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博 士 ( 医 学 ) 七 戸 秀 夫

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 七 戸 秀 夫

     学位論文題名

FK506 Reduces Infarct Volume Due to Permanent   Focal Cerebral Ischemia by MaintainlngBA ぽ t   TurnOVerandInhibitingCytOChromeCReleaSe      (FK506 はBADturnover 、ミトコンドリア機能を維持して      脳梗塞の進展を抑制する。)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【目的】―過性前脳虚血モデル、あるいは一過性局所脳虚血モデルでは、免疫抑制剤FK506 が虚血性神経細胞障害を抑制することが報告されている。しかし、.日常診療で多く経験する 永 久 局 所 脳 虚 血 モ デ ル に お け るFK506の 効 果 に つ い て は 明 確 で は な い 。   FK506 (tacrolimus: Prograf)は、calcineurinのもつ様々な器質に対する脱リン酸化酵素 活性を阻害する作用を有する免疫抑制剤である。同様に脳保護効果を報告されている免疫抑 制剤cyclosporinAでは 、cyclophilinDに選択的に結合することによるMPT抑制効果が要 因とされる―方、FK506ではその機序が何に由来するかが研究の焦点となっている。近年、

低 酸 素 負 荷 を 加 え ら れ た神 経 細胞 や 、脊 髄 損傷 モ デル 等 でcalcineurinに よ るBAD (apoptosis関連タンパク質であるBcl‑2 familyに属するタンノヾク質。BH3‑only subfamily に属し、apoptosis促進に働くとされている。)の脱リン酸化を阻害することによりapoptosis を抑制し、脳保護作用を得ているという説が報告されているが、異論もあり評価は定まって いない 。我々はマ ウスMCA永 久閉塞モデ ルにおいて 、FK506が脳梗塞を縮小させる効果 を有するか、また有効である場合にFK506が、どのような機序を介して脳虚血における脳 保護作用を発揮しているのかを検討した。

【方法】マウス(Balb/c、24−28g、雄)をFK506投与群(1.0 0r 3.0 mg/kg、虚血30分前 i.p.)とVehicle群に分け、それぞれ吸入麻酔下で右MCAを凝固閉塞した。脳梗塞体積の測 定は、各群とも虚血24時間後にTTC染色を行い(n=25)、脳梗塞体積の評価は、対側の大 脳半球に対する比で表した。また虚血1、3、6時間後、および偽手術後に大脳皮質より得 られた細胞質分画サンプルを用いて、ウェスタンブロッティングを行いミトコンドリアから 細胞質分画へのcytochromec漏出を検討した(n=24)。さらに虚血1、3時間後に永久標 本 を作成し、cytochromec、total BAD、 リン酸化BAD (p‑BAD)の免疫染色 を実施した

(2)

(n=16)。以上すべての動物実験は、当学の動物実験に関する指針に則リ行われた。

【結果】  脳梗塞体積のTTC染色による測定結果

今 回使 用し たマ ウスMCA永 久閉 塞モ デル では 、脳 梗塞 巣は 大脳 皮質 に局 在して いた 。FK506 投与群では、虚血辺縁部の梗塞巣が抑制される傾向がみられた。Vehicle群では22.9土4.1%、

FK506投 与 群 で は 、1.Omg投 与 群 で21.5土5.7% 、3.Omg投 与 群 で17.3士5.1% で あ っ た ( 平 均 値 土 標 準 偏 差 ) 。FK506は3.Omg/kg投 与 群 で 、 梗 塞 体 積 を75.5% に 有 意に 縮 小 した(p=0.0146)。

