Title
スエヒロタケ (Schizophyllum commune) の性生長に関わる
ind1 および cfn1 変異の解析( 内容の要旨 )
Author(s)
木下, 英樹
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第271号
Issue Date
2002-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2612
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の.要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 木 下 英 樹 (長野県) 博士(農学) 農博甲第271号 平成14年3月13日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 信州大学 スエヒロタケ(免占刷皿乃皿〟月∂の性生長に 関わる血d7およびd生J変異の解析 主査 信州大学 教 授 柴 井 博四郎 副査 信州大学 助教授 千 菊 夫ノ 副査 岐阜大学 教 授 中 村 征 夫 副査 静岡大学 教 授 岡 部 満 康 副査 信州大学 教 授 唐 澤 侍 英 論 文 の 内 容 の 要 旨
本研究は,担子菌の交配から子実体形成に至る性生長の分子機構に関する研究の一貫
として行われたものである.スエヒロタケ(5血如班u皿C皿undは,四極性交配をする木材腐朽菌であり担子菌のモデル生物として広く用いられている.本研究の内
容は4部構成となっており,以下に示す成果を得ている.第1部と第2部はカフェイ
ンおよびインドールとそれぞれの高濃度耐性変異血ユおよび血dユが子実体形鱒シグ
ナルcAMPのレベルや性生長に及ぼす影響について調査したものであり,第3部と第
4部はdbユおよび血dユ変異の機能発現を抑制するm遺伝子の解析とトリプトフ
ァンの膜輸送について検討したものである. 第1部スエヒロタケの血dユおよびc血ユ変異株子実体形成とdlMPレベルに及
ばすインドールおよびカフェインの効果培地へ添加したインドールおよびカフェインが,スエヒロタケの子実体形成シグ
ナル物質であるCAMPレベル上昇を引き起こし,その後の子実体形成を誘導すること
を明らかにした.また,血dユ変異によってインドールを分解または細胞外への排出ず
る能力が増強したこと,血ユ変異によってカフェインを分解または細胞外への排出ず
スエヒロタケの血dユおよびc血ユ変異は,白pユ/むpユかつクラスⅠⅠⅠβを含む交
配型組合せの遺伝的環境下にある異核共存体の性生長に異常を引き起こす.この
表現型は劣性変異的であったので,血dユおよびc血ユ変異の遺伝子量効果を調査
した.これらの化合物耐性変異の遺伝子量を倍化した異核共存体ぐIlpつでは,核移
動異常と隔壁形成異常が観察され菌糸凝集や子実体形成が起こらなかった.しかしなが
ら,細胞内の化合物耐性変異遺伝子量が1/2に減ると,これらの性生長異常は消失し
た.これらの結果から,血dユおよびdhユ変異の遺伝子量効果によってクラスⅠⅠⅠ月因
子以外の交配型の場合でも性生長抑制が起こることが明らかになった.興味深いこと
に野生型m遺伝子の導入によって,血dユ/血dユ交配株の性生長が正常に回復
したがc血ユ/c血ユ交配株では回復しなかった.第3部
スエヒロタケmおよび.亡叩ユ遺伝子の解析
スエヒロタケの遺伝マーカ「亡印ユ(トリプトファン要求性)は,劣性変異であり野 生型Ⅶ遺伝子によって相補される.′nすの原因は,乃Pユおよび如ユの遺伝子解 析の結見トリプトファン合成遺伝子mのミスセンス変異であった.推定アミノ酸 配列の相同性検索から,スエヒロタケm遺伝子産物は,グルタミンアミノトランスフエラーゼ,インドーノレ3-グリセロールリン酸シンターゼ(IGPS)および5一ホス
ホリボシルアントラニル酸イソメラーゼの三重機能酵素であることが判明した.如ユ 遺伝子上の変異は,IGPS領域中にありアミノ酸置換(L→F)を引き起こすものであっ た.野生型TRPユが,IGPS領域中の点変異を相補して血dl変異やc血l変異たよる性生長抑制を解除することから,TRPlタンパク質が単なる三重機能酵素ではな
く,性生長に関わる別の機能をも有しており,その機能発現のためにIGPS領域が
重要であると結論した.第4部
スエヒロタケにおけるインドール化合物トリプトファンの膜輸送ス土ヒロタケがインドーノHヒ合物に対してどの様に応答するのかを調査する過程で,
トリプトファン要求性昧がトリプトファンの存在下にも関らずセリンが共存すると生長
できないことを見担だした.他のアミノ酸の共存についてさらに調べた結果,セリン含
めて計11種類ものアミノ酸が同様の生長阻害を示した.種々の解析結果から,スエ
ヒロタケのトリプトファン輸送を担う透過酵素はトリプトファンやトリプトファンアナ
ログ5Frに対しては高い親和性を持つが他のアミノ酸に対しては低い親和性を持つと 結論した.担子菌の子実体形成に関わる外的因子の探索および研究が種々なされているが,その
情報が細胞外から細胞内へどの様に伝達されるか,さらに細胞内でのシグナル伝達の担
い手が何であるのかにっての研究例はほとんどない.本研究では,子実体形成現象のブ
ラックボックスを解き明かすべく血dユおよび血ユの2種類の化合物耐性変異遺伝子
を用いて多角的に解析して幾多の重要な新知見を得ている.今後さらに血dユおよび
血ユ遺伝子クローニングを行われ それを突破口として担子菌の性生長シグナリング機構の研究が推進されるだろう.
