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末梢電気刺激による求心性抑制が二連発磁気刺激による皮質内興奮性に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 82 43 巻第 2 号 82 ∼ 89 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 研究論文(原著). 末梢電気刺激による求心性抑制が二連発磁気刺激による 皮質内興奮性に及ぼす影響* 小 島   翔 1)2)3)# 宮 口 翔 太 1)3)4) 小 丹 晋 一 1)3) 1)    1)   1)  桐本 光  田 巻 弘 之  大 西 秀 明. 要旨 【目的】本研究の目的は,末梢電気刺激による求心性抑制が二連発磁気刺激による短間隔皮質内抑制およ び皮質内促通に及ぼす影響を明らかにすることとした。【方法】対象は健常成人 12 名であった。磁気刺激 による運動誘発電位(Motor evoked potentials;MEP)の記録条件は,二連発磁気刺激の 2 条件(短間 隔皮質内性抑制,皮質内促通)および求心性抑制の 2 条件(短潜時求心性抑制,長潜時求心性抑制),二 連発磁気刺激および求心性抑制を組み合わせた 4 条件に単発磁気刺激条件を加えた合計 9 条件として,各 条件で得られた MEP 振幅値を比較した。 【結果】短潜時求心性抑制は短間隔皮質内抑制および皮質内促 通に影響を及ぼさなかった。一方,長潜時求心性抑制は短間隔皮質内抑制に影響を及ぼさないが,皮質内 促通を有意に減弱させた(p<0.01)。【結論】長潜時求心性抑制は皮質内の促通回路に影響を及ぼす可能性 が示唆された。 キーワード 末梢電気刺激,求心性抑制,短間隔皮質内抑制,皮質内促通. はじめに. と MEP 振幅値が減少する. 1). 。この現象は,短間隔皮質. 内 抑 制(Short-interval intracortical inhibition; 以 下, 1‒4).   経 頭 蓋 磁 気 刺 激 法(Transcranial magnetic stimu-. SICI)といわれている. lation;以下,TMS)は,非侵襲的に大脳皮質を刺激す. 15 ms の ISI で行うと MEP 振幅値が増大する現象が認. ることが可能であり,刺激に対する反応を末梢の筋より. め ら れ, こ の 現 象 は 皮 質 内 促 通(Intracortical facili-. 運動誘発電位(Motor evoked potential;以下,MEP). tation;以下,ICF)といわれている. として記録することで,皮質脊髄路興奮性の変動を評価. ICF に関する先行研究では,ISI や刺激強度,末梢の筋. することが可能である。また,二連発の TMS を一定の. 収縮強度などにより皮質内の抑制または促通作用の程度. 刺 激 間 隔(interstimulus interval; 以 下,ISI) で 行 う. が変動することが報告されている. ことにより,大脳皮質内の抑制または促通作用を評価す.  先行研究では,末梢の電気刺激などの体性感覚入力に. ることが可能である。MEP が誘発される閾値以下の条. より大脳皮質の興奮性が変動することが報告されてい. 件刺激と閾値以上の試験刺激を 2 ∼ 5 ms の ISI で行う. る. *. The Effects of Afferent Inhibition using Electrical Stimulation on Short-interval Intracortical Inhibition and Intracortical Facilitation 1)新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所 (〒 950‒3198 新潟県新潟市北区島見町 1398) Sho Kojima, PT, MS, Shota Miyaguchi, PT, MS, Shinichi Kotan, PT, Hikari Kirimoto, OT, PhD, Hiroyuki Tamaki, PhD, Hideaki Onishi, PT, PhD: Niigata University of Health and Welfare Institute for Human Movement and Medical Sciences 2)東京湾岸リハビリテーション病院 Sho Kojima, PT, MS: Tokyo Bay Rehabilitation Hospital 3)新潟医療福祉大学大学院 Sho Kojima, PT, MS, Shota Miyaguchi, PT, MS, Shinichi Kotan, PT: Graduate School of Niigata University of Health and Welfare 4)中条中央病院 Shota Miyaguchi, PT, MS: Nakajo Central Hospital # E-mail: [email protected] (受付日 2015 年 9 月 10 日/受理日 2015 年 11 月 26 日) [J-STAGE での早期公開日 2016 年 1 月 30 日]. 。一方,同様の刺激を 10 ∼. 1‒4). 。SICI および. 1)4)5). 。. 6‒8). 。正中神経に対する電気刺激の約 20 ∼ 50 ms 後. に大脳皮質一次運動野を対象に TMS を行うと MEP 振 7) 幅値の減少が認められる 。この現象は,短潜時求心性. 抑制(Short-latency afferent inhibition;以下,SAI)と いわれている. 7)8). 。また,正中神経刺激と TMS の ISI. を 100 ∼ 200 ms に設定した場合でも同様の現象が認め ら れ, こ の 現 象 は 長 潜 時 求 心 性 抑 制(Long-latency afferent inhibition;以下,LAI)といわれている. 6)8). 。. これらの抑制現象は,感覚入力に伴う一次運動野の応答 を示しており,正中神経などの混合神経刺激時だけでな く ring 電極を用いた皮膚電気刺激時においても同様に 認められることが報告されている. 7)9). 。また,リハビリ.

