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論文審査の要旨(課程博士)

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Academic year: 2021

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論文審査の要旨(課程博士)

生物システム応用科学府長 殿

審査委員 主査 佐 藤 令 一 ㊞ 副査 豊 田 剛 己 ㊞ 副査 梶 田 真 也 ㊞ 副査 岩 渕 喜久 男 ㊞ 副査 仲 井 まど か ㊞ 副査 鈴 木 丈 詞 ㊞

学 位 申 請 者 第3 専修 平成 26 年度入学 学籍番号 14701301 氏名 遠 藤 悠

申 請 学 位 博士( 農学 )

論 文 題 目 Bacillus thuringiensis殺虫性タンパク質に対する昆虫の感受性を決定する因子に関する研究 Study on susceptibility determinants of insects for Bacillus thuringiensis insecticidal proteins

論文審査要旨(2,000字程度)

Bacillus thuringiensis (Bt)菌が産生する殺虫毒素は、人畜に安全で環境に優しいタンパク

質であるため、微生物殺虫剤や組換え食品に応用されてきた。すなわち、

Bt

菌の殺虫毒素は世 界で最も広く利用されているタンパク質性の毒素である。一方、この毒素の作用機構と安全性 のしくみについて説得力ある仮説が提示されたのはこの数年のことであり、それは ABC トラン スポーターファミリーC2 が受容体であることの発見に始まった。しかし、ABC トランスポータ ーC2 を受容体として、多様な

Bt

菌殺虫毒素のそれぞれがある狭い範囲の昆虫だけに作用する 仕組みに関しては、なお多くの謎が残されたままであった。また、

Bt

菌殺虫毒素のどこまでが ABC トランスポーターを主要な受容体としているかに関しては、まったく不明であった。また、

ABCトランスポーターファミリーC2が受容体であると分かる以前に提唱されたBt菌殺虫毒素の 作用機構仮説「浸透圧崩壊説」に関しては、当然のことながら再検討が必要になっていた。ま た、その仮説の中で不明のまま放り去られて来た「細胞への水流入の機構」の部分は、多くの 新知見に鑑みて、実は解明の好機にあった。また、ABC トランスポーターファミリーC2 はカド ヘリン様受容体と協調的に機能することが明らかになってきたが、カドヘリン様受容体がどの ような仕組みで協調的に機能するかに関してはまったく不明であった。更にまた、一つの

Bt

菌殺虫毒素に対して昆虫は種ごとに異なる感受性を示すが、 「それが本当に ABC トランスポータ ーやカドヘリン様受容体の違いから説明できるのか」に大きな興味がもたれていた。そこで、

本研究においては、 これらの

Bt

菌殺虫毒素とその作用機構の理解に必須と言える種々の課題が 5章立てで検討された。

第1章では、 ABC トランスポーターファミリーC2 分子と近縁関係にある C3 ファミリー分子が

(2)

チョウ目昆虫で

Bt

菌殺虫毒素に対して受容体として機能すること、C3 ファミリー分子は C2 フ ァミリー分子とは受容体として機能の高さが異なること、またそれは殺虫毒素結合部位の構造 の違いによること、などを世界で始めて明らかにした。第2章では、ABC トランスポーターフ ァミリーC2 分子とC3 ファミリー分子がチョウ目に効く

Bt

菌殺虫毒素に対して一般的に受容体 として機能するが、これらを使わないチョウ目殺虫毒素もあることを明らかにした。また、コ ウチュウ目を殺す

Bt

菌殺虫毒素の中にも ABC トランスポーターファミリーC2 分子を受容体と して使うものがあることを示し、 多くの

Bt

菌殺虫毒素が ABC トランスポーター分子を受容体と して使うことを示した。一方で、ヒトの ABC トランスポーター分子からはこれらの毒素の受容 体になるものが見つからず、これが

Bt

菌殺虫毒素の安全性の理由であろうと仮説を展開した。

第3章では、ABC トランスポーターファミリーC2 分子と協調的に機能する分子、カドヘリン様 受容体が実際には、有力な仮設とされて来た「シグナルトランスダクション仮説」のようには 機能し得ないことを明らかにしたと共に、これに対して対抗的位置にあった仮説「浸透圧崩壊 仮説」に当てはまる幾つかの証拠を提示した。第4章では、 「浸透圧崩壊説」の中で不明のまま 放り去られて来た「細胞への水流入の仕組み」において、水チャネル、アクアポリンが大きな 役割を果たしていることを明らかにした。また、第5章では、ある一つの

Bt

菌殺虫毒素に異な る感受性を示す2種の昆虫の各種受容体分子の機能を比較して、実存する昆虫間の感受性の差 にこれら個々の受容体がどれほどの役割を果たしているかに関して、世界で始めてデータを提 示し考察した。

以上に述べた通り、本論文は、世界で最も利用されているタンパク毒素の作用機構にまつわ る課題に多角的にチャレンジしたものであり、組換え食品や有機農薬(微生物殺虫剤)に多大 な影響力を持つ成果を世界に示したものである。また、第4章に相当する部分は、既に完全論 文スタイルの高インパクトファクターをもつ権威ある速報誌、 FEBS Letters に受理されている。

また、その他の章に関しても、現在合計 3 件の原稿が投稿中、あるいは準備中の段階にあり、

本論文は農学系の博士号授与の基準を十分に満たしている。よって、本論文は上記 6 人 からなる審査委員会によって博士論文に値すると評価された。

参照

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