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一軸性次隣接イジングモデルー

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(1)

Kyushu University Institutional Repository

高次のスピン間相互作用を持つ競合スピン系の相転 移 : 軸性次隣接イジングモデル

村岡, 良紀

https://doi.org/10.11501/3111016

出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(工学), 論文博士

(2)
(3)

一軸性次隣接イジングモデルー

平成8年2月

村岡 良紀

(4)

第1章 序論 l 1 . はじめに

2. 変調構造 3

2-1 磁性体 3

2-2 合金系 5

3. ANNNIモデルの研究の歴史

3-1 ANNNIモデル 9

3-1-1 分子場近似 9

3-1-2 低温展開 14

3-1-3 高温展開 15

3-1-4 モンテカル口法 16

3-2 ANNNIモデルの関連モデル 18

3-2-1 外部磁場中におけるANNNIモデル 18

3-2-2 A3NNIモデル

4. 高次のスピン間相互作用 23

4-1 出現機構 23

4ー1-1 摂動展開 23

4-1-2 磁歪効果 24

4-2 高次のスピン間相互作用 を持つスピン系 26 4-3 本研究に関連するモデル 29

4-3-1 Jenscn ct.al.のモデル 29

4ー3-2 Kasuya et.al.のモデル 30

5. 本論文の研究の目的と概要 32

第2章 基底状態

1 . 基本スピン配列による方法 1-1 レンマの拡張

1-2 基本スピン配列

1-3 基底状態の決定 2. ANNNIモテソレへの適用

2-1 [2-2)モデル

[3-41モデル 2-3 [2-4]モデル

2-4 補足

2-3-1 基底状態における縮退

2-3-2 他の系への適用

3. 結論

刊刀引引制4m引

52 UNm山mJqmmp

(5)

1 . 分子場近似の適用 h3

2. 一般化帯磁率 66

3. 磁気相図及び熱力学的性質 72

3-1 1'2-'2]モデル 73

3-'2 [3--4]モデル 77

3-3 ['2-41モデル

4. マルチフェイズ点近傍の磁気相図-['2-'21及び[3-4]モデル お7

4-1 解析的方法 お7

4-'2 数値的方法 り3

5. マルチフェイズ点、近傍の磁気相図-l2-4]モデル 98

6. 結論 103

第4章 モンテカル口法 106

1 . モンテカル口法の基礎 107

1-1 モンテカル口法の原理 107

1-1-1 メトロポリス法 108

1-1-2 熱浴;去 109

1-2 乱数の発生法 109

1-3 ANNNIモデルへのモンテカル口法の適用 112

2. [2-2jモデル 117

3. [3-4]モデル 123

3-1 S二lモデル 123

3-2 S>1モデル 128

4. [2-4]モデル 134

5. 結論 149

第5章 概要及び結論 151

Appcndix A 低温展開 153

Appcndix B Domain vval1聞の相互作用 154

Appendix C 転送行列法一一1次元系の基底状態 15ó

Appcndix 0 J[ < ()の基底状態 158

Appendix E マルコフ過程に対する条件 172

(6)

1 . はじめに

交換相互作用の競合するスピン系は、 変調構造l\スピングラスヘ部分無秩序相ì)

等の新しいタイプの秩序状態 ・ 相転移が現れ、 多くの研究者により精力的に研究され ている分野である. Axial Ncxl Ncarcsl NcighboUf Ising(ANNNI)モデル4)は、 格子の1 つの軸方向に到達距離の異なる2種類の相互作用すなわち最隣接間及び次隣接聞にそ れぞれ強磁性的及び反強磁性的相互作用を持つ非常に簡単なモデルであるが、 それぞ れの相互作用がそれぞれ異なるスピン配列を安定化するため、 これらの競合により複 雑な変調構造が出現する. このモデルの磁気相図は「悪魔の花」と呼ばれる非常に複 雑な相図となり、 変調情造に対応する波数の温度依存性は無限のステップを持つ「悪 魔の階段」と呼ばれているものに良く似た温度依存性を示している. このように ANNNIモデルはそのモデルの簡単さからは想像できなし1ほと、興味深い振舞を示し、

多くの理論的研究がなされている.

スピン系では希土類金属及び合金等の磁気構造に変調構造が観測されている5ト7) また、 スピン系に限らず合金系のように周期の異なる構造が競合し、 ある安定な周期 構造を実現する場合にも変調構造が現れている. その他、 強誘電体等においても変調 構造が観測されている. これらの実験より得られた変調構造に対応する波数ベクトル の外部パラメータ(温度, 磁場, etc.)依存性は「悪魔の階段J状の振舞を示してい る. これらの実験結果は、 ANNNIモデル及びその拡張H) (こよって定性的に解釈されて おり、 ANNNIモデルは変調構造が現れる系全般に対する基本的モデルとなっている.

これまでスピン量子数は秩序状態・相転移に関して、 格子の次元及びスピンの対称 性等に比べて重要な変数とは考えられていなかった. 例えば、 全てのスピン量子数に 対して、 1次元反強磁性Heisenbergモデルの基底状態は

1)基底状態は無限体積極限で唯一である、

2)基底状態とその上の第1励起状態との聞にエネルギーギャップは無い、

3)基底状態での相関関数は距離とともに巾的に減衰する、

と信じられていたり) 1983年HaldanclO)はスピン量子数が半整数の場合は上述の通り であるが、 スピン量子数が整数の場合は異なり

(7)

1)基底状態は無限体積極限で唯一である、

2)基底状態とその上の第1励起状態との聞にエネルギーギャップがある、

3)基底状態での相関関数は距離とともに指数的に減衰する、

ことを主張した. その後理論・実験両方の研究の結果、 Haldancの主張が正しいこと が示されている.

三角格子上の反強磁性Isingモデルにおいても、 s= 1/2の場合はWannicrll)により 有限温度で相転移を起こさないことが示されているが、 スピン量子数がある闇値

(5,. = 1 1 / 2 )よりも大きくなると相転移を起こすことが報告されている12) このよう

にスピン量子数が秩序状態・キ自転移に関する重要な変数であることが認識されてきて おり、 より多くのモデルでこのスピン量子数効果を多面的に調べる必要がある. この 観点、から変調矯造の解析の基礎である ANNNIモデルに対しでも、 このスピン量子数 効果に関する研究は重要なテーマと考えられる.

