知っておきたい身近な目の
症状とその原因
鹿児島厚生連病院 眼科
田中最高
よしたか本日の内容
• 眼の仕組みと役割
• 眼の様々な症状
この症状ってなんですか?
「目が痛い」 「目が赤い」 「涙や目ヤニが出る」 「見えにくくなった」 「歪んで見える」 「特に症状はないが・・・」
本日の内容
ドライアイ 角膜炎 結膜炎 翼状片 結膜下出血 涙道閉塞 結膜弛緩症 白内障 加齢黄斑変性 緑内障 糖尿病網膜症本日取り上げる病気
• 症状の原因と病気
特に頻度の 多い病気眼と視覚
眼とは?
• 小さくて繊細な臓器。 • 透明な成分を含む。 → 体内が見える。 • 容姿・コミュニケーション にも影響する。視覚とは?
• 外界からの情報の80%以上を視覚に頼っている。 • 視覚は視力・視野・色覚の3つの要素を持つ。 • 視覚の障害=日常生活の障害 → 安全確保、社会的援助が必要になる。 83% 11% 3.50% 1.50% 1% 知覚機能の割合 視覚 聴覚 嗅覚 味覚 触覚 『産業教育機器システム便覧』眼の構造
(レンズ) (フィルム) (レンズ) (フィルム) (網膜の中心) (ゼリー状)
眼の構造
Santen Pharmaceutical Co.,Ltd
カメラに例えると・・・
レンズ → 角膜、水晶体 フィルム → 網膜
眼の構造(眼底)
正常眼底写真 黄斑 視神経乳頭 黄斑: しっかり物を見る 一番敏感な部分 視神経乳頭: 脳につながる神経 が集まる部分
眼の症状
「目が痛いんです」
「目が赤いんです」
「涙や目ヤニが出ます」
「見えにくくなりました」
「歪んで見えます」
「特に症状はないんですが・・・」
・目は顔の目立つ位置にあるので異常に気付きやすい。
・見え方が変わると症状ですぐにわかる。
でも症状のないうちに病気が進むことも・・・
「目が痛いんです」
痛みと言ってもさまざま ① ごろごろする(異物感) ⇒ 多くは眼の表面や瞼の裏の問題 例:角結膜の異物、結膜炎、ドライアイ 等 ② しみるように痛い ⇒ 主に角膜の異常 例:ドライアイ、角膜炎 等 ③ 頭痛を伴うような眼痛 ⇒ 重篤な場合が多い 例:角膜炎、急性緑内障発作 等 ④ 眼を動かすと痛い ⇒ 眼球周囲の問題など 例:眼窩筋炎、視神経炎 等 色々な原因が考えられるし、痛いのは辛いので 早めに受診しましょう…ドライアイ
角膜が乾燥し、見えにくくなったり傷がつく。 800~2000万人!とも言われている。 適度な休憩や空調の調整で改善することも。 ひどい場合は点眼薬や涙をせき止める手術も行う。 角膜 広範囲に角膜びらん 下方の角膜びらん 軽症例 特殊な染色液で涙や角膜の傷を映した写真角膜炎
角膜に感染を起こした状態。 細菌の種類や程度によっては、 急速に失明することもある危険な病気。 感染を起こした部分が 溶けて白くなっている 細菌性角膜炎 ウイルス性角膜炎 感染部分 特殊な染色で緑色に映る 角膜「目が赤いんです」
大きく分けると ① 充血 : 結膜やその下の強膜の血管の拡張 原因・・・感染症(結膜炎等)・外部からの刺激・ 翼状片・その他色々 ② 結膜下出血 : 血管が破れて出血した状態 原因・・・血圧・加齢 外部からの刺激等 瞼の裏の充血 翼状片による充血※流行性角結膜炎(はやり目) アデノウイルスによる結膜炎。充血や痛み、かゆみを起こす。 通常、自然治癒することが多いが、感染力が強いため、しばしば流行する。
