土被り0mでの函体推進
堀道明
1・古川誠
2・藤田仁
31北海道旅客鉄道株式会社 工務部 (〒063-0802 北海道札幌市西区二十四軒2条1丁目3-60)
2株式会社奥村組 札幌支店 (〒060-0051 北海道札幌市中央区南一条東1丁目5番地)
3株式会社奥村組 技術本部 (〒108-8381 東京都港区芝5-6-1)
今回のアール・アンド・シー工事では,寒冷地特有の凍上現象を回避するため,凍上抑制機能を持たせ たボックスカルバートを推進施工した.また,当工法の採用に伴って,土被り0mでの箱形ルーフ推進を 行った.箱形ルーフの施工時には路床バラストの崩壊と線路の陥没を防止するため,箱形ルーフ先端に特 殊金物を取付ける方法を採用した.これらの結果,線路に影響を及ぼすことなく精度良く推進することが 出来たので工法の概要と施工結果を報告する.
キーワード : アンダーパス工事,非開削工法,R&C工法,凍上防止対策工,土被り0m
1.はじめに
JR根室線下をアール・アンド・シー工法(以下R
&C工法に略称)により最小土被り0mでアンダー パス工事を施工した.R&C工法とは,矩形の鋼管 を用いた箱形ルーフを函体設置位置に推進により施 工し,別途築造した函体を推進または牽引すること により箱形ルーフと置換してアンダーパス工事を施 工する工法である.
寒冷地におけるアンダーパス工事では,「土の凍 上」により土中の水分が凍結し軌道を隆起させるた め軌道に悪影響を与えることが多い.
2.工事概要
工 事 名:札幌南大通Bv工事 発 注 者:北海道旅客鉄道株式会社 工 期:2004年9月~2007年3月 工事内容:
・立坑2箇所 ・函体製作 2基
H7.9m×B16.9m×L6.3m,13.7m ・箱形ルーフ工
延長21.0m 水平部19本 鉛直部12本 ・函体推進工 全長21.0m
(推進延長18.0m,空押し3.0m)
・函体推進設備 1式
土 質:
0~-5.5m 砂 礫 層 -5.5m~-6.7m シルト層 -6.7m~-9.0m 砂 礫 層
3.R&C工法の概要と施工順序
(1)工法の概要
R&C工法とは,軌道や道路の防護工として矩形 断面の箱形ルーフ(標準断面800×800)を用いる.
これを設置するボックスカルバートの外縁に合致す るように,予め横断区間全長に貫通させておき,そ の後,ボックスカルバートを推進することにより箱 形ルーフを置換して地下構造物を構築するアンダー パス工法である(図-1参照).
図-1 R&C工法概略図(推進式)
到達基地 発進基地
箱形ルーフ
刃口
井桁反力 反力壁 I形反力
ストラット 土砂バケット
箱形ルーフ撤去 元押しジャッキ
ルーフ撤去架台 掘削機械 ベルトコンベア FCプレート
なお,ボックスカルバート推進中の地山との摩擦 を低減するため,水平部の箱形ルーフ上部には縁切 り用鉄板(フリクションカットプレート:以下FCプ レートと称す)を設置する.推進時には先端部の固 定を解除してFCプレートの下で箱形ルーフとボック スカルバートのみが移動して置換される.
(2)施工順序
・第1工程(箱形ルーフ設置)
①箱形ルーフ推進架台設置(発進立坑)
②水平部箱形ルーフ設置 ③鉛直部箱形ルーフ設置
写真-1 水平部箱形ルーフ施工状況
写真-2 箱形ルーフ施工完了状況
・第2工程(函体推進設備工)
①刃口組立
②函体(ボックスカルバート)築造 ③反力壁築造,反力設備設置
④箱形ルーフ撤去架台設置(到達立坑)
写真-3 第2函体築造完了状況
写真-4 刃口組立状況
写真-5 函体築造完了状況
・第3工程(函体推進)
①函体部掘削,函体推進
②反力材(I形反力,ストラット)設置 刃 口
③箱形ルーフ撤去
④①~③の作業の繰り返し
写真-6 推進設備設置状況
写真-7 函体推進状況
写真-8 箱形ルーフ撤去状況
・第4工程
①刃口取出し,解体・撤去 ②所定の位置まで空押し ③推進設備撤去
④裏込め注入
写真-9 推進完了状況
4.本工事で採用した凍上防止対策工法
(1)凍上防止対策採用の背景
先に述べたように,北海道などの寒冷地特有の現 象として「土の凍上現象」がある.冬季気温が下が り地盤中が零下になると土の間隙水が凍結し,体積 膨張が生じて軌道を表土ごと不均一に持ち上げ,結 果軌道狂いが発生する.特にアンダーパスを行う箇 所では,設置したボックス空間を冷気が吹き抜ける ことによる冷却効果と地下水循環が途絶えることや 地熱供給の停止による土の凍結のため,凍上現象が 軌道管理上の問題となっている.本工事における温 度解析結果の温度コンター図を図-2に示す.これに よりアンダーパス設置箇所は,一般部に比較して早 期に周辺地盤が冷却されることがわかる.
