日本の学校選択
― 諸 外 国 の 経 験 か ら 学 ぶ べ き も の ― 中 村 護 光
SCHOOL CHOICE IN JAPAN
‑Learning from the experiences of other countries‑
M or i mi t suNAKAMURA
. J a pa ne s epu bl i cs c ho ol so fc ompul s or ye duc at i o n,t hati s , pr ima r yandj um iorhi g h s c hoo l s , ar ehi g hl y e val ua t e di nt e r na t i o nal l yf ort hei runi f om l yhi ghq ual i t ynat i onwi d e .Ho we ve rr e al i t ys ho wst hatmor e andmor ec hi l dr e nha vedi f hc ul t i e si ns c ho ola ndbe c omet r ua nt ,r e f us i ngt oat t e nd.I nJ apa n,c hi l dr e nof s c hoola gear eas s i gn e dt one i g hbo r ho odpu bl i cs c hool sde s i gnat e dbyt hel o c als c hoolboa r d.I nt hef a c e oft heha s hr e al i t yo ft hei nc r e as i n gnumbe rofa bs e nt e e s ,voi c e sf r o m al ls i de sha vebe e nr ai s e dc al l i n g f o rs c hoolc ho i c e ,whi c hha sno wbe c o meaho te du c at i onalt o pi cf a vo r e dbypol i t i c i a ns .Thi spape rf ir s t r e vi e wst heJ apa ne s es c hoola t t e nd anc ez o nepol i c y,andt heba c kgr o undofwhyandhows c hoolc hoi c e s t a r t e d. The ni ts t udi e se xa mpl e so fs c hoo lc hoi c ea si mpl e me nt e di nt heU. S.andNe wZe a l a nd.Fi nal l y , i tc ons i de r st hemos tde s i r a bl es c hoolc ho i c epol i c yf orJ apan.
キーワー ド:
s c hoolc hoi
ce,al t e r nat i ve,at t e ndanc ezone
1 .は じ め に
小中学生の不登校が相変わ らず増加 している.学 校へ行 くことに抵抗感を持 った り, どうしようもな らない不適応 に苦 しんで学校 に行 きた くて も行 けな い子 どもやその親の苦 しみが統計数字の中に見 えて くる1 ) . この ことは本人達 は勿論 の こと社会 の問題 であ り,損失である.不登校の理由はさまざまであ ろ うが,なぜ不適応に苦 しんでいる子 どもが同 じ環 境を抜け出せないのだろ うか.現実 は,我が国では, 義務教育のための公立学校 は居住地で割 り当てられ, 指定 されてお り,通学 している学校 の変更 には相当 の理由がいる. しかも,た とえ特別 な理由に基づい て変 えた ところで同様 な学校が待 っているかもしれ ないとした ら,子 どもにとっての選択は不登校 しか ないであろ う.
高校での中退者の数 も同様減少す る気配 はない2 ) . しかし,高度技術社会 はひたす ら高学歴を求めつづ け3 ) ,途中での脱落を許 さない. リス トラの進む産 業界 は企業内教育の余裕を失 って,すべて出来上が
●一般科教授
原稿受付
2 0 0 0
年8
月3 1
日った即戦力を本人や学校 に求めてきている.子 ども 達が既存の教育制度のルー トを外れて,学歴 な くし て人生で経済的豊かさを追求す ることは極めて困難 となってきている.
ところで,本来教育の機会均等を保障 した義務教 育を実現す る我が国の学校教育制度 は, これ まで国 民への教育の普及 と,教育水準向上 に大 き く貢献 し てきた. しかし,高度経済成長を達成 し,成熟 した 自由な民主主義の社会は,人の生 き方 も価値観 も多 様化 した社会である.戦後か らこれ まで,我 が国の 教育制度は機会均等,平等を標傍 し,社会 の全般的 底上げに資するものであったが, このため,学校 は 規格化 し, この規格 にあわ ない子 どもたちに とって は窮屈で,息苦 しい場 ともなってきた. この硬直性 や重圧感を緩和す るため,従来の学習指導要領では, ゆ とりの教育が叫ばれ,授業の総時間数の削減や, 必修科 目の精選, カ リキュラム編成 の工夫, また特 別活動の活性化を図 ることで,生徒の心豊 かな学校 生活 を実現 しよ うとしてきたのである.学校 はその 都度,現場での創意工夫 と努力を求め られて きた.
しか し, この間,学校 に不適応を起 こした り,学校
か ら逃避す る子 どもの数は増加 を続 けた.国のカ リ
キ ュラムの基準 に沿 う義務を負い,物的,人的資源 に限 りある個々の学校 の努力だけでは限界 があ ると い う現実が我々の前 につ きつ けられたのである.不 適応児童生徒 の対応のためには,学校 にはスクール
・カウンセ ラーが配置 された
4)が, カウンセ ラーの 力だけに頼れ るものではなか った. また, この よ う な問題 の解決策 として,全国のすべの学校 に一様 に 求めて きたゆ と り教育 は,その結果 として当然 の こ とな らが公立学校 の児童生徒 の学力低下
5)や私学 と の学力格差の不安 をます ます大 きくし, これに対 し て,公教育 はその学力補充のためには公然 と私塾 の 助 けを求めてはばか らないよ うになっている.
不登校 の問題 には,個々の学校の改善努力や教師 の指導工夫が必要であることは勿論 の ことであるが, もっと根本的 に,制度的改善が求め られ るべ きであ ると考 える.器 も中身 も基準 の上 にのった現在 の単 一 の タイプの学校では,その学校独 自の努力だ けで すべ ての子 どもたちの多様 なニーズに対応 で きな く なっている.今 の学校で問題や悩みを抱 えた子 ども 達 は,別 の環境や機会の中で, もっ と生 き生 きと勉 学がで き,通性 を開花 させ ることが出来 るか もしれ ないのである.義務教育 であって も, なぜ学校 を割 り当て られ,ぜ ひその学校 に通わ な くてほならない のか.なぜ不適応をおこしている学校 を変 えられな いのだろ うか.教育消費者の立場 に立 ってみ ると, まことに不合理 な話 となって くる.
Sc hoolc hoi c e ( 学校 選択)の考 えは,我 が国 で も,近年,急速 に注 目を浴びてきている.現在 で も 確 かに私立学校や国立学校の選択 の道 もあ るが, こ こで取 り上 げ る s c ho o lc ho i c e は,初等中等の義務 教育段階で実施 され る公立学校 の学校選択 を指 して いる.本文では,我 が国の学校選択 につ いて, これ までの経過 と現状 を整理 し,外国の s c hoo lc ho i c e と比較 ・考察す る中で,我が国の学校選択 の今後 を 展望 してみた.
