「 ロ シ ア の 憲 法 変 動
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〈 論 説 〉
ロ シ ア の 憲 法 変 動
一一 比 較 憲 法 学 の 視 点 か ら 一
塩 津 徹
は じめ に
ロシ アの現 行 憲法 は比較 憲 法学 的 にい えば 自由主 義憲 法 で あ り、 か つ て の ソ 連 の社会 主 義憲 法 とは根本 的 に異 な る。 この社 会 主義 憲 法 か ら自由主義 憲 法 へ の移 行 は、一 般 的 な言 い方 をすれ ば体 制転換 で あ る。体 制転 換で あ る以上 、政 治 ・経済 の構 造 変化 で あ り単 な る憲法 改正 問題 として捉 え るの は無 理 が あ る。
そ こで本 稿 で は この よ うな体制 転換 を伴 う憲 法 の変化 を政 治 ・経 済 の構 造 変化 を含 む憲 法変 動論 として検 討 して み る。
た だ、筆者 は ソ連、 ロシ ア憲法 の専 門家 で はな いので ロシ ア憲 法 その もの、
また、 それ らを取 り巻 く政 治 ・社 会 の構 造 に関 して詳細 に触 れ る こ とは しない。
本稿 で はあ くまで も比較 憲 法学 の視 点か ら社 会主 義憲 法 か ら自由主 義憲 法 へ の
の
憲 法 変 動 を類 型 論 的 に概 括 し よ う とす る も の で あ る。 そ の た め に ソ ビ エ ト法 ・ ロ シ ア法 の専 門 家 の これ まで の研 究 に多 く依 拠 して い る こ とを明 確 に して お く。
まー た、 社 会 主 義 憲 法 か ら 自 由主 義 憲 法 へ の 変 動 は、 実 際 に は そ の つ な が りを 考 え れ ば1977年 の ソ連 憲 法 か ら1993年 の ロ シ ア憲 法 へ の移 行 と して捉 え るべ き で あ るか も しれ な い が 、 そ の こ とに 関 して は あ らか じ め 二 つ の 点 を 断 って お き た い 。 一 つ の 点 は ソ連 とロ シ ア の 関 係 で あ り、 本 来 は 両 者 は 厳 密 に い え ば 全 く の 同 一 の 国 家 で は な い こ とで あ る。
しか し、 実 態 的 に はか つ て の ソ連 の 中核 は ロ シ ア で あ り、 ロ シ ア 革 命 か ら ソ
連 の 建 国 が 始 ま っ た とい う歴 史 的 経 緯 が あ る。 そ して 、 ソ連 崩 壊 後 の 現 在 の ロ
シ ア は 国 際 的 に も ソ連 の継 承 国 とみ な さ れ て い る。 した が っ て 、 本 稿 で は ソ連
と ロ シ ア を便 宜 的 に 同 一 国 家 と して 理 解 し、 そ の 憲 法 変 動 の 問 題 を扱 お う とす
る もの で あ る。
二 つ 目の 点 は1993年 の 自由主 義 憲 法 の 比 較 の対 象 と して1977年 の ソ連 憲 法 で は な く、 そ の 前 の 憲 法 で あ る1936年 の ソ連 憲 法 を取 り上 げ る こ とで あ る。 ロ シ ア憲 法 史 の流 れ か らい え ば、 確 か に ソ連 崩 壊 時 の1977年 の 憲 法 が 直 接 的 な比 較 の対 象 とな るは ず で あ る。 しか し、1977年 の 憲 法 は体 制 崩 壊 前 に はか な り多 く の修 正 を 受 けて い る こ とが あ る。 また 、1977年 の 憲 法 の 原 型 は1936年 の 憲 法 で あ る とさ れ て い る。
本 稿 は ロ シ ア憲 法 史 の視 点 で は な く、 比 較 憲 法 学 の 視 点 か らの 検 討 で あ り、
一 般 的 な意 味 で の社 会 主 義 憲 法 と自 由 主 義 憲 法 の類 型 論 的 比 較 に焦 点 を あ て て い る。 そ れ ゆ え に世 界 各 国 の社 会 主 義 憲 法 の モ デ ル とな り、 ロ シ ア 憲 法 史 か ら
の い って もソ連初 の社 会主 義憲 法 で あ り、社 会主 義体 制 の骨格 が形成 され た1936 年 憲法 を比較 の対象 と して と りあげ るので あ る。
(1)ロ シ ア 憲 法 史 概 観
ロ シ ア の 憲 法 変 動 は体 制 転 換 に と もな う もの で あ る。 体 制 転 換 は社 会 主 義 憲 法 体 制 の 東 ドイ ツか ら 自由 主 義 憲 法 体 制 の統 一 ドイ ツへ の 移 行 の よ う に平 和 的 、 合 法 的 に な され る場 合 も あ るが 、 ロ シ ア の 場 合 は そ うで は な い 。 社 会 主 義 体 制
の確 立 、 自 由 主 義 体 制 へ の 転 換 の い ず れ に お い て も、 革 命 、 ク ー デ ター の形 で 武 力 が 行 使 され た の で あ る。 ロ シ ア の 体 制 転 換 の特 徴 は この よ うな 暴 力 的 変 動
で あ る こ とに あ る。
本 稿 の テ ー マ で あ る社 会 主 義 憲 法 と 自 由主 義 憲 法 の 比 較 の 前 に、 この 体 制 転 換 の 歴 史 を概 観 して お きた い 。1917年 の ロ シ ア革 命 は帝 政 を武 力 で 打 倒 した の で あ る が 、 成 立 した 臨 時 政 府 は 必 ず し も社 会 主 義 の 方 向 を 目指 した わ けで は な く、 自 由 主 義 の 可 能 性 を残 して い た 。 しか し、 この 臨 時 政 府 も社 会 主 義 の革 命 組 織 で あ る ソ ビエ トの 武 力 に よ っ て 打 倒 され た の で あ る。
革 命 前 の ロ シ ア の 帝 政 社 会 は ヨー ロ ッパ の 中 で も近 代 化 が 遅 れ て い た 。 この
こ とは 多 くの 論 者 の 指 摘 に お い て 一 致 す る点 で あ る。 政 党 制 、 議 会 制 度 に 関 し
て も よ うや く帝 政 末 期 に 出現 した の で あ っ て 、 また 、 帝 政 末 期 に廃 止 され た と
は い え農 奴 制 が 長 ら く続 い て い た の で あ る。 革 命 以 前 の ロ シ ア の 法 的 構 造 につ
ロシ アの憲法 変動3
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いて は和 田春樹 教 授 の詳細 な研 究 が あ るので概 括 して み る。
それ に よれ ば、 当時 の ロシ アに おいて は権利 主体 と しての 私人 が存 在 しない ぼか りか、権 利主 体 として の 臣民一般 も成 立 して い ない状 況 で あ った。 あ るの は、義務主体 と しての 「 身分 の権利 」 、権利主体 としての身分 で あったので あ る。
この よ うな身分 制社会 の構 造 は1905年 以降 に は議 会 制度 の成 立 、憲 法 の制 定 に よって多 少 は変容 を受 けるので あ るが、根 本 的 に は変 化 しない。
近 代市 民社 会 の基本 構造 をなす もの は市 民 の 自由 と対 等 な関係 で あ るが、 当 時 の ロ シア にお いて はその よ うな関係 は欠如 し、 身分 ご とに権 利 ・義 務 関係 が 構 成 され てお り、社会 の様 々 な関係 を一律 に規定 す る構 造 はなか った。 そ して、
無制 限 で あ り絶対 で あ る とされ た皇 帝 の権 力 と無 限 の隷 従 を強 い られ た圧 倒 的 多 くの農 民 の存在 が あ り、近代 市民社 会 とは ほ ど遠 か ったの で あ る。
帝政 ロシ アにお ける近代 市 民社 会 の構 造 の確 立 の遅 れ は、 ロシ ア革命 の勢 力 内部 に も臨 時政府 の ように近代 市 民社 会 の確立 を 目指 す 自由主 義 へ の志 向性 を 生 んだ ので あ る。 しか し、前 に も述 べ た よ うに臨時政 府 もまた打倒 され る こ と
とな って ロシ ア社 会 は近代 市 民社 会 の 自由 の展 開 を見 る前 に一 党独 裁 の社 会 主 義体 制 へ と移 行 したので あ る。
ロシ アにお ける近代 市 民社 会 の遅 れが 、 そ こに成 立 した社 会 主 義 を帝政 期 の よ うな権威 主 義 に変容 させ た のか、 それ とも社 会 主 義 自体 が権 威 主義 的要 素 を 内包 して い るの か の議 論 は分 か れ る ところで あ る。 た だ、実 際 に はそ の後 の ロ シ ア、 ソ連 の政 治 ・社 会 は上 か らの絶 対 的支配 と自由が 欠如 した権 威 主義 を内 包 した社会 で あ った こ とは間 違 い ない ので あ る。
この社会 主義 革命 に よって、 まず最初 に制 定 され た憲法 は1918年 の ロシ ア社
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会 主 義 連 邦 ソ ビエ ト共 和 国 憲 法 で あ る。 そ して 、1924年 に は ソ ビエ ト社 会 主 義 共 和 国 同盟 憲 法 が 制 定 され て い る。 こ の憲 法 は ソ連 憲 法 と して は最 初 の憲 法 で あ る。 た だ し、 これ ら二 つ の憲 法 は資 本 主 義 か ら社 会 主 義 へ との 過 渡 期 の 憲 法 で あ る とされ て い る。
