 実験方法 4.2.1. 試料

本実験では、前章の実験と同様、 日本原子力研究所WASTEFで作製されたα加速照射用 の模擬ガラス固化体(凡人D)をガラス試料として用いた。 ドープした短半減期のアクチ ノイド元素(244Cm,半減期18.1y、238pU,半減期87.7y)のα崩壊による照射線量は、実験

時(溶融面化後約8年経過)で3.02 xl025α-decay/m3であった。 この照射線量は実際のガラ ス固化体(33,α)()MWÐ爪灯Uの燃焼度の使用済み燃料再処理廃液ガラス固化体

)に換算し

て、処理後数十万年の照射線量に相当する(4・7)。 また、機械的性質変化の照射線量依存性 を調べるために、照射線量の異なる数種類のガラス試料を作製した。 これは、照射後ガラ ス試料(照射線量3.02 x 1

()25

a -decay/m3)を再溶融、固化して照射欠陥を取り除いた後、

再度所定の期間経過させて照射を行うことにより、照射線量の異なる数種類のガラス試料 を得た。 また、短半減期のアクチノイド元素をドープしていないガラス試料を未照射ガラ ス試料として用いた。 これらガラス試料の照射線量をまとめて表4-1に示す。

所定の期間照射したガラス試料は超音波カッター(Gatan社製、mode1601)をもちいて 3.Omm千x1.5mmの形状に成形し、アクリル樹脂製の試料台に埋め込んだ後、最終的に粒 径1μmダイアモンドペースト(ガラス表面と水との反応を防ぐためエタノール潤滑材を用

いた)を用いて表面研磨を行った。 表面研磨後のガラス試料はエタノール中で超音波洗浄 を行い、 オーブンを用いて1100Cで1時間乾燥させた後、室温まで冷却した。 この様に作成 したガラス試料を用いて機械的性質の測定を行った。 尚、ガラス試料の放射能強度が高い

(4)

ため、 ガラス試料の作成、 調整は全て原研WASTEFホットセルおよびグロープボックス内 (大気中)で行った。

表4・1ガラス試料の照射線量

溶融固化後の

1.2xl02 2.4xl02

照射期間(day)

non-dope 30 60 3.6xl02 2.9xl03

照射線量

1.32xl023 5.11xl023 1.17xl024 2.32xl024

(α-decay/m3)

G

3.08xl024 3.02xl025 1

4.2.2. 機械的性質の測定

ガラスのような脆性材料の機械的性質の測定には、 曲げ試験、 引張試験、 圧環試験等が 一般的であるが、 本実験では圧子圧入法(Indentation也chnique)を用いてガラス試料の機 械的性質を測定した。圧子圧入法は、 微小硬度計を用いて圧子に加重をかけ、 試料表面に 微小な傷、 変形を生じさせ、 それらの形状、 大きさより機械的性質を測定する方法である。

圧子圧入法は他の方法に比べて次のょっな特長がある。

(1)小さな試料で測定できる。

(2)簡単で迅速に測定できる。

(3)試料を完全に破壊せず、 破片の散乱も少ない。

本実験に用いるガラス試料は短半減期のアクチノイド元素を含み、 強い放射能を有するこ とから、 圧子圧入法は非常に有用な方法となる。

本実験では、 微小硬度計(Shimazu HMV-2∞0)を用いた圧子圧入法によりガラス試料 の硬度(H)、 ヤング率(E)、 破壊靭性(KIC)を測定した。ガラスのような脆性材料で は、 その破壊強度は表面や内部に存在する大小の傷やクラックによって支配されるため、

これらの傷やクラックがいかなる条件で成長しマクロな破壊に至るかを評価しなければな らない。破壊靭性(KIC)は関口型破壊(モード1)における応力拡大係数KIの臨界値で、あ

り、 この値が高いほどクラックが伸展し難いことを示すことより、 脆性破壊に対する物質 の抵抗力を表すパラメーターとなる。

(5)

これらの機械的性質の測定方法を図1を用いて説明する。 まず、 硬度(H)の測定はピ ツカーズ圧子を用いて行った。図l(a)に示すようにガラス試料にピッカーズ圧子を圧入(加 重9.81N)すると正四角錘の圧痕が形成される。 加重を除去した後、 光学顕微鏡を用いて 圧痕形状(alの値)を測定し、 加重を圧痕面積で除した次式を用いて硬度旬、 ピッカー ズ硬度)を求めた。

A斗p一村ω A咋ハU

一MW

21

/

1

、一

a n

一.

m

2

H

PA一

ここで、 H:ピッカーズ硬度[Pa]

P:圧子圧入加重[N]

al :圧痕の対角線長さの半分[m]

α:ピッカーズ圧子の対面角(136度)

次に、 ヤング率(E)の測定は、 Marshallら(4-8)の方法を用いて行った。 まず、 ガラス試料 にヌープ圧子を圧入する(加重9.81N)と、 図l(b)に示すように、 縦横それぞれb、 a2 の四 角錘の圧痕が形成される。 加重を除去すると、 弾性回復によりbはb'に減少し、 一方、 a2

もa2'に変化するが、 その変化量はbの変化量に比べて小さいためa2キa2'とみなせる。 加重 を除去した後、 光学顕微鏡を用いて圧痕形状(b'.. a2' の値)を測定し、 次式を用いてヤン グ率(E)を求めた。

b '/�' = b/�・0.45 (H/E)

ここで、 E:ヤング率[Pa]

a2:加重除去前の圧痕の長対角線長さ[m]

b:加重除去前の圧痕の短対角線長さ[m](ヌープ圧子ではb/a2=0.143)

(4-2)

a2' :加重除去後の圧痕の長対角線長さ[m]

b' :加重除去後の圧痕の短対角線長さ[m]

H:硬度[Pa]

この式はMarshallらが様々な脆性材料の測定結果から求めた経験式である。 次に、 破壊靭 性(KIC)の測定は、 Evansら(4・9)の方法を用いて行った。 まず、 ガラス試料にピッカーズ 圧子を圧入 する(加重9.81N)と、 図l(a)に示すように、 正四角錘の圧痕が形成されると

(6)

同時に、 その先端にクラックが形成される。 加重を除去した後、 光学顕微鏡を用いて圧痕 形状(alの値)およびクラックの長さ(c)を測定し、 破壊靭性(KIC)は次式を用いて求

めた。

KIC

= 0.057

a10.5

(E周)0.4

(c/a1

t

1.5 (4-3)

ヲ, 、- �

\.- \.-

1.‘、

KIC:破壊靭性[rv1PamO.5]

al :圧痕の対角線長さの半分[m]

E:ヤング率[Pa]

H:ピッカーズ硬度[Pa]

c:クラックの長さ[m]

この式はEvansらが様々な脆性材料の測定結果から求めた経験式である。

荷重:P

- 庄子(ピッカーズ又は ヌープ圧子)

ガラス謝斗

(a)ピッカーズ圧子の圧痕 (b)ヌープ圧子の圧痕

32 32'

図4-1圧子圧入法による機械的性質の測定方法

(a) ピッカーズ庄子による圧痕、(b)ヌープ圧子による圧痕

b

(7)

このような庄子圧入法による硬度(H)、 ヤング率(E)、 破壊靭性(KIC)の測定は、

1つのガラス試料について5----10回行い、 その平均値および統計誤差を求めた。 また、 ガラ ス試料の放射能強度が高いため、 機械的性質の測定は全て原研WASTEFグロープボックス 内(大気中)で行った。

