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FIP200 結 合 性 E3 ユ ビ キ チ ン リ ガ ー ゼ MUL に よ る      オ ー ト フ ァ ジ ー 誘 制 御 の 可 能 性

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 加 納 崇 裕

学 位 論 文 題 名

FIP200 結合 性 E3 ユビ キチンリガーゼ IVIUL による      オ ー ト フ ァ ジ ー 誘 導 制 御 の 可 能 性

学位論文内容の要旨

【 背 景 と 目 的 】Mulibrey小 人 症(MUscle‑LIver‑BRain‑EYe nanism、MUL; OMIM 253250)は 、特徴的な顔貌、心筋症、肝腫大を伴い胎児期発症で重篤な成長不全を呈する 常染 色体 劣性 形式 の 遺伝 性疾患である 。このMulibrey小人症は、MUL遺伝子の変異によ って生じることが判明しており、これ までに世界中から14種類の変異が報告されている。

MULタ ンパ ク質 はそ のド メイ ン構 造よ り、RINGフ イン ガードメイン、B‑Boxドメイン、

coiled‑coilドメインの3っを有するtripartitemot江(TRIM)ファミリータンパク質のーつ で あ る 。 他 のTRIMフ ァ ミ リ ー タ ン パ ク 質 と 同 様 にMULもE3ユ ビキ チン リ ガー ゼと し て働き自己ユビキチン化能を有するこ とが報告されている。しかし、その酵素としての基 質タンパク質は未だ同定されておらず、その分子レベルの機能は未知のままである。Foca1 adhesionkinasefamily.interactingproteinof200kDa(FIP200)は 、Pyk2のりン酸化能 を抑制して 負の制御を行うタンパク質として同定されたが、最近こ のFIP200がオートフ ァジ ーの 制御 に関 わ って いることが報 告されている。酵母においてTOR依存性に過剰に り ン 酸 化 を 受 け て い たAtglとAtg13は 、栄 養 飢餓 状態 でTORの 活動 が抑 制 され ると 互 いに結合し更にAtg17とも結合して複合体を形成し、これによってオートファゴソーム形 成が 促進 され る。FIP200はこのAtg17の哺乳類ホモログと考えられ 、Atg1の哺乳類水モ ロ グ で あ るULK、Atg13の 哺 乳 類 ホ モ ロ グ と 複 合 体 を 形 成 しmammalianTOR(mTOR) の制御下でオートファジーに関与して いることが示唆されている。今回の研究において、

酵母ツーハイブリッド法を使用してMULと結合するタンパク質のスクリーニングを行い、

FIP200を 同 定 し た 。FIP200はE3ユ ビ キ チ ン リ ガ ー ゼ とし てのMULの基 質 のー つで あ ると考えられ、この2つのタンパク質の相互作用がオートファジー誘導下で変化する可能 性がある。FIP200が関わっているとされるオートファジーは、アル ツハイマー病を含む さまざまな神経変性疾患に関わってい る可能性があり、その分子メカニズムを明らかにす ることが病態の解明にっながると考え る。

【方 法と 結果 】MULと相 互作 用するタンパク質を同定するため、酵 母ツーハイブリッド 法を用いて マウス脳cDNAライブラリーからスクリーニングを行った 。baitとしてマウス MULcDNAの カル ポキ シル 基端 側の 部分 を用 いて 同 定さ れた 複数 の陽 性ク ロー ンは 、マ ウスFIP200のcDNA配 列の 断片 を有 して いる こと が判 明した。次に 得られた陽性クロー ンか らマ ウスFIP200cDNA断片 (FIP200(CTF) ) をク ローニングして、全長のMULとと もに 真核 細胞 発現 ベ クタ ーをそれぞれ 作製した。これらのベクターをHEIQ93T細胞に遺 伝 子 導 入 し タ ン パ ク 質 を 発 現 さ せ 、 そ の 細 胞 の 溶 解 液で 免疫 沈降 を行 った 。MULは FIP200(CTF)と共発現させた時に免疫沈降され、これらのタンパク質は結合することが確 認さ れた 。さ らに 全 長の ヒトFIP200に おい ても 同様 に、 免疫 沈降 法でMULと の結 合を 確 認 し た 。MULはE3ユ ビ キ チ ン リ ガ ー ゼ 活 性 を 有 し てい るこ とが 報告 さ れて いる 。

