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デルマタン硫酸部分構造の系統的合成に関する研究

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Academic year: 2022

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デルマタン硫酸部分構造の系統的合成に関する研究

著者 杜若 祐平

ファイル(説明) 博士論文要約 博士論文要旨

最終試験結果の要旨 論文審査の要旨

学位授与番号 17701甲理工研第434号

URL http://hdl.handle.net/10232/26943

(2)

学 位 論 文 の 要 約

氏 名

杜若 祐平

学位論文題目

デルマタン硫酸部分構造の系統的合成に関する研究

(Study on the Synthesis of Dermatan Sulfate Partial Structures)

第一章 序論

1 − 1 研 究 背 景

デルマタン硫酸(Dermatan Sulfate, 以下DSと略)は、コンドロイチン硫酸(CS)やヘパラン硫 酸(HS)などと共にグリコサミノグリカンに分類される多糖である。DSは、生体内では細胞外マ トリックスでタンパク質に結合したプロテオグリカン(PG)の形で存在しており、皮膚や血管壁、

神経系といった様々な組織に広範囲に分布している1)。これらの組織中では、DSは成長因子などの 様々な生理活性タンパク質と相互作用し、それらタンパク質の機能を調節するとともに、皮膚や 骨形成などの結合組織の形成に重要である2)。また神経系では、神経細胞の突起伸長の制御やシナ プス形成などにおいても重要な役割を果たす3)

生体内に見られるDS-PGは主に分泌型で、デコリンやバイグリカンなどの細胞外マトリクス成 分として発現している(Figure 1.)4)。これらDS-PGの機能については、ほ乳類の皮膚組織におけ るコラーゲン細繊維の集合形成を促すことで皮膚をはじめとする全身結合組織の力学的維持の役 割が明らかになっているほか、血管壁においては、ヘパリンコファクターなどの因子と相互作用 をすることで血液凝固において重要な役割を果たしていることが知られている5)。このような

DS-PGは、細胞外マトリックスの構成成分としての物理的な関与と周辺細胞へのシグナル伝達が

考えられているが、現在のところ詳細は明らかになっていない。

Figure 1. 代表的なDS-PGの構造

糖鎖成分であるDSの生合成は細胞内のゴルジ体や小胞体で行われる。すなわち、コアタンパク 質上のセリン残基に結合領域四糖(GlcA-Gal-Gal-Xyl)が付加し、この結合領域四糖に対してガラ クトサミン(GalNAc)とグルクロン酸(GlcA)が交互に結合することによってコンドロイチン(CH) 二糖繰り返し構造が構築される。このCH二糖繰り返し糖鎖に対しデルマタン硫酸エピメラーゼと O-硫酸転移酵素が作用して、DSの構成単位であるイズロン酸(IdoA)とN-アセチルガラクトサミ

ン(GalNAc)を主成分とするDS鎖が生合成される(Figure 26)。しかしながら、これら酵素は糖

鎖に対して不均一に作用するため、天然のDS鎖は、CS構造を内在すると同時に、多様な硫酸化パ ターンを持つ。近年、CS構造や硫酸化パターンから生じるDS微細構造が生物種や組織により大き く異なることが明らかされており、その機能に注目が集まっている7)

(3)

Figure2. DSの生合成と構造 1 − 2 研 究 概 略

DSの微細構造を研究するため、合成前駆体であるCSと同様に二糖単位での分類が行われてい る。特に代表的な硫酸化パターンをもつDS二糖構造にはそれぞれ、DS-A(IdoA-GalNAc4S)、DS-B

(IdoA2S-GalNAc4S)、DS-C(IdoA-GalNAc6S)、DS-D(IdoA2S-GalNAc6S)、DS-E(IdoA-GalNAc4S,6S)

