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藤木俊介*佐藤彰矩* (昭和50年9月10日受理)

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(1)

Al−4%Cu合金中のヘリカル転位の時効挙動について

藤木俊介*佐藤彰矩*

(昭和50年9月10日受理)

On the Aging Behavious of the Helical Dislocation in Al一・4%Cu Alloy.

Shunsuke FuJiKi and Akinori SATO

(Received September 10, 1975)

 Aging behavious of the helical dislocation in Al−4fOoVCu alioy was investigated by electric resistivity mesurement and transmission electron microscopy.

 Specimens were solutionL−treated at 5300C for 2hr, quenched into ice water and subjected to aging.

 The results obtained were as fo11ow:

The diameter of the helicai dislocation grew with the aging time and reached a maximum when most of the quenched in vacancies had precipitated on the helica} dislocations.

 The maximum value of diamater increased and the aging time required to reach it decreased with rise in aging temperature.

 The helical dislocation which grew larger annihilated quickly.

 The helical dislocation acted as preferential nuc1eating sites for intermediate phase e  and then annihilated per−

fectly.

1 緒

 時効性合金は時効処理が行なわれる前に,固溶範囲の高 温で溶体化処理されて,焼入れられるが,この焼入れによ って溶質原子とともに,高温で熱的に平衡状態にある空孔 も,同時に合金中に凍結さ.黷ト,過飽和状態となることは よく知られている。そしてこの過飽和空孔は室温付近にお いても十分移動することができるため,時間とともに移動 して結晶表面,結晶粒界,転位などのsinkに至って消滅 する。しかし空孔の濃度が大きい場合には,空孔が既存の sinkに到達する以前に,互いに集合して,二次欠陥を形 成する。そしてこの二次欠陥がGP・帯あるいは析出物形 成に重要な役割をはたしていることが明らかにされて来

た。

 Al合金の二次欠陥としては, void,転位ループ, black spot defectおよびヘリカル転位が観察されている。この 外の二次欠陥としては,Auなどで積層欠陥四面体が観察 されている1)。このうちヘリカル転位は一般に溶質原子濃

*金属工学科

度が高くなると観察され,その濃度は溶質原子の種類だけ でなく,焼入温度,焼入速度によって異るが,ほぼCu>

0.9%,Ag>1.3%, Si>1. 2%, Mg>8%, Zn>15%とい われている2)。一方溶質濃度が低くなると,ヘリカル転位 は形成されず,転位ルーープが現われる。この原因について Thomas 3)は溶質原子の添加が,転位ループを形成するに 必要な自由な過剰空孔を少くするためだとしている。即ち 溶質原子と原子空孔との間には相互作用があり,過剰空孔 の多くは室温附近では溶質原子と結合して,自由には動け なくなっている。したがって過剰空孔は互いに集合して,

転位ループを形成する傾向が少くなり,既存の転位線に吸 収されることになる。ヘリカル転位のBurgers Vectorは その軸方向と一致し,らせん転位のそれと同じであり,ま たヘリカル転位の近くでは転位ループが著しく少ないこと から,ヘリカリ転位はらせん転位が空孔を吸収してできた ものとされている2)。

 本研究で取り上げたAレCu合金では特に高濃度範囲にお いて,著しく多くのヘリカル転位が形成されることが知ら れており3)。これがA1−Cu合金の析出過程に多大の影響を 与えているものと思われる。一方焼入れされない金属にお

(2)

津山高専紀要第13号(1975)

いては自己拡散がほとんど起こらない温度範囲において,

焼入れされた時効性合金では,著しい溶質原子の移動が起 こり,小さな集合体が形成されるが,時効のこの段階での 速度を決定しているのは,先に述べた過飽和空孔である。

この過飽和空孔は急速に熱平衡状態に達すると思われる が,低温時効はその後もゆっくりと進行して行く。このよ うな空孔の挙動についても,ヘリカル転位との相互作用か ら,いくらかの報情が得ら.れると思われる。このような意 味でAl−4% Cu合金を用いて透過電子顕微鏡により,時効 中のヘリカル転位の挙動について調べた結果を報告する。

       _O_30℃

       一4−50℃

       一ロー100℃

      ム   コむコ        ヨ むて          む む ト ゆへむへ  。.、づ・歩・仁。 .一e−e z『AL△〜・_。_ 。\・、。

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−20

  oU−av i ie too Fooe 一 L−mmi

         Aging time{min}

Fig.1 Changes of electrical resistivity during ageing    at 30。C,50。C,100。C,150。C and 200。Cin Aレ4%

   Cu alloy.

2 実 験 方 法

 用いた試料の組成は,秤量成分でA1−4%Cu合金である。

この試料の作製に用いた材料は99.99%Al地金とAl−35.7

%Cu母合金で,これを上記の組成に秤量し,高純度アル ミナルツボを用いて溶解,金型に鋳込んでインゴットを作 った。インゴットは540。Cで4日間均質処理を行なった 後,熱間鍛造と冷間圧延により2mm厚の板材とした。電 気抵抗測定用試料はこれを切断後,中間焼鈍をくりかえし ながら冷間引抜により0・8mmφの線材とした。また電子顕 微鏡用試料は板材をさらに圧延して0.1mm厚とした。

 試料はすべて,530。Cで2時聞溶体化処理を行ない,0。C の水中に焼入れた。その後の時効処理は,室温時効以外す べて各温度に保ったシリコンオイル中で行った。

 電気抵抗の測定は0.8月目φ×300mmの試料の両端に,

電圧・電流端子として同じ材料をスポット溶接したものを 用いてタケダ理研製lntegratin9 Digital Vo!tmeterおよび Milli Ohm Range Unitにより,液体窒素中で行なった。

透過電子顕微鏡観察のための薄膜作製は硝酸1,メチルア ルコール4の溶液中で電解研磨により行なった。なお電解 研磨中の組織変化をできるだけ避けるため,電解液の温度 を一15。Cとした。観察に用いた電子顕微鏡は日立11Ds

で,. チ速電圧は100KVである。

3 実 験 結 果

 3.1 電気抵抗測定結果

 試料の時効初期の状態を知るために,まず電気抗抵によ る時効曲線を求めた。Fig・1は溶体化処理温度から焼入れ 後ただちに,30。C,50。q,100。C,150。Cおよび200。Cで それぞれ時効したときの電気抵抗の変化を示したものであ る。ただしdpは焼入直後の値に対する変化率(%)で示し てある。30。C時効では抵抗ははじめ増加し約50分で極大 に達し.た後減少10000分頃一定値に近づく。この電気抵抗 増加はG.P帯の形成によるものである4)ことは良く知られ ている。50。C時効も同じ傾向を示すが,極大に達する時 間が短かく,極大値も低い。100。C時効のときは抵抗は時

効初期から単調に減少するが200分あたりで,一たん停滞 する。150。C時効では時効初期に抵抗は急激に減少するが

2〜5分程度からゆるくなる。このときのriρは200。C時 効の場合よりも大きい。200。C時効のときは最初の測定時 事4秒でApが3.9%減少した後は,20分頃まで一定値を 保ちその後再び減少する。この200。C時効の最初の急激な 抵抗減少は,焼入中に生成されたクラスターが復元消滅す ると考えられており5)20分以後の大きな抵抗減少はθ の析出によると考えられている6)。

 3・2 電子顕微鏡による観察

 ヘリカル転位は焼入れによって試料中に多数導入される が,その密度は焼入条件によって異る。それは,らせん転 位が焼入時の熱ひずみにより形成されると考えられる7)か

らである。したがって,らせん転位が空孔を吸収してでき るヘリカル転位も,同一試料の場所によって異なるだけで なく同一視野内でもその大きさが異なるため,できるだけ 多く観察することにつとめた。ヘリカル転位の変化を測定 する量としては,その直径を選んだ。理由は,Veyssiereど Grilhe8)によって,ヘリカル転位のピッチPと直径dの間 にはR・一喫一・・4±・・5と・・う一定開学がある・と が見出されているためである。Fig.2〜4に室温,150。C

14

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600

200

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         Aging tjme(day)

Fig.2 Changes of helical dislocation diameter during    aging at room temperature.

(3)

Al−4% Cu合金中のヘリカル転位の時効挙動について  藤木・佐藤

S−x一一〇

    Xo

         Agine timeCmin)

Fig.3 Changes of helical dislocation diameter during    aging at 150eC.

   ㎜£︶ /vXoX

   ×

  o         Aging time(min)

Fig.4 Changes of helical dislocation diarneter during    aging at 200eC.

および200。Cで時効した場合のヘリカル転位の直径の変化        むを示す,焼入状態の直径の平均は283Aであった。いずれ

の曲線も極大値を経て減少し,時効温度が高い程その極大 値は大きく,また極大値に達する時効時間は短かくなって いる。室温時効の場合,極大極は9日頃にあらわれてお         むり,その値は760Aである。それ以後直径は徐々に減少         むし,23.75日で422Aになる。150。C時効の場合は,30秒で      む

極大値840Aに達した後減少するが,その限少はゆるやか

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Transmission electron micrograph of

the Al−40/oCu alloy water−quenched from s30ec.

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      (c)

  photo.2

   Transmission electron micrograph of    the alloy aged at room temperature for   gdays一(a), aged at 150℃for 30sec一(b)

  and aged at 2000C for 17sec.

      むで5分で621Aを示す。10分野はヘリカル転位の数が非常 に少くなり,電子顕微鏡の視野に入ることが少く,平均値 の算出が困難であった。しかし8日時効した試料でたまた ま観察された。200。C時効の場合は極大値は17秒であらわ         むれ,その値は1494Aと非常に大きい。この時期に観察され          むるものの中には3000Aを越えるものがあり,それらの中に は薄膜の表面にぬけて測定できないものもあった。Photo.

1に焼入状態のヘリカル転位を,Photo.2(a)(b)(c)に室

(4)

津山高専紀要第13号(1975)

温,150。Cおよび200。C時効のときのピーク時におけるヘ リカル転位を示す。これらの直径は,ほぼ平均値に近いも

︵鴫︾℃

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        Agmg timeCmin)

Fig.5 Changes of helical dislocation diarneter during    aging at 1500C after aging at room te皿Pe「atU「e    for 5 days or 17 days.

photo.4

 Transmission electron micrograph of

 the alloy aged at 150 C for 12hr.

4 考

のである。Fig.5に室温時効を5日および17日行なった後 150。Cで時効したときのヘリカル転位の直径の変化を示し た。いずれも150。C15秒の時効で直径が減少している。こ のことはヘリカル転位が焼入れによって導入された過剰空 回のみを吸収して,成長することを示している。なお室温 時効5日のヘリカル転位の直径も,150。Cでただちに減少

しているのは,室温と150。Cの熱平均空孔濃度の違いによ るものと思われる。

 つぎにヘリカル転位と析出物の相互作用について述べ る。Phot④.3は200。Cで30分時効したときの組織写真であ るが,これによると,明らかに析出物が,ヘリカル転位そ の他の欠陥に優先析出しているのが見られる。またPhoto・

4は150。Cで12時間時効したときのものであるが,同よう の現象が観察される。なおこの150。C,12時間および200

。C,30分の時効時間はFig.1の電気抵抗が急激に減少し 始める時期にあたっている。

  擦ダ灘︑鯖     は

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讐八難辮

      啓

轡響審尋.

photo.3

 Transmission electron micrograph of the alloy aged at 200℃ for 30min.

  熊

 Fig.2〜4に示されたように,ヘリカル転位の成長の条 件は,時効初期にその焼入条件と時効温度により決定され

る。すなわち,焼入条件により,焼入れによって導入され るらせん転位の密度と空手の過飽和度が決まり,時効温度 により過飽和空孔の拡散速度が決定される。この場合焼入 条件は一応一定とした(もちろん焼入温度,焼入速度を一 定としても転位密度を一定にすることはできない)のでヘ リカル転位の直径は,時効温度に依存する過飽和空孔の拡 散速度によって決定されると考えられる。ただしこの場合 拡散速度が速いということはつぎのような意味をもつ。前 述した如く過飽和空孔は時間とともに移動して,結晶表面,

結晶粒界あるいは転位などのsinkに至って消滅するとと もに,互いに集まって,転位ループを作り消滅する。この 場合拡散速度が速いと,転位ループを作るより既存のsink に至って消滅する機会が多くなり,ヘリカル転位を急速に 成長させる結果となる。これと逆に時効温度が低い場合に は,近くの空孔が集まって,転位ループを作る機会が多く なり,らせん転位が吸収する空孔の量が少くなり,極大値 が小さくなる。したがってヘリカル転位と転位ループの数 が決まってしまった,室温時効5日の試料を150。Cで二段 時効を行ってもヘリカル転位は成長しない。(Fig.5)

 ヘリカル転位の成長が止まる場合の空孔濃度は熱平衡空 孔濃度よりも,わずかに高いところであるが,最初に導入 された空総量に対して,その差は無視できるので,その濃 度は熱平衡空孔濃度と考えてよい9)。したがってヘリカル 転位の直径が極大値に達した時,空孔濃度は熱平衡空孔濃 度に下がったと考えてよい。この時間は室温で8〜9日,

温度を上げると急激に速くなり,150。Cで30秒,200。Cで 17秒程度になったことは前述の通りである(Fig.2〜3)。

また室温5日後,150。Cに二段時効した場合,まだ少量の

(5)

過剰空孔が存在しているにかかわらず,ただちにヘリカル 転位の直径が減少したのは,150。C時効のものよりsinkが 多いことと,150。Cの熱平衡空孔濃度が室温のそれよりも 高いためと考えられる。

 つぎにヘリカル転位の消滅過程について考察する。前述 の如く,平衡状態にあるヘリカル転位の直径とピッチの間 には一定の関係があり,このときヘリカル転位は準安定状 態にあると思われる。したがってある一定の長さのらせん 転位が空孔を吸収してヘリカル転位になると,dが大きく なるに従い,ピッチも大となり,その結果長さも増大す

る。このヘリカル転位が極大に達した後,逆に空孔を放出 する段階になった場合,dが減少しても,その長さを減少 させることは困難であるから,その直径とピッチの平衡関 係がくずれ不安定となり消滅を速める。従って直径の大き くなったヘリカル転位程不安定な状態になり消滅が速くな ると思われる。ヘリカル転位は電子顕微鏡観察によると,

θ が析出する以前にその大部分が消失する。しかしθ1が析 出する時期まで残っている場合は,P丑巳oto・3・4に見られる ようにそれがθノの優先析出場所となり,その時にヘリカル 転位は全く消失する。θ1析出の時期はFig.1の電気抵抗測 定による場合と一致する。しかし電気抵抗に対する過飽和 空孔の寄与はクラスターのそれに比べて小さく,電気抵抗 では,その挙動を推察することはできない。

5 結

Al−4%Cu合金に生ずるヘリカル転位の時効中の挙動を

透過電子顕微鏡を用いて調べ,次の結果を得た。

 (1)室温,150。Cおよび200。Cの時効において,ヘリカ   ル転位の直径はいずれも,時効時間とともに増大し,

  極大を経た後減少する。この場合,時効温度が高い程   極大値が高い。

(2)ヘリカル転位の直径は過飽和空孔のみによって成長   する。

 (3)過飽和空孔が熱平衡空孔濃度に達する時間は,およ   そ,室温で9日,150。Cで30秒,200。Cで17秒であ   つた。

 (4)ヘリカル転位はθノ析出以前に大部分が消滅し,θ   出により全く消滅する。

参 考 文 献

  たとえば日本金属学会;格子欠陥と金属の機械的性1)

 質,(昭42),112,丸善。

  B.Chalmers ; Progress in Metal Science. vol. 10,

2)

(1966), Pergamon, N. Y.

3) G. Thomas and M, J. Whelan ; Phil. Mag., 4(1959)

 511.

︶︶︶︶︶︶45ρ0789 N. F.1 ott;J. lnst. Metals, 60 (1937), 267.

浅野,平野:日本金属学会誌,35(1971),364.

廣内,劉,村上:日本金属学会誌,37(1973),1120.

G. Thomas and J. Nutting; Acta Met., 7(1959), 515.

P.Veyssiere and J. Grilhe; Acta Met.,19(1971),1047 .

材料科学講座2;結晶格子欠陥,(昭44),62,朝倉 書店。

参照

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