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量的格差是正からジェンダー平等へ (特集 国際教育開発協力のこれまで・これから -- トピック編 -- ジェンダーと教育)

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Academic year: 2021

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アジ研ワールド・トレンド No.230(2014. 12) ●教育におけるジェンダーの 課題︱量的格差を超えて︱ 二 〇 一 五 年を 目前 に控え 、 教 育 におけるジ ェ ン ダー の課 題 へ の注 目が薄れ て い る 。 そ の 理由は 、 国 連ミ レ ニ アム開 発 目 標︵ M D G s ︶ に示されたジェンダー平等に関す るターゲットが、少なくとも初等 教育レベルにおいては達成されよ うとしているからである。就学者 数の男女差︵男性を一とした場合 の女性の値をジェンダーパリティ 指数︵ GPI ︶として算出するも の︶をみると 、二〇一〇時点で 、 すべての地域においてその数値は 〇・九を上回っており、就学者数 においてはほぼ男女同数となって いる ︵参考文献①︶ 。中等教育に おいては、特に南西アジアとサブ サハラアフリカ︵以下、 アフリカ︶ において GPI は下がり、アフリ カでは〇・八を下回る。データの ある一五七カ国中、二〇一五年ま でに就学者数における男女平等が 達成される見込みのない国は、初 等レベルで一四カ国、中等レベル で六三カ国とされている︵参考文 献①︶ 。 しかし、このターゲットには深 刻な問題がある 。教育における ジェンダー平等は、就学者数だけ で測られるものではない。表 1 に 示すとおり、ジェンダー平等には さまざまな側面が存在する。 GP I はこのうちの教育を受ける権利 の一部を表しているにすぎない 。 学校に行けたとしても、学習する 過程でさまざまなジェンダー差別 や偏見があれば、それらは継続的 な就学を妨げるかもしれない。ま た、教育を受けたとしてもその結 果、個人の人生の選択肢が拡大し なければ、そもそも教育の妥当性 が問われることになる。アラブ諸 国など、女性に就業機会がないた めに高等教育就学者数の GPI が 一を上回る地域もある。 GPI は就学者数の男女比を測 定するため、学習の継続や質に焦 点があたらない。筆者らが東 アフリカのウガンダを対象に 行った研究では、初等教育無 償化政策により最も就学者数 を伸ばしたのは貧困層の女子 であったが、貧困や兄弟の多 さから、女子は初等教育を継 続し修了することが難しいこ とが分かった︵参考文献②︶ 。 教育へのアクセスを一時点の 就学と捉えれば、無償化政策 は貧困層女子に初等教育への 平等なアクセスを保障したか もしれないが、アクセスを継 続的な就学と捉えた場合、必 ずしも貧困層女子が平等なア クセスを保障されていないの である 。 こ の 意 味 で 、 G P I を 目 標達成 の 指標と し て 掲げ る M D G s は、 国 際 教 育 開 発 協 力 の 指 針 と し て は 実に不 十 分である。 ●ポスト二〇一五の残された 課題︱真のジェンダー平等 への取り組みのための視角 ポスト二〇一五年は、 GPI を 基準に量的側面に注目した二〇〇 〇年代からの流れを変え、ジェン ダー平等について幅広い側面に取 り組む必要がある。本稿では紙面 の都合上、四つの鍵となる視角を

(出所)UNESCO(2005). 'Scaling Up' Good Practices in Girls' Education. Paris: UNESCO より筆者作成。

権利の種類 内容 主要指標 教育を受ける権利 ・機会の平等 ・学校へのアクセスの平等な 機会 ・無償教育 ・安全な教育環境 ・純・総入学率の GPI ・純・総就学率の GPI ・教師の男女比 ・不就学の男女別理由 教育を受ける過程での 権利 ・学習過程における平等 ・ 偏 見 の な い 教 授 法、 カ リ キュラム、教科書 ・男女に偏見のないオリエン テーションとカウンセリング ・学習成果における平等 ・ 留 年 と 中 途 退 学 に お け る GPI ・専攻分野別の男女の割合 ・特定教科での成果 ・生徒、教師、保護者の男女 に対する認識と態度 ・中途退学の男女別理由 教育を受けた結果として の権利 ・就労機会と収入の平等 ・女性の社会・政治活動への 参加 ・卒業後、仕事を見つけるま での期間 ・男女の賃金の違い ・社会、経済、政治活動に参 加している女性の割合 表1 教育におけるジェンダーの視点からの権利