4.2.3. 焼鈍

照射後ガラス試料(照射線量3.02 x 1 ()2sα-decay/m3、 形状3.Omm併x1.5mm)の焼鈍を原

研WASTEFホットセル内(大気中)で行った。 焼鈍は一定温度に保った電気炉内に試料を 投入し、 電気炉内で所定の時間保持した後、 炉外に取り出し、 室温まで急冷する方法で行 った。 焼鈍後のガラス試料は前述と同様、 アクリル樹脂試料台への埋め込み、 研磨、 洗浄、

乾燥、 冷却を行い、 機械的性質の測定を行った。

まず、 照射後ガラス試料の機械的性質を測定した後、 l00----4500Cの温度範囲で、 24時間 の等時焼鈍を行った。 焼鈍後、 再度ガラス試料の機械的性質を測定し、 機械的性質変化の 焼鈍温度依存性を調べた。

次に、 照射後ガラス試料の機械的性質を測定した後、 3000C、 4000C、 4500Cの各温度で 最大48時間までの等温焼鈍を行った。 焼鈍後、 ガラス試料の機械的性質を測定し、 機械的 性質変化の焼鈍時間依存性を調べた。

また、 焼鈍によってガラス試料本来の機械的性質が変化しないことを確認するために、

未照射ガラス謝斗についてもいくつかの条件で焼鈍を行い、 焼鈍前後で機械的性質が変化 しないことを確認した。

4.3.実験結果

4.3.1. 機械的性質変化の照射線量依存性

未照射ガラス試料のH、 E、 Krcの値は、 それぞれ6.15[GPa]、 76.9[GPa]、 0.61

[MPamO.S]であった。 ここで、 α内部照射によるそれぞれの値の相対変化量を次のように

定義する。

(8)

�H / Ho

=

(Hl - Ho) / Ho

、, 、' ・�

L- ,一 、 、 Ho:未照射ガラス試料の硬度

Hl :照射後の硬度

(4-4)

照射による機械的性質の変化量�H周o、 �E厄o、 �KIC!KICOの値を照射線 量の関数として図

4-2に示す。 ここ で、 白丸は測定 の平均値を、 エラーバーは標準誤差を示す。 Hの値は照 射線量と共に指数関数的に減少し、 照射線量約5.0 xl024 a -decay/m3で飽和傾向を示したo

i1H/Hoの飽和値は約-250/0であり、 ガラス試料表面からα線照 射を行ったMatzkeら(4-3)の実 験結果とほぼ同じ値であった。 また、 Eの値も照射線量と共に指数関数的に減少 し、 照射 線量約5.0 x 1 ()24 a -decay/m3で飽和傾向を示したo �町Eoの飽和値は約・30%であった。 一方、

KICの値は照射線量と共に増加し、 照射線量約1.0 x 1 024α-decay/m3で飽和傾向を示した。

その測定誤差は比較的大きかったが、 ðKIC!KIωの飽和値は約+450/0であったo ðKIC!KICO

に見られる の測定値のばらつき の原因としては、 ガラス試料中に数μmから数十μmの析出 物や相分離が観察されることから、 ガラス試料の微細組織が均一でなく、 ガラス試料中の 場所によってクラックの伸展の仕方が異なるためと考えられる。 これらの測定結果より、

測定値には多少のばらつきがあるが、 ガラス試料はα崩壊による照射(内部照射)によっ て柔らかくかっ破壊し難くなることがわかる。

(9)

0.1 0.0

-0.2 -0.1

ロヱ\Z司

-0.3 -0.4

0 10 20 30

TlA〉lよ

0.1 0.0

-0.2 -0.1

。 凶 \凶司

-0.3 -0.4

0 10 20 30

1.0 0.8

0.4 0.2 0.0

-X 。υ

0.6

\υ 一一¥司

圃0.2

0 20 30

Cumulative dose / 1024α・decays m-3 10

図 4-2α内部照射によるガラス固化体の機械的性質旬、 E、 KIC) の変化

4.3.2. 照射後焼鈍時の機械的性質の変化

24時間の等時焼鈍を行った時のðH!Ho、 A町Eo、 ðKIC!KICOの値を焼鈍温度の関 エラーパーは標準誤差を示す。

白丸は測定の平均値を、

、.,.. _,本

� l...ーに 、 数として図4-3に示す。

照射後、

(10)

0.1

Isochronal(24h) 0.0

ー0.1 -0.2

。工、Z司

-0.3 ー0.4

0 100 200 300 400 500

0.1 Isochronal(24h) 0.0

-0.1

。凶 \凶司 Tl〈Vlム -0.2 -0.3

-0.4

0 100 200 300 400 500

1.0 Isochronal(24h) 0.8

0.6

0.2 0.0 0.4

8-X \υ-v- 司

-0.2

0 100 200 300 400 500

の変化(等時焼鈍)

Annealing temp. / oC

図4-3照射後焼鈍時の機械的性質(H、 E、 KIC)

H、 Eについては、 焼鈍温度の上昇とともに徐々に増加して照射前の値に回復する傾向を

示し、 4000C以上ではほぼ未照射のガラス試料の値に回復した。 また、 1000Cから4500Cの 温度範囲では明確な回復ピークは見られなかった。 一方、 KICについては、 焼鈍温度の上

66

IIIIIIIIIIIII

司圃圃圃圃圃圃圃・園田園・E・E・ ・E・ ・ V ・ ...

(11)

この温度範囲では未照射のガ 昇とともに減少して照射前の値に回復する傾向を示したが、

ラス試料の値に回復しなかった。

次に、 照射後、 等温焼鈍を行った時のðH/Ho、 ðE氾o、 ðKIC/KICOの値を焼鈍時間の関数 として図4-4に示す。

0.0

4500C 400'C 3000C 0

-0.1 -0.2

\

-0.3

0 10 20 30 40 50

0.0

4500C 4000C 3000C O

A

ー0.1 -0.2 圃0.3

凶\凶

-0.4

0 10 20 30 40 50

8

h 0

4500C 4000C 3000C O

A 0.5

0.4 0.3

。υ-V晶\ハu-V晶司 0.2

0.1

0.0

0 10 20 30 40 50

の変化(等温焼鈍) Annealing time / hrs

図4-4照射後焼鈍時の機械的性質(H、 E、 KIC)

(12)

ここで、 白丸は測定の平均値を示す。 図4-4には、 データを見易くするために標準誤差を 示していないが、 �H/Ho、 ðF./ED、 ðKIC反ICOいずれの値も、 標準誤差は図4・3の結果と同程 度であった。 H、 Eの値については、 焼鈍温度4000C以上で焼鈍時間10時間以内に、 ほぼ未 照射のガラス試料の値に回復した。 一方、 KICの値については、 この焼鈍温度、 時間の領 域では、 未照射のガラス試料の値に回復しなかった。 また、 焼鈍によるKICの回復速度は 焼鈍初期(1--5時間)では比較的速いが、 その後は非常に遅いものであった。

4.4.考察

4.4.1. ガラス固化体の照射損傷と物性変化

結晶材料では、 照射による物性変化は、 照射によって形成される格子間原子、 空孔や転 位等の結晶学的欠陥の濃度や分布状態によって説明される。 しかし、 ガラスのような非品 質材料では、 その原子配列がもともと不規則であり、 照射による物性変化は、 照射によっ て形成される結品学的欠陥の濃度や分布状態、からは説明できないものもある。

