原 告 適 格 論 と 憲 法 の 視 点
神 橋 一 彦
は じ め に 第一 節 行訴 法九 条二 項の 理解 と基 本権
ઃ
行訴 法九 条二 項と 原告 適格 判断 の枠 組み
︽第 四の 考慮 事項
︾と 基本 権
અ
補論︱ ︱
原告 適格 判断 にお ける 処分 の根 拠法 規の 捉え 方આ
︽第 四の 考慮 事項
︾と 財産 権の 位置 づけ
ઇ
原告 適格 と基 本権 第二 節 近時 の諸 問題 につ いて の若 干の 考察ઃ
︽保 護範 囲の 画定
︾の 問題
委任 立法 と処 分の 根拠 法規 のあ り方અ
考慮 事項 と原 告適 格判 断 お わ り には じ め に 一 平成 一六 年の 行政 事件 訴訟 法の 改正 に際 して
、実 効的 な権 利利 益の 救済 の観 点か ら取 消訴 訟の 原告 適格 をい かに 拡大 する かの 方途 が議 論さ れ、 その 結果
、行 訴法 九条 に、 原告 適格 の解 釈基 準を 盛り 込ん だ第 二項 が新 設さ れ た。 その 後、 周知 のよ うに
、平 成一 七年 の小 田急 訴訟 大法 廷判 決︵ 最︵ 大︶ 判平 成一 七年 一二 月七 日民 集五 九巻 一〇 号二 六四 五頁
︶は
、こ の改 正を 受け て、 判例 変更 の上
、都 市計 画法 に基 づく 都市 計画 事業 認可 の取 消訴 訟に つい て 周辺 住民 の原 告適 格を 認め る判 断を 下し
、改 正後 の原 告適 格拡 大へ の期 待に 応え るも のと して 大い に注 目さ れた と ころ であ
( )
った
。そ れに 呼応 して 下級 審判 例に おい ても
、原 告適 格を 柔軟 に認 めて いこ うと いう 動き がみ られ たと こ
1
ろで ある が、 平成 二一 年の サテ ライ ト大 阪訴 訟上 告審 判決
︵最
︵一 小︶ 判平 成二 一年 一〇 月一 五日 民集 六三 巻八 号一 七 一一 頁︶ は、 自転 車競 技法 に基 づく 場外 車券 販売 施設 設置 認可 処分 の取 消訴 訟に つい て、 控訴 審判 決が いっ たん 承 認し た設 置予 定地 周辺 に居 住す る住 民の 原告 適格 をカ テゴ リカ ルに 否定 し、 改正 前の 判断 枠組 みさ なが らの 判断 を 行っ た。 この 判決 をめ ぐっ ては
、同 訴訟 にお いて 問題 とな った 風紀 や教 育と いっ た周 辺住 民の 地域 的な 生活 環境 上 の利 益に つい て、 改正 後、 原告 適格 が承 認さ れる ので はな いか とい う期 待も あっ ただ けに
、そ うい った 期待 に水 を 差す のみ なら ず、 下級 審に おけ る他 の事 件の 原告 適格 判断 にも たら す影 響に 対す る危 惧も 含め
、学 説に おい ては 批 判的 な評 価が 既に 広く なさ れて いる とこ ろ(
)( )
であ る。
2 3
この よう な現 状に おい て、 どの よう なア プロ ーチ で原 告適 格論 を論 じる かが 一つ の問 題と なる が、 現在 の裁 判実 務が
、原 告適 格判 断に 際し て行 訴法 九条 二項 を拠 りど ころ とし てい るこ とか ら、 同項 との 関係 が論 究の 対象 とな ら ざる をえ ない
。も っと も同 項は
、原 告適 格判 断に おけ る裁 判官 の法 解釈 に対 して
、立 法者
︵法 律︶ がそ の基 準な い し指 針を 与え ると いう 異例 のも ので あり
、か つ周 知の よう に従 来の 判例 理論 の到 達点 を条 文化 した もの でも ある た
め︱
︱と りわ け後 にみ る︽ 第四 の考 慮事 項︾ がそ うで ある が︱
︱そ の︽ 読み 方︾ その もの
︵す なわ ち、 解釈 基準 の 解釈 とい うこ とに なる が︶ につ いて 議論 の余 地が ある のみ なら ず、 その 具体 的事 例に おけ る︽ 当て はめ
︾の あり 方 につ いて も、 必ず しも 明確 では ない もの があ る。 さら に、 近時
、こ の九 条二 項が かえ って 原告 適格 判断 の硬 直化 を 招い てい ると いう 指摘 もあ ると ころ で
( )
あり
、解 釈論 にお いて この 規定 とど のよ うに 向き 合う べき か、 とい うこ とが
4
そも そも 問題 とも い
( )
える
。
5
二 この よう に原 告適 格に つい ては
、行 訴法 改正 後五 年を 経た 現在 にお いて も、 立法 論を 含め てさ まざ まな 問題 が残 され てい る。 その 中で 本稿 筆者 が従 来か らな お検 討・ 議論 の余 地が ある ので はな いか と感 じて いる のは
、原 告 適格 論と 憲法 論と の関 係で ある
。こ の憲 法論 を踏 まえ た原 告適 格判 断の 必要 性は
、行 訴法 改正 後、 常に 指摘 され て きた とこ ろで はあ るが
、そ れで は具 体的 にど のよ うな 手法 でそ れを 行う かに つい ては
、必 ずし も深 まっ た議 論は な され てこ なか った よう にお もわ れる
。 確か に、 原告 適格 論に おい て憲 法論 を展 開す るこ とに は困 難が 伴う
。ま た、 原告 適格 論と 憲法 論と の関 係に つい ての 議論 が深 まら なか った 点に つい ても