した が って 、 これ らの 憲 法 で は い まだ 社 会 主 義 の特 徴 は完 全 に 明 確 に な っ て
い る とは言 い難 い 。 た とえ ば 、 革 命 後 に 多 くの 工 場 、 鉱 山 が 国 有 化 され た 後 も
当 時 の 人 口 の 多 くを 占 め た 農 業 に 関 して 土 地 所 有 は公 有 化 され な か っ た 、 とい
う よ りは農 民 の 抵 抗 が 強 くで き な か っ た の で あ る。 こ の農 業 部 門 に お け る 私 有
制 の存 続 が社 会 主義 化 の徹 底 を阻 んで い たので あ る。
しか し、1920年 代末 か ら政府 は強 制 的 に集 団農場 化 を進 め、 それ に よっ て社 会主 義 の原 則 で あ る生産 手 段 の公 有化 が農業 部 門で も達成 され た。 そ の憲 法上
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の 反 映 が1936年 の ソ連 憲 法 で あ り、 初 の 本 格 的 な社 会 主 義 憲 法 で あ る と され て い る。1936年 の ソ連 憲 法 は、 「ス ター リ ン憲 法 」 とも呼 ばれ 、 第 二 次 大 戦 後 、 ソ 連 の 影 響 の 下 で 成 立 した 多 くの 社 会 主 義 国 の 憲 法 の モ デ ル とな っ た 。
そ の 中 に は 中華 人 民 共 和 国 の 歴 史 に登 場 す る数 多 くの 憲 法 も含 まれ る。 そ し て 、 東 ドイ ツ、 ボ ー一ラ ン ド、 チ ェ コ、 ハ ンガ リー な ど、 か つ て の 社 会 主 義 国 の
ほ とん どが 自 由主 義 へ の体 制 転 換 を遂 げ た 今 日 も、 現 行 の 中 国 憲 法 は基 本 的 に は社 会 主 義 憲 法 の 形 態 を変 え て い な い 。 この 点 に関 して は 改 め て 総 括 の 項 で 触 れ る こ とに す る。
そ の後 、 ソ連 は1977年 に は1936年 憲 法 に 代 え て 新 た な 憲 法 を制 定 して い る。
この 憲 法 は社 会 主 義 の 新 た な 発 展 段 階 に相 応 して制 定 さ れ た が 、 社 会 主 義 の 憲 法 制 度 を根 本 的 に変 化 させ る も の で は な か っ た 。 制 定 後 、1977年 の ソ連 憲 法 も 部 分 的 な 改 正 が行 わ れ た が 、 特 に ゴル バ チ ョ フ体 制 に お い て は大 き な変 化 を も
た らす 改 正 が 行 わ れ た 。
ゴ ル バ チ ョ フ体 制 に お け る 「 ペ レス トロ イ カ」、 「グ ラー ス ノ ス チ ィ」 と呼 ば れ る一 連 の 改 革 政 策 は確 か に大 統 領 制 の 導 入 、 党 と国 家 の 分 離 、 多 くの 自 由 と
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権 利 を保 障 す る な ど ソ ビエ ト社 会 に 自由化 を もた らす もの で あ っ た 。 しか し、
こ の改 革 は 「 上 か らの 改 革 」 で あ り、 ゴル バ チ ョフ 自身 は保 守 派 に よ る ク ー デ タ ー騒 動 を き っ か け に失 脚 して し ま うの で あ る。
ゴル バ チ ョ フ の政 策 は社 会 主 義 の 制 度 の 下 で の 自 由 の保 障 に と ど ま り、 社 会 主 義 体 制 の構 造 を根 本 的 に変 え る もの で は な か った 。 とは い え、 この改 革 に よ っ
て もた ら され た もの は、 そ の後 の 自 由主 義 へ の体 制 転 換 を 内 包 す る もの で あ り、
それ ら は1977年 の ソ連 憲 法 の枠 内 とは い え体 制 転 換 を準 備 す る内容 で あ っ た こ
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とは 事 実 で あ る。
体 制 転 換が 決 定 的 とな っ た の は、1991年 の ソ連 の解 体 で あ る。 この こ とに よっ
て 再 び軸 とな る ロ シ ア の 政 治 構 造 に焦 点 が 当 た る の で あ る。 この 時 点 で は ロ シ
ア も ソ連 と同 じ く社 会 主 義 の 構 造 を根 本 的 に転 換 して お らず 、 ロ シ ア の政 治 の
中心 者 とな るエ リツ ィ ン も当 時 の ロ シ ア の社 会 主 義 憲 法 下 で 初 の 大 統 領 に選 出
ロシ アの憲 法変動 S
され て い た の で あ る。
しか し、 この 状 況 の 中 で 旧 来 の 社 会 主 義 の権 力 構 造 に依 拠 し続 け る議 会 勢 力 と自 由主 義 化 を推 進 す るエ リツ ィ ン大統 領 との 問 で 対 立 が生 じた 。 そ して 、1993 年 に エ リ ツ ィ ン は武 力 に よ る クー デ タ ー を敢 行 し、 議 会 は も と よ り当 時 の 憲 法
さ え も無 視 した の で あ る。 この プ ロ セ ス は 非 合 法 的 とい う点 で は1917年 の ロ シ ア革 命 と類 似 して い る。
そ して、 同年 、 大 統 領 令 に よ り選 挙 を施 行 し、 新 た な 議 会 を 招 集 した の で あ る。 更 に社 会 主 義 体 制 を根 本 的 に転 換 し、 新 た に 自 由 主̲r.憲 法 を 国 民 投 票 にか け て制 定 した の で あ る。 ゴル バ チ ョ フが 社 会 主 義 の枠 内 で の 自 由 を 求 め る改 革 で あ っ た の に 対 して エ リッ ィ ン は社 会 主 義 か ら 自由 主 義 化 とい う 「 下 か らの 革
S)
命 」 で あ り、 「 真 の革 命 」 を成 した の で あ る。
以 上 の よ う に ロ シ ア に お い て の 自 由主 義 へ の体 制 転 換 、 憲 法 変 動 は合 法 的 で は な く、 武 力 に よ っ て非 合 法 的 に な され た の で あ る。 そ の こ とは ロ シ ア に お い て 政 治 ・社 会 の基 本 原 理 を変 え る体 制 転 換 は容 易 な こ とで は な い こ とを伺 わ せ る。 また 、 この よ うな体 制 転 換 が 起 きた1917年 と1991年 の政 治 ・状 況 に は 多 く の類 似 点 が あ る こ とが 指 摘 さ れ て い る。
た とえ ば、 二 つ の政 治 状 況 に は 「 崩 壊 す る 旧秩 序 、 分 極 化 す る社 会 、 ひ 弱 な 穏 健 改 革 派 指 導 部 、 地 方 の革 命 的 自立 、 これ に反 発 す る保 守 派 クー デ ター の切
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迫 、 新 し い革 命 派 、 と くに指 導 者 の 人 気 」 等 が 共 通 して 見 られ た の で あ る。 い ず れ に して も これ らの体 制 転 換 が 非 合 法 的 に な さ れ た こ と自体 も ロ シ ア の 市 民 社 会 と して の未 成 熟 性 と もい え な くは な い。
た だ 、 この二 つ の 時 期 に お け る体 制 転 換 は 憲 法 論 か ら す れ ば全 く逆 の 方 向性
で あ っ た こ とは周 知 の こ とで あ る。 次 に この体 制 転 換 に と もな う憲 法 変 動 を比
較 憲 法 学 の視 点 か ら検 討 す るた め に先 に あ げた 二 っ の 憲 法 、1936年 の ソ連 憲 法
と1993年 の ロ シ ア憲 法 の特 徴 を浮 き彫 りに し、そ の上 で両 者 の類 型 的 比 較 を 行 っ
て み た い。
(2)1936年 の ソ 連 憲 法
①社 会 主義 憲法 の原型
先 に1936年 の ソ連 憲法 は初 の本格 的な社会主 義憲 法 で あ る と述べ たが、 その 原型 は革命 直後 に既 に見 られ た。 革命 の翌 年 に出 され た 「 勤 労 し搾取 され て い
1Q)
る人 民 の 権 利 の 宣 言 」 が それ で あ る。 この 人 権 宣 言 は1789年 の フ ラ ン ス人 権 宣 言 が 自 由主 義 的 人 権 宣 言 の モ デ ル とす るな らば 、 社 会 主‑的 人 権 宣 言 の モ デ ル
で あ る とされ る。
この 人 権 宣 言 は革 命 直 後 、 しか も歴 史 上 初 め て の 社 会 主 義 革 命 とい う こ と も あ っ て 社 会 主 義 を構 造 的 、 か っ 法 制 度 的 に説 明 す る時 間 的余 裕 は な か っ た 。 し か し、 社 会 主 義 の 基 本 原 理 と思 え る点 に つ い て は 明 らか に して お り、 そ の 意 味 で は社 会 主 義 憲 法 の 原 型 と もい え る の で あ る。 そ して 、1918年 の ロ シ ア憲 法 は この 人 権 宣 言 を そ の 一 部 と して 組 み込 ん で い るの で あ る。
