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濃尾平野西濃地域における帯水層地下水への海成粘土層からのヒ素溶出機構の解明

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Academic year: 2021

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Title

濃尾平野西濃地域における帯水層地下水への海成粘土層か

らのヒ素溶出機構の解明( 内容の要旨(Summary) )

Author(s)

西澤, 貴樹

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(工学) 甲第429号

Issue Date

2013-03-25

Type

博士論文

Version

none

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/47928

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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17 -氏 名 ( 本 籍 ) 学 位 の 種 類 学 位 授 与 番 号 学 位 授 与 日 付 専 攻 学 位 論 文 題 目 学位論文審査委員 西 澤 貴 樹(岐阜県) 博 士(工学) 甲第 429 号 平成 25 年 3 月 25 日 生産開発システム工学専攻 濃尾平野西濃地域における帯水層地下水への海成粘土層からのヒ素溶出機 構の解明

(Mechanisms of arsenic release to aquifer groundwater from marine clay layer in the Seino basins, Nobi Plain )

(主 査)准教授 神 谷 浩 二 (副 査)教 授 佐 藤 健 教 授 篠 田 成 郎 准教授 山 田 俊 郎 論 文 内 容 の 要 旨 本研究では,西濃地域南部一帯の第1 礫層の地下水から,ヒ素が環境基準 0.01 mg/L を超えて検出される 原因を調査するため,地下水質の測定及び地層堆積物からのヒ素溶出量等の試験を実施し,帯水層地下水へ のヒ素溶出の起源の推定と溶出メカニズムの考察を行った. 西濃地域において,各地域を代表すると思われる10 地点の第 1 礫層の地下水中の主要イオン,ヒ素,鉄 等の濃度の測定を行い,ヒ素と各溶存成分との相関係数を求めた.地下水中のヒ素濃度との相関があった溶 存成分は,pH,Na+ 濃度,ケイ酸濃度及び鉄濃度であった. 地下水のpH が 8 程度まで上昇すると地下水中にヒ素が検出され,高 pH 域で鉄鉱物への吸着力が弱まる 5 価ヒ素が地下水へ溶出している可能性が示唆された. 地下水中にヒ素が検出されない西濃北部の主要イオンの組成はCa2+ 濃度の高い Ca-HCO3型に分類され, ヒ素が検出される西濃南部では,Na+ 濃度の高い Na-HCO3型であった. 地下水中のケイ酸によりヒ素の堆積物への吸着が阻害されることにより,地下水へのヒ素溶出が促進され ている可能性が示唆された. 堆積物中のフェリハイドライトが還元溶解し,それに伴ってヒ素も溶出したことが西濃南部の地下水でヒ 素が検出される原因のひとつであることが示唆された. 西濃南部の海津市のボーリング試料を用いて,南陽層上部・下部,濃尾層及び第1 礫層の層相ごとに水抽 出(溶出試験)を実施し,ヒ素溶出量を測定した.その結果,濃尾層からのヒ素溶出量が実際の第1 礫層地 下水のヒ素濃度よりも高く,第1 礫層からのヒ素溶出量は地下水のヒ素濃度よりも低いことが判明した.西 濃北部の養老町の南陽層及び第1 礫層からのヒ素溶出量も濃尾層に比べ低かった.同様に層相ごとにヒ素含 有量を測定したところ,海津市と養老町との間に差はなく,また,逐次抽出では,濃尾層にはイオン交換態, 炭酸塩態及び鉄マンガン酸化物態の比較的溶出し易い形態のヒ素が,第1 礫層と比べて多い結果となった. 西濃南部の第1 礫層における地下水流速は非常に遅いことから,濃尾層堆積物から溶出したヒ素が第 1 礫 層地下水へ拡散的に移動することが,地下水からヒ素が検出される要因であると考えられた. pH の上昇及び還元雰囲気により,養老町南陽層及び第 1 礫層の堆積物では,ヒ素溶出量が海津市と同程 度まで高くなった.養老町でも,堆積物に接する間隙地下水が海津市と同程度のpH と酸化還元電位となっ た際には,ヒ素が溶出する可能性が示唆され,堆積物中の間隙地下水のpH が高く,酸化還元電位が低いこ とが海津市堆積物でヒ素が溶出し易くなっている要因であることが示唆された. 濃尾層堆積物からの溶出量が高かった溶存有機物がヒ素溶出を促進すると考えられたため,濃尾層からの 溶存有機物の主要な成分であると考えられるフミン酸溶液による抽出試験を実施した. ヒ素の吸着体として知られている酸化鉄又は有機物を既往の方法で海津市濃尾層堆積物から除去し,ヒ素 (5 価)の吸着試験を行った.有機物を除去した堆積物には,除去前とほぼ同量のヒ素(5 価)が吸着した が,酸化鉄を除去した堆積物にはヒ素(5 価)は吸着しなくなった.逐次抽出において海津市濃尾層堆積物 で鉄マンガン酸化物態のヒ素の化学形態が多いことからも,濃尾層堆積物中の酸化鉄がヒ素の主要な吸着媒 体と考えられ,酸化鉄に吸着したヒ素が,濃尾層間隙水へ溶出していると推測された フミン酸溶液での抽出により,水抽出では溶出しなかったヒ素が濃尾層及び南陽層から溶出した.さらに,