これまで非開削工法によるアンダーパスの凍上を 防止する対策としては,アンダーパス構造物の土被 りが浅い場合は,函体設置後に開削工事により断熱 材の敷設や道床交換・路盤入替を行い,土被りが深 い場合は,凍上防止用タイトプレート挿入や融雪剤 散布により対処してきた.しかし,函体の推進が完 了してからの施工は軌道への影響及びコスト面で大 きな問題がある.
箱形ルーフ 箱形ルーフ撤去架台
道床バラスト
FCプレート
刃 口 箱形ルーフ 掘削範囲
崩落予想範囲 道床バラスト混入範囲
図-2 温度解析結果
(2)開発した凍上防止対策工法の概要
以上のことから,本工事では予め函体の上部に凍 上防止材料を設置した対策を施し,函体と共に施工 することで,断熱材の設置や良好な路盤の新設が函 体設置と同時に非開削工法で行えるように,図-3に 示す新たな凍上防止対策工法を実現した.
本工法は,土被りが浅い場合には道床・路盤の置 換を主とし,土被りが深い場合には断熱層・透水層 の形成を目的としている.
本工事の函体の土被りは約0.9mであり,この土 被り部に相当する部分に予め凍上防止材(砕石)を 入れたコンクリート枠を函体上部に設置し,函体と 同時に土被り0mで推進した.R&C工法では初め ての凍上防止対策工法の施工であった.今回凍上防 止抑制材は図-3の側面図に示す通り,排水勾配を確 保するとともに①砕石による置換部,②断熱材部,
③未対策部を試験的に設置し,計測工を行って各抑 制材の有効性を確認した.
図-3 凍上防止対策の概要図
(3)土被りゼロ下での箱形ルーフの施工 a)施工条件
前述のように,函体推進と同時に非開削で凍上防 止対策を行う工法としたため,土被り厚さがゼロの 厳しい条件下で箱形ルーフを施工せざるを得なくな った.
事前の試掘において図-4に示すように路盤より約 30cm下まで道床バラストが混在していることが判明 し,線路に陥没が発生することが懸念された.
図-4 道床バラスト崩壊想定図
b)箱形ルーフの特殊刃口の製作
箱形ルーフの推進に際して上部の崩壊を防止する ためには,刃口先端上部が土中に貫入した状態で掘 削できることが条件となるが,図-4に示すように刃 口内部に道床バラストがあるため,通常の刃口では 刃口先端上部の掘削が困難である.また,上部を掘 削した時点で道床バラストが崩壊する可能性がある.
そこで,箱形ルーフ推進時に貫入抵抗が小さいこと,
道床バラストが混在する地山に貫入し易いこと,道 床バラストの崩壊を防止することを目的とし,刃口 10日後
60日後
120日後
5.3 4.3 3.3 2.3 0.3 1.3
-1.7 -2.7 -3.7 -4.7 -5.7 -6.7 -7.7 -8.7 -0.7 (℃)
513 87 600 1682 1082
ブレーカー用チゼル φ30 丸型 L=600
ブレーカー用チゼル φ30 丸型 L=450
782
79 8@78=624 79 48
506@80=480 80
道床バラスト
300
FCプレート
刃 口 箱形ルーフ
掘削範囲 600 213 300 道床バラスト 混入範囲
先端にブレーカ用チゼルを櫛状に配列した特殊刃口 を製作した.図-5,図-6に特殊刃口製作図,写真- 10に特殊刃口を示す.写真-11に切羽の状況を示す.
図-5 特殊(櫛歯型)刃口製作図
図-6 チゼル配置図
写真-10 刃口製作
写真-11 刃口内掘削状況
C)施工方法と結果
図-7に示すように,箱形ルーフ刃口先端のブレー カ用チゼルを地山に貫入させ,刃口先端から地山を 30cm程度先堀しチゼルより20㎝程度先受した状態で 掘進作業を実施した.チゼル間隔は,道床バラスト が掘削内部に落下しないよう4.8cmで計画した(図- 6).道床バラストの内部への落下も無く,道床バ ラストの崩壊は発生しなかった.