で は、 人 権 宣 言 に 見 られ る社 会 主 義 の基 本 原 理 につ い て簡 単 に見 て み る。 ま ず 、 第 一 に所 有 権 の 問 題 で あ り、 土 地 お よび 生 産 手 段 の 私 的 所 有 の 廃 止 と国 有 化 の 方 向 性 が 確 認 され て い る。 た だ 、 そ の 具 体 的形 態 に つ い て は未 だ 明 らか に され て い な い が 、 この私 的 所 有 の 廃 止 とい う所 有 形 態 の変 更 が 「 人 間 に よ る人 間 の あ らゆ る搾 取 の廃 止 」 す る こ とに な る と期 待 され て い る。
第 二 に 革 命 組 織 で あ る ソ ビ エ トへ の 権 力 集 中 が 明 確 に され て い る。 自 由 主 義 憲 法 で は統 治 機 構 に関 して は権 力 分 立 が 不 可 欠 な 要 素 とな っ て い る。 しか し、
社 会 主 義 で は人 民 の 意 思 を 直 接 反 映 す る機 関 、 ーロ シ ア の場 合 は ソ ビ エ トに権 力 が 集 中 され て い るの で あ る。 た だ 、 この 段 階 で は未 だ 明 確 に具 体 的 な 国家 の統 治 機 構 の 形 態 につ い て も示 さ れ て い な い 。
第三 に政 治 支 配 を特 定 の 階 層 、 す な わ ち、 労 働 者 ・兵 士 ・農 民 に 限 定 して い る(プ ロ レ タ リア ー ト独 裁)。 自 由主 義 憲 法 で は この よ うな 社 会 階 層 に よ る差 別 は な く、 抽 象 的 な存 在 で あ る市 民 一 般 が 主 体 とな る(も っ と も普 通 選 挙 制 に 至
る まで の 財 産 、 性 別 の 差 別 は あ っ た が)。
この 人 権 宣 言 で は 「 搾 取 者 」 に権 力 を与 え る こ とは で きな い と して 資 本 家 の
政 治 参 加 、 政 治 権 力 の 掌 握 を排 除 して い るの で あ る。 この 点 は後 に 労 働 者 の 前
衛 と して の 共 産 党 の 独 裁 につ な が る。 そ して 、 この こ とは単 に政 治 支 配 の 問題
ロシアの憲 法変 動 7
だ け で な く、 具 体 的 に 自 由 と権 利 の保 障 の 問 題 に も関 わ るが 、 この 人 権 宣 言 で は そ こ まで の 言 及 は な い 。
この 宣 言 以 降 も ロ シ ア革 命 は 政 府 内 に お け る分 派 闘 争 、 旧帝 政 勢 力 の 抵 抗 、 そ して 、 外 国 か らの 干 渉 な ど も あ っ て 決 して 政 治 的 に安 定 して お らず 、 未 だ 共 産 党 の 一 党 独 裁 体 制 も確 立 して い な か っ た の で あ る。 しか し、 そ の よ う な 中 で もプ ロ レ タ リ ア ー ト独 裁 の ス ロ.̲̲.ガンの 下 で 社 会 主 義 革 命 は次 第 に徹 底 され て い っ た の で あ る。
た とえ ば、 「 社 会 主 義 革 命 の利 益 を 害 して行 使 され る権 利 を 剥 奪 す る」 との 規
11)
定 の下 で、選 挙 管理機 関 の裁量 で多 くの人 々の選 挙 が剥 奪 された の で あ る。 ま
12)
た 、 反 革 命 的 性 格 を持 っ と見 な さ れ る出 版 、 結 社 の 自由 が制 限 され た 。 権 利 や 自 由 は 、 自 由主 義 に お い て は特 定 の 階 級 と は関 係 な い抽 象 的 法 制 度 で あ る と見 な され た が 、 革 命 の 過 程 で は プ ロ レ タ リア ー トに よ る階 級 支 配 の道 具 で あ る と
され た の で あ る。
この人 権 宣 言 の後 、 ロ シ アか ら ソ連 へ と展 開 して1918年 憲 法 、1924年 憲 法 が 制 定 され るの で あ るが 、1936年 の ソ連 憲 法 に お い て 初 の本 格 的 な社 会 主 義 憲 法 に 至 る。1918年 に は未 だ 「 勤 労 し搾 取 され て い る人 民 の 権 利 の 宣 言 」 で あ り、
被 抑 圧 階 級 の 名 残 りを完 全 に脱 し切 れ て い な か っ た プ ロ レ タ リア ー トの 権 利 宣 言 は、1936年 の 憲 法 で は確 立 した 社 会 主 義 体 制 下 の 「市 民 」 の 「 基 本 的 権 利 ・
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義 務 」 とな っ た の で あ る。
そ こで 、 以 下 で は この1936年 憲 法 に お い て は 先 の 人 権 宣 言 で 示 さ れ た基 本 原 理 が 統 治機 構 と権 利 保 障 に お い て どの よ うに 具 体 的 に法 制 度 化 さ れ た か を 述 べ て み る。 特 に社 会 主 義 の基 本 原 理 で あ る所 有 と権 力 の 問 題 を 中 心 に検 討 す る。
た だ 、 こ こで は 次 項(3)で 明 らか に す る 自由 主 義 憲 法 との 比 較 を 主 とす るの で 記 述 は 網 羅 的 で は な い こ とを 断 っ て お き た い 。
② 所 有 の 形 態
1936年 憲 法 で は 冒頭 の 第1条 で ソ連 は労 働 者 と農 民 の 社 会 主 義 国 家 で あ る こ
とを 明 確iに して い る。 そ して 、 第2条 で は ソ連 の 政 治 的 基 礎 と して 地 主 と資 本
家 の権 力 を打 倒 し、 プ ロ レ タ リア ー トの 独 裁 を 闘 い とっ た こ とが うた わ れ 、 第
3条 は ソ連 の全 権 力 は ソ ビエ トに よ っ て 代 表 され る労 働 者 に属 す る と して い る。
これ は1918年 の宣言 の 内容 を国家 の基 本原 理 と して取 り入 れ た もので あ る。
社 会主 義 の基 本原 理 をなす もの は所 有 と権 力 の問題 で あ る とされ るが、 まず 所 有 の問題 につ いて第4条 で は ソ連 の経済 的基礎 をなす もの は生産 手段 の私 的 所有 の廃 止 で あ る と規 定 す る。続 く第5条 は所 有 の形 態 として認 め られ るの は 具体 的 に国有 と集 団 的(協 同組合 的)所 有 で あ る とされ た。 ただ、 同憲法 で は 私 的所 有 とは区別 され た個 人 的所 有 を認 めて い る こ とに も注 意 を要 す る。
た とえば、 第9条 で は 「 自己の労働 に も とづ き、か っ他人 の労働 の労働 の搾 取 を排 除 す る個 人経 営農 民 お よび手 工業者 の小 規模 の私 的経 営」 は許 され る と
し、 また、 第10条 は生産 手段 で はな く消費物 に対す る個人 的所 有 と相 続権 を認 めて い るか らで あ る。 そ の上で第12条 は 「 働 か ざ る者 は食 うぺ か らず」 とい う 有 名 な格 言 を示 し、 他人 の労働 を搾 取す る存在 とされ た資本 家が否 定 され て い
るので あ る。
ところで 、社 会主 義 的所 有形 態 は、単 に所 有 の問題 に と どま らず経 済構造 全 般 に関係 して くる。 自由主 義経 済 にお いて は私 的所 有 と契約(交i換)の 自由は 不可分 の 関係 に あ る。私 的所 有が認 め られれ ば、 その交換 も私 的 に 自由で あ る。
本 来 、 私的 所有 権 には使 用 、収益 、 処分 の 自由が 内包 され て い るので あ る。 そ こで 逆 に国 有、 集 団 的所 有 が原 則 とされれ ば この点 も制 限 され ざ るを えな い。
社 会主 義 的所 有制 度 の下 で は、経 済活 動 におい て は交i換の 自由 はな く、概 し て 国家 の計 画 ・指令 に も とつ くもので あ り、 これ は 「 指 令 的計画 経済 」 と呼 ば
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れ る。 こ こで は各 国 営企 業 は 国 家 の 指 令 の下 で 行 動 す るの で あ っ て 、 原 則 と し
ゆ
て契 約 の 自由が あ るわ けで はな い。 しか し、 自由主 義 の経済 にお いて は交 換 の 自由、 契約 の 自由 に は競 争原理 が働 き、 そ こに創 意 工 夫 も生 まれ るので あ る。
また、 契 約 の 自由 に は当然 の こ となが ら契 約 を 自由意 思 で締 結 す る(自 己) 責任 が伴 う。 この契約 の 自由 に関 わ る個 人 の 自己責 任 こそが精神 的 自由の経 済 的基 盤 とな る。 この よ うな私 的所 有権 の保 障、 契約 の 自由、個 人 の 自由意思 ・ 自己責任 は近 代 の市民法 の原則 で あ り、 自由主 義憲 法 の基 盤 に あ るもので あ る。
それ は単 に経 済 的領 域 だ けで はな く、 精神 的 自由 に も及 ぶ もの なので あ る。
要 約 すれ ば、社 会 主義 的所 有形 態 は単 に経済 的 自由 を束 縛 す るだ けで な く、
実 は精 神 自由 も拘束 す る性質 を有 して い るので あ る。 もち ろん、社 会主 義 が資
本 主義 経 済 にお け る搾取 を廃 止 し、 市民 の平 等 を実現 す る 目的 を持 つ もので あ
ロシ アの憲法 変動 9
