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第 1 回バイオメトリクス研究会 ( 早稲田大学 ) THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS Proceedings of Biometrics Workshop,169

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(1)

社団法人 電子情報通信学会

THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,

INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS

バイオメトリクス研究会資料

Proceedings of Biometrics Workshop

線形予測残差を用いた音声合成法に基づくウルフ攻撃に関する検討

祥平

大木

哲史

††

小松

尚久

甲藤

二郎

早稲田大学理工学術院,169-8555 東京都新宿区大久保 3-4-1

††

早稲田大学理工学研究所,169-8555 東京都新宿区大久保 3-4-1

E-mail:

s [email protected],

††

[email protected]

あらまし 本稿では,話者照合システムに対してウルフ攻撃を可能とする音声の作成手法を提案する.アルゴリズム

特有の脆弱性を利用したウルフ攻撃では,照合アルゴリズムへの依存性から自然な生体情報の作成が困難な場合があ

る.そこで,詐称者の音声から抽出した線形予測係数と線形予測残差およびウルフテンプレートを用いたウルフ音声

合成手法を提案し,照合アルゴリズムに依存しないウルフ攻撃が可能であることを示す.

キーワード 話者照合システム,ウルフ攻撃,音声合成

Wolf attack based on speech synthesis using LP-residual signal

Shohei HAYASHI

, Tetsushi OHKI

††

, Naohisa KOMATSU

, and Jiro KATTO

Faculty of Science and Engineering, Waseda University, 3-4-1 Okubo, Shinjuku-ku, Tokyo 169-8555, Japan

††

Faculty of Science and Engineering, Waseda University, 3-4-1 Okubo, Shinjuku-ku, Tokyo 169-8555, Japan

E-mail:

s [email protected],

††

[email protected]

Abstract

In this paper, we suggest a method of creation of voice that allows the Wolf attack against speaker

recognition system. The Wolf attacks using the vulnerability of specific algorithms may be difficult to create a

natural biological information because of the matching algorithm dependency. Therefore, we propose the linear

pre-dictive coding and LP-residual signal which extracted from voice of swindler and a method of Wolf speech synthesis

using the Wolf template and indicate the possibility of Wolf attack that does not depend on the matching algorithm.

Key words

speaker recognition system, Wolf attack, speech synthesis

1.

は じ め に

近年,ユーザライクで安全性の高い本人確認手段として生体 認証システムの実用化が進みつつある.しかし,生体認証シス テムは既存のパスワードやICカードによる個人認証システム と共通な脆弱性に加え,特有の脆弱性も含んでいる.そのため, 脆弱性に対する対策を行うことでより安全性の高い生体認証シ ステムが望まれている.中でも,「第三者によるなりすまし攻撃」 は生体認証システムにおいても代表的な脅威の一つであり,こ の攻撃に対する耐性の評価尺度として,FAR(False Acceptance Rate)が用いられるのが一般的である.しかし,FARは他人 を誤って本人として受け入れてしまう確率で,様々な環境やシ ステムのアルゴリズムに関する知識を持った攻撃者が,攻撃に 適した生体情報を生成し入力するような場合には耐性の評価が 出来ない.宇根らは,このような状況を想定し,FARに代わ るWAP(Wolf Attack Probability)と呼ばれる評価尺度を提案 している[1].ウルフ攻撃とは複数のテンプレートに対して誤 一致を引き起こすような入力情報(ウルフ)によるなりすまし である.ウルフ攻撃は多くのテンプレートと一致してしまう可 能性があるため,大きな被害が想定される.本稿では,話者照 合システムにおけるウルフ攻撃についての検討を行う.音声を 使った生体認証である話者照合システムは,指紋や静脈,虹彩 といった生体情報を用いた生体認証システムのように直接セン サに触れずに照合が可能であり,利用者の負担が少ないため今 後より広く使われると考えられる.また,話者照合システムに 対するウルフ攻撃の既存研究として[4]があるが,実際の攻撃 では回避することの出来ないセンサへの入力が考慮されていな い形での検討が行われている.そこで,本稿では線形予測残差 を用いた音声合成法に基づいて,電子データではない実際のウ ルフサンプル(ウルフ音声)を作成する手法を提案する.さら に,一般的な話者照合方式を想定し,ウルフ音声を用いた話者 照合実験を行うことで,提案手法の有効性を確認する. BioX2012-14

(2)

2.