スピン量子数がS三lの場合、 通常の双1次交換相互作用以外に高次のスピン間相 互作用の存在及び重要性が指摘されており、 鉄族イオン13), 希土類イオン14)を含む化 合物の磁性に重要な寄与を及ぼすことが明らかにされている. この高次のスピン間相 互作用の起源に関しては、 Anderson15) (こ始まりKitle116)によって物理的イメージを伴っ た具体的な説明がなされている. 変調徳造が現れる系において、 高次のスピン間相互 作用を考慮、した研究は特別な組み合わせを除いてなされていないlη. したがって、 よ り一般的なモデルを用いることによって競合系における高次のスピン間相互作用の特 徴を明らかにすることが必要である.

本研究ではANNNIモデルを任意のスピン量子数ヘ拡張しS三lの場合に重要となる 高次のスピン間相互作用をも含めた「拡張ANNNIモデル」を対象に、 系の熱力学諸 量・磁気相図及び変調構造等を詳細に調べることにより、 これらの系における高次の スピン間相互作用とスピン量子数の果たす役割とその重要性を系統的に明らかにする.

Kasuya et.a1.8)により、 ANNNIモデルの自由エネルギーに高次のスピン間相互作用に 対応する非線形項を加えた解析によって、 CeSb等の磁気相図をより良く再現できる ことが報告されており、 本研究で得られた知見は実験結果の定量的な解析に広く適用 できると考えられる.

(8)

入NN0Jlモデルは希土類金属及び合金等の磁気構造に現れる変調備造を説明するた めに導入された. 空間的変調構造1),-1)は物性物理のさまざまな領域において現れてい る. この変調構造は、 磁化, 電荷密度, 電気分極, 化学組成等の粒子の位置や局所的 性質に関して見られる. このような構造は非平衡状態においてばかりでなく、 熱的平 衡状態においても実現し得る. さらに、 多くの実験結果において変調機造を特徴づけ る波数ベクトルは外部変数(温度, 外部磁場等)に対して、 「悪魔の階段」状の変化 を示している.

変調構造相は大きく2種類に分類される. 1つはその波数が格子定数αを1に取っ たとき有理数になる、 すなわちmの並進に対して不変になるような整数nが存在する 整合相(commensuratephase)と呼ばれるもの. もう1つはその波数が無理数になる不 整合相(incommensuratephase)と呼ばれるものである. この2つの相の間の整合一不 整合相転移もまた盛んに研究されている分野の1つである. 以下に、 変調構造を捉え た実験例を紹介する.

2-1磁性体

磁気構造における変調構造の存在及び逐次相転移はEf), CeSbô), CcBi7)等で中性子 散乱、 比熱等の実験により確認されている. 図1-1にCcSbの磁気相図及び波数ベク トルの温度依存性を示す. CeSbは強し\1軸異方性を持つためスピンは[ 1001方向を向 いている. (100)面内では強磁性的に秩序化しており、 ほとんどの面は軸方向に沿っ た飽和磁化を持つ状態にある. しかしながら、 図1-1の磁気相図から明らかなように、

Tと人/2(T':-J二17 K)の温度領域において磁化が0となる面を持つ相が現れる. この 相は部分無秩序相(Partially Disordered Phase)3)と呼ばれている. CeSbの磁気構造は基 本的には強磁性的面が[ 100J方向に沿った波数ベクトルを持つ変調構造相を形成し、

この波数ベクトルが温度及び外部磁場の関数として異なる値にロックされていると考 えることができる. そして図1-1(b)に示されているように波数ベクトルは温度及び 外部磁場の関数として「悪魔の階段」状の変化を示す.

(9)

(a)

uπ 立..-uτ 江戸τ

日。ぷおぷ-<><>­

t1oo- UんAお0- ULXJ_口。+

tttft' 1< = 2/3

1< = 8/13

k=l./7 k = 519

k= 5/11

1<=0

1<=6/11 1<=1/2 k=1.17 1< = 213

k=4/9 k= 2/5 1< = 1/2

2 「‘v '』FHJ

AF

AFF

F

FP

80・-

F

AFF,

AF

一ωox一刀一ω一』Uニωcoo-よ 回一

20

Tem pera ture (K)

、、lFJLU fa--、、

Q 113

。苅ー

.

8/13

ι17 _j_jJ_

6/11一一一一ー 10/19 112

-ø::a

一ーマ5<}c少.L\-Q...ー ー一『一一ーーーー-ー .,.&f.ι一一ーム皿ー

o

� --

q

L一 」一一

10 Temperoture (KJ

.0.

スピン構造の模式図中のOは常磁 昇温過程における(は) CcSbの磁気相図へ

図1-1

その変調機造相が部分無秩序相であることを示して (b)波数ベクトルの温度依存性I�)

性状態にある層を表し、

いる.

(10)

長周期構造がALMS|べCllALI�()), Au�n�')等で報告されている が、 特にTiAI,につい

て詳細に調べられている�2).�1) TiAIJは高温ではJisorJcrcJ racc一七cnlcrcJωbiじ憐造を 持ち、 温度が下がる につれL12構造にロックされる. ここでしし構造とはAIの面と TiとAl の混ざ、った面とが[001j方向に交互に並んだものである. TiとAIの混ざ、った 面 は互いに最隣接格子点で囲み合っ ている. この構造が図1-2(a)に示されている.

この Llゥ構造は4つの富IJ格子に分解でき、 そのうち3つがAl原子に、 残りの1つが

Ti原子に占められている. それゆえL12構造はTi原子がどの副格子を占めるかによ っ

て4つのtranslalion varianlsを持つことになる. こ れらのtranslalion \'arianlsは変位ベ クトルい/2 1/2 0 j, r 0 112 1/21及び[112 0 1121により互いに関係づけられている. 2つ

のtranslalion varianlsが接している面を逆位相境界と定義すると、 変位ベクトルが逆位 相面 に含 まれている ならば化学組成TiA13はそのまま成り立 つ. 他の場合には、 化学 組成を成り立たせるために、 別の新しい面を挿入する必要がある. 図1-2(b)及び(じ) に前者の例を示す. ここでMはその繕造の 周期をそれに含まれるJomain の数で割っ た ものである.

