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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博士 (医学 )古 川 学 位 論 文題 名

炎症性腸疾患患者の末梢血単核球における 抑制性 NK レセプター発現細胞動態の検討

Analysis of inhibitory NK cell receptors on PBMC     in patients with inflammatory bowel disease.

学位論文内容の要旨

[緒言1炎症性腸疾患くinflammatory bowel disease,以下IBDと略す)とは,慢性の原因不明 の難治性腸疾患を総称する言葉であり,おもに潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis,以下UC と略す)とクローン病(Crohn s disease,以下CDと略す)のことを指す,これらは異なる疾 患群 と考 えら れて お り,UCに おい てはTリ ンパ 球 やBリン パ球 の機 能異 常とTh2タ イプ の炎 症の 関与 が,CDでは 単球やマクロ ファージ系の機能異常とThlタイプの炎症の関与 が考えられ ている.抑制性NKレセプターは本来ナチュラルキラー(NK)細胞に発現してお り, 自己 のMHC‑classI分 子を 認識 して その 傷害 活性 を抑制する方 に働く,抑制性NKレ セプ ター には 大き く 分け てc‑type lectin superfamilyに属するものとimmunogloblin superfamilyに属するものの2種類がある.CD94/NKG2Aはc‑type lectin.superfamilyに 属 し ,HLA‑Eを 認 識 し て 抑制 性シ グナ ルを 伝 える .HLA‑Eの発 現量 はMHC classI全 体 の翻訳量を 反映し,標的細胞上のMHC classI発現をモニターするこ とが出来る.CD158b はimmunogloblin superfamilyに属し, 主にHLA‑C抗原を認識して細 胞傷害を抑制する.

自己のMHC classI発現の減弱したウイルス感染細胞や腫瘍細胞に対 して,これらを排除 する機構の 中で重要な位置を占めるものと考えられている.最近, これらの抑制性NKレ セプターは,CD8+Tリンパ球上にも発現していることが明らかにされ,自己免疫疾患や原 因不明の慢性炎症性疾患の発症を抑制 している可能性が指摘されているが,炎症性腸疾患 をはじめとする原因不明の慢性炎症性疾患あるいは自己免疫疾患の患者において,Tリンパ 球上 の抑 制性NKレ セ プタ ーを検討した 報告はいまだ見られない,本研究ではIBD患者末 梢 血Tリ ン パ 球 に お い て , 代 表 的 な 抑 制 性NKレ セ プ タ ー で あ るCD94/NKG2Aお よ び CD158bの発現を検討した,

[方 法]50歳 未満 のUC患 者19名,CD患 者16名, およ び健 常人 (以 下HCと略 す )8名を 対象とした,患者および健常人よルヘ パリン加末梢静脈血を採取し,これを分離して得ら れた単核球をHanks液に浮遊させ,Fluorescein isothiocyanateくFITC)で標識されたCD3 抗体 ,あ るい はPhycoerythrin (PE)で 標識されたCD94/NKG2A,CD158b抗体を用いて4℃

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で20分間 染色 し, フロ ー サイ トメ トリ ーに て計 測し た. 次に りン パ球 上にCD94[NKG2A を誘導するサイトカインとして知られて いるIL‑15に対する反応性を 検討した.あらかじ め抗CD3抗 体で 固層 化し たプ レー ト内 で,1wellあた り1X l06の各 疾患 群の 分離単核球 細胞 を,10%fetal calf serumを 加え たRPMI1640培 地Imlに浮 遊さ せ,IL‑15 5ngを加 え,5%C02‑incubatorを 用い て37℃で7日 問培 養した,培養後の 細胞を2‑10Xl06に調整   し てHanks液 に 浮 遊 さ せ ,PEで 標 識 さ れ た 抗NKG2Aお よ び 抗CD94抗 体 ,FITCで 標 識 さ れ た 抗CD3お よぴCD8抗体 を用 いて4℃で20分 間染 色し ,フ ロー サ イト メ卜 リー に てCD94/NKG2A+CD3/CD8+Tリンパ球を測定した.