のような分類が行われており、単離精製が行われている。

現在、生体内のDSの機能を明らかにするため、様々な研究が行われている。MaccaranaらはCS からDSに異性化する酵素であるエピメラーゼをノックアウトしたマウスを作製し、このノックア ウトマウスを用いて、CS/DSの存在比が野生型とどの程度異なっているか調べている8)。この研 究の結果では、CSとDSの割合で、DS構造が劇的に減少していることを見出している。また体重や 体長の減少、皮膚張力の減少などの表現型が観察されており、DSが成長や皮膚形成において重要 であると考えられている。また菅原らは発達期のマウス小脳のDS構造の割合を調べており、二糖 構造で分類すると、二硫酸体であるDS-B(IdoA2S-GalNAc4S)とDS-D(IdoA2S-GalNAc6S)の割 合が発達過程で大きく変化することを明らかにしている。発達期の小脳では、神経ネットワーク の構築などの生命活動において重要な機能が形成されることを考えると、DS鎖の機能は非常に興 味深い。このような背景からDSの二糖レベルでの網羅的な解析やCS/DSハイブリット糖鎖の生物 学的役割の解釈が求められているが、複雑な構造を含むため有機化学的手法による系統的な合成 が必要である。

そこで本研究では、DSの二糖構造レベルの解析とCS/DSの四糖以上の解析をめざし、様々な硫 酸基の導入と糖鎖伸長が可能なDS共通三糖中間体1の合成と表面プラズモン法(SPR)による相互 作用解析に着手した(Figure 3)。

HO O HO

OH HO O

OR1

R2O

-O2C

O O

AcHN OR4 R3O

O

OH

R1 = SO3- or H, R2 = SO3- or H R3 = SO3- or H, R4 = SO3- or H

HO O HO

OH OH R=

Figure 3

参 考 文 献

1) K. Sugahara and S. Yamada, Trends Glycosci. Glycotechn., 2000, 12, 321-349.; K. Sugahara and S.

Yamada, Trends Glycosci. Glycotechn., 2003, 13, 612-620.; Chemistry and Biology of Heparin and Heparan Sulfae; Garg, H. G., Linhardt, R. J., Hales, C. A., Eds.; Elsevier: Amsterdam, The Netherlands, 2005.

(4)

2) H.Kawashima, M.Miyashoma, Trends Glycosci. Glycotechn., 2000, 12, 283-294.; O.Habuchi, Trends Glycosci. Glycotechn., 2001, 13, 331-332.; Hildebrand Axel, Biochemical journal., 1994, 302, 527-534.; Trowbridge, J. M., Gallo, R. L., Glycobiology,, 2002, 12, 117R–125R

3) M.E. Hemdon, and A.P. Lomder, Neuron 1990, 4, 949-961.; J.E. Silbert, and G. Sugumaran, Biochim. Biophys. Acta 1995, 1241, 371-384.

4) N.B. Schwartz and M. Domowicz, Glycoconj. J. 21, 329–341 (2004).

5) D.R. Zimmermann and M.T. Zimmermann, Histochem Cell. Biol., 2008, 130, 635-653.; Akatsu Chizuru and Mizumoto Shuji. Glycobiology., 2011, 21, 565-574.; Igaya-cho, kariya. Trends Glycosci.

Glycotechn., 2000, 12, 307-319.

6) K. sugahara, Gcarbohydrates and glycoconjugates,, 2007, 17, 536-545.

7) Margaret, M. Maimone and Douglas M. Tollefsen. S J. Biol. Chem., 1990, 265, 18263-18271.; Nicola Volpi. Carbohydrate Polymers, 2010, 82 233–239., Hirose M. JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY , 2002, 277. 12921-12930.

8) Mizumoto Shuji Trends Glycosci. Glycotechn., 2000, 23, 197-199.

第二章 デルマタン硫酸( DS)の合成戦略

2 - 1 合 成 概 略

2 − 1 − 1 合 成 研 究 の 背 景

DSは構造不均一性を持つことからDS二糖構造の解析が行われてきた1)。DS二糖構造を得るため の生化学的手法としてコンドロイチン硫酸の分解酵素であるコンドロ一ナーゼBを用いる方法が ある。しかしこの手法では、分解する際に脱水反応を伴ってイズロン酸の4位と5位に二重結合 を形成したヘキスロン酸残基となり完全なDS二糖構造は得られない。そのため、有機化学的手法 によってDS二糖構造を得なければならない2)。そこで本研究では共通中間体から様々なDS構造を もつ以下のような合成戦略を設計した。この方法は選択的な脱保護および硫酸化が可能で存在し うる硫酸化パターンを構築できる部分二糖構造を合成できる。本研究では、まずDSユニットの二 糖構造の解析を行うために、その基本構造となる二糖中間体の合成概略をSchemeに示すように考 えた。すなわち、単糖成分には、イズロン酸2、ガラクトサミン3を合成し、グリコシル化反応に よって二糖中間体4を合成することを計画した。4はアリル(Allyl)基とtertブチルジメチルシリル