L oiscau Cl.al.23)は電子線回折等を用いて7173 al 70 A 1を含むTiAl1の相図を7 00-

1200Kの温度領域において調べている(図1-3) . 図1-4には7'2al o/r) AIの場合の波 数ベクトルの温度変化が示されている. CcSbの場合と同様に、 温度の上昇とともに 波数ベクトルは「悪魔の階段」状に変化し、 複雑な周期構造が出現してくることがわ

かる.

(11)

-------e

.4

4

'

a.

Lc 1(11 (�1_C

10' l)rナー一一τ,,: 17'1 I ....φー�♂・ー・11.1>

i1.ー・ー十十3・

0022

'

-•

'

M = 1

2 p 2

思一~

b

.TI

oAI .

"Lc

00 "",., 23 M 二2

b}-C

c

ここではTi原子の

TiAl3 (c) D023構造(M二2)及び[010]方向の射影山.

E

Al

(b) D022構造(M二1)及び[010]方向の射影、

TiAl2 +

TiAl]

P み示しである、

T

(a) L12構造、

1000

900

800 1200

1100

図1-2

7S ot.

% Al

74 long

peri ods 73 700

TiA12 -TiA13の相図ロ) 図1-3

(12)

q

1. B

1 .7

1.6

1 .5

1.4

13

3.d

2・

1・

.15

14

・13・12

11

• 110

9

・・i・8 'i・6

2 3 5 6 7 8 9

10 1 1 12

13

14

15

Seq uence

(221(21)

2)

(221(22121)1.) 辺1(22121)3) 221 (22121)2) 221 (22121))

221)� 21) (221)

2221){221庁

)2)

(2221) (221 (2221)2221)

600 700 800 900 1000 1100 12∞ T

図1-4

TiAl3の波数ベクトルの温度依存性ロ)

(13)

3. 入NNNlモデルの研究の歴史

ANNNIモデルは日llOll::'4)によって提案された、 次のハミルトニアン

H

平科吋手引( 与与与押平苧れS丸j川 5/.)β5H

1./戸+

人市仇川山S凡叩仙lβ九川Sん2

により記述されるモデデ.ルである. ここでSりは:t 1/2の値を取るlsingスピン、 10,11 及び12は図1-5に示されたこ軸に垂直な方向の最隣接間, z軸方向の最隣媛聞及びご

軸方向の次隣接間交換相互作用である. 添字1,J及びけまそれぞれご軸方向の層、 こ軸 に垂直な層内の格子点及びJ-格子点のご軸に垂直な層内のご個の最隣接格子点を表 している• J1 > 0, J2 < 0または11 < 0, J2 < ()の場合に相互作用の競合が起きる. 図

1-6に基底状態における磁気相図を示すの. 特に断らない限り、 スピン構造を表す場合 には、 波数ベクトルまたはFisherand Selke2S)の表示法を用いる. 後者では図1-6の

<2>は上向きスピンと下向きスピンが2個ずつ交互に並んでいる構造を表している.

一般に<nl' n2, n3,…>は上向きスピンがnl個、 次に下向きスピンがn2個、 次に上向 きスピンがn3個、 -ーという構造を表している. また<22223>などは<2-3 >と簡略化 される(図1-9参照) . 以下では、 これまでのANNNIモデルの研究について振り返 るが、 各研究での表記方法は、 本研究における表記に統一して研究方法で整理した形 で紹介する.

図1-5 3次元ANNNIモデル.

(14)

}2

<1> 〈∞〉

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y

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図1-6 ANNNIモデルの基底状態における磁気相図�)

3-1 ANNNIモデル 3-1-1分子場近似

}I

、、

、、

ANNNIモデルに対する分子場近似はElliott24)によって初めて適用され、 磁化が sinusoidallyに変化する解が得られ、 波数ベクトルが1121/1[とともに連続的に変化する ことが報告されている. また波数ベクトルの温度依存性については議論していない.

Bak and Boehm26)は

Hj=21 Jfj-fjMj" (l-2)

Mj=tanh

j /

(1-3)

を数値的に解き、 その解の中で自由エネルギーを最小にする解を求めることによって、

非常に多くの整合相の存在を示し、 波数ベクトルの温度依存性, 磁気相図等を求めて いる(図1-7,8) . ここでMjは競合方向に垂直なj一層上のスピンの熱平均値、 Hjは j一層上のスピンに働く分子場、 1(jブ')は層内及び層間の相互作用を表し、

J (0) = 41 I ' J ( 1) = 1 I ' 1 (2) = J 2 ' ( 1-4) である. 図1-8の磁気相図において、 MPで示されている点(K T) = ( 0.5 0)はマル

チフェイズ(Multi- phasc point )点と呼ばれ、 有限温度で出現し得る全ての相が縮退し

(15)

ている. またLPで示されている点はリフシッツ(しlrshll/)点と呼ばれ、 無秩序相, 強 磁性相及び変調情造相で構成される三重点である. その後Du\burうはnJ ScI "C �7) �K)によ る分子場近似を用いた磁気相図のより詳細な研究により、 整合相の出現に関して図

1-9に示されているようなstruじlurcじombination branじhing proccssの存在が主張されて

いる. 変調情造相内の各相を幾重にも重なった花ぴらに見立てると、 図l_gの磁気相 図は「花」のように見え、 さらに図1-9に示されているように相と相の聞に無限個の 相が存在していることから、 ANNNIモデルの磁気相図は「悪魔の花」と呼ばれてい る. また、 ANNNIモデルの分子場近似における別のアプローチとして、 式( 1-3)を1 つの写像とみなす方法があり問、 整合一不整合相転移等の議論がなされている.