[ 結 果 ]CD94+CD3+細 胞の 割合 は,UC群 ,CD群の いず れもHC群 との 間 に有 意差 はみ ら れなかった,       NKG2A+CD 3+細胞の割合は,HC群では3.4土2.1く2.9)%,UC群では1.7士 1.7(1.0)%,CD群では2.4土2.8(0.9)%であり,HC群に比し,UC群において有意に減少 し て い た .CD158b+CD3+細 胞 の 割 合 は ,UC群 ,CD群 の い ず れ もHC群 と の 差 は み ら れなかった. UC群における活動部位別検討では,左側結腸型と全結 腸型で,NKG2A+CD3+

細胞 の割 合は ,HC群に 対して有意な低下が見られた.活動性別検 討ではUC群の活動期・

非 活 動 期 を 問 わ ずにNKG2A+CD 3+細 胞の 割合 はHC群に 対し て有 意な 低 下が 見ら れた , 次 に ,UC群 に お い てCD94/NKG2A陽 性Tリ ン パ 球 が 低 下 し て い る 原 因 を 明 らか にす る ため ,Tリ ンパ 球上 にCD94lNKG2Aを誘 導す るサ イト カ イン であ るIL‑15に対 する反応性 を 検 討 し た .IL‑15刺 激後 のCD94+CD3+細 胞の 割合 は,HC群 では30.8土7.6(32.6)% , UC群 では23.2土5.5(21.3)% ,CD群で は24.6土1.2(25.0)%であり,UC群においてIL‑15 に よ る 反 応 が 有 意 に 減 少 し て い た .NKG2A+CD3+細 胞 の 割 合 は ,HC群 で は25.6土 7.5(26.3)% ,UC群では16.3土5.3(15.8)%,CD群では20.2士1.6(21.0)%であり,UC群に おい て有 意に 減少 して い た.CD94+CD8+細 胞の 割合は,有意では なぃもののHC群に比し てUC群 で 減 少 し て い る 傾 向 が み ら れ た .NKG2A+CD8+細 胞 の 割 合 は ,HC群 で は19.6 土6.4(20.3)%,UC群では13.1土4.8(11.2)%,CD群では15.2土1.8(15.0)%でありUC群に おいて有意に減少していた,UCの病変部 位別検討では,左側結腸型および全結腸型におい てIL‑15に 対 す るNKG2A+CD3+細 胞発 現の 有意 な低 下が みら れた .ス テ ロイ ドホ ルモ ン (SH)使用 の影 響お よび 疾患活動性との関連性の検討では,HC群と 比較してSH使用群,活 動性 の群 でIL‑15刺 激に 対す るCD94/NKG2A+CD3+細胞 の割 合の 有意 な低 下が みられた.

[考察lIL‑15は従来NK細胞の分化に重要 なサイトカインと考えられてきたが,最近ではT リン パ球 上のNKレ セプ タ ーの 発現 や,CD8+メモ リーTリンパ球の 増殖維持にも重要であ る こ と が 明 ら か に さ れ つ っ あ る . 本 研 究 結 果 か ら ,UC患 者 で はIL‑15刺 激に 対し て CD94/NKG2Aの 発現 に異 常 があ るた めにTリ ンパ 球の抑制性機能を 低下させ,粘膜上皮で の傷害を制御できないとぃう可能性が示 唆された,またこのTリンパ 球の機能異常が本疾 患の 重要 な病 因の1っで ある 可能 性も 示唆 され る. し かし なが ら,IL‑15刺 激に対して CD94/NKG2Aが 誘 導 さ れ に く い メ カ ニ ズ ム や ,大 腸粘 膜局 所で のCD94/NKG2A発 現状 態 な ど 明 ら か に し な け れ ば な ら な い 点 も 多 く ,今 後さ らな る検 討が 必 要と 思わ れた ,

[結語]今回の検討において,@潰瘍性 大腸炎患者においてNKG2A発現末梢血Tリンパ球が 減 少 し て い る こ と , ◎ 潰 瘍 性 大 腸 炎 患 者 に おい てIL‑15刺 激に よるNKG2Aおよ びCD94

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の発現 末梢血Tリンパ球の減弱がみ られること,◎これらの異常は疾患の活動性,非活動 性を問 わずに認められること,が示された.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

炎症性腸疾患患者の末梢血単核球における 抑制性 NK レセプタ ー発現細 胞動態の検討

Analysis of inhibitory NK cell receptors on PBMC .  in patients with inflammatory bowel disease.

  炎症性腸疾患くIBD)とは、原因不明の慢性難治性腸疾患を総称する言葉で、主に潰瘍性大 腸 炎(UC)とCD群(CD)のこ とを指す 。抑制 性NKレセプ ターは 本来ナチ ュラルキ ラー(NK) 細胞に発現しており、自己のMHC‑classI分子を認識してその傷害活性を抑制する方に働く。

