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アブラナ科野菜における高純度

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 堀 崎 敦 史

学 位 論 文 題 名

アブラナ科野菜における高純度Fi 採種を可能にする 自家不和合性限度に関する育種学的研究

学位論文内容の要旨

厳密な自家不和合 性程度の評価法の開発

  ア ブ ラ ナ 科 野 菜 の 多 く は , 雑 種 強 勢 や 生 育 斉一 性の 利点 か ら, 一代 雑種(Fi)品 種と な って お り , そ の 種 子 は 主 に 自家 不和 合 性を 利用 し採 種 され てい る. アブ ラ ナ科 植物 の自 家不 和 合性 は, 複 対立S (self‑incompatibility)遺伝子 によって制御されているが ,自家不和合性が完全では な く , そ の 程 度 が 存 在 する 事か ら ,Fi純度 (採 種 され た種 子がFiに な って いる 割合 )が 低 下し う る . 一 方 近 年 の 農 業 の 作 業 体 系 に お け る 機 械 化 や 労 働 集 約 化 に と も な い, 作物 に対 す るさ らな る 生育 斉一 性の 要求 が 高ま って おり , 高純 度種F1子 が厳 し く求め られるようになってきた.

そ こ で 安 定 し た 高 純 度Fi採 種 を 可 能 に す る た め に , 安 定 し て 高 い 自 家 不 和 合 性 程 度 を 有 す る 親 近 交 系 統 育 成 が 不 可 欠 で あ る . こ れ ま で 親 近 交 系 統 の 育 成 の 際 , 自 家不 和合 性程 度 は,

主 に 人 工 交 配 で の 開 花 自家 受粉 に よる 検定 (以 降 ,人 工不 検) が用 い られ てき た. 高い 自 家不 和 合 性 程 度 を 有 す る と 評 価 し た 親 近 交 系 統 を 用 い て も な お ,Fi種 子 純 度 が 安 定 し な い 場 合 が 認 め ら れ , そ の 評 価 法 と し て 厳 密 性 に 欠 け る と 判 断 さ れ た . そ こ で よ り厳 密な 自家 不 和合 性 程 度 の 評 価 法 と し て ,実 際の 採 種現 場に 近い 状 況を 想定 した ,ミ ツ バチ を用 いた 虫媒 受 粉に よ る 検 定 法 ( 以 降 , 虫 媒 不 検 ) を 考 案 し , ア ブラ ナ科 野菜 のBrassica rapaに 属す る36近 交系 統 ,B. oleraceaに 属 する25近 交 系統 ,及 びRaphanus sativusに属 す る18近交 系統 を材 料 に,

そ の 有 用 性 を 検 討 し た .そ の結 果 ,結 実莢 率や 一 花当 たり 種子 粒数 は ほと んど の供 試系 統 にお いて , .虫 媒不 検の 方が 人 工不 検よ りも 高 い値 を示 した .さ ら に人工 不検で結実莢率20%以下,

一 花 当 た り 種 子 粒 数0.5粒 以 下 と , 自 家 不 和 合 性 程度 が高 いと 評価 さ れた 系統 にお いて , 虫媒 不検 で は,B rapaで 結実 莢 率3〜81%, 一花 当たり種子粒数0.1〜3.3粒 ,B.oleraceaで3〜48%,

一花当たり種子粒 数0.1〜1.8,R.sativusで 結実莢率0〜31%,一花当たり種子粒数0.0‑ 1.0粒と,

自 家 不 和 合 性 程 度 が 高 いも のか ら 低い もの まで 広 範囲 に亘 って 再評 価 され た. また ,虫 媒 不検 に お い て も な お 結 実 莢 率10% 以 下 , 一 花 当 た り種 子粒 数0.2粒 以下 の 高い 自家 不和 合性 程 度を 有す る と評 価さ れた 近交 系 統が 存在 し, そ の系 統を 用い た採 種 では,Fi純度が平均99%以上と,

安 定 し た 高Fi純 度 の 採 種が 可能 に なる 事が 示さ れ た. 以上 より 虫媒 不 検は ,人 工不 検に 比 べ明 ら か に 自 家 不 和 合 性 程 度を 厳密 に 評価 でき る事 が 示さ れた ,そ こで , 虫媒 不検 を使 用し , 自家 不和合性程度に関 する解析を行った,