強い一軸異方性のためIsingスピン系と考えられている CcSbの磁気構造において見 られた部分無秩序相に関しても、 ANNNIモデルに基づく研究がなされている. Y ok.üj

et.a1.30)は、 面内の相互作用を面聞に比べて弱くすると、 Jo < 3J,の場合に部分無秩序 相が出現することを指摘している. Nakanish?l)は非線形項を含むANNNIモデルに対 する計算より、 J, <0の場合について図1-10に示されているような磁気相図を描き、

常磁性相に近い高温側に部分無秩序相(図1-LOの影付き部分)が出現することを示 し、 CcSb及び、CeBiの実験結果を部分無秩序相を含め定性的に説明している. また部 分無秩序相が安定化する条件についても考察を加えている. その後、 上述の写像を用 いた解析方法により、 Y ükoi32)は部分無秩序相と通常の秩序状態との間の温度領域に おいて、 鏡映または反転に関して非対称な秩序状態が安定化することを示している.

その後、 相互作用の競合方向に関しては転送行列を用いて厳密に取り扱い、 競合方 向に垂直な層内については分子場近似で取り扱うという、 より近似の精度を上げた Nakanishi33)の研究によると、 部分無秩序(<+0ー>, p)相及び‘<++ー>(C)相の自由エ ネルギーと磁化は図1-11 に示されているような温度依存性を示し、 部分無秩序相は 全温度領域で安定化せず、 Yokoiによって指摘された非対称な秩序状態も出現しない ことが報告されている. この結果はRotthaus anu ScUくC34)によるモンテカルロ;去の計算

によっても確認されている. これまでの研究によりS= 1/2 ANNN[モデルおいては、

部分無秩序相は出現しないと考えられている.

(16)

T T 4 1/ "'

025 ,gE目、、 、、,,,iu

2/9 3/14 cr

020ト 1/5 一一 一

J Z=ー0.6 J,含|

3/16 - 2/11

2/11 - 3/17

1/6一一一

」一一一一一一 _l__

0.0 2

4

Tci

015ト

T

図1-7 分子場近似による波数ベクトルの温度依存性、 f2/ft = -0.6 2(,).

kB T I JO paramognetic

2 6

3

、、3r'弓fa、,r、、

図1-8 分子場近似によるANNNIモデルの磁気相図斗).2(,).27)

(17)

0)

ρh Fl nuJHu nHふl-lQ F3Ge p』nμ'

um ne 'tpa・4'

図1-9 structure combination branじhing processの模式図4) ここで、 図中のスピン備造 を表す記号<・・・>は先に述べたFisher and Selke均の表示法に基づいている. 例 えば、 <23(2ろ)2 >は<23223223>を簡略化したもので、 具体的にはスピン備造

“↑↑↓↓↓↑↑↓↓↑↑↑↓↓↑↑↓↓↓竹を表している.

(18)

T/IJz'

-2 J/lJ21

4

3

2

2 十一

J/IJ21 v88

図1-10 NakanishiによるJ1< 0 ANNNIモデルの磁気相図31)

T

仁山寸 戸、

ー0.5

図1-11 ANNNIモデルの磁化(上部)及びFrec cncrgy (下部)の温度依存性13)

(19)

3-1-2低温展開

離散的スピン変数からなる系の低温領域の振舞を考える場合、 分配関数への主要な 寄与は非常に少数のスピンの状態が基底状態と異なっているような状態からなるもの である. したがって、 分配関数を

ぃーい"r

(

1 + "

1

)

( 1-5)

と展開することが考えられ、 これは低温展開と呼ばれている15) ここでE。及び企ZN(川) は基底状態のエネルギー及び基底状態よりn個のスピンの値が異なる全ての状態から の寄与( ボルツマン因子の和)である. このボルツマン因子はグラフ理論を利用して 計算されている.

Fisher and SeUぽ初出)はこの低温展開を用いてMP 点近傍におけるANNNIモデルの 解析を行っている(詳細はAppenùixAに示す) Fisher anù Selke は自由エネルギー に重要な寄与をする項(グラフ)を系統的に取り出し低温展開したものに基づき出現 し得る安定相に関する議論を行い、 波数k/2 (2 k + 1) (k = 0, 1, 2,・・・)すなわち<∞>,<3>

<2 k 3> k ( = 1,三 ・・・),<2>のスピン構造の無限列がd>2のANNNIモデルにおいて出 現することを示している. Szpilka anù Fisher17)及びYeomans anù Fisher'Hl)による計算法 の改良により、 補正項が加わり、 <2ト13>と<2>との間には<'l3>相が出現すること が示されている(図1-9参照). さらにSzpiUωandFishcrは3体のùomain wall 相互作 用を考慮した計算より(AppcndixB参照)、 有限温度では<2k3>相はl豆k< kmaÄ (kma

...

- exp(-4J()/九η)の範囲のものだけが出現するため無限列ではないこと、 相境界<2>:

<2k-13>は、 Villain and Gordon39)が指摘しているように、 弱し\ 1次相転移であること、

<2k-l32k-23>のような混合相(図1-12の影付き部分)は大きなkに対して低温領域 で出現することを報告している均胡)

(20)

(3) (23)

〈伺〉

く2>

k\

7

図1-12 低温展開によるANNNIモデルの磁気相図4)

3-1-3 高温展開

高温展開によるアプローチは秩序一無秩序転移点近傍におけるANNNIモデルの振 舞に焦点、を絞った研究である. Oitmω41) はRedner and Stanlcy42)による研究 をANNNI モデルに鉱張し、 第11 項までの級数を求め、 解析を行っている. 転移温度は分子場 近似の値より250/0減少し、 リフシッツ点(LP)はIJ21J11 = 0.270:t 0.005で 、 分子場近 似の値114と非常に近い結果が得られている. λ= J21J1とするとき帯磁率の臨界指数 yに関しては、 ユニバーサリティ及びくりこみ群心)の議論から、 入>\に対しては

Y e: 1.24のIsing的値、 LPにおいてはYLという異なる値をとり、 入<入に対しては

Y e: i. 32のXY的値をとることが期待されていた. 高温展開 の結果は図1-13に示され

ているように複雑な振舞をしている. Mo and FcrcrM)による第12項までの高温展開に 基づく研究においても、 yが図1-13 と同じ振舞をすること、 及びLPにおける臨界指 数

(21)

y,二1.<12::t 0.12 、C(L二0.20::t O. 15

を報告している. ここではは比熱の臨界指数である.

