九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
水素酸化細菌の培養における溶存水素の挙動と培養 工学的諸特性
武下, 俊宏
Graduate School of Agriculture, Kyushu University
https://doi.org/10.11501/3075451
出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
水素酸化細菌の培養における溶存水素の挙動と培養工学的諸特性
武 下 俊 宏 ] 9 9 3
目次
目次・・・・・・. . . .. . . .・・・・・・・・1 序論・・・・・・・・. . . .・・・・・・・4 本論・. . . .. . . . .. .. . .. . . .・・・・9
第一章 Alcaligenes eutrophu s ATCC 17697の培養の準備 1 - 1 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 1・2 培養システム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 0
1 - 3 培養槽周辺機器・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 4 1・4 培地・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 5 1-5 混合気流量の測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 6 1・6 保存庫から培養槽までの継代培養法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 7 1-7 小括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 9
第二章 発酵槽内掃入型溶存水素電極の開発
2 - 1 緒言・・・・. +・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2
2・2 溶存水素電極の構造と動作原理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 5 2-3 溶存水素電極の試作と問題点、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 5 2-4 改良型溶存水素電極の作製・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 4 2-5 溶存水素電極の校正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 0 2-6 ステップ応答特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 2 2-7 妨害物質による溶存水素電極の擾乱 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 4
噌,i
2-8 小括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 5
第三章 水素と酸素の総括物質移動容量係数の測定
3 - 1 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 7
3-2 亜硫酸酸化法による酸素の物質移動容量係数の測定・・・・・・6 7 3-3 Gassing out法によるbiologicalな系の酸素と水素の物質移動
容量係数の測定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 0
3-4 排気ガス分析法によるbiologicalな系の敵素と水素の物質移動 容量係数の測定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 7 3-5 物質移動容量係数の測定結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 1 3・6 物質移動容量係数の相互関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 3 3-7 ガス移動の制御因子と物質移動容量係数との関係・・・・・・・・9 0 3・8 小括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 5
第四章 独立栄養における水素と 酸素の要求量と供給量の関係
4・1 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 7 4-2 対数増殖期の菌俸による基質ガスの要求量と供給量の関係9 9
4-3 磁界圧以上に溶存水素分圧や溶存酸素分圧を維持する ..1 0 3 4-4 比増殖速度を最大値付近に維持する・・・・・・・・・・・・・・・・・・113 4-5 爆発限界以下に気相酸素分圧を維持する・・・・・・・・・・・・・・1 1 5
4-6 水素と酸素の溶存圧が同時に供給律速する気相ガス組成118 4 -7 小括・・・・・・・・・・・・・φ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2 4
。,ん
第五章 水素供給制限下における培養挙動
5 - 1 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126 5・2 水素供給制限下における基質ガスの吸収 ・・・・・・・・・・・・・・129
5-3 水素供給制限と菌体内生産物の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・135 5・4 小括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・...1 4 4 終論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 4 6
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156 使用記号・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・157 引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・160
qtu
序 三会骨問
人間の諸活動に起因すると考えられる, 地球規模での異常現象に 近年関心があつまっている. 環境 の破壊や汚染, 異常気象など, 変 貌しつつある地球環境に警鐘が鳴らされ, 地球環境保護を唱える運 動が近年各国で高まっている. この情勢の中で今, 人と他の生物が
共存できるエコシステム, 地球と人にやさしい製品の開発が叫ばれ ている.
化石燃料の燃焼や森林乱開発は, 地球 の大気を急速に変化させっ つあるとされている. 事実, 産業革命以来, 二酸化炭素濃度は280 ppmから350ppmへ増加した. 二酸化炭素は徐々にではあるが, 温室効 果で地球温暖化を引き起こすと考えられ, その温暖化への寄与率は
55%程度とされている. ソ連のポストーク南極基地で掘削した 「ポス トーク氷柱コアjを調べた結果から, 二酸化炭素濃度と気温とは強 い相関があることが示されている1〉. 以上のような人為的原因が挙 げられる一方で, 自然的原因によっても大気中二酸化炭素量は変化 していることを考慮、しておかねばならない. そもそも地球誕生時の 原始大気中には酸素は存在せず, メタンが存在していた. この還元 性の大気は次第に酸化され二酸化炭素に変化していった2) 二種変化 炭素量の周期パターンには, 温暖化に2万年, 寒冷化が進行してもと
4 ・
にもどるに約10万年必要であるとされる長周期変化, 1940年から60 年代中頃にかけて地球は寒冷化が続き, 1970年代から80年代にかけ て今度は温暖化に転じているとされる中周期変化3〉, そして季節の 変化などによる短周期変化がある. また, 海洋と大気中二酸化炭素 濃度との相関もあるらしい. 海洋には大気中の60倍の二酸化炭素が 炭酸水素イオンとして存在し, 海洋中の二酸化炭素童がわずかに変 化しただけで大気-海洋間の相互作用を通じて大気中二酸化炭素濃度
は大きく振れると考えられている. この海洋中の二酸化炭素濃度に 最も重要な影響を与えているのはf海洋植物プランクトンの光合成 による炭素固定jであるとするものや「温暖化に伴う珊瑚の生成が 原因となって大気中二酸化炭素濃度が増加することが相乗効果を起 こしているjとするものなどである4〉. 一方, 初期の研究では, 二 酸化炭素濃度が上がると植物の成長が早まるというf二酸化炭素施 肥効果jが , 地球規模の 温暖化を遅らせるパップアー的役割を果た すと考えられていた3〉. しかし, 現在では従来の二酸化炭素施肥効 果への期待は過大であることがわかつており, 二酸化炭素発生の抑
制, 二酸化炭素の分離 ・ 固定技術の開発実用化に期待が寄せられて いる.
エネルギー源である化石燃料は, 有限であるため代替エネルギー 源を見いだすことはどうしても必要である. 代替エネルギーの開発
5 -
が急、がれる中で, 太陽エネルギーに立脚したエネルギー開発に関心 が集まっている引 . 軽くて可燃性の気依である水素は, 水を電気分 解することで容易に得られる. 水素 をつくるのに消費される 電力が 太陽光や水力, 風力といった非化石エネルギー源から得られれば,
手にした水素は環境に優しい燃料と見なすことができる. 現在のと ころ太陽エネルギーから 電力を得る際の効率は約12%, 水の電気分解 の効率は約70%, 全体の効率は約8%程度であり, より 効率のよい水素
生産プラントの開発が行われている. この中 に亜硫酸ガス(Sü 2 )を使 った水素生産法がある. 一つは, 硫酸(H2SÜ4)を太陽光で高温熱分解 しSÜ2 をつくり(H2SÜ4→H2ü+1/2ü2+Sü2), さらにこれに ヨウ素(1 2 )を 添加する(1 2はしばし0→2HI+H2Sü4). 生成 したH1を熱分解すると水 素が得られる(2H1→H2+12). 第二は, 電気分解によってSÜ2+2H2 Ü→
H2SÜ4+H2の反応を起こさせる. この反応系は, わずか0.29Vの電圧 を 付加すれば 水素が発生する. 第三は, 臭素 を用いて臭化水素(HBr)を
生成させる(Br2+S02+2H2 0→2HBr+H2Sü4). ここでHBr に0.62Vの電圧
を付加すると水素が発生する(2HBr→Br2+H2). これらの電圧は, H 2 0 を直接電気分解 して水素を発生させるのに必要な約1.7Vの電圧に比
べればかなり小さい. 今後, 原子炉の廃熱や, 太陽光 を利用した水 素の生産は盛んになり, 水素 の価格も低下するものと見込まれる.