2.
我が国の学校選択2 ‑ 1 従来の学校選択の解釈
今 日, 我 が国で行われてい る市町村教育委員会 が子 どもの通学す る公立 の小中学校 を決め る 「 就学 校 の指定」 は,国が市町村教委 にゆだねた機関委任 事務 の一つで ある ( 学校 教育 法施行令第五条).同 施行令第五条の二項では,当該市町村 の設置す る小 学校又 は中学校が二校以上ある場合 においては,当 該就学予定者 の就学すべ き小学校又 は中学校 を指定 しなけれ ばな らない としている. このため親や子 ど もの選択 を制限す る規定 はないが,市町村教委 は例
外 な く学校 ごとの通学 区域 を設 けてお り,特別 な事 情がないかぎ り通学す る学校 は住 んでいる場所 で機 械的に決 まっている.
特別 な事情 については,同施行令第八条 で,第五 条の二項 の場合,相 当 と認め るときは,保護者 の申 立 によ り,その指定 した小学校又 は中学校 を変更す ることができるとある. この申立 の相当と認め る場 合 については,普通主 として地理的な理由や児童の 身体的な理由が考 えられ るとし,他の小学校 に入学 す る場合 に比 して,本人 もしくはその保護者 に対 し て著 しく過重 な負担 となることが,客観的 に予想 さ れ る場合 をい うとの文部省 の見解 が ある. ( 昭 2 7.
4. 1 7 初 中局庶務課長)
この他 に同施行令第九条では区域外就学等 につい て規定 している.児童生徒 は,彼 らの住所 がある教 育委員会が指定 した学校 に就学す ることが原則 であ るが,児童生徒の住所がある市町村以外の他 の市町 村が設置す る小学校又 は中学校 あるいは学校法人 ま たは国の設置す る小学校文 は中学校 に就学 させ るこ とも可能であるとしてお り, これを通学区域外就学 等 とよんでいる. この場合 も,他 の市町村 の設置す る小学校又は中学校 の通学を認め る場合は,地理的 条件 か ら指定 された学校への通学が困難,又 は危険 であった り,通学距離,通学時間,交通の便等か ら みてやむをえない場合等 と限定的に解釈 され る. こ れ以外の越境入学 は,違法 なもの と解釈 されて きた.
就学校指定の この厳 しい解釈のため,中曾根 内閣 の臨教審 の第三次答 申 ( 1 98 7 )で は,「 学校選択 の 機会 の拡大」が盛 り込 まれ
,「 硬直的 な就学校指定 は学校教育の画一性 につなが る」 ことが指摘 され, 市町村教委の自主的判断による通学区域制 の見直 し や学校選択機会の拡大が提言 された. これを うけて, 文部省 は各都道府県の教育長宛 に初等中等教育局長 名で通知 をだ している ( 昭和 6 2 年 5
月1 8 日,文初高 第1 90 号) . しか し, この通知 は,「 現行 の市 町村 教 育委員会 の学校指定の権限を維持 しつつ,地域 の実 情 に即 し,可能 な限 り,子供 に適 した教育 を受 け さ せた いとい う保護者の希望を生かすため,当面,具 体的 には調整区域 の設定 の拡大,学校指定 の変更 ・ 区域外就学の一層 の弾力的運用,親の意向の事情聴 敬,不服 申立 の仕組みの整備 など多様 な方法 を工夫 す ることが提言 されていることにかんがみ, この際, 各市町村教育委員会 においては,‑ この制度 の運用
につ いて,検討す る必 要があ る. 」 との表現 に止 ま
っている. このため, この間題 は,その後 も市町村
教委及び学校現場 では,ほ とんど緊急に検討 され,
実施 され ることはないまま従来 の解釈が通用 して き
た.
しかし,その後 1 0 年経 って,再 び通学区域の弾力 化が叫ばれた. 1 9 9 7 年 1 月には文部省から各都道府 県教育長宛 に 「 通学 区域制度 の弾力 的運用 につ い て」の通知が出 され ると,俄 に市町村教委の対応 に 活発な動 きが見 られ るようになってきた. これには 同通知の中の次の 2 点が注 目され る.第‑ にこの通 知では,行政改革委員会の 「 規制緩和の推進に関す る意見」( 第二次)( 平成 8 年 1 2 月 1 6 日)を添付す る 形をとっている点である. この意見書 は学校選択の 弾力化に向けた積極的取組を促す内容であ り,第二 は通知文の文言である.昭和 6 2 年に臨教審の答申を 受け,文部省が出 した通知文では , 「 検討が必要で ある」 との表現であったが,今回は 「 多様 な工夫を 行 うこと」 , 「 就学すべ き学校 の指定の変更や区域外 就学について, これ まで認め られていた理由の外 に 児童生徒の具体的な事情に即 して相当 と認めるとき は,保護者の申立により, これを認めることができ る」 との通達的 ニュアンスが強 く感 じられ る点であ
る.2 ‑ 2 学校選択 を醸成する環境
近年の学校選択の動 きで特に 1 9 9 6 年の動向が注 目 される. この年の後半,行政改革委員会の行革規制 綬和小委員会及 び,地方分権推進委員会は小中学校 の越境入学を認める選択の是非を検討項 目に入れ, 各々 この年内に政府へ勧告 ・意見書を提出 した.行 革規制緩和小委員会 は学校の選択機会拡大の視点か ら通学区域制度の弾力化について,地方分権推進委 員会 は機関委任事務廃止 ( 就学校指定 を地方へ移 管)についてまとめたものである.
この行革委の意見書は,臨教審の答申での学校選 択の弾力化が,その後 も一向に進展 していないこと
に触れながら , 「 指定 された学校 を変更で きるのは, 保護者が申立を行い,同教育委員会が相当 と認めた 場合に限 られてお り,基本的に,保護者等に子供を 通わせたいと思 う学校を選択す る機会 は制度的にも 実態的にも保障 されていない」 ことを指摘 し , 「ま た指定 された学校以外の選択は困難 とい う硬直 した 状況から自らの意思で多様 な価値の中から選択でき
る状況になるとい うことは,選ぶ側の意識を柔軟 に す るとともに責任を感 じさせ,ひいては逃 げ場 のな いために生 じている不登校の問題の解決にも寄与 し てい くと考 えられる」 として,通学区域の弾力的運 用の拡大を踏み越 え,親や本人の自由な意思による 学校選択を求めるものであった.