ー08 -04 0

λ= 12/1 t

1ら

I 1 3

1 2

図1-13 高温展開による帯磁率の臨界指数41)

3-1-4モンテカル口法

( 1-6)

モンテカル口法4汁まSelke and Fisher品)によってANNNIモデルに適用され、 比熱等 の物理量が計算されている. 図1-14にみ/11二一0.6における波数ベクトルの温度依 存性を示す . またFourier変換を用いて図1-15に示されているようにFouricr係数の 温度変化についても議論されている. 高温領域における計算より得られた変調構造相 への相転移線及びLPは高温展開の結果と良く一致しており47),48)、 LP近傍の臨界指 数も調べられている. 磁化( ß )及び帯磁率( y)の臨界指数に対する結果を表lーlに示

している48)

分子場近似の節で紹介したように、 Rotthaus and Scl kC34)はよ) /}1 = 1.0, 0.5, O.�及び

0.05に対してモンテカル口;去を用いて計算し、 ANNNIモデルに部分無秩序相が存在

しないというNakanishi33)の主張を支持する結果を報告している.

(22)

「ーーート ーllト

q (了)

ll「l トll ト!ー「|「

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6圃6圃 40

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2

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「ll「ーイーJIf--『

% 、川

)( )(.,.

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JC

図1-14

0.9 宇 'ー 1/ lt寸'Ol(

モンテカル口;去による波数ベクトルの温度依存性、 J21J1 = -O.Ó品)

0.8 1.0

表1-1モンテカル口法によるANNNIモデルの臨界指数岨)

-12/11 p Y

0.15 0.30:t 0.03 1.20 :t 0.06 0.24 0.23 :t 0.03 1.26:t 0.06 0.265 0.19:t 0.02 1.4 :t 0.06

0.27 0.19:t 0.02 1.4 :t 0.06

(23)

liiJm

T/Tmo• 0.60ワ

;l・1

(α}

I

ー:1 71

1)一一

_---J

;(Jb)A1

(bl

図1-15 モンテカル口法によるFourier係数の温度依存性、 J21J1 = - 0.6州.

3-'2 ANNNIモデルの関連モデル

3-'2-1外部磁場中におけるANNNIモデル

外部磁場中におけるANNNIモデルの基底状態はさまざまな方法によって決定され ており、 H>Oの場合の磁気相図を図1-16に示す4), 30),49), 50) ここで<l2>,<1'2>等

の数字の上に書かれている横線は、 外部磁場と反対向きのスピンの並びを表しており、

それぞれ↑↓↓↑↓↓… , ↓↑↑↓↑↑↓・ーに対応している.

Y okoi et.aL30)は分子場近似を用いて、 磁気相図(図1-17及び図1-18)や磁化過程

(図1-19)を調べ、 転移温度が外部磁場の2乗で低下し、 転移点近傍における波数ベ クトルは相互作用比J2/J[に依存するが、 外部磁場や温度に依存しないことを示して いる. さらに興味深い点としては、 分子場近似の範囲内ではあるが、 変調構造相と常 磁性相との聞の境界が、 外部磁場が大きくなるにつれ、 2次相転移から1次相転移へ と変わるということを報告している. 低温展開等を用いた磁気相図に関するより詳し い研究もなされている49),5L)

(24)

一一一一(11 ) 一一〈∞〉

H

、、,J べ,Ll -、rι ,,、、

図1-16 外部磁場中のANNNlモデルの基底状態4)

図1-17 外部磁場中のANNNIモデルの磁気相図30)

1点鎖線は2次相転移(実線) と1次相転移(点線)との境界であるlricrilical püinl (TCP)を表している.

(25)

k8 T J1

5

p = - J2/ J1 = 0.4 TCP

(43)

〈αコ) Pora

kS T J1

。‘01

p = -�/,占=06 0.02 H/J,

ト士一�

r----

<2 )

亡2)削tiph \j

0.1 02

H/J1

0.03

〈∞) poro

「ー『ーーー

0.3

(a)

0.04

(b)

0.01

図1-18 外部磁場中のANNNIモデルの磁気相図30) (は) J)J1二一0.4 (b) J21J, = -0.6

(26)

M T

OL O 01

<2>

0'

<32>

02 H IJ1

〈∞) F erro

keT /J, = 2.75 p=06

03

図1-19 外部磁場中のANNNIモデルの磁化過程30)

(27)

3-:2-:2 A3NNIモデル

長距離スピン間相互作用を持つANNNIモデルの研究も、 実験結果の解析という目 的及び理論的興味より行われている. 競合方向に第3隣浅間までの相互作用を持つ A.\ial Third Ncarcst Ncighbour Ising(A3NNl)モデルは、 Yamよlda and HayamaS2)及びSclkc

ct.aI.53)により分子場近似を用いて、 Barrclo and Y comans54)により低温展開を用いて解 析されている. -10二11二一1及び人= O.lの場合の磁気相図を図1-20に示す. 外部磁 場中におけるA3NNIモデルの振舞についても研究がなされている灼. A3NNlモデル はA2BX4型の結品構造を持つ誘電体の相転移の実験の解析に適用されている勺)

(D

8

PARA

02 0.4 06

)}IJ,

06

図1-20 A3NNIモデルの磁気相図53)

(28)

高次のスピン間相互作用

スピン量子数がS三lの場合、 高次のスピン間相互作用が存在する. ここでは、 ま ず初めにその出現機構として代表的な摂動展開及び磁歪効果によるものを紹介する.

その後、 高次のスピン間相互作用を持つスピン系に関する研究について紹介する.

4-1出現機情的

高次のスピン間相互作用の起源に関しては、 Andcrson15) (こ始まりKittcl1川によって 物理的イメージを伴った具体的な説明がなされている.

