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医用ミニブ夕歯根膜由来細胞株の樹立とその特徴

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 和 田 悟 史

学 位 論 文 題 名

医用ミニブ夕歯根膜由来細胞株の樹立とその特徴 学位論文内容の要旨

【緒言】

  歯 根 膜 は,歯 と歯 槽骨 とい う2っの 硬組織 問に 位置 する 解剖 学上 靱帯 に分 類 され る線 維性 結合 組織で あり ,線 維芽 細胞 様細 胞, セメ ント芽細胞や骨芽細胞 およ びそ れら に分 化しう る未 分化 間葉 系細 胞等 をは じめ 血管ならびに神経由来 の細 胞を 含むheterogeneousな細胞集団から成る.これらのなかで,線維芽細胞 様 細 胞 は 他の 結 合 組 織 の 線 維 芽 細 胞 と は異 なり ,ア ルカ リフ オス ファ ター ゼ (ALP), オ ス テ オ ポ ン チ ン(OPN),Runx2等 の 骨 芽 細 胞 が 発 現 す る 遺 伝 子を 発 現す る. 歯根 膜組 織は, 骨組 織と 異栓 り基 質の 石灰 化は 起こさない組織である が, その 機構 の詳 細は明 らか では ない .そ こで ,歯 根膜 細胞の機能を明らかに する ため に, 歯根 膜組織 の特 性を 反映 した クロ ーン 化し た細胞株を樹立し,こ の細胞株を用いた研究が必要であると考えた.

  近年,TERT (telomere reverse transcrpt鷂e)を利用して細胞の不死化を試みて,

良好 な結 果を 得ら れてい る報 告が ある .TERT遺 伝子 産物 はテロメラーゼの活性 を高 め, 細胞 の分 裂回数 を規 定す るテ ロメ ア領 域の 長さ を維持し,細胞の分裂 回数 の制 限を なく すこと によ り不 死化 へと 導く .ま た, このTERT による細胞 の 不 死 化 は , 細 胞 分 化 や 増 殖 に 与 え る 影 響 が 少 な い と 考 え ら れ て い る ,   本 研 究 は,ク ラウ ン系 ミニ ブタ より 歯根 膜由 来細 胞を 分離 培養 し,ヒ ト1ER 遺伝子(bTERT)を導入したstabletr孤s賦talltを作製し,歯根膜由来細胞株の樹 立を 行う こと ,お よび, 複数 の細 胞株 聞で それ らの 性質 を比較検討することを 目的とした・

【材料と方法】

  雄28ケ 月齢 のク ラウ ン系 医用 ミニ ブタ (ジ ャパン ファ ーム,鹿児島)の下顎 より 前臼 歯を 抜去 し,Somermanらの 方法 に準 じ,歯 根中 央部周囲に付着した歯 根膜組織を剥離し,10%ウシ胎仔血清および1 ng/mlヒト組換えFibroblast growth 鰍or一2を 含 むMEM培 地 で37℃ ,5%C02存 在下 にて 培養 を行 い, 分離増 殖し た 細 胞 を 歯 根 膜 由 来 細 胞 とし た . 分 離 増 殖 した 歯根 膜由 来細 胞を3回継 代後 ,I 型コ ラー ゲン コ― トし たデ ィッシュに細胞を1X106個/diShで播種し,コンフル エントに近い状態になったところでヒトTEI汀発現プラスミド(pCI・neohTERT) を・リン酸カノレシウム法によルトランスフェクトした.トランスフェクト1週間 後 , ア ミ ノ グ リ コ シ ド 系抗 生 物 質 で あ るG418によ ルト ラン スフ ェクタ ント の 選別 を行 った .10日後 ,G418耐 性ク ロー ン細 胞がコ ンフ ルエントに近い状態に なっ たと ころ で, 限界 希釈 法を 用い て細 胞の クロー ニン グを行った.得られた

(2)