年が明け ,1 9 9 7 年に橋本首相 は行政,経済構造等
の五つの分野に教育改革を加 えて,内閣が六つの改 革に取 り組む ことを決めた. このため,関係省庁 は 1 月末までに具体的改革 スケジュールを報告す るよ う求め られ,文部省は 「 教育改革 プログラム」を策 定 し,首相 に報告 した. この中に通学区域 の弾力化 が入 っている. これ以前 ,1 9 9 5 年 4 月に 「 二十一世 紀を展望 した我が国の教育のあ り方について」 の文 部大 臣の諮問を うけて発足 した第十五期 中教審 は 1 9 9 6 年 7 月に学校週五 日制を中心にした一次答 申を 出 している. これを受けて文部省 は答申を踏 まえた 具体的な施策を展開す るため,省内に教育改革推進 本部 を設置 した. しかし, この時点では通学区域の 弾力化 ・学校選択 は,大 きな話題 として, どの紙面 にも登場 していない. これを考 えると, この間題が, 翌年 1 9 9 7 年の文部省の 「 教育改革 プログラム」 の柱
となった こと,加 えて初等中等教育局長か ら各都道 府県教育長宛に出された通知 には,文部省 の方針転 換 ともとれる唐突 さがある.現 にこの時の通知文 は, 行革委の意見を添付す る形をとってお り,受 け取 る 側 に文部省 自らの方針 とい うより,行革委 の意見の 外圧を感 じさせ るものであった.
時を同 じくして,文部省は同年 1 9 9 7 年 1 月に 「 地 方行政のあ り方に関す る調査研究協力会議」を設置 した.その後 , 8 月に 「 教育改革 プログラム」 を改 正 し, この中で,通学区域の弾力化に向けて平成 9 年度から各市町村 における多様な工夫を奨励 してい
る. また , 9 月には中教審に 「 今後の地方教育行政 のあ り方」について諮問 した. これを受 けた中教審 は 1 0 月に 「 地方行政に関す る小委員会」を設置 し, 翌 1 9 9 8 年 9 月に答申を出 している.答申の骨子 は通 学区域の弾力的運用,学校評議員の新設,学校長の 権限拡大であった.
行政の通学区域 の弾力化 による学校選択 を経済界 も強力にバ ックア ップしている.社会生産性本部の 社会政策特別委員会は 1 9 9 8 年 7 月に教育改革 につい ての中間報告をまとめ,翌 1 9 9 9 年 7 月に最終報告を まとめているが,その中では,弾力化を飛 び越 えて 通学区先の学校指定の廃止が提言 されている.一方, 行政改革委員会規制緩和小委員会 もこの年 の 1 2 月に 最終答申を出して,通学区域制度 を学校の選択機会 の拡大の視点から弾力化す ることを求めた.
市町村教委や学校現場で も 1 9 9 8 年か ら目立 った動
きがでている.八王子市教委 は小学校 1 校 について,
三重県紀宝町教委 は町内 7 つの小学校すべてについ
て通学区域指定を外 した. また 1 9 9 9 年 9 月には東京
都品川区教委が平成 1 2 年度の 1 年生か ら学校選択制
度を導入する決定をして新聞を賑わせた.我 が国に
は, これに先立 って,特認校 として特定 の学校 につ いて通学区域指定を外 した例は 1 9 7 7 年の札幌市教委 の例 まで逆上 ってあるが,制度的に弾力化を図 る学 校選択 の動 きは近年の ものである.
2 ‑ 3 なぜ学校選択か ( 関係者の思惑)
なぜ, ここに来て学校選択なのであろ うか. これ を支持 し,押 し進める関係者の動 きには,それぞれ の思惑が交錯 している.
政府 にとっては,国の総合的行政改革を進め る上 で教育分野で も例外な く改革を押 し進めてい く必要 があった.通学区域指定を外 し,親 に学校選択 の自 由を与 えることは規制緩和推進の目玉 とな りうるも のである.国の権限,予算のほとんどを地方教育委 員会へ委譲す る教育分権の大改革は,その可能性 も 機 も熟 していない現状では,国の機関委任事務 とそ の権限を地方‑委譲す ることは地方分権 の項 目を一 つでも増やす上でまた とない好材料であった.
ところで,産業界の徹底 した q u a l i t yc o n t r o l ( 品 質管理)を実現 した決定権 限を現場 に下 ろす s i t e ‑ ba s e dma n a g e me n t ( 現場主義)は,我が国の経済 成長の原動力であったが,同時 に ,1 9 8 0 年代後半, 当時世界市場で劣勢であった欧米の企業 もこれを日 本 に学 び,その後 の再生 ・復活を果 している. この マネージメン トは欧米諸国に大 きな影響を与 え,彼 らの教育の場 にも適用 された. この現場主義が個性 と実力を持 った者同士の競争が更 に良いもの作 り上 げてい くとす る自由主義経済の理論 と結 びつ くので ある.我が国の経済界 も,従来か ら教育に も市場原 理 を導入 し,競争 によって独占状態である公教育を 活性化 させ よ うとの考 えが強かった.またその よう な競争が税金の有効活用につながるもの として学校 選択を支持 してきた.国が財政赤字に,企業 自身が 不況 ・リス トラの中での体質改善 に苦 しんでいる
1 9 9 0 年代後半には特にこの戸が強 くなってきた.社 会経済生産性本部 による教育改革 に関す る報告書の 中では , 「 学力が学校 だけで身 につかない.不登校 の増加,学級崩壊,い じめ,突発的行動 な ど従来の 常識では考 えられない質的変化が起 こっているが, これは学校が教育機関 として, うま く機能 していな いためであ り,学 区制 の枠を外 して,家庭 ( 親 ・生 徒)が自由に学校 を選べ るようにす ることで競争の 原理を働かせ,親 の信頼 にこた えるとともに,学校 教育の本来 の機能 を回復 させた い」 と主張 してい
る.
しか し,国の教育行政を執 り行 う文部省 は,適正 規模の学校 と教育内容 を保障 し,それによって教育
の機会均等 とその水準の維持向上を図る趣 旨か ら, 通学区域指定制度を堅持 してきたのであ り,学校選 択 にはこれまではず っと消極的であった.相当の理 由のない指定外の通学,越境入学 は違法との解釈で あったはずである.同省の姿勢の急転換の背景 には 政財界から外圧が強かった ことを感ぜざるをえない.
従来のシナ リオの延長で同省が通学区域指定の弾力 的運用を推進す るのであれば, まさに同省が説明す るいじめや不登校児童生徒の対応策 として実施す る ものであ り,あ くまでも文字通 り通学区域制度 の弾 力的運用である.行革委 や,経済団体 が提唱 す る 個々の学校を個性化 し,親や子の自由意思 による競 争原理の上に立つ学校選択の構想 とは一線 を画 して いるはずである.