4-1-1摂動展開

結晶場中にある磁性イオンに対して、 ハミルトニアンは

H=Ho+V+玄λo

. S i +

L_ �:<

( 1-7)

と書くことができる. ここでHoは自由イオンに対するハミルトニアン、 Vは結晶場 のポテンシャル、 第3項及び最後の項はそれぞれスピン軌道相互作用及びi, jイオン に属している電子間の広い意味での交換相互作用を表している. (1-7)式のハミルト 二アンを

Hl=Ho+V, 0-8)

H2

玄入

o

. S i +

L_ �X

(1-9)

とおき、 Hl及びH2をそれぞれ非摂動及び摂動ハミルトニアンとして取り扱う. 非摂 動ハミルトニアンH1の固有関数として得られる基底状態及び第1励起状態の軌道関 数をそれぞれ中。及び中Iゴと表す. 基底状態の軌道関数に縮退が無いと仮定すると、 m 個の磁性イオンからなる系の第1励起状態の波動関数は

tl'E二N-1/22_

ail中10中20・.. (Pi-I

内叫ん+1

。…CPnrO > ( 1-10)

と書くことができる. ここでαは適当な係数でありi番目の磁性イオンのみ第1励起 状態にある確率は

1

ai

1

2に比例する• N-1/2は規格化因子である. tVとの中のj番目の磁 性イオンのみ第1励起状態にあり、 他の磁性イオンは全て基底状態にあるような項

IcPLO CP20…(PiO CPj ECPk 0・日午mO>

を取り出し、 2次摂動を考えると

(1-11)

(29)

ム斗I ( q叩 lド仏) 川I 川I {川

り{)() <f

I{川M

(fl�バ川川川仇<f叩叫仇(fl�()仏九fl� Vい2 訂叩ゲ�()弘hν()ゾ) ......日…..

<rド仏九 )L弘い11川II (け) I陪玄 入入() �ム

St +

灯 � I卜 い ド仏れPI()川I(川(け)(j\いVVい1け() i q叩h川

...日…...吋q t

δ'1E I \ " \1 ';'11 ''''''

I -;- "

1> j '1

I . .

" . �.. . '" . J' ."" '''''' /

( 1-12) となる.ここで企Eは基底状態と第1励起状態との聞のエネルギー差である.最隣接 スピン聞にのみ双1次交換相互作用が存在すると仮定すると、(1-12)式は

と書くことができ、この(l-13)式から以下のような項が導出される:

(a )双2次交換相互作用

一長[(S;.SJ+(Sノザl (b) 3ーサイト4ースピン相互作用

一五

[

(S;. S))(S}川j'Sk)(S

り|

(c) Dヱyaloshinski-Moriya相互作用5η

d. [Sj x SjJ '

(d) 1イオン異方性エネルギー見) DS;+E(s:-4),

ここで交換積分Jは

J =

J <P;川。吟crio(2)ψjE(

1)[dr

2

または

J=

Jψ;川o吟ψj五(2)似0(1川2

により定義されている.

4-1-2磁歪効果

( 1-13)

(I-L4)

( l-l5)

(l-l())

( l-l7)

( 1-18) ( 1-19)

磁歪効果とは、磁化とひずみの関係する現象で、最も重要なのは磁化するときに現 れる形状の変化である.この効果をスピン演算子を用いて書き表すとき高次のスピン 間相互作用の形となる.

交換相互作用の大きさJが磁性イオン聞の距離αに依存し

(30)

と書けると仮定する. ここでみ及びα()は磁歪の無い平衡状態における交換相互作用 の大きさ及び磁性イオン間の距離である. 一般にα- a()<< 1と考えて良いので関数f

を1次の微小量まで展開し

f

(

α-(lo

)

1- n

(

α-([0

)

. (1-21 )

と書ける.

磁歪によって磁性イオンは一般に図1-21(は)のような方向に移動するが、 図1-21 (b)の8 = 900の場合について考えてみる. 移動距離をdとするとd2=ぷ-ばである.

最隣接スピン聞に双1次交換相互作用のみ存在すること及びi.5j,SAの3個のスピ ンだけがスピンSJの移動に関係すると仮定する. このとき3スピン系の自由エネル

ギーは弾性定数Rを用いて

F =

tドR(μμいαdι2仁一 α4心ル�)か)ト+

Jo

[ト卜lトい川一→→n(か(

と表せる. 平衡状態における磁性イオン間の距離αは、 自由エネルギーを最小にする ことから

G二

手 [ (

Sj' S}

)

+

(

S)

ふ)]

(件lト一-23刀3

と求められる. (1-23)式を(1-22)式へ代入して自由エネルギーをスピン演算子を用い て書き表すと

F = -

t

Ra� + J 0

(

1 + nao

) [ (

S j . S j

)

+

(

S)丸

) ]

守叫[(ト(伊S. . Sりj)グト川rト2~+

( 1一24) となり、 磁歪効果は双2次交換相互作用及び3-サイト4-スピン相互作用を用いて 記述することができる. 図1-21 (は)に示されている一般の場合についても同様の議論 により、 磁歪効果は双2次交換相互作用及び3ーサイト4ースピン相互作用を用いて

記述することが示されている.

(31)

αo

Si

、\

αo

Sj Sk Si

1 /,^" a

// 川 \

(lO QO

S)

(a) (b)

図1-21 磁歪によるスピンS,の移動.

4-2高次のスピン問相互作用を持つスピン系

S�

鉄族及び希土類イオンを含む化合物の中には磁化・転移温度等の実験結果が双2次 交換相互作用を考慮することによって説明されているものがある13),1-1) また多核錯体 の中には、 3ーサイト4ースピン相互作用を含む高次のスピン間相互作用を導入する ことにより、 その磁気的性質が理解されいるものもある切) 3d遷移金属においては、

結晶場により最低エネルギーの軌道状態の縮退が解け軌道角運動量がほとんど消滅し ているため、 高次のスピン間相互作用の大きさは双1次交換相互作用の10ー1 _ 1σ2程 度でω)、 一般に高次のスピン間相互作用は物質の磁気的性質を決定する主要因には成 り得ないと考えられてきた. しかしながら、 Baker61)及びChen and Levy62)は、 希土類 化合物では高次のスピン間相互作用が双1次交換相互作用と同程度の大きさになるこ と及び固体水素や液晶のquadrupolar orderingにおいては、 その相互作用が高次のスピ

ン間相互作用であることを指摘している. また希釈スピン系に関して、 [<10μki an<1

Uryuは3ーサイト4ースピン相互作用の存在が転移温度の初期勾配に強く影響する ことをIsingモデルにおいて示しているの)

このように高次のスピン閉相互作用に関する多くの研究がなされているが、 以下で は、 高次のスピン間相互作用を持つ競合スピン系の代表的モデルであるBlumc -

Eme町一Griffiths(BEG)モデル似)について紹介する. BEGモデルは

H=-J,L5ふーん玄S757-D:257,

(l-25)

なるハミルトニアンによって記述される. ここで、 S二O,:.t:1、 n. n.は最隣接格子点 についての和、 Dは1イオン異方性エネルギーを表す. このモデルは最初Hc1_ Hc-l

(32)

混合流体の相分離及び超流動を記述するモデルとして導入され、 その後興味深い相転 移を示すスピン系のモデルとして多くの研究者によって調べられてきた(,::'.)