結膜炎
結膜 結膜に炎症を起こした状態。 ① 細菌性結膜炎 ⇒ 細菌の感染によるもの ② ウイルス性結膜炎 ⇒ ウイルスの感染によるもの ③ アレルギー性結膜炎 ⇒ 色々な抗原に反応して 炎症を起こした状態翼状片
結膜下の組織が角膜に向かって せり出してきたもの。 視力の低下を招くようなら手術を行う。 しかし、再発することがあったり、進行していると 混濁が残る等、注意が必要。 手術直後 手術前 手術後 縫合糸 角膜の混濁が残っている結膜下出血
結膜下の血管が破れ出血を起こしたもの。
通常は見た目以外に痛みやかゆみなどの症状はない。 治療は特に必要なく自然に吸収されるのを待つ。
「涙や目ヤニがでます」
• 涙がでる 原因① 涙が刺激で過剰に出ている場合 角結膜炎やドライアイ 等 原因② 涙がうまく鼻腔に流れていかない場合 涙道閉塞や結膜弛緩 等 • 目ヤニがでる 原因① 感染によるもの 角膜炎や結膜炎 等 原因② 感染以外の炎症反応によるもの アレルギー性結膜炎やぶどう膜炎 等 原因③ 表面の物理的な刺激によるもの ドライアイや結膜弛緩 等涙道閉塞
鼻腔につながる涙道(涙小管や鼻涙管)がつまることによって 涙がたまりやすくなる。 涙嚢炎などの原因にもなる。 治療はチューブ留置や手術など。 正常な涙の動き 涙道チューブが留置された状態結膜弛緩症
結膜のしわができることによって涙道に涙が流れにくくなる。 そのため異物感や流涙の原因となるため、 症状が強い場合は手術を行う。 手術後 手術前 手術直後「見えにくくなりました」
原因は実に様々 眼球のどの部分が悪くても見えにくくなりうる。 さらには脳の影響で見えにくくなることも。 代表疾患:屈折異常(近視・遠視・乱視) 白内障、加齢黄斑変性 血管閉塞症 等々 治療の対象として最も多いのは、白内障 ⇒ 7割以上の人がかかると言われている。白内障(水晶体の加齢変化)
白内障の進行にともない 眼底写真が不鮮明になる。
白内障(細隙灯所見)
核性白内障
水晶体嚢下混濁 成熟白内障
白内障(手術)
前嚢切開(CCC) 終了時 超音波乳化吸引 眼内レンズ挿入①
②
③
④
白内障(眼内レンズ)
白内障(術前と術後)
手術前 手術後
手術後は水晶体の混濁がとれているので、
「歪んでみえます」
歪んでみえるのは多くが網膜中心部(黄斑)の異常 • 網膜の中心に穴が開く → 黄斑円孔 • 網膜の中央部分に膜が張る → 網膜前膜 • 網膜の中央部分に出血や炎症をおこす → 加齢黄斑変性黄斑 正常 異常例 http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000194.html
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性(浸出型)
新生血管 光干渉断層計 脈絡膜から異常な新生血管が伸び、出血や 浮腫を起こす疾患。 高齢者の増加や食生活の欧米化に伴い、 本邦でも患者数が増加しているといわれる。 正常例加齢黄斑変性の予兆?