る こ とは 確 か で あ る。 しか し、 市 民 の 平 等 を 実 現 す る代 償 と して 自 由 の 欠 如 と い う大 き な犠 牲 を払 う もの で あ る こ と も ま た 歴 史 的 事 実 で あ っ た 。
③ 統 治 構 造
社 会 主 義 憲 法 の 統 治構 造 に お け る特 徴 は権 力 分 立 で は な く権 力 統 合 で あ る点 に あ る。 権 力 分 立 とは 自 由主 義 憲 法 で は統 治 構 造 は 単 に司 法 、 立 法 、 行 政 の 各 機 関 に分 か れ て い る こ とだ け を意 味 す るの で は な い 。 ア メ リカ憲 法 学 で い わ れ る よ う に形 式 的 に権 力 を分 立 させ るだ け で な く実 質 的 に各 機 関 相 互 の権 力 の抑 制 と均 衡 が 不 可 欠 な の で あ る。 別 な 言 い方 を す れ ば 一 の機 関 に権 力 が 偏 らな い
こ とを意 味 す るの で あ る。
しか し、 社 会 主 義 の ソ連 で は革 命 組 織 で あ る ソ ビエ トが そ の ま ま憲 法 上 の機 関 と して 国 家 権 力 の最 高 機 関 とされ る の で あ る。 ソ ビエ トは人 民 の権 力 行 使 の 機 関 と して 様 々 な レペ ル で 設 立 され る。 国 政 レベ ル で の ソ ビエ トは 人 民 の 代 表 機 関 で あ り、 立 法 機 関 で あ る と同 時 に他 の 機 関 に 対 して は相 互 抑 制 で は な く、
一 方 的 な 指 示 ・命 令 関 係 に あ る こ とが 特 徴 で あ る。
具 体 的 に は 憲 法 第2条 で ソ連 の 政 治 的 基 礎 を な す もの は勤 労 者 代 議 員 ソ ビエ トで あ る こ とが 明 示 され て い る。 そ して 、 第3条 は ソ連 に お け る全 権 力 は この ソ ビエ トに よっ て 代 表 され る こ とが規 定 され て い る の で あ る。 更 に 、 第30条 は ソ連 の 最 高 国 家 権 力 機 関 は最 高 ソ ビエ トで あ る と明 示 して い る。 また 、 第32条 は この 最 高 ソ ビ エ トが 立 法機 関 で あ る とす る。
この 最 高 ソ ビ エ ト とは小 選 挙 区 で 選 出 され る 同盟 ソ ビエ ト と各 共 和 国 等 か ら 選 出 され る民 族 ソ ビエ トか ら構 成 され て い る。 そ して 、 第48条 は最 高 ソ ビエ ト
は最 高 ソ ビ エ ト幹 部 会 を選 出 す る と規 定 して い る。 最 高 ソ ビエ ト自体 よ り も こ の 幹 部 会 に実 権 が あ った こ とは事 実 で あ るが 、 この こ とは後 で 述 べ る と して と
りあ えず 議 会 が 国権 の最 高機 関 で あ っ た こ とが 重 要 で あ る。
もち ろ ん 、 同 憲 法 に お い て も形 式 的 、 制 度 的 に は三 権 は 分 立 して い た 。 先 に も述 べ た よ うに 立 法 権 は最 高 ソ ビエ トに あ り、 第64条 は政 府 ・行 政 機 関 と して 大 臣 会 議 を あ げ て お り、 更 に 司 法 機 関 と して 第102条 は各 裁 判 所 を明 示 して い る
か らで あ る。 問題 は立 法 機 関 が他 の機 関 に 対 して 一 方 的 な命 令 、 指 示 の 関 係 に
あ り、 決 して 三 権 相 互 の 抑 制 ・均 衡 関 係 で は な い こ とで あ る。
まず 、 議 会 か ら行 政 権 に対 して は第56条 で 最 高 ソ ビエ トが 政 府 を組 織 す る と して い る。 他 方 、 第65条 で は政 府 は最 高 ソ ビ エ トに対 して責 任 を負 い 、 報 告 の 義 務 を 負 う と して い る。 この よ うに議 会 に よ っ て政 府 が 組 織 され る一 方 で 、 政 府 は議 会 に対 して 責 任 を 負 うの み で あ っ て 、 そ の逆 に議 会 に対 して は な ん ら抑 制 す る手 段 を持 た な い。 した が っ て 、 政 府 に よ る議 会 解 散 権 は存 在 しな い 。
第49条 は幹 部 会 が 最 高 ソ ビエ トを 招 集 し、 解 散 を命 じ る、 と規 定 して お り議 会 の 自律 性 ・排 他 性 が 強 調 され て い るので あ る。 幹 部 会 の 権 限 は非 常 に大 き く、
第49条 に よれ ば政 府 の 決 定 お よ び命 令 が 法律 に 抵 触 す る場 合 は これ を取 り消 す こ とが で き る と して い る。 ま た 、 ソ連 の 勲 章 の 制 定 、 特 赦 権 の 行 使 、 軍 の 最 高 幹 部 の 任 免 、 軍 の動 員 、 国 際 条 約 の批 准 、 全 権 代 表 の 任 免 、 戒 厳 令 の 布 告 な ど 幹 部 会 の 権 限 は多 岐 に わ た るが 、 これ らは 自 由主 義 憲 法 で は政 府 、 行 政 機 関 の 権 限 で あ る こ とを 考 え れ ば議 会 の権 限 は非 常 に大 きい 。
次 に議 会 か ら司法 権 に対 して は、 第105条 で最 高 裁 判 所 の 裁 判 官 は最 高 ソ ビエ トに よ っ て選 挙 され る と して い る。 最 高 裁 判 所 以 外 の 裁 判 所 に つ い て も各 種 の ソ ビエ ト(立 法 機 関)に よ っ て 選 挙 され る と して い るが 、 逆 に 裁 判 所 に よ る議 会 に対 す る抑 制 の 手 段 は な い 。 要 す る に ほ とん どの 自 由 主 義 憲 法 で 見 られ る よ
うな 司 法 機 関 に よ る違 憲 審 査 制 の制 度 が 欠 如 して い る の で あ る。 た だ 、 第49条 を見 る と幹 部 会 が 法 律 の解 釈 を行 う との 規 定 が あ って 立 法 機 関 に よ る 自 己解 釈 が あ るだ け で あ る。
④権 力オ プテ ィミズム
いずれ に して も同憲法 は実質 的 に は権 力 分 立で はな く、 立法機 関 を軸 とす る 権 力統 合 が 図 られ てい る。更 に は立法機 関の 一部 で あ る幹 部会 が 自由主u法
にお け る行政 機 関 の役割 を部分 的 にで あれ果 た して い るので あ る。結局 、社 会 主義 の憲 法 理論 におい て は 「 権 力 の分 立 」で はな く、 単 に 「 国家機 関 の 間 の権
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能 の区分 」 が あ るの にす ぎな い とされて い るの で あ る。
社 会 主 義 憲法 の この よ うな権 力統合 の制 度 には権 力 に対す るオ プテ ィ ミズ ム
が根 底 にあ る。 自由主義 憲法 において統 治機構 に関 して は人 民 の意思 の表 現 と
自由 の二 つ の契 機 が あ る。人 民 の意 思 の表現 は立 法機 関 に反 映 され るので あ る
が、 同時 に 自由 を保 障 す るた め に三権 相 互 の抑 制 と均 衡 の た めに権 力分 立 が構
ロシ アの憲法 変動 11
成 され て い る。 そ こには権 力担 当者 の善 し悪 しで は な く、権 力 その もの に対 し て悪 とみ なす権 力 ペ シ ミズ ムが 内包 され てい る。
それ に対 して社 会主 義 で は資 本主 義 時代 の 国家 観 が裏 返 し となった権 力 オ プ テ ィ ミズ ムが あ る。社 会主 義理 論 に よれ ば、資 本 主 義 に おい て は国家権 力 は資 本 家 階級 の労働 者 階級 に対 す る支配 の道 具 で あ る と理解 され て い る。 この こ と
か ら労働 者 階級 が 支配 す る社会 主 義 にお いて は、 一転 して もはや 国家権 力 は悪 とはみ な され な い こ とにな る。 そ こで は逆 に人 民 の代 表 で あ る立法機 関 に対 す る全 面 的 な信 頼 が生 ー じるので あ る。
しか も、 この場合 の人 民 は労働 者 階級 とい う抽 象 的、 団体 的 存在 で あ る。 こ の よ うな抽 象 的存在 で あ る人民 が権 力 を行使 す る こ とが 重視 され、 人 民 内部 に 個 々人 の意 思 の相 違 ・対立 が想 定 されて い ないの あ る。 そ こに も 「 人 民 の権 力」
に対 す るオ プテ ィ ミズ ムが あ る。 この よ うな社 会 主義 社会 に お け る個 々人 の存 在 、意 思 に対 す る消極視 は権 利 の保 障 の形 態 に も関連 して くるが それ は後 で述 べ る。
ところで 、近代 社 会 にお いて人民 の意 思 を国家 機 関(特 に立法機 関)へ と媒 介 す る役 割 は政 党 に委 ね られて い る。 自由主 義 憲法 で は政 党 の設 立 か ら活 動 に おいて も原 則的 に 自由で あ る(た だ し、 ドイ ツ憲法 の 「 闘 う民主 主義」 は例 外)。
そ して、 そ こに は政 党 はいか な る国家 目標 を追 求 す るか の価 値 自由が あ り、言 いi換えれ ば価値 相 対 主義 が あ り、具体 的 には多党 制 の保 障が あ る。 自由主 義 憲 法 にお け る価値 相 対 主義 は政 党 の みな らず、権 利保 障 に もい え る こ とで あ る。