27種 類の ク ロ ー ン 化 さ れ た 細 胞 株 をTeSPDL (Telomerase Swine Periodontal Ligament) 1‑32と 名 付 け た . そ れ ら の 中 か ら 比 較 的 増 殖 傾 向 の 高 い3種 (TeSPDL23,31な ら び に32)の 細 胞 を 選 択 し ,BrdUの 取 り 込 み に よ る 細 胞 増 殖活性,Reverse tr.anscriptase‑polymerase chain reaction法によるmRNA発現,ALP 活性 およ ぴアリ ザリ ンレ ッド 染色 によ る細 胞間 基質 石灰化能について調べた.

【 結果 】

  TeSPDL23,31,お よび32細 胞の 形態 を位相 差顕 微鏡 により観察したところ,

す べて の細 胞が 線維 芽細 胞様 の形 態を 示して いた ‐ま た,各TeSPDL細胞の細胞 増 殖活 性に つい て調 べた とこ ろ,TeSPDL23細 胞が 最も 高く,次いでTeSPDL32, TeSPDL31細 胞 の 順 で あ っ た . 各TeSPDL細胞 のal(I)collagen,OPN, オス テオ カ ル シ ン(OCN)お よびRunx2のmRNA発現は ,TeSPDL23細 胞で はal(I)collagen, OPN,OCN韜 よ びRunx2の い ず れ も が 発 現 し て い た . 一方 ,TeSPDL31細 胞 は al(Dcollagenが 発 現 し て い た が ,OPN,OCNお よ びRunx2のmRNAの 発 現 は 検 出 さ れ なか った ,ま た,TeSPDL32細胞はal(I)collagenお よびOPNの 発現 が認 め ら れ た が ,Runx2とOCNの 発 現 は 認 め ら れ な か っ た .TeSPDL23細 胞 は , 培 養1週 お よ び2週 後 に お け るALP活 性 が 調 べ た 各TeSPDL細 胞 の う ち 最 も 高 か っ た .TeSPDL31細 胞 は , 培 養1週 お よ び2週 後 に お け るALP活 性 が 各TeSPDL 細 胞 の う ち 最 も 弱 く ,TeSPDL32細 胞 はTeSPDL31とTeSPDL23細 胞 の 中 間 の 活 性 を 示 し て い た , 最 もALP活 性 が 高 か っ たTeSPDL23細 胞 と マ ウ ス線 維芽 細胞 NIH3T3お よ び マ ウ ス 骨 芽 細 胞 様 細 胞MC3T3‑E1のALP活性 を 比 較 検 討 し た と こ ろ ,TeSPDL23細 胞 はMC3T3‑E1細 胞 と 同 程 度 の 高いALP活 性 を 示し てい た.

こ のTeSPDL23細 胞 と ,NIH3T3お よ びMC3T3‑E1の 細 胞 間基 質 石 灰 化 能 カ を ア リ ザリ ンレ ッド 染色 によ り調 べた とこ ろ,MC3T3‑E1細 胞では明らかに石灰化形 成 物が 認め られ たが ,TeSPDL23細 胞で はアリ ザリ ンレ ッド染色により染色され ず 石灰 化は 認め られ なか った ,

【考 察】

  調 べ た3種 類 のTeSPDL細 胞 の う ち で 増 殖 活 性 の 高 いTeSPDL23細 胞 は , al(I)collagen,OPN,OCNお よ びRunx2の い ず れ のmRNA発 現 が 顕 著 に 認 め ら れ , ま た,MC3T3‑E1細 胞 と 同 程 度 の 高 いALP活 性 を 示 し た が , 細 胞問 基質 石 灰化 能カ は有 さなか った .こ れら から ,TeSPDL23細 胞は歯根膜細胞の性質を有 し て い ると 考 え ら れ た . ま た ,mRNA発現 の細 胞株 間に よる 違い から, 歯根 膜 に存 在す る線 維芽細 胞様 細胞に多様なsubpopulationが存在している可能性が考 えら れた ・