学校選択を求める草の根の市民団体 の動 きも, こ れまでは,いじめ等の理由でも転校できる通学 区域 指定の弾力的運用を中心 とした ものである.ただ し,
1 9 9 8 年の日本 フ リースクール協会の発足に もみ られ るように中退者 ・不登校対策 として当該児童生徒 に
h o mes c h o o l i n g も認め る選択肢 を求めている. こ れまでの ところ,広 くすべての児童生徒を対象 とし て個人の自由意思による学校選択を想定 した動 きと 同一のものとはなってはいない.
公立小中学校の設立者である市町村教委 も,従来 は文部省 の法解釈の通 り学校選択を認めて きていな い. しか し ,1 9 9 7 年 1 月の文部省の通知で,学校選 択を前向 きに捉 え,積極的に導入 しようとする教委 はでてきている.彼 らの理由は,教育消費者の立場 に立 って選択肢を増やす ;競争により,公教育 を活 性化 させ る :特に都市部では,公立学校に個性 を持 たせて私立学校 に対 しての公立学校の地盤低下 を防 止す る等である.
しかし,その一方で,通学区域の指定枠 の取 り外
しに踏み切 った理由には,別の思惑が交錯する.少
子化 と過疎化が進行す る中で,多 くの教委 にとって
は,一部の学校 は重い財政負担 となって,維持が困
難 となっている現実がある. しか しながら,学校 の
存続 は直接地域住民の利便や心情に関わ りを持つ も
のであ り,学校の統廃合は容易に断行できない. こ
れを学校選択 とい う市場原理にまかせて,決定 した
となれば大義名分は立つ. この点で ,1 9 9 7 年 1 月の
文部省通知に添付 された行革委の意見 「 現行法令で
定め られた学校指定制度 においては,市町村教委 は
子供の就学すべ き学校を指定す るよう定めているが,
通学区域 に関す る規定はな く,指定に当た っての保
護者の意向の確認や,保護者の選択についての制限
は行われていない. したがって学校指定にあた って
紘,保護者 の意 向に十分配慮 し,保護者の選択 を働 かせ ることは,市町村教委 の前向 き,かつ積極的 な 取 り組みが可能 である」 との文言は,学校選択実施 への確かな根拠 を与 えた と考 えられ る.
2 ‑ 4 我が国の学校選択のパ ター ン
日本 の学校選択 は,関係者のそれぞれ違 った思惑 の中で生 まれ, 進行 している とい える. それ故, 学校選択を提唱す る関係者 の間での学校選択の解釈 や認識 の程度に差があるが,次のいずれかの方向, またはその組み合わせの中で推進 されてい くもの と 考 える.
a. 通学区域指定制度 を維持 しなが らこれ を弾力的 に運用 し,現行 の 「 相 当な理 由」を拡大す る中で実 施 してい く学校選択.
b. 通学区域指定制度を廃止 し,親や子 どもの自由 意思によ り,同一教育委員会管轄下,又 は この境 を 外 した複数校の中か ら選択す る学校選択.
C. 現行制度の中に,通学 区域の指定 のない学校等
の
a l t e r na t i v e s ( 代替)を設 けることに よ り選択肢 を増や してい く学校選択.
これ迄の我が国における学校選択 は,政治的脈絡 の中か ら発想 された t o p‑ do wn の印象が強 く,教育 界内部や,教育消費者 自身の待望の声,現場 か ら大 き く盛 り上 が った bo t t o m‑ up の勢 い と, ダイナ ミ ズ ムに欠 け る印象が あ るが,それ以上 に何 よ りも s c ho olc ho i c e の歴史 の浅 さか ら くる中身 の不確 か
さ不透明 さは否めない.
3.Sc hoolc l l Oi ce
の先進国に学ぶOECD が 1 9 9 4 年に発行 した Sc h o o l: A Ma t t e r
ofch o i c e は ,s c hoo lc hoi d e の考 えを生む 2 つの背景 を紹介 している.一つは政治的なものであ り, も う 一つは社会的なものである.前者 は 1 9 8 0 年代以来, 欧米諸国の政策 に影響 を及ぼ した公的サー ビスを自 由市場 にまかせ るアプローチである. この考 えは現 場主義 を徹底 させ,学校 に自己の業績成果 に関す る
プレッシャーを持たせ,学校間の競争を通 じて教育 消費者 に選択 をまかせ るものであ り,専門家や行政 のプランニングより,む しろ教育消費者である顧客 の利 益 を第 ‑ とす る考 えで あ る. Ne w Ze a l a nd , Swe de n ,及 び t heUni t e dKi n gd o m は, この考 え に基づいて 1 9 8 0 年代後半 に教育改革を行 った.後者 はます ます多 くの人が教育 を社会的,経済的 な成功 のための重要なステ ップと見 るよ うになってお り, 適 当な学校 を見つけることが親の責任 であ り,子 ど もに とって人生への成功の鍵 とされ る社会状況であ
る.ただ し, アメ リカ合衆国の場合は, ここにも う 一つの要素が加 えられ る.人種, マイノ リテ ィー間 の社会的 ・経済的格差が生みだす不公平 の是正へ の 努力である.始 まったはか りの我 が国の学校選択 に とって,す でに c ho i c e を実施 してい る国々か ら学 び,教訓 とすべ き点 は少な くない.まず,通学 区域 の指定を廃止 し,親や子 に よる学校選択 を可能 に し て,既存の学校間での生徒獲得競争への道 を開 いた Ne wZe a l a n d の例 を考察 してみた.
3 ‑ 1 ニュージー ラン ド型の s c hoolc hoi c e ニュージーラン ドでは ,1 9 8 9 年に労働党政権 は教 育局 を廃止 し,全 国の ほぼ 2, 7 0 0 の初等 中等学校 の 管理 をそれぞれの学校 の親 が中心 となる学校理事会 ( bo a r d s o f t r us t e e s ) に 委 任 して,現 場 主 義 ( s i t e ‑ ba s e dmana ge me nt ) による分権化 を図 った.
1 9 9 1 年 ,Na t i o na lPa r t y の保 守政権 は通 学 区域 指定 を廃止 して,親 の自由な学校選択を可能 とした.
公的予算 は確保 された上で,各校 の学校理事会 は教 師の雇用 ・解雇の権限を持つ と同時に,政府 当局 の 審査 に よる a c c o u nt a bi l i t y (自己茸任) を負わ され た. この点 は後述 の合衆 国の c ha r t e rs c hoo l s と共 通す る.