酸化物ガラスは一般に三次元網目構造を有し、 網目構成元素M(Si、 B等)が4つの酸素 (0)と配位して四面体M)4を成し、 これが1つの酸素(架橋酸素)を共有して不規則に 続がる構造をもっ(4・10),(4-11),(4-12)。

に、 アルカリ金属等の網目修飾イオンを含む場合は、

これらの陽イオンが酸素橋を切断し、 非架橋酸素と静電的に結合して電気的中性を保つ。

この様な構造を持つガラスの物性変化に影響する現象としては、 次のようなものが考えら れる。

l.原子のはじき出しによるM-O結合の切断とそれに伴う網目構造の変化

2.イオン化、 電子励起等によるO-M-O結合角の変化とそれに伴う網目構造の変化 3.He (α粒子)ガスバブル生成等のマイクロストラクチャ変化

しかし、 この様な現象がガラスの機械的性質にどのように影響するかというメカニズムの 詳細についてはほとんど解っていない。

(13)

4.4.2. 機械的性質変化の照射線量依存性の解析

α内部照射によるガラス固化体の機械的性質の変化は、ðH/Ho、A町Eo、ðKIC反lCOいず

れも、照射線量に対し指数関数的に変化し、飽和傾向を示した。 この結果は、 これまでに 報告されている、照射によるガラス固化体の他の物性変化(蓄積エネルギ一、体積等)の 挙動と同様の傾向である(4・7),(4-13)0 Marples(4・14)は,この様な照射による物性変化挙動を、

照射による原子のはじき出しによって形成される損傷領域(damaged zones)の生成と回復 を基にしたモデルを用いてうまく説明できることを示している。 ここでは、前章と同様に、

Marplesのモデルを用いて、ガラス固化体の照射による機械的性質の変化挙動を解析する。

Marplesのモデルは、 入射粒子またははじき出し原子の軌跡付近に3次元的な損傷領域が形 成され、物性変化は損傷領域の体積割合(volumefraction of damaged zones)に比例すると いうものである。 損傷領域の体積割合(F)は損傷領域の熱的回復も考慮して、次のよう に表される。

、, 、. -アネ

」ー」ー に

= v R ( 1 -F ) -k肌F 件

v:α崩壊当りに形成される損傷領域の体積[m3/1α-decay]

R:試料単位体積当りのα崩壊速度[α-decay/m 3 sec]

k298K

:室温での損傷領域回復の速度定数[sec-1]

t :照射時間[sec]

ここで、t=Oのとき F=Oとして(4-4)式を積分すれば、 Fはtの関数として次のように表される。

F = VR [1-exp(ー( vR + k298K ) t }J

vR + k298K (4-5)

また、物性値の変化率(δP/Po)は損傷領域の体積割合(F)に比例するとして、 次のよ

うに表されるo

MlPo = αF = α vR [ 1・叫{ - ( vR + k298K ) t }J

vR+K298K (4-6)

、, 、- -n

'- 1...ーに、 �P/po :物性値の変化率(�H用o、A町Eo、 �KIC/KICO)

(14)

また、

α:比例定数

A = α

vR

vR + k298K (4・7)

B =

vR + k298K (4-8)

とすれば(4-6)式は次のように表される。

M>/Po = A [ 1 - exp{ -B

t

}J (4・9)

(4・9)式を用いてL\H畑o、 L\F.jEo、L\KIC!KlCOの測定結果を最適化した結果を、 図4-5に実線で

示す。 また、そのとき の定数A、 Bの値をH、E、KICのそれぞれの場合について表4-2に示 す。 表4-2より、 損傷領域生成回復の速度定数であるB (=vR+k298K)の値については、H のデータから求められたものとEのデータから求められたものは非常に近い値となるが、

KICのデータから求められたものはこれらの値に比較しでかなり大きな値となることがわ かる。

表 4・2 実験結果の最適化によって得られた定数A、 Bの値

A[ー] B [sec-1]

( =αvRJ(VR+k298K) ) ( = VR+k298K )

H ー0.224 4.80 x 10・7

E - 0.305 3.12x 10・7

KIC +0.437 1.27 x 10・6

(15)

0.1 0.0

-0.2

-0.4 0 -0.1

-0.3

Z\工司

30 20

10 0.1

0.0

-0.2

-0.4 0 -0.1

-0.3

。凶\凶

20 30 10

1.0

0.4

0.0 0.2 0.8 0.6

υ-X\υ-一一孟

-0.2

0 30

24

Cumulative dose / 10 α-decays m -0

20 10

の変化 図4づα内部照射によるガラス固化体の機械的性質(H、 E、 KIC)

(Marplesのモデルによる解析結果)

ここで、(4・8)式からvRおよびBの値がわかれば、 室温での損傷 領域回復の速度定数k298K を求めることができる。 v=lxl0-24 [m3jα-decay]と仮定すると(4-14)、 vR=1 x 10-7 [sec-1]となり、

を用いると、

表4-2に示すHおよびEのデータから求められたBの値(3. 12'"'--4.80x 10-7[sec-1])

このk298Kの値は、

室温での損傷領域回復の速度定数k298Kは2. 12'"'--3.80x 10-7[sec-1]となる。

(16)

Marplesが照射によるガラス固化体の体積変化から求めた値(4・14)とほぼ同じ値となる。 一

方、 表4・2に示すKJCのデータから求められたBの値(1.27x10・6[sec-1])を用いると、k298K は1.17x10-6[sec-1]となり、 他の値に比較しでかなり大きなものとなる。

4.4.3. 照射後焼鈍時の機械的性質の変化の解析

ここでは、 照射後焼鈍 時の機械的性質の変化挙動を、 前述のMarplesのモデルを用いて 解析する。 まず、 焼鈍温度一定の場合には、 損傷領域の体積割合(F)は次の様に表され

る。

dE

= v R ( 1・F) - kT

F

dt

(4-10)

ここで、

kT:温度Tで、の損傷領域回復の速度定数[sec-1]

t

:焼鈍時間[sec]

ここで、 初期条件 t = 0,

F

= vR/(vR

+

k

2

9

8

K)として(4-10) 式

積分 す

Fは t

として

次のように表される。

F= vR exp(・(vR+ kT ) t } +

_.T'\

v �,_ [1 -exp{ー(vR + kT ) t }J

vR + k298K

---.r\ \ -- -- ... / - I

vR + kT (4-11 )

また、 物性値の変化率(ðP/PO)は損傷領域の体積割合(F)に比例するとして、 次のよ

うに表される。

ðP/pO = αF = α vR exp(ー(vR+ kT )

t

} +α VR [ 1-exp(ー(vR + kT )

t

}J vR + k298K

-- -.r \ -- --1/- I _.

vR + kT

(4-11 )

また

一T一し民R+可一

R

V α

一一

C

( 4-12)

D= vR+kT ( 4-13)

とすれば

(

4・11) 式

のよう

に 表

れる

LlP/Po =

A

exp( -D t ) + C [ 1 -exp{ -D t }J (4-14)

(4-14

)式を用いてðH/Ho、

ðE厄o、 ðKIC!KlCOの測定結果を最適化した結果を、 図4-6に実線

(17)

E、 KICおよび各焼鈍温度それ および破線で示す。 また、 そのときの定数C、 Dの値をH、

ぞれの場合について表4・3に示す。

ー.-.ー.-._.-.ー一一・ーー・回一・ー.-一一E

.",.