(TBDMS)基の選択的な脱保護によってグリコシル化反応の糖供与体、受容体のどちらにも変換

が可能である。4を調整した後、糖受容体へ誘導し、スペーサー部となる6位遊離の水酸基を持つ 化合物5とグリコシル化反応を行ってDS共通三糖中間体1へ誘導するものである。

HO O HO

OH OH OH

MeO2C O TBDMSO

OPNB

OBz

O HO

TrocHN O O

Ph

TBDMSO O OPNB

BzO MeO2C

O O

TrocHN O O Ph

OAllyl

BnO O BnO

OBn TBDMSO O

OAAB

BzO MeO2C

O O

AcHN O O Ph

O BnO O BnO

OBn HO

1 2

OCCl3 NH

OBn OBn

3 OAllyl O

HO

HO

NH2HCl OH

OH 4

5

Scheme DS基本二糖構造を含む三糖中間体の合成概略

(5)

参 考 文 献

1) Van Boeckel, Carbohydrate chem,, 1985, 126, 7736-7737.; A. Bartoszewicz, Tetrahedron., 2008, 64, 8843– 8850.; P. H. Seeberger, Tetrahedron letter, 2001, 42, 3811.; A. Saito, Tetrahedron, 2010, 66, 3951-3962.; J. C. Jacquinet, P. Sinay. Carbohydrate Research, 1987, 159, 229-253.

2) F. Goto andT Ogawa, Bioorganic and Medicinal Chemistry Letter, 1993, 4, 619-624.; P. Sinay.

Bioorganic and Medicinal Chemistry Lett., 1997, 7, 2843-2846.; Nadine Barroca, J. C. Jacquinet, Carbohydrate Research, 2002, 337, 673-689.

第三章 DS 共通三糖中間体の合成

3-1 背 景 と 合 成 概 略

過去にもDS二糖構造の合成は行われてきたが、これらの合成法では合成可能なDS構造はそれほ ど多くなく、二糖部分構造の網羅的合成は行われていない。DSはイズロン酸-ガラクトサミンの二 糖繰り返し構造から構成され、生合成前駆体であるCS構造への硫酸化パターンを考えると16種 類が考えられる。これらを同じ二糖中間体から合成することは困難である。

一方、当研究室では、まず、イズロン酸— ガラクトサミンの二糖構造を合成した後にスペーサ ーとなるグルコース成分とグリコシル化を行った後にPNB基とTroc基をそれぞれAAB基とAc基に 変換する方法を以前の研究から見いだしている。これらの手順を参考にして共通三糖中間体の合 成を行うこととした。

グルコースとガラクトサミンからそれぞれの単糖成分を合成したのち、単糖どうしのグリコシ ル化を行いイズロン酸— ガラクトサミン配列を持つ二糖体4の合成を行った。そして、そして二糖 体の還元末端をイミデート基に変換してグリコシルドナーとした後にグルコース成分グリコシル 化を行って単糖隊へと誘導した。得られた方法は亜鉛— 銅錯体による還元とアセリル化を行った 後に共通三糖中間体1を得る事を達成した。

4 TBDMSO O

OPNB

BzO MeO2C

O O

TrocNH OO

Ph

OAllyl

BnO O BnO

OBn TBDMSO O

OPNB

BzO MeO2C

O O

TrocNH OO Ph

O BnOBnO O

OBn HO TMSOTf

CH2Cl2

-15 ˚C 69% (2 steps)

OBn OBn

1) Ir-complex 2) I2, H2O THF 95% (2 steps)

TBDMSO O

OPNB

BzO MeO2C

O O

TrocNH O O

Ph

OCCCl3

NH

1) Zn-Cu / AcOH 2) Ac2O / pyridine 94% (2 steps)

TMSOTf CH2Cl2

-15 ˚C 72% (2 steps)

TBDMSO O

OPNB

BzO MeO2C

O O

TrocNH OO

Ph

CCl3CN Cs2CO3

CH2Cl2 quant.