図-7 特殊(櫛歯型)刃口による施工状況図
写真-12 刃口到達状況
5.凍上防止対策の効果の確認
凍上防止対策工による効果の検証を目的に計測工 を実施した.計測は図-8に示すようにカルバートボ ックス上部の砕石置換部,断熱材部,未対策部の各 凍上防止抑制材設置部に加えて一般地盤部の4箇所 に,変位計と温度計を設置して鉛直変位と温度を計 測した(写真-13,写真-14).凍上量は埋設型の変 位計にて測定し,温度については埋設型の温度計を 使用し,測点部の地温と外気温を測定した.
図-9は凍上量の測定結果を示す.凍上量について は,その変位量が最も小さかったのは砕石置換部で ブレーカ用チゼル
刃 口
線路バラスト
チゼル
あった.このように砕石置換工法の凍上抑制効果が 確認できた.しかし,工事進捗の都合上計測開始が 平成17年12月からとなり初期設定の問題,計測デー タに工事による影響変動が見られた(図-9).計測 値の信頼性を向上させるため,18年冬季期間も計測 を実施し,最終的な凍上防止対策の有効性を確認し た(図-10).
図-8 計測機器配置図
写真-13 変位計設置状況
写真-14 砕石等埋戻し完了状況
図-9 凍上量の測定結果
図-10 凍上量の測定結果
6.おわりに
今回のアンダーパス工事では,凍上現象を回避す るため,凍上防止機能を有する函体を推進施工した.
施工結果をまとめると以下の通りである.
①今回採用した凍上防止機能を有する函体の推進工 法により,凍上防止効果を確認でき,線路に影響を 及ぼすことなく施工することができた.
②当工法の採用に伴って,土被り0mでの箱形ルー フ推進を行った.箱形ルーフ先端に取付けたチゼル の効果により線路のバラストの崩壊もなく安全に推 進することができた.
今後、より厳しい条件下でのアンダーパス工事の 増加が想定されるが,今回の実績が大いに役立つこ とを期待している.
計測器
JR 根室
本線 滝川
方
発生土
計測器 2500
塩ビ管 φ150 L=500 8ヶ所 有孔管 φ150
コンクリート擁壁 発生土
№4 一般地盤部 計測器
計測器
№1 断熱工法部分
20000
№2 砕石置換工法部分
№3 未対策部分
コンクリート擁壁 発砲スチロール+土 コンクリート擁壁
単粒砕石
釧路 方 2500
LC
16900
凍上量の比較(H17.12.10~H18.1.21)
-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
H17.12.10 H17.12.24 H18.1.7 H18.1.21
観測年月日 凍
上 量
㎜
-60.0 -50.0 -40.0 -30.0 -20.0 -10.0 0.0 10.0
外 気 温
℃
№4凍上量 №2凍上量
№1凍上量 外気温 外気温
№4(一般部)凍上量
№1(断熱)凍上量
№2(砕石)凍上量
凍上量の比較(H18.11.7~H19.5.11)
-5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0 55.0 60.0 65.0 70.0 75.0 80.0 85.0 90.0 95.0
H18.11.4 H18.11.8 H18.11.12 H18.11.16 H18.11.20 H18.11.24 H18.11.28 H18.12.2 H18.12.6 H18.12.10 H18.12.14 H18.12.18 H18.12.22 H18.12.26 H18.12.30 H19.1.3 H19.1.7 H19.1.11 H19.1.15 H19.1.19 H19.1.23 H19.1.27 H19.1.31 H19.2.4 H19.2.8 H19.2.12 H19.2.16 H19.2.20 H19.2.24 H19.2.28 H19.3.4 H19.3.8 H19.3.12 H19.3.16 H19.3.20 H19.3.24 H19.3.28 H19.4.1 H19.4.5 H19.4.9 H19.4.13 H19.4.17 H19.4.21 H19.4.25 H19.4.29 H19.5.3 H19.5.7 H19.5.11
凍 上 量
㎜
- 70.0 - 65.0 - 60.0 - 55.0 - 50.0 - 45.0 - 40.0 - 35.0 - 30.0 - 25.0 - 20.0 - 15.0 - 10.0 - 5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0
気 温
℃
№1凍上量(断熱区) №2凍上量(砕石置換区) №3凍上量(未対策区)
№4凍上量(一般部) 外気温
№2(砕石)凍上量
№3(未対策)凍上量
№1(断熱)凍上量
№4(一般部)凍上量 外気温
観測年月日