(2) 求心性抑制が二連発磁気刺激による皮質内興奮性に及ぼす影響. 83. テーションの対象疾患であるパーキンソン病や脳卒中患. 3.末梢電気刺激. 者では運動障害の程度により抑制作用が減弱または消失.   末 梢 電 気 刺 激 は 電 気 刺 激 装 置(SEN-8203,Nihon. することが報告されている. 8)10). 。さらに,SAI および. Kohden)および ring 電極を使用し,刺激部位は右示指. LAI に関する先行研究では,末梢電気刺激強度および. 先端とした。刺激持続時間は 0.2 ms(矩形波)とし,. 刺激部位の違いや電気刺激または皮質興奮性を変化させ. 刺激強度は感覚閾値の 3 倍とした. る こ と が 可 能 な 経 頭 蓋 直 流 電 流 刺 激(transcranial. は,末節骨(陽極)および基節骨(陰極)上に装着した。. 7)9). 。なお,ring 電極. direct current stimulation; 以 下,tDCS) な ど に よ る 介入により抑制作用が変動することが報告されてい る. 11‒14). 。これらの先行研究は,求心性抑制作用の変動. 4.経頭蓋磁気刺激  TMS に は, 磁 気 刺 激 装 置 Magstim 200(Magstim,. 因子に関する検討が多く,末梢電気刺激による求心性抑. Dyfed, UK)および 8 の字コイル(直径 95 mm)を使. 制が SICI や ICF で観察される大脳皮質内の抑制および. 用した。コイルは国際 10 ‒ 20 法より推定した左大脳皮. 促通作用に及ぼす影響を報告しているものは少ない。. 質一次運動野手指領域周辺に設置し,コイルのハンドル.  電気刺激による求心性抑制が大脳皮質内の抑制および. を大脳縦列に対して 45°の角度をつけた。刺激部位はコ. 促通作用に及ぼす影響を明らかにすることは,リハビリ. イルを設置した位置周辺で FDI より MEP が最も誘発. テーションの対象疾患における感覚処理過程および感覚. される点とし,被験者の頭部に被せた水泳キャップ上に. 運動連関を解明することに繋がるとともに,感覚入力に. 印をつけた。磁気刺激強度は,安静時運動閾値(resting. よる神経可塑的変化を目的とした最適な運動療法の開発. motor threshold;以下,RMT)および安静時の FDI よ. に関する基礎的データを提供することができると考えら. り 1 mV の MEP 振幅値が 50%以上の確率で誘発される. れる。そこで,本研究の目的は,末梢電気刺激による求. 最小強度(RMT_1 mV)を基準とした. 心性抑制が二連発磁気刺激による SICI および ICF に及. は安静時の FDI より 50 µ V の MEP 振幅値が 50%以上. ぼす影響を明らかにすることとした。. の確率で誘発される最小強度とした. 方   法. 2). 。なお,RMT. 1). 。. 5.MEP 測定. 1.対象.  本研究では,3 種類の刺激条件(二連発磁気刺激,ペ.  対象は実験内容を十分に説明し,書面での同意が得ら. ア刺激,組み合わせ刺激)を設定した。各刺激強度およ. れた健常成人 12 名(男性 5 名,女性 7 名;年齢 20 ∼. び ISI を表 1 および図 1 に示した。. 24 歳;平均値±標準偏差 22.0 ± 1.3 歳)とした。なお,.  二連発磁気刺激は,先行研究を参考に 2 種類の ISI を. 本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,かつ新潟医療福. 1) 用い,ISI は 3 ms(SICI)および 10 ms(ICF)とした 。. 祉大学の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:. また,二連発磁気刺激の刺激強度は条件刺激として. 17376 − 121213)。実験中,被験者は,椅子に腰かけた. RMT の 80 % 強 度(RMT_80 %) ,試験刺激として. 安静座位姿勢をとり,右手掌は椅子脇に備え付けられた. RMT_1 mV とした. 台の上に乗せた状態(肘関節 90°屈曲位,前腕回内位).  ペア刺激(電気刺激 + TMS)は,先行研究を参考に 2. とした。. 種類の ISI を用い,ISI は,40 ms(SAI)および 180 ms. 1)2). 。. (LAI)とし,試験刺激強度は RMT_1 mV とした. 8)9). 。. 2.筋電図測定.  組み合わせ刺激(電気刺激 + 二連発磁気刺激)は,.  筋電図(Electromyography;以下,EMG)は,被検筋. 二連発磁気刺激の 2 条件およびペア刺激の 2 条件を組み. を右第一背側骨間筋(First dorsal interosseous muscle;. 