OH

BnO O BnO

OBn TBDMSO O

OAAB

BzO MeO2C

O O

AcHN OO Ph

O

OBn 1

2 + 3

5

Scheme DS基本二糖構造を含む三糖中間体1の合成

(6)

第四章 糖鎖リガンド複合体の合成

4 - 1 背 景

現在までにHSやCS部分二糖構造を合成するための共通三糖中間体が本研究室で合成され糖鎖 リガンド複合体が合成され、さまざまな糖鎖ライブラリーの構築を行っているが、DS構造では行 われていない。そこでDS共通三糖中間体1から様々なリガンド複合体への合成に取り組んだ。

4 − 2 DS二 糖 部 分 構 造 を 含 む リ ガ ン ド 複 合 体 の 合 成

得られたDS三糖共通中間体1は選択的な脱保護や硫酸化によって硫酸化糖鎖への誘導ならびに 糖鎖リガンド複合体の合成を行った1)。得られたDS含有三糖体からリガンド複合体への誘導は、本 研究室で開発されたリンカー成分と還元アミノ化反応を行う従来の方法を用いることによって誘 導することとした2)。また様々な硫酸化パターンが知られているDS構造に対して、まずライブラリ ー化を行うためにイズロン酸の2位、ガラクトサミンの4位、6位の硫酸化パターンのある8種 類の二糖構造含有リガンド複合体の合成について検討した。その結果、8種類のDS含有リガンド 複合体を得た。以下に示す構造の収率と工程数はDS共通中間体1からのものである。

HO O OH

HO

-O2C

O O

AcHN HO OH

OR HO O

OH

-O3SO

-O2C

O O

AcHN HO OH

OR

HO O OH

HO

-O2C

O O

AcHN OSO3- HO

OR

HO O OH

-O3SO

-O2C

O O

AcHN OH

-O3SO

OR HO O

OH

HO

-O2C

O O

AcHN OSO3- -O3SO

OR

HO O OH

-O3SO

-O2C

O O

AcHN OSO3-

-O3SO

OR

R= HO OH

HO OH

HN N

H O

S S HO O

OH

-O3SO

-O2C

O O

AcHN OSO3- HO

OR IdoA-GalNAc

64% (5 steps)

IdoA-GalNAc4S6S

31% (7 steps) IdoA2S-GalNAc

28% (6 steps)

IdoA2S-GalNAc4S 18% (7 steps) IdoA2S-GalNAc6S

51% (7 steps)

IdoA2S-GalNAc6S 44% (7 steps) IdoA2S-GalNAc4S6S

33% (7steps)

HO O OH

HO

-O2C

O O

AcHN OH

-O3SO

OR

IdoA-GalNAc4S 22% (6 steps)

Scheme三糖中間体1から合成したDS構造を有するリガンド複合体

参 考 文 献

1)Fukase, K.;Tanaka, H.; Torii, S.; Kusumoto, S. Tetrahedron Lett., 1990, 31, 389-392.

2)Y.Suda, et al. Bioconj. Chem, 2006, 17, 1125-1135.

(7)

第五章 シュガーチップによるタンパク質

相互作用の解析

5 − 1 背 景

本研究室では糖鎖の結合能を効率よく調べるためのツールとして「シュガーチップ」と称する 糖鎖固定化チップを開発している。このチップを用いると表面プラズモン共鳴 (SPR) 装置によっ て糖鎖結合性タンパク質との結合挙動を簡便かつ迅速に評価することができる。さらに、この SPR 法では、タンパク質を標識することなくリアルタイムで測定でき、タンパク質相互作用解析に汎 用される蛍光標識用いるマイクロアレイ装置と異なり、弱い相互作用でも測定できる。 (figure 1)

プラズモン波

レーザー光 プリズム

表⾯面プラズモン共鳴 (SPR) 糖結合性タンパク質

Θ シュガーチップ

S S S

S S S S S S S

S S

30˚ ⾓角度度 80˚

反射強度度

1.0

0

【シュガーチップを⽤用いたSPR法】

・無標識識で測定できる。

・リアルタイムで測定できる。

・弱い相互作⽤用のものでも測定することができる。

figure 1 シュガーチップを用いた SPR 法

本章では12ch型SPR装置を用いて今回、糖鎖結合性蛋白質との相互作用を測定した。

5− 2 SPRによる解析

12ch型のSPR装置を用いて、糖鎖結合性タンパク質との相互作用解析を測定した。

糖鎖リガンド複合体の濃度を 1.0 µM とし、フィブロネクチンの濃度を 4 nM、8 nM、16 nM、 32 nM、64 nM、123 nM、250 nMとした。