虫媒不検によ る自家不和合性程度の解析

  虫 媒 不 検 に よ り 評 価 さ れ た 自 家 不 和 合 性 程 度とS遺 伝子 との 関係 を調 査 した .調 査し た 多く のS遺 伝 子 に つ い て , 同‑S遺 伝 子 型 を 有 す る 系 統 に 自 家 不 和 合 性 程 度 が 高 い も の か ら 低 い も の ま で 存 在 す る こ と か ら , 自 家 不 和 合 性 程 度 は,S遺 伝子 と独 立に 遺伝 す る事 が示 され た .し かし,B.rapaのS54(r),ず(r),B.oleraceaのSa(o)をホモ接合型 系統は結実莢率40%以上,一花 あ た り 種 子 粒 数111粒 以 上 と 全 体 的 に 低 い 自 家 不 和 合 性 程 度 を 示 し , この よう なS遺伝 子 型を 有する系統は 高純度Fi採種の親系統に使用 できない可能性が示唆され た.一方,B.rapaのSS3(r), B. oleraceaのSv(o),R.sativusのS206(S),S213(S)をホモ接合型系統は結実莢率26%以下,一花当 た り 種 子 粒 数0.5粒 以 下 と 高 い 自 家 不 和 合 性 程 度 を 示 し , こ れ ら のS遺 伝 子型 を導 入す る こと     ―107―

(2)

で,高い自家不和合性程度を示す系統育成の可能性も示唆された,

  さらに,B. rapa,B.oleracea,足sativusについて,Fi雑種,F2集団ならびにF3系統を供試し,

自家不和合性程度に関する遺伝解析を虫媒不検によって行った.高い自家不和合性程度は,B. rapaでは複数 の迎伝子に支配されており,S遺伝子座に連鎖する儷性遺伝子ならびにS逍伝子 座とは独立の劣性遺伝子を同定した,ぢ,oleraceaでは,複数の遺伝子に支配されており,S遺 伝子あるいは強度に連鎖する劣性遺伝子ならびにS遺伝子座と独立な劣性遺伝子を同定した.

R. sativusでは,S遺伝子座と組換え価27.2+7.3%で連鎖する高い自家不和合性程度を支配する 遺伝子HLSI‑Iを同定した,

一 方,人 工不検に より自家不和合性程度を評価・選抜し育成されたFi品種の親近交系統内で は,自家不和合性程度が分離していることが予想された.そこで既存Fi品種の親として用いら れ ている5近交 系統を8^‑16個体ずっ供試し,虫媒不検により再評価したところ,結実莢率ま たは種子収量の変動係数が0.14〜  0.53と,系統によっては自家不和合性程度に大きな分離が認 められた.さらにその変動係数と近交係数との間に5%水準の有意な相関(F0.92)が認められ,

近交係数の小さい系統程,自家不和合性程度の固定度が比較的低かった.次に,自殖またはき ようだい交配によりF7まで世代を更新させたぢ.rapaに属するコマツナ市販Fi品種の親近交系 統Kol‑17(近交 係数:0.908)について虫媒不検で自家不和合性程度を評価し再選抜し,選抜 効果の有無を確認した.4回の選抜・自殖を繰り返した結果,無選抜系統に比べ,虫媒不検に よる結実種子収量が低下し,採種試験によるFi純度が58.3%から90.5%に有意に向上し,自家 不和合性程度について選抜効果が認められた.

自家不和合性程度の変動に影響を与える要因解析

  虫媒不検は自家不和合性程度をより厳密に評価できるが,隔離網室の設置が必要である上,

開花期間中を通してミツバチを訪花させるため,選抜母本を用いて数多くの組合せの交配を行 うことは事実上困難である,そのため選抜母本に対し人工不検においても厳密に評価できる条 件を設定する必要があると考えられることから,自家不和合性程度の変動要因について解析し,

人工不検を行う際の最適条件を探った.ロ. rapaに属する6近交系統を材料に,開花期間を通じ て毎日人工不検を行い,各交配日の結実率を目的変数にし,系統,播種日,個体齢,交配日当 日の最高気温,最低気温,平均気温,最高湿度,最低湿度,平均湿度を説明変数として重回帰 分析を行った結果,その変動要因は系統により異なっており,特に高温や個体の老化が自家不 和合性程度の低下に影響を与えていた.気温は24℃以上より自家不和合性の低下が認められ,

28℃以上では一定の傾向は認められなかった.また交配日の前日の気温の上昇も自家不和合性 程度 に影響 を与えていた.個体齢では,開花期の後半4分の1で最も自家不和合性程度が低下 し,更に平均気温との正の交互作用が認められた.最高気温26℃以上,開花期間の後半4分の 1という条件を満たすことで,人工不検でも厳密な自家不和合性程度の評価が可能になると考 えられた.