、無 理か らぬ 理由 があ った こと も否 めな い。 すな わち
、実 際の 原告 適格 の 判断 は、 いう まで もな く、 第一 次的 には 法律 レヴ ェル での 処分 の根 拠法 規の 解釈 の積 み重 ねに よっ てな され るも の であ って
、行 訴法 九条 二項 もそ のこ とを 前提 とし てい る。 また これ は、 実際 上も 原告 適格 判断 を安 定的 に行 うと い う点
、さ らに は一 定の 説得 的な 理由 づけ を構 築で きる とい う点 で、 裁判 実務 の要 請に も適 して いる
。さ らに 加え て、 最高 裁判 例が 原告 適格 の帰 属に つい てい う﹁ 自己 の権﹅ 利﹅ 若し くは 法律 上保 護さ れた 利益
﹂と いう 定式 の中 の
﹁権 利﹂ につ いて は、 少な くと も第 三者 に関 し、 そこ に憲 法上 の権 利が 含ま れる とい う理 解は 採ら れて いな いの で、 憲法 上の 権利 を援 用し てス トレ ート に原 告適 格が 認め られ ると いう こと には なら ない こと も、 裁判 実務 上確 立さ れ た取 扱い で
( )
ある
。従 って
、実 際の 訴訟 にお いて も原 告の 主張 とし て憲 法論 が前 面に 出る こと はほ とん どな いと いっ
6
てよ いで あろ う。 また
、こ れは 既に 別稿 にお いて 指摘 した こと であ
( )
るが
、判 例の 採る
﹁法 律上 保護 され た利 益説
﹂
7
がこ のよ うに 処分 の根 拠法 規と いう 行政 機関 の行 為規 範の 解釈 に基 づい て原 告適 格を 判断 する 手法 をと る、 一種 の
︽行 為不 法的 アプ ロー チ︾ を採 るの に対 して
、憲 法レ ヴェ ルの 基本 権は
、利 益侵 害を 判断 の第 一段 階に 据え ると い う︽ 結果 不法 的ア プロ ーチ
︾を 採る もの であ ると すれ ば、 その 限り で両 者の 折り 合い が悪 いこ とも 確か であ る。 また 実際 上も
、憲 法論 が原 告適 格の 拡大 にと って
、直 ちに 有効 な手 段と なり うる かと いう こと も問 題で ある
。環 境権 など の新 しい 人権 に基 づい て原 告適 格を 認め ると いう 大胆 な手 法を 採る ので あれ ばと もか く、 原告 適格 判断 に おい てい わば
︽公 益と 私益 の谷 間︾ にあ ると され る地 域の 集団 的利 益や 環境 など につ いて 原告 適格 を拡 大す る際 に、 憲法 論が どこ まで 有効 かと いえ ば、 少な くと も現 在の 判例 法理 を前 提に する 限り 懐疑 的に なら ざる をえ ない
。 従っ て、 この よう な︽ 谷間
︾の 問題 につ いて は、 主観 訴訟
︵抗 告訴 訟︶ の枠 内で の解 決を 断念 し、 団体 訴訟 の創 設 など
、別 途方 策を 考え ざる をえ ない
︵立 法論
︶と いう のも 確か であ る。 三 従っ て、 原告 適格 に憲 法論 を持 ち込 んだ とし ても
、局 面が 劇的 に変 化す るも ので はな いと いう こと は、 これ を認 めざ るを えな い。 しか しな がら
、行 訴法 九条 二項 の理 解に つい ては
、と りわ け憲 法︵ 基本 権︶ との 関係 も含 め て、 理論 的に 検討 して おか なけ れば なら ない 点が ある とお もわ れる
。ま た、 解釈 論と して も、 従来 の判 例法 理を 踏 まえ つつ も、 それ とは 異な る方 向性 を、 試論 的に であ れ示 す必 要が ある
。そ うで ない と、 行訴 法九 条二 項の 下で 現 状が 問題 を残 した まま 固定 され ると いう こと にも なり かね ない
。 本稿 はこ のよ うな 問題 意識 に立 って
、原 告適 格に つい て改 めて 諸問 題の 考察 を試 みる もの であ る。 憲法 学に おい て常 に刺 激的 な問 題提 起を して こら れた 阪本 昌成 教授 の退 職記 念号 に寄 稿す るに あた り、 原告 適格 論の 再検 討と い うテ ーマ を選 んだ 所以 も、 原告 適格 論と 憲法 論と の関 連付 けを 再確 認し たい とい う動 機に 基づ くも ので ある
。 本稿 は、 以上 のよ うな 観点 から
、ま ず最 初に
、原 告適 格判 断の 枠組 みと 行訴 法九 条二 項の 関係 につ いて 若干 の整
理を 行っ た後
、同 項と 基本 権と の関 係に つい て考 察を 行う
︵第 一節
︶。 そし て次 いで
、近 時の とり わけ サテ ライ ト 大阪 訴訟 上告 審判 決な どの 判決 から 原告 適格 論に 関わ る若 干の 問題 を拾 い出 し、 それ につ いて コメ ント を加 える こ とに する
。そ の中 でも
、原 告適 格の 問題 は単 に範 囲の 広狭 の問 題に とど まら ず、 憲法 やそ の他 の問 題と 関連 して い るこ とを 指摘 した い︵ 第二 節︶
。
︵
︶ 小田 急訴 訟上 告審 判決 後の 原告 適格 をめ ぐる 下級 審判 決の 総合 的研 究と して
、小 澤道 一﹁ 取消 訴訟 にお ける 周辺 住民 の原 告適 格﹂
︵
︶~
︵
・完
︶判 例時 報二
〇四