量的

是正

から

平等

︻トピック編ジェンダーと教育︼

西

国際教育開発協力

これまで・これから

特 集

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アジ研ワールド・トレンド No.230(2014. 12) 量的格差是正からジェンダー平等へ 紹介したい︵詳しくは参考資料③ を参照︶ 。 第一に、家庭、学校、労働市場、 政治など社会全体の仕組みや価値 規範と教育におけるジェンダー平 等とのリンクをより明確にすべき である。仮に就学率や識字率にお ける男女間格差が是正されたとし ても、教育の過程や結果において 差別が残っていれば、学習の継続 や個々人の自己実現にはつながら ない。アフリカ、南アジア、アラ ブ地域では、社会文化的価値観を 反映した性別役割分業による学習 機会の男女間格差が著しい。東ア ジアや東南アジアでは女性が高い 就学率を誇るが、それが労働市場 における参加や待遇の改善につな がっていない。教師の態度や発言、 学校でのさまざまなルールや役割 分担などを ﹁隠れたカリキュラム﹂ というが、この隠れたカリキュラ ムにこそ、ジェンダー不平等を再 生産する要素が含まれている。例 えば、東アフリカのウガンダでは 授業中に教師が女子に掃除や子守 などをいいつけ、学習機会を阻害 している事例もある。教育政策が、 現状肯定的な立場から量的側面に おける男女間格差の是正のみに終 始すれば、結果としてジェンダー 不平等を再生産することにもなり かねない。教員養成課程における 研修の充実、労働市場への働きか け、親やコミュニティとのコミュ ニケーションなど、包括的な取り 組みが求められる。 第二に、 貧困、 人種/民族、 カー ストなど他の要因とジェンダーと の関連に留意することである。教 育を受ける機会の格差は、富裕層 の男女と貧困層の男女で大きく異 なる。近年では、アフリカでも都 市部の貧困層の男子の退学率が上 昇するなど、新たな傾向がみられ る。また、教育を受けることで少 数民族の女性の就業機会が拡大し 安定した収入が得られる一方で 、 彼女らが家庭内での性別役割分業 や宗教的価値観との狭間でアイデ ンティティの葛藤を抱えることも 多い。すなわち、一方的にジェン ダー平等の名の下にひとつの教育 体系を普及するのではなく、各社 会的文脈のなかで、ジェンダーが 他のさまざまな不平等要因と、そ の因果関係も含めてどのように関 連しているのかを明らかにしたう えで、ジェンダー平等のあり方を 慎重に模索する必要がある。その ためには、国際教育開発協力の現 場において、ジェンダーや社会経 済的背景による違いを常に分析す ることができるようなデータ収集 が必須である。 第三に、不平等を生成する社会 構造、制度・政策的な側面に留意 することである。例えば、女子の 理数系分野への低い進学率や高等 教育の内容の差異化は、それ自体、 自主的な選択や性別による適性の ように捉えられがちである。しか し、このような現象は、その背景 に存在する労働市場への参入機会 の格差、専門分野を介した賃金格 差 、教室内における教師による ジェンダーに基づいた偏見と指導 など、組織的・構造的な側面と関 連している。ジェンダーによって 規定されている教育の結果を個人 の努力の差の帰結とみなすことは 避けなければならない。この点に おいて、ある問題を解決するため に、男女で異なる費用︵直接・機 会費用を含む︶がかかることを念 頭に 、予算配分においてジェン ダー・バランスを検証する﹁ジェ ンダー予算﹂という考え方は参 考になるものである 。 こ れ は 平 等 な機 会を保障する た め に男 女別 の ニー ズ に 応 じ て 異 な る 支 出 が 行 わ れること によ っ て 、社 会に あるジ ェ ンダ ー 格 差 に 対 応 し 、 公 正 性 を 確 保しよう と い う 取 り 組 み で ある。 最 後 に、 国 境 を越 えたネ ッ ト ワ ー クや 試 み が 、 ジ ェ ン ダ ー 格 差 が 著 しい 一 国 内 で は 創 出 で き な い 選 択 肢の 拡 大 を 男 女 に 与 え る 可 能 性 が あ る 。 各 国の 文 脈 のな かでは ジ ェ ンダ ー 平 等 に 配 慮 し た 教 育 を 受 け ることが 困 難 で も 、海 外 で の 留 学 や 就 業 の 機 会 が開か れ る 場 合があ る。 例 え ば、 女 性 リ ー ダ ー の 育 成 を目 的に 二 〇 〇八 年に バ ン グ ラ デ シュ に 設 立 さ れ た ア ジ ア 女 子 大 学 は、 家 族 に 高 等 教 育 修 了 者 を も た ない ア ジ ア 地 域 の 貧 困 層 の 女 性 に 対し て奨 学 金 を提 供し 、 高 等 教 育 を受け る 機 会を 提 供 し て い る 。 国 境を 越え た 女 性 リ ー ダ ー 育 成 の 取 り組 み が 、 出 身国 の 労働市場 や 教 育 へ の フ ィ ードバ ッ ク に ど の 程 度 貢献 で き る の か が 期待 さ れ る 。 ︵にしむら   みきこ/国際基督教大 学教養学部上級准教授︶ ︽参考文献︾ ① U

NESCO Institute of Statistics.

Gender Parity in Primary and Secondary Education: Fact Sheet. September 2010. No. 3. ②西村幹子 ﹁ウガンダにおける初等教育 政策の効果と課題︱教育の公平性に注 目して﹂ ﹃国際協力論集﹄第一四巻第二 号、二〇〇六年、九三︱一一七ページ。 ③菅野琴 ・西村幹子 ・長岡智寿子 ﹃ジェ ンダーと国際教育開発︱課題と挑戦︱ ﹄ 福村出版、二〇一二年。

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