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

郎 夫 税

アブラナ科野菜における高純度Fi 採種を可能にする 自家不和合性限度に関する育種学的研究

  本 論 文 は 、 図23、 表30、 プ レ ー ト5、 引 用 文 献63を 含 み7章 か ら な る136頁 の 和文論文である,ほかに参考文献4編が添えられている,

  アブラナ科野菜の多く は,雑種強勢や生育斉一性の利点から,一代雑種(Fi)品種とな っており,その種子は主に自家不和合性を利用し採種されている.アブラナ科植物の自家 不和合性は,複対立S (self‑incompatibility)遺伝子によって制御されているが,自家不和合 性が完全ではなく,その程度が存在する事から,Fi純度(採種された種子がFiになってい る割合)が低下しうる. そこで安定した高純度Fi採種を可能にするために,安定して高 い自家不和合性程度を有 する親近交系統の育成が不可欠である.これまで親近交系統の 育成の際,自家不和合性程度は,主に人工交配での開花自家受粉による検定(以降,人工 不検)が用いられてきた .しかし高い自家不和合性程度を有すると評価した親近交系統 を 用い ても なお ,Fi種子 純度 が安 定し ない場合が認められ,その評価法 として厳密性 に 欠け ると 判断 され た, そこ で, @厳 密な自家不和合性程度の評価法の 開発,◎自家 不和合性程度の遺伝解析 ,◎自家不和合性程度の変動に影響を与える要因解析を行う事 を主な目的とした,

  厳密な自家不和合性程度の評価法として,ミツバチを用いた虫媒受粉による検定法(以 降,虫媒不検)を考案し,アブラナ科野菜のBrassica rapaに属する36近交系統,B.oleracea に属する25近交系統,及 びRaphanus sativusに属する18近交系統を材料に,その有用性 を検討した,その結果,結実莢率や一花当たり種子粒数はほとんどの供試系統において,

虫媒不検の方が人工不検よりも高い値を示した.さらに人工不検で結実莢率20%以下と,

自家不和合性程度が高いと評価された系統において,虫媒不検では,B. rapaで結実莢率3

〜 81%,B,oleraceaで3〜48%およびR.sativusで0〜31%と,自家不和合性程度が高いも のから低いものまで再評価された,また,虫媒不検においてもなお結実莢率10%以下,一     ―109−

一 哲

田 上

上 三

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

花当たり種子粒 数0.2粒以下の,高い自家不 和合性程度を有すると評価された近交系統が 存在し,その系 統を用いた採種では,Fi純度が平均99%以上と,安定した高Fi純度の採種 が可能になる事 が示された,以上より虫媒不検は,人工不検に比べ明らかに自家不和合性 程度を厳密に評価できる事が示された,

  B.rapa,B.oleracea,R.sativusについて,Fi雑種,F2集団ならぴにF3系統を供試し,自 家不和合性程度 に関する遺伝解析を虫媒不検によって行った.高い自家不和合性程度は,

B. rapaでは複 数の遺伝子に支配されており,S遺伝子座に連鎖する優性遺伝子ならぴにS 遺伝子座とは独立の劣性遺伝子を同定した,B.oleraceaでは,複数の遺伝子に支配されて おり,S遺伝子あるいは強度に連鎖する劣性 遺伝子ならびにS遺伝子座と 独立な劣性遺伝 子を同定した.尺.sativusでは,S遺伝子座と組換え価27.2土713%で連鎖する高い自家不和 合性程度を支配 する遺伝子HLSI‑1を同定した,また,虫媒不検により評価された自家不和 合性程度とS遺伝子との関係を調査した,い ずれの種内においても調査した多くのS遺伝 子について,同‑S遺伝子型を有する系統に自家不和合性程度が高いもの から低いものま で存在すること から,自家不和合性程度の殆どは,S遺伝子と独立に遺伝する事が示され た,

  一方,虫媒不 検は自家不和合性程度をより厳密に評価できるが,隔離網室の設置が必要 であるため,選 抜母本を用いて数多くの組合せの交配を行うことは事実上困難である.そ のため選抜母本 に対し人工不検においても厳密に評価できる条件を設定する必要があると 考えられること から,自家不和合性程度の変動要因について解析し,人工不検を行う際の 最適条件を探った.占.rapaに属する6近交系統を材料に,開花期間を通じて毎日人工不検 を行い,各交配 臼の結実率を目的変数にし,播種日,個体齢,交配日当日の気温,湿度を 説明変数として 重回帰分析を行った結果,その変動要因は系統により異なっており,特に 高温や個体の老化が自家不和合性程度の低下に影響を与えていた,気温は26 ‑‑28℃におい て 特に 自家 不和 合性 の低 下が 認 めら れた ,個体齢では,開花期の後半4分の1で 最も自 家不和合性程度 が低下し,更に平均気温との正の交互作用が認められた.最高気温26℃以 上,開花期間の 後半4分の1という条件を満たすことで,人工不検でも厳 密な自家不和合 性程度の評価が可能になると考えられた,

  以上の結果を 応用する事で,安定した高Fi純度採種を可能にする親近交系統の育成が可 能になる,よっ て、審査員一同は、堀崎敦史氏が博士(農学)の学位を 受けるに十分な 資格を有するものと認めた.

‑ 110

参照

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