従 来 研 究

i ) ウルフ攻撃 ウルフ攻撃の従来研究では,指紋認証や虹彩認証を対象とし た生体認証システムの照合アルゴリズム特有の脆弱性に着目す ることで,高いWAPを示すウルフの存在を明らかにしている ものが多い[2] [3].しかし,作成されたウルフはアルゴリズム に誤認識させることのみを目的としているため,殆どの場合は 生体検知や人による判断を行うことで対策が可能である.生体 認証システムへの攻撃として最も脅威となるのは,システムの アルゴリズムに対する知識がなくとも,生体検知や人による監 視を欺けるような生体サンプルを提示できる攻撃である.そこ で,本稿では照合アルゴリズムに依存せず,人による監視を欺 き,なおかつ高いWAPを示すウルフ攻撃が可能であることを 示す. ii ) ウルフ攻撃確率 従来のなりすまし攻撃に対する耐性の評価にはFAR(False Acceptance Rate)が用いられてきた.しかし,FARでは一致 と誤判定される確率の平均値を計算するため,サンプルの中 にウルフが含まれていても全体の中の一部でしかなく,ウル フ攻撃自体に対するシステムの脆弱性が表面化し辛い.宇根 らによって定義されたWAP [1]は,一致と誤判定されるテン プレート数が最大となる際の誤認識率を計算することで,ウ ルフ攻撃に対する耐性を評価している.生体情報の集合をS とし,システムに入力する情報をs,システムに登録されて いるテンプレートの集合をT,照合対象となるテンプレート をtとし,stを与えた時にシステムが出力する判定結果を

match(s, t)∈ {accept, reject}とする.このときWAPは以下 のように定義される.

W AP = max

s∈S Avet∈T P r[match(s, t) = accept] (1)

P r[match(s, t) = accept]stが一致と誤判定される確率 であり,Ave t∈T Xtを変化させたときのXの平均値を,maxs∈S X ではsを変化させたときのXの最大値を表している.

3.

話者照合システムにおけるウルフ攻撃

話者照合システムでは音声入力方式として,音声の特徴量の みで照合するテキスト独立型,登録時と照合時に同じ音声を発 話する必要のあるテキスト依存型,照合時はその都度システム により提示されるキーワードを発話する必要のあるテキスト提 示型の三種類がある.テキスト依存型・独立型では予めレコー ダー等を用いて登録ユーザの発話音声を録音しておくことで簡 単になりすましが行える.しかし,テキスト提示型では照合の 度に発話すべき内容が変更されるためレコーダを用いたなりす ましは困難である.本稿ではこの音声入力方式に依存しないウ ルフ攻撃を提案したい.そこで,本節では,テキスト提示型を 想定したウルフ攻撃手法を提案することで,全ての音声入力方 式に対応可能なウルフ攻撃を提案する. 3. 1 話者照合システムへのウルフ攻撃手法と概要 一般的なテキスト提示型話者照合システムに対してウルフ攻 撃を行う場合,照合の度に発話するべき内容が異なってくるた め,事前に攻撃用の生体サンプル(ウルフ音声)を用意してお くことは困難である.そこで,システム側からテキストが提示 された際に詐称者自身がテキストを発話し,その音声に含まれ る詐称者の生体特徴だけを多人数に共通な情報へ変換すること が出来ればウルフ攻撃が行えると考えた.詐称者の生体特徴を 高いWAPが期待できるような多人数に共通な情報に変換する にあたり,伊藤らの手法[4]で提案されたウルフテンプレート に基づく手法を用いる.ウルフテンプレートとは,予め多人数 の音声データベースから多人数に共通な生体特徴を学習し,保 存しておくテンプレートのことである.以上を踏まえて図1に このウルフ攻撃手法の概要を示し,手法の提案を行う. ઀ંऔोञॸय़५ॺ॑ ༯ู঻ऋ৅ਵ ৅ਵखञఠଢऊै ে৬৓્ඉ୤॑ྴল ્ඉ୤॑क़ঝইॸথউঞش ॺ॑৷ःथ૗ఌ ૗ఌखञ્ඉ୤॑৷ःथ ఠଢ়ਛ॑ষअऒधद क़ঝইఠଢ॑੿ਛ ස় 2. 1* ५ॱشॺ వொਛ඘ వொଷ૷ 図 1 テキスト提示型話者照合システムにおけるウルフ攻撃のフロー チャート 1. 攻撃対象の話者照合システムが提示したテキストを詐称者 が発話する. 2. 詐称者が発話した音声から生体特徴を抽出する. 3. 抽出した生体特徴を予め用意しておいたウルフテンプレー トを用いて変換をする. 4. 変換した生体特徴を用いて音声合成を行うことで,話者照 合システムへ提示可能な音声情報(ウルフ音声)を作成する.

