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スフィンゴ脂質代謝酵素遺伝子の転写調節機序

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Academic year: 2021

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sci.,26,11992―12002.

17)Tanaka, T., Serneo, F.F., Higgins, C., Gambello, M.J., Wynshaw-Boris, A., & Gleeson, J.G.(2004)J. Cell Biol ., 165,709―721.

古泉 博之 (カリフォルニア大学サンディエゴ校神経科学講座) Physiological function of the DCX family in brain develop-ment

Hiroyuki Koizumi(Department of Neurosciences, Univer-sity of California, San Diego, 9500 Gilman Drive, La Jolla, CA92093―0691, USA)

スフィンゴ脂質代謝酵素遺伝子の転写調節

機序

は じ め に 近年,スフィンゴ脂質代謝産物は単なる細胞膜構成成分 ではなく,細胞の情報伝達物質としての機能が認知されて きた.特にスフィンゴシン1-リン酸(S1P)はその細胞膜 受容体が同定され,生理機能,作用機序が明らかにされつ つある.S1P はスフィンゴミエリン(SM)の代謝産物セ ラミド(CER)がさらにスフィンゴシン(SPG)となり, それにリン酸基が付加され産生される(図1).S1P 受容 体下流シグナル伝達は,血管内皮の増殖や移動,血管壁の 透過性,肥満細胞の活性化,リンパ球のホーミング,抗が ん剤への耐性機序,中枢神経の発育などで詳しく調べられ ている1,2).CER に関しても,1989年に岡崎らによりヒト 白血病細胞株 HL60のビタミン D3による分化に際して, SM が分解され CER の増加が起こることが報告されてか ら,細胞内機能物質としての役割が注目されるようになっ た.多くの報告では CER は pro-apoptotic factor として位置 づけられている(図1).Spiegel らは CER,SPG と S1P の 細胞内の量的バランスが細胞の運命を決定するとして sphingolipid rheostat model を提唱した1). この説によれば, スフィンゴ脂質代謝酵素系の活性変化ないし酵素タンパク 質量の変化によってスフィンゴ脂質中間代謝産物の量的変 化が生じ,細胞の生存や増殖動態が影響されることにな る.一般的に細胞外刺激によるシグナル伝達は大きく分け て初期相と後期相の二つがある.前者は秒∼分の迅速応答 であり,後者は時間∼日の単位の現象である.初期相は細 胞の速やかな形態変化,運動,分泌などであり,後者はも う少し長期的な現象の細胞の分化,増殖,細胞死などであ る.前者は既存酵素あるいは細胞内タンパク質のリン酸化 などの修飾により活性,機能あるいは局在が変化して起こ ると考えられる.後者はタンパク質の量的変化を伴うこと が多いと考えられており,転写および翻訳過程が調節機序 として重要となる.本稿では我々の最近の研究をもとにこ れらスフィンゴ脂質代謝系酵素の転写調節について紹介す る. 図1 スフィンゴ脂質代謝経路中間産物と関連する酵素群 SMase および SPHK1を中心に図示した.代表的な代謝産物(CER,SPG お よび SIP)のこれまでに報告された主要な機能も併せて示した. 1139 2007年 12月〕

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1. スフィンゴミエリナーゼ(SMase)

SM を CER に分解する SMase には少なくとも酸性(AS-Mase),中性(NSMase)とアルカリ性(alkaline SMase)の 3種が報告されており,異なる細胞内局在や活性化機序が 報告されているが,これまでは酵素活性の測定が中心で あった.筆者らはオールトランスレチノイン酸(RA)で 刺激したヒト前骨髄球性白血病細胞株 NB4の ASMase 転 写調節を解析した3).RA での分化誘導により ASMase 活 性は上昇するが,RA 不応性の NB4/RA 細胞では上昇しな い.NSMase 活性は NB4,NB4/RA ともに RA 刺激による 変化はない.ASMase 活性の上昇は CER 量の増加ならび に ASMase mRNA レベルと相関しており(図2A),ASMase 5′プロモーター解析では非典型的な retinoic acid responsive element(RARE)ならびに acute phase protein-2(AP-2)結 合領域が RA 反応性に必須である(図2B).RA 添加後の