合わせた 4 条件(SAI + SICI,SAI + ICF,LAI + SICI,. 以下,FDI)とし,表面電極を使用して計測した。表面. LAI + ICF)とした。なお,組み合わせ刺激における各. 電極は,記録電極を FDI 筋腹中央に貼付し,基準電極. ISI は,試験刺激を基準に設定し,各刺激強度は,二連. を第二中手骨遠位端に貼付した。また,アース電極は右. 発磁気刺激およびペア刺激条件と同様に設定した。. 前 腕 部 に 巻 い た。EMG 信 号 は 増 幅 器(FA-DL-720・ 140,4 ASSIST) で 100 倍 に 増 幅 し た の ち A/D 変 換 (PowerLab 8/30,AD Instruments)し,サンプリング. 6.実験手順  本研究は実験 1(SAI 条件)および実験 2(LAI 条件). 周波数 10 kHz でパーソナルコンピュータに取りこんだ。. に分けて計測を行った。実験 1 では,単発刺激(single). 筋電図信号は,生体信号解析ソフトウェア(Lab chart. を含めた 6 種類の刺激(single,SAI,SICI,ICF,SAI. 7,AD Instruments)を用いて解析を行った。. + SICI,SAI + ICF)を 0.2 Hz の頻度で各 12 回ランダ ムに行った。また,実験 2 においても実験 1 と同様に 6 種 類 の 刺 激(single,LAI,SICI,ICF,LAI + SICI,.

(3) 84. 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 表 1 各刺激条件における刺激強度設定 刺激条件. 電気刺激. 条件刺激. 試験刺激. single. −. −. RMT_1 mV. SAI. ST_300 %. −. RMT_1 mV. LAI. ST_300 %. −. RMT_1 mV. SICI. −. RMT_80 %. RMT_1 mV. ICF. −. RMT_80 %. RMT_1 mV. SAI + SICI. ST_300 %. RMT_80 %. RMT_1 mV. LAI + SICI. ST_300 %. RMT_80 %. RMT_1 mV. SAI + ICF. ST_300 %. RMT_80 %. RMT_1 mV. LAI + ICF. ST_300 %. RMT_80 %. RMT_1 mV. 本研究で用いた各刺激強度を示す.電気刺激強度には感覚閾値の 3 倍(ST_300%) を用いた.また,二連発磁気刺激には,条件刺激として安静時に 50 µ V の MEP が 50%以上の確率で誘発される最小強度の 80%(RMT_80%),試験刺激として安静時 に 1 mV の MEP が 50%以上の確率で誘発される最小強度(RMT_1 mV)を用いた..  各刺激条件時に得られた MEP 振幅値および算出され た MEP ratio の比較には,反復測定による一元配置分 散 分 析( 要 因: 刺 激 条 件 ) を 行 い, 事 後 検 定 と し て Fisher’s LSD 法を用いた。なお,有意水準は 5%とした。 結   果  本実験で用いた電気刺激強度は 15.2 ± 3.5 mA,条件 刺激強度は 36.7 ± 5.4%,試験刺激強度は 55.2 ± 8.4% であった。 実験 1(SAI 条件)  得られた MEP 振幅値を基に一元配置分散分析を行っ た 結 果, 刺 激 条 件 間 に 主 効 果 を 認 め た(F(5, 66)= 18.59; p < 0.01,図 2a)。実験 1 で得られた MEP 振幅値 図 1 各刺激条件における刺激間隔 各刺激条件における刺激間隔を示す.二連発磁気刺激の 刺激間隔(ISI)は,3 ms(SICI)または 10 ms(ICF) とし,ペア刺激の ISI は, 40 ms(SAI) または 180 ms(LAI) とした.組み合わせ刺激は,試験刺激を基準とし ISI を 設定した.. は,0.75 ± 0.09 mV(single) ,0.44 ± 0.05 mV(SAI) , 0.18 ± 0.04 mV(SAI + SICI) ,0.20 ± 0.04 mV(SICI) , 1.02 ± 0.12 mV(SAI + ICF) ,1.08 ± 0.15 mV(ICF) となり,single に比べ SAI,SAI + SICI,SICI では有 意に低下し(SAI;p < 0.05,SAI + SICI,SICI;p < 0.01),SAI + ICF,ICF では有意に増加した(p < 0.05) 。. LAI + ICF)を 0.2 Hz の頻度で各 12 回ランダムに行っ. また,MEP ratio の比較では,刺激条件間に主効果を認. た。