(3)

3. 2 ウルフ音声作成における音声合成法 実環境の生体認証システムを想定したウルフ攻撃を行う場合, 作成した生体特徴を反映した生体サンプルを作成し,センサへ 入力する必要がある.そのため,図1で提案したように話者照 合システムでは生体特徴を音声情報に変換してからでなければ 攻撃が成立しない.そこで,本稿では線形予測残差に基づく音 声合成手法を用いてウルフ音声の作成を行う.このウルフ音声 の作成概要を図2に示す.すでに説明したように,予めウルフ ੗যਯभ৾ಆ৷ఠଢ ્ඉ୤ྴল ق/3&બਯ ك ॡছ५ॱজথॢ क़ঝইॸথউঞشॺ ༯ู঻भఠଢ ્ඉ୤ྴল /3&બਯ ଍஄੒೾ଋ୷ਦಀ क़ঝইఠଢ ૗ఌ ఠଢ়ਛ 図 2 ウルフ音声作成手順のフローチャート テンプレートを作成する.また,音声は明確に分類可能な性別 や年齢などの特徴が存在する.そのため,男性や女性など共通 な特徴を持った人同士の生体特徴は似かよった部分があると想 定できる.そこで,本稿では男性に共通な情報を持ったウルフ テンプレートや女性に共通な情報を持ったウルフテンプレート などのように,特徴ごとに分類したウルフテンプレートをいく つか作成する.実際に攻撃を行う際は,この作成されたウルフ テンプレートを用いてウルフ音声の作成を行う.以下にその詳 細について述べる. a ) ウルフテンプレート作成 ウルフ音声の作成にあたり,詐称者の音声情報に含まれる生 体特徴を変換するためのウルフテンプレートを作成する.本稿 では,多人数の音声をLBG+splittingアルゴリズム[5]で,指 定した個数の代表ベクトルへクラスタリングすることでウルフ テンプレートを作成した.また,ウルフテンプレート作成に用 いる音声特徴量として線形予測係数:LPC(Linear Predictive Coding)を用いている.ウルフテンプレートは上述したように 複数作成する.今回は最も違いが現れやすいと考えられる性別 を分類対象の特徴として,男性ウルフテンプレート,女性ウル フテンプレート,そして男女分けを行わない共通テンプレート の3つを作成する.実験では男女各10人の音声データそれぞ れ30秒を用いて,256クラスのLPC係数からなるウルフテン プレートを作成し使用した. b ) 音 声 合 成 詐称者の音声データとウルフテンプレートを用いてウルフ音 声を作成する.前述の通り,本提案ではシステムの照合アルゴ リズムに依存せずに攻撃が可能なウルフ音声の作成を行うため に,生体特徴のみをウルフテンプレートを用いて変換する.ま た,音声入力方式としてテキスト提示型を想定しているため, 元の音声が持つ発話内容を保持したウルフ音声を作成する必要 がある.そこで,本稿では音声合成を行うための手法として線 形予測係数と線形予測残差を用いた音声合成法に着目した.一 般に音声の線形予測モデルにおいて,現在の音声信号は線形予 測係数と事前の音声信号から予測される.この時,予測値と実 測値との差が線形予測残差と呼ばれる.本提案では,線形予測 係数に個人性が多く含まれることに着目し,あらかじめ詐称者 の音声から作成した音声信号,線形予測係数,線形予測残差の うち,線形予測係数のみをウルフテンプレートを用いて変換し た後に,音声合成を行うことで,ウルフの特徴を持ち尚且つ発 話内容を保持した音声を合成する.図3に提案する音声合成手 法の概要図を示し,手順を以下に示す. ༯ู঻भఠଢ /3&બਯ઴ল क़ঝইॸথউ ঞشॺ ఠଢ়ਛ ଋ୷ਦಀ઴ল क़ঝইఠଢ !"# $%!&# $'%!&# (!"# )*!&# ૗ఌ !"# $%!&# '!"# !"# '!"# ਵ঻ස় ३५ॸ঒ 図 3 ウルフ音声合成手順 詐称者の音声のフレーム数をF,ウルフテンプレートのクラス 数をC,LPCの分析次数をNとする.このとき,線形予測係 数と線形予測残差を用いたウルフ音声の音声合成手順は以下の とおりである. 1. 詐称者の音声のfフレーム目(0 < f <= F )について線形予 測分析を行い,N次元のLPC係数af(n)を算出する. y(f ) = N