〇号
︵平 成二 一年
︶三 頁、 二〇 四一 号︵ 同︶ 一七 頁、 二〇 四三 号︵ 同︶ 三一 頁、 二〇 四四 号︵ 同︶ 三頁 以下 があ る。
︵
︶ 塩野 宏﹃ 行政 法Ⅱ
︹第 五版
︺﹄
︵平 成二 二年
︶一 四一 頁・ 注︵ ︶
。
︵
︶ 本稿 筆者 は、 本稿 とは 別に 近々 サテ ライ ト大 阪訴 訟上 告審 判決 につ いて の判 例評 釈を 公表 する 予定 であ る︵ 民商 法雑 誌一 四三 巻四
・五 号
︵平 成二 三年
︶掲 載予 定︶
。本 稿の 第二 節の 内容 は、 この 判例 評釈 でも 述べ たこ とを 一部 敷衍 した もの であ る。
︵
︶ この 点に つい て改 正作 業段 階か ら懐 疑的 な見 解を 表明 する もの とし て、
﹁行 政訴 訟制 度の 見直 しの ため の考 え方
﹂︵ 平成 一六 年一 月六 日・ 司 法制 度改 革推 進本 部行 政訴 訟検 討会
︶に 付せ られ た福 井秀 夫委 員の 意見 が挙 げら れる
︵小 早川 光郎 編﹃ ジュ リス ト増 刊・ 改正 行政 事件 訴訟 法 研究
﹄︵ 平成 一七 年︶ 二三 九頁 参照
︶。 その 後、 この 点に つい ては
、行 政訴 訟に 携わ る弁 護士 のサ イド から も強 く主 張さ れて いる とこ ろで ある
︵斎 藤浩
﹁行 政事 件訴 訟法 改正 五年 見直 しの 課題
﹂自 治研 究八 六巻 七号
︵平 成二 二年
︶二
〇頁
・注
︵
︶参 照︶
。
︵
︶ 行訴 法九 条二 項に 関し ては
、そ もそ も憲 法七 六条 三項 との 関係 で﹁ 裁判 官が 適用 すべ き法 の﹃ 内容
﹄を 定め るの は立 法府 の権 限で あり 責務 であ ると して も、 一定 の条 文に つい ての 解釈 のあ り方 を指 示す るこ とま でが
、立 法府 に許 され るこ とな のか 否か につ いて は、 理論 的に 問題 が ある
﹂と し、 同項 は、 一種 の訓 示規 定と して 解す べき であ ると の指 摘が なさ れて いる
︵藤 田宙 靖﹃ 第四 版行 政法
Ⅰ︵ 総論
︶︻ 改訂 版︼
﹄︵ 平成 一 七年
︶四 二一 頁・ 注︵ ︶
︶。 従っ て、 原告 適格 を縮 小す るよ うな 解釈 であ れば とも かく
、原 告適 格の 拡大 をも たら す解 釈が 行訴 法九 条二 項の 枠外 でな され たと して も、 もち ろん それ は裁 判官 の権 限の 範囲 内で あっ て、 それ 自体 が違 法な もの でな いこ とは いう まで もな い。 もっ とも
、学 者や 弁護 士の 側が 行訴 法九 条二 項の 法的 性格 を、 この よう に訓 示規 定的
、相 対的 なも のと 理解 した とし ても
、裁 判官 の側 にお いて は、 それ を一 種の 職務 規範 とし て受 け止 め、 拘束 的規 範と して 運用 する とい うこ とは
、あ りう ると ころ であ って
、そ れは それ とし て、 九 条二 項の 内容 が法 律に よっ て定 めら れた こと の重 みを 考え れば 無理 から ぬと ころ があ ろう
。し かし なが ら、 そう いっ た九 条二 項を めぐ る理 解 の違 いが
、さ らに 原告 適格 の判 断枠 組み をめ ぐる 学説 と裁 判実 務と の間 の乖 離の 原因 にな りか ねな いと いう
、一 種の 負の 連鎖 に陥 る可 能性 が ない とも 限ら ない
。
︵
︶ 本稿 筆者 はか つて
、﹁ 法律 上保 護さ れた 利益 説﹂ の枠 内で 憲法 上の 基本 権の 直接 的援 用を 認め るこ とは
、行 政行 為を 行う に当 たっ ての 考慮
事項 を憲 法か ら直 接引 き出 すこ とと 表裏 の関 係に あり
、行 政権 に対 して いわ ば﹁ 直接 的憲 法執 行﹂ を認 める こと に繋 がり
、﹁ 法治 国的 憲法 執 行﹂ の観 点か ら問 題を 孕む もの であ る、 と指 摘し た︵ 神橋 一彦
﹃行 政訴 訟と 権利 論﹄
︵平 成一 五年
︶一 三四 頁︶
。そ の観 点か らす れば
、判 例が 原告 適格 判断 にお いて
、憲 法上 の権 利の 直接 的援 用を 認め ない こと にも 合理 的理 由が ある とい うこ とに なる
。
︵
︶ 神橋 一彦
﹁行 政訴 訟の 現在 と憲 法の 視点
︱︱
﹃基 本権 訴訟
﹄と して の行 政訴 訟と の関 連で
﹂ジ ュリ スト 一四
〇〇 号︵ 平成 二二 年︶ 四三 頁以 下。 本稿 は、 いわ ばこ の論 文の 続編 をな すも ので ある
。
第一 節
行訴 法九 条二 項の 理解 と基 本権
ઃ
行訴 法九 条二 項と 原告 適格 判断 の枠 組み 一 まず 最初 に、 行訴 法九 条二 項の 内容 につ いて 確認 して おく こと にし たい。 同項 は、 原告 適格 判断 にあ たっ ての 考慮 事項 を定 めた もの であ ると され
、内 容的 には
、﹁ 当該 処分 又は 裁決 の根 拠と なる 法令 の規 定の 文言
﹂の みに よっ て判 断す るも ので はな いこ とを 確認 した うえ で︵ 基本 原則
、︶
①﹁ 当該 法 令の 趣旨 及び 目的
﹂を 考慮 する こと
︵第 一の 考慮 事項
︶、
