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ゲインスケジューリングによる電気油圧

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ゲインスケジューリングによる電気油圧 サーボシステムの制御設計に関する研究

Study on Control Design for Electro-hydraulic Servosystem by Gain Scheduling

2003 年3月

杉山 高洋

(2)
(3)

ゲインスケジューリングによる電気油圧 サーボシステムの制御設計に関する研究

Study on Control Design for Electro-hydraulic Servosystem by Gain Scheduling

2003 年3月

   

早稲田大学大学院理工学研究科

   

電気工学専攻  アドバンストコントロール研究

杉山 高洋

(4)

目 次

1章 序論 1

1.1 本研究の背景 . . . . 1

1.2 従来の研究 . . . . 2

1.3 本研究の目的 . . . . 6

1.4 論文の構成 . . . . 8

2章 スケジューリングパラメータの最大変化率を考慮したゲインスケジュー リング 10 2.1 制御対象のLPVシステム表現 . . . . 10

2.2 一般化プラントと出力フィードバック制御問題. . . . 13

2.3 ゲインスケジュールド制御器設計 . . . . 14

2.3.1 線形行列不等式の可解条件 . . . . 14

2.3.2 制御器パラメータの算出 . . . . 20

3章 超磁歪材アクチュエータの位置制御系設計 24 3.1 超磁歪材アクチュエータの構成と制御系構成の目的 . . . . 24

3.2 制御対象の記述 . . . . 26

3.2.1 システム同定 . . . . 26

3.2.2 連続時間系モデルへの変換手順とLPVシステム . . . . 29

3.3 設計仕様と一般化プラントの構成 . . . . 33

3.4 可解条件の検証と制御器 . . . . 34

3.5 シミュレーションと実験結果 . . . . 36

4章 射出成形機における速度と推力制御系の設計 43 4.1 射出成形機に用いられるサーボシステムの概要. . . . 44

(5)

4.2 主な記号と諸元 . . . . 45

4.3 制御対象の関係式 . . . . 47

4.3.1 流量補間式 . . . . 47

4.3.2 圧力変化と推力の関係式 . . . . 49

4.3.3 非線形システム表現 . . . . 50

4.4 線形化と状態空間表現 . . . . 53

4.5 推力に依存するスケジューリングパラメータ . . . . 55

4.6 LPVシステム表現 . . . . 56

4.6.1 LPVシステム構成手順 . . . . 56

4.6.2 速度制御対象 . . . . 57

4.6.3 推力制御対象 . . . . 62

4.7 閉ループ系設計仕様と一般化プラントの構成 . . . . 67

4.8 シミュレーションと実機試験結果 . . . . 71

5章 射出成形機における速度から推力制御への切換え手法への応用 76 5.1 従来の手法と問題点 . . . . 76

5.2 ゲインスケジュールド制御器を用いる切換え手法 . . . . 77

5.3 実機試験結果 . . . . 79

6章 射出成形機におけるむだ時間を考慮した制御器設計 80 6.1 むだ時間を不確かさとして取り扱うための周波数重み関数 . . . . 80

6.2 一般化プラントの再構築と制御特性改善の重み関数 . . . . 82

6.2.1 速度制御の一般化プラント . . . . 82

6.2.2 推力制御の一般化プラント . . . . 86

6.3 シミュレーションと実機試験結果 . . . . 91

7章 結論 99 7.1 本研究による成果 . . . . 99

7.2 今後の課題 . . . . 101

参考文献 104

謝辞 109

(6)

研究業績一覧 110

(7)

1 章 序論

1.1 本研究の背景

産業機械には安定した動作と高い再現性が求められ,様々な外乱のもとでこのよう な機械特性を実現することに制御技術への期待と要請がある. 電気油圧サーボシス テムには多くの非線形性と不確かさが存在するにもかかわらず, 高出力, 高応答, 再 現性が良いなどの特徴を持つことから,一般産業機械および航空宇宙機器の位置や速 度, あるいは推力の制御に従来より用いられている. 電気油圧サーボシステムの非 線形性として, 油圧シリンダ面積の非対称性や摺動摩擦, 各種構成機器に内在するヒ ステリシス, 不感帯とバックラッシュ, 制御弁の負荷流量特性などが挙げられる. 流 体の粘性,体積弾性係数, 流路形状などは不確かさを生じる代表的な要因である. こ れまでは, これら要因が閉ループ系へ与える影響は十分小く,無視できるものとされ てきたことから, 調整が容易で閉ループ系の安定性と追従性を実現しやすいPID, あ るいはPIDと付加的な補償要素による制御器構成が広く採用されている.