n=1 af(n)y(f− n) (2) 2. 算出したLPC係数を用いて次式から詐称者の音声の残差 信号r(f )を求める. r(f ) = y(f )− N

n=1 af(n)y(f− n) (3) 3. 予め作成しておいたウルフテンプレートwc(n) (0 < c <= C) を用いて詐称者のLPC係数af(n)を変換する詐称者のLPC 係数af(n)について,ウルフテンプレートCクラスとの距離 が最も小さいもの選択することで,特徴量の置換を行う.以下 にこの定義を示す. z = argmin c d{af(n), wc(n)Cc=1} (4) af(n) = wz(n) (5) また,詐称者のLPC係数af(n)とウルフテンプレートの各レ ベルwc(n)との距離d{af(n), wc(n)}は次式のように定義する. Df,c= d{af(n), wc(n)}

v

u

u

t

1 N N

n=1 {af(n)− wc(n)}2 (6) 4. 変換した詐称者のLPC係数a′(n)と残差信号r(f )を用い

(4)

て音声合成を行う. y′(f ) = N

n=1 a′f(n)y(f− n) + r(f) (7) 以上の手順を詐称者の音声,全Fフレームについてそれぞれ 行う. 3. 3 話者照合システム 3. 1節で述べたように音声入力方式に依存しないウルフ攻撃 の提案を行いたい.よって,テキスト提示型も想定しウルフ音 声が元の発話内容を保持しているかどうかを確認するために, テキスト照合も行う必要があるが,まずは生体特徴がウルフに 変換されているかを確認する.以上のことから,本稿での攻撃 対象の話者照合システムとして,一般的なテキスト独立型話者 方式の一つであるVQひずみを用いた手法[6] [7]に対するウル フ攻撃について検討する.この手法では,登録時にユーザが入 力した音声から取得できる音声特徴量をLBG+splittingアル ゴリズムでクラスタリングして個人テンプレートを作成し保管 する.照合時には,入力された照合用音声から取得した音声特 徴量を個人テンプレートを用いてフレーム毎に量子化する.こ のときの量子化誤差の平均値を照合スコアとすることで受理・ 棄却を決定する.図4にシステムの概要を示し,詳細について 述べる.また,本稿では音声特徴量としてLPCおよびLSPを 想定する.ここでは,LPCを用いた際の説明を行う. ఃஈ৷ఠଢ ৐૪৶ ఠଢ્ඉ୤઴ল ق/%*VSOLWWLQJكॡছ५ॱজথॢ ଻য॥شॻঈॵॡ ॡছ५ ෱௞ૻຎ ෱௞⃦ٛக ෱௞⃦ٜக ਛ඘ ଷ૷ ఃஈૌங ස়ૌங ස়৷ఠଢ ৐૪৶ ఠଢ્ඉ୤઴ল 図 4 話者照合システムフローチャート c ) 登 録 過 程 1. システムの利用者は登録用の音声情報をシステムへ提示す る.登録時には出来るだけ多くの音声情報を取得し,個人的特 徴量を採取したい.そこで,学習用音声として30秒取得する. 2. 1.で取得した学習用音声を分析次数16で線形予測分析す ることで音声特徴量としてLPCを算出する. 