プラスチック製品は腐らず, 軽くて丈夫, 加工が容易であるため
- 6 ・
身の周りのあらゆるものに利用され, その使用量は年々増加し続け
ている. しかし, 廃棄されたプラスチックは, それが有する長所が 逆に災いし, 環境汚染を引き起こしている. 埋め立てれば地中に長 期間存在し続けるためかさばり, 焼却すれば有毒ガスを発生したり 高熱を発する. またプラスチックを餌と間違えて食したり, これに 絡まったりした動物が犠牲となっており, 生物へ与える影響も見逃 すことができなくなってきている. プラスチックを回収して再利用
するシステムの重要性が広く認識されてきたが, その作業は容易で はない. そこで, 使用後は速やかに分解し環境を汚染しないプラス チック f生分解性プラスチック材jの開発が近年盛んになってきて いる7〉.
水素酸化細菌Alcaligenes eutrophu sは, 数種類のミネラル成分を 含む無機塩培地に, 水素, 酸素, そして二酸化炭素からなる混合気 を通気して培養することができ? また培養条件を変更することで菌
体内部に生分解性プラスチックの原料となる
D (ー)-3-hydroxybutyrateのポリマー(PHB), IUPAC命名法では
poly(oxy-l-methyl-3-oxotrimethylene),を大量に蓄積させることが できる. つまり, 二酸化炭素から生分解性プラスチックの生産がロ
能なのである. しかしながら, 使用する混合気が水素爆鳴気である こと, 二酸化炭素, 酸素, 水素の!頓に溶解度は小さくなるが, 菌休
7 ・
の生育に必要なこれら基質ガスの要求量はこのJI慣に大きくなるため 物質移動能力の高いブアーメンターの開発が必要なこと, 溶存水素 の測定が技術的に難しいため, その挙動が十分把握されていないこ と, など環境問題を解決する一手段として脚光を浴びている一方で,
培養工学的手法によって解決されなければなら ない課題も多数残さ れている.
本論文では, まずAlcaligenes eutrophus ATCC 17697の培養液中 の 溶存水素の挙動を把握するため, 溶存水素濃度を正確にしかも溶 存酸素電極なみに簡単にオンライン測定可能な溶存水素測定電極の 開発について述べる. 次いで, 水素と酸素の物質移動容量係数, 磁 界溶存圧, 溶存圧とガス吸収速度の関係などを調べた結果を述べる.
そして, 実際の培養系に対して得られた結果を適応して考察し, 水 素と酸 素の需要と供給の関係について論じる.
8 ・
第一章 Alcaligenes eutrophu s ATCC 17697の培養の準備
1 -1 緒言
水素酸化細菌Alcaligenes eutro2n�s ATCC 17697の狐立栄養培養 は, 水素, 酸素および炭酸ガスから成る混合気を通気して行う. 基 質であるこれらの混合気は, 菌体濃度の増加, および菌体増殖期の
推移にともない大量に消費されるため, 混合気の利用効率を高める のはもちろん, 混合気が水素爆鳴気となっているため, 安全性を高 める配慮も必要である. このため基質成分をまだ十分含んでいる培 養槽からの排気ガスを系外に無駄に放出しないこと, 混合気のガス
組成が爆鳴気とならず, かっガス供給制限とならない条件に培養を 維持する培養技術が必要となる. 本菌の独立栄養培養を安全にかっ 効率よく行うためには, 閉鎖循環型のガス発酵システムの使用が必 須である. 本章前半ではAlcaligenes eutrophus ATCC 17697の保存 株から培養槽への培養のスケールアップ, 使用した培養システム,
培地調製, 基質ガスの調製と流量調節の詳細を記した. 後半では本 菌の保存株から培養槽への培養のスケールアップ法, 適応期の短縮 法について述べ, 本章以後の実験を円滑に行えるようにした.
-9・
1 -2 培養システム
図1 - 1に実験に用いた閉鎖循環型ガス発酵システムのレイアウトを 示す. この培養システムは児玉ら1 )によって報告されていたものを もとにし, 当研究室の田中ら2 )によって完成されたものである. 基
質である水素, 酸素および炭酸ガスの混合気はガスチャンパー内で 混合し準備する. ガスチャンパーへの各ガスの充績は以下のように 行う. まずガスチャンパー内に存在しているガスを真空ポンプで脱 気する. ガスチャンパー内のガスが十分脱気された状態になったと ころで, 水素, 酸素および炭酸ガスを各ガスシリンダーからガスチ ャンパーに供給する. 各ガスをチャンパーに充填する際には, デジ タルマノメーターでチャンパー内圧を常に確認し, 設定ガス組成に なるよう調製する. ガスチャンパー内に調製された混合気は, 熱交 換器(300Cの恒温槽に浸した, 全長約5 mのステンレス製の蛇管)を通 して熱交換した後流量計へ導いた. そして流量調節用のパルプ, 通 気ポンプ? 孔径0.2 μ mのテブロン膜除菌フィルターを通して培養槽
へ供給した. 培養槽からの排気ガスは, 発酵液の泡沫を含んでいる ので, これを取り除くためトラップを介して再びガスチャンパーに
回収した. このシステムでは, 培養槽からの排気ガスが再びガスチ ャンバーへ戻され, 再びこれを利用することができるため, ガスの 利用効率が高くなると共に, 培養系が外界と完全に隔絶された閉鎖
ハU噌EEA
い...
トー..
C021 I H2 I I 02
Vacuum
pump Heat
exchanger From water bath Æ司
Gas: chåmooi:
|COEi 1 H2::1
LOL!
Sampling po仕
図1・1 閉鎖循環型ガス培養システムの全容
Fermenter
Controller Water bath
系を 形成できるので, 安全性が高くなると考えられるわ.
<培養系内外の圧力補正>
菌体の増殖に伴い, 基質ガスが菌によって消費され, ガスチャン パー内の圧力が低下するので, ガスの溶解度を下げるために食傷を 飽和させた麟水をガスチャンパ)に補い, 培養系内の圧力を常に 定に保持した.
<培養システムの気密性試験>
本培養系の気密性は次のような方法により確かめた. すなわちま ず系内の空気を真空ポンプで除いた後に純度99.5%の炭酸ガスを常圧
まで充填して空運転した. 充填直後と24時間後の系内のガス組成を ガスクロマトグラフで分析し, ガス組成に変化のないことを確かめ た.
<培養糟の形状>
図1-2に本培養に使用した培養槽(Biott社)の寸法を示した. この 培養槽の全容は 200 mlである. 菌体の増殖によって発生する水や,
pHコントロール用アルカリ溶液や消泡剤の添加, また電極やかくは ん子などによる培養液面の上昇を 考慮し, 培養槽への張り込み重は 100 mlとした. また本菌は溶存酸素濃度に対する感受性が高くdV 接 種直後のような菌体濃度が低いときには, かくはん速度を変えるこ
とでは溶存酸素濃度の制御が十分に行えない . そこで, 通常張り込
-12-
寸.N「?