Ed wa r d
B.Fi s ke& He l e n F.La dd の
Ine n Sc h o o l sCo mpe t eIACa u t i o na r yTa l e( 2 0 0 0 年) は, 1 0 年経過 した 同 国 の The To mo r r o w' s Sc hool s Re f o r ms による s c ho olc hoi c e を次のよ うに総括 し ている.
a. 親 の選択権 は,広 く国民の間で好意 的 に受 け入 れ られ, マイ 1 )テ ィーを含 んだ多 くの家庭 の ニーズ を満た している.
b. 従来の行政主導に比べ,分権化 した構造や学校 現場 の自治 は関係者の間で評価 されている.
C. 各校 は応募者が定員 を超過 した場合,それぞれ 独 自に入学基準を設 け られ ることか ら,学校 に よる 在籍生徒の社会的 ・経済的ノミターンの階層化が進行
し,一部 に悪化傾 向がでている.
C. 市場原理では,勝者がいる一方で,必ず敗者 が 出 る. しか し a c c o un t a bi l i t y に よ る公 立 学 校 ‑ の ペナルテ ィーは在籍生徒 の問題 もあ り,深刻で ある.
負け組を当然予想 したサポー ト措置が必要である.
d. 合衆 国の c ha r t e rs c hoo l s の意義 は,教育 シス テムに改革 と多様性 を持 ち込む ことであ るが,同国 の場合 の よ うに全校 が c ho i c e の対 象 とな る場 合, 政府 が多様性を認 める範囲には限界があ る.
e. 現場主義による自校 の特徴 を優先 させた狭義 の
利益追求 は, よ り広い コ ミュニテ ィーの ニーズや,
教育制度全体 のバ ランスを崩 した り,損ねた りす る ことがある.調整 のメカニズムが必要である.
以 上 の こ とか ら同 書 は, この タ イ プ の s c hoo I c ho i c e につ い ては,社 会 の階層化,抗争 を引 き起
こ し や す く, こ れ を 避 け る た め の c ont r ol l e d c ho i c e (コン トロールされた選択) の必要性 を指摘
している.合衆国の場合 の選択 は ,ma gn e ts c hoo l s の例が示す よ うに,既存校 の他 に選択肢 : a l t e r na‑
t i ve s を作 り,学校 があ る一定 の枠 を地域 の子 ども に割 り当て,残 りをオープソな形で受 け入れた り, また Mi l wa uke e の vo uc h e r の よ うに対象を低所得 家庭の子弟 に限定 した りしているが, この よ うに社 会正義の手段 としてデザ イソした c on t ol l e dc ho i c e の長所 を考慮す る必要性 をあげている. この他 に次 の点を指摘 している.
a. 各学校 には予算面で も, カ リキュラムの面 で も 大 きな自治が与 えられ,学校の予算は生徒数 の増減
に密接 に連動 してい くメカニズムであって も,当初 の設備投資等の資本投下や障害児等への予算 につ い ては行政 ・学校 区の特別 な予算措置が望 まれ ること.
b. 保護者の学校選択の決め手 は,依然 として地理 的要因 が大 き く ,c ho i c e を行使 す る家庭 の子弟 へ の交通手段 の提供 を保証す ることが必要である.
C. 保護者 に とって,情報の入手 が よ り容易で,偏 りが ない よ うにす るた め,情 報 セ ンター ( pa r e n t i nf o r ma t i o nc e nt e r ) 等 の設置が有効 である.
3‑ 2 合衆国型の s c ho olc h o i c e
前述 の A Ma t t e r o fCho i c e の中の s c hoolc hoi c e の考 えを生む
2つの背景 に加 えて,社会的不公平 の 是正へ の努力 は合衆国の s c hoo lc ho i c e を よ り幅 の 広 いものに している.
合衆国において も,児童生徒 は,原則 として学校 区 が指 定 す る居 住 地 の公 立 学 校 ( ne i ghbo r hoo d pu bl i cs c ho o l ) に通 う.それ故,親が子 どもを指定
された学校以外 の学校へ通わせたい場合 は,私立学 校へ通わせ るか,居住地 を変 えるしかない. この回 避 の手段 は , 「ア メ リカの教育 システ ムは不気味 な は ど確実 に階層化 を再生 しつつある.それ は居住地 に基づ くものであ る 」( Co o ks o n,Pe t e r ) とさえ言 わせている. この国の歴史の中で,学校教育 は絶 え ず人種間題で揺れ動 いて きた :黒人の都市への集中, 人種融和策 としての連邦最高裁命令の強制バス通学,
これを嫌 う自人達 の郊外への逃避,都市部 の生活環 境悪化 と公立学校 の荒廃 と続 くものである.公立学 校 を避 け,私学へ通 った り,住宅 を移転す ることで よ りベ ターな教育 を手 に入れ る余裕 のある者 と,そ
れがで きな く, とり残 された者 との間の格差 が広が る中で, この社会的不公平 を是正 しよ うと,合乗国 には実に様々 な c ho i c e の手段 が生 まれた.
合衆国の s c ho olc ho i c e の特徴 は ,1 9 6 0 年以降, 既存 のシステムに新たな選択肢 : al t e r n a t i ve s を創 設 してきた ことである. 1 9 9 4 年の Po l i c y Ana l y s i s ofCa l i f o r ni aEduc a t i on( PACE) の報告書 による
と,全国の K‑ 1 2 ( 初等中等教育) の生徒の ほぼ 1 / 4 は指定の公立学校 には通 ってお らず,かわ りに公立
・私立学校のオプシ ョンを選択 しているとい う.特 に近年の数字 は私立学校への通学者 の増加 とい うよ
り,む しろ公立学校選択 (pu bl i c s c ho olc ho i c e pr o gr a ms ) の積極的利用 に起 因す る と分析 してい
る.バ ラエテ ィーに富 んだ合衆国の s c ho olc ho i c e を整理 してみた.
3 ‑ 2 ‑1 合衆国の s c ho olc h oi c e のパ ターン
1 ) 通学区域指定 の弾力的運用, またはこの枠 を外 して,既存の複数の学校 の中か ら選択 させ る.
2) 既存のシステムの中に,通学区域 を指定 しない 学校 区全体 を対象 とした,特別の興味 ・特性 を持 っ た子 どもたちのための学校を学校 区が設置 し,選択 肢 を増やす.
3 ) 二重在籍 制度 ( d uale nr o l l me n t )を設 け る.