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FIP200がMULの 基 質 で あ る か 細 胞 内 ユ ビキ チン 化ア ッセ イに て検 討し た 。FIP200、 FLAG‑MUL、His6‑ユ ビキ チン をそ れぞ れ発 現 する ベク ター をHEK293T細 胞 に遺 伝子 導 入し 、その細胞溶解液をNj2+ーアフイニティーレジンでプルダウンし、抗FIP200抗体でイ ム ノブ ロ ット した 。MULを 過剰 発現 さ せた 細胞 のレ ーン にお いてFIP200と考えられる 位置 からより高分子量の範囲にスメアの形成がみられ、これ はポリユビキチン化された FIP200を 示 し て い る と 考 え ら れ た 。 さら にFIP200の 細胞 内で の安 定性 に対 するMUL の 影響 を 検討 した 。FIP200と野 生型 のMUL(WT)もし くは ユビ キチ ンリガーゼ活性を欠 失 し たMUL(ARB)の 発 現 ベ ク タ ー を そ れぞ れHEK293T細胞 に遺 伝子 導入 し 、シ クロ ヘ キシ ミドの存在下で培養して、回収後溶解した上でイムノブ ロットによりFIP200の発現 量 を 確 認 し た 。 す る とMUL(WT)と の 共 発 現 で はFIP200の 分 解 が 促 進 さ れ た が 、 MUL(ARB)とで はそ の分 解促 進効 果が 認め られ ず、MULを 発現 させ ていなぃときよりも 分 解が 遅 延し た。 これ らの 結果 からMULはFIP200と 結合 し、 これ を基質としてポリユ ビキ チン化しプロテアソーム系を介した分解を進めることが示唆された。オートファジー を 誘導 さ せる こと で、MULとFIP200の 相互 作用 にど のよ うな 影響 が生じるかを検討し た 。FIP200とFLAG‑MULの 発 現 ベ ク タ ー をHEK293T細 胞 に 遺 伝 子 導 入 し 、 飢 餓 刺 激 を加 えたものと加えないものに分けて細胞を回収し、抗FLAG抗体で免疫沈降を行い、抗 FIP200抗体でイムノブロットした。細胞溶解液での発現量は ほとんど変化ないにもかか わ らず 、 飢餓 刺激 を加 えた 場合 にMULと共 免疫 沈降 され たFIP200のタンパク質量が減 少 して い るこ とが 認め られ た。 これ によ ルオ ート ファ ジー 誘導 下ではMULとFIP200と の結 合親和性は減弱することが考えられた。

【 考察 】 今回の研究において、酵母ツ ーハイブリッド法によりMULと相互作用するタン パ ク 質 と してFIP200を同 定し た。MULのカ ル ボキ シル 基側 の292ア ミノ 酸 配列 をbait とし て用いたため、FIP200との結合部位はこの部位に含まれ ていると考えられる。スク リ ーニ ン グさ れたFIP200の 断片 化さ れたcDNAはカ ルボ キシ ル基 側の400アミノ酸の中 に集 中していた。細胞内での結合実験でもこのカルボキシル基側400アミノ酸配列の中に MULと の 結 合部 位が 含ま れて いる こと が判 明 した 。MULと の結 合が 確認 さ れたFIP200 は そのMULに よってポリユビキチン化され、プロテアソーム系を介 したタンパク質分解 を 受け た 。し たが って 、MULはFIP200に対 するE3ユ ビキ チン リガ ーゼとして機能する こ とが 示 唆された。FIP200は細胞内で さまざまな機能を有すると考えられており、MUL は その 制 御因 子と して 機能 する こと が考 えら れた 。今 回の 結果 から、MULとFIP200の 結合 は、飢餓状態でオートファジーを誘導するとその親和性が低下することが判明した。

こ の こ と か ら 通 常 状 態 で はMULに よ っ て 分 解 さ れ る こ と で 負 の 制 御 を 受 け て い る FIP200は 、 飢 餓 な ど の 刺 激 で そ の 親 和性 が 低下 しMULと 離れULK‑Atg13‑FIP200複 合 体を 形成することでオートファゴソーム形成を促進する方向に働くのではないかと推測さ れる 。アルツハイマー病でも、大脳皮質や海馬の変性した神経細胞内にオートファジー小 胞の 異常な蓄積が認められておりその病態にオートファジーの関与が示唆されている。ま た 、ア ル ツハイマー病患者の脳におい て、後頭葉でMULの発現量が 上昇していることも 報 告 さ れ てい る 。さ らに 、神 経芽 細胞 腫由 来のSH‑SY5Y細 胞系 でMULを ノ ック ダウ ン し たと こ ろ細 胞生 存性 が低 下す るこ とが 報告 され てい る。 以上 より、MULはFIP200を 介し てオートファジーを制御することで神経保護的に働いるのではないかと推測される。

【 結論 】 今回 、MULは オー トフ ァジ ー 関連 因子 のー っで あるFIP200を基質として認識 しポ リユビキチン化して分解することが判明した。さらに、その結合親和性がオートファ ジ ーを 誘 導したときに低下することが 判明した、以上より、MULが オートファジー機構 の制 御に関与する可能性があることが示唆された。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    田中伸哉 副 査    教 授    畠山鎮次 副査   教授   佐々木秀直

学 位 論 文 題 名

FIP200 結 合 性 E3 ユ ビ キ チ ン リ ガ ー ゼ MUL に よ る      オ ー ト フ ァ ジ ー 誘 制 御 の 可 能 性

  Mulibrey小人 症は胎 児期発症 の成長不 全を呈 する常染 色体劣 性遺伝疾患であり、MUL 遺伝子 の変異 によって 生じる 。MULタ ンパク 質はユビ キチンリ ガーゼとして自己ユビキ チン化能を有することが報告されているが、その細胞内機能はほとんど解明されていなぃ。