【 結論 】

  本 研 究に おいて ,ク ラウ ン系 ミニ ブタ の歯 根膜 組織 よりhTERT遺伝 子導 入に よ っ て27種 の 細 胞 株 を 得 た . 調 べ た3種 類 のTeSPDL細 胞 は , 増 殖 活 性 , al(I)collagen,OPN,OCNな ら び にRunx2のmRNA発 現 に 違 い が 見 ら れ た . 本 研 究で 得ら れた 歯根膜 由来細胞株は,歯根膜に存在する多様なsubpopulationの 細 胞を 反映 して いる可 能性 が示 唆さ れ, 今後 の歯 根膜の機能の解明に有用であ る と考 えら れた .

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

医用ミニブ夕歯根膜由来細胞株の樹立とその特徴

審査は審 査員全 員出席の 下で行った。まず申請者に提出論文要旨の説明を求め、その後 に提出論文と関連分野に関する口頭試問の形式で審査した。まず申請者から以下の説明が なされた。

  歯 根膜は ,歯と歯槽骨という2つの硬組織問に位置する解剖学上靱帯に分類される線維 性結合組織であり,線維芽細胞様細胞,セメント芽細胞や骨芽細胞およぴそれらに分化し う る未分 化間葉系細胞等をはじめ血管ならぴに神経由来の細胞を含むheterogeneousな細 胞集団から成る‐これらのなかで,線維芽細胞様細胞は他の結合組織の線維芽細胞とは異 な り,ア ルカリフ ォスファ ターゼ(ALP),オ ステオ ポンチン(OPN),Runx2等の骨芽細胞 が発現する遺伝子を発現する.歯根膜組織は,骨組織と異なり基質の石灰化は起こさない 組織であるが,その機構の詳細は明らかではない.そこで,歯根膜細胞の機能を明らかに するために,歯根膜組織の特性を反映したクローン化した細胞株を樹立し,この細胞株を 用いた研究が必要であると考えた,

  近 年,TERT (telomere reverse transcriptase)を利用して細胞の不死化を試みて良好 な結果を得られている報告がある.TERT遺伝子産物はテロメラーゼの活性を高め,細胞の 分裂回数を規定するテロメア領域の長さを維持し,細胞の分裂回数の制限をなくすことに より不死化へと導く.

  本研究 は,ク ラウン系 ミニプ タより歯 根膜由 来細胞を 分離培養 し,ヒ トTERT遺伝 子 (hTERT)を導入したstable transfectantを作製し,歯根膜由来細胞株の樹立を行うこと,

お よ ぴ , 複 数 の 細 胞 株 間 で そ れ ら の 性 質 を 比 較 検 討 す る こ と を 目 的 と し た ,

【 材料と 方法1ミニブタの下顎より前臼歯を抜去し,Somermanらの方法により歯根膜組織 を 採取し 培養した.この初代培養細胞にヒトTERT遺伝子発現プラスミド(pCI―neohTERT) を導入し強制発現させ,テロメラーゼ活性を高めて不死化させ,クローン化した.これら の細胞株問の各種遺伝子発現等の特徴を調べた.

【結果l TeSPDL23,31,および32細胞の形態を位相差顕微鏡により観察したところ.すべ ての細胞が線維芽細胞様の形態を示していた.また,各TeSPDL細胞の細胞増殖活性につい て調ぺたところ,TeSPDL23細胞が最も高く,次いでTeSPDL32,TeSPDL31細胞の順であった.

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郎 人

明 明

順 正

授 授

授 授

   

   

(4)

各細 胞 のB 1(I)collagen,OPN,オス テオカル シン(OCN)およぴRunx2のmRNA発現は,

TeSPDL23細胞で はal(I)collagen,OPN,OCNおよ ぴRunx2の いずれ もが発現していた.