デ'

o - 4500C Â ---- 4000C ロ ー.-.- 3000C 0.00

よ引o

-、

-0.20

-0.30

0 10 20 30 40 50

o - 4500C Â ---- 4000C ロ ーー一3000C 0.00

ー0.10

。凶\

-0.40

0 10 20 30 40 50

o - 4500C Â ---- 4000C ロ ー一一3000C 0.5

0.4

0.2 0.1

。 υ-v-

\υ-一¥匂

0.0

0 10 20 30 40 50

の変化 Annealing time / hrs

図4-6照射後焼鈍時のガラス固化体の機械的性質(H、 E、 KIC) (Marplesのモデルによる解析結果)

(18)

表4・3実験結果の最適化によって得られた定数C、 Dの値

T[K]

c

[ー] D [sec-1]

(=αvRJ(vR+kT)) (=vR+kT)

H E KIc H E

KIc

573 -0.06 -0.10 0.30 8.0 x 10・5 5.0 x 10・5 1.0 x 10・4

673 -0.001 ーO.∞1 0.20 2.0

X

10-4 1.0

X

10-4 1.5

X

10-4

723 ー0.0∞5 -0.0005 0.30 3.5

X

10-4 2.5

X

10-4 1.0

X

10-4

ここで、 先ほどと同様にvR=lxl0-7 [sec-1]として、 各温度について損傷領域回復の速度定 数kTを求め 、 アレニウスプロットを行った。 その結果を図4・7に示す。多少のばらつきは あるものの、 HおよびEのデータから求めたkTの値については、 両者はよい直線性を示し、

ほぽ同じ傾向を示した。 一方、 KICのデータから求めたkTの値はHおよびEの場合と異なり、

直線にはならなかった。 また、 アレニウスプロットの結果から、討を(4-15)式のように表 し、 H、 E、 KICのそれぞれの場合について、 回復の活性化エネルギー(Eact)を求めた。

kT =

ko

exp ( -EacJ kB T) ( 4-15)

ここで、 kB:ボルツマン定数 T:焼鈍温度[K]

-6

-8 0

一一

H

ð

---

- E

-14

-a

、、 、

ロ ー…- KIC ト ー10

よ�

.E -12

-16

2 3

T -1 / 10 3 K

-

1

4

図4-7 損傷領域回復の速度定数kTのアレニウスプロット

(19)

得られた回復の活性化エネルギー(Eact)を表4 -4 に示す。 H、 Eのデータから求めた回復 の活性化エネルギーは、 Marples(4-14)がガラス固化体(type 189 glass)の体積変化から求め た回復の活性化エネルギーとほぼ同じ値であった。

表4 -4 H、 E、 KICの測定結果から求めた回復の活性化エネルギー

H E KIC

Eact [eV] 0.284 0.288 0.206

以上のことから、 H、 Eについて は、Marplesのモデルでうまく説明でき、 アレニウスタ イプの 1つの回復ステージまた は多くのステージが重なりあった広範な回復ステージを持 つ照射損傷(照射欠陥)に支配されるものと考えられる。 一方、 KICについては、陥rples のモデルではうまく説明できないことがわかった。

4.4.4.機械的性質変化のメカニズムの検討

α内部照射による硬度(H)、 ヤング率(E)の変化およびそれらの焼鈍による回復挙 動は、 M紅plesのモデルを用いてうまく説明することができた。 このことから、 照射によ

る硬度(H)、 ヤング率(E)の変化は、 照射によって導入される損傷領域(damaged zone) の大きさに支配されるものと考えられる。 また、 損傷領域の回復は単一の回復ステージを 持つアレニウスタイプの挙動を示すことより、 硬度(H)、 ヤング率(E)を支配する照 射損傷は弾性的な原子のはじき出しあるいは非弾性的な電子励起、 イオン化等によるガラ ス網目構造の変化であると考えられる。 よって、 照射による硬度(H)、 ヤング率(E) の変化については、 実際のガラス固化体の数万年という長期の挙動についても、 損傷領域 の生成、 回復を考慮したモデルを用いて予測することが可能である。 一方、 α内部照射に よる破壊靭性(KIC)の変化およびその焼鈍による回復 挙動は、Marplesのモデルを用いて うまく説明することはできなかった 。 このことから、 照射 による破壊靭性(KIC )の変化

(20)

のメカニズムは、 硬度(H)、 ヤング率(E)の場合とは異なり、 照射によって導入され る損傷領域(damaged zone)の大きさだけでは評価できないことがわかった。

破壊靭性(KIC)は脆性材料の表面や内部に存在す る大小の傷やクラックがいかなる条 件で成長しマクロな破壊に至るかを評価するパラメーターであり、 また、 クラックの成長 はクラック先端に応力が集中することによって起こるものである。 よって、 照射による破 壊靭牲の変化には、 ガラス網目構造の変化以外にも、 バブル生成や相分離等のマイクロス トラクチャ変化が大きな影響を及ぼすものと考えられる。 マイクロストラクチャ変化につ

いては、 前章で述べた通り、 σ内部照射 によって、 ガラス固化体中には半径0.2-0.3 μmの バブルが生成されるこ とが観察されている。 また、 その半径は焼鈍(400l:)によって減 少するが、 その減少の仕方は、 焼鈍初期では急激であるが、 その後は非常にゆっくりと減 少し、 数十時間の焼鈍ではバブルは消滅しない。 このような焼鈍時のバブルの挙動は、 本 章で得られた焼鈍時の破壊靭性の変化挙動と非常に良く似たものである。

ガラスの破壊強度とマイクロストラクチャの関係について、 Bertolo凶(4・15)はガラス中に

様々な大きさの気泡(pore)を導入したときの破壊強度 を測定し、10�m以下の気泡が存

在する と破壊強度は増加するこ とを報告している。 また、 Has selman(4・16)はガラス中にア ルミナ粒子を分散させると、 グリフィスき裂(Griffith flaw, Grif白血crack)の大きさが制限 され、 その結果、 破壊強度が増加することを報告している。 これは、 クラックが気泡や粒 子に到達するとクラック先端の応力集中が緩和され、 クラックの伸展が抑制されるためと 考えられている。 同様に、 α内部照射によってガラス固化体中に半径0.2・0.3μmのバブル

が生成された場合も、 クラックがバブルに到達するとクラック先端の応力集中が緩和され、

クラックの伸展が抑制されることで破壊靭性が増加するものと考えられる。 このように、

バブルの存在及びその挙動はガラスの破壊靭性の変化に大きく影響すると考えられる。 し かし、 バブルの大きさ、 分布密度等の状態によって破壊靭性がどのように変化するかとい っ問題についてはまだ明かではなく、 また、 人為的に破壊し難いガラス固化体を作るとい う観点からも、 今後、 マイクロストラクチャと破壊靭性の関係について更に詳しく検討す る必要がある。

(21)

4.5. まとめ

本章ではα崩壊によるガラス固化体の機械的性質の変化およびそのメカニズムについて 検討した。その結果、 α内部照射によって、 ガラス固化体の機械的性質は変化することが わかった。硬度、 ヤング率については、 集積線量と共に指数関数的に減少し、 一方、 破壊 靭性は集積線量と共に指数関数的に増加した。いずれの値も集積線量の増加と共に飽和傾 向を示し、 硬度、 ヤング率 、 破壊靭性の相対変化率の飽和値 はそれぞれ・250/0、-300/0、

+450/0で、あった。

照射後ガラス固化体を焼鈍すると、 硬度、 ヤング率、 破壊靭性は照射前の値に回復する 傾向を示した。硬度、 ヤング率については、 その回復速度は比較的速く、 4000C以上の焼 鈍温度で10時間以内に照射前の値に回復した。一方、 破壊靭性については、 その回復速度