Gas out
0.めOF
40.0 φ8.0
培養槽のす法
-13- 49.5
図1
-2み童の3-5%の接種量とするところを, 2 -3イ音量の10%(10ml)として,
接種直後の菌体による酸素消費量を高め, かくはん速度の変更によ る溶存酸素濃度の制御を可能にした.
1・3 培養槽周辺機器
pHコントロールにはIngold社製pH電極(OPSA/120)あるいはTOA社製 pH電極(GS-8160)と, Biott社製pHコントローラー(PHC-2201)を用い た. 溶存酸素濃度(00)はTOA社製DO電極(OE-8180G)あるいはBiott社 製00電極(10AN-S)と, B i 0 t 七社製00メーター(AI-I007)を用いた. 00
メーターと溶存水素センサー( 2章に詳説)からの出力はTOA社駿レ コーダー(PRP-5021)で同時に記録した. 恒温槽の温度制御は太陽科 学工業(株)襲 THERMO MINOER (P-80)を用いた. 循環ポンプはIWAKI 社製エアーポンプ(AP-032Z)を, 流量調節は草野科学機器製作所製ス
クリユ)パルプ(SM-2)を, ガス流量は草野科学機器製作所箆流量計 (KG-l, Lot. No . G-902)を使用した. 通気ガスの徐菌には
AOVANTECH TOYO製OISMIC-25JP(CAT NO. 25JP020AN)を用いた. T字管 とY字管はガラス製, 配管には2X4と4x 8 mmのシリコンゴムチュー
ブを用いた.
ー14-
1 -4 培地
菌株の保存にはブイヨン寒天培地(一般細菌用完全培地)を用いた 5). 組成は, 肉エキス7 g, ポリペプトン10 g, NaC1 3 g, 寒天 20 gを水道水で1 1としたもので, p HはNaOHで中和し7 . 0とした. 肉エ キス斜面培地は綿栓をした中試験管にブイヨン寒天培地を7 m1入れた ものである. 肉エキス液体培地にはブイヨン寒天熔地から寒天だけ を取り除いた組成のものを用いた. 肉エキス液体培地は綿栓を施し
た中試験管に5 ml入れた. オートクレーブの条件はどちらの情地も 121・C, 20分で行い, 滅菌後24時間放置して無菌試験した後に使用し た.
坂口プラスコと培養槽に 用いる培地の組成は, 初めは(NH 4)2S04,
5.0 g; KH2P04, 0.5 g; Mg S04・7H20, 0.2 g; CaS04' 0.004 g;
FeS04・7H20, 0.02 gを11の水道水に溶解して使用する培地1 )を周い た. しかし, この培地では菌体増殖が著しく不良であったので, 水 道水に代わって脱イオン水を用い, R.S.Siege1 & D.F.011isの報告
6 )にしたがい以下に示す微量元素を補足したものを用いることにし
た. すなわち, CoC12, 0.119 g; FeC13・6H20, 16 . 2 g; CaC12・2H2 0
, 10.3 g; NiC1・6H20, 0.118 g; CrC12・6H20, 0.133 g; CUS04'
0.1 g; C itric acid, 15.6 g;を 0.1 1の1 N HC 1に溶解後, このo .
1 m 1を培地1 1に加える. そして従来の借地からCaSOd' 0.004 g;
-15-
FeSOð・7H20, 0.02 gの二成分は削除する. 坂口プラスコの場合pHは 1N NaOHで7.0に調整し, 孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過 除菌して使用した. 培養槽のpHコントロールには, 脱イオン水で約 10出濃度に希釈したアンモニア水を用いた. アンモニア水は孔経O.2 μmのメンプレンフィルターでろ過滅菌して使用した. また消泡剤に は, エイノール(Biott社)を取扱書にしたがって脱イオン水で100倍 希釈し, 必要最小量を適宜用いた. 消泡剤の滅菌は121・C, 20分間の
条件でオートクレ)ブ滅菌した.
1・5 混合気流量の設定
ガスチャンパーから培養槽に供給される混合気流量を正確に測定 するため, 熱交換器を通した後の混合気を流量計へ導き流量を設定 した. 混合気の流量は100 ml/min一定となるようにした. 混合気の 空気流量への換算は? 流量計の取り扱い説明書にしたがい次式によ って求めた.
(空気換算流量)= (混合気流量)・(混合気密度/湿潤空気密度)ø . ら 空気換算流量の単位はml/minである. 30・C, 101.3 kPaにおける各 ガスの密度は, 水素0.08109 g/l, 酸素1.287 g/l, 炭酸ガス] .770
g 11, 窒素1.1 28 g/l, 湿潤空気1.147 g/lである. 混合気密度は, ガ ス密度(x )とモル分率(y)の積の和, 工xyによって求めた. なお湿潤
-16・
空気の密度は次式にしたがって計算した7). 以下に引用した式を原 文のまま掲載する.
(湿潤空気の密度)={1.2932パ1+0.00367t)}・{(p-0.375e)/760}
ここで水蒸気の蒸気圧e=31.824[mmHg], 温度t=30[・C] , 気圧p=760
[mmHg]である. 混合気流量は 1 00 ml/min一定とした. 流量計の目盛 りの値を(目盛り), 空気換算流量を(空気換算流量)とそれぞれ表す と, 使用した流量計( 1章3節に記した)の空気換算流量と流量計
盛りの関係は次式によって計算できる.
(目盛り)=4.33(空気換算流量)0.537
なお, 上式によって求めた備を章末に一括して示した(表1 ).
1 -6 保存庫から培養槽までの継代培養法
Alcaligenes eutrophu s ATCC 17697の保存スラントは-80・Cの菌株 保存庫に保存し, 3カ月毎に新しい肉エキス斜面培地に植え継いだ.