しか し、社 会主 義 にお いて は国家 目標 は社会 主 義 に限定 されて お り、価 値 相 対主 義で はな く、 自由 もない。 した が って、社 会 主 義 とい う一 定 の価値 目標 に 反 す る政 党 は存在 を許 され な い こ とにな る。 ロシ ア革命 直後 に は複 数 の政 党 が 存 在 した が、 その後 は社会 主 義体 制 の確 立 とともに共 産 党 の独 裁体 制 にな って い る。共産 党 は労働 者 階級 の前衛 として社 会主 義 の価 値 内容 を解釈 し、指 導 す
る権 限 を0手 に有 して い る とされ るので あ る。
憲法 で は権 利 の章の 中の第126条 で 「 共産 主 義社 会 を建設 す るための闘争 にお
いて勤 労者 の前衛 部 隊で あ り、か つ勤 労者 のす ぺ て の社 会 的 な らび に国家 的組
織 の指導 的中核 をな す ソ同盟共産 党 に団結 す る」 と唯 一 、共産 党 の存 在 を規 定
す る。 いず れ にせ よ統 治機構 にお け る権 力統 合 は、 更 に共 産 党 の独 裁 に よって
更 にその 度合 い を強 め られ て い るので あ る。
端 的 に言 えば、社 会 主義 は労働者 とい うL元 的価 値 の み を前 提 とす る政 治 的絶対 主 義 に立脚 す る もので あ り、 これ に対 して、 西欧 型民 主主 義 は価値 の多
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元 性 を前 提 とす る政 治 上 の 相 対 主 義 に拠 っ て 立 っ もの 」 とされ るの で あ る。 そ れ ゆ え に 社 会 主 義 に お い て は 、 抽 象 的 、 価 値 相 対 主 義 的 民 主 主 義概 念 で は な く
プ ロ レ タ リ ア(労 働 者)民 主 主 義 、 プ ロ レ タ リア ー ト独 裁 とな るの で あ る。
しか し、 プ ロ レ タ リ アー トの独 裁 は、実 際 に は よ り幅 を狭 め て フ ロ レタ リア ー
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トの 前 衛 で あ る共 産 党 が 国 家 を 「 所 有 」 した 状 況 で あ っ た の で あ る。 共 産 党 書 記 長 が 事 実 上 の 国 家 の 最 高 責 任 者 で あ り、 国 家 機 構 の決 定 は む し ろ党 の 決 定 に 従 うだ け で あ る。1936年 の憲 法 で は共 産 党 の 指 導 性iは先 に あ げ た 第126条 の 形 で 間接 的 に 表 現 され て い た が 、 そ の後 、1977年 の憲 法 第6条 で は指 導 性 は 直 接 的 か つ 明 確 に 規 定 さ れ た 。
自 由 主 義 憲 法 の よ う に複 数 の価 値 観 が 存 在 し、 ま た 、 様 々 な 価 値 観 の競 合 を 認 め 、 そ れ を 政 治 制 度 的 に保 障 す る多 党 制 で は な く、 社 会 主 義 憲 法 の 一 党 独 裁 の制 度 の よ うに 一 つ の 価 値 観 に収 敏 させ よ う とす る こ とは、 そ の価 値 観 に 疑 い を持 た な い とい う こ とで あ る。 そ こ に も権 力̲̲̲.般に対 す る懐 疑 と自 由 の確 保 で は な く、 社 会 主 義 的権 力 へ の 信 頼 、 権 力 オ プテ ィ ミズ ム が 見 られ るの で あ る。
更 に 、 立 法 機 関 の 指 導 性 、 共 産 党 の 独 裁 は政 治 の法 に対 す る優 位 の 制 度 を も た らす こ とに な る。 た とえ ば、 ソ連 憲 法 第112条 で は 「 裁 判 官 の 独 立 」 が 規 定 さ れ て い るが 、 そ れ は 「 司 法 の 独 立 」 を意 味 す るの で は な い。 同条 に よれ ば 個 々 の 裁 判 官 は 法 律 の み に服 従 す る とい うが 、 司 法 の 本 質 は共 産 主 義 社 会 の建 設 を
「 指 導 す る共 産 党 と政 府 の政 策 に追 従 して 遂 行 す る使 命 を負 う」 と され て い るの
zs)で あ る。
「 裁 判 官 の独 立 」 とは、 個 々 の 事 例 に お い て 他 の個 人 、機 関 か らの 恣 意 的 な 干 渉 を 受 け な い こ とを意 味 す る。 しか し、 制 度 上 の 「 司 法 の独 立 」 の 欠 如 に よ っ て 、 裁 判 所 は 恣 意 的 で は な い 立 法 機 関 、 共 産 党 の 正 規 の 合 法 的 な指 示 に 対 抗 す る手 段 は 持 た な い こ とに な る。 この 点 に関 して 具 体 的 な例 を あ げ れ ば、 自 由 主 義 憲 法 で は 当然 とされ て い る刑 法 上 の 「 法 律 不 遡 及 」 の 原 則 は 、 ソ連 憲 法 下 で
は政 治 の 法 に 対 す る優 位 に よ っ て ゆ が め られ て い た こ とが あ る。
ソ連 の 最 高 裁 判 所 長 官 は この 原 則 が適 用 され な い ケ ー ス は例 外 的 で あ る と し
ロシ アの憲 法変 動 13
な が ら も次 の よ う に語 っ た と され て い る。 す な わ ち、 特 に 重 大 な 犯 罪 を 行 っ た 特 定 の 者 に対 して 、 最 高 ソ ビ エ ト幹 部 会 が 遡 及 効 を認 め る こ とを 決 定 し た場 合
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は、 こ の不 遡 及 の原 則 は適 用 され な い と して い るの で あ る。 この 事 例 こ そ 「司 法 の 独 立 」 の 欠 如 、 政 治 の法 に対 す る優 位 を示 す もの で あ る。 そ して 、 司 法 機 関 に よ る違 憲 審 査 制 の 欠 如 は、 この政 治 の法 に 対 す る優 位 性 を阻 止 す る こ とを 不 可 能 に して い るの で あ る。
⑤権 利 の保 障
社 会 主義 憲法 にお け る権 利 保 障 の形 態 に も特徴 が あ る。 まず 、社 会 主義 的価 値 の優先 性 で あ る。 先 に も述 べ た 自由主義 憲 法 の価値 相 対主 義 は権 利 の保 障 に 関 して も否 定 され て い る。 すべ て の権 利保 障 の前提 には社会 主 義 的価 値 の実 現 と発 展 が あ るので あ る。 国家体 制 だ けで な く、権 利保 障 の形 態 、 内容 も労 働 者 階級 のた めで あ って、道 具 で あ る とされ て い る。
た とえば、言 論 の 自由、 出版 の 自由、結 社 の 自由、街 頭行 進 の 自由お よび示 威運 動 の 自由に関 して は後 で述 べ る こ とにす るが、 これ らの 自由 の保 障 の 冒頭 に 「 労働 者 の利益 に適合 し、 か つ社会 主義 制度 を堅 固 にす る 目的で 」 とい う社 会主 義 の価値 目標 が権 利保 障 の前提 とされ てい るので あ る。 したが って、 これ
らの権利 は社 会 主義 を根拠 として 内容規 制 を受 け る こ とにな る。
更 に この 点 と関連 して社 会 主義 国家 の市 民 の権 利保 障 で あ って、 自由主 義憲 法 に見 られ る前 国家 的人権 保 障で はな い こ とで あ る。 自由主 義憲 法 で は国家 以 前 の 自然 的存在 としての抽 象 的個人 が権 利保 障 の軸 とな ってい る。 そ の よ うな 人 権理 論 は 自然権 思想 と呼 ばれ る。 また、個 人 の権 利 、 自由 を保 障 す るた め に 広 い意味 で の人為 的 な政府 が構 成 され る とい う理論 は社会 契約 論 と呼 ばれ て き た ので あ って個 人 の権 利保 障 が国家 に優 先 され たので あ る。
それ に対 して社 会主 義憲 法 で は、 国家 の枠 の 中で の市民 の存 在 で あ り、 当然 に社 会 主義 とい う国家 目的が優先 され る。社 会 主義 で は個 人 の存在価 値 は大 幅 に後 退 す る こ とにな る。 自然 権思想 の よ うな抽象 的存 在 としての個 人 で は な く、
社会 主 義 国家 の 中の労働 者 とい う具体 的 な存 在 が軸 とな るので あ る。 しか も、
この場 合 の労働者 は、個 々 の労働 者 で はな く労働 者 階級 とい う集 団で あ る。
そ して、個 人 の権 利 と統 治機構 の関係 におい て は、個 人 の権 利 は立法 に対 し
て優 位 性 を確 保 す る こ とは な い 。 権 利 保 障 は全 人 民 の 代 表 で あ り、 立 法 機 関 で あ る ソ ビエ トに託 さ れ て い る。 この こ とは制 度 的 に は違 憲 審 査 制 の 欠 如 にっ な が る。 また 、 国 家 の 中 の 市 民 とい う位 置 づ け に よっ て ソ連 憲 法 だ け で な く、 社 会 主 義 憲 法 一 般 に い え る こ とで あ るが 、 国 家 秩 序 の た め の権 利 制 限条 項 も多 い。