    細 胞 質 分 画 中 のcytochromecに 関 す る ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ の 結 果 ミ ト コ ン ド リ ア か ら のcytochromecの 漏 出 は 、Vehicle群 とFK506投 与 群 と も に 、 虚 血 開 始 時 か ら 経 時 的 に 増 加 す る 傾 向 がみ られ た。Vehicle群 とFK506投与 群で比 較す ると 、 Vehicle群 は虚 血 開 始 後6時 間 の 時 点 で 、cytochromecの 細 胞 質 へ の漏 出が有 意に 増加 し て い た が 、 FK506投 与 群 で は こ の 漏 出 が 抑 制 さ れ て い た (p=0.0453) 。

    cytochromeC、total BAD、p‑BADに おけ る免 疫染 色の 結果

虚 血 中 心 部 で は 、cytochromeC、total BAD、p‐BADの い ず れ も 、Vehicle群 とFK506投 与 群の 間で 免疫反応に差がみとめられなかった。―方、梗塞辺縁部では、神経細胞の胞体で のcytochromecの 免 疫 反 応 が、vehicle群で 虚血1、3時 間後 とも に増 加が 認め られ たが 、 FK506投 与 群 で は 増 加 が 抑 制 さ れ て い た 。 こ れ ら の 所 見 か ら 、FK506投 与 に よ り cytochromecの ミ卜 コン ドリア から 細胞 質へ の漏 出が 抑制 され てい ると考えられた。total BADに 関し ては 、梗 塞辺 縁部に おい て神 経細 胞の 胞体 での 免疫 反応 が、vehicle群で虚血開 始1、3時 間 後 と も に 増加 し て い た が 、FK506投 与 によ っ て 、 虚 血 開 始 後 のtotal BADの 免 疫 反 応 の 増 加 が 抑 制 さ れ た 。 し か しp−BADは、 梗塞 辺縁 部に てvehicle群、FK506投 与 群 とも に、 虚血 開始 後に 明ら かな 変化 が認 めら れな かった 。

【考 察】FK506はマ ウスMCA永久閉 塞モ デル にお いて も、 有意 な脳 梗塞縮小効果を示した。

ま た 免 疫 染 色 にて 示 さ れ た 、FK506投 与に よる 神経 細胞 でのBAD発 現の 変化 は、 脳保 護作 用 の 機 序 を考 察す る上で 重要 な所 見と 考え られ た。 すな わちBADはturnoverが非 常に 短い 蛋白 質と して知られており、定常時には細胞内で量的制御をうけているが、これらの所見か ら脳 虚血 急性 期に はこ れら のメカ ニズ ムが破綻し、total BADが神経細胞内で増加を示すこ と が 示 唆 さ れ た。 ま た 詳 細 な 機 序 は 不 明 であ るが、FK506はBADのturnoverを維 持す るこ とで 、虚 血辺 縁部 にお けるtotal BADの増 加を 抑制 し、p←BAD、非 リン酸化BADのバランス を維 持す るこ とで 、mitochondrial permeability transition、お よびcytochromecの細胞 質 へ の 漏 出 か ら 開 始 す る 細 胞 死 の プ ロ セ ス を 抑 制 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

FK506 Reduces Infarct Volume Due to Permanent   Focal Cerebral Ischemia by Maintaining BAT   Turnover and Inhibiting CytochromeCRelease

(FK506 はBAD turnover 、ミトコンドリア機能を維持して      脳梗塞の進展を抑制する。)

  一過性前脳虚血モデ ル、あるいは一過性局所脳 虚血モデルでは、免疫抑制剤FK506が虚血性神 経細胞 障害を抑制することが報告さ れている。しかし、日常診 療で多く経験する永久局所脳虚血 モ デル に おけ るFK506の効 果については明確では ない。またFK506のもつ神経 細胞障害を抑制す る機序 が何に由来するかが研究の焦点となっている。近年、低酸素負荷を加えられた神経細胞や、

脊 髄損 傷 モデ ル等 でcalcineurinに よ るBAD (apoptosis関 連タ ンパ ク質 であ るBc|ー2family に属す るタンパク質。BH3−only subfamilyに属し、apoptosis促進に働くとされている。)の脱 リ ン酸化を阻害するこ とによりapoptosisを抑制し 、脳保護作用を得ていると いう説が報告され ている が、異論もあり評価は定まっ ていない。我々はマウスMCA永久閉塞モデルにおいて、FK506 が脳梗 塞を縮小させる効果を有する か、またどのような機序を 介して脳虚血における脳保護作用 を発揮しているのかを検討した。