肉エキス液体培地と肉エキス斜面培地の組成は1・4節に示したとおり である. 菌株保存庫から取り出した保存スラントは急速解凍し,
5.0 mlの肉エキス液体培地が入った試験管に一白金耳接種し, 24時 間振霊培養した(一次培養) . 肉エキス液体培地で24時間振塗培養し た培養液から, 新しい5.0 mlの肉エキス液体培地へさらに一白金耳 接種し振塗培養した(二次培養) . 二次培養を行ったときの矯養プロ
-17・
ブイールを図1 - 3に示す. 肉エキス;疲佑培地で培養を行った場合, 本 菌の対数増殖期は接種後6-7時間まで継続した. この間, 培地のpHは 8.0以上に増加した. 次 に, 二次培養で7時間培養した培養液の2.0
mlを, 1 - 4節に示した20 mlの無機培地を入れた500 mlの坂口プラス コに接種し独立栄養的増殖を行わせた(三次培養) . 坂口プラスコの
関口部には ,図1-5に示すガス培養周の栓を使用した. 関口部にはシ リコン栓(No.9)にガラス管を通した栓をはめ, このガラス管の他端 には長さ約5 cmのシリコンチューブを付ける. シリコンチュープの
先端にはオートクレーブ滅菌可能な除菌周の孔径0.20 μmのメンブ レンフィルター(Advantech社,タイ プJP020)を付ける. 坂口プラスコ の殺菌は関口部にガス培養用の栓をはめた状態でアルミホイルで覆 い, 121.C, 20分間オートクレーブ殺菌する. 坂口プラスコ内のヘッ
ドスペースに充填する基質ガスの組成は, 水素:酸素:炭酸ガス=8 : 1 : 1である. ガス交換にはシリコンチューブをスクリユーコックで 閉める. 坂口フラスコを用いて無機塩培地で振温培養したときの菌 体増殖プロブイールを図1-5に示す. このように坂口フラスコで本菌 を培養すると菌体の増殖にともない培地のpHが低下した. 図1 -6は,
図1-5に示した菌体重(x )を接種直後の菌体重(x 0 )で割った値の自然 体数値をプロ ットしたものである. 図1 - 6から, 肉エキス培地から無 機培地に接種して培養を行うと, 約5時間の適応矧の後対数増殖を
-18-
エハμ・
8.2 8.0 7.8 7.6 7.4 7.2 7.0
6.8 25 2
3
句通〉〉00・
15 20 10
Time
[h]
5
肉エキス液体培地での培養フロフィール
-19-
図1 -
30.20μm PTFE membrane
Silicone tubing
< Screw cock
Glass tubing
NO.9 silicone plug
Shaking flask
図1・4 坂口フラスコの関口部に用いる気密栓.
-20-
工丘
• 7.0
6.9
6.8
6.7
6.6
6.5
6.4 40 0.4
0.1
0.0 0 0.2
ぞα]〉〉00 0.3
•
20 30 10
Time [h]
坂口フラスコでの培養フロフィール
-21-
図1
-50.5
0.0
-0.5 0 3.0
2.5
2.0
1.5 1.0
(。×\×)C一
30 40 20
Time
[h]
10
図1・5に示した菌体濃度から求められる増殖曲線
-22・
図1
-
6開始し, 培養約15時間で定常期に移行することがわかる. この時の 比増殖速度は0.168 l/hであった. 図1-7には, 坂口フラスコを用い 無機培地で継代培養したときの培養プロ ブイールを示している. こ のように, 無機培地で継代培養を行うと, 適応期なしに接種後から 直ちに対数増殖が開始された. ここで, 図1 - 3と図1-5で最終菌体濃 度が約7倍異なっている理由について考えてみる. 坂口フラスコを 用いる培養では, 培地20mlをいれた坂口プラスコのhead spaceに基 質ガスが約642ml入る. 坂口プラスコのhead spaceに充填する基質ガ スの組成は炭酸ガスを 基準に考えると, 水素:翼賛素:炭翼賛ガス=8:]:1 である. 一方, A. e utrophu s ATCC 17697の対数増殖期における菌体 の化学重論式れから, 菌徐による基質ガスの要求量は炭酸ガスを基 準に考えると水素:酸素:炭酸ガス=5.22:1.52:1であり, 水素:酸素:
炭置をガス=8:1:1の基質ガスが供給された場合, 酸素が最も早く消 されてしまう ことがわかる. そ こで, ここに充填された酸素重から
得られる菌体重を計算してみる. 坂口フラスコのhead space642 ml 中には酸素が64.2 ml入っているからそのモル数は101.325 kPa, 30
. Cで2.58 mmol である. 本菌の対数増殖期における菌体の化学重論ず
から, 6.21 mmolの酸素が消費されると97 ,1 mgの菌体と0.3 37 mlの 水が生産されるので, 酸素2.58 mmolが消費されて40.3 mg(=2.58/
6.21泳97 . 1 )の菌体と0.140 mlの水ができることになる. この時の菌
-23-
μ=0.168 1/h
4
3
2
0.8
0.2
0.1 { 。×包c一
可\切}CO一日何」HCωυcoo=ωO
20 30 Time [h]
10 0.0
0
無機塩培地で継代培養したときの培養プロフィール
- 24・
図1 - 7
体濃度は2.00 mg/ml{=40.3/(20+0.140)}が得られる計算になる. し かし, 実際に培養して得られた値は0.4 rng/rnl程度である. この様に
坂口フラスコでの培養では計算上で得られる菌体重の約115しか得ら れなかったが, その主な原因としては培養の進行にともなって培地 のpHが急激に低下することにあると考えられる.
次に培養槽での本菌の増殖特性を明らかにするため, 図1・2に示し た培養槽を用いて独立栄養条件で本菌の培養を行った. 坂口プラス コ培養から培養槽への接種には, 無機培地を用いて坂口フラスコで
継代培養した培養15時間の菌体を用いた. 接穫量は10%とした. 熔 槽のかくはん速度は1400 r p m, 通気量は100 rnl/rnin, 温度30.Cで行 った. 供給基質ガスの酸素分圧と本菌の比増殖速度との関係はすで に田中ら( 2 )によって調べられている. しかし, 1 -4節 に述べたよう に培地の組成を変更したので, 供給基質ガスの酸素分圧と本菌の比
増殖速度との関係を明らかにする必要がある. 培養は図1-2に示す培 養槽に1-4節に示した無機培地100 rnLを入れて行った. 混合気の組成 は水素81.1 kPa, 炭酸ガス10.1 kPaとし, 酸素は10.1 kPaの範囲内 で酸素と窒素の比率を変えて供給した. 気相の酸素分圧を窒素バラ
ンスで2.03 kPa, 4.05 kPa, 6.08 kPaとして供給したときの培養結 果を図1-8に示す. 2.03-6.08 kPaの酸素分圧では, 菌体重は培養30 時間までは酸素分圧によらず一様に増殖したが, それ以後では酸素
-25・
20
15-1
E
、.2ご,、� 、司
工+-ごd c::>>
。3:
10
。。
。と、
5
。
。
• 2.03
kPa企 4.05
kPa•
6.08
kPa20 40
Time
[h]
60
図1
-8 培養槽での培養フロフィール
-26-
80
分圧を低くして供給するほど菌体重は高くなることがわかった. こ のときの気相酸素分圧と比増殖速度の関係を図1 -9に示す. この図の ように気相酸素分圧を4.05 kPaとして供給したときに 最大の比増殖 速度0.186 1/hが得られた. 田中らは気相酸素分圧0.048 atmにおい て0.4 1/hを越える比増殖速度を得たことを報告している2 1 しかし,
この実験では, 最大比増殖速度が得られる酸素分圧の備は田中らの 報告と一致したが, 最大比増殖速度は田中らの報告の半分以下であ った. そこで本菌を最大比増殖速度の得られる溶存酸素圧に維持し て培養を高速に行わせるため, 培養開始時のガス分圧は, 水素87.]
kP a, 炭酸ガス10.1 kPa, 酸素4.05 kPaとして供給することにした.
そして, 溶存厳素電極で培養液中の溶存酸素圧をモニターし, かく はん速度を変えて4.05 kPaの溶存酸素圧を維持した. かくはん速度 を上げる方法では溶存酸素圧を維持でき なくなった場合には, ガス チャンバー内のガス分圧を水素81.1 kPa, 殴素10.1 kPa, 炭酸ガス 10.1 kPa, さらに水素70.9 kPa, 酸素2 0.3 kPa, 炭酸ガス10.] kPa
に順次変更して供給し た. このように, 供給される気相酸素分圧と かくはん速度を変更することで, A. �utrophu sの培養液の溶存酸素 圧を最大比増殖速度の得られる値近傍に 維持することができた.
