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ラジアルゲートの経年劣化に関わる解析的ケーススタディ

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Academic year: 2022

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(1)CS6-048. ラジアルゲートの経年劣化に関わる解析的ケーススタディ 電力中央研究所 正会員 ○山本広祐, 正会員. 中島正人. 電力計算センター 非会員 丸山成人 1.まえがき 水力発電所の鉄鋼構造物として洪水吐ゲートや水圧鉄管等があげられるが,建設後 50 年を越えるものが 増えてきているため,これらの適切な維持管理が重要課題となっている.本研究で取り扱うラジアルゲート については,国内では 1967 年に発生した和知ダムゲートの事故1),海外では 1995 年の Folsom ダムゲート (米国カリフォルニア州)の事故2)などが見られる.これらのゲートは基本的に軽量設計であり,ゲート巻 き上げあるいは微小開度放流に対する構造強度が十分ではなかったことが推察されるが,他のゲートにおい ても今後施設の長期利用にあたり,腐食による減肉と回転支承(トラニオンピン)のすべり摩擦抵抗の増大 による過負荷が懸念されることから,解析的ケーススタディを実施して影響の把握に努めることとした. 2.解析モデルの作成と解析手順 設備の重点調査が求められる年代を想定することとし,1950 年代に建設された典型的なラジアルゲートを ケーススタディの対象構造物として選定した.ゲートの純径間 8.0m,高さ 9.4m,脚柱のアーム長 10.0m で あり,π型ラーメン形式の門構が上下に 2 段配置してある. 有限要素法による構造解析には汎用コード ABAQUS. 巻き上げワイヤ. 3). を用いる. こととし,主桁・脚柱・スキンプレートは 3 次元シェル要素で,そ. 対. の他の補助部材は 3 次元梁要素でモデル化した.図‑1 に解析モデル の要素分割図を示す.対称性を踏まえて構造物の片側 1/2 のみ考慮. 応力評価箇所. している.要素数はシェル要素が 4821,梁要素が 1449,総節点数. 主桁. 称. 脚柱. は 5754 で各節点 6 自由度を有している.なお,トラニオンピンは. 条. 剛構造として取り扱った. 数値解析は以下に示す方法で増分法的に行う.. 件. (1)自重解析:鋼材の体積と単位重量から各部に作用する自重を. トラニオンピン. 求め,これに対する応力解析を行う.. ゲート接地面. (2)設計水位負荷時の解析:設計水位 9.7m を静的に作用させて. 図‑1. 有限要素解析モデル. 応力解析を行う. (3)巻き上げ荷重の負荷:トラニオンピンの摩擦に起因する巻き上げ荷重を巻き上げワイヤ取り付け部 に静的に作用させて応力解析を行う. 上記の(1)および(2)の解析では,ゲート接地面で上下方向変位のみ拘束,トラニオンピンでピン軸回りの回転 のみ自由とした.一方,(3)の解析では境界条件を変更し,トラニオンピンを剛結,ゲート接地面の上下方向 変位を自由にして巻き上げワイヤ取り付け部に上向きに巻き上げ荷重を加えた. 3.劣化要因として考慮するパラメータ 腐食による減肉およびトラニオンピンのすべり摩擦抵抗の変化を考慮することとした.水力発電所鉄鋼構 造物の腐食実績は 0.02〜0.03mm/年程度であることが知られているため4),若干範囲を広げて 0.05mm/年程 度まで考慮した.トラニオンピンのすべり摩擦係数は水門鉄管技術基準5)において 0.2 に規定されているが, 従来から摩擦増大の懸念が大きいことを考慮して最大 1.0 まで検討範囲を広げた.ケーススタディで考慮す る経過年数は 100 年までとし,腐食減肉量を腐食率×経過年数から求め,主桁・脚柱・スキンプレート各部 キーワード ラジアルゲート,経年劣化,腐食,支承摩擦,有限要素解析 連絡先 〒270-1194 千葉県我孫子市我孫子 1646. Tel (0471) 82-1181. -350-. Fax (0471) 82-5934. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).