高校 と大学の連携 により,高校生が大学に在籍 した り,高校,大学,又 はその両方に コースが開設 され て,単位 の申請 ・修得が認め られ る.
4 ) 公的予算で賄われるが,学校 区の管理や法的束 縛 を うけない,ユニークな教育 目標 を持 った独立性
・自治性 の強い公立学校 の設立を許可 し,選択肢 に 加 える.親や教師等の有志 も学校 の設立申請がで き
る.
5 ) 税制優遇策 ( Ta xc r e di t , Ta xr e d u c t i o n ) を実 施 し,私学通学を援助す る.
6 ) 学齢期の児童生徒の保護者 に,公立学校 の生徒 一人 当た りの教育予算に相当す る金額 の教育 クーポ ン ( s c ho o lvo u c he r ) を配給 し,公立 ・私立の どの 学校 で行使す るかは,保護者が決め る.
なお ,1 9 9 8 年 1 0 月の TheEdu c a t i o nCo mmi s s i o n o ft heSt a t e s( ECS) の調査では,全米の 5 0 州,首 都 Wa s hi n gt o nDC 及 び Pue r t oRi c o の中で,いず れ の タ イ プ の学 校 選 択 の制 度 も持 た な い 州 は Ke nt u c ky, Mo n t a na, Ve r mon t , We s tVi r gi n i a の 4 州だけであった.
上記1 )の場合は,学校 区 ( 管轄教育委員会) の学
校間だけで選択 を認 めた i n t r a ‑ di s t r i c tc ho i c e と,
学校 区の境 を越 えて,公立学校の選択が可能である
i nt e r ‑ di s t r i c tc ho i c e がある.なお,多 くは通学指 定校以外の選択 は相手の学校の定員に空 きのあるこ とを基本 としている. また どの学校へ も異動が可能 なものを o pe ne nr o l l me nt ( 開かれた入学) と呼び, 生徒の人種構成の改善を必要 とす る所でのみ異動が 許可 される c o nt r ol l e dt r a ns f e r と区別 している.
また,実施方法 として,州が学校区にこのプログ ラム‑の参加 を義務づける ma nda t o r yo p e ne nr ol レ me n tpr o gr a ms と,参加意思の有無 を学校 区に打 診す る任意 の方式 が あ る. Mi nne s o t a 州 は 1 9 8 7 年 に州のすべての学校 に学校区の境界を越 えて異動を 受け入れることを義務付 けた o p e ne nr ol l me n t を州 議会で決定 し,翌年から実施 した全国で も最初の州 である.我が国の s c hoo lc ho i c e は, この1 )のタイ プで議論 されている.
2 ) は ma gne ts c ho o l s のことである.人種融和政 策への国家的責任 は ,1 9 7 0 年代以降,多 くの ma g‑
n e ts c ho o l spr o gr a ms を発展 させた. このプログラ ムはたいていは都市部の既存の学校に併設 された り, 人種構成に偏 りのある地域 に新設 されている.テク
ノロジー,芸術 といったテーマに基づいた特色ある カ リキ ュラムを持ち,施設 ・整備 を充実 させ,学校 区全域から生徒を集めている.主に人種融合政策を 満足 させ,都市部校 における黒人,マイノ リテ ィー に偏 った生徒の人種構成 のアンバ ランスを是正す る ためにデザイソされている.
3) には二つのタイプがある.包括的なプログラム は高校生が最小額, または無料で大学の コースに在 籍 し,修得単位は高校,大学双方で認め られている.
また,限定的なプログラムでは大学での授業料支払 いが求め られた り,認定 され るコースや単位 にも制 限があ り,大学 コースの在籍その ものにも厳 しい基 準が設 けられている.
4 ) は ,c ha r t e rs c ho o l s で ある. この コンセ プ ト の前提は,公教育 システムに競争を導入す ることで ある.一般に学校 は自由に独 自のカ リキュラムを作
り,スタッフを雇用 し,財政 をコン トロールできる.
しか し,スポソサーである学校区等 との契約 の上 に 成 り立 ち,学校創設 に向けて掲げた c ha r t e r ( 憲章
・学校 目標) の履行が義務 となっている.認可後 の 契約更新の如何はこの結果次第である. 1 9 9 1 年に ミ
ネ ソ タ州で c ha r t e rs c hoo l の設立 を認める最初の法 律が出来 てか ら ,1 9 9 9 ‑ 2 0 0 0 年度 においては 3 6 の州 と Wa s hi n t o nD. C. が同様の法を持つに至 り,全国 では,お よそ 1, 7 0 0 校が運営 されている.連邦政府 も同年度 は ,$1 4 5mi l l i o n の予算付けをして奨励 し ている.
5) は税制上の優遇策を講 じて,不満のある公立 に かわ る私学選択 を容易 にしている制度である.
a.Taxc r e di t の場合
私学通学 の家庭 の教育費負担を軽減す る目的で, vo uc he r の予備的 ・代替的措置 ともいわれている.
納税額から控除す る分を保護者 に提供す る.例 えば, ア リゾナ州の場合は,住民の私学への教育支出に対 して は $5 0 0 まで の t axc r e di t が認 め られ る. この 場合 は,本来の納税額から $5 0 0 を差 し引いた額が実 際に支払 う税金 となる.
b.Taxde d u c t i o ns の場合
Ta xc r e di t と同様 の目的を持つ.保護 者 の課税 対象額か らの控除である.例 えは子 どもを私学 に通 わせ る家庭が ,$1, 5 0 0 の課税控除の資格があれば, 当初 の課税対象額からこの額を差 し引いた残 りの額 に課税 され る.
6) について,合衆国で実施 されているものには, pr i va t evou c he r s と pu bl i cvouc he r s がある. Pr i ‑ va t evou c he r s は,民間の有志の団体 ・組織が,主
に都市部 の一定の所得以下の貧困家庭 を有資格者 と して,教育 クーポンを提供 している.親はそのクー ポソを行使 し,宗教系を含む私立学校‑子 どもを通 学 させている.
Pu bl i cvo u c he r s は,行政が,主に一定 の条件 に あてはまる家庭 を有資格者 として,教育 クーポンを 発行 している.親 は公立 ・私立の学校 を選択 し,そ の クーポ ンを行 使 す る. Mi c hi ga n 州 の州 議 会 が 1 9 9 0 年に t he Mi l wa uke e Pa r e n t a lChoi c e Pr o・
gr a m を承 認 し, また Ohi o 州 Cl e ve l a n d が 1 9 9 6 年 度か ら t heCl e ve l a ndSc ho l a r s hi pa nd Tut or i n g Pr o gr a m として実施 してい る.各々,同市 の資格 あ る低所得 の家庭 が, この vo uc h e r を受 け取 って いる.州全体を対象 とす る法を持つ州 は Fl o r i da の み で あ るが,同州 で は,州 の a c c o unt a bi l i t y 法 で 成績不振 と認定 された学校 の生徒を対象に実施 して いる.