-27・
0.19
工 0.18
、、、
L守.ー.-」
4ω 何‘--d
0.17
エ 言
。四二0.16
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Jの 0.15
0.14
0.00 2.03 4.05 6.08
Partial pressure of oxygen [kPa]
図1-9 酸素分圧と比増殖速度の関係
- 28・
8.11
1 -7 小括
本章では, 後章 に記した実験を円滑に行うために必要な, 閉鎖、循 環型ガス培養システムの構築, 培地の調製, ガス流量の正確な測定 と調整方について述べた· A. � utrophu sの保存スラントから矯養槽 への継代培養では, 初めに保存スラントの菌株を肉エキス液体培地
5.0 mlを入れた試験管に一白金耳接種し24時間培養した(一次矯葵) . 24時間培養後, 一次培養液から一白金耳をとり, もう一度5.0 mlの
肉エキス液体培地で培養を行った(二次培養). 二次培養では対数増 殖期が接種後6-7時間継続することがわかった. 二次培養で7時間培 養した培養液の2.0 mlをさらに, 無機培地20 ml入れた500 m]の坂口 プラスコを用いてガス培養し, 菌をガス培養の条件に適応させた(コ 次培養) . 三次培養では, 肉エキス液体培地から無機培地へ変わ るた め, 菌体は約5時間の適応期の後対数増殖を開始し, 培養約15時間 で定常期に移行した. そこで, 無機塩培地を入れた坂口フラスコ でいったん培養した菌株を, さらに新しい無機塩培地を入れた坂口 フラスコで継代培養することで, 培養初期の適応期を短くすること ができた. しかし, 坂口プラスコを周いたガス培養で得られる菌体 重は肉エキス培地で得られる菌体重の約1/7であった. 20 m 1の液体 培地を入れた坂口フラスコのhead spaceに, 水素:酸素:炭酸ガス=8
: 1 : 1の基質ガスを充填した場合, この基質ガスの組成から計算され
- 29・
る菌体濃度は2.00 g/lである. しかし, 実際の坂口プラスコ矯養の 培養液の菌依濃度はこの1/5の0.4 g/lであった. この原因としては,
培養の進行にともなう培地pHの急激な低下することにあると考えら れる. 坂口プラスコ培養から培養槽への接種には, 無機培地を用い
て坂口プラスコで継代培養した培養15時間の菌体を用いた. 接種 は10%とした. 培養槽を用い, 最初の気相の酸素分圧を2.03 kPa, 4 .05 kPa, 6.08 kPaとして供給したとき, 菌体重は培養3 0時間までは
酸素分圧によろず一様に増殖した. しかし, それ以後では低い厳素 分圧で培養を行うほど得られる菌体重は多くなった. 比増殖速度と
溶存酸素濃度の関係から, 最大比増殖速度が得られる敵素分圧の儲 は田中らの報告と一致したが, 得られた最大比増殖速度の値は田中
ちの報告の半分以下であった.
-30-
表1 100 ml/minの混合気流量を得るのに必要な流量計目盛りの 計算値
ガス組成 空気換算流量 流量計目盛り
H2:02:C02:N2 (ml/min) (ー)
8:1:1:0 56.84 37.9
7 : 1 : 1 : 1 64.37 40.5
6:1:1:2 71.11 42.8
5:1:1:3 77.26 44.7
4:1:1:4 82.96 46.5
3:1:1:5 88.29 48.0
2:1:1:6 93.31 49.5
1:1:1:7 98.08 50.8
0:1:1:8 102.6 52.1
7:2:1:0 65.44 40.9
6:2:1:1 72.08 43 .1
5:2:1:2 78.15 45.0
4:2:1:3 83.79 46.7
3:2:1:4 89.07 48.3
2:2:1:5 94.05 49.7
1:2:1:6 98.79 51.0
0:2:1:7 103.3 52.3
70:20:10:0 65.44 40.9
70:16:10:4 65.01 40.7
70:12:10:8 64.59 40.6
70:8:10:12 64.15 40.5
70:4:10:16 63.72 40.3
70:0:10:20 63.28 40.2
-31-
第二章 発酵槽内挿入型溶存水素電極の開発
2 -1 緒言
水素酸化細菌Alcaligenes eutrophu sの独立栄養培養は, 水素, 酸 素, 炭酸ガスの混合気を供給して行われる. 基質となるガスは, 培 養槽に供給された混合気のうち培養液に溶解したものだけが菌体に よって利用されるため, 培養液中の溶存ガス濃度を抱握することは 本菌の独立栄養培養を首尾よく行うために極めて重要である. 溶存 酸素濃度と溶存炭酸ガス濃度は市販の廉価な培養周の溶存酸素電憾 と溶存炭酸ガス電極でそれぞれ測定可能であるが, 培養液の溶存水 素濃度を測定するための溶存水素電極はほとんど知られてい なし . しかしながら, 本菌の独立栄養培養 中の水素の物質移動現象を解明 するには, どうしても培養液の溶存水素濃度を簡便かつ正確に測定 することが必要である. 一般に溶存ガスの測定法としては, 電気化 学的手法が用いられている. この中で最もありふれた溶存ガス測定 用電極としては溶存酸素電極が挙げられる. 今日容易に入手可能な 溶存酸素電極には二つのタイプのものが ある. 一つはガルパニ
(Galvanic, Potentiometric)型であり, もう一つはクラーク
(Polarographic , Clark)型である. これらの電極は厳密には溶存酸 素濃度ではなく, 溶存酸素分圧(すなわち水に溶けている酸素の活 量)を測定するものである. どちらのタイプの電極もcathodeでは同
-32-
じ反応, すなわち下式に示すように酸素が還元される反応, が起こ る
1/202+H20+2e-→20 H-
一方, anodeでは金属が酸化される反応が起こる. ガルバニ型厳豆 極では, 例えば鉛電極の場合
Pb→Pb+++2e-
Clark型電極では, 例えば銀電極の場合 Ag+ Cl-→AgCl+e-
がそれぞれ起こる. 電解液としてはガルバニ型電極では, 水酸化カ リウム, 塩化カリウム, 炭酸カリウム, 酢酸カリウムなどの水溶液 が用いられ, Clark型電極では塩化カリウムの水溶液が用いられてい る. ガルパニ型酸素電極は, 外部電源を必要とせずpotentiometerを
介して溶存酸素濃度に比例した出力を得ることができる. 一方,
Clark型酸素電極は, 一定電圧をcathodeとanodeの聞に印加する必要 がある1). この電圧はcathodeに対してanodeで-0.6 V2) ,-0.65 y,),
-675 my4)などである. さらに, Clark型電極の場合, この印加電圧
を+0.6 y2), +0.65 y5)+ 0.7 y6.7lに設定すると白金陽極でしO2→
2 H+ + 0ε+ 2 e -, 銀陰極で4H++ 4e-+02→2H2 0の反応が起こり, 過敵化水 素電極, あるいは過酸化水素の発生をともなう酵素電極の
transducerとしての使用が可能となる.
