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架蔵本「うつほ物語俊蔭巻』の修繕上下の境目あり。)

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(1)

垂覗

架蔵本﹃うつほ物語俊蔭巻﹄︵以下︑当該本︶は︑整版本﹃うつ

︵注l︶ほ物語﹄の﹁俊蔭﹂巻の害写本である︒この書誌については︑拙著﹃う

︵注リ︼︶つほ物語論I物語文学と﹁書くこと﹂﹄にて報告した︒当該本の表

紙は酸性紙であるため︑本文料紙に悪影響が出る可能性が高い︒これ

を回避すべく︑表紙の付け替えを行なったところ︑新たに考察の余地

が出てきた︒当該本の書誌情報の一部を以下に掲げる︒

︻保存状態一

︻蔵書印一

︻作品名一

一外題一︹書写年時︸

﹇残存状態一

|・はじめに

架蔵本﹁うつほ物語俊蔭巻﹄の修繕

上下の境目あり︒︶

良︒ただし︑表紙・後表

ナシニ丁オモテに﹁西邨蔵書

大阪図書館所蔵本の初に

﹁西邨蔵書

後表 うつほ物語︵整版本の忠実な書写︶中央に﹁うつほ物語俊蔭巻﹂と墨書︒大正期から昭和初期か︒一冊︵製版本の﹁としかけ上﹂﹁としかけ下﹂

此巻に田中道麿か校合しおきたる本によりて

紙のみ状態が悪い

朱方印︒

に相当︒

キーワード一和本修繕︑袋綴本︑うつほ物語︑俊蔭巻︑写本 一装訂一

四年前年也鈴木朗

︹遡己右空穂物語三十帖者以清水氏宣昭校本加朱書了

嘉永元年八月汁五日尾張神谷元平百四出

無地飴色酸性薄紙︒このため︑見返しがない︒なお︑右

肩に﹁貴重本﹂と朱書︒右下に︑﹁笹渕氏旧蔵本﹂と鉛

筆で薄く書かれている︒

袋綴︒縦二七・二センチ︑横一八・一センチの大四半本を

紙嵯で綴じる︒ 鈴木翁の害入おかれたる写本ともをかりてみすから害いれをしつ

文政五年壬午閏正月十日清水宣昭

鈴木翁本の奥書にいはく

文政二年己卯八月十八日田中道麿校合

之以本書入畢彼本云

天明元年辛丑十二月五日校合畢

辛丑は

道麿没年より

武藤那賀子

(2)

国際文化学部論集第21巻第3号(2021年1月)

Aについては断言はできないものの︑その可能性は高い︒﹃校本う

つほ物語︵俊蔭塵が︑西村宗一︑笹淵友一の共著であることを考え

合わせると︑西村宗一が︑笹淵友一を通して中村忠行から﹁神谷元平

C B A

︵注3︶さらに︑中村忠行﹁害かでもの記﹂等の記述から︑以下のことがわ

かる︒ ︷本文料紙一四周双辺の匡郭と上魚尾のみが印刷された原稿用紙︒匡

郭内は縦二○・○センチ︑横一五・○センチ︒

︹その他伝来一以下の四点も一緒に伝わっている︒

①文化三年補刻本﹃うつほ物語﹂三十冊本の題菱を忠実に害写し

3⑫

当該本は︑笹淵友一が中村忠行から借りた﹁神谷元平校本﹂三十

︵注4︶冊のうち︑﹃校本うつほ物語︵俊蔭巻髻に使用する﹁俊蔭﹂巻の

みを書写したものである可能性が高い︒

当該本は中村忠行が書写した本ではない︒

当該本は︑西村宗一によって﹃校本うつほ物語︵俊蔭塵を作成

するために作られ︑そこに中村忠行から借りた神谷元平校本の書

入れを写したものである︒

第十五回赤十字国際会議開会式での写真︒︵以下略︶

十月二十三日から十一月五日までの学校の予定一覧︒︵以下略︶

﹃うつほ物語﹄の本文異同の確認のための裏紙として使われて

いた百貨店のチラシ︒︵中略︶さらに︑チラシの裏には﹁昭和

十一年三月十八日笹淵氏︹から︺返却﹂とある︒ た題菱

11

、画,肉一 一晶一L= =,,副画一=,里, =望,−−△一一些一一

校本﹂を借り受け︑それを基に書写をして害入も写したという可能性

もある︒

では︑誰がどういった時期に﹁貴重本﹂と書かれた表紙を付けたの

か︒本稿では︑この点について考えていく︒

ることが今回の目的であるため︑以下の手順で作業を行うことにし

①和紙の表紙/後表紙の作成 一図二架蔵本﹃うつほ物語俊蔭巻﹂原表紙︵酸性紙︶

酸性紙の表紙を外し和紙の表紙を付けることで︑当該本の保存を図 ◎鋤

二・修繕作業の手順

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P │湖翻'AI 'I#│. '' ,2 '4 ;m」1 14'顧罰醗醒│ 4澱…

