ヒ素を含む発生土を用いた流動化処理土の水中打設に関する基礎検討(その1)
-周辺水へのヒ素の溶出挙動-
大成建設(株) 技術センター 正会員 ○忠野 祐介 同 正会員 下村 雅則 同 正会員 宇野 浩樹
1.はじめに
近年,土壌汚染対策法の改正を受け,自然由来のヒ素を含有する発生土の適切かつ効率的な処理方法が求められ ている.本検討では,埋戻し工事等に用いられる流動化処理土(以下,処理土)の母材として活用するため,ヒ素 の溶出リスクが高い水中に打設することを想定し,配合試験ならびに水中打設実験を行った.本報では,水中打設 後の処理土から周辺水へのヒ素の溶出挙動について,材齢・配合毎に比較を行った結果について述べる.
2.供試土の物理特性ならびに配合条件
表 1に供試土の物性一覧表を示す.両供試土ともにヒ素の溶出量は土壌汚染対策法における溶出規制量の
1.1
~1.3
倍であり,自然由来ヒ素含有土である.配合条件を表2
に示す.セメント量は一定とし,供試土と水を調整す ることにより流動性を変化させた.セメントは普通ポルトランドセメントを用いた.増粘剤はセルロース系の水中 不分離材を用い,練上がり容量に対して外掛けで配合した.3.試験装置
「軽量混合処理土工法技術マニュアル1)」に記載の水中打設装置を用いて 試験を行った(図 1).本装置は,ピストンを押出すことで水を張った受け容 器内にシリンダー内の処理土を打設する構造となっている.濁りの発生量は 流動性と打設速度によりばらつきがあることが知られており1),本検討では 処理土の配合の違いによる濁りやヒ素の溶出量の違いに着目し,打設速度は安 定して打設することができる
50cm/s(吐出口:内径 13mm)に設定した.
4.試験内容
表 2 に処理土の水中打設時の各測定項目の指標値1),2)を示す.水中打設直後 に受け容器内から採水し,濁り(SS),pH,ヒ素の溶出量を測定した.打設後 の受け容器は水分の蒸散がないように密閉し,14日,28日静置後に再び採水 を行いヒ素の溶出量の経時変化を測定した.28日静置後には
pH
の測定も併 せて行った.採水時には0.45μm
のメンブランフィルターでろ過を行い,プ ラズマ発光分光質量分析(Aglient Technologies
,Aglient7700
)によりヒ素 濃度の定量分析を行った.また,水中打設した処理土の湿潤密度については紙面の都合上割愛するが,
28
日材齢で受け容器を解体し固化した処理土をパラフィン法(JIS A 1225)によって測定した結果,全配合で指標を満足する結果が得られている.
キーワード 自然由来重金属,流動化処理土,水中打設
連絡先 〒245-0051 神奈川県横浜市戸塚区名瀬町344-1 大成建設(株) 技術センター TEL045-814-7236 図 1 水中打設装置1)
砂分 シルト分 粘土分
T1 0.011 0.260 33.5 2.687 37.6 24.1 4.4 51.1 29.9 19.0
T2 0.013 0.243 26.3 2.696 43.4 26.0 3.5 61.6 23.1 15.3
試料名 強熱減量
i.g.loss (%)
粒度(%) 自然含水比
wn(%)
土粒子密度 ρs (g/cm3)
液性限界 wL (%)
塑性限界 wp (%) As溶出量
(mg/L)
As全含有量 (mg/kg)
水準 周辺水 pH <10.5
SS <100 mg/L As溶出量 <0.01 mg/L 処理土 湿潤密度 >1.40 g/cm3
項目
表 2 配合条件
JHSフロー セメント量 増粘剤
160mm 220mm
300mm 80kg/m3 無し 1kg/m3 表 1 供試土の物性値
表 3 水中打設時の目標指標 土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)
‑177‑
Ⅶ‑089
5.試験結果
図 2に打設直後に発生した
SS
と,打設直後に採水 した周辺水のヒ素溶出量および周辺水のpH
の関係 を示す.図より,打設時に周辺水の濁りSS
が増加す るとpH
は増加傾向にあるが,ヒ素の溶出量は頭打ち になることが分かった.本検討での配合では,表 2に示したヒ素の溶出量お よび
pH
の指標値を超過するものはなかった.また,増粘剤を添加することにより,
SS
は減少するが,ヒ 素の溶出量は変化しないことが分かった.図 3,図 4に周辺水へのヒ素の溶出量・pHの経時 変化を示す.図中の棒グラフはヒ素の溶出量,直線は 各配合の打設直後~材齢
28
日にかけての周辺水のpH
の経時変化を示している.ヒ素の溶出量・pHともに材齢が経過すると増加す る傾向にあるが,配合による違いはほとんどなく全体 に同じ傾向であることが分かった.本検討では,セメ ント量を一定し,供試土と水をパラメータとして配合 検討を行った.そのため,配合によって処理土に占め る供試土の割合は変化する.しかし,供試土のヒ素溶 出量は自然由来重金属含有土のため低く,水中打設後 の周辺水へのヒ素溶出量に対する配合による違いが 生じなかったと考えられる.
ヒ素の溶出量は
pH
に依存することが知られてお り例えば3),本検討の受け容器内のような限定された空 間かつ水の入替えがないような箇所に当該処理土を 水中打設する場合には,pHの上昇を防ぐ方策をとる 必要があると考えられる.ただし,一般的な自然由来 ヒ素汚染土の溶出オーダー(基準値の1.1
倍~数倍程 度)であれば,流動化処理土の母材として用いることで,ヒ素の不溶化が期待でき,適正かつ効率的な処分ができる可能性があることが分かった.
6.まとめ
本検討で得られた知見を以下にまとめる.
・本検討の条件では,水中打設後の周辺水へのヒ素の溶出量処理土は配合(流動性)に依存せず,流動性や強度等 の物理特性のみを考慮して設計できる可能性が示唆された.
・打設後の周辺水の
pH
が上昇すると,処理土からのヒ素の溶出量が増加する傾向があるため,閉鎖性水域に水中 打設する際には,継続的なpH
の管理が必要と思われる.参考文献
1) (財)沿岸開発技術研究センター:港湾・空港における軽量混合処理土工法技術マニュアル,1999
2)
土田ら:軽量混合処理土の水中打設時における材料分離抵抗性の評価,港湾技研資料,No.884,19973)
島田允堯:自然由来重金属等による地下水・土壌汚染問題の本質:ヒ素,応用地質技術年報,No.29,20098.0 8.5 9.0 9.5 10.0
0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010
0 50 100 150 200 250
pH
As溶出量(mg/L)
SS (mg/L) T1-As T2-As T1-pH T2-pH Fill : 増粘剤なし Blank: 増粘剤あり pH
As
図 2 水中打設時の
pH
とSS
の関係7 8 9 10 11 12 13 14
0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010 0.012 0.014
pH
As 溶出量(mg/L)
T1
直後 14日 28日 pHの推移
土対法基準 0.01mg/L
高流動 中流動 低流動 高流動 中流動 低流動 増粘剤なし 増粘剤1kg/m3 原土
図 3 配合毎の
As
溶出量,pHの経時変化(T1)7 8 9 10 11 12 13 14
0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010 0.012 0.014
pH
As 溶出量(mg/L)
T2
直後 14日 28日 pHの推移
土対法基準 0.01mg/L
高流動 中流動 低流動 高流動 中流動 低流動 増粘剤なし 増粘剤1kg/m3 原土
図 4 配合毎の
As
溶出量,pH
の経時変化(T2
) 土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)‑178‑
Ⅶ‑089