J=人/J1, d = D /二1,とおくとき、 11>0の場合のBEGモデルの基底状態が図1-22に 示されている. ここでごは配位数である. 図中のQ相及びF相はそれぞれ全てのスピ ンがSt=()をとる状態及び強磁性状態を表し、 SQ相は格子を2つの;IJ格子に分けた ときに一方の副格子上の全てのスピンが5,二()をとり他方の副格子上のスピンが5,二

:l:: 1をランダムにとっている状態を表す.

2

..., - 1

- 2

- 3

- 4

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 d

図1-22 1[ > 0のBEGモデルの基底状態。5)

Kasono and Ono65)はBelhe近似及びモンテカル口;去を用いてBEGモデルの有限温度

における振舞を調べ、 その磁気相図を描いている (図1-23) . 各副格子( A, B)上の スピンに関する熱平均をm人=<S;\>,仇二<久>, tnB二<5H>, (/H二<SH2>と表したとき、

BClhc近似により求められた磁気相図(図1-23)に現れている各相は以下のように特 徴づけられている:

(33)

1 )刊UはJrup(】Ic phωc (Q)

m、=mn二()はnJ (/ \二l/llエ2/3

'2) rcrromagnctic phωc (F)

m,\ = Jllnエ0,

3) staggcrd quaJrupolc phωc (SQ)

nlA二mR二o anJ qヘエ正Jn

この磁気相図よりBEGモデルはさまざまなタイプの逐次及びリエントラン卜転移を 示すことがわかる. Bcthe近似及びモンテカル口法から求められたorJcr paramclcrの 温度依存性から両者の結果は定性的に一致することが報告されている.

k T/zJ.

1.0 2量

0.2 t 5Q Q

-etilt' ) (

0.8

0.6

O.�

F

0.0

-3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0

J kT/zJ.

1.0

b

0.6

0.6

0.-4

0.2

0.0

-<e.O -3.0 -2.0 -1.0 0. 0 1.0

J

図l-23 BEGモデルの磁気相図的. a d = 1.0, 0.5, 0.0, - 0.5, - 1.0, b d二0.0ー0.05

- O.l, - 0.2, - 0.25, - 0.4

(34)

斗-3本研究に関連するモデル

斗-2で述べた以外にもにもさまざまなタイプのモデルについての研究がなされてい る州.ここでは本研究に関連するJcnscn cしは1.17)及びKωuyaCl.al.H)の2つのモデルを紹 介する.

4-3-1 Jenscn cl.al. 17)のモデル

このモデルは次のハミルトニアン

H=-JI155iSj-Jl手StSI+lqsL-σド(1ーに,) + ( 1 -S� )S�+ ,]

( l-26) によって記述されている.ここで、5i= 0, :t 1である.この式からわかるように、第

3項までは通常のANNNIモデルと同じ形で、 第4項に双2次交換相互作用と1イオ ン異方性が組み合わさった形の相互作用が加わったハミルトニアンである.この第4 項はz方向に5=0の状態にあるスピンとSI=±lの状態にあるスピンとが交互に並ん だ状態を安定化する.その結果、 基底状態においても5.=0の状態にあるスピンを含 むスピン構造が出現する(図1-24) .分子場近似により求められた磁気相図を図

1-25に示す.

1.0

0.5

1.0 20 K/J,

図1-24 式 (1-26)のモデルの基底状態17)

(35)

5

-一�

ロ(1111)

05 10

-J2/J,

, 5 2.0

T/J,

1T、

回( , 0 10)

図1-25 式(1-26)のモデルの磁気相図17)

磁気相図からわかるように、 複雑な変調構造が出現するとともに強磁性相の変調梅造 相側への張り出しがあり、 その領域においてリエントラント転移が起こる. このリエ

ントラント転移の出現機構に関しては、 Jensen et.al.は特にコメン卜していない.

4--3-2 Kasuya el.a1.8)のモデル

Kasuya et.剖.は以下のような拡張ANNNIモデルによりCeSbの磁気相図の再解析を 行っている. 強い異方性を持つこの系を2準位Isingモデルにより記述し、 非線形相 互作用を考慮している. 分子場近似の適用によりその自由エネルギーは

F二一平

m.+

mimi+1 +川2+ Kom�叫ん川2

]

ヱ|(l+m)(l+m) (l-m)(l-mt)|

I T' t/ 1 n ' - t/ + T' - t/ I n ' - . . -t/ I

| |

( 1-27) で与えられる. ここでmiは第i層の磁化、 Ko, K[及びK2は非線形相互作用であり、

本研究で扱う高次のスピン間相互作用に対応するものである. このモデルに基づき図 1-26に示されているCeSbの磁気相図の解析より

10二4, 11 = -0.9, 12 = -0.95, Ko = 4, KI = -0.25, K2二一1.32,

の値の場合、 図1-27に示されている磁気相図が得られている. CcSbの複雑な磁気相

(36)

K凶uya cl.alは主張している.

1 +0-

10ト2

++-0←-+0ー....0-

i 3 ++ーー+0-

! 1. ++--+....-0+

I 5 ++ー++ー+0-

トー 1

工5�

F

I ++-

1 ++ーー++ー

。|++-- L

0

p

10 2 1 20

T(K) 30

H=

8.5 T 図1-26 実験により決定されたCeSbの磁気相図H)

JilJli[- EJiJ

;lli;[lJJL EUiJーはよj山-li;

O - G o o

-

0 0

+

+ +

+

1i nJι h‘d

n〉

‘4・41

6.5 T

トー ..., ...