ASMase 遺伝子転写増強は,RA と RA 受容体である RAR/ RXR との複合体並びに AP-2転写因子がそれぞれのプロ

図2 NB4におけるオールトランスレチノイン酸(ATRA)刺激後の SMase の変化 (A) NB4および NB4/RA 細胞の ATRA 刺激後 ASMase のノーザンブロッティング (B) NB4における ASMase プロモーター活性 上段は各レポーターの構造,下段に実際のプロモーター活性を示す.Wild,野生型プロモーター:MtA,変異導入プロモーター A(RARE-A):MtB,変異導入プロモーター B(RARE-B):MtAP2,変異導入プロモーター(AP-2結合エレメントに変異):Mt, 非特異部位への変異導入プロモーター (C) SPHK1遺伝子転写調節機序の予想模式図(大幅に簡略化し転写に関連する各種コアクチベーターならびにコレプレッサー は省略している.また各転写因子については一部推測を含む) (文献3より一部改変) 1140 〔生化学 第79巻 第12号

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モーター上の結合部位と結合することによるものと推定さ れる(図2C).ASMase の転写調節に関しては Langmann ら4)がヒト白血病細胞株 THP-1で,4α-ホルボール12-ミリ ステート13-アセテート(PMA)刺激による単球系の分化 過程での ASMase の PMA 反応領域を同定している.後述 す る 巨 核 芽 球 系 白 血 病 細 胞 株 MEG-O1の PMA 刺 激 で

sphingosine kinase1(SPHK1)の mRNA が増加する際5) も,Langmann らの報告と同様に Sp1,AP-2転写因子結合 モ チ ー フ が PMA 反 応 性 に 必 須 で あ る.一 方,ヒ ト

NSMase における主要な NSMase2は酵素活性を指標とし てクローニングされたが,その後の解析により TNF に反

応し活性が増加すると報告された6).我々の解析でも各種

抗がん剤で ASMase ではなく NSMase2の mRNA が増加す

る.各 SMase の発現調節は刺激の種類また細胞種によっ て異なると考えられ,その調節機序の比較は今後の興味深 い問題である. 2. スフィンゴシンキナーゼ1(SPHK1) Edsall らは酵素活性を指標に多くの刺激因子での SPHK1 の活性上昇を報告している7).マウスに続きヒト SPHK がクローニングされ,その過剰発現が細胞の生存,増殖を もたらすことが確認された.Pitson らは刺激による初期活 性化において,トレオニン残基のリン酸化が起こり,細胞 質から細胞膜へと移行することを報告した8).筆者らはマ ウス SPHK1C 末端18アミノ酸でポリクローナル抗体を 作成し,マウス中枢神経系の免疫染色でその発現パターン を観察した9).さらに SPHK 活性の組織分布ならびに組織 染色の知見から,神経系ならびに造血細胞の分化における SPHK1転写調節機序を解析した. 2―1. ニューロトロフィン(神経成長因子)刺激: nerve growth factor(NGF)刺激下でラット褐色細胞腫細

胞株 PC12は突起形成を示し,同時に SPHK1mRNA,タ ンパク質および SPHK 活性が上昇する(図3A)10).SPHK1 (1d type)プロモーターの NGF 反応性は受容体 TrkA の阻 害剤 K252a で抑制され,プロモーター内の二つの Sp1様 結合領域が必須である(図3B).EMSA 並びに CHIP アッ セイにより Sp1タンパク質が実際にこの領域に結合する ことが示された(図3C および3D).この現象が NGF あ るいは PC12細胞特異的か,それとも他のニューロトロ フィンでも認められるかを,glia cell line-derived neurotro-phic factor(GDNF)とヒト神経芽細胞腫細胞株 TGW につ