一方,TeSPDL31細胞はal(I)collagenが発現 してい たが,OPN,OCNおよびRunx2のmRNA の発現は 検出さ れなかっ た.また ,TeSPDL32細胞 はal(I)collagenおよぴOPNの発現が 認められ たが,Runx2とOCNの発 現は認め られなか った.TeSPDL23細胞は,培養1週およ ぴ2週 後におけ るALP活性が調 べた各 細胞のう ち最も 高かった .TeSPDL31細胞は,培養1 週お よ ぴ2週 後におけ るAIP活性が各 細胞の うち最も 弱く,TeSPDL32細胞はTeSPDL31と TeSPDL23細胞の 中間の活性を示していた.最もALP活性が高かったTeSPDL23細胞とマウス 線維芽細 胞NIH3T3およ ぴマウス 骨芽細 胞様細胞MC3T3‑‑E1のALP活性を比較検討したとこ ろ,TeSPDL23細 胞はNIC3T3‑El細胞と 同程度の高いALP活性を示していた.このTeSPDL23 細胞と,NIH3T3およびVC3T3−Elの細胞聞基質石灰化能カをアリザリンレッド染色により調 べたところ,MC3T3一El細胞では明らかに石灰化形成物が認められたが,TeSPDL23細胞では ア リ ザ リ ン レ ッ ド 染 色 に よ り 染 色 さ れ ず 石 灰 化 は 認 め ら れ な か っ た .

【 考 察 】 調 べ た3種 類 のTeSPDL細 胞 の う ち で 増 殖 活 性 の 高 いTeSPDL23細 胞 は , al(I)collagen,OPN,OCNおよびRunx2のす べてのmRNA発現が 顕著に認められ,また,

MC3T3―El細胞と同程度の高いALP活性を示したが,細胞聞基質石灰化能カは有さなかった.

これらから,TeSPDL23細胞は歯根膜細胞の性質を有していると考えられた.また,mRNA発 現の細胞株間による違いから,歯根膜に存在する線維芽細胞様細胞に多様なsubpopulation が存在している可能性が考えられた.

【結論】 本研究 において,クラウン系ミニブタの歯根膜組織よりhTERT遺伝子導入によっ て27種の細 胞株を 得た.調 べた3種類のTeSPDL細胞は ,増殖活 性,骨 関連遺伝子の発現 に違 い が 見られ た.本 研究で得 られた歯 根膜由 来細胞株 は,歯 根膜に存 在する 多様な subpopulationの細胞を反映している可能性が示唆され,今後の歯根膜の機能の解明に有用 であると考えられた.

以上の説明の後に以下の試問をした。

1.ミニプタを用いた根拠について 2‑歯根膜細胞の採取法について

3. 石 灰 化 す る か 否 か の 違 い が 生 じ る 機 構 に つ い て 4.考えられる歯根膜の常態について

3.樹立した細胞株をもちいた今後の研究の展開について

  本研究は,医用ミニブタの歯根膜細胞から多数の歯根膜由来細胞株を樹立し,そのうち の3つの細胞株を選択してその性質を検討したところ,異なる性質を有することを明らか にしたものである.この成果は,これまで単一の性質を持っと考えられていた歯根膜細胞 の中に,さまざまな性質を持っものが存在していることを明らかにしたという点において,

今後,新たな観点から歯根膜の研究が展開される可能性を見出した画期的な発見であると 評価できる.またそれぞれの性質を持つ株化された細胞を得ていることは,その研究の発 展に寄与するところは大きく,今後の歯科医学の発展に多大な貢献をしたものと高く評価 できる.加えて、試問の結果から、申請者は本研究に直接関係する事項のみならず、関連 分野における基礎的、臨床的な広い学識を有していると認められた。よって、申・請者は博 士(歯学)の学位を授与される資格を有するものと認めた。

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参照

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