は比較的遅く、 この焼鈍条件では照射前の値に回復しなかった。

α内部照射による硬度、 ヤング率の変化は損傷領域(damaged zone) の大きさに支配さ れ、 また、 その回復は単一の回復ステージを持つアレニウスタイプの挙動を示すことより、

硬度、 ヤング率を支配する照射損傷は弾性的な原子のはじき出しあるいは非弾性的な電子 励起、 イオン化等によるガラス網目構造の変化であると考えられる。一方、 α内部照射に よる破壊靭性の変化は硬度、 ヤング率の場合とは異なり、 弾性的な原子のはじき出しある いは非弾性的な電子励起、 イオン化等によるガラス網目構造の変化だけでは説明すること ができず、 照射によるバブル生成等のマイクロストラクチャ変化にも大きな影響を受ける

ものと考えられる。しかし、 バブルの大きさ、 分布密度等の状態によって破壊靭性がどの ように変化するかという問題についてはまだ明かではなく、 また、 人為的に破壊し難いガ ラス固化体を作るという観点からも、 今後、 マイクロストラクチャと破壊靭性の関係につ いて更に詳しく検討する必要がある。

参考文献

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(23)

第5章 脱イオン水中でのガラス固化体の浸出挙動に関する研究

5.1.緒言

ガラス固化体の地層処分では、 処分後数千年以上経過すると緩衝材、 オーバーパック等 の人工バリアの性能が低下して、 地下水がガラス固化体に浸入することが予想され、 その 結果、 地下水とガラス固化体が反応して、 放射性核種が地下水に浸出することが予想され る。 従って、 核種封じ込めの第一障壁となるガラス固化体の長期浸出挙動、 特にガラス固 化体中に封じ込めた長半減期のTRU元素(超ウラン元素)の浸出挙動を予測評価すること は、 ガラス固化体の性能評価のみならず、 地層処分全体の安全評価においても最も重要な 課題の一つであり、 世界各国で活発な研究が行われている。

ガラス固化体の浸出挙動に関しては、 これまでにアメリカ、 ヨーロッパ諸国を中心に数 多くの様々な浸出試験が行われており、 それらの結果からいくつかの浸出モデルが提案さ れ、 長期浸出挙動の予測評価に適用されている(5・1),(5-2)。 しかし、 このような数多くの研 究が行われているにもかかわらず、 長期浸出挙動の予測評価に関しては、 今だ明確な結論

が得られていないのが現状である。 その理由としては、 次の様な要因が挙げられる。

(1)実際の処分環境が非常に複雑な系であること。

(2) 数万年という非常に長期の浸出挙動を評価しなければならないこと。

(1)に関しては、 ガラス固化体の浸出挙動は、 ガラス固化体の性状(組成、 表面積等)の みならず、 地下水の性状(組成i温度、 流速、pH、 Eh等)やオーバーパック、 緩衝材、

岩石といった共存物質の存在等の多くの因子に影響を受けるため、 それぞれの因子の影響 および全ての因子を考慮した体系での予測評価を行う必要がある。 しかし、 その複雑性か ら、 現在は個々の因子、 あるいは少数の因子を組み合わせた体系での評価が行われている 段階である。 また、(2)に関しては、 ガラス固化体の長期浸出挙動は、 短期間の浸出試験 結果の単純な外挿ではなく、 反応の物理化学的メカニズムを明かにし、 それを基にした浸 出モデルを用いて予測評価を行う必要がある。 しかし、(1)で述べた浸出体系および反応 の複雑さから、 現在は、 ガラス固化体と水との反応メカニズムおよび個々の因子が浸出挙 動に及ぼす影響のメカニズムについての評価が行われている段階である。 この様なことか

(24)

ら、 ガラス固化体の長期浸出挙動については、 現在も尚、 世界各国で活発な研究評価が行 われている。

ガラス固化体の浸出挙動を予測評価する上で、 その基礎となるのは、 ガラス固化体と水

との反応メカニズムである。 ガラス固化体と水との反応メカニスムについては、 これまで に数多くの研究が行われ、 それらを基にしたいくつかの浸出モデルが提案されてきている。

それらの浸出モデルを大別すると、2つの考え方に分けることができる。 その1つは、 浸出 時にガラス表面に形成される変質層中の元素の拡散がガラスの浸出速度を律速するという モデル(拡散律速モデル)(5・3)であり、 単純な組成をもっガラスの短期間の浸出挙動を良

く説明することができる。 もう1つは、 ガラス表面でのSi02の溶解反応がガラスの浸出速 度を律速し、 各元素の浸出量はその溶解度によって決定されるというモデル(溶解度律速 モデル)(5・4),(5孔(5-6)であり、 組成の複雑なガラス固化体の浸出挙動ではこの溶解度律速 モデルが多く用いられている。

ガラス固化体の浸出挙動を予測評価する溶解度律速モデルの中で、 Grambowらが提唱す

る溶解/析出モデル(Reaction Path Model) (5・5),(5・7)は、 これまでの短期間の浸出試験結果 を非常に良く説明できることから、 長期浸出挙動の予測評価にも多く用いられているモデ

ルである。 このReaction Path Modelでは、 ガラスの浸出形態、を次のようにモデル化し、 ガ ラスマトリックスの溶解反応の速度論的計算と、 各元素の溶解析出反応、の熱力学的計算か ら、 各元素の浸出量を浸出時間の関数として計算する。

(1)ガラス構成元素は、 その組成比に比例して表面から均一に溶解し(Congruent溶解)、

その溶解速度はガラスマトリックスの主要構成物であるSi02の溶解反応に律速される。

(2)ガラスの溶解が進行すると、 溶解した元素の中で溶解度の低い元素(Fe、zn等)か らガラス表面に析出してくる。

このReaction Path Modelで、は、 ガラスの溶解速度は、 Si02の溶解反応に律速されることよ り、 浸出液中のSi濃度に比例して小さくなる(1次溶解反応則)。 また、 各元素の溶解析 出反応、は地球化学計算コードPHREEQE(5-8)を用いて計算される。

最近、 ガラスの溶解速度を速めて短期間で長期間の反応を模擬するために、 表面積の大

(25)

きな粉末状のガラス固化体を用いた浸出試験が数多く行われている(5・9),(5・10)。 それらの試 験では、 溶解度の高い元素(B、 U、 Na等)の浸出量は、 浸出液中のSi濃度が飽和に達し た後も増加し続け、 そのときの浸出量は時間の平方根に比例するという結果が得られてい

る。 この結果は、 先ほどのReaction Path Modelで仮定したCongruent溶解および1次溶解反 応則の考え方とは異なることより、 長期浸出挙動はReaction Path Modelだけではうまく説 明できないことが指摘されている。 また、 浸出量は時間の平方根に比例するという試験結 果より、 浸出は拡散に律速される反応であると予想されているが、 この様な浸出挙動を、

その物理化学的メカニズムからうまく説明できる浸出モデルは、 現在まだ十分開発されて いるとは言えない。

そこで本章では、 ガラス固化体と水との反応メカニズムを明かにし、 長期浸出挙動を評 価する浸出モデルを開発することを目的とし、 実験的、 解析的研究を行った。 まず、 粉末 状の模擬ガラス固化体を用いて、 90t:の脱イオン水中で静的浸出試験を行い、 各元素の浸 出量を浸出時間の関数として求めた。 次に、 Reaction Path Modelと拡散モデルを組み合わ せた新たな浸出モデルを開発し、 この浸出モデルを用いて浸出試験結果の解析を行った。