-33-
培養においても蒸気殺菌可能なこれらの電極によって発酵液中の 溶存酸素濃度を常にモニターし, 溶存酸素濃度を制御した培養が行
われている. しかし, 溶存水素濃度の測定は, 原子力プラントの水 質管理や金属の腐食テストに使用されるなど特殊な場合であり川,
溶存酸素濃度ほどその報告例は多くない. 溶存水素電極としては白 金と銀とで構成されるClark型のもの, あるいは白金と酸化白金 とで 構成されるガルパニ型のものなどが考えられる. 溶存水素の測定方 法に関する過去の報告では, tubing sensorとガスロマトグラブの組 合せたもの9), 先端にテブロン膜をつけたprobeとガスマススペクト ルメーターとを組合せたもの18), 水素が水に溶解した試料を直接ガ スクロマトグラブイーで分析するもの11), などが考案されている.
しかし, 前述の方法では培養液中の溶存水素濃度のon-l ine測定はで きないと考えられる. 連続測定可能なものには, 燃料電池式12),
Clark型溶存水素電極を用いたflow cell型電極8 )が報告されている.
これらの中で, Clark型の溶存水素電極は, 既存のClark型の溶存酸 素電極, あるいは過酸化水素電極と構造がほぼ同ーであるという汎 用性がある. このため入手が容易であり廉価である. また全容200_,
250 mlといっ た容量の培養槽に直接装着可能な小型のC]ark型発酵槽 内挿入型(in situ)溶存酸素電極がすでに作製されているため, 小剤 の溶存水素電極の作製が容易に行える利点がある.
-34也
本章では, 小型発酵槽内の溶存水素濃度をin situで測定可能な溶 存水素電極の開発とその特性について得られた結果を記す.
2-2 溶存水素電極の構造と動作原理
開発を試みた溶存水素電極はClark型のものである. Clark型溶存 水素電極の電極に用いる金属と電解質の組合せは次のようである:
(+)PtIPt-PtI1M KCl(pH 1.0 with HCl) IAgCIIAg(ー).
この電極に外部から一定電圧の分極電圧を印加すると, 分子状水 は陽極上で酸 化されて水素イオンとなる. 一方, 陰極上では広三化銀 が銀に還元され復化物イオンを放出し, これが水素イオンと反応し て塩化水素となり電極液中 に塩酸として蓄積される. 電極 膜をはさ み電極内の水素分圧と電極外の液中水素濃度との間には平衡関係が
成立しており, 溶存水素電極に流れる電流は, 電極膜を透過する水 素ガスの量に比例している. よってこの電流儲から溶存水素濃度を
知ることができる.
2・3 溶存水素電極の試作と問題点
<試作溶存水素電極の作製>
Clark型溶存 水素電極に関する報告2・8・1 3 - 1 5 )を基に, 溶存水素電 極が作製可能か試作し, 動作を確かめた. 試作した溶存水素電極の
-35-
構成を図2-1に, 試作溶存水素電極周の外部電源回路を図2-2に示す.
電極のanodeには, 直径1 . 0 m m, 長さ15 cmの銅線の先端に直径4 mm, 厚さ0.5 mmの白金円板を銀ろう 付 けしたものを用いた. この銅 線部分は, 銅線を外径6 m m, 内径1 • 1 m m, 長さ10 cmのガラス管に通 し, エポキシ系接着剤をガラス管と銅線および白金円板の間に充填 し絶縁した. その後, 白金円板へ白金黒を着けた. このための電解 液には, 3 %の塩化白金酸カリウム溶液に0.02---0.03%程度の酢敵鉛を
加えたものを使用した1 3・14). そして白金円板を陰極, 白金板を陽 極にして直流電圧5.0 V程度で90秒間電気分解した. cathodeには,
直径o .5 m m, 径長さ20 cmの銀線を用いた. まずanodeのガラス管に この銀線を巻き 付 けてラセン状にした. その後, 白金板を陰極, ラ セン状銀線を陽極とし1M塩化カリウム溶液中で10 mAで一晩電気分解 し, 塩化銀を充分に 付 着させ た . 電極膜は厚さ50 μ mのテブロン膜
(バルブロン絶縁テープ, 日本パルカー工業(株) ) であり, シリコン グリース(シリコーングリースコンパウンドSH-I03, 東レ ・ ダウコー
ニング ・ シリコーン(株)製)と長さ10 mm, 外径10 mm, 内径8 mmのシ リコンチューブで, 外径10 mm, 内径8 m m, 長さ10 cmのガラス管の
一端に固定した. そして先に準備したanodeのガラス管にコイル状の cathodeを装着した電極を, anodeがテフロン膜の先嬬を0.5 mm程度 押し出す位置に挿入し, シリコンゴム栓で固定した. 電梅内部には
-36・
Glass tube
"、
Silicon rubber
plug
Silicon
� /
Silicon rubber
nng
\ 、\
lubricant
\
'" Pt _Pt black PTFE film図2 -1 試作溶存水素電極の構成
-37-
+
3Vba社ery
100 Q
|To recω町|
�
Anode
|To似trode I Cathode
図2-2 試作溶存水素電極用の外部電源回路
-38・
1M塩化カリウム水溶液を充填した.
外部電源回路(図2 - 2) の電源は3 Vの電話周乾電池(FM-5, 富士通製 )を用いた3 ) 図2-2に示した30 k Qの抵抗器をマニュアル操作する
ことで電極間の印加電圧を0.3 Vに調節した. 電圧は入力抵抗約200 kQのアナログマルチテスター(モデルSX-210, SOAR 製)でモニター した. 電極からの出力電流は100 Qの可変抵抗器で出力電流に比例 した電圧に変換した後記録計(R-111, 島津製作所製)に記録させた.
<試作溶存水素電極の検量線>
本電極を図1 -1に示すシステムと図ト2に示す培養槽で溶存水
度が測定可能かどう か試験した. 図2-3に溶存水素分圧を変化させた ときの本電極の対応する定常状態出力の実測値を示す. 溶存水素分 圧は, 培養槽に通気する水素と窒素の混合気の混合比を変えること によっておこなった. なお, この混合気の全圧は101.3 kPaとなるよ うに調整した. 培養のときと同じ通気かくはんを行い, 溶存水素電
極の出力が一定値を示すようになったとき, 測定系が定常状態に達 したと見なした. 図2-3に示すように, 101.3 kPaの気相水素分圧と 平衡関係にある培養槽の溶存水素圧に比例した電流が得られること がわかる. 図2-4は本電極を 純窒素気流中 から純水素気流中に切り替
えるときのステップ応答試験の結果を示す. この結果から本電極の 時定数は16.8秒と求められた. ここで, 次応答遅れでいう時定数
ー39-
• 40
30
20
10
{〈ユ]HCω」」コ03avコO
。
。 80 100
Hydrogen pa吋ial pressure in distilled water [kPa]
40 60 20
試作溶存水素電極の溶存水素分圧に対する 定常状態出力
-40・
図2-3
B
10
。
。 30
20
{〈ユ}HCC」」コOMコ会コO
80 100 60
40
Time
[s]
試作溶存水素電極のステップ応答試験結果 図2-4
点線A 最終平衡値(38.1 �)
点線B 最終平衡値の63.2%応答値( 24.1 �)
点C 最終平衡値の6 3 . 2%応答値に達するまでに要する時間(16.8 s)
-41-
とは, ステップ入力に対する応答の最終平衡値(静止ゲイン)の
l-e- 1 (=0.632)に達するまでの時間と定義された値である.