いて解析した11).GDNF 受容体である RET の変異では欠

失により Hirschsprung’s disease,また突然変異により

mul-tiple endocrine neoplasia type 2(MEN2)と呼ばれる悪性腫

瘍が生じる.PC12細胞は GDNF 刺激で SPHK1mRNA, タ ン パ ク 質,SPHK 酵 素 活 性 が 増 加 し,siRNA に よ り GDNF による神経突起形成と突起先端部の GAP43タンパ ク質の増加が抑制された.このことは SPHK1が神経系分 化の結果でなく,分化機序そのものに関与していることを 示 唆 し て い る.一 方,NIH3T3細 胞 に MEN2A 型 の 異 常 RET を安定発現させると,増殖の亢進および足場非依存 性 の 増 殖 が 生 じ,SPHK1の 発 現 増 強 も 観 察 さ れ た. SPHK1の siRNA 処理でこの細胞増殖の増強と足場非依存 性増殖は抑制された.このことは MEN2型腫瘍では SPHK1 の過剰発現が腫瘍化過程に関与している可能性を示唆して いる.GDNF 刺激 TGW 細胞の SPHK15′プロモーター解 析では,転写開始点上流の AP-2モチーフと Sp1モチーフ が重要である.これらの実験データから複数のニューロト ロフィン刺激で共通して SPHK1の転写が活性化されるこ と,SPHK1の発現上昇が細胞分化・増殖プロセスそのも のに密接に関係していること,またその責任5′プロモー ター領域は比較的限局した領域であること,関係する転写 因子は Sp1や AP-2などの普遍的な転写因子群であること が示された. 2―2. 造血系の分化: 巨核球系分化での SPHK1転写調節をヒト巨核芽球性白 血病細胞株 MEG-O1で解析したところ5),PMA 刺激によ り MEG-O1で SPHK1mRNA,タンパク質および SPHK 活 性の増加が観察され,PMA 刺激に反応するプロモーター 領域は二つの AP-2と一つの Sp1転写因子結合モチーフで あることが示された. 2―3. 悪性腫瘍,白血病化への関与: 筆者らは急性白血病およびその前段階と考えられる骨髄 異形成症候群患者(MDS)のスフィンゴ脂質代謝酵素9 種類の発現を定量 RT-PCR で測定し,ABL 遺伝子発現と の相対比で各酵素遺伝子発現量を比較した12).芽球の増加 に 伴 う MDS の 病 型 進 展,白 血 化 と SPHK1mRNA の 増 加,NSMase2mRNA の低下がよく相関している.この発 現レベルの変化は細胞内の S1P/セラミドの比を変化させ, 白血化の病態の一因となっていることを予測させる.現在 さらに多くの白血病細胞株を用いて抗がん剤耐性,遺伝子 の発現レベルならびに細胞内スフィンゴ脂質代謝産物の定 量を行い解析を進めている(投稿準備中).これに関連し て最近,抗がん剤の耐性と SPHK1の活性,細胞内セラミ ド/S1P 比との相関がイマチニブ耐性 K562細胞株13)あるい はカンプトテシン耐性の異なる前立腺がん細胞株14)等を用 1141 2007年 12月〕

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NGF による SPHK 1の発現調節機序 ( A ) ラット SPHKd mRNA の半定量 RT-PCR NGF ,神経成長因子; K2 52 a, NGF 受容体 TrkA 阻害剤 ( B ) プロモーター解析:転写開始点上流1 19 bp プロモーターを含むルシフェラーゼベクタ ーによる SPHKd タイプ遺伝子プロモーターの NGF 刺激反 応領域の決定.黒丸および黒四角は各転写因子結合領域への変異の導入を示す. C)抗 Sp 1抗体を用いた SPHK 1 5 ′プロモーター領域の CHIP アッセイ 下半分は PCR 増幅した領域を示す. ( D ) 転写因子 Sp 1および5 ′プロモーターの Sp 1モチーフを中心とした NGF 刺激での SPHK 1転写の模式図(関連部分のみの概略を示す) (文献1 0より一部改変) 1142 〔生化学 第79巻 第12号

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いて報告されている.これらの事実は SPHK1が抗がん剤 の感受性予測因子ならびに抗がん化学療法の新規分子標的 である可能性を示している. お わ り に これらの研究によってスフィンゴ脂質代謝系酵素はタン パク質修飾ないし局在の変化による初期応答の活性化機序 に加えて,転写調節によるタンパク質量変化による長期的 な活性調節を受けていることが明らかにされた.スフィン ゴ脂質代謝中間産物はいくつかの酵素の活性ならびに局在 により調節されているため,細胞の分化,増殖,細胞死な どのうち,長期応答の生命現象の解析にはこれらすべての 酵素の転写レベルでの調節機序の解明が不可欠と考えられ る.限られた経験であるが,転写調節に関しては必ずしも 調節部位のコンピューターサーチが万能ではなく,実際の 地道な検証が必要と実感している.

1)Hait, N.C., Oskeritzian C.A., Paugh, S.W., Milstein, S., & Spiegel, S.(2006)Biochim. Biophys. Acta,1758,2016―2026. 2)Taha, T.A., Hannun, Y.A., & Obeid, L.M.(2006)J. Biochem.

Mol. Biol .,39,113―131.

3)Murate, T., Suzuki, M., Hattori, M., Takagi, A., Kojima, T., Tanizawa, T., Asano, H., Hotta, T., Saito, H., Yoshida, S., & Tamiya-Koizumi, K.(2002)J. Biol. Chem.,277,9936―9943. 4)Langmann, T., Buechler, C., Ries, S., Schaeffler, A., Aslanidis,

C., Schuierer, M., Weiler, M., Sandhoff, K., de Jong, P.J., & Schmitz, G.(1999)J. Lipid Res.,40,870―880.