合衆国 における現行 の vo u c he rpr o gr am は対象 が社会的 ・経済的弱者 に的が絞 られお り, また, ク ーポンの額 も公立学校の生徒‑人当た りの経費分の 満額 とはなってお らず ,Fr i e d ma n の提唱 した u ni ‑ ve r s a lvo uc he r( 1 9 6 2 ,Ca pi t a l i s m a ndF7 1 e e d o m)
とは違 って いる. しか し ,s c hoo lvo uc he r の提唱 者 は究極的には uni ve r s a lvo u c he r を目指 してお り,
これ まで,い くつかの州では実施 の可否が州民投票
にかけ られたが,その都度退 け られ て きた.また
vo u c he r が宗教系私立学校で使用が可能か どうかに
ついては合憲 ・違憲の意見が激 しく対立 し, これま
で連邦最高裁の最終判断は出ていない.
3
‑2 ‑ 2 Sc h oolc hoi c e の評価
これまで ,s c hoo lc hoi c e を使 って異動 した生徒 の学力の実態,また c hoi c e を行使 しないで公立学 校 に残 った生徒 との比較 に関す る決定的データはな
い. しか し一般 に次の点で評価 されている.
a. 行使 した保護者は高い満足度を示 し,保護者の 学校参加が増 え,学校 との一体感が強まった.
b. 学校 の指導者及 び教職員の間では,学校改善の 努力 と使命感が強 まった.
C. 生徒の学習や,活動‑の動機 ・意欲の向上が伺 える.
一方,問題点 としては,当初か ら平等 ・公平性 の 問題が懸念 されてきたが,次の通 りである.
a. よりよい学校 を求めて地元校を脱出す る生徒は, 同時にその学校か ら予算を持ち出 し,残 った他 の生 徒をより劣悪 な環境 に置 き去 りにす る.
b. 地理的条件か ら選択肢が公平に提供 されない.
‑学校区一校 のよ うな農村部ではほとん ど選択肢 は ない.
C. 異なる背景を持 った生徒が互いに学 び合 う機会 を減 らし,学校や地域社会の結びつ きを弱め,再 び 人種間の分離 を促す恐れがある.
d.Ma gn e ts c hoo l s は設立 とその維持 に支出がか さむため,他の学校 よ り投資額が大 きく,不公平感 を生む.
e.Char t e rs c hoo l は,その設立趣 旨から,他の公 立学校 と同様 の基準で評価す ることが難 しい. また, 学校区か ら独立 しているため,監査の目も届 きに く
い.
e. カ リキュラムの統一 性,中身,学習 レベル ・到 達度の維持を緩める恐れがある.成人に必要な共通 す る常識,公徳,基礎基本の取 り扱いが学校 によ り 異 なった り,教 えられ る保障 もな くなる.
4.Sc I 1 001choi ce のシナ リオ Sc hoolc ho i c e に関す る一般的論理 は,本質的に 独 占状態である公教育 に競争原理が導入 され ると, 学校の中央 システムへの傾斜が減 り,学校が個々に 自主的,実質的改善を起 こす. この競争,脱集中化, 自由選択の結果,停滞 した業績不振の学校 は淘汰 さ れ,健全な学校が残 って,教育全体 の活性化,発展 に寄与す るだろ うとい うものである.
合衆国では ,1 9 8 3 年の教育報告書 A Na t i o n At Ri s k 以後各州が とりかかった教育改革 は州が設 け た基準 を確 実 に履行 させ るた め の a c c r e di t a t i o n
( 許認可基準)の審査 と,そのための. 、‑ ドの充実 であった. しかしこの改革の中か らは目立 った成果 は生まれなかった.やがて,教育政策 は, この よう な州及 び学校区主導型か ら,学校現場に権限を下 ろ した s i t e ‑ ba s e dma na ge me nt に よる分権型 に変わ り,学校間の競争 ・選択の時代に入 っていった.
ガイ ドラインの緩和 と競争 による個性化 は,学校 の独立性を強めたが, これ と引 き換 えに学校 自身が 納税者‑の義蕃,すなわち a c c oun t a bi l i t y (自己責 任)を求 め られ る よ うに な り,い くつ か の州 で a c c o unt a bi l i t y 法の成立をみた.教育界における結 果主義の到来である.
Ac c o u nt a bi l i t y を課す るため には,基 礎資料 と して,共通で客観的な評価の物差 しが必要である.
これが共通テス ト ( s t a nd a r dt e s t ) である. この共 通 テス トを実施す るにあたっては評価すべ き学習内 容が共通 していることが前提条件 となる. ク リン ト ン政権下では,教育サ ミッ トを通 じて州知事 の共通 の認識 を得て, これまで各州,各学校区でまちまち であったカ リキュラムの国家的基準作 りが試み られ た.各州は, これにならった州独 自のカ リキ ュラム の基準作 りを奨励 され ,s t an da r dt e s t の環境 は整 えられていったのである.
一方,選択す る側のための条件整備 は情事 艮・資料 の提供である.選択す る者,つま り教育消費者であ る親や,地域住民 ・納税者 には s t a nda r dt e s t の結 果が,広 くマスコミを通 じて学校毎に公表 されてい る.また,州議会を通過す る各州 の a c c o u nt a bi l i t y 法 も学校や学校区に現状の報告や,公開を求めてい る.学校 は s c hoo lr e po r t ( 学校 自書)に よ り家庭 や地域社会への報告が義務づけられているのである.
いまや結果主義は ,a c c o u n t a bi l i t y 法によ り,児 童生徒から学校区までの学校関係者に,結果 に対す る実効 ある措置を求めてい る.学力保障の a c c o u n‑
t a bi l i t y は生徒 には,庶政留置 ;卒業延期 :夏期補 習授業への参加義務を求め,教員 には生徒の学力テ ス トの結果に基づ く報奨か らスタッフの入替 え,学 校 には格付け評価の上,不振 ・停滞が続いた場合は 州教育委員会の介入 ・指導による改善命令,最悪の 場合は学校閉鎖の形で自己責任が問われている.
