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l 論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

別 紙 1

論 文 審 査 の 要 旨

報告番号

l

甲 第

W 高橋 正自告

主 査 歯 科 薬 理 学 高 見 正 道

論文審査担当者 副査 口腔解剖学 中 村 雅 典 副 査 歯 周 病 学 山 本 松 男

(論文審査の要旨)

学位申請論文「

Identificationof gene expression profile  of neural crest開derivedcells  isolated from submandibular glands of adult mice

」について,上記の主査

l

名,高

jr

査

2

名が個別に審査を実施した.

[目的]神経堤細胞は胎生期の神経管形成時に,表皮外際葉と神経板の境界部に形成さ れる細胞集団で,脱上皮化した後に目玉内を広範囲に遊走し,定着先の環境によって様々 な細胞穏や組織に分化する.遊走後の神経堤に由来する神経堤由来細胞は,近年の報告 で,成体マウスの一部組織に多分化能を保持して潜伏していることから,再生医療や細 胞移植治療の細胞ソースとして臨床応用への可能性が期待されている.遺伝子改変マウ スを用いた胎生期の組織解析から,顎下腺は神経堤細胞由来の組織であると考えられて いるが,成体の顎下腺における神経堤由来細胞の局在と特性については,不明な点が多 い.従って,成体組織に存在する神経堤由来細胞を高純度に分離する方法は未だ確立さ れず,それらの細胞が持つ遺伝子発現パターンの特徴についてのデータの蓄積も極めて 少ない.そこで,本研究では,神経堤由来細胞の効率的な分離法確立に向けて,成体顎 下 腺 組 織 に 存 在 す る 神 経 堤 由 来 細 胞 の 局 在 と 特 徴 的 に 発 現 す る 遺 伝 子 を 明 ら か に す る ことを目的とした.

[ 方 法 ] 神 経 堤 に 由 来 す る 細 胞 を

GFP

で 標 識 で き る , 成 体 遺 伝 子 改 変 マ ウ ス

(PO  Cre/CAG‑CAT‑EGFP

マウス)の顎下腺を摘出し,

GFP

陽性細胞の局在を観察した.

顎下腺組織から採取した細胞を,セルソーターを用いて

GFP

陽性細胞と

GFP

陰性細胞に 分離し,神経堤関連遺伝子の発現を検証した.さらに,それぞれの細胞について

DNA

マ イクロアレイ法を用いて,遺伝子発現プロファイノレを網羅的に解析し,その中から,発 現変化の認められた遺伝子について,

Real time PCR

法を用いて解析を行った.

[結果]

PO

一

Cre/CAG‑CAT‑EGFP

マウス顎下線には,全体にわたって,斑状に

GFP

陽性細 胞が認められた.セノレソーターを用いて分離・回収した

GFP

陽性細胞は,神経堤関連遺 伝 子 の 一 つ で あ る お

xlO

の発現が高値を示した.

GFP

揚性細胞と

GFP

陰性細胞の網羅的 な遺伝子発現解析の結果から,

Gpr4, Ednrb

などの発現上昇,

Pdgfra , Pdgfrβなどの

発現低下が認められ,

Real‑timePCR

法からも,それらの細胞表面タンパク質の遺伝子 発 現 パ タ ー ン の 違 い が 確 認 で き た

[結論]成体マウスにおいても顎下線に神経堤由来細胞が局在することを初めて明らか

にし,その分離・回収に成功した.さらに,成体マウス顎下腺に存在する神経堤由来細

胞は,細胞表面タンパク質に,特徴的な遺伝子発現パターンを有することが示された.

(2)

本論文の審査にあたり副査から多くの質問があり,その一部と回答を以下に示す.

中 村 委 員 の 質 問 と そ れ に 対 す る 回 答

1.  Neural crest markerとして Wntl

や

PDGFRa

などがこれまで報告されてい るが,これらの発現が本研究の

GFP

陽性細胞で減少しているのはなぜか.

木研究では,

cellinteraction,  signal pathway,  geneの knockdown,  over  expressionや,それら遺伝子発現の経時的変化について,詳細な解析を行って

いないが,以下の原因が推察される.①顎下腺形成期と形成後に必要・関係す る遺伝子は異なり,それらの遺伝子発現は,経時的に変化する.②上皮開業転 換前と転換後では,遺伝子発現がダイナミックに変化する.③神経堤由来細胞

の分化や増殖等の程度により,遺伝子発現が変化する.

2.  GFP

陽性細胞の数や局在に経時的変化はみられないのか.

過去に,

2

週齢,

4

適齢,

8

週齢,

13

週齢マウスのそれぞれの組織から,神経 堤由来細胞を分離し,その割合を解析した報告がある.それによると,同じ神 経堤由来細胞に由来する組織でも,後根神経節>骨髄>毛包と構成細胞中の神 経混由来細胞の割合は異なり,加齢と共に,その割合が減少していた.今回の 解析では,顎下腺の神経堤由来細胞の割合は高い傾向にあり,経時的変化を含

め,今後,詳細に検討する.

3.

細胞膜表面タンパク量での違いは明らかにしたか.

本研究では,タンパク定量は行っていない.しかし,大変重要なことであるの で ,

westernblot

法や

ELISA

法等で,今後,タンパク定量についても解析を行 う予定である.また,唾液の成分も加齢とともに変化することから,細胞表面 タンパク量の経時的な変化も併せて解析したいと考える.

山 本 委 員 の 質 問 と そ れ に 対 す る 回 答

1. 

PO の特異性について論述せよ.

PO  (ミエリンタンパク質 0 )は,末梢神経のシュワン細胞においても発現し ている.また, PO は神経堤由来細胞においても,胎生初期の遊走時の神経堤由 来細胞に発現しているので,全ての神経堤由来細胞に発現しているわけではな い.今後,神経堤由来細胞を特異的に認識できる他のマウスラインを使用して,

比較検討を行うことが重要である.

2.成体組織における神経堤由来細胞の意義は何か.

多分化能を維持して,未分化の状態で成体組織に潜伏している神経堤由来細胞 は,再生医療における新たな細胞ソースとして利用可能であり,又,創傷治癒 に寄与している可能性も考えられる.また,頭蓋顎顔面の骨,軟骨や歯をはじ め,神経,心臓,胸腺や甲状腺といった生体の数多くの細胞,組織を構成する ため,生命の根幹を成す細胞種の一つであると考えられる.

3.

神経堤由来細胞の再生医療以外の応用性と有用性は何か.

神経堤由来細胞は様々な細胞や組織に分化するため,それらに起因した疾患(一 部の良性,悪性腫療や症候群)も認められる.神経堤由来細胞の局在や遺伝子 発現様式を詳細に解析することによって,そうした疾患の成因,原因の解明や 新たな治療方法の確立といったことが達成できると考える.神経堤由来細胞は 生命の根幹を成す細胞種のーっと考えられるため,分子生物学や医学・歯学だ けではなく,種の発生や進化論を考えるうえでも重要であると考える.

これらの試問に対する回答は,適切かっ明解であった.また,高見正道委員は主査 の立場から,両副査の質問に対する回答の妥当性を確認した.

以上の審査結果から,本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判定した.

参照

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