結果は、硫酸基の数が多い構造が少ない構造と比べてよく相互作用を示し、またガラクトサミ ンの6-O-硫酸基を持つもの (IdoA2S-GalNAc6SまたはIdoA-GalNAc4S,6S)を持つ構造に顕著な相互 作用を示した。フィブロネクチンとの相互作用はイズロン酸の2-O-硫酸基はあまり重要でなく、

ガラクトサミンの 6-O-硫酸基が重要であることを示している。(figure 2.)

(8)

0"

50"

100"

150"

200"

250"

IdoA2S+GalN Ac4S"(DS+B)"

IdoA2S+GalN Ac6S"(DS+D)"

IdoA+GalN

Ac4S6S"(DS+E)" IdoA2S+GalN

Ac"

IdoA+GalN Ac"(De)"

IdoA2S+GalN Ac4S,

6S"(DS+T)"

IdoA+GalN Ac4S"(DS+A)"

IdoA+GalN Ac6S"(DS+C)"

4"nM"

8"nM"

16"nM"

32"nM"

63"nM"

125"nM"

250 nM"

figure 2. 12chSPR装 置 を 用 い た フ ィ ブ ロ ネ ク チ ン と の 相 互 作 用

第六章 総括と展望

本研究では、DS部分構造の合成ライブラリーを構築するため、多様なDS部分構造が合成可能な 二糖中間体4およびDS二糖構造を系統的に合成できる共通三糖体1の合成を行い、8種類のDS部分 二糖構造の合成を達成した。二糖中間体を構成する単糖成分であるガラクトサミン成分について は、すでに当研究室でその合成法が確立されており、本研究にも応用することができた。一方、

イズロン酸成分については、多様な硫酸化パターンの創出と糖鎖の伸長が可能な基質がこれまで に報告されていないため、新しくイズロン酸成分2を設計し、その合成について検討した。その結 果、イズロン酸成分2は効率よく合成することができ、グルコースから21段階、総収率2.9%で誘導 することができた。これらの単糖成分はグリコシル化を行うことによって簡便に二糖中間体4に変 換することができた。DSの部分二糖構造を系統的に合成できる共通三糖中間体1の合成は、グルコ ース成分とグリコシル化を行った後、保護基の変換を行うことによって調製することができた。

多様な硫酸化パターンを生み出す鍵反応の1つである、ガラクトサミン部分のベンジリデン基の 選択的開裂反応では、CS二糖ユニットの合成と同様の条件で、選択的な開裂反応を行うことがで きた。またイズロン酸成分のBz基、AAB基、TBDMS基も種々の条件下で選択的に脱保護する ことができた。

これら脱保護した中間体の硫酸化糖鎖への誘導は、選択的な保護基の切断と位置選択的な 硫酸化によって行うことができ、8種類のDS部分二糖構造を得ることができた。またこれら の硫酸化糖鎖は、当研究室で開発されているリンカー成分との還元アミノ化反応によって、

SPRなどのセンサーチップに固定化できる糖鎖リガンド複合体に誘導することができた。これ らの化合物のうち8種類については、SPR測定を行うことによって、GAG結合性タンパク質と の結合特性を評価したところフィブロネクチンにはより高硫酸化されたGalNAc6S構造に強い 結合力が見られた。

以上のように、本研究で設計した二糖中間体ならびに共通三糖中間体は、DS部分二糖構造 のライブラリー合成に適用できることが分かった。二糖中間体はさらなる糖鎖伸長が可能で あるため、四糖構造のみならず六糖構造や八糖構造への誘導も可能であり、また、これまで に合成しているCS二糖中間体と組み合わせて使用することでCS/DSのハイブリット糖鎖の合 成にも応用できる。CS/DSのハイブリット糖鎖の合成はこれまでに達成されていないため、

CS/DS糖鎖の合成研究の発展が期待される。またDSの二糖構造のライブラリーを構築するこ とによって、DSが関与する生体機能の分子レベルでの解析が可能になると期待される。

参照

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