3. 2.で算出したLPCをLBG+splittingアルゴリズムで256 クラスにクラスタリングすることで個人テンプレートを作成し システム側で保管する. d ) 照 合 過 程 1. 照合時にはユーザの利便性を考えると,登録時のように長 時間の発話を行うことは現実的ではないため,4秒間の照合用 音声を取得する. 2. 1.で取得した照合用音声を登録過程と同様に線形予測分析 することで音声特徴量としてLPCを算出する. 3. 2.で算出したLPCと登録過程で作成した個人テンプレー トとの距離の比較を行う.照合用音声のフレーム数がF,個 人テンプレートのクラス数がC,分析次数がNとするとき f ∈ F, c ∈ C, n ∈ Nとし,tc(n)は個人テンプレート,af(n) をLPCとするとき,個人テンプレート256クラスそれぞれと の距離を次式で算出し,距離が最小となるクラスとの距離df を求める. df =

v

u

u

t

1 N 16

n=1 {tc(n)− af(n)}2 (8) この距離比較を照合用音声から得られた全てのLPCについ て行い,距離の平均値をスコアとして使用する.このスコアが 予め設定しておいた閾値未満であれば照合が成功する.

4.

ウルフ攻撃実験

3. 2節で提案した手法で作成したウルフ音声を用いて,話者 照合システムに対して攻撃実験を行う.ウルフ攻撃では評価尺 度として式(1)で述べたWAPを用いるのが一般的である.本 稿で想定するテキスト提示型話者照合方式では,システムは毎 回異なるテキストを提示する.このため,詐称者は毎回テキス トに対応するウルフを作成する必要がある.したがって,本実 験で使用するWAPは詐称者の音声を変更しながらウルフを作 成した時の平均の攻撃確率として評価する.ウルフ音声の集合 をW とし,システムに入力するウルフ音声をwとするとき, WAPを以下のように定義し直す. W AP = Ave

w∈WAvet∈T P r[match(w, t) = accept] (9)

また,以降の実験では共通してATR多数話者音声データベー ス[8]を用いる.本データベースは話者の出身地や年齢の広が りを考慮しており,その中でも音素バランスのとれた音声デー タを使用した.ウルフ音声作成に必要なパラメータ等を含めた 実験諸元を表1に示す. 表 1 実 験 諸 元 音声データ ATR音声データベース (多数話者音声データベース) 1フレーム当たりの時間 10msec 登録用音声 3000フレーム 照合用音声 400フレーム ウルフテンプレート作成用音声 3000フレーム ウルフてテンプレート作成クラス 256クラス LPC分析次数 16次元 ウルフテンプレート作成人数 男女各 10 人 サンプル人数 男女各 50 人 4. 1 音声合成がWAPに与える影響 3. 2節で提案した音声合成手法はシステムのアルゴリズムを 問わずに攻撃が行えるウルフ音声の作成を目的としていた.本 実験では,提案手法により作成したウルフ音声を用いて3. 3節