5)Nakade, Y., Banno, Y., T-Koizumi, K., Hagiwara, K., Sobue, S., Koda, M., Suzuki, M., Kojima, T., Takagi, A., Asano, H., Nozawa, Y., & Murate, T.(2003)Biochim. Biophys. Acta, 1635,104―116.

6)Marchesini, N., Luberto, C., & Hannun, Y.A.(2003)J. Bio. Chem.,278,13775―13783.

7)Edsall, L.C., Pirianov, G.G., & Spiegel, S.(1997)J. Neuro-sci.,17,6952―6960.

8)Pitson, S.M., Moretti, P.A., Zebol, J.R., Lynn, H.E., Xia, P., Vadas, M.A., & Wattenberg, B.W.(2003)EMBO J.,22,5491― 5500.

9)Terada, N., Banno, Y., Ohno, N., Fujii, Y., Murate, T., Sarna, J.R., Hawkes, R., Zea, Z., Baba, T., & Ohno, S.(2004)J. Comp. Neurol .,469,119―127.

10)Sobue, S., Hagiwara, K., Banno, Y., Tamiya-Koizumi, K., Suzuki, M., Takagi, A., Kojima, T., Asano, H., Nozawa, Y., & Murate, T.(2005)J. Neurochem.,95,940―949.

11)Murakami, M., Ichihara, M., Sobue, S., Kikuchi, R., Ito, H., Kimura, A., Iwasaki, T., Takagi, A., Kojima, T., Takahashi, M., Suzuki, M., Banno, Y., Nozawa, Y., & Murate, T.(2007) J. Neurochem.,102,1585―1594.

12)Sobue, S., Iwasaki, T., Sugisaki, C., Nagata, K., Kikuchi, R., Murakami, M., Takagi, A., Kojima, T., Banno, Y., Akao, Y., Nozawa, Y., Kannagi, R., Suzuki, M., Abe, A., Naoe, T., &

Murate, T.(2006)Leukemia,20,2042―2046.

13)Baran, Y., Salas, A., Senkal, C.E., Gundez, U., Bielawski, J., Obeid, L.M., & Ogretmen, B.(2007)J. Biol. Chem., 282, 10922―10934.

14)Akao, Y., Banno, Y., Nakagawa, Y., Hasegawa, N., Kim, T.J., Murate, T., Igarashi, Y., & Nozawa, Y.(2006)Biochem. Bio-phys. Res. Commun.,342,1284―1290.

村手 隆 (名古屋大学医学部保健学科) Transcriptional regulation of sphingolipid metabolic enzymes Takashi Murate(Nagoya University School of Health Sci-ences, Daiko Minami 1―1―20, Higashi-ku, Nagoya, 461― 8673, Japan)

樹状細胞サブセットの分化経路

は じ め に 樹状細胞(dendritic cell; DC)は強力な抗原提示能を有 し,ほぼ生体内全域に分布し,末梢の組織において侵入し た細菌やウイルス,あるいはウイルス感染等によって損傷 を受けた細胞の死骸・断片などを取り込み,輸入リンパ管 を経由し所属リンパ節に移動する1).移動後,捕獲した抗 原を T 細胞に提示し免疫応答を誘導する.また,定常状 態において未熟な DC が自己由来の抗原を取り込み,ウイ ルス由来の RNA,DNA あるいは細菌菌体成分,炎症に伴 うサイトカイン刺激等がない場合(成熟シグナルを受けな い場合),免疫寛容を誘導すると考えられている2).樹状細 胞は骨髄由来の白血球であり,抗原提示細胞(antigen pre-senting cell; APC)という共通の機能を持つが,分布する

組織によって異なるサブセットが存在する3).本稿では異

なる樹状細胞サブセットへの分化経路について述べたい. 1. 樹状細胞サブセット

樹状細胞は前述したように不均一な白血球の細胞集団で ある.例えば,表皮中にはランゲルハンス細胞(Langer-hans cell; LC),真皮中には真皮内樹状細胞(dermal DC), 粘膜固有層に存在する DC などはこれら組織において抗原 を捕獲後,所属リンパ節に移動し,抗原を T 細胞に提示 する.言い換えれば,これら樹状細胞群は migratory DC 1143 2007年 12月〕

参照

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