これらの浸出試験結果および解析結果から、 ガラス固化体の浸出挙動の物理化学的メカニ ズムを検討し、 長期浸出挙動について考察した。

5ユ実験方法 5.2.1.試料

本実験では動力炉核燃料開発事業団(PNC)で開発された模擬ガラス固化体P0798をガ

ラス試料として用いた。 その組成を表5・1に示す。 このガラス固化体をメノウ乳鉢を用い て粉砕した後、 ステンレス製のメッシユ(#1∞、 #2∞)を用いてふるいをかけ、 粒径75μ mから150μmの粉末とした。 この粉末状ガラスをエタノール中で超音波洗浄し、 真空オー

プンで乾燥させたものをガラス試料としたo また、 このガラス試料の比表面積は、 顕微鏡 観察を用いたステレオロジカjレ法(5-11),(5・12)により測定した結果、 0.036m2fgであった。

(26)

表5・1 模擬ガラス固化体P0798の組成

c onst1tuent weight

0/0

Si02

46.6

RU02 0.74

B

2

Ü3

14.2

Rh2Ü3

0.14

μ20 3.00 PdO 0.35

Cao

3.00 Mn02 0.37

Zno

3.00 Ag 20 0.02

Al2Û3 5.00 C dO 0.02

Na20 10.0 Sn02 0.02

P2Û5 0.30 Se02 0.02

Fe203

2

.0

4

Te02 0.19

NiO 0.23 Y2Û3 0.18

Cr203 0.10

い203

0.42

Rb20 0.11 Ce02 3.34

CS20 0.75 Pr6011 0.42

針。

0.30 Nd2Ü3 1.38

BaO 0.49 Snu03 1.38

Zr02

1.46

EU2Ü3 0.05

Mo03 1.45 Gd2Ü3 0.02

5.2.2.浸出試験

PNL(Pacific Northwest Laborat ory)の提唱するMCC浸出試験法(MaterialCharacterization

Center Leach Test pr∞ωぽe)C5・13)に従い、 上記のガラス試料を用いて、 脱イオン水中での静

的浸出試験を行った。 まず、 テフロン容器にガラス試料{).5gと脱イオン水15ωを入れて密 封した後、 これを電気炉中にセットして900Cで最長130日の静的浸出試験を行った。 また、

このときのガラス試料表面積(S)と浸出液体積(v)の比(Sハつは、 約1200m-1であった。 尚、

浸出試験は大気中で行った。浸出試験条件をまとめて表5-2に示す。

表5・2 浸出試験条件

ガラス固化体

P0798, 0.5g

浸出液 脱イオン水, 15cc

浸出温度

900C

浸出期間

0'""'"' 130day

SN 12∞m-1

雰囲気 大気中

(27)

浸出試験終了後、 電気炉からテフロン容器を取り出し、 室温まで速やかに冷却した後、

浸出液のpHを測定した。 尚、 浸出試験前の脱イオン水のpHは5.6であった(大気中の二酸 化炭素と平衡にある)0 pH測定後、 浸出液は微粒子およびコロ除 く ために アクロディスクフィルター(0.2μm)およびミリボアフィルター(分画分子数10,000、 約 1.8nm)を用いてろ過した後、 O.lM HN03溶液で希釈した。 このような操作を行った後、

浸出液中の各元素の濃度をICP-MS(誘導結合プラスマ質量分析装置、 Yokogawa ICP- PMS20∞、 九州大学中央分析センター)を用いて分析した。 分析した元素はU、 B、 Na、

Al、 Si、 ca、 Mo、 Csであった。

5.3.実験結果

まず初めに、 2種類のろ過(0.2μmおよび1.8nm)を行ったときの浸出液中の各元素の 濃度を表5-3に示す。 各元素とも、 2種類のろ過を行った後の濃度に大きな違いがないこと から、 浸出液中には、 これらの元素が関係する微粒子やコロイドはほとんど存在しないと 考えられる。

表5-3 ろ過後の浸出液中の各元素の濃度

Corrosion time

臼甘ation

Si B Mo

Li A1

Ca

(days) (ppm)

3 0.2μm 25.76 7.69 1.69 3.16 1.73 1.05 0.2μm

+

1.8nm 25.67 7.63 1.59 3.04 1.65 1.23 10 0.2μm 55.20 27.30 6.20 10.32 0.51 0.94 0.2μm

+

1.8nm 53.68 28.12 6.16 9.88 0.49 0.90 42 0.2μm 94.30 62.40 14.33 21.24 0.69 1.25 0.2μm

+

1.8nm 95.14 64.45 14.91 21.78 0.58 1.25 75 0.2μm 94.27 61.40 13.83 20.54 0.72 1.42 0.2μm

+

1.8nm 100.98 66.59 14.66 22.39 0.69 1.37

次に、 各元素の浸出量は以下に示す規格化浸出量(NLi

; Normalized Elemental Mass Loss) をもちいて整理したO

_

Ci

V NLi =一一

fi

S (5-1)

(28)

NLi :規格化浸出量[gIm2]

ここで、

Ci :浸出液中のi元素の濃度[g/m3]

fi:ガラス試料中のi元素の重量分率[ー]

v:浸出液の体積[m3]

S:ガラス試料の表面積[m2]

を実験条件やガラスの組成 規格化浸出量(NLi)は、 浸出液中の各元素の濃度(浸出量)

ガラスの表面積あたり何gのガラスが溶解した を考慮することで均一化するものであり、

(Congruent溶 ガラスが、 その組成比に従って表面から均一に溶解する

かを表す。 もし、

とすれば、 全ての元素について規格化浸出量は同じ値となる。

解)

各元素の規格化浸出量を浸出時間の関数として図5-1に示す。 図5・1より、 u、 B、 Na、

の規格化浸出量は、 浸出初期を除いて、 ガ Moといった溶解度の高い元素(可溶性元素)

ラスの主構成元素であるSiの規格化浸出量よりも数倍大きな値となり、 Siの規格化浸出量 が飽和に達した後(約30日以降)も増加し続けることがわかる。 また、 Al、ca、 Csの規 格化浸出量は、 浸出初期からSiの規格化浸出量よりも数倍小さな値となった。

次に、 浸出液のpHの値を浸出時間の関数として図5-2に白丸で示すo pHの値は、 浸出初 期(数日)に急激に増加するが、 その後はあまり変化せず、 pH9.5---10.0の範囲にあった。

Measured

• Si + Na

• Li Cs

。 B Ca Mo M AI 2

-8+

N'EO三JZ

ハU -o

100 150 50

Corrosion time / day

各元素の規格化浸出量: NLi (実験結果) 図5-1

(29)

10

0

・0

1 …0

0 .も

6 9

no za

Diffusion-combined Model Reaction Path Model

o measured

-一一 関|ωlated at

90 oC (Iog PC02

=

-3.5)

. calculated at

25 oC (CC02[250C]

=

CC02[900C])

5

。 50 100 150

Corrosion time

/

day

図5-2 浸出液のpH変化

5.4.考察

5.4.1. 溶解析出モデル(Reaction Path Model)による解析

本実験で得られた浸出試験結果を検討するにあたり、ここではGrambowの溶解析出モデ ル(Reaction Path Model) (5・5),(5-7)を用いて浸出試験結果を解析する。

ここでまず初めに、 Reaction Path Modelの概略について説明する。 Reaction Path Modelで は、まず、ガラスの浸出形態を次のようにモデル化する。