(5)

の話者照合システムに対するウルフ攻撃実験を行った.なお, 使用する特徴量が異なる認証システムに対する本提案手法の有 効性を確認するために,テンプレートとして利用する特徴量と して16次元LPCと10次元LSPの2種類を利用して実験を 行った.この実験結果を図5,6に示す. 図 5 登録テンプレートの特徴量として LPC を用いたシステムに対し てウルフ攻撃を行った際の WAP 図 6 登録テンプレートの特徴量として LSP を用いたシステムに対し てウルフ攻撃を行った際の WAP 図5,6におけるFARとFRRは使用した話者照合システム を通常の話者照合実験にて評価したものである.FARは他人 受入れ率,FRRは本人拒否率を表し,FARとFRRの交点 のエラー率を等価エラー率(EER:Equal Error Rate)とする.

cWAP,fWAP,mWAPはぞれぞれ共通(Common)テンプレー ト,女性(female)テンプレート,男性(male)テンプレートを ウルフテンプレートとして使用した際のWAPを示している. 登録テンプレートの特徴量としてLPCを用いたシステムに対 しては,EER=約10%のときに使用テンプレートに係わらずど のWAPも約98%を示し,LSPを用いたシステムに対しては,

EER=約3%のときcWAP,mWAP=約95%,fWAP=約90%を 示した.本提案方式により作成したウルフ音声がLPC,LSPい ずれの特徴量を用いたテンプレートに対しても高いウルフ攻撃 確率を示すことが確認された. 4. 2 登録者テンプレートのクラス使用頻度 4. 1節での攻撃実験では,極端に高い攻撃性能が得られた. 特にテンプレートにLPCを用いたシステムでは登録者本人が 照合を行い照合が成功する確率よりもウルフ音声を用いて攻撃 が成功する確率の方が高いという結果が得られた.また,この 図5の攻撃実験では使用するウルフテンプレートによるWAP の違いが見られなかった.以上のことから全登録者のテンプ レートに全ての人に共通な生体情報を含むクラスがそれぞれ含 まれ,作成したウルフ音声に含まれる生体特徴がそのクラスに 近いものばかりとなり,攻撃確率が上昇したのではないかと考 えた.そこで,登録者の個人テンプレート256クラスの使用頻 度を調査することで特定のクラスが偏って使用されていないか を確認しようと考えた.3. 3節において述べたように式(8)で 求める距離が最小となるクラスとの距離を照合用のスコア値と して用いている.このとき距離が最小となるクラスを使用クラ スとし,ある一人の女性Aさんの登録テンプレートについて, ウルフテンプレートを使用しない通常の話者照合時,ウルフ音 声を用いたウルフ攻撃時のそれぞれにおける各クラスの使用頻 度とその距離を調査した.また,ウルフテンプレートの種類に 関係なく高いWAPを示した図5の登録者テンプレートとして LPCを用いたシステムを調査対象とした.この調査結果を図 7,8,9,10に示す. 図 7 通常の照合における女性 A のテンプレートのクラス使用頻度 図 8 通常の照合における女性 A のテンプレートのクラス使用時の 距離

(6)

図 9 ウルフ音声を用いた攻撃における女性 A のテンプレートのクラ ス使用頻度 図 10 ウルフ音声を用いた攻撃における女性 A のテンプレートのク ラス使用時の距離 図7から,通常の照合時は使用クラスに目に見える偏りはな いのがわかる.次に図9のウルフ音声を用いた攻撃時では,使 用クラスが非常に偏っていることがわかる.最も使用頻度の高 いクラスでは約17%も使用されており,使用頻度が上位5つ のクラスを合わせると全体の約40%を占める使用率である.ま た,図10から各クラスが使用された際の距離についても全体 的に図8の通常の照合時よりも平均で0.09ほど小さくなってお り,極端に使用されているクラスが使用された際の距離につい ても平均値以下であることがわかる.ここでは,ある女性Aさ んのテンプレートに対してのクラス使用頻度のみを紹介してい るが,他の女性や男性においても同様の偏りが見られた.その ことから,登録者間に共通な脆弱性を持った特徴量空間が存在 しており,音声合成を行うことでこの空間内の特徴量が多く生 成されたために,WAPの劇的な上昇が見られたと考えられる.