このような制御器パラメータを固定するタイプの制御手法によれば,閉ループ系の 特性は機械的な設計マージンに大きく依存する.今日の社会的要請である省資源, 省 エネルギー化を踏まえた機械設計においては,設計マージンが厳しく見直される.よっ て,従来の制御器設計手法を踏襲していては閉ループ系の特性低下が避けられない.

近年の線形システム制御理論の発達は,モデル化誤差を考慮するロバスト安定やロ バスト性能を扱い, 適用範疇を著しく広げている. これまでにも, 電気油圧サーボシ ステムの制御器設計にHや構造化特異値の枠組みによるロバスト制御適用の研究 が盛んに行われている. 動作点近傍の線形モデルに基づく制御器は局所的な安定性 と性能を保証するが,制御対象のパラメータが比較的大きく変動するような場合, 制 御性能の劣化を招くことから適用の限界がある. また, 産業機械の高機能化, 高性能 化が常に求められている. 電気油圧サーボシステムが持つ高い追従性を活かしなが ら,従来の制御手法では達成し難かった制御性能の領域へ踏み込むために,制御理論

(8)

第1章 序論

の発展と共に柔軟に制御器の構造やパラメータが更新できる簡素な構造の制御器設 計手法が求められている.

1.2 従来の研究

電気油圧サーボシステムには多くの非線形性や不確かさが存在するが, 前節で述 べた利点からこれまでにも制御器設計について多くの研究が行われている.最近の 研究においては, 制御対象の変動や不確かさに対して適応制御や ロバスト制御が用 いられ, 非線形性を含むプラントとして扱う場合ではスライディングモード制御の 適用が行われている.また,数は少ないが非線形制御器の検討やモーションコントー ルの手法を採用している研究がある. 以下でこれら研究の概要を述べる.

制御対象の負荷力や質量, 供給圧力変動を想定した適応制御の例にはPlummer[13]

, Bobrow[3]や武藤[37]の研究がある. Plummer等は パラメータ推定に固定忘却係 数と固定トレース法を導入すると同時に推定条件が悪い場合パラメータ更新を行わ ないなどの工夫をし, 供給圧力や配管内体積を変えて制御特性を調べている.制御 器の構造は, 推定パラメータを用い極配置を行うSTR(Self Tuning Regurator)であ る. STR型適応制御では,安定化のため付加的なフィルタの挿入やパラメータ更新を 行うか否かの判断をする必要があるなど課題が残っている.Bobrow等は 推定した 制御対象パラメータから離散時間リカッチ方程式を解き全状態フィードバック制御 を行っている. 同時に制御対象モデルの逆システムを使うフィードフォワードによ り追従性の改善を図っている.武藤等は ファジィ推論を用いて適応制御器を構成し ている. ステップ応答の立ち上がり時間,オーバーシュート量, 収束の度合いを測定 し ファジィ推論により制御器パラメータを更新する手法を用いることにより,制御 対象のパラメータ変動に対して自己調整する制御器を提案している.しかし,調整は オフライン処理で行うため, 制御対象の変動に対する修正に遅れを生じる問題があ る. 電気油圧サーボシステムにおける適応制御には, 系の安定性と追従性に問題が 残っている.