②﹁ 当該 処分 にお いて 考慮 され るべ き利 益の 内容 及び 性 質﹂ を考 慮す るこ と︵ 第二 の考 慮事 項︶ を指 示す る。 そし てそ の上 で、 第一 の考 慮事 項に 対応 して
、③
﹁当 該法 令 の趣 旨及 び目 的を 考慮 する に当 たっ ては
、当 該法 令と 目的 を共 通に する 関係 法令 があ ると きは その 趣旨 及び 目的 を も参 酌す る﹂ こと
︵第 三の 考慮 事項
︶、
④第 二の 考慮 事項 に対 応し て、
﹁当 該利 益の 内容 及び 性質 を考 慮す るに 当た って は、 当該 処分 又は 裁決 がそ の根 拠と なる 法令 に違 反し てさ れた 場合 に害 され るこ とと なる 利益 の内 容及 び性 質 並び にこ れが 害さ れる 態様 及び 程度 をも 勘案 する
﹂こ と︵ 第四 の考 慮事 項︶ を求 めて いる
。 もっ とも この 九条 二項 は、 同条 一項 にい う﹁ 法律 上の 利益
﹂の 有無
、す なわ ち原 告適 格の 判断 を行 う際 の指 針な いし 基準 を示 すも ので ある から
、そ の意 味で は、 原告 適格 判断 の枠 組み 本体 との 関係 でい えば
、補 助的 な位 置づ け
に立 つも ので ある とい えよ う。 そし て原 告適 格の 判断 枠組 み本 体に つい て少 なく とも 判例 は、 従来 から の﹁ 法律 上 保護 され た利 益説
﹂に よっ てお り、 その 内容 とし ては
、不 利益 要件
、保 護範 囲要 件、 個別 保護 要件 の三 つの 要件 と して 論じ られ てい ると ころ であ る。 確か に九 条二 項は この よう な判 断枠 組み 本体
︵す なわ ち﹁ 従来 の公 式﹂
︶に も影 響を 及ぼ すも ので ある とし て、 とり わけ 個別 保護 要件 は、 同項 の新 設後
、不 要に なる との 解釈 も存 した が、 裁判 実 務は
、現 在も なお この 個別 保護 要件 を維 持し てい るこ とは 周知 のと ころ であ る。 二 この 点に つい て本 稿筆 者は
、別 稿に おい て、 原告 適格 判断 の枠 組み 本体 につ き、
①一 定の 利益 が処 分の 根拠 法規 によ って 保護 され てい るか 否か とい う︽ 保護 利益 の判 定︾ と、
②そ のよ うな 保護 利益 が認 めら れる こと を前 提 とし て、 その 保護 範囲 が認 めら れる 者の 範囲 はど こま でか とい う︽ 保護 範囲 の画 定︾ の二 段階 に分 けて 論じ た。 右 に挙 げた 三要 件に 要約 され る原 告適 格判 断の 枠組 みは
、さ しあ たり 第一 段階 の︽ 保護 利益 の判 定︾ にか かわ るも の であ ると いえ るが
、原 告適 格の 判断 は、 その よう な判 定さ れた 保護 利益 を前 提に して
、そ の具 体的 な範 囲が どこ ま で及 ぶの かと いう 範囲 の画 定、 すな わち 第二 段階 の︽ 保護 範囲 の画 定︾ によ って 最終 的に 完結 する こと にな る。 この よう に︽ 保護 範囲 の画 定︾ の問 題を
︽保 護利 益の 判定
︾の 一要 件を なす 個別 保護 要件 の問 題と 一応 切り 離し て論 じる のは
、︽ 保護 利益 の判 定︾ は、 主と して 処分 の根 拠法 規の 解釈 の問 題と して 論じ られ るの に対
( )
して
、︽ 保護
8
範囲 の画 定︾ の問 題は
、基 本的 には 各個 別事 案に かか わる 事実 の問 題で あっ て、 処分 の根 拠法 規や それ と目 的を 共 通に する 関連 法令 の解 釈の 問題 とは 必然 的に は直 結し ない とい える から で
( )
ある
。そ して 第二 段階 の︽ 保護 範囲 の画
9
定︾ につ いて さら に詳 細に いう なら ば、 近時
、小 澤教 授の 指摘 する よう に、
①原 告適 格を 有す る者 の範 囲に つい て の判 定基 準の 定立 と、
②当 該判 定基 準の 当該 原告 への 当て はめ に分 けら れる こと に
( )
なる
。こ れを 踏ま えて 改め て整
10
理す ると
、次 のよ うに なる
。 第一 段階
保護 利益 の判 定
第二 段階
保護 範囲 の画 定
①判 定基 準の 定立
②基 準の 当て はめ ただ し、 実際 の判 決を みる と、 第一 段階 と第 二段 階の
①︵ 判定 基準 の定 立︶ まで が、 いわ ば一 般論 とし てひ とま と まり の判 示と して 書か れ、 それ を受 けて 個別 事案 への 当て はめ とい う形 で第 二段 階の
②︵ 基準 の当 ては め︶ にか か わる 判示 がな され るこ とが ある
。 例え ば、 もん じゅ 行政 訴訟 上告 審判 決︵ 最︵ 三小
︶判 平成 四年 九月 二二 日民 集四 六巻 六号 一〇 九〇 頁︶ では
、
第一 段階 の︽ 保護 利益 の判 定︾ とし て、 処分 の根 拠法 規で ある、核 原料 物質
、核 燃料 物質 及び 原子 炉の 規制 に関 する 法 律二 四条 一項 三号 及び 四号 は﹁ 単に 公衆 の生 命、 身体 の安 全、 環境 上の 利益 を一 般的 公益 とし て保 護す るに とど ま らず
、…
…︹ 一定 範囲 の住 民の