また 、 自 由主 義 憲 法 に お い て は 自 由権 が 権 利 保 障 の 中 心 とな っ て い る こ とが 特 徴 で あ る(ワ イ マ ー ル 憲 法 以 降 の 現 代 憲 法 に お け る社 会 権 の 登 場 で も変 わ ら な い)。 自 由権 の 保 障 は 、 原 則 的 に 国 家 か ら自 由 の保 障 を意 味 す る(私 人 間 効 力 の問 題 も あ るが)。 と ころが 、先 に も述 べ た よ うに社 会 主 義 憲 法 に は権 力 オ プ テ ィ
ミズ ム が あ る。
それ ゆ え に国 家 か らの 自 由の保 障 に は 力 点 が 置 か れ て い る とは い え な い。1936 年 の ソ連 憲 法 で は権 利 保 障 の規 定 が 欠 けて い た 前 憲 法 で あ る1924年 の 憲 法 と異
な っ て 「 市 民 の 基 本 的 権 利 ・義 務 」 が 規 定 され て い る こ とは権 利 保 障 の観 点 か らす れ ば一 歩 前 進 で あ る。 しか し、 そ こで も ほ とん どが 社 会 権 の保 障 で あ り、
わ ず か に第124条 で 良 心 の 自 由 と宗 教 の 自由 を、 第125条 で言 論 ・出版 ・集 会 の 自 由等 を規 定 す るに と ど ま る。
また 、 ② で 述 べ た よ うに生 産 手 段 に お い て 私 的所 有 が 認 め られ ず 交 換 の 自 由 が な い とす れ ぼ個 人 の 労 働 に つ い て も同様 の こ とが い え る の で あ って 、 自 由 な 雇 用 契 約 は あ りえ な い 。 そ の こ とか ら は職 業 選 択 の 自 由 は 自ず か ら限定 され ざ る を え な い 。 また 、 自由 主 義 憲 法 で保 障 さ れ るス トライ キ権 は認 め られ な い。
た だ、 自 由 が 制 限 され る反 面 、 社 会 的 給 付 にお い て は国 家 が 保 障 して くれ る こ とに な る。
1936年 の社 会 主 義 憲 法 に お い て は、第119条 で休 息 の権 利 を保 障 す る。そ して、
労 働 時 間 の 設 定 、 年 次 有 給 休 暇 、 療 養 所 、 休 息 の 家 、 ク ラ ブ の提 供 な ど 自 由主 義 憲 法 に は見 られ な い 手 厚 い社 会 的 保 護 が定 め られ て い る。 そ の他 に も第120条 で は社 会 保 障 が 事 細 か く規 定 され 、 第121条 で は教 育 の権 利 が 、 第122条 で は男 女 平 等 が 定 め られ て い るの で あ る。
こ の よ う な 詳 細 な 社 会 権 が 保 障 さ れ て い る反 面 、 他 方 で は 憲 法 制 定 前 の1932 年 に は 国 内 旅 券 制 が 定 め られ 、 移 動 の 自 由 が 制 限 され て い る。 特 に この 時 期 に
お い て は 強 制 的 に集 団農 場 化 が 推 進 され 、 憲 法 制 定 後 も ブ レ ジ ネ フ時 代 ま で 農
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民 には都 市へ の旅 行が 禁 じ られ るな どの こ とが あ り、詳 細 の社会 権保 障の裏 面
ロシ アの憲法変 動 15
を な して い た の で あ る。
ま た 、 宗 教 の 自 由 は 礼 拝 の 自 由 に 限定 され 、 宗 教 活 動 の 自 由 、 宗 教 的 結 社 の 自 由 は 含 まれ て い な い 。 更 に 、 自由 主 義 憲 法 に は 見 られ な い 反 宗 教 的 宣 伝 の 自 由 が 明 示 され て い るの で あ る 。 マ ル クス の 「 宗 教 は ア ヘ ン で あ る」 とす る テ ー ゼ が この 規 定 に示 され て い る とい っ て よ い 。 この よ うに反 宗 教 的 宣 伝 が 強 調 さ れ 、 布 教 活 動 が 認 め られ な け れ ば宗 教 は死 滅 を待 つ だ け で あ る。
た だ 、 政 府 は 自然 消 滅 を 待 っ だ けで な く、 時 と して 弾 圧 に及 ん で い る。1950 年 代 末 か ら60年 代 初 頭 に は政 府 は多 くの修 道 院 や 教 会 を 閉 鎖 に追 い 込 み 、 多 く
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の宗 教者 を逮 捕 して い る。宗 教 の 自由は じめ精神 的 自由 は権 利 の根 幹 を なす も ので あ る。政 府 は生 産 手段 や統 治機構 の掌握 のみ な らず、精 神 的 自由 の管理 を
も目論 ん だ とい え よ う。
他 方 、 言 諦 ・出 版 の 自 由 に関 して は、 憲 法 は これ らの 権 利 を行 使 す るた め に 必要 な物 質 的条件 を提供 す る、 との規 定 が付 され て い る。 しか し、 テ レ ビ、 ラ ジオ放送 はすべ て 国営 で あ り、 出版 の物質 的条件 は現実 に は国家 の当該 委 員会 が管 理 してお り、 そ こで は内容 の事 前規 制 が な され 、事 実 上 の検 閲制 度 とな っ
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て い た の で あ る。
した が っ て 、 言 論 ・出版 の 自由 は事 実 上 、 先 に も述 べ た よ うに 内 容 規 制 を受 け大 幅 に制 限 さ れ て い た とい わ ざ る を え な い 。 また 、 宗 教 の 自 由、 言 論 ・出版 の 自由 な どの 精 神 的 自 由 に対 す る制 限 は政 治 的 自 由、 民 主 主 義 の プ ロ セ ス を 大 幅 に制 約 す る こ とに な る。 この こ とは 政 党 制 度 で は共 産 党 の独 裁 とな っ て い た こ と、 団体 に関 して も労 働 者 の利 益 を促 進 す る団 体 の優 遇 が第126条 で 規 定 され る こ とに よ っ て 一 層 拍 車 が か け られ た の で あ る。
詳 細 な社 会 権 の保 障 も 自 由権 の保 障 が な けれ ば実 効 性 を 欠 い た もの に な っ て
し ま うの で あ る。 個 人 が 国 家 と対 抗 す る 自 由が あ っ て こそ 、 社 会 権 に関 して も
そ の 給 付 の 請 求 を な す個 人 の権 利 の 自覚 と実 効 性 を もた らす もの で あ る。 しか
し、(実 質 的 な)自 由権 を 欠 く社 会 権 の保 障 は、 む し ろ、 国 家 との対 抗 で は な く
国 家 の裁 量 と給 付 に依 存 す る個 人 の 存 在 を形 成 しが ち で あ るか らで あ る。
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(3)1993年 の ロ シ ア 憲 法
① 社会 主 義 か ら自由主 義 へ
1936年 の ソ連 憲法 の発展 形 態 として1977年 には新 た な社 会主義 憲法 が制定 さ れ、 ソ連 の崩 壊 と ともにエ リツィ ン大統 領 の主 導 の下で1993年 には 自由主義 憲 法 としての ロシ ア憲法 が制 定 され て い る。 この1993年 の憲法 以前 に もソ連 の一 共和 国 と して の ロシ ア憲 法 は存在 したが この憲 法 は依然 として社 会 主義 憲法 で あった 。 この憲法 もソ連憲 法 と同様 に ソ連 体制 末期 に は大 幅 に変化 して い るが 憲法 の基 本 原 理 か らすれ ば社会 主 義憲 法 か らの根 本 的転 換 を遂 げた もので はな か った の で あ る。
や は り、1993年 の ロ シア憲法 こそが初 の本格 的 な 自由主義 憲法 で あった。原 理 的 に は 自由主義 憲 法で あ る こ とは間違 い ないが 、 ただ、 非合 法 的 な形 で強 引 に憲 法 制定 を主導 したエ リツィ ン政 治 を正 当化 した面 が強 く、 大統 領 の権 限 の
強大 さ と議 会 の権 限 の弱 体 さが 目立 つ。 以下 で は前項 と比 較 しなが ら、 まず、
総論 的 に社 会 主 義憲 法 か ら自由主 義 憲法 へ の憲 法 変動 の諸 相 を明 らか に し、 そ の後 に各論 的 に検 討 す る。
ロシ ア憲法 で は当然 の こ となが ら社 会 主義 の文字 は消 え、第1条 で は ロシア は共 和 制 的統 治形 態 の民主 的 な連 邦制 の法治 国家 で あ る、 と国家 の基本 構 造 を 規 定 す る。 そ して、社 会 主義 憲 法 の特 徴 で あ る所 有形 態 も次 の よ うな変化 を見 せ て い る。 憲法 第1章 は憲法 体制 の諸原則 を定 め るもので あ るが 、 その中 の第 8条 は国 有 の他 に新 た に私 的所 有 を認 めて い るこ とにおいて 自由主義 憲 法へ の 転換 が うか が え る。