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18 -同じフミン酸溶液抽出を5 回繰り返しても,ほぼ同じ量のヒ素が溶出し続けた.これらのことから,溶存有 機物には堆積物からのヒ素溶出を促進する効果があり,濃尾層から溶出する溶存有機物により,濃尾層堆積 物に含有されていたヒ素が定常的なヒ素溶出源になり得ることが明らかとなった. 堆積物からの水溶出液を透析膜で分子量分画した結果,海津市濃尾層から溶出したヒ素の約40%は分子量 1000 以下の無機態ヒ素,約 60%は分子量 1000 以上の溶存有機物と複合態を形成したヒ素であることが判 明した.ヒ素は溶存有機物複合態を形成することで堆積物への吸着が抑制されることが知られており,溶存 有機物複合態ヒ素の形成による溶出促進の影響は大きいと考えられた. カルシウムイオンは,溶存有機物複合態ヒ素と架橋構造を形成することで沈澱することが知られており,カ ルシウムイオンを含む溶液での抽出結果から,溶出液中の有機物複合態ヒ素を沈澱させるのみでなく,無機 態ヒ素もカルシウムイオンを介して溶存有機物と複合態を形成し,さらにこの複合態とカルシウムイオンと が沈澱を生じると推測された.このことから,西濃南部の地下水にカルシウムイオンが少ないことも,第 1 礫層地下水にヒ素が高濃度で検出される要因のひとつであると示唆された. 論文審査結果の要旨 西澤貴樹提出の論文「濃尾平野西濃地域における帯水層地下水への海成粘土層からのヒ素溶出機構の解 明」は,環境基準を超過するヒ素が検出される西濃地下水へのヒ素溶出メカニズムを解明することを目的に 実施されたもので,地下水の水質特性に加え帯水層上位の濃尾層と南陽層の堆積環境がヒ素溶出に大きく寄 与していることを,堆積物の化学形態解析に基づき考察した研究である. 論文は6 章から構成されている.ヒ素溶出に関する既往研究をレビユーし,研究の位置づけをした第 1 章 の緒論に続き,第2 章では,西濃地域北部扇状地から木曽三川底平地までの代表地点の地下水を採取し,主 要成分及びヒ素溶出に関連する成分の測定を実施し,ヒ素との相関が認められた pH,鉄濃度の影響を考察 している.第3 章では,地下水へ溶出するヒ素の起源を推定するため,ヒ素が検出される西濃南部低地と検 出されない北部扇端地のボーリング試料を用い,高pH や還元雰囲気下での溶出試験を実施し,堆積物中の 全ヒ素量,ヒ素溶出量,全鉄量,全炭素量,pH 及びヒ素の化学形態分析を行っている.第 4 章では,ヒ素 溶出を促進していると思われる溶存有機物の主成分であるフミン酸を用いた溶出試験を行い,ヒ素溶出メカ ニズムの解明を試みている.溶出試験には,第3 章で用いた西濃南部低地と北部扇端地の堆積物を用い,フ ミン酸溶液による5 回の繰り返し抽出と溶存有機物複合態ヒ素の沈殿に寄与するカルシウムイオン溶液での 抽出により,溶存有機物によるヒ素溶出の加速化とカルシウムによる溶出抑制について考察している.第 5 章では,西濃地域における地下水へのヒ素溶出メカニズムを,第2,3,4 章で得られた知見から,ヒ素溶出 起源となる地層の堆積環境,堆積物からのヒ素溶出及び溶出したヒ素の地下水への物質輸送過程を考察して いる.第6 章は本研究で判明した知見及び今後の課題を整理した結論になっている. 以上のように,本論文は,従来,臨海低地の地下水ヒ素汚染問題に対し世界各地で研究成果が公表されて いる中で,なお未解明部分が多く残されている海成粘土層からのヒ素溶出メカニズムに対し,堆積環境とい った新たな視点を取り入れ,地下水ヒ素汚染に溶存有機物が重要な役割を担っていることを環境地盤工学的 に解き明かした研究であり,学術上,工学上,斯界発展に寄与するところが極めて大きい.よって,本論文 提出者 西澤貴樹は博士(工学)の学位を受けるに十分の資格があるものと判定した. 最終試験結果の要旨 2 月 14 日(木)に学位論文公聴会を実施するとともに,論文提出者の出席も得て,学位審査委員会を開催 した.学位審査委員会は,公聴会での質疑応答などにもとづき,提出論文に関連する科目の学識および研究 指導能力について慎重に審査した結果,最終試験に合格したものと判定した.なお,学位審査委員会は,学 位論文提出の基礎となった提出済み論文は下記の2 編であることを確認した. 発表論文 1 西澤貴樹,加藤雅彦,北沢遥,佐藤健:濃尾平野西濃地域におけるヒ素の存在形態と地下水への溶出, 土木学会論文集C(地圏工学),Vol.68, No.4, pp. 670-679, 2012. 2 西澤貴樹,加藤雅彦,堀晶子,佐藤健:濃尾平野西濃地域における地下水中へのヒ素の溶出メカニズム, 土木学会論文集G(環境),Vol.68, No.7, pp.Ⅲ_507-Ⅲ_515,2012.

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