︺生 命、 身体 の安 全等 を個 々人 の個 別的 利益 とし ても 保護 する 趣旨 を含 むと 解す る のが 相当 であ る﹂ とい う判 示が なさ れ、 その なか に
︽保 護範 囲の 画定
︾に かか わる
①判 定基 準の 定立 とし て、
﹁原 子炉 施設 周辺 に居 住し
、右 事故 等が もた らす 災害 によ り直 接的 かつ 重大 な被 害を 受け るこ とが 想定 され る範 囲﹂ とい う基 準が 挟み 込ま れた 形に なっ てい る。 そし て、 以上 の一 般論 的説 示を 受け て、
② 右判 定基 準の 当て はめ と して、﹁ 当該 住民 の居 住す る地 域が
、前 記の 原子 炉事 故等 によ る災 害に より 直接 的か つ重 大な 被害 を受 ける もの と 想定 され る地 域で ある か否 かに つい ては
、当 該原 子炉 の種 類、 構造
、規 模等 の当 該原 子炉 に関 する 具体 的な 諸条 件 を考 慮に 入れ た上 で、 当該 住民 の居 住す る地 域と 原子 炉の 位置 との 距離 関係 を中 心と して
、社 会通 念に 照ら し、 合 理的 に判 断す べき もの であ る﹂ とし
、具 体的 には 当該 原子 炉か ら約 二九 キロ メー トル ない し約 五八 キロ メー トル の 地域 に居 住し てい る原 告に 原告 適格 を認 める
︱︱ その よう な流 れに なっ てい る。 第二 段階 の︽ 保護 範囲 の画 定︾ は、 主と して 個別 の事 案に おけ る事 実の 問題 であ ると 述べ たが
、そ れは 処分 の根
拠法 規の 解釈 とは 一応 切り 離さ れる とい う趣 旨で あっ て、 判定 基準 の定 立の 場面 にお いて は、 裁判 例に よっ ては
、 基準 の内 容と して 一種 の︽ 受忍 限度 論︾ の反 映で はな いか とみ られ るも のも あり
、そ の限 りで
、民 事法 的発 想の ア ナロ ジー の当 否が 問題 とさ れて おり
、法 的な 問題 がそ こに 存在 して いる とみ るこ とは で
( )
きる
。ま た判 定基 準の 当て
11
はめ の段 階に おい ても
、も んじ ゅ事 件上 告審 判決 の場 合を みる と、 同判 決の 調査 官解 説が 述べ てい るよ うに
、処 分 の根 拠法 規で ある 規制 法二 四条 三号
、四 号に 基づ く﹁ 当該 原子 炉の 基本 設計 につ いて の安 全審 査…
…が
、ど の範 囲 の周 辺地 域・ 住民 を対 象と して 行わ れる こと が予 定さ れて いる かと いう 観点
、換 言す れば
、規 制法 は、 原子 炉設 置 許可 の段 階で
、ど の範 囲の 周辺 地域
・住 民の 生命
、身 体の 安全 等を
、一 般公 衆の それ とは 区別 して
、特 に配 慮し
、 視野 に入 れた 上で 右安 全審 査を 行う べき もの とし てい るか とい う観 点か ら検 討﹂ がな され てい ると され てお り、 処 分の 根拠 法規 との 一定 の関 連が 認め ら
( )
れる
。も っと もこ れは
、判 定基 準の 具体 化と して 合理 性が 認め られ るか らこ
12
のよ うな 方法 が採 られ たと みる べき であ って
、処 分の 根拠 法令 の解 釈か らス トレ ート に要 請さ れる もの では ない で あろ う。 以上
、原 告適 格判 断本 体の 枠組 みに つい て整 理し たが
、そ れで は次 に、 この よう な本 体の 枠組 みと 九条 二項 はい かな る関 係に 立つ か、 とり わけ
、そ れと の関 係で 同項 の︽ 第四 の考 慮事 項︾ の意 味す ると ころ はな にか とい う点 が 問題 とな る。 すな わち
、こ の︽ 第四 の考 慮事 項︾ にお いて は、
﹁当 該処 分又 は裁 決が その 根拠 とな る法 令に 違反 し てさ れた 場合 に害 され るこ とと なる 利益 の内 容及 び性 質﹂ とな らん で﹁ これ が害 され る態 様及 び程 度﹂ を考 慮す る こと が求 めら れて いる
。確 かに
、そ こで は違 法処 分が 行わ れた 際に 想定 され る利 益侵 害︵ 損害 の︶ 程度 が視 野に 入 れら れる こと にな るが
、そ れは
、個 別の 当該 事案 にお ける 具体 的な 損害 では なく
、﹁ 当該 処分 にお いて 考慮 され る べき 利益 の内 容及 び性 質﹂ とい う︽ 第二 の考 慮事 項︾ との 関連 で﹁ 勘案
﹂さ れる べき もの であ ると する と、 要す る に処 分要 件に おい て考 慮さ れる 利益 とそ の侵 害の 想定 とい う抽 象的
・定 型的 な判 断で あっ て、 あく まで 処分 の根 拠
法規 が保 護し てい る利 益が
、一 般的 公益 とは 区別 され た形 で原 告適 格を 基礎 づけ るも ので ある か、 とい う法 解釈 の 範疇 に属 する 事項 であ る、 とさ しあ たり 考え るこ とが で
( )
きる
。こ の点 につ いて は、 鶴岡 裁判 官が
、﹁ 一種 の逆 流解
13
釈﹂ とし て﹁ こう いう 利益 が侵 害さ れて いる では ない か、 こん な重 大な 利益 侵害 が生 じて いる では ない か、 そう だ とす れば