なお,実験 1 と実験 2 の間には十分な休憩をはさみ,. め(F(4, 55)= 48.61; p < 0.01, 図 2b) ,MEP の 抑 制. MEP の計測を行った。. 作用を示した刺激条件間において,SAI に比べ SAI + SICI および SICI 条件では有意に低下したが(SAI; 0.61. 7.データ解析および統計処理. ± 0.05 vs. SAI + SICI; 0.28 ± 0.07,SICI; 0.29 ± 0.07,.  解析対象は MEP 振幅値とし,各刺激条件時に得られ. p < 0.01) ,SICI と SAI + SICI 間では有意な差が認め. た 12 波形のうち MEP 振幅値が最大および最小の波形. られなかった。一方,MEP の促通作用を示した SAI +. を除いた 10 波形の加算平均波形より最大最小値の差と. ICF(1.39 ± 0.10)および ICF(1.46 ± 0.11)間では有. して算出した。また,各刺激条件による MEP 抑制およ. 意な差が認められなかった。. び促通作用の比較には,MEP ratio(各刺激条件時に得 られた MEP 振幅値 / single 時に得られた MEP 振幅値). 実験 2(LAI 条件). を用いた。.  得られた MEP 振幅値を基に一元配置分散分析を行っ.

(4) 求心性抑制が二連発磁気刺激による皮質内興奮性に及ぼす影響. 85. 図 2 実験 1 で得られた平均 MEP 振幅値および MEPratio の比較 実験 1 において得られた全被験者の平均 MEP 振幅値および MEP ratio を示す.a) MEP 振幅値の結果, single に比べ SAI,SAI + SICI,SICI では有意に低下し(SAI ; p < 0.05,SAI + SICI,SICI ; p < 0.01) , SAI + ICF,ICF では有意に増加した(p < 0.05) .b)MEP ratio の結果,SAI に比べ SAI + SICI お よび SICI 条件では有意に MEP ratio が低下したが(p < 0.01) ,SICI と SAI + SICI 間には有意な差 が認められなかった.一方,SAI + ICF および ICF 間では有意な差が認められなかった.. 図 3 実験 2 で得られた平均 MEP 振幅値および MEP ratio の比較 実験 2 において得られた全被験者の平均 MEP 振幅値および MEP ratio を示す.a)MEP 振幅値の結 果,single に比べて LAI,LAI + SICI,SICI では有意に低下し(p < 0.01) ,ICF では有意に増加した (p < 0.05) .一方,LAI + ICF と single 間では有意な差は認められなかった.b)MEP ratio の結果, LAI に比べ LAI + SICI および SICI 条件では有意に低下したが(p < 0.05) ,SICI と LAI + SICI 間に は有意な差が認められなかった.一方,ICF では LAI + ICF に比べ有意に大きな値を示した (p < 0.01).. た 結 果, 刺 激 条 件 間 に 主 効 果 を 認 め た(F(5, 66)=. れなかった。また,MEP ratio の比較では刺激条件間に. 17.97; p < 0.01,図 3a) 。実験 2 で得られた MEP 振幅値は,. 主 効 果 を 認 め(F(4, 55)= 34.81; p < 0.01, 図 3b) ,. 0.71 ± 0.04 mV(single) ,0.37 ± 0.04 mV(LAI) ,0.17. MEP の抑制作用を示した刺激条件間において,LAI に. ± 0.04 mV(LAI + SICI) ,0.21 ± 0.06 mV(SICI) ,0.67. 比べ LAI + SICI および SICI 条件では有意に低下したが. ± 0.11 mV(LAI + ICF) ,0.97 ± 0.11 mV(ICF)となり,. (LAI; 0.54 ± 0.06 vs. LAI + SICI; 0.24 ± 0.05,SICI; 0.27. single に比べて LAI,LAI + SICI,SICI 条件では有意に. ± 0.06,p < 0.05) ,SICI と LAI + SICI 間には有意な差. 低下し(p < 0.01) ,ICF では有意に増加した(p < 0.05) 。. が 認 め ら れ な か っ た。 一 方,ICF(1.35 ± 0.09) で は. 一方,single と LAI + ICF 間において有意な差は認めら. LAI + ICF(0.91 ± 0.11)に比べ有意に大きな値を示し.