制御性能の改善を目的として,予見制御の適用が村岸等[38]により研究されてい る.予見ステップ数を考慮して操作量と状態の一階差分値から定める評価関数を最小 化する最適レギュレータの拡張として定式化している. この手法により積分器と状 態フィードバックで構成される閉ループ系へフィードフォワードを加え制御系を構

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第1章 序論

成している. 操作量を定めるためにサンプリング時間毎にレギュレータ問題を解く 必要があり,フィードフォワードに用いられるフィルター次数が予見ステップ数と同 じになるなど演算時間の問題がある.制御結果からは,ランプ信号に対する定常偏差 が零へ収束する反面,ステップ目標信号に対して応答特性の改善が見られず, フィー ドフォワードにより時間軸がシフトする結果が示されている.

スライディングモード制御は, 閉ループ系の挙動が切換え面の特性により支配さ れ,パラメータ変動や外乱に強いロバスト性が期待できることから, 電気油圧サーボ システムへの適用が武市[32],佐藤[31]により研究されている. 佐藤は,油圧モータの 速度制御にスライディングモードを用いている. 圧力応答は,速度や位置の応答に比 べ速く, 操作量に発生するチャタリングは系に圧力振動として顕著に表れる. チャタ リングの影響を低減することと,閉ループ系の応答性はトレードオフの関係となって いる.武市等は構成機器の変動やシリンダ摺動部の摩擦などによりスライディング モードが阻害され定常偏差が表れる現象に注目し, 外乱オブザーバを併用すること で改善を試みている. そこでは チャタリングの低減に有効とされる離散時間設計法 へ外乱オブザーバを取り入れている.ただし, 非対称な面積を持つシリンダでは, ピ ストン変位の向きが切換わる時点でチャタリングが発生している.

Garret等は 推力に注目して電気油圧サーボシステムへ非線形制御器の設計を行っ

ている[7].操作量を推力偏差, 推力目標信号の一回微分信号と推力変化に寄与する 流量およびシリンダ速度から算出する方法を提案し, 大きな慣性負荷を持つ位置制 御系へ適用し良い結果を得ている. ただし位置のプロファイルに従い推力目標信号を 発生させる必要があり, 摩擦の影響を受けるので補償を加える必要があることから 複雑な制御器となる.動作プロファイルに従う目標信号を発生する手法として, モー ションコントロールのアプローチに近いKim等の研究がある[8]. 制御対象において, 推力から被制御量までに主な非線形要素が存在するものとし,力制御系を構成した上 で外側に位置閉ループ系を構成する方法を提案している.位置閉ループ系の目標信 号と制御対象の状態から推力目標信号を発生し, 内部力制御系へ指令信号として与 える構成となっている.ここでも制御器が複雑になること,制御対象の変動に対する 考察は行われていない.

電気油圧サーボシステムの制御器設計に用いられる手法の一つに, H の枠組み によるロバスト制御がある.Tunay等は 閉ループ系の特性改善を目的に,圧力マイ ナーループで局所的な線形化を図った上で操作量に制約を付けロバスト制御器を設

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第1章 序論

計している[19]. しかし,動作点近傍の線形モデルに基づく制御器設計によれば局所 的な安定性と性能が保証されるが, 制御対象のパラメータが比較的大きく変動する 場合には適用の限界がある.

一方,中村等は外乱オブザーバ, H制御,スライディングモード制御を同一位置制 御へ適用し,ロバスト性,被制御量の挙動,外乱抑圧特性を比較検討している[34, 35].制 御対象の変動として負荷変動, 作動油温度変化,供給圧力変化を扱い体系的な評価を 行っている.しかしながら, ノミナルな制御対象に対する制御器の働きを評価してい るものであること.また,位置閉ループ系のステップ応答が1秒程度と比較的遅い対 象を扱っていること.ノミナル制御対象モデルを二次の伝達関数で表現しており, 電 気油圧サーボシステムが持つ高い追従性を狙った閉ループ系の挙動を評価するには 問題が残る.

このように数多くの制御器設計手法が提案されている. これら手法によればパラ メータ変動や負荷力変動が制御特性へ与える影響を低減することが示されている が, 制御器の構造が複雑になること, 安定性とのトレードオフの結果, 速度や力制御 における電気油圧サーボ系の持つ滑らかで高い追従性が損なわれるなどの問題が残っ ている.

近年,