、こ うい う利 益が 根拠 法規 で考 慮さ れて いな いわ けで はな いだ ろう
。そ のよ うな 形で 解釈 を持 ち込 んで い くと いう こと はあ りう るの では ない か﹂ と指 摘し てい るが
、か かる 指摘 は、 処分 の根 拠法 規を 解釈 する にあ たっ て 一つ の思 考実 験の 過程 があ りう るこ とを 示し たも のと おも わ
( )
れる
。ま た、 かか るプ ロセ スは
、後 に指 摘す る︽ 第四
14
の考 慮事 項︾ と基 本権 との 関係 を考 える 際に も手 掛か りを 与え るも ので あり
、親 和性 を有 する もの と考 えら れる
。 そう なる と︽ 第四 の考 慮事 項︾ も基 本的 には 第一 段階 の︽ 保護 利益 の判 定︾ にか かわ るも ので ある とい える が、 第二 段階 の︽ 保護 範囲 の画 定︾ とど のよ うに かか わる かに つい ては
、必 ずし も明 らか では ない
。そ もそ もこ の︽ 保 護範 囲の 画定
︾が
、当 該事 案に おい て違 法処 分に より 原告 がど のよ うな 不利 益︵ 被害
︶を 受け るか とい う事 実の 問 題で ある とす れば
、こ の︽ 第四 の考 慮事 項︾ を持 ち出 すま でも なく
、利 益が 害さ れる 態様 や程 度が 考慮 され るこ と はい わば 自明 のこ とで あろ う。 ただ し、 具体 的な 被害 の態 様、 程度 の考 慮の 仕方 につ いて は、 第二 節で 述べ るよ う に問 題が ある
。
︽第 四の 考慮 事項
︾と 基本 権 一 この よう に︽ 保護 利益 の判 定︾ と︽ 保護 範囲 の画 定︾ とい う二 つの 段階 を区 分し
、基 本的 に前 者は
、主 とし て処 分の 根拠 法規 にか かわ る法 解釈 の問 題で ある が、 それ に対 して 後者 は、 主と して 事実 の問 題で ある
、と いう 一 応の 区分 けを した のは
、原 告適 格判 断の 筋道 をよ り明 確に 整理 した い、 とい う意 図に 基づ くも ので ある
。こ の点 に つい て、
︽第 四の 考慮 事項
︾と 憲法 上の 基本 権と の関 係に 焦点 をあ てて
、具 体的 に論 じる こと にし たい
。
周知 のよ うに
、︽ 第四 の考 慮事 項︾ のモ デル とな った のは
、右 に引 用し たも んじ ゅ行 政訴 訟最 高裁 判決 であ る。 この 判決 は、 新潟 空港 訴訟 上告 審判 決︵ 最︵ 二小
︶判 平成 元年 二月 一七 日民 集四 三巻 二号 五六 頁︶ とと もに
、周 辺住 民 に許 可手 続へ の関 与を 認め た規 定が ない にも かか わら ず、
﹁当 該行 政法 規が 当該 処分 を通 じて 保護 しよ うと して い る利 益の 内容
・性 質等
﹂を 考慮 して 原告 適格 を認 めた もの で
( )
ある
。す なわ ち新 潟空 港事 件に おい ては
﹁航 空機 の騒
15
音に よっ て著 しい 障害 を受 けな いと いう 利益
﹂が
、も んじ ゅ事 件に おい ては
、﹁ 生命
、身 体の 安全 等﹂ が、 それ ぞ れ周 辺住 民に つい て、 一般 的公 益と は区 別さ れた 保護 利益 とし て認 めら れて いる
。そ して この よう な流 れは
、都 市 計画 法に 基づ く開 発許 可の 取消 訴訟 につ いて 開発 区域 周辺 住民 の原 告適 格を 認め た最
︵三 小︶ 判平 成九 年一 月二 八 日民 集五 一巻 一号 二五
〇頁
︵以 下、 本節 にお いて
﹁平 成九 年最 判﹂ とい う。
︶、 さら には 森林 法に 基づ く林 地開 発許 可 につ いて 開発 区域 周辺 住民 の原 告適 格を 認め た最
︵三 小︶ 判平 成一 三年 三月 一三 日民 集五 五巻 二号 二八 三頁
︵以 下、 本節 にお いて
﹁平 成一 三年 最判
﹂と いう
。︶ へと つな
( )
がる
。
16
この よう な︽ 利益 の内 容・ 性質
︾そ して
︽侵 害の 態様
・程 度︾ に着 目し た原 告適 格判 断は
、例 えば
、平 成九 年最 判に おけ るよ うに
、従 来、 下級 審に おい て、 周辺 住民 の利 益を 保護 する 特段 の規 定が ない との 理由 で原 告適 格を 否 定す る裁 判例 もあ った こと から
、原 告適 格を 拡大 する 方向 に確 実に 寄与 する もの であ った とい える
。そ して
、そ れ が︽ 第四 の考 慮事 項︾ へと 発展 して いく こと にな る。 二 ただ そこ に、
︽第 四の 考慮 事項
︾の 解釈 とも 関係 する 問題 が伏 在し てい る。 とい うの も、
︽著 しい 騒音 を受 け ない 生活 環境
︾や
︽生 命、 身体 の安 全等
︾と いっ た利 益が
、︽ 利益 の内 容・ 性質
︾に 照ら して 一般 的公 益に 吸収
・ 解消 され ない とす る結 論に は異 論は ない もの の、 なぜ その よう な利 益に 限っ てか かる
︽特 段の 取扱 い︾ を受 ける こ とに なる のか
、と いう 問題 があ るか らで
( )
ある
。こ の点 につ いて 平成 九年 最判
、平 成一 三年 最判 とも に明 言す ると こ