Copyright:NHK ドルーゼン ある程度の大きさ以上のドルーゼンは 加齢黄斑変性の前駆症状とされる。 禁煙や緑黄色野菜が予防に有効。 予備軍は1200万人?!抗VEGF薬
VEGF(vascular endothelial growth factor)
血管内皮増殖因子であり糖尿病等の原因により虚血状態に なった網膜から活発に生成される。その血管透過性亢進作用 により黄斑浮腫を生じたり、新生血管形成作用にて増殖膜を 形成する原因となる。 Bevacizumab (アバスチン) Pegaptanib (マクジェン) Ranibizumab (ルセンティス) Aflibercept (アイリーア) 認可 2007年4月 (結腸・直腸癌に 対して) 2008年7月 2009年1月 2012年11月 加齢黄斑変性の治療薬として登場 糖尿病網膜症では一時的な新生血管の退縮や黄 斑浮腫の改善効果が報告されている
(Diabetic Retinopathy Clinical Research network:Ophthalmology 2011)
硝子体注射にて投与を行う
現在は糖尿病黄斑症や網膜静脈閉塞症への使用 にも認可されている
抗VEGF薬
投与中止後の再燃に注意が必要 注射の薬剤費が高い 慢性化してしまうと回復は困難 投与前 1か月後 硝子体注射 加齢黄斑変性症例加齢黄斑変性の臨床研究
理化学研究所 http://www.riken.jp/pr/topics/2013/20130730_1/ 加齢黄斑変性に対してiPS細胞を用いた臨床研究が進行中
「特に症状はないんですが」
症状がなくてもこっそり進行する病気が… 代表例 • 緑内障 • 糖尿病網膜症 視覚障害原因の 1位と2位は症状が 出にくい病気! 健診などで早期発見を。 平成19年~21年の認定患者調査 (厚生労働省調査研究班) 視覚障害の原因(18歳以上4852名対象) 緑内障 21.0% 糖尿病網膜症 15.6% 網膜色素変性 12.0% 黄斑変性 9.5% 網膜脈絡膜萎縮 8.4%3.6 0.6 0.5 0.3 日本人の 緑内障の内訳(%) 正常眼圧緑内障 原発閉塞隅角緑内障 続発緑内障 原発開放隅角緑内障
○ 定義
視神経の異常
特徴的な視野の狭窄
○ 眼圧を十分に下げることで
視神経障害の改善あるいは
進行を防止できる
可能性のある病気
○ 40歳以上の
緑内障患者は
推定5.0%
緑内障
日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査緑内障
視神経 乳頭 視神経の萎縮に伴い、 視神経乳頭陥凹が拡大し、 深くなっている。初期緑内障の眼底所見
網膜神経線維層欠損 視神経乳頭縁出血
視野検査
緑内障の治療
現在、緑内障のほぼ唯一の治療は、眼圧を下げること。 薬物治療 点眼薬 内服薬 点滴 等 レーザー治療 レーザー虹彩切開術 レーザー虹彩形成術 等 手術 隅角癒着解離術 線維柱帯切除術・切開術 等 病気の進行を遅らせるのみで、 障害された視神経は、回復しない →早期発見・早期治療が重要糖尿病網膜症
3大合併症
糖尿病網膜症
最多は白内障だが、 治療が困難であり最も注意すべきは網膜症 糖尿病眼合併症の頻度 白内障 66.7% 網膜症 37.0% 角膜症 17.0% 屈折・調節異常 6.2% 緑内障 1.9% 血管新生緑内障 1.0% ぶどう膜炎 0.8% 外眼筋麻痺 0.2% ※1993年東京女子医大糖尿病センター統計によるSanten Pharmaceutical Co.,Ltd
糖尿病網膜症の眼底所見
軟性白斑
硬性白斑
中等非増殖糖尿病網膜症
糖尿病網膜症の眼底所見
増殖膜
新生血管
硝子体出血を伴う 増殖糖尿病網膜症
糖尿病網膜症(黄斑浮腫)の眼底所見
OCT画像 毛細血管瘤や網膜内血管からの血漿成分の 漏出によっておこる 硬性白斑はそれに伴うリポ蛋白の沈着 正常例糖尿病網膜症の治療
血糖コントロール 網膜光凝固(汎網膜光凝固と局所凝固) 硝子体手術 点眼・内服薬 糖尿病黄斑浮腫に関しては下記も合わせて用いられる ステロイドテノン嚢下注射 ステロイド硝子体投与(注射、徐放性剤) 抗VEGF薬硝子体注射網膜光凝固術
網膜症では新生血管の退縮と予防
硝子体手術
手術前:視力=0.01
手術後:視力=0.6
硝子体出血・網膜剥離