P.F.StanburyとA.Whitakerの著書1 5 )によると, 溶存酸素電極の場合,
時定数は溶存酸素電極の酸素の物質移動速度の応答時間 である l/KLaに比べ十分に短いものでなければならない, と記している.
Van't Rietはdynamic gassing out法によるKLaの測定で時定数( T)を 用いた以下のような式を考案しいる16).
KLa=l/T
この方法は実際に動物細胞培養で酸素の総括物質移動容量係数の測 定に使用している17). この式を用いると, 先に示した 時定数18.8秒 の溶存水素電極ではKLa=214 l/hと求められた. システムの一次応悠 遅れ が電極の一次応答遅れ(時定数)を越える ような場合, 本方法に よる 物質移動容量係数の測定は不可能であるから試作溶存水素電極 で測定可能な物質移動容量係数の最大値は214 l/hとなる. この値で は測定できる物質移動容量係数の最大値が低すぎるので, 本電極で は物質移動能力の高いガス発酵用培養槽の物質移動容量係数の測定 はできない. また, 試作した溶存水素電極で培養槽の溶存水素の測 定は可能であることがわかったが, さらに以下に列挙する電極, 外
部電源回路および記録計に関する解決しなければならない問題もあ ることがわかった.
-42-
電極に関する問題点としては以下のものが挙げられる.
1 .電極膜の電極先縞への固定が不十分であるため, 電極内部液が
漏出することがある.
2 .培養槽に電極を装着した時点で, 電極の圧力補正孔が培養槽の内
側になるような位置に作製することができなかったため, 培養槽内
外の圧力差の影響を受け電極出力電流が微妙に変動した. また液漏
れの原因にもなっていた.
3.anode先端の白金板と電極膜の接触が不安定であったため, かくは
んなどの振動の影響によって電極出力が乱された.
4.anode先端の白金板と銅線の銀ろう付部分が腐食し分雌することが
あった.
5.anodeのガラス管と銅線の間際部に電極内部液が浸透して電極の絶
縁抵抗が低下したため漏電流が増大した.
6 .塩化白金酸と酢酸鉛の混合溶液を白金黒の電着操作に用いると,
生じた白金黒は不安定であり, 電極膜との摩擦で容易に剥離した.
電極の出力も 極端に低くなった.
7 .塩化銀を電着させたcathodeに光が当たると電極の出力電流が変動
した.
<外部電源回路および記録計に関する問題点>
1 .電極への印加電圧をマニュアル操作で変更しなければならないた
-43-
め, 応答遅れを見込んで印加電圧を一定に維持しなければならず定
常値を得るのに時間を要す.
2.本電極の電気抵抗は溶存水素分圧によって変化する ため印加電圧
もマニュアル操作で随時変更しなければならなかった. そのため,
本電極を用い て溶存水素分圧の過渡変化を追跡することは不可能で
あった.
3 .印加電圧を測定するための電圧計の内部抵抗が低かったので, 誤
差を生じた可能性がある.
4 .レコーダーの入力感度が1 mVプルスケールと非常に高く, さらに
回定式であったため微調整が効かなか った.
以上の各問題点を解決し, 培養系の溶存水素圧を簡便で正確, か
っ迅速に測定できる溶存水素電極を開発するため, 以下に記したよ
うな改良型の溶存水素電極の作製を試みた.
2-4 改良型溶存水素電極の作製
はじめに電極の構造上の問題点を克服するため, 市販品の電極の
中から溶存水素電極に 改造可能なClark型溶存酸素電極を選択した.
そして, 図2-5示す溶存水素測定用電極を, Biott社から提供してい
ただいた Clark型溶存酸素電極(DG-5P)を基にして以下の手11慣に従っ
て改造作製した.
-44-
Electrolyte
(1 M KCI pH 1 .0 with HCり
Silicon Q-ring
、
Silicon lubricant
PTFE film
Anode (Pt-Pt black)
図2・・5 Clark型溶存水素電極の構成
-45・
Cathode
< ca thodeの作製>
まずラセン状の銀線に塩化銀を電着させるため, 電極内部に1Mの 塩化カリウム水溶液を充填し, 銀極を陽極, 白金板を陰極とし, 初
期分解電流が10 mAとなるような電圧で電気分解した. 24時間電気分 解後, 内部液を捨て, 新しい1M 塩化カリウム水溶液で洗浄した.
< anodeの作製>
電極先端の白金円盤に白金黒を電着させるため, 酢酸鉛を含まな い3%塩化白金酸水溶液(電導度を高めるため10 mlの塩化白金種差溶液 に対し1 - 2滴の濃塩酸を加えた)に電極先端の白金円盤板を浸け, 白 金円盤を陰極, 白金板を陽極とし, 電圧5.0 Vで電気分解した. 90秒
間電気分解した後, 電極を1M極化カリウム水溶液で3回洗浄した.
<電極膜の取り付け>
電優先備は, 厚さ24.5 μ mのポリテトラブルオロエチレン(PTFE) 膜で覆った. PTF E膜は予め管径約7 mmのDurham管の丸底を利用して 電極先婦の形状に合致するように引き延ばしておく. 本電極は, 本 来フローセルに取り付けて測定を行うための電極であったため, 激 しくかくはんを行う本菌の培養系での測定では, たびたび液漏れを おこした. そこで, 電極液の漏洩を防止するため, 電極とPTPE膜の 間はシリコングリース コンバウンドを充填し, シリコンOリング3本
で固定した.
-46-
<電極内部液>
電極反応の結果生成する塩酸によるpH変化の影響を抑えるため,
塩酸でpHを1 . 0 とした1M塩化カリウム水溶液を電極液 として用い, 電 極の圧力補正孔の位置まで充填した. 電極液充填後, 電極先端を遠
心方向に向けて電極を軽く振り電極先端に残った気泡を取り除く.
<外部電源、回路>
本電極はClark型電極であるから, 外部から分極電圧を印加する必 要があり, 図2-6に示す電気回路でこの電圧を発生させた. 外部電源 回路には差動入力回路を備えたオペアンプを用い, 電極への印加 圧を常に一定に維持できる定電圧電源を作製することにより電圧調
整の煩雑さを克服した. 電極への印加電圧は図に示す高内部抵抗の 電圧計(デジタルマルチテスター, 7532-01, Yokogawa製)で常にモニ
ターし, 電極に発生する電流は, 固定抵抗(101.30)でこの電流に 比例した電圧に変換し, 高内部抵抗のレコーダー(PRR-5021 ,Toa Electronics製)に記録させた. しかし, この電源は電灯線から外部
ノイズを拾いレコーダーに出力として記録してしまうという欠点が あったため, さらにノイズ対策を施した図2-7の電源を最終的に用し
ることにした.