5.

ま と め

本稿では,話者照合システムにおける生体特徴に基づくウル フ攻撃についての検討を行った.センサ等への入力を考慮して, 電子データではない実際のウルフ音声による攻撃を実現可能と するために,線形予測係数と線形予測残差を用いた音声合成手 法によるウルフ音声作成手法を提案した.提案手法により作成 したウルフ音声を用いて一般的な話者照合方式に対するウル フ攻撃実験を行い,登録テンプレートの特徴量としてLPCを 用いたシステムに対してEER=約10%のとき最大でWAP=約 98%,登録テンプレートとしてLSPを用いたシステムに対し てEER=約3%のとき最大でWAP=約95%を実現した.また, 高いWAPが得られる原因について考察を行った.今後の課題 として,テキスト照合を行うことで発話内容を保持しているか どうかの検討や,今回は音声特徴量のみを変更しているため, HMM等などの異なるアルゴリズムを使用した話者照合システ ムに対するウルフ攻撃の検討などがある.また,以上を踏まえ て,話者照合システムに対するウルフ攻撃への対策を検討する ことが最も重要となってくる. 文 献

[1] M.Une,A.Otsuka,H.Imai,“Wolf Attack Probability: a New Security Measure in Biometrisc-Based Authentication Sys-tems,” SCIS2007,Jan 2007

[2] Y.Tanabe,K.Yoshizoe,H.Imai,“A Study on security evalua-tion Metodology in FingerVein Authenticaevalua-tion Systems,” SCIS2008,pp.3B4-2,Jan 2008 [3] 小島由大,繁富利恵,美添一樹,井沼学,大塚玲,今井秀樹,“虹 彩認証におけるウルフ攻撃確率の理論的考察,” 2008 年暗号 と情報セキュリティ・シンポジウム論文集,電子情報通信学会, 2008年 1 月 [4] 伊藤恭英,大木哲史,小松尚久,“話者照合システムにおける 整体特徴量に基づくウルフ攻撃に関する検討,” SCIS2012,Jan 2012

[5] Y.Linde, A.Buzo, R.M.Gray,“An Algorithm for Vector Quantizer Design,” IEEE Trans.Commun., Vol.COM-28, No.1, pp.88-95,1980 [6] 松井知子,古井貞熙,“音源・声道特徴を用いたテキスト独立 形話者認識,” 電子情報通信学会論文誌 A Vol.J75-A, No.4, pp.703-709, 1992年 4 月 [7] 山崎恭,近藤維資,小松尚久,“CELP パラメータを用いた話 者照合方式,” 画像電子学会誌 第 32 巻第 5 号,pp.629-634, 2003年 5 月 [8] 多数話者音声データベース APPBLA,http://www.atr-p.com/ sdb.html

図 9 ウルフ音声を用いた攻撃における女性 A のテンプレートのクラ ス使用頻度 図 10 ウルフ音声を用いた攻撃における女性 A のテンプレートのク ラス使用時の距離 図 7 から,通常の照合時は使用クラスに目に見える偏りはな いのがわかる.次に図 9 のウルフ音声を用いた攻撃時では,使 用クラスが非常に偏っていることがわかる.最も使用頻度の高 いクラスでは約 17% も使用されており,使用頻度が上位 5 つ のクラスを合わせると全体の約 40% を占める使用率である.ま た,図 10 から各クラスが使用

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