(1) ガラス構成元素は、その組成比に比例して表面から均一に溶解し(Congruent 溶解)、

その溶解速度はガラスマトリックスの主要構成物であるSi02の溶解反応に律速される。

(2) ガラスの溶解が進行すると、 Congruent溶解した元素の中で溶解度の低い元素(Fe、

zn等)からガラス表面に析出してくる。

そして、このようなモデルをもとに、(1)ガラスマトリックス溶解反応の速度論的計算と、

(II)各元素の溶解析出反応の熱力学的計算から、各元素の浸出量を浸出時間の関数として 計算する。 まず、初めに(1)ガラスマトリックス溶解反応の速度論的計算では、 ガラス構成 元素はその組成比に従って表面から均一に溶解し(Congruent溶解)、 その溶解速度はガ

ラスマトリックスの主構成物である次の様なSi02の溶解反応に律速されるとする。

(30)

Si02

+

2H20村民Si04 (5-2)

このSi02の溶解反応速度は、 浸出液中のH4Si04の濃度が飽和に近付くまでは1次溶解反応 則に従うとし、 浸出液中のH4Si04の濃度が飽和に近付くとアモルファスなSi02またはSi02 化合物が析出しはじめるとする。 また、 浸出液中のH4Si04の濃度が飽和に近付いた後も、

ガラスの溶解は非常に小さい一定速度 (白1al ra包)で続くとする。 このときのガラスマト リックスの溶解速度rmは次のように表される。

、, 、予 ザザ喝、

」ー'- 1.... 、

fm = 4

( 1・asïl asat) + rfin (5-3)

k+ :溶解反応の速度定数

<1si :浸出液中のH4Si04の活量

asat .飽和時の浸出液中のH4Si04の活量

rfin : Si飽和後の溶解反応速度(最終反応速度:fu凶ra也)

(5・3)式より、 ガラスマトリックスのCongruent溶解量を浸出時間の関数として求めること ができる。 次に、(II)各元素の溶解析出反応の熱力学的計算では、 Congruent溶解した各元 素が浸出液中でどのような状態で存在するか(溶解しているのか析出しているのか)を地 球化学計算コードPHREEQE(5-8)を用いて計算する。 PHREEQEでは、 水溶液の化学平衡論 に基づいた鉱物の溶解析出反応を計算できるが、 実際の試験で得られる様な浸出量の時間 依存性は直接計算できない。 そこでCongruent溶解量を反応進行度として鉱物の溶解析出 反応、を計算し、 反応進行度とともに各元素の浸出量(浸出液中に溶解している各元素の濃 度)がどの様に変化するかを計算する。 そして、(1)で求めたCongruent溶解量と浸出時間 の関係を組み合わせて、 最終的に各元素の浸出量(浸出液中に溶解している各元素の濃度) を浸出時間の関数として求める。 Reaction Path Modelによる解析方法の概略を図5-3に示す。

また、 Reaction Path Modelでの計算パラメータは、k+ (溶解反応の速度定数)、rfin (最終 反応速度)、 考慮する溶解析出反応およびその熱力学データ (反応の平衡定数K、 エンタ ルピ一変化ムHr)である。

(31)

各元素の溶解析出反応の 熱力学的計算

PHREEOE Matrix dissolution

(Congruent)

エン \出

Solution Surface (Si), B, Li Fe, Al, (Si)

\ mmmuon /

ガラスマトリックス溶解 反応の速度論的計算

Rate Eauation

rrn = k+

(1-asi/asat)

+ rfin

図5-3 Reaction Path Modelの解析方法

ここで、 地球化学計算コードPHREEQEの概略ついて説明する。 PHREEQEは米国地質調 査所(U.S.Geological Survey)によって開発されたプログラムで、 地下水および表層の地 球化学的問題を計算することができる。 PHREEQEは1つまたはそれ以上の境界相に注目し、

pHや戸(pe= -log ae-)を従属変数として、 鉱物と溶液との平衡、 2液の混合滴定、 化学反

応、を付加した状態に置ける反応シミュレーションを行うことができ、 反応シミュレーショ ンによって以下の値が計算できる。

(1)pH (2)pe

(3)元素の総濃度

(4)溶解析出、 あるいは他の相に変化する鉱物の量 (5)溶液中の化学穫の濃度

(6)鉱物に対する溶液の飽和状態

また、 PHREEQEでは以下に示す5種類の基本式を用いて、 反応の平衡計算を行う。

(1)電気的中性の式

Ziffii

=0

(5-4)

(32)

(2)電子保存の式

Viffii

=

OPV +upMINp

(5-5)

(3)質量保存の式

Ci,jffii

=

TOTj +bp,jMINp

各jについて

(5・6)

(4)鉱物平衡の式

ヱ bp,jlog(aj)

=

log(Kp)

各p�こついて

(5-7)

(5)質量作用の式

log(ai)

=

log(Ki) + ヱ ci,jlog(aj)

(5-8)

、ー _,.司与 L.- L.- \、 、

記: i番目のイオンの活量

何: j番目の親種の活量

bp,j

: p番目の鉱物中のj番目の親種の化学量論係数

Ci,j

: i番目のイオン中のj番目の親種の化学量論係数

1 :イオンの数

J :親種の数

Ki : i番目のイオンの質量作用方程式の平衡定数

Kp

:p番目の鉱物の質量作用方程式の平衡定数

mi : i番目のイオンの重量モル濃度活量

MINp:溶解(+) または析出(ー) したp番目の鉱物のモル数

OPV

:

Operational Valence計算上の電荷(実効原子価)

の合計 P:鉱物相の数

TO可:鉱物の溶解析出に先立つ、j番目の親種に相当する元素の総濃度

(33)

Up : p番目の鉱物における構成要素のOPVの和 Vi:i番目の水成種構成要素のOPV

zi : i番目の化学種のもつ電荷

これらの方程式をある収束条件の基に解くことにより、 平衡状態での解が得られる。

Reaction Path Modelでは溶液に加える元素の量(Congruent溶解量)、 温度、 溶解析出反応、

を考慮する鉱物とその熱力学データをP取EEQEに入力し、 その結果、 溶液中に溶解して いる各元素の濃度(浸出量)、 各鉱物の析出の有無、 および溶液のpHを出力として得る。

Reaction P

a

th Modelによる解析に用いた条件およびパラメータの値を表5-4に示す。 また、

規格化浸出量(NLi)の浸出時間依存性の計算結果の一例を図5-4に示す。

表5・4 Reaction Path Modelによる解析に用いた条件およびパラメータの値

hu

仙一向

∞一戸.m一T

SN : 1200 m-1

Constants

k+: 0.10

g

m-2day-1 ffin: 0.0025 gm-2day-1

Calcite(5・8)

amorph s出ca(5・14) Pαコ2

Thermodvnamic data fOf

recaIculation

( Si02(JSS)(5-12) ) Si02 + 2H20→H4Si04 百1町modVI冶micdata

minぽaI

Feπihy企ite(5・14) N

d

(OH)3(5・14)

ß

-Zn(OH)2 (5・15) Gibbsite(5・16)

(出n

o

rph silica(5・12) )

( amorph silica(5・17)) ( Chalcedony(5・12) ) (Analcim

e

(5-8)

)

reactIon log K C

2

5

0

C)

ムHrCkωl!mol)