<電極の寿命と再生方法>
本電極は, 実験毎に電極の校正を行えば約2カ月くらいは充分使
-47・
12V-AC
1 kQVR
図2・6 溶存水素電極用外部電源回路
-48-
図2-7 ノイズ対策を施した溶存水素電極用外部電源回路
Rectifier
よーco
Transformer AC 12V
AC 100 V
+
e AU一 O一 va - みE、- C一 一 戸v一! 一 ρ ν 一 お一
1 kQVR
用することができた. しかし, 電極の出力が異常に低下したときや,
液漏れが生じたときは電極を再作製した. まず電極膜をはずす. こ の時, 電極先端の白金板および電極内部にシリコングリースコン/。
ウンドが付着したり入り込まないように注意する. 次に古くなって 活性の低下した白金黒を除去する. 除去には研磨剤として石英砂末 あるいは酸化アルミニウム粉末に脱イオン水を加えたものを用い,
指先につけ研磨除去する. その後, 1M KClで電極を洗浄する. 電極 内部に残留している研磨剤粒子は, 圧力補正孔から塩化カリウム溶
液を注ぎつつ, 電極先端にキムワイプをあて て液を吸い取らせる.
以後はさきに述べたcathodeの作製以降のI1慣にしたがい電極を再作製 した.
2-5 溶存水素 電極の校正
電極の校正は図1 -1 �こ示したシステムと培養槽での培養条件と同 の条件を用いて行った. ガスチャンバーに, 水素と窒素の混合比を
変えて調整した混合ガスを準備し, この混合気を培養糟に通気した.
培養槽には蒸留水100 mlをいれ1400 rpmでかくはんした. 図2・8に溶 存水素電極の出力電流が一定になったときの, 気相の水素分圧と平
衡な溶存水素圧に対する 溶存水素電極の出力電流を示す. 分極電圧 は300 mV2lあるいは55 0 mVB)でそれぞれ測定を行った . その結果,
ー50-
• 550 mV
• 300 mV 30
10 宝}HCωヒコovコ会コO 20
0
0 80 100
Hydrogen paパial pressure in distilled water [kPa]
図2-8
60
溶存水素電極の検量線
-51- 20 40
300 m Vで は溶存水素分圧が低い領域で正確な測定ができなくなるこ とが明らかになったため, 分極電圧には550 mVを採用することにし た. 分極電圧550 mV のとき, 図に示すように本電極は溶存水素分圧 Oから100 kPaの間で直線的なレスポンスが得られることがわか った.
2-6 ステップ応答特性
蒸留水100 mlを入れたこつの培養槽に, 窒素と 水素を各ガスボン べから直接供給して気液平衡状態を形成させた後, 溶存水素電極を 窒素飽和蒸留水から水素飽和蒸留水へ急速に入れ替えて本電極のス テップ応答特性を調べた. 結果を図2-9に示す. この結果から本電極 のステップ応答の時定数は5.9秒と求められた. Van't Rietは時定数 の逆数からdynamic methodによる物質移動容量係数(KL a)の算出法を
考案しているが, この水素の時定数から彼の方法にしたがって水素 の総括物質移動容量係数を計算すると, その測定限界は約610 l/hと いう ことになる. 本電極は先の試作電極の約二倍程度時定数が短縮 されており, 培養系における溶存水素の過渡変化の測定にも充分使 用可能であると判断した.
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30 8
A
10
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Time
[s]
40 C 20
溶存水素電極のステップ応答試験結果 図2-9
最終平衡値(28.4μA)
最終平衡値の63.2%応答値( 17.9同)
最終平衡値の6 3.2%応答値に達するまでに 要する時間(5.9 s)
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点線A
点線B
点C
2-7 妨害物質による溶存水素電極の撹乱
白金ー白金黒および銀ー塩化銀の組合せからなるClark型電極は, 硫 化物の影響を受け , 電極の応答が乱されることが知られている.
Kurodaらは, 市販品のflow cell型溶存水素電極も同様の妨害を受け,
硫化物や含磁アミノ酸によって妨害されたことを報告している8 ) そこで主. e utrophu sのガス培養に用いる培地成分と基質 ガスが本溶存 水素電極の出力に影響をおよぼすかどうか試験した.
実験 の結果, 1 -4節に記述した濃度の培地成分は全く電極の出力に 影響をおよぼさず, 問題ないことが明らかになった. しかしながら,
純水素を通気している際に, 1 -4節に記述した無機培地の出力電流値 は, 蒸留水の値よりも約2%程度低くなった. この原因は, 無機培地 では培地成分が溶解しているので, 塩類効果によってガスの溶解度 が減少したためであると考えられる. 基質ガス成分が溶存水素電極 に与える影響について調べたところ, 純酸素が溶存水素電極のレス ポンスに妨害を与えることがわかった. しかしガス培養に用いる気 相酸素分圧は通常約20 kPa以下なので, このような高酸素分圧のガ スは本菌の培養では使用することがなく, 培養系を加圧する場合を
除き全く圧力補正などを行う必要はないと考えた.
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2-8 小括
溶存水素電極は溶存酸素電極ほど一般的に使用されておらず, そ の用途は非常に特殊な場合に限られている. そのため価格もかなり 高価な物となっている. また, 小型培養槽に最適な寸法の溶存水素 電極を市販品の中から選択することは不可能であった. さ らに, 溶 存水素電極に関する知見は溶存酸素電極に関するそれに比べて皆無 に等しい. 本章では, 数少ない情報の中からClark型の溶存水素電極 の構造と, 比較的汎用されているClark型の溶存酸素電極の構造とが 類似していることに着目し, 溶存水素電極が溶存酸素電極から開発 可能かどうか実験によって確かめた. ここで使用した培養用の
Clark型溶存酸素電極は比較的容易に入手でき , しかも小型培養槽に 直接取り付けて使用できるものである. 発酵槽内掃入型溶存水素電 極の開発には, Biott社から供給されている溶存酸素電極DG-5Pを用 いた. この溶存酸素電極を改造して溶存水素電極を開発した. この 電極 は白金-白金黒および銀-塩化銀の金属の組合せからなるClark型 の電極で, 電極内部液には塩酸でpHを1 .0とした111塩化カリウム水溶 液周いた. この溶存水素電極は, 全容が200 mlの培養槽に取り付け ることができ, 発酵槽の溶存水素圧をon-line測定することが可能で
あった. この溶存水素電極の分極電圧は550 mVが適しており, この 条件を用いることで100 kPa以下の溶存水素分圧を正確に測定可能で
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ぎる. また, この電極のステップ応答に 対する時定数は5.9秒であ
り, Van't Rietが導いた電極の時定数と総括物質移動容量係数の関 係式から計算される, gassing out法による総括物質移動容量係数の 測定限界は約610 l/hである. DC-5Pを改造して作製した溶存水素電 極の時定数(5.9秒)は, 試作溶存水素電極の時定数(16.8秒)よりも 10.9 秒も短縮されており, A. e utrophu sの培養系の溶存水素濃度の 経時変化の測定に十分使用できるもの と判断した. 培地成分のこの 溶存水素電極の応答に対する妨害の影響は, 純酸素を通気した場ム にのみみられたが, 水素酸化細菌の培養では高濃度の 酸素を使用す ることはなく, 酸素分圧20.3 kPa程度であるからこのような条件で は測定上ほとんど問題にならないと判断した.
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