17
ろは ない が、 両判 決の 調査 官解 説の 中に それ をう かが わせ る部 分が ある
。ま ず平 成九 年最 判の 調査 官解 説は 次の よ
うに いう
。
﹁都 市計 画法 三三 条一 項七 号が 開発 区域 の周 辺住 民の 個人 的利 益を も保 護し てい ると 解す べき 重要 な根 拠は
、同 号が 保 護の 対象 とし てい るの が、 人の 生命
、身 体の 安全 等と いう
、か﹅ け﹅ が﹅ え﹅ の﹅ な﹅ い﹅
、公 益に は容 易に 吸収 解消 され 難い 性質 の利 益で ある こと にあ
( )
った
。﹂
︵傍 点、 本稿 筆者
︱ ︱
以下 同じ︶
18
平成 一三 年最 判調 査官 解説 は、 右の よう な先 例の 解説 を踏 襲し たも ので ある
。
﹁…
…森 林法 一〇 条の 二第 一項 一号 や︹ 平成 九年 最判 の事 件で 問題 とな った
︺都 市計 画法 三三 条一 項七 号等 が個 別的 利 益と して 保護 する 対象 が周 辺住 民の 生命
、身 体の 安全 等に 限ら れる のは
、生 命、 身体 の安 全と いう 保﹅ 護﹅ 法﹅ 益﹅ の﹅ 特﹅ 殊﹅ 性﹅ によ ると ころ が大 きい もの と思 われ る。 すな わち
、人 の生 命、 身体 の安 全等 は、 か﹅ け﹅ が﹅ え﹅ の﹅ な﹅ い﹅
、公 益に は容 易に 吸収 解消 さ れ難 い性 質の 利益 であ り、 法的 な仕 組み の下 でこ れを 制限 する とい うこ とは 想定 しに くい もの であ って
、そ れ故 に周 辺住 民の 原告 適格 を肯 定す る重 要な 根拠 にな るも ので
( )
ある
。﹂
19
すな わち ここ では
、︽ 特段 の取 扱い
︾の 理由 とし て、
﹁人 の生 命、 身体 の安 全等
﹂は
、﹁ かけ がえ のな い﹂ もの であ ると いう
﹁保 護利 益の 特殊 性﹂ が挙 げら れて いる
。お そら く新 潟空 港訴 訟で 問題 とな った 著し い騒 音の ない 生活 環 境な ども 含め て考 える と、 人格
︵と りわ け生 存や 生活
︶に とっ て重 要な 利益
、す なわ ちあ る種 の︽ 人格 的利 益︾ に つい ては これ を﹁ かけ がえ のな い﹂ もの とし て︽ 特段 の取 扱い
︾を する とい うこ とに なる ので あろ う。 この よう に ある 種の
︽人 格的 利益
︾に つい ては
︽特 段の 取扱 い︾ を行 うと いう 考え 方は
、既 に述 べた よう に、 一方 にお いて 原
告適 格を 拡大 する 方向 に寄 与し たも ので ある こと は間 違い ない が、 他方 にお いて
、そ の他 の利 益に つい ては
、従 前 通り
、許 可手 続へ の関 与な ど特 別の 規定 がな い限 り、 原告 適格 が認 めら れな いと いう 結論 を導 くこ とに なる
。た だ ここ で問 題と した いの は、
﹁か けが えの ない
﹂も のか どう かと いう
、あ る種 自然 法的 な響 きを もつ もの の、 結局 は 裁判 官の 価値 判断 に基 づく 線引 きで もっ て、 かよ うな
︽特 段の 取扱 い︾ の可 否が 決せ られ てよ いか
、と いう 点で あ る。 そし て、 そこ で少 なく とも 問題 とな るの は、
﹁財 産﹂ ない し﹁ 財産 権﹂ の位 置づ けで ある
。右 の二 つの 最判 に おい て共 通し て問 題と なっ てい たの も、 その 点で あっ た。 三 平成 九年 最判 では
、都 市計 画法 三三 条一 項の 開発 許可 の要 件の うち
、﹁ 開発 区域 内の 土地 が、 地盤 の軟 弱な 土地
、が け崩 れ又 は出 水の おそ れが 多い 土地 その 他こ れら に類 する 土地 であ ると きは
、地 盤の 改良
、擁 壁の 設置 等 安全 上必 要な 措置 が講 ぜら れる よう に設 計が 定め られ てい るこ と。
﹂︵ 七号 と︶ いう 要件 の保 護規 範性 が問 題と なっ てい る。 ここ では 財産 の保 護利 益性 につ いて は正 面か ら問 題と なっ てい るわ けで はな いが
、原 告の 一人 が上 告審 係 属中 に死 亡し たこ とと の関 係で
、原 告適 格が 相続 され るか
︵す なわ ち、 訴訟 承継 が許 され るか と︶ いう 問題 の前 提と して
、財 産の 保護 利益 性が 問題 とな って いる ので ある
。そ して この 点に つい て、 同判 決は
、﹁ 同上 告人 の有 して い た本 件開 発許 可の 取消 しを 求め る法 律上 の利 益は
、同 上告 人の 生命
、身 体の 安全 等と いう 一身 専属 的な もの であ り、 相続 の対 象と なる もの では ない から
、本 件訴 訟の うち 同上 告人 に関 する 部分 は、 その 死亡 によ り終 了し たも の とい うべ きで ある
﹂と して いる
。す なわ ちこ こで は、
﹁生 命、 身体 の安 全等﹅
﹂の
﹁等
﹂の 中に は財 産権 は含 まれ な いと いう 理解 が、 当然 の前 提と され てい るわ けで ある
。こ の点 につ いて 同判 決の 調査 官解 説は
、﹁ 本件 許可 処分 に より 保護 され てい る利 益に