(3)

架蔵本『う つほ物語俊蔭巻』の修繕

①和紙の表紙/後表紙の作成

まず︑表紙と後表紙の芯にする中性の厚紙を本の寸法より数ミリ大

きいサイズに切る︒本より大きい寸法にしすることで︑本の天地や小

口を保護することができる︒

これらは全て︑先に作成した中性の厚紙に合わせた寸法にする︒なお︑ ②原表紙/原後表紙の取り外し③和紙の表紙/後表紙の取り付け以下︑この手順に沿って修繕の報告をする︒一図三本より大きい寸法の中性の厚紙

次に︑表紙/後表紙にする和紙と︑見返/後見返にする和紙を切る︒

辱写琴垂牽司雪 −一窒 一テ ュ薗

一== 守写澪

一・一‐ニーニ瞳歯ローーー

中性の厚紙を包むように表紙/後表紙の和紙を貼った様子が﹇図

凹である︒この上から無地の和紙をさらに貼ることで︑表紙/後表

紙ができあがる︒ 表紙/後表紙にする和紙は︑厚紙を包むようにして貼るため︑糊代が必要になる︒そのため︑四つの角を切り︑亀甲型にする︒なお︑今回使用した表紙/後表紙に使用した和紙は︑文化三年補刻本﹃うつほ物語﹄三十冊版本と同じ紺色無地のものにし︑外観を損なわないようにした︒一図三︸表紙/後表紙にする中性の厚紙と和紙

(4)

国際文化学部論集縮21巻第3号(2021年1月)

︻図四一中性の厚紙に表紙/後表紙の和紙を貼った図

一図五︸後表紙側で結ばれた紙維︵上︶と紙維を外した後︵下︶

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②原表紙/原後表紙の取り外し

次に︑原表紙/原後表紙を取り外す︒当該本は︑糸ではなく紙嵯を

穴に通して表紙で結び︑さらにそのうえから糊付けするという方法で

綴じられていた︹図五﹈︒

しかし︑紙維を外しても︑当該本から外れたのは表紙/後表紙だけ

であった︻図六一︒表紙/後表紙を外してみて初めてわかったことだ

が︑当該本には︑もう一つ︑表紙/後表紙の下に紙綾があり︑本文料

紙はこの紙嵯で綴じられていた一図七一︒また︑本文料紙の最初と最

後の丁それぞれのノドに︑本文料紙とは別の紙の痕跡があった︹図

八一・

さらに︑本文料紙の最初の丁のノドの天側には︑﹁うつほ物語俊

蔭こ︑その下に二行書で﹁今板本十六の巻ノー/古本一の巻﹂と鉛

筆書きされ︻図九一︑地側には﹁西邑﹂という小さな朱楕円印があっ

た︻図一○一︒これらは︑原表紙が付けられた状態では見えなかった

ものである︒

︻図六︼取り外した酸性の原表紙︒劣化が進んでいる︒

(5)

架蔵本『うつほ物語俊蔭巻」の修繕

一図八一本文最終丁のノドに残る別紙の痕跡 一図七一本文料紙のみが紙緩で綴じられている︒

1︲IL偏叩柵川耐岬脈柵毎 一図九一本文最初の丁のノド天側に残る別紙の痕跡と文字

一図一○一本文最初の丁のノド地側に残る別紙の痕跡と﹁西邨﹂印

なお︑原表紙/後表紙を綴じていた紙緩︻図一二に墨が見えたた

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(6)

国際文化学部論集第21巻第3号 (2021年1月)

③和紙の表紙/後表紙の取り付け

新しく作成した表紙/後表紙に四か所ずつ穴を空ける︒今回の修繕

では︑既に紙維を通すための穴が空いていたため︑本文料紙の方には

穴を空けなかった︒

表紙︑本文料紙︑後表紙を揃えて︑穴に糸を通して綴じていく︒糸 め︑これを開いてみたところ︑︹図一二のような文字が出てきた︒︻図一三紙繧に書かれた文字 ︹図一二外した紙維

