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凍結融解作用による土砂生産現象の観測

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Academic year: 2022

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(1)2-079. 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月). 凍結融解作用による土砂生産現象の観測 京都大学防災研究所. 正会員. ○堤大三. 京都大学防災研究所. 正会員. 藤田正治. 京都大学大学院工学研究科. 伊藤元洋. 京都大学防災研究所. 正会員. 澤田豊明. 京都大学大学院農学研究科. 小杉賢一朗. 京都大学大学院農学研究科. 正会員. 水山高久. 1. はじめに 土砂生産現象は、山地・河川・海岸とつながる流砂 系の出発点であり、その量と質を評価し予測につなげ ることが、流域一貫した土砂管理を行なうためには不 可欠である。土砂生産現象は、降雨や地震による斜面 崩壊、火山噴火による降灰といった大規模かつ突発的 なものと、凍結融解作用および乾燥湿潤作用による基 岩の風化という小規模ではあるが恒常的なものに大別 される。後者、特に凍結融解作用による土砂生産は、 我が国の山地において毎年冬期にきまって起こり、春 から秋の出水時にほぼ一定量の土砂を河道に供給して おり、支配的な土砂生産源のひとつであると考えられ ている。このことは、山地小流域における観測によっ ても確かめられている 1)。しかしながら、農地等の平坦 地土壌での凍結融解に関する研究は見られるものの、 山地斜面における風化基岩の凍結融解とその作用によ る土砂生産に関する研究例はきわめて少ない。本研究 では、山地における裸地斜面で観測を行ない、凍結融 解作用による土砂生産機構の解明を試みた。 2. 観測方法 観測は、滋賀県南部に位置する田上山地若女裸地谷 の裸地斜面(図−1)において、2004 年 12 月から開始 した(現在も継続中)。かつて田上山地は、全体が裸地 化し、多量の土砂を生産していた。その後の緑化施行 等により裸地面積は減少したが、未だ比較的多くの裸 地が存在している。観測地周辺の植生として、クロマ ツ、ヒメヤシャブシ等が見られるが、観測斜面は完全 な裸地である。斜面勾配は約 30°で、非常に薄い土層(< 5 cm)が基岩を覆っている。基岩は、強風化花崗岩か らなり、基岩と土層の間には明瞭な境界が見られる。 写真−1 に示すように、斜面上に幅 1.8 m、長さ 0.8 m の領域に囲いを設置し、それを左右 2 等分して、それ ぞれ左側を Plot 1、右側を Plot 2 とした。観測開始の時 点で、両 Plot 共に表層の土砂を排除し、基岩を露出さ せた状態とした。観測開始後 Plot 1 は、ほぼ1週間間隔 で表層に生産された土砂を収集し計量した。一方、Plot 2 は、生産された土砂を放置し、Plot の下端境界から落 下する土砂のみを収集し計量した。また、観測開始前 に、基岩に直径 2 cm の穴を両 Plot にそれぞれ 3 個ずつ 開け、深さ−10,−25,−50 cm の位置に熱伝対、TDR 土 壌水分計のセンサーを設置し、気温・地表面温度と合 わせて基岩中の温度・水分量の連続観測を行なった。. 図−1. 観測地の位置(滋賀県南部、田上山地). 写真−1 観測斜面および Plot 設置の状況 Pile. Digital Camera. Weathered Granite Bedrock 図−2. 集中観測時の観測状況(Plot 1). キーワード:土砂生産,凍結融解,氷点下,裸地斜面,田上山地,風化花崗岩 〒611-0011. 宇治市五カ庄. 京都大学防災研究所. 電話:0774-38-4121,Fax:0774-32-6039 -157-. Scale.

(2) 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月). 20 15 10 5 0 05/01/11. 05/01/26. 図−3. 05/02/10. 05/02/25. 05/03/12. 05/03/27. 全観測期間における基岩表面温度変化. Plot 1 では、2 月 11−13 日において、デジタルカメラ による連続撮影、杭の挿入量変化による基岩の土壌化 (土砂生産速度)の集中観測を行なった(図−2)。 3. 結果と考察 図−3 に基岩表面温度変化を示す。1 月初めから周期 的に 0℃を下回る時期がまとまって表れており、温度条 件として充分凍結が起こることを示している。期間の 終盤では、全体的に気温は上昇傾向になり 0℃を下回る 回数は減るが、3 月末でも氷点下となることがあり、こ の時期まで凍結が起こることを示している。 凍結融解による作用を数値化するため、氷点下とな った気温を積分し、この値と土砂生産量(Plot 1)との 関係を図−4 に示す。積算氷点下気温と土砂生産量とは 正の相関を示し、凍結融解作用がこの斜面における土 砂生産に支配的な影響を及ぼしていることが確認され た。ただし、図−4 において関係が多少ばらついている のは、凍結融解による土砂生産においては、気温だけ でなく、基岩中の水分の影響もあるためと考えられる。 図−5 に、集中観測期間(2 月 11−13 日)における、 各温度変化と、杭の変位量によって計測した基岩面の 変位を示す。この期間の連続撮影の映像によって、夜 間の凍結によって基岩が膨張し、昼間の気温上昇とと もに融解して土砂が生産される様子が確認されている。 図−5 では、夜間の表面温度が氷点下、昼間は 4℃程度 まで上昇しており、凍結融解が起こったことを裏付け ている。一方、基岩内部の温度は深くなるほど高く、 安定しており、一番浅い−10 cm でも 0℃を下回ってお らず、表層の非常に浅い部分のみしか凍結していない ことがわかる。一方、基岩面の変位を見ると、夜間の 少量の上昇の後、気温の上昇とともに急激に低下して おり、融解時に土砂が生産されていることが示されて いる。その量は 2 月 12 日が約 4 mm、13 日が約 2 mm と非常に大きい。また、同等の温度変化にもかかわら ず、日によって差が生じているのは、12 日に生産され た土砂が基岩表面を覆い、断熱効果を及ぼしたことに よるものと考えられる。これは、Plot 1 と 2 との総土砂 生産量の比較からも明らかとなると予想される(観測 終了時に実施予定)。 -158-. Sediment production [kg/m2]. -5 04/12/27. 8 6 4 2 0 0.00. -0.02. -0.04. -0.06. -0.08. Accumulated negative temperature [℃・day]. 図−4 Displacement [mm] Temperature [℃]. Surface Temperature [℃]. 2-079. 積算氷点下気温と土砂生産量との関係. 6 4 2 0 -2 -4 2 0 -2 -4 -6 -8. Surface Air. -50 cm -25 cm -10 cm. 05/02/12. 図−5. 05/02/13. 集中観測時の各温度変化と基岩面の変位. 4. おわりに 冬期の山地裸地斜面における観測によって、凍結融 解作用が土砂生産量に支配的な影響を及ぼしているこ とが確認された。今後、温度・水分の影響を解析し、 凍結融解による土砂生産機構をより詳細に検討する。 また、異なる岩質の裸地斜面において同様の観測を行 ない、より一般性の高い土砂生産機構の解明を目指す。 参考文献 1)藤田正治ほか:高原川流域における土砂生産特性,水 工学論文集,第 49 巻,pp. 1075−1080,2005.

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