、承 継取 得さ れる 性質 のも のが 含ま れて いる なら
、そ の承 継を 根拠 に原 告適 格の 承継 も 認め うる こと
﹂に なり
、﹁ 具体 的に は、 本件 処分 が、 周辺 住民 の生 命、 身体 の安 全等 のほ かに
、周 辺の 土地 等の 所 有者 の所 有権 をも 保護 する もの と解 され るか どう かが 問題 とな ろう
﹂と 問題 点を 明示 した 上で
、﹁ 人の 生命
、身 体
の安 全等
﹂は かけ がえ のな いも ので ある とい う右 に注
︵
︶の 番号 を付 して 引い た部 分に 続け て、 次の よう にい 18 う。
﹁し かし なが ら、 土地 等の 所有 権は
、公 益に は容 易に 吸収 解消 され 難い 性質 の権 利と いう こと はで きな いよ うに 思わ れ る。 また
、所 有者 は、 物上 請求 権を 行使 して
、そ の侵 害の 予防 をす るこ とが 法定 され てお り、 行政 法規 が公 益の みに 着目 して 規制 をす ると いう こと は、 何ら 不自 然で はな い。 そう する と、 根拠 法規 が明 確に 所有 権を も保 護す るも のと 定め てい ると はみ られ ない 同号 につ いて は、 人の 生命
、身 体の 安全 等の ほか に周 辺土 地等 の所 有権 の保 護の 趣旨 が含 まれ てい ると 解す べき 根拠 はな いも のと 思わ れる
。そ うだ とす ると
、所 有権 の承 継を 根拠 に原 告適 格の 承継 を認 める こと はで きな いこ とに
( )
なる
。﹂
20
そし てこ こに いう
﹁人 の生 命、 身体 の安 全等
﹂の
﹁等
﹂に 何が 含ま れる かに つい て、
﹁等
﹂が 何を 意味 する かは 文 言上 不明 では ある が、
﹁﹃ 生命
、身 体の 安全
﹄と いう 言葉 では 必ず しも いい 尽く せな い人 的利 益を 表す もの とい うの が適 当と 思わ れる
﹂と して
( )
いる
。お そら く、 新潟 空港 訴訟 にお ける 周辺 住民 の︽ 航空 機の 騒音 によ って 著し い障 害
21
を受 けな いと いう 利益
︾や
、後 の小 田急 訴訟 にお ける
︽違 法な 事業 に起 因す る騒 音、 振動 等に よっ て健 康又 は生 活 環境 に係 る著 しい 被害 を受 けな いと いう 具体 的利 益︾ のご とき もの がこ こに 含ま れる こと にな るの であ ろう
。ま た そう する と、 一家 の世 帯主 のみ が原 告に なっ てい た場 合、 当該 原告 が死 亡し た場 合、 当該 世帯 の他 の家 族は
、家 屋 を相 続し たと して も、 相続 人と いう 立場 では 原告 とは なり えな いこ とに
( )
なる
。
22
さら に、 平成 一三 年最 判で は、 立木 とい う具 体的 な財 産が 保護 利益 に当 たる かど うか が問 題と なっ てい る。 すな わち
、こ の事 件で 問題 とな って いる のは
、森 林法 一〇 条の 二第 二項 が定 める
、林 地開 発許 可に かか る次 のよ うな 要
件規 定で ある
。 一
当該 開発 行為 をす る森 林の 現に 有す る土 地に 関す る災 害の 防止 の機 能か らみ て、 当該 開発 行為 によ り当 該森 林の 周辺 の地 域に おい て土 砂の 流出 又は 崩壊 その 他の 災害 を発 生さ せる おそ れが ある こと
。 一の 二 当該 開発 行為 をす る森 林の 現に 有す る水 害の 防止 の機 能か らみ て、 当該 開発 行為 によ り当 該機 能に 依存 する 地域 にお ける 水害 を発 生さ せる おそ れが ある こと
。 二 当該 開発 行為 をす る森 林の 現に 有す る水 源の かん 養の 機能 から みて
、当 該開 発行 為に より 当該 機能 に依 存す る地 域に おけ る水 の確 保に 著し い支 障を 及ぼ すお それ があ るこ と。 三 当該 開発 行為 をす る森 林の 現に 有す る環 境の 保全 の機 能か らみ て、 当該 開発 行為 によ り当 該森 林の 周辺 の地 域に おけ る環 境を 著し く悪 化さ せる おそ れが ある こと
。 ちな
みに この 事件 の原 告は
、最 終的 に上 告審 で原 告適 格が 認め られ た、 本件 開発 区域 の下 方約 一〇
〇メ ート ルな い し数 百メ ート ルに 位置 する 住居 に居 住し てい る者 二名 のほ か、 本件 開発 区域 内又 はそ の周 辺に 所在 する 土地 に立 木 を所 有し てい る者 四名
、川 から 取水 して 農業 を営 んで いる 者一 名で ある
。そ して これ らの 原告 につ いて
、第 一審 判 決︵ 岐阜 地判 平成 七年 三月 二二 日︶ は、 全員 の原 告適 格を 否定 した のに 対し て、 控訴 審判 決︵ 名古 屋高 判平 成八 年五 月 一五 日︶ は、 逆に 全員 につ いて 原告 適格 を認 めて いる
。こ れに 対し て上 告審 判決 は、 右に 述べ た周 辺住 民二 名に つ いて のみ 原告 適格 を認 め、 それ 以外 の者 の原 告適 格を 否定 して いる
。
અ
補論
︱︱ 原告 適格 判断 にお ける 処分 の根 拠法 規の 捉え 方