工 � ! F

++ー

I ++一ー

OL-ー一」一

そー

10 2 20

T(K) 30

図1-27 Kasuya cl.al.のモデルから得られた磁気相図H)

(37)

5. 本論文の研究の目的と概要

変調借造はスピン系に限らず物性物理のさまざまな系において現れ、 その基本モデ ルとしてANNNIモデルによる理解がなされてきている. 希土類イオンにおいては高 次のスピン間相互作用が双1次交換相互作用と同程度の大きさになる. さらにスピン 系以外の系においては、 その相転移・秩序状態を記述する上で高次のスピン間相互作 用が主要な相互作用となる系も考えられる. したがって高次のスピン間相互作用を持 つANNNIモデルは、 より広く物性物理の領域で現れる変調構造をANNNlモデルを 基礎にして理解する上で重要になると考えられる.

これまで研究されてきているモデルは、 通常のANNNIモデルに高次のスピン間相 互作用が加わったモデルであり、 通常のANNNIモデルにおいて出現する変調備造へ の高次のスピン間相互作用の影響という観点、から調べられている川町. しかしながら、

次隣接層間の双1次交換相互作用を高次のスピン間相互作用に置き換えたモデルに関 する研究はなされておらず、 変調構造の出現の有無についても明らかではない. さら に高次のスピン間相互作用は双1次交換相互作用と異なるスピン構造を安定化させる ことも可能であり、 このより単純化されたモデルを用いることにより通常のANNNI モデルとは異なったスピン構造閣の競合の問題についても調べることができる.

一方、 1次元反強磁性HeisenbcrgモデルにおけるHaldanegapの存在及び三角格子 上の反強磁性Isingモデルの有限温度における相転移の出現と関連して、 スピン量子 数がどのように秩序状態・相転移に関わっているのかという興味深い問題がある.

本研究においては、 次隣接層間相互作用に双1次交換相互作用S(S(はまたは高次の スピン間相互作用である双2次交換相互作用Sバ2 2 あるいは3ーサイト4-スピン 相互作用S; S2; +1 S; +2を持つ3次元S三1 ANNNIモデル

H二ー

ロ ド{t

,S,ß;,

)

+ J,S;ß川2戸 [2-21モデル

( 1-28)

H二一

l

(

s川2戸 [2-41モデル

QJ O

巧J} 吋、}

ト レ

ト 〆11

t,J JI、

〕ア

4

「4J

r\U ,n

CJV

σ、Utu -J +

+ cu cu fJ + 、11tit-rJ FA C-u cu ‘す- h fit--111、 rh一さ ずケ す剤

一一H

32

(38)

内の最隣接間相互作用、J,及びJ:_はそれぞれ競合方向の最隣接層間及び次隣接層間相 互作用、 hは外部磁場を表している. これらの系の熱力学諸量・磁気相図及び変調情 造等を詳細に調べることにより、 これらの系における高次のスピン間相互作用及びス

ピン量子数の果たす役割とその重要性を系統的に明らかにする. また、 ANNNIモデ ルの自由エネルギーに高次のスピン間相互作用に対応する非線形項を加えた解析によ

り、 CcSb等の磁気相図をより良く再現できることが報告されており、 本研究で得ら れた知見は実験結果の定量的な解析に広く適用できると考えられる.

以下、 第2章「基底状態」では基本スピン配列という概念を導入し、 任意のスピン 配列が基本スピン配列の組合せによって表されることを示し、 1次元Isingスピン系 の基底状態の厳密な決定;去を提案する. そして次隣接閉までの相互作用を持つ、二

112, 1及び3/2 Ising系に対する基本スピン配列を求める. さらに1次元鎖聞の相互作

用がある条件を満たす場合、 この方法が2次元及び3次元系へも適用可能であること を示し、5=1及び3/2 の系の有限磁場下の厳密な基底状態の磁気相図を決定する. そ

して外部磁場が無い場合、[2-2]モデル及び[3-4]モデルはスピン量子数に関係なく強 磁性相もしくは逆位相構造相の基底状態を持つが、[2-4]モデルは、 スピン量子数に 依存して異なる基底状態を持つことを示す. さらに基底状態における縮退度の計算及 び、この方法の拡張についても議論する.

第3章「分子場近似」では分子場近似を用いた各モデルの熱力学諸量及び転移温度 の計算について述べる. 競合方向の各層の(多重極)磁気モーメントに関する多元の 超越方程式を数値的に解き、 自由エネルギーを極小にする解を求めることによって各 モデルの磁気相図を決定し、 さらに有限温度で出現し得る全ての相が縮退しているマ ルチフェイズ点近傍の詳細な計算を行う. その結果、[3-41モデルではマルチフェイ ズ点近傍で温度変化にともなって変調相→強磁性相→変調相のリエントラント転移が 起こることを示す. また、 このリエントラント転移の領域はスピン量子数の増大とと もに広がり、 特に5>1では「悪魔の花」と呼ばれている磁気相図が部分的に崩壊す

ることが示される. [2-41モデルで出現する変調構造は常に強磁性的でありその出現 領域は非常に狭いことが明らかになる. 12-4]モデル及び[3-41モデルで現れる高温で の強磁性相は、 いずれもエントロビー効果によって安定化しており、 このような振舞

(39)

は高次のスピン間相互作用を持つ系の特徴と考えられる.

第4章「モンテカル口法」では平衡状態からのゆらぎを取り込んだ計算法であるモ ンテカル口;去を使って前章の結果を検証するとともに、 分子場近似では議論できない 臨界点近傍の系の振舞を調べる. 磁気比熱・磁化及びスピン構造のフーリエ変換によ る解析から[3--41モデルのリエントラント転移は5>1でのみ出現し、 その安定領域が 分子場近似の結果に比べて非常に狭いこと、[2--41モデルの強磁性的変調犠造に関し ては相境界を明確に決定できず、 強磁性的変調構造は非常に狭いことが示される. し かしながら、 全体の磁気相図の定性的傾向は分子場近似の結果を強く支持しており、

高温での強磁性相の安定性にスピン量子数が大きな役割を果たすことが明らかとなる.

最後に、 第5章「概要及び結論」では第2章から第4章までの概要及び結論を述べ る.

(40)

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参照

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