抑 制 性NKレ セ プ タ ー に は 大き く 分 けてc‑type lectin superfamilyに 属 する も の と immunogloblin superfamilyに属 するも のの2種類があ り、CD94/NKG2Aはc‑type lectin superfamilyに 属 し 、HLA‑Eを認 識して 抑制性シ グナルを 伝える 。HLA‑Eの 発現量 はMHC classI全 体の翻訳 量を反映 し、標 的細胞上 のMHC classI発現をモニターすることが出来 る 。CD158bはimmunogloblin superfam衂に 属し、主 にHLA.C抗 原を認 識して細 胞傷害 を抑 制する 。自己のMHCclassI発現の減弱したウイルス感染細胞や腫瘍細胞に対して、こ れらを排除する機構の中で重要な位置を占めるものと考えられている。最近、これら抑制性 NKレセプターは、CD8十Tリンパ球上にも発現していることが明らかにされ、自己免疫疾患 や原因不明の慢性炎症性疾患の発症を抑制している可能性が指摘されているが、実際に検討 した 報告は 見られな い。本研 究ではIBD患者 末梢血Tリンパ球において、代表的な抑制性 NKレ セ プ タ ー で あ る CD94爪 KG2Aお よ び CD158bの 発 現 と 、 Tリ ン パ 球 上 に CD94膩KG2Aを誘導す るサイ トカイン であるIL‐15に対する反応性をフローサイトメトリ ーに より検 討した。HC群に対 し、NKG2A,+CD3十細胞 の割合はUC群で有意に減少してお り、活動部位別検討でf翻生側結腸型と全結腸型で、有意な低下が見られた。活動性男I亅検討で はUC群 の 活 動 期 ・ 非 活 動 期 を 問 わ ず に 有 意 な 低 下 が 見 ら れ た 。Tリ ン パ 球 上 に CD94膩KG2Aを誘導するサイトカインであるIL・15.に対する反応性を検討した。IL・15刺 激 後 のCD94十CD3十 細 胞 、NKG2A十CD3十 細 胞 、NKG2A十CD8十 細胞の割 合はHC群 に対し てUC群 におい て有意に 減少し ていた。UCの病変 部位別検討では、左側結腸型および全結 腸型 においてIL.15に対するNKG2A十CD3十細胞発現の有意な低下がみられた。ステロイド ホル モン(SH冫使用の影響および疾患活動性との関連性の検討では、HC群と比較してSH使     ―678―

博 夫

正 隆

香 池

浅 小

授 授

教 教

査 査

主 副

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用 群、 活動 性の 群でIL‑15刺激 に対 するCD94/NKG2A+CD3+細胞の 割合の有意な低下がみ られた。今 回の検討において、潰瘍性大腸炎患者ではNKG2A発現末梢血Tリンパ球が減少 し てい るこ と、IL‑15刺激 によ るNKG2Aお よびCD94の発 現末 梢血Tリン パ球 の減弱がみ られること、これらの異常は疾患の活動性、非活動性を問わずに認められることを示した。

  口頭発表 後、副査小池教授から、抑制性NKレセプター発現細胞数が減ることと機能異常 に関する文 献的知見について、IL‑15の レセプターが機能異常を有する可能性について、

IL‑15の発現部位について、抑制性NKレ セプターやIL‑15に関する動 物モデルについて、

NKT細胞との関連性についての質問カミあった。申請者は機能異常に関する知見は明らかに されていな いこと、11.15のレセプターが機能異常を有する可能性は今後検討すること、

IL‑15は腸管上皮などで発現すること、 抑制性NKレセプターに関する動物モデルはなく、

IL‑15 transgenic mouseで小腸炎がおきること、NKT細胞は大部分がCD8‑であり今回の細 胞とは異なることを回答した。次いで、副査古木教授から、調べた細胞の絶対数についての 質問があり 、申請者は絶対数は調べていないことを回答した。古木教授からは抑制性NKレ セプター発現細胞の機能も調べるべきであること、局所での発現細胞についても調べるべき であるとの提言が成された。さらに、主査浅香教授から、UCの病変部位による差について、

CD群での活 動性別検討について、治療への展望についてに関する質問があった。申請者は 直腸炎型で ステロイド投与が多く症例数も少ないため断言できないこと、CD群での検討は 十分数行っていないこと、潰瘍性大腸炎の病因であるならば直接治療に結びっくと回答した。

最 後 に 主 査 浅 香 教 授 が 、 今 後 の 検 討 項 目 の 確 認 を 行 っ て 公 開 発 表 を 修 了 し た 。   本研 究結 果か ら、UC患者 ではIL‑15刺 激に 対し てCD94/NKG2Aの 発現 に異 常があるた めにTリンパ球の抑制性機能を低下させ、粘膜上皮での傷害を制御できなぃという可能性と、

こ のTリ ン パ 球 の 機 能異 常が 本疾 患の 重 要な 病因 の1っで ある 可能 性 が示 唆さ れた 。   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑚や取得単位なども併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学) の学 位を 受け るの に十 分な 資格 を有 する も のと 判定 した 。

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