そ して、 同条 で は私 的所 有 と併せ て 自由な交換 、経 済 活動 の 自由が保 障 され て い る こ とが注 目され る。先 に社会 主義 憲法 にお いて も所 有 と交換 の 問題 は不 可分 の関係 にあ る と述 べ たが 、 それ ゆ えに 自由主 義 憲法 として改 めて 私的所 有 と交換 の 自由 を明示 す る こ とには意味 が あ るので あ る。 そ して、 これ らの こ と は更 に第2章 の人権 の章 で も確 認 され て い る。
第34条 は経済活 動 の 自由の権 利 を保 障 し、第35条 は私的所 有権 を保 障 す る と
ともに、相 続権 も保 障 され る こ とを明示 して い るので あ る。 もち ろん、 これ ら
の規 定 は社 会主 義 憲法 に はあ りえな い もので あ る。 この よ うな私 的所 有 と交換
ロシ アの憲法 変動 17
の 自由の保 障 は市場 経 済 の 出現 を もた らす もの で あ る。繰 り返 して い えば近代 市民社 会 の原 理 か らす れ ば、 私 的所 有 や交換 の 自由 は個 人 の 自由意 思 と責 任 を
zs)
伴 う もの で あ る。
した が っ て 、 こ の よ うな 経 済 的 な 自 由 は 、 当 然 の こ とな が ら経 済 的 自 由 に と ど ま らず 、 同 時 に個 人 の 自 由 意 思 を保 障 し、 精 神 的 自 由 の 基 盤 とな る もの で あ る。 そ して 、 思 想 の 自 由 、 表 現 の 自由 、 結 社 の 自 由 な どの 精 神 的 自 由 を個 人 に 保 障 す る こ とは社 会 の 多 元 的 価 値 を もた ら し、 また 、 多 党 制 と政 党 間 の 競 争 を 実 現 す る もの で あ る。 す な わ ち 、 所 有 の 問 題 は権 力(統 治 構 造)の 問 題 と も不
可分 の 関 係 に あ る の で あ る。
② 二 元 主 義 の構 造
ロ シ ア憲 法 の 統 治 機 構 に お い て は他 の 自 由主 義 憲 法 と同 様 に権 力 分 立 が 定 め られ て い る。 第10条 で は 国 家 権 力 は、 立 法 権 、 行 政 権 、 司 法 権 と して 分 立 さ れ る こ とが規 定 され て い る。 そ の上 で 各 権 力 は独 立 で あ る こ とが 明 示 さ れ て い る。
そ して 、 これ ら三 権 はか つ て の 立 法 権 の 一 方 的 指 示 ・命 令 関 係 で は な く、 相 互 の抑 制 と均 衡 が 図 られ て い る こ とが 社 会 主 義 憲 法 とは 大 い に 異 な るの で あ る。
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ただ、 行政権 に属 す る大 統領 が強大 な権 力 を有 して い る点で この均衡 はバ ラ ン ス を欠 いて い る。
この三権分 立 にお いて の抑 制 と均 衡 の問題 に触 れ る前 に行政 権 の構 造 の特 質 につ いて述 べ て お く必要 が あ る。行政 機 関 は大 統領 と首 相 か らな り、 制度 と し て は大統領 制 と議 院 内閣制 の要 素 を併 せ 持 っ二 元 主 義構 造 で あ る こ ともロシ ア 憲法 の特 徴 の一 つ で あ る。 ロシ ア憲 法 の この二元 主 義 の構造 につ い て、現 行 憲 法 として は1958年 制定 の フ ランス第五 共和制 憲 法 をモ デ ル として い る こ とは既
に多 く論者 に よって指摘 され てい る ところで あ る。
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フ ラ ンス 第 五 共 和 制 憲 法 で は、 大 統 領 と首 相 が 二 元 的 に行政 権 を担 っ て い る。
同 憲 法 で は首 相 を 中 心 とす る政 府 は国 政 を決 定 し、 遂 行 す る と して お り(第20 条)、 また 、 首 相 は政 府 の 活 動 を 指 揮 す る とさ れ て い る(第21条)。 他 方 、 大 統 領 は 首 相 を任 命 し(第8条)、 閣 議 を主 宰 す る(第9条)。 そ して 、 国 民 議 会 を 解 散 し(第12条)、 文 ・武 官 の 任 命 を行 い(第13条)、 軍 隊 の 長 で あ る(第15条)。
また 、 大 統 領 は単 に行 政 権 を担 うだ け で は な く、 第5条1項 で 大 統 領 は 「 憲
法 の 尊 重 を監 視 す る。 共 和 国 大 統 領 は、 そ の仲 裁 に よ っ て 公 権 力 の 適 正 な運 営 と国 家 の継 続 性 を確 保 す る」 と し、2項 で は 「 共 和 国 大 統 領 は、 国 の独 立 、領 土 の 一 体 性 、 条 約 の 尊 重 の 保 障 者 で あ る」 と して 、 三 権 の 上 に立 っ よ うな 表 現 が 見 られ る こ とが 特 徴 な の で あ る。
ロ シ ア憲 法 の 大 統 領 も フ ラ ンス 第 五 共 和 制 大 統 領 と同 じ よ う に三 権 の上 に立 つ か の よ うな規 定 が あ る。 第80条 で は、 大 統 領 は 国家 元 首 で あ り、 憲 法 な らび に市 民 の 自由 の保 証 人 で あ る と規 定 す る。 そ して 、 大 統 領 は 、 ロ シ ア の主 権 、 独 立 お よ び 国 家 の̲̲̲.体性 に つ い て の措 置 を取 る と明 示 して い るか らで あ る。 更 に首 相 の任 命 や 軍 の 指.̲ew̲な ど多 くの 権 限 を有 して い る点 で も フ ラ ン ス の 現 行 憲 法 に類 似 して い る。
この よ う な大 統 領 制 と議 院 内 閣 制 の 要 素 を有 した 二 元 主 義 の構 造 は、 歴 史 的 に は フ ラ ンス第 五 共 和 制 憲 法 以 前 の1919年 の ドイ ツの ワ イ マ ー ル憲 法 に 始 ま る。
そ こで も大 統 領 は 「 皇 帝 の代 用 」 と呼 ばれ た よ うに 強 力 な権 限 を有 して い た の で あ る。 憲 法 制 定 時 に お い て は不 安 定 な 政 治 状 況 を 大 統 領 の 強 力 な権 限 に よ っ 安 定 させ よ う とす る意 図 が 込 め られ て い た 。
フ ラ ン ス 第 五 共 和 制 憲 法 もそ れ 以 前 の 第 三 、 第 四 共 和 制 の 憲 法 構 造 が 議 会 中 心 主 義 で あ り、 か つ 政 権 は不 安 定 で あ っ た こ との反 省 の 上 に制 定 され た の で あ る。 国 家 分 裂 の 危 機 に あ っ た 当 時 の フ ラ ンス に お い て は大 統 領 を軸 とす る行 政 権 優 位 の 安 定 した 憲 法 体 制 、 第 五 共 和 制 の確 立 を 目指 した の で あ る。 そ して 、 第 五 共 和 制 の大 統 領 も そ の 強 力 な権 限 ゆ え に 「 共 和 政 的 君 主 」 と呼 ば れ る。
「 皇 帝 の 代 用 」 で あ れ 、 「共 和 制 的 君 主 」 で あ れ 、 共 通 して い るの は大 統 領 の 強 力 な権 限 で あ り、 そ の 背 景 に は社 会 的 混 乱 と不 安 が あ る。 そ の こ とは社 会 主 義 崩 壊 後 の ロ シ ア に も い え る こ とで あ る。 と にか く世 界 各 国 の 現 行 憲 法 で も二 元 主 義 体 制 を採 っ て い るの が 、 フ ラ ンス 、 ロ シ ア で あ り韓 国 で あ っ て 、 これ ら
の 国 で は政 治 ・社 会 の不 安 定 性 を克 服 す る た め に 、 この よ うな 二 元 主 義 体 制 を 採 用 した の で あ る。
た だ 、 議 院 内 閣 制 、 大 統 領 制 に も様 々 な形 態 が あ る よ うに 二 元 主 義 の 体 制 で
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も行 政 権 の優位 性 に は強弱 の程 度 の差 が あ る。 この よ うな二元 主義体 制 の憲法
の中で も、 フラ ンス の第五 共和 制 憲法 、韓 国 の第六 共 和 国憲 法 に比較 して もロ
シ ア憲 法 の場 合 は大統領 の権 限 は よ り強大 で あ る。 この 点 につ いて は憲法 制度
ロシ アの憲法 変動 19
の 問題 もあ るが 、 そ れ と と も に社 会 主 義 憲 法 下 で の 強 権 主 義 的 な社 会 構 造 、 あ るい は エ リツ ィ ン の個 性 、 また 近 代 的 市 民 社 会 の 未 発 達 の反 映 で も あ る とい う こ と もで き る。
③ 抑 制 と均 衡 の 問 題
この よ う に大 統 領 優 位 の 体 制 に あ っ て も権 力 分 立 と三 権 相 互 の 抑 制 と均 衡 の 制 度 を確 立 して お り、 この 点 が 社 会 主 義 憲 法 と絶 対 的 に 異 な る。 社 会 主 義 憲 法 に お け る権 力 統 合 は 、 議 会 の̲̲̲̲̲方 的 な 命 令 ・指 示 関 係 に あ っ た が 、 ロ シ ア憲 法 で は議 会 の権 限 は立 法 権 に 限 定 され 、 か つ て の よ うな他 の 機 関 に対 す る命 令 ・ 指 示 関 係 は な い。