審 査 結 果 の 要 旨
平成14年1月声0日,信州大学農学部において審査委員全員出席のもとに公開発
表会が開かれ,約30分間の口頭発表と約30分間の質疑応答が行われた. 我々は古くから多種多様なキノコを食用,薬用として利用してきた.しかしながら,キノコの子実体形成には様々な制御因子が関わっているため発茸の調節が難レ
く,栽培されている種類はごく限られている.また,栽培法が確立されたキノコ種でも微妙な環境変化で期待通りの栽培ができないなどの問題が生じている.これま
でに,より安定した栽培法の開発や発茸を誘発する環境因子についての研究,さら
には,交配による遺伝育種の前提となるキノコの交配型因子についての研究もよく なされてきた. キノコの多くは担子菌類に属しており,スエヒロタケ(5d如血相u皿 co皿皿皿dは担子菌のモデル生物として知られている.本研究では,このスエヒロ タケを用いて,担子菌の交配から子実体形成に至る性生長の分子機構に関する検討 を行なっている.性生長を司る物質としてインドールおよびカフ土インの2つの化 合物に注目して,これらの物質がキノコの細胞内シグナル因子cAMPOjレベル上昇
を促し性生長を促進することを明らかにし,これら物質の高濃度耐性変異株の変異 遺伝子血dJおよびc血Jがキノコの性生長に与える影響と細胞内シグナル伝達系に及 ぼす影響を解析している.また,これらの変異効果を抑制するトリプトファン合成遺 伝子TRPJの機能解析,さらにはインドール化合物の1種であるトリプトファンの細 胞膜輸送についてまで研究を展開している. これらの研究は担子菌の子実体形成機序を解明するための基礎研究であり,キノコ 栽培において高収量,高品質,早期収穫を達成するための技術基盤となる.また,二 核化した細胞を用いた研究であるため,動植物や一般微生物では決して括らえること のできない生命現象を観察できている可能性を含む.担子菌の子実体形成に関わる外 的因子の探索および研究が種々なされているが,その情報がどの様に細胞外から細胞 内に伝達されるか,さらに細胞内でのシグナル伝達の担い手が何であるのかについて の研究例はほとんどない.本研究では,子実体形成現象のブラックボックスを解き明 かすべく血dJと血Jの2種類の化合物耐性変異を用いて解析しており,子実体形成 機構解明の糸口を示している.本研究の成果は,学術的に高く評価されるばかりでな く,キノコの栽培への応用も期待される. 以上のことより,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学 位論文として十分評価があるものと認めた. 【基礎となる学術論文】 (1)HidekiKinos昆ta,氾kuoSen,HiroyukiIwama,ParthaPratimSamadder, Shin-ichiKurosawaandHiroshiroShibai. EffectsofIndoleandCafねineonCyclicAMPintheindlandc血1Mutant StrainsofSchj2QPhyHumcommuneduringSexualDevelopment.(2)HidekiKinoshita,YoshinoriMaki,RyohsukeNakai,KikuoSenand
Hiros昆roShibai.
CompetitiveAminoAcidTYansportbetweenL旬ptophanandOther
AminoAcidsinSchj2QPhyHumcommune.