(5) 86. 理学療法学 第 43 巻第 2 号. た(p < 0.01) 。. に設定することで抑制作用が最大となることを示してお り,条件刺激強度が SICI の抑制作用に影響を与えるこ. 考   察. とが報告されている. 1)5). 。さらに,近年,組み合わせ刺.  本研究は,末梢電気刺激による求心性抑制が二連発磁. 激 時 の 条 件 刺 激 強 度 の 増 大(AMT の 60 %,70 %,. 気刺激による皮質内の抑制性経路および興奮性経路に及. 80%,90%)に伴い,組み合わせ刺激時の抑制作用にお. ぼす影響を明らかにすることを目的とし,SAI または. け る SAI の 割 合 が 低 下 し, 条 件 刺 激 強 度 が RMT の. LAI と SICI または ICF の組み合わせ刺激による MEP. 80%では SICI 単独条件との間に有意な差が認められな. 変化を単独の刺激条件(single,SAI,LAI,SICI,ICF). いと報告されている. と比較した。その結果,末梢電気刺激による求心性抑制. を支持する結果であり,組み合わせ刺激時の抑制作用. (SAI および LAI)と SICI の組み合わせ刺激では,SAI. は,二連発磁気刺激の条件刺激強度に依存して変化する. または LAI 単独に比べ抑制作用が増大する一方,SICI. と 考 え ら れ た。 ま た, 薬 理 学 的 研 究 に よ り,SICI は. 単独とは同程度の抑制作用であった。また,SAI と ICF. GABAA receptor が関与する一方. の組み合わせ刺激では,ICF 単独に比べ有意な差は認め. 作動性ニューロンの関与が報告されており. られなかった一方,LAI と ICF の組み合わせ刺激では,. と SAI による皮質抑制作用は,異なる作用機序である. ICF 単独に比べ促通作用の減弱が認められた。. と考えられている.  本研究では,末梢電気刺激または条件刺激後に試験刺. lorazepam の投与により,SICI による抑制作用は増加. 激を行い MEP 振幅値を記録し,その変動を検討した。. す る も の の SAI に よ る 抑 制 作 用 は 減 弱 す る た め,. その結果,電気刺激と TMS の ISI を 40(SAI)または. GABAA receptor を介したニューロン活動の増加によ. 180 ms(LAI)とした条件において MEP 振幅値が有意. り,コリン作動性ニューロンの活動が低下することで. に低下した。また,二連発磁気刺激の ISI を 3 ms(SICI). SAI による抑制作用が減弱すると考えられている. とすると MEP 振幅値の低下が認められ,ISI を 10 ms. したがって,本研究では,GABAA receptor を介した. (ICF)とした条件では MEP 振幅値の増大が認められた。. SICI の抑制作用によりコリン作動性ニューロンによる. 過去の先行研究において,これらの MEP 変動は,脊髄. SAI の抑制作用が無効化とされたため,SAI によって. 興奮性の指標である F-waves の変動を伴わないことか. SICI による抑制作用の増大が認められなかったと考え. 1)6)7). られる。すなわち,本研究で認められた SAI と SICI の. 本研究による MEP の変動は,過去の先行研究と同様の. 組み合わせ刺激時の抑制作用は,SAI および SICI の相. パラダイムを用いており,同様の MEP 変動を示してい. 乗効果ではなく,SICI に依存した抑制効果であると考. ることから,皮質内の反応の変化が MEP 振幅値に反映. えられる。. されていると考えられる。.  本研究では,LAI 単独の抑制作用に比べ LAI + SICI.  本研究の実験 1 では,SAI 単独に比べ SAI + SICI に. において抑制作用が有意に増大し,また,SICI 単独と. おいて MEP 抑制作用が有意に増大し,SICI 単独と SAI. LAI + SICI 間では有意な差が認められなかった。LAI. + SICI 間では有意な差が認められなかった。また,実. は GABAB receptor を介するニューロン活動に起因す. 験 2 では,実験 1 と同様に LAI に比べ LAI + SICI にお. る長潜時皮質内抑制(Long-latency intracortical inhibi-. いて MEP 抑制作用が有意に増大し,SICI 単独と LAI. tion;以下,LICI)を減弱させ. ら,皮質内の反応であることが報告されている. 。. + SICI 間では有意な差が認められなかった。いくつか の先行研究では,末梢電気刺激後の SICI による抑制作 用の変化について報告している. 15‒18). 。Ridding ら 15)16). 18). 。本研究は Udupa ら 18)の研究. 19)20). ,SAI はコリン 21)22). ,SICI. 23). 。さらに,GABA 亢進薬である. させることが報告されている. 