(2) CS6-048. から差し引くことにより解析モデルを変化させた.経年劣化モデルの概要は図‑2,図‑3 示す通りである. 腐食量 (mm). 摩擦 係数. 6.0. 1.2. 5.0. 腐食速度 0.05mm/年. 1.0. 4.0. 0.04mm/年. 0.8. 3.0. 0.03mm/年. 0.6. 2.0. 0.02mm/年. 0.4. 1.0. 0.2 0. 20. 40. 60. 80. 100. 経過年数(年). 0. 20. 図‑2 腐食劣化モデル. 40. 図‑3. 60. 80. 100. 経過年数(年). すべり摩擦係数劣化モデル. 4.解析結果 一例として図‑4 に最大応力が発生する脚柱上段の応力状態を示す.脚柱は自重+設計水位負荷時に全断面 ほぼ均等に圧縮を受けるよう設計がなされるが,巻き上げ荷重が加わることにより曲げ応力が加算され,ト ラニオンピン近傍のフランジ上縁で最大応力を生じる.図‑4 の縦軸は発生応力を示しており,許容応力σa (=σu/3) ,1.5σa(=σu/2) ,引張強度(σu=4,100kgf/cm2)が併記されている.横軸は腐食量(mm)で あり,図中にはμ=0.0, 0.2, 0.4, 0.6, 1.0 の解析結果を示している.なお,μ=0.0 の場合は摩擦無し,すなわ ち巻き上げ荷重無しに相当するため,自重+設計水 μ =0.0. 位の解析結果と読み替えて良い.. μ =0.2. 0. μ =0.4. この図から,従来設計では自重+設計水位負荷時. -500. には腐食 0 で最大発生応力 0.7σa,腐食 3mm で最. -1000. μ =0.6. 大応力がほぼσa,設計条件である摩擦係数μ=0.2 による巻き上げ荷重を加えた場合は,腐食 0 で最大 応力がほぼσa になることがわかる.巻き上げ荷重. 力 (kg f/ cm ^2 ). μ =1.0 σ u/3. -1500 -2000. σ u/2. -2500 -3000 -3500. 応. が一時的な曲げであることを踏まえて 1.5σa まで. -4000. 容認できると仮定すれば,μ=0.2 で腐食 4mm,μ. -4500. =0.4 で腐食 2mm(余裕厚程度)の消失が限界状態. -5000. σu. 0. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 腐 食 量 ( mm ). となる.なお,ダムゲートの場合,今のところ平均 腐食量が 2mm を越えるものはほとんど見られない.. 図‑4. 脚柱上段 ピン近傍 フランジ上縁の応力. 5.まとめ 本稿では,経年劣化の主要パラメータとして腐食と回転支承(トラニオンピン)のすべり摩擦の増大を考 慮する数値解析法を示し,評価検討上の数値範囲を明示した.有限要素解析モデルの作成に手間がかかるも のの,現行の簡易な設計計算法5)に代わる現実的な評価を与えるものと考える.提案法に基づき,1950 年 代に設置されたラジアルゲートのケーススタディを行い,劣化許容範囲の見通しを得た.今後,材料強度の ばらつき,腐食速度のばらつき,回転支承のすべり摩擦係数のばらつきを踏まえた構造信頼性の評価を行い, 補修・補強・更新の判断材料として活用していく.対策工のコスト評価もあわせて検討する予定である. 謝. 辞. 本検討は電源開発(株)工務部土木保守グループとの共同研究の一環として行ったものであり,. 関係各位に深甚なる謝意を表します. 参考文献 1)川村・中野:和知ダムゲートの事故原因調査報告の概要,土木技術資料,Vol.10,No.9,1968. 2)http://www.mp.usbr.gov//forensic.html (U.S. Bureau of Reclamation のホームページより) 3)ABAQUS / Standard User's Manual, Version 5.8, Hibbitt, Karlsson & Sorensen, Inc., 1998. 4)腐食防食協会:腐食防食データブック,丸善,1995. 5)水門鉄管協会:水門鉄管技術基準・水門扉編,1997.. -351-. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).

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