そ の 点 で は 自 由主 義 憲 法 と して の 権 力 分 立 を実 現 して い る の で あ る。 こ こで は、 まず 、 議 会 の 権 限 に つ い て 述 べ 、 そ の 後 で 社 会 主 義 憲 法 に は な か っ た他 の 機 関 に よ る議 会 に対 す る抑 制 手 段 に触 れ る。 議 会 の政 府 に対 す る抑 制 の 手 段 と
して は、 第83条 、 第103条 で は大 統 領 が 首 相 の 任 命 に際 して 下 院 の 同 意 を 必 要 とす る とされ て い る。 また 、 第117条 は ロ シ ア政 府 に対 す る不 信 任 の 制 度 が 規 定 され て い る。
た だ 、 これ らの 権 限 に は制 約 が 多 く大 統 領 を 中心 とす る政 府 に有 利 な規 定 と な って い る こ とは事 実 で あ る。 大 統 領 に対 して は議 会 が そ の 地 位 を 奪 うた め に は第93条 の弾 劾 手 続 き を経 な けれ ぼ な らな い 。 しか し、 この 手 続 き は 非 常 に大 統 領 に有 利 な 制 度 に な っ て お り、 実 際 の 運 用 に お い て も大 統 領 は 自 ら に 向 け ら
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れ た批 判 を首 相 の解任 で そ らす こ とが あった ので あ る。
議会 の裁判所 に対 す る抑 制 の手 段 として は、 上 院 が連 邦憲 法裁 判所 、 連邦 最 高 裁判所 、連 邦最 高仲裁裁判所 の裁判 官 を任命 す る との規定 が あ る(第102条)。
通 常 の裁判 所 とは別 に設立 され る連 邦 憲法 裁判所 は社 会 主義 憲法 に はな い制 度 で あ り、 憲法 の規範 性 を維 持 す るた めの制 度で あ って この点 につ いて は後 で述 べ る こ とにす る。
そ して、 これ まで の社会 主義 憲法 に はなか った他 の機 関 に よ る議会 に対 す る
抑制 の手段 が 憲法 上、規 定 され たので あ る。 まず、 行政 権 の議 会 に対 す る抑 制
の手段 と して は、大統領 が議会(下 院)を 解 散 しう るこ と(第84条 〉 が規定 さ
れ て い る。 その他 に も大 統領 は大 統領 令 を公 布 す る こ とが で き る とされ(第90
条)、 大統 領令 は法律 の執 行 を超 えて法律 の代 わ りを果た して い る との指摘 もあ
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る。 この よ うな政府 の議 会 に対 す る抑制 は社会 主義 憲法 で は あ りえな い制 度 で あ る。
次 に司法機 関 か ら議 会 に対 す る抑 制 手段 も規 定 され た。社 会 主義 憲法 で も裁 判官 の独 立 の規 定 はあ ったが 、 司法 の独 立 の規 定 は な く議 会か ら干 渉が あった こ とは既 に述 べ た。 ロシア憲 法で は裁 判官 の独立(第120条)だ けで な く、先 に も述 べ た よ うに第10条 で初 めて 司法 の独 立 も定 め られ た。 それ 以上 に大 きな変 化 は社 会主 義 憲法 で は想 定 され なか った制 度 として違憲 審査 制 の導 入が あ る。
憲 法 で は通常 の裁判所 とは別 に第125条 で連 邦憲法裁判所 の制度 と権 限 を定 め て い る。 そ こで は抽 象 的違 憲 審査 制、 具体 的違 憲 審査制 、機 関相互 の権 限争議 の審 査 、 市 民 の権 利 お よび 自由が侵 害 され た場 合 の異議 申 し立 ての制度 等 、 ド イ ツの現行 憲法 で あ るボ ン基本 法 の違 憲審 査制 に非常 に類 似 しー た制 度 が導入 さ れ て い る。
具体 的違 憲審 査制 で あれ、 抽象 的違 憲審 査 制 で あれ、裁 判所 の議 会 に対 す る 抑制 の手段 で あ る こ とは間違 い ない。1936年 の ソ連 憲法 で は違憲 審査制 を規 定
して い なか った が、 ただ、前 に も述 べ た よ うに第49条 で はソ ビエ ト幹 部会 の権 限 として現 行法 律 を解釈 す る とい う規 定 が あ った。 この規 定 は議 会 の 自律性 を 明示 す る もの で あって、他 の機 関か らの関与 を認 めな い もので あ る。
④ 多 党 制 と政 党 の 自由
政 党 は 国 民 の 意 思 と国 家 機 関 とを媒 介 す る もの で あ る。 社 会 主 義 憲 法 に お け る統 治 機 構 の 権 力 統 合 は、 共 産 党 の独 裁 に よ っ て 一 層 、 統 合 の度 合 い を増 して い た 。 そ して 、 社 会 に お い て も社 会 主 義 的 価 値 の 優 先 、 保 障 に よ っ て 政 治 的 意 思 形 成 も限 定 さ れ た もの で あ った 。 要 約 して い え ぼ 、 思 想 的 、 精 神 的 自 由が 制 限 され て い た の で あ る。 政 治 領 域 に お け る共 産 党 の 独 裁 と権 利 保 障 に お け る思 想 ・表 現 の 不 自 由 さ とは不 可 分 の 関 係 に あ っ た の で あ る。
自 由 主 義 憲 法 で は 、 これ らの制 約 が 除 去 され て い る。 ロ シ ア憲 法 第13条 は多
党 制 を 規 定 す る と とも に、 そ の 基 盤 と して 思 想 の 多 元 性 を保 障 して い る の で あ
る。 こ の 多 党 制 と思 想 的 多元 性 を 同時 に保 障 す る こ と、 また 、 この よ うな 多 党
制 、 思 想 の 多元 性 の保 障 の 表 現 自体 、 他 の 自由 主 義 憲 法 に見 られ な い(た だ し、
ロ シアの憲法 変動 21
政 党 設 立 の 自由、 活動 の 自 由 は あ る)。 この こ と こ そ、 前 体 制 で は保 障 され て い な か っ た こ との裏 返 しの 表 現 で あ る。
具 体 的 に第13条1項 は思 想 の多 元 性 を保 障 す る。 次 い で2項 は い か な る思 想 も国 定 の 思 想 と され な い し、 強 制 力 も持 た な い こ とを規 定 す る。 この こ とは社 会 主 義 で 否 定 され た価 値 相 対 主 義 の表 現 で あ る。 そ して 、 多 党 制 を認 め る と と
も に、 社 会 団 体 は法 の 下 で 平 等 で あ る とさ れ る。1936年 憲 法 で は 共 産 党 の 独 裁 と実 質 的 に は そ の下 部 団体 と され る社 会 団 体 が 優 先 さ れ た が 、 こ こで は そ の 優 先 性 は な く平 等 とされ る。
自 由主 義 憲 法 下 の ロ シ ア の 政 党 制 は実 際 に は多 党 制 ど こ ろか 乱 立 に近 い もの
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が あ る。 共 産 党 は̲̲̲.時禁 止 され た こ とが あ るが 、 現 在 で は 有 力 な政 党 と して 存 続 して い る。 か つ て ドイ ツ も戦 後 の混 乱 期 に は 多 くの 政 党 が 乱 立 した こ とが あ る。 戦 前 の ナ チ ス期 の価 値 一 元 化 の社 会 の 崩 壊 は、 価 値 の 多 元 化 とい う よ りは 分 散 化 を もた ら した(現 在 で は それ に比 べ て政 党 は整 理 さ れ て い る)の で あ る が ロ シ ア の現 状 は それ に類 似 して い る とも い え る。
この よ うに乱 立 に近 い 多 党化 の 理 由 と して は 、 一 つ に は選 挙 制 度 が 考 え られ る。 ロ シ アの 下 院 の選 挙 制 度 は 小 選 挙 区 ・比 例 代 表 並 立 制 で あ っ て 我 が 国 の 選 挙 制 度 に類 似 して い る。 この 比 例 代 表 制 は多 党 化 を も た らす 傾 向 に あ る こ とは 周 知 の こ とで あ る。 しか し、 多 党 化 は必 ず しも選 挙 制 度 だ け を 理 由 とす る もの で は な い の で あ る。
多 党 化 を もた らす他 の 理 由 と して 先 に あ げ た 社 会 の価 値 の 分 散 化 が あ げ られ る。 乱 立 に近 い 多 党 制 は ロ シ ア社 会 の価 値 の分 散 化 、 混 乱 状 況 を物 語 っ て い る の で あ る。 しか も、 多 党 化 は固 定 した もの で な く、 政 党 の 消 滅 と新 た な政 党 の 設 立 に よ っ て 一 層 、 混 沌 と した も の に な って い る。 この よ うな混 沌 か つ 流 動 的 状 況 を物 語 る もの と して ロ シ ア に お け る 「 運 動 」 の存 在 が あ げ られ る。
「 運 動 」 は政 党 とは異 な っ て 明 確 な 形 態 を とるわ けで は な いが 、 特 定 の課 題 の た め に作 られ る組 織 で あ っ て 、 しぼ しば選 挙 の 際 に作 られ 後 に政 党 に な る場 合
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