22). 。. 24). ,SICI も LICI を減弱. 25). 。このように,LAI と. SICI はどちらも LICI を減弱させることから,LAI + SICI により相乗効果を示すと推察したが,本研究では. は,皮膚電気刺激の約 40 ms 後に二連発磁気刺激によ. SICI 単 独 条 件 と 有 意 な 差 が 認 め ら れ な か っ た。. る SICI を記録すると SICI 単独に比べ抑制作用が減弱す. Kobayashi ら. ることを報告しており,本研究とは異なる結果を示して. を記録すると SICI 単独に比べ抑制作用が減弱すること. いる。これには,二連発磁気刺激に用いた条件刺激強度. を報告しており,本研究結果とは異なる。これには,試. 15)16). 17). は,皮膚電気刺激の 200 ms 後に SICI. が用いた条件刺. 験刺激強度の違いが考えられる。本研究では,SICI 計. 激強度は,軽度筋収縮中の TMS により 100 µ V 程度の. 測 時 と LAI + SICI 計 測 時 は 同 じ 試 験 刺 激 強 度. の違いが考えられる。Ridding ら. MEP 振幅値が得られる最小強度(Active motor threshold;以下,AMT)の 90%である。一方,本研究では, 15)16). (RMT_1 mV) を 用 い て い る が,Kobayashi ら. 17). は,. LAI + SICI 計測時において刺激強度の再設定を行って. の報告に. おり,SICI 計測時よりも強い試験刺激強度を用いてい. 比べ強い条件刺激強度を使用している。二連発磁気刺激. る。SICI に関する先行研究は,試験刺激強度が SICI の. に関する先行研究では,条件刺激強度を RMT の 80%. 抑制作用に及ぼす影響を示しており,試験刺激強度増大. RMT の 80%を用いており,Ridding ら.

(6) 求心性抑制が二連発磁気刺激による皮質内興奮性に及ぼす影響. 87. に伴い抑制作用が減弱することを報告している 5)。した. が 1 mV となるように試験刺激強度を再設定しており,. がって,試験刺激強度の再設定に伴い SICI による抑制. 本研究に比べ強い刺激強度を用いている。Udupa ら 28). 作用が減弱したことで LAI + SICI の MEP 抑制作用が. は,試験刺激に 2 mV の MEP が誘発される強度を用い. 減 弱 し た と 考 え ら れ る。 加 え て, 本 研 究 に お いては. た場合 SAI による抑制作用の消失を認め,試験刺激強. SICI 単独条件における MEP ratio は 0.25 程度であり,. 度増大に伴い電気刺激による抑制作用が減弱することを. 抑制作用の限界であったため,抑制作用の増大が認めら. 報告している。LAI においても同様に試験刺激強度の. れなかった可能性が考えられる。今後は,SICI の条件. 増 大 に 伴 い 抑 制 作 用 が 変 化 す る 可 能 性 が 考 え ら れ,. 刺激強度や試験刺激強度等を調整し,LAI + SICI 条件. Kobayashi ら. における抑制作用の相乗効果についてさらに検討してい. 刺激強度の増大に伴う求心性抑制作用の減弱に起因して. きたい。. いるのではないかと考えられる。本研究においては ICF.  本研究の実験 1 において,ICF 単独と SAI + ICF で. 単独条件と LAI + ICF 条件で同強度の試験刺激を用い. は single に比べ MEP 振幅値の増大が認められた。しか. ているため,LAI による ICF 促通作用の増加が認めら. し,その促通作用は両者間に有意な差が認められなかっ. れなかったと考えられる。. た。Ridding ら. 15)16). は,電気刺激と試験刺激の ISI を. 40 ms とした場合,二連発磁気刺激の ICF による促通 作用が増大することを報告している。一方,Kobayashi 17). 17). の電気刺激による ICF の増大は,試験. 結   論  本研究は,電気刺激による求心性抑制が二連発磁気刺. は,ISI を 25 ms とした場合,ICF による促通作. 激による SICI および ICF に及ぼす影響について検討し. 用の増加が認められないと報告している。本研究は,電. た。その結果,SAI または LAI と SICI の組み合わせ刺. 気 刺 激 と 試 験 刺 激 の ISI を 40 ms と し て い る が. 激時において,抑制作用の相乗効果は認められず,各皮. ら. と同様の結果を示しており,Ridding. 質抑制作用は異なる機序である可能性が示唆された。一. の報告とは異なる。Ridding ら 15)16)は二連発. 方,LAI と ICF の組み合わせ刺激時では,ICF 単独に. Kobayashi ら ら. 15)16). 17). 磁気刺激の条件刺激強度を 95% AMT 強度に設定し, Kobayashi ら Zittel ら. 26). 