Fe(OH)3 + 3H+→Fe3++3H20 4.89 0.00 Nd(OH)3→Nd3+ + 30H- -18.90 -34.80 Zn(OH)2→Zn2+ + 20H- 11.90 ー19.70

Al(OH) 3→ Al3+ + 30H- 7.70 -22.0

Caco →Ca2+ + 3 '-'" I C'-'�3 O..,2・

-

8

. 4

8 -2.30 Si02 + 2H20→H4Si04 -2.80 1.56

log

PC02 =

-3.52

-3.47 3.50

Si02 + 2H20→H4Si04 Si02 + 2H20→H4Si04 Si02 + 2H20→H4Si04

Nゐ仙Si"Or6 + I 2H..,O ...2 + 4H+

→ 2H4Si04+Na++A13+

-2.71 3.91

l og K

= -0.369 - 7.89x10・4T+ 60.9庁

-3.52 4.61

7.19 -23.62

(34)

M easured

• Si +

・ Li .6

o 8 ロ

1::.. Mo M Calculated

一一一

Li,8,Na,Mo,Cs Si

Ca AI

内d Rb 内d ll M川 pv pv AH 川

-2+

-内平

2

N-EOミJZ

nu -o

100 150 50

Corrosion time

/

day

各元素の規格化浸出量(Reaction Path Modelによる計算結果) 図5-4

図5-4より、Reaction Path Model による計算結果は実験結果をうまく説明できないことがわ (NLi)については、計算結 の規格化浸出量

かる。特に、可溶性元素(Ii、B、Na、Mo)

(汎i)に 果は実験結果に比べてかなり小さな値になった。また、Ca、Alの規格化浸出量

ついては、計算結果は実験結果に比べて大きな値になった。次に、浸出液のpHの計算結 このpHは900Cの浸出液が空気中の∞2と 果を図5引こ実線(Reaction Path Model) で示す。

としたときの計算値である。計算結果は実験結果に比べて

(PC02=10-3.5伽)

平衡にある

約1.5低いことがわかる。計算結果と実験結果の差の原因としては、浸出液のpH測定を90 で行っていることが考えられる。そこで、浸出液の温度を900C

℃ではなく、室温(25t)

この場合、浸出液と∞2の平衡状態、を考える から250Cに下げたときのpHを再度計算した。

と、250Cで空気と平衡にある浸出液中の∞2濃度は、900Cで空気と平衡にあるときのC02 しかし、C02の溶解速度が遅いため、浸出液の温度を900Cから250C 濃度よりも高くなる。

の浸出液中のC02濃度は、250Cでの平衡濃度ではなく900Cで に急冷した直後(pHi�IJ定時)

の平衡濃度が保たれていると考えられる(5-4)。そこで、pHの再計算で、は、900Cで空気と平 衡にあるときの浸出液中のC02濃度が250Cでも変化しないと仮定した。pHの再計算結果を

この様な方法で温度補正したpHの計算値は、

温度補正を行わない場合よりも高い値となったが、実験値に比べてまだ約0.5低い値であ 図5 で示す。

(35)

った。

規格化浸出量および、pHの計算結果を検討するために、 パラメータ(k+、ffin)の値およ びSi02の溶解析出反応の熱力学データを変化させて再計算を行ったが、 計算結果と実験結 果は一致しなかった。 また、 新たな鉱物(釦叫凶ne;N仏lSi2仇H20)の溶解析出反応、(5・7)を 考慮して再計算を行ったが、 計算結果と実験結果は一致しなかった。 再計算に用いた鉱物 の溶解析出反応の熱力学データを表5-4に示す。

この様に、 Reaction Path Model では今回の実験結果をうまく説明することができなかっ た。 その原因としては、 可溶性元素(11、 B、 Na、 Mo)の溶解挙動の評価が誤っていたこ とが考えられる。 Reaction Path Model では、 可溶性元素は他の元素と同様、 Si02のガラス マトリックスとともにCongruent溶解すると仮定したが、 実験結果では可溶性元素の規格 化浸出量はSiが飽和した後も増加し続け、 Siの規格化浸出量の約3倍になっている。 この ことは、 可溶性元素の浸出挙動がCongruent溶解だけでは説明できないことを示している。

また、 可溶性元素の溶解挙動は浸出液のpHにも大きな影響を及ぼし、 その結果、 Al、 ca、

Fe等の非可溶性元素の浸出挙動にも大きな影響を及ぼす(5・18)。 従って、 ガラス固化体の浸 出挙動を評価するには、 可溶性元素の浸出挙動を正確に評価することが重要であると考え られる。

5.4.2.拡散モデルと溶解析出モデルを組み合わせた浸出モデルによる解析

ここではまず初めに、 可溶性元素の浸出挙動を評価するために、 可溶性元素の規格化浸 出量とガラスマトリックスの主構成元素であるSiの規格化浸出量の差を浸出時間の平方根 に対してプロットしたO その結果を図5-5に示す。 この差が浸出時間の平方根に対しほぽ

比例することより、 可溶性元素の浸出挙動はCongruent溶解だけではなく、 拡散過程によ っても支配されていると考えられる。 可溶性元素の浸出挙動は浸出液のpHおよびAl、 Ca"

Fe等の非可溶性元素の浸出挙動にも大きな影響を及ぼすことから、 ガラス固化体の浸出挙 動評価にとって重要な要因となる。 そこで、 次に、 拡散モデルと溶解析出モデル

(Reaction Path Model)を組み合わせた新たな浸出モデル(Di仔usion-combined

Model)を開

発し、 実験結果の解析を試みた。

(36)

1.0

c、J 0.8 . Li

E 。 B

ロヲ

、、 0.6 + Na

一ω Â Mo

Z 0.4

_J 0.2

Z

0.0 -同-

。 2 3 4 5 6

ザCorrosion time /ザday

図5-5 可溶性元素とSiの規格化 浸出量の差と浸出時間の平方根の関係

ここではまず、 Diffusion-combinedModelの内容について説明する。 Diffusion-combi ned

Modelで、は、 Reaction Path Modelと同様に、 ガラスの浸出挙動を(1)ガラスの溶解反応の速度 論的計算と、(II)各元素の溶解析出反応の熱力学的計算を組み合わせて計算 する。 し かし 、 Diffusion-combi ned ModelがReaction Path Modelと異なる点は、 ガラスの浸出形態のモデル

化の仕方にある。 Di仔usion-combi ned Modelでは、 まず初めに、 ガラス構成元素をその溶解 度 によって2つのグループに分類する。 1つは、 ガラスマトリックスの王構成元素である Si に比べて溶解度の高いU、 B、 Na、 Mo、 Cs等の可溶性元素であり、 もう1つは、 Siに比べ て溶解度の低いAl、 ca、 Fe、 zn等の非可溶性元素である。 そ して、 ガラスの浸出形態を

次のよう にモデル化 する。

(1)ガラス構成元素のうち、 非可溶性元素はSi02ガラスマトリックスとともに、 その組 成比に比例して表面から均一に溶解し(01ぉsM a出x溶解)、 その溶解速度はReaction Path Modelと同様、 1次 溶解反応則に従う。

( 2)ガラス構成元素のうち、 可溶性元素は(1)のOlassM atrix溶解に加えて、 ガラス 中を内 部から 表面に拡散することによっても溶解する(拡散による 溶解)。

(3)ガラスの溶解が進行すると、 溶解した元素の中で 溶解度の低い元素(Fe、 zn等 )か らガラス 表面に析出してくる。

図 4-2α内部照射によるガラス固化体の機械的性質旬、 E、 KIC) の変化

参照

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