  今回 の研究に おいて、 酵母ツ ーハイブ リッド 法によっ てMUL結合タンパク質のスクリ ーニングを行いFocal adhesion kinase family interacting protein of 200 kDa  (FIP200) を同定 した。 最近、FIP200はオート ファジーの制御に関わることが報告されている。オ ー トフ ァ ジ ーは さ ま ざ まな 神 経 変性疾患 に関わ っており 、MULとFIP200の相互 作用を 解析することで病態の解明にっながると考えた。

  HEK293T細 胞 にMULとFIP200を 発 現さ せ 、 免疫 沈 降 法に よ っ て これ ら が 結合 す る こ とを 明らか にした。In vivoユ ビキチン 化アッ セイによ り、FIP200がMULによ ってポ リユビ キチン 化されることが明らかとなった。また、パルスチェイスアッセイによりMUL と の共 発現でFIP200の分解 が促進さ れること が判明 した。こ れらの ことより 、FIP200 がE3ユ ビ キチ ン リ ガ ーゼMULの 基 質である 可能性 が示唆さ れた。 さらに、 オートフ ァ ジーを 誘導さ せること により 、MULとFIP200の親和 性が低下 することを明らかにした。

し たが っ て 、栄 養 が 保 たれ た 状 態ではFIP200はMULに よルユビ キチン 化され分 解され ている のに対 し、飢餓 刺激が 入ると親 和性が 低下してULKl/2やAtg13との複合体形成が 促進されることでオートファゴソームが形成されることが推測された。これまでにアルツ ハイマー病において機能不全に陥ったオートファゴソームの異常な蓄積が変性した神経細 胞に認められている。以上より、アルツハイマー病の脳における異常亢進したオートファ ジ ーに 対 し て、MULがFIP200を 介して 抑制的 に働き神 経保護的 な機能 を有する 可能性 が示唆された。

  副査の佐々木秀直教授から、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に お い てMULやFIP200の 組 織 で の 発 現 につ い て 質問 が な され た 。 発表 者 は 、MULは 正 常組織では脳などの神経細胞や精巣、膵臓での発現が高いこと、アルツハイマー病患者の 脳でMULの発 現が高い 報告が あるがそ れ以外 の変性疾 患での報 告はまだなぃことを回答

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した。FIP200の発現に関する報告はまだ確認していない ことを回答した。ここで同教授 より 神経 変性 疾患 にお けるMULとFIP200の 病理 学的 検討 を行 うよう助言が あった。次 いで副査の畠山鎮次教授から、Mulibrey小人症において遺伝子変異の違いによる病態の差 異はみられるか、との質問があった。発表者は、変異の違いによる臨床症状の差は認めな いことを文献を引用して回答した。さらに細胞接着や細胞遊走への影響について検討して いるか質問がなされた。発表者は腫瘍に関連して細胞接着や細胞遊走などへの影響は今後 検討すべきであるとした上で、まず神経変性疾患に関わるオートファジーの関与を優先的 に検 討し たこ とを 回答 した 。ま た、MULの 変異 によ りFIP200を介して細胞 の移動など の機能障害が生じることがMulibrey小人症の病態と関係 する可能性にっいて検討するこ との助言を頂いた。さらにこの研究においてプロテアソームインヒビターが与える影響に ついてどのように推測されるかという質問がなされた。発表者は、プロテアソームインヒ ビタ ーに よりMULに よるFIP200の分解が阻害されるとオートファジー誘導が 促進され、

特にアルツハイマー病において異常に亢進したオートファジーを抑制することができずに 神経変性が進行することが推測されると回答した。最後に主査の田中伸哉教授から、自己 転写 活性 能を有するMULの欠損株を作製する際にどのように部位を選択した か、という 質問 があ った 。他 のTRIMフ ァミ リー タンパク質の報告からTRIMドメインに 転写活性能 があ るこ とが予想されたためアミノ末端からの 欠失部位を段階的に広げたtruncateを4 種作製しその最も短い断片で自己転写活性能が十分低下することを確認して、その後の実 験に用いたことを回答した。またスクリーニングで同定 されたタンパク質はFIP200だけ であ るか とい う質 問が なさ れた 。得 られた6つ の陽性クローンのうち4っがFIP200であ ったが、残りのうち1っはタ ンパク質をコードしておらず、もう1っは転写に関わるタン パク質であったためさらなる解析をしていないことを回答した。さらに、神経変性疾患で 組織 の免 疫染 色を 行っ た場 合、MULやFIP200が どの よう な発 現パターンを とることが 予想されるか質問がなされた。変性疾患においてオートファジーが異常に亢進した病変で MULやFIP200の 発 現 が 高 ま っ て い る こ と が 予 想 さ れ る こ と を 発 表 者 は 回 答 し た 。   この論文は、MULの細胞内 機能の解明への手がかりのーっとして高く評価され、FIP200 を 介 し た オ ー ト フ ァ ジ ー へ の 影 響 に っ い て 更 な る 発 展 が 期 待 さ れ る 。   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院過程における研鑽や取得単位なども 併せ申請者が博士(医学)の学位を取得するのに十分な 資格を有するものと判定した。

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