17). は 80 % RMT 強 度 に 設 定 し て い る。. 比べ促通作用の減弱が認められ,LAI は皮質内の促通 回路に影響を及ぼす可能性が示唆された。. は,条件刺激強度を RMT の 60%に設定し. た場合,電気刺激により ICF の促通作用の増加が認め. 謝辞:本研究の一部は,日本学術振興会科研費(基盤研. られるものの,RMT の 90%では促通作用の増加が認め. 究 B,課題番号 25282162)および新潟医療福祉大学研. られないと報告している。すなわち,本研究において. 究奨励金(発展的研究)により行われたものであり,感. SAI が ICF による興奮性促通作用を増大しなかったの. 謝の意を表します。. は,二連発磁気刺激の条件刺激強度が影響したものと考 えられ,SAI + ICF 条件の MEP 変動は,ICF の条件刺 激強度に依存する可能性が示唆された。  本研究において,ICF 単独では single に比べ MEP 振 幅値が増大したが,LAI + ICF では,single との間に有 意な差が認められなかった。ICF による促通作用は,大 脳皮質の興奮性を一過性に低下させる陰極 tDCS 介入や NMDA 拮抗薬などにより促通作用が減弱することから, NMDA receptor を介した神経活動により部分的に制御 されていると考えられている. 19)27). 。本研究結果は,末. 梢からの感覚入力による求心性抑制が大脳皮質内の興奮 性促通回路に影響を及ぼした可能性が考えられるが, LAI による抑制作用は未だ不明な点が多いことから,今 後は ICF の変動要因との関連をさらに検討する必要が あると考えられる。また,Kobayashi ら. 17). の研究では,. 皮膚電気刺激と試験刺激の ISI を 200 ms とし ICF を記 録すると ICF 単独に比べ促通作用が増大することが報 告されており,本研究結果とは異なる。本研究では, ICF 単独と LAI + ICF において同強度の試験刺激を用 いているが,Kobayashi ら. 17). は,電気刺激後の MEP. 文  献 1)Kujirai T, Caramia MD, et al.: Corticocortical inhibition in human motor cortex. J Physiol. 1993; 471: 501‒519. 2)Ridding MC, Taylor JL, et al.: The effect of voluntary contraction on cortico-cortical inhibition in human motor cortex. J Physiol. 1995; 487(Pt 2): 541‒548. 3)Ziemann U, Rothwell JC, et al.: Interaction between intracortical inhibition and facilitation in human motor cortex. J Physiol. 1996; 496(Pt 3): 873‒881. 4)Kojima S, Onishi H, et al.: Modulation of the cortical silent period elicited by single- and paired-pulse transcranial magnetic stimulation. BMC Neurosci. 2013; 14: 43. 5)Ilic´ TV, Meintzschel F, et al.: Short-interval paired-pulse inhibition and facilitation of human motor cortex: the dimension of stimulus intensity. J Physiol. 2002; 545: 153‒167. 6)Chen R, Corwell B, et al.: Modulation of motor cortex excitability by median nerve and digit stimulation. Exp Brain Res. 1999; 129: 77‒86. 7)Tokimura H, Di Lazzaro V, et al.: Short latency inhibition of human hand motor cortex by somatosensory input from the hand. J Physiol. 2000; 523(Pt 2): 503‒513. 8)Sailer A, Molnar GF, et al.: Short and long latency afferent inhibition in Parkinson’s disease. Brain. 2003; 126: 1883‒1894. 9)Kojima S, Onishi H, et al.: No relation between afferent.

