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長野県におけるスモン検診の推移

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Academic year: 2021

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A. 研究目的

長野県ではスモン患者の希望により訪問検診を実施 しており、 高いスモン検診受診率につながっている。

一昨年および昨年度の検討ではスモン患者の年齢の上 昇、 身体機能の低下 (Barthel Index の低下)、 歩行障 害、 下肢筋力低下が訪問検診を選択する要因になって いることが明らかとなった1), 2)。 本年度は長野県のス モン患者の現状を把握するとともに、 当県のスモン患 者のうち、 10 年間継続して検診を受けている患者の Barthel Index、 歩行障害、 下肢筋力の 10 年間の変化 を把握し、 これらの推移が検診形態 (訪問もしくは非 訪問検診) に与える影響につき検討する。

B. 研究方法

本年度の検診結果を用いてスモン検診受診者の現状 を把握した。 また、 10 年間継続してスモン検診を受 けている患者につき、 スモン患者現状調査個人票をも とに 10 年前と本年度のスモン検診における Barthel I ndex、 歩行障害、 下肢筋力を検討した。 さらに、 こ れらの患者において Barthel Index、 歩行障害、 下肢 筋力の 10 年間の変化が本年度の検診形態 (訪問もし くは非訪問検診) に与える影響につき検討した。

C. 研究結果

平成 30 年度はスモン患者在住の 9 医療圏につき各 1 日を割り当て、 スモン検診を実施した (全 9 日)。

― 88 ―

長野県スモン患者の 10 年間の推移と検診形態

関島 良樹 (信州大学医学部附属病院 脳神経内科、 リウマチ・膠原病内科) 小平 農 (信州大学医学部附属病院 脳神経内科、 リウマチ・膠原病内科)

研究要旨

長野県ではスモン患者の希望により訪問検診を実施しており、 高いスモン検診受診率につ ながっている。 一昨年および昨年度の検討ではスモン患者の加齢、 身体機能の低下 (Barthel Index の低値)、 歩行障害、 下肢筋力低下が訪問検診を選択する要因になっていることが明ら かとなった。 本年度は当県のスモン患者のうち、 10 年間継続して検診を受けている患者の Barthel Index、 歩行障害、 下肢筋力の 10 年間の変化を把握するとともに、 これらの推移が 検診形態 (訪問もしくは非訪問検診) に与える影響につき検討した。 本年度のスモン検診受 診率は 56% (19/34 名) であり、 検診受診者の平均年齢は 79.6 歳であった。 検診の実施形態 は、 訪問 11 名、 非訪問 8 名 (保健所 5 名、 病院 3 名) であり、 訪問検診率は 58%と平成 29 年度 (48%) 比較し上昇していた。 10 年間スモン検診を継続して受けていたスモン患者 14 名においては Barthel Index が 10 年前 (91±9) と比較し、 本年度 (73±27) は大きく低下 し、 特に訪問検診を選択している患者で Barthel Index の低下が目立った。 歩行障害も同様 に訪問検診を選択している患者で継時的な低下が目立った。 一方、 下肢筋力低下は多くの患 者で著変はなく、 加齢や整形外科的な問題などが Barthel Index の低下、 歩行障害の進行に つながっている可能性が考慮された。 今後もスモン患者の高齢化や併発症などに伴い身体機 能低下が想定されることから、 県土の広い長野県においては訪問検診のニーズはますます高 まっていくことが予想される。 介入や予防可能な併発症があれば対応し、 ADL や歩行機能 の維持に努めるとともに、 高い検診率の維持には訪問検診の継続が必要と考えられる。

(2)

全スモン患者 34 名の中、 検診受診者は 19 名 (男性 7 名、 女性 12 名) で検診受診率は 56%であり、 平成 28 年度 (70%)、 平成 28 年度 (54%) に引き続き高い検 診受診率を維持していた (表 1)。 検診受診者の平均 年齢は 79.6 歳で平成 29 年度 (79.2 歳) とほぼ同等で あった (表 1)。 検診の実施形態は訪問 11 名 (全例自 宅)、 非訪問 8 名 (保健所 5 名、 病院 3 名) であり、

訪問検診率は 58%で平成 29 年度 (48%) と比較し上 昇していた (表 1)。

10 年 間 ス モ ン 検 診 を 継 続 し て 受 け て い た ス モ ン 患 者 14 名においては訪問検診率が 10 年前の 21% (3/14 名 ) か ら 64% (9/14 名 ) に 上 昇 し て い た 。 Barthel Index は 10 年前 (91±9) と比較し、 本年度 (73±27) は大きく低下し (図 1)、 特に訪問検診を選択してい る患者で Barthel Index の低下が目立った (図 2)。 歩 行障害も同様に訪問検診を選択している患者で継時的 な低下が目立ち、 本年度訪問検診を選択した患者のう ち 2 名は経過で寝たきりとなった (図 3)。 一方、 下

肢筋力低下は多くの患者で著変はなかった (図 4)。

D. 考察

長 野 県 の ス モ ン 患 者 に お い て は 10 年 間 の 経 過 で Barthel Index の低下、 歩行障害が進行しており、 特 に訪問検診を選択する患者でその傾向が強かった。 一 方、 下肢筋力低下は多くの患者で著変がなく、 加齢や 整形外科的な問題などが Barthel Index の低下、 歩行 障害が進行につながっている可能性が考慮された。

E. 結論

長野県ではスモン患者数は減少してきているが、 最 近 10 年間の経過で Barthel Index の低下、 歩行障害が

― 89 ―

表 1

長野県におけるスモン検診の推移

図 1 Barthel Index の推移

図 2 検診実施形態別の Barthel Index の推移

図 3 歩行障害の推移

図 4 下肢筋力低下の推移

(3)

進行し、 訪問検診を選択するスモン患者の割合が増加 している。 要因としては加齢や整形外科疾患などの併 発症に伴う身体機能や歩行障害の進行が考えられるこ とから、 今後も県土の広い長野県においては訪問検診 のニーズはますます高まっていくことが予想される。

介入や予防可能な併発症があれば対応し、 ADL や歩 行機能の維持に努めるとともに、 高い検診率の維持に は訪問検診の継続が必要と考えられる。

G. 研究発表 なし

H. 知的財産権の出願・登録状況 なし

I. 文献

1 ) 池田修一, 小平農:スモン患者の高齢化に伴う長 野県のスモン検診のあり方. 厚生労働行政推進調査 事業費補助金 (難治性疾患政策研究事業) スモンに 関する調査研究. 平成 28 年度総括・分担研究報告 書. P 93-95.

2 ) 池田修一, 小平農:長野県におけるスモン検診の 現状. 厚生労働行政推進調査事業費補助金 (難治性 疾患政策研究事業) スモンに関する調査研究. 平成 29 年度総括・分担研究報告書. P 100-102.

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