  方法 としてマウスをFK506投与群(1.0 0r 3.0 mg/kg、虚血30分前i.p.)とvehicle群に分け、

そ れぞれ吸入麻酔下で 右MCAを凝固閉塞した。゛脳 梗塞体積の測定は、各群と も虚血24時間後に TTC染色 を行った(n 25)。また虚血後、大脳皮質より得られた細胞質分画サンプルを用いて、ウ エ スタ ン ブロ ッテ ィン グを 行 いミ トコ ンド リア か ら細胞質分画へのcytochromec漏出を検討し た(n 24)。さらにcytochromec、total BAD、リン酸化BAD(p―BAD)の免疫染色を実施した(n=16)。

  脳梗 塞 体積 のTTC染 色に よる測定では、FK506投 与群では、虚血辺縁部の梗 塞巣が抑制される 傾向が みられた。Vehicle群では22.9土4.1%、FK506投与群では 、1.Omg投与群で21.5土5.7%、

3. Omg投与群で17.3士5.1%であった(平均値士標準偏差)。FK506は3.Omg/kg投与群で、梗塞体 積を75.5Xに有意に縮小した(p=0. 0146)

    Cytochromecに 関 す る ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ の 結 果で は、 ミ卜 コン ド リア から の cytochromecの漏出が、両群ともに 、虚血開始時から経時的に増 加する傾向がみられた。Vehicle     −63

郎信 弘 和喜 充 嶋崎 岡 長岩 吉 授授 授 教教 教

. 査査 査 主副 副

(4)

群は虚血開始後6時間の時点でcytochromecの細胞質への漏出が有意に増加していたが、FK506 投与群ではこの漏出が抑制されていた(p=0. 0453)

  Cytochromectotal BAD、p―BADにおける免疫染色の結果は、梗塞辺縁部では、神経細胞の 胞体でのcytochromecの免疫反応が、vehicle群で虚血後に増加が認められたが、FK506投与群 では増加が抑制されていた。これらの所見から、FK506投与によりcytochromecのミトコンド リアから細胞質への漏出が抑制されていると考えられた。Tota|BADに関しては、梗塞辺縁部に おいて神経細胞の胞体での免疫反応が、vehicle群で虚血開始後に増加していたが、FK506投与 によって、免疫反応の増加が抑制された。しかしp一BADは、梗塞辺縁部にて両群ともに、虚血開 始後に明らかな変化が認められなかった。

  結語として、FK506はマウスMCA永久閉塞モデルにおいても、有意な脳梗塞縮小効果を示した。

また免疫染色にて示された、FK506投与による神経細胞でのBAD発現の変化は、脳保護作用の機序 を考察する上で重要な所見と考えられた。すなわちBADはturnoverが非常に短い蛋白質として知 られており、定常時には細胞内で量的制御をうけているが、これらの所見から脳虚血急性期には これらのメカニズムが破綻し、total BADが神経細胞内で増加を示すことが示唆された。また詳 細な機序は不明であるが、FK506はBADのturnoverを維持することで、虚血辺縁部におけるtota BADの増加を抑制し、p−BAD、非リン酸化BADのバランスを維持することで、cytochromecの細胞 質 へ の 漏 出 か ら 開 始 す る 細 胞 死 の ブ ロ セス を 抑 制レ て い る可 能 性 が示 唆 さ れ た。

  口頭発表に当たり、副査の吉岡教授からFK506のBBB通過、投与量について、aIpoptosis 関与、虚血急性期のBADリン酸化に関して質問があった。同じく副査の岩崎教授から、脳虚血辺 縁部における効果、cyclosporinAとの比較、穿通枝梗塞での効果、他の脳保護薬との併用に関 する質問があった。また主査の長嶋教授よりcalcineurinの誘導、TUNELの検討、虚血再濯流モ デルとの違い、KOマウスを用いた検討等に関する質問があった。最後にフロアから、将来的に 虚血中心部を救う手段、また研究の背景について質問があった。これらの質問に対して申請者は おおむね適切な回答を行った。

    この論文はFK506の脳保護作用の機序を明らかにした点で優れていると判断され、今後の脳 虚血の治療に貴重な示唆を与えたものと考えられた。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な 資格を有するものと判定した。

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参照

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