(7) 88. 理学療法学 第 43 巻第 2 号. facilitation induced by digital nerve stimulation and the latency of cutaneomuscular reflexes and somatosensory evoked magnetic fields. Front Hum Neurosci. 2014; 8: 1023. 10)Di Lazzaro V, Profice P, et al.: The level of cortical afferent inhibition in acute stroke correlates with longterm functional recovery in humans. Stroke. 2012; 43: 250‒252. 11)Scelzo E, Giannicola G, et al.: Increased short latency afferent inhibition after anodal transcranial direct current stimulation. Neurosci Lett. 2011; 498: 167‒170. 12)Fischer M, Orth M: Short-latency sensory afferent inhibition: conditioning stimulus intensity, recording site, and effects of 1 Hz repetitive TMS. Brain Stimul. 2011; 4: 202‒209. 13)Mang CS, Bergquist AJ, et al.: Loss of short-latency afferent inhibition and emergence of afferent facilitation following neuromuscular electrical stimulation. Neurosci Lett. 2012; 529: 80‒85. 14)Kojima S, Onishi H, et al.: Effects of cathodal transcranial direct current stimulation to primary somatosensory cortex on short-latency afferent inhibition. Neuroreport. 2015; 26: 634‒637. 15)Ridding MC, Rothwell JC: Afferent input and cortical organisation: a study with magnetic stimulation. Exp Brain Res. 1999; 126: 536‒544. 16)Ridding MC, Pearce SL, et al.: Modulation of intracortical excitability in human hand motor areas. The effect of cutaneous stimulation and its topographical arrangement. Exp Brain Res. 2005; 163: 335‒343. 17)Kobayashi M, Ng J, et al.: Modulation of intracortical neuronal circuits in human hand motor area by digit stimulation. Exp Brain Res. 2003; 149: 1‒8. 18)Udupa K, Ni Z, et al.: Effects of short-latency afferent inhibition on short-interval intracortical inhibition. J. Neurophysiol. 2014; 111: 1350‒1361. 19)Ziemann U, L nnecker S, et al.: The effect of lorazepam on the motor cortical excitability in man. Exp Brain Res. 1996; 109: 127‒135. 20)Di Lazzaro V, Oliviero A, et al.: Direct demonstration of the effect of lorazepam on the excitability of the human motor cortex. Clin Neurophysiol. 2000; 111: 794‒799. 21)Di Lazzaro V, Pilato F, et al.: Dissociated effects of diazepam and lorazepam on short-latency afferent inhibition. J Physiol. 2005; 569: 315‒323. 22)Di Lazzaro V, Oliviero A, et al.: Effects of lorazepam on short latency afferent inhibition and short latency intracortical inhibition in humans. J Physiol. 2005; 564: 661‒668. 23)Chen R: Interactions between inhibitory and excitatory circuits in the human motor cortex. Exp Brain Res. 2004; 154: 1‒10. 24)Sailer A, Molnar GF, et al.: Effects of peripheral sensory input on cortical inhibition in humans. J Physiol. 2002; 544: 617‒629. 25)Sanger TD, Garg RR, et al.: Interactions between two different inhibitory systems in the human motor cortex. J Physiol. 2001; 530: 307‒317. 26)Zittel S, Bäumer T, et al.: Modulation of intracortical facilitatory circuits of the human primary motor cortex by digital nerve stimulation. Exp Brain Res. 2007; 176: 425‒431. 27)Nitsche MA, Seeber A, et al.: Modulating parameters of excitability during and after transcranial direct current stimulation of the human motor cortex. J Physiol. 2005; 568: 291‒303. 28)Udupa K, Ni Z, et al.: Interactions between short latency afferent inhibition and long interval intracortical inhibition. Exp Brain Res. 2009; 199: 177‒183..

(8) 求心性抑制が二連発磁気刺激による皮質内興奮性に及ぼす影響. 〈Abstract〉. The Effects of Afferent Inhibition using Electrical Stimulation on Short-interval Intracortical Inhibition and Intracortical Facilitation. Sho KOJIMA, PT, MS, Shota MIYAGUCHI, PT, MS, Shinichi KOTAN, PT, Hikari KIRIMOTO, OT, PhD, Hiroyuki TAMAKI, PhD, Hideaki ONISHI, PT, PhD Niigata University of Health and Welfare Institute for Human Movement and Medical Sciences Sho KOJIMA, PT, MS Tokyo Bay Rehabilitation Hospital Sho KOJIMA, PT, MS, Shota MIYAGUCHI, PT, MS, Shinichi KOTAN, PT Graduate School of Niigata University of Health and Welfare Shota MIYAGUCHI, PT, MS Nakajo Central Hospital. Purpose: To investigate the effects of afferent inhibition (AI) using electrical stimulation on shortinterval intracortical inhibition (SICI) and intracortical facilitation (ICF) in the brain. Methods: Twelve healthy individuals participated in this study. The motor evoked potentials (MEPs) were measured using nine stimulation conditions: two paired-pulse transcranial magnetic stimulations (TMSs), SICI and ICF; two AI stimulations, short-latency AI (SAI) and long-latency AI (LAI); a combination of these stimulations; and single TMS. The amplitudes of MEPs elicited by each paired stimulation were compared with that elicited by single TMS. Results: The SAI did not affect SICI and ICF. On the other hand, LAI did not influence SICI, but it attenuated ICF. Conclusion: LAI affects the facilitation circuit of the brain cortex. Key Words: Electrical stimulation, Afferent inhibition, Short-interval intracortical inhibition, Intracortical facilitation. 89.

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図 3 実験 2 で得られた平均 MEP 振幅値および MEP ratio の比較

参照

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