︵注5︶の通し方は︑﹃江戸版本解読大字典﹄を参考にした︹

IlIr 一図一一二袋綴本の綴じ方︵﹁江戸版本解読大字典﹂︶

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F

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l

⑬天の側に糸をからめ.再 |

度同じ穴に針をさし入れる。

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I ロ■■■

①天から3分の1 あたり背幅の中央 あたりから哀衰紙 に針を通す。

(天)

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⑦再び同じ 衷側から針を通す。

どトノ

ひとえ基び/壺

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②結び目が硯れる

ように糸を引く。

了、学) 、

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ロ■■■■■■■■■1 1 1

⑭一番はじめに通した穴に褒側から 針を通す。

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l p■■ l

⑮背偶の中岡に針 を抜き、館ぴ目が外から見えないよ うに仕立てる。結び目を作って中に 入れる。

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U■■■

③同じ位囲の反対 (表>側かう針をさし 入れる。

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15ミリ)あたり に哀慣から針をさし入れる。 さす。

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鰯鯛誰舞"i) をら か針今と客︾ めさ

の表背度

脆隆

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④背に糸をからめて引き締める。

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⑯側面から見た仕上がトノ

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I l l

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⑤地から3分の1あたりを辰から 表へ針を通す。

版太の背の綴じ方

図3 袋綴の綴じ順

(7)

架蔵本『うつほ物語俊蔭巻』の修繕

当該本は︑二節の②で確認したように︑原表紙と原後表紙を綴じて

いるのとは別の紙緩で本文料紙が綴じられていた︒また︑本文料紙の

最初と最後の丁それぞれのノドに別紙の痕跡があり︑さらに天側に鉛

筆書き︑地側に﹁西邨﹂印があった︒天側の鉛筆書きは︑文化三年補

刻本﹃うつほ物語﹄三十冊版本の題叢の文字と全く同じである︒また︑ 当該本には︑文化三年補刻本﹃うつほ物語一三十冊版本に付けられている題菱を忠実に模写した題菱が付いていたため︑これを和紙にカラーコピーしたものを︑版本と同様に左肩に貼り付け︑完成させた︒画一四一修繕後の当該本

写・望配 紬坐蝉 エ』 、』

三.考察

1

こに︑版本の忠実な写しであることを示すメモが天側に鉛筆書きで書

かれ︑また所有者を示す﹁西邨﹂印が地側に押された︒そして︑その

後に︑酸性紙の表紙と後表紙を糊で付けられたのであろう︒しかし︑

酸性紙であるために︑後に劣化してしまったためにこれが剥がされ︑

代わりに︑原表紙/原後表紙をつけるために︑本文料紙に新たに穴を

空け︑反故紙で作った紙綾で綴じたのであろう︒本文料紙の紙嵯が下

綴のためのものとも考えられるが︑本文料紙に残る酸性紙の痕跡か

ら︑この可能性はないと判断できる︒

和本の修繕のために本を解体した結果︑予想外に当該本の経緯を辿

ることができた︒しかし︑今回の修繕はあくまで︑原表紙/原後表紙

が酸性紙であることが原因となっており︑積極的に和本を解体するこ

とを奨励するものではないことを最後に付け加えておきたい︒ 地側の﹁西邨﹂印は︑別紙よりも下に押されていることが︻図一○一からわかる︒また︑原表紙は酸性紙であるため︑かなり劣化が進んでいたが︑本文料紙に残る別紙もこれとよく似た質感︐色の紙であった︒たが︑本文料紙に残る別紙もこれとよく似た質感︐色の紙であった︒

圧汪汪

5 4 3

圧7王

2 1 これらのことから︑当該本の本文料紙は︑まず紙嵯で綴じられ︑そ

全三○冊︒延宝五年開板本と文化三年補刻本がある︒

武藤那慨子﹁補迩l近仙・近代の﹃うつほ物語﹄の研究﹂﹃うつほ物語論l

物語文学と﹁書くこと﹂﹄笠間諜院︑二○一七年

中村忠行﹁書かでもの記﹂﹃山辺道﹂二十号︑一九七六年三月

西村宋一・笹淵友一﹁校本うつほ物語︵俊蔭巻こ與文社︑一九四○年

根岸茂夫︵監修︶﹁江戸版本解読大字典﹂柏書房︑二○○○年

参照

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