我が国の学校選択は初歩段階であるが, この学校
選択に伴 う同様 のシナ リオはすでに政財界 に設置 さ
れた各種委員会の答申 ・提案の中で用いられ るキー
ワー ドに伺 える. カ リキュラムの多様化による学校
の個性化の推進 とその中心 となる校長の権限 ・裁量
幅の拡大 :学校 を評価 し,透明性を高めるための学
校評議員や,第三者評価機関の設置 :および学校 白
書の作成 ;入 り口でな く,出口の卒業テス トの必要 性 ; Vo uc he r s の使用 などの提言 に見 られ るもので ある.
いずれにしても,学校選択は, このようなシナ リ オから外れて考 えることはできないのである.
5.
日本の学校選択の道Sc hoolc hoi c e は,公立学校 の質が制度 を通 じて 維持 されている国におけるより,む しろ公立学校が 失敗 していると国民 に受け取 られている国でよ り強 力 に押 し進め られてきた傾向にある.我が国の義務 教育は,各学校の質が高 く,均等であると世界の各 国 か ら高 く評 価 され て きた. 日本 の学 校選 択 が bot t om‑ up の運動 としてこれまで大 きく盛 り上がっ てこなかった理由はこの辺 りにあるかもしれない.
ところで,公立学校 は本来,生徒の基礎学力を保 障すべ きところである.保護者はそれを学校に委託 し,学校にはその責任がある. しか し, この使命を 帯 びた学校が, この他にも生徒や親の持つ ニーズを すべて満足 させ ようとするところに問題が出てきた のである. しかし,合衆国では,様々なニーズに対 応 しよ うと,公立学校が規模 を拡大 し, カ リキ ュラ
ムを多様化 して辿 った過程 は,国際競争力が危供 さ れ るほ どの,学力低下であった.現在 は,学校本来 の使命が再確認 され , 3R ( 基礎学力 :読み ・書 き
・計算)への回帰が叫ばれ,授業 日や授業時間の確 保 ,s oc i alpr omot i on (自動進級)の廃止運動‑ と 繋が り,また小規模学級,小規模学校の学習環境が 見直 されている.
我が国でも,不登校問題への対応を含めて多様化 への要求が強 ま り ,s c hoolc hoi c e が表舞台に登場 した.通学区域指定を弾力化,又はこれを廃止 し, 個々の学校 に責任を持たせ,互いに競争 させ,各学 校 に自助努力を促 し,個性化 させ ることで教育消費 者の多様 なニーズを満足 させ,公教育の改善を図ろ
うとい うのである.
しか し,一方で,国のカ リキュラムの基準に沿 っ た均質で確かな学力の保障 と, きめ細 かい生徒指導 を求めなが ら,他方で競争による一層の個性化を促 し,不登校,中退問題の解決 もみな‑つの学校 に迫 ることは非現実的ではなかろ うか.物的にも,人的 にも限度を超 えた課題を負わせて,学校のゆと りを 失わせ ることになることを心配す る.市場原理のみ に頼 る学校選択はそれほど万能ではない.特に コン トロールを外 した学校選択は国民 に等 しい学力を約 束す る義務教育を危 うくし,私学 との格差 を生み出 した り, より顕著なものにす るマイナスの可能性を
持つ. また ビI i ?コソとマスタープランに欠け る学校 選択は,個性化を促す よ りむ しろ,学校間の序列化 を作 るだけである.
社会経済生産性本部の報告書 の 2 ‑ 5 ‑ 2 r チ ャータ ー ・スクールに学ぶ』では, アメ リカのチャーター
・スクールを多様 な公立学校を新 しく生み出 し,選 択の幅を広げるのによい方法 として紹介 している.
しかし,同報告書では,多様性を増やすためのバイ パスではあっても,主流ではないとして,一般 の公 立学校 をさらにどのように立て直すかが改革 の中心 であると述べて,あ くまで も公立学校間の競争 によ る改革を指向 している.
しか し,我が国の制度 は, このバイパスが未発連 なところが特性 を持 った り,不適応を起 こす子 ども たちを救 えない一因 ともなっているのではないだろ うか.一般の公立学校 はあ くまで基礎学力を保障 し, mi ni mum e s s e nt i al s では均等で あ り, どこにおい ても質のよい, きめの細かい生徒指導が行われ,チ モクラシーの基本が養われ る場であれば国民 の支持 は得 られ るはずであ り,その学校 をあえて個々別々 に専門店化する必要があるのだろ うか.それ よ り, 主流ではないが,小規模で,個性的で,教育実験の できる合衆国の ma gne ts c hool s ,c ha r t e rs c hool s , homes c hoo l i ng の よ うな al t e r nat i ve s を積極 的 に 認めてい くことではないだろ うか.その よ うな学習 環境が多様 な価値観や特性 を持 った子 どもたちを活 か し, また同時に主流である一般の公立学校 を刺激 し,教育改善を促すのであれば,その方がベターな 公教育 を実現 してい くと考 える.少子化で空 いた物 的 ・人的資源を al t e r na t i ve 創造 に振 り向けること は可能であろ う. また,学校選択 とい う水平 の選択 があるなら.学齢 にこだわ らず,だれで も,いつで も学べる縦の選択 も同様に整備 されるべ きであると 考 える.
我が国の s c hoolc hoi c e は,市場原理 に頼 りす ぎ て本来の公教育の使命 を損 な うことな く, あ くまで も通学区域指定 の弾力化の中で ,al t e r nat i ve s の導 入 と複線 トラックを認め,選択幅を拡大す る視点で 進め られ るべきであると考 える.
注
( 1 ) 平成 1 2 年 8
月4 日文部省学校基本調査速報 1 9 9 9 年度不登校で 3 0 日以上学校を休 んだ小中学校 生が1 3 万人 を超 える.
( 2) 文部省初中局研究開発係 :平成11 年12
月特集
「 問題行動への対応 :生徒指導上の諸問題」第 6 章
( 3) 平成 1 2 年 8
月4 日文部省学校基本調査速報 :大
学入学希望者 の増加 .
( 4)
ス クール カ ウセ ラー制 度 :文部省 の都 道府 県 ・ 市町村教委 ‑ の委託事業 で1 9 9 5
年度 か ら開始.カ ウセ ラー派遣 対 象 は当初全 国 で約
5 0 0
校 で あ ったが 1 9 97
年度 か ら約1, 00 0
校 に倍増.(5) 平 成 11年 3月 大 学 入 試 セ ン タ ー 「学 生 の 学 力低下 に関す る調査結果」
1 9 9 6 年 7
月19 日朝 日新聞夕刊 4
版P. 1 7
掲載 国立教育研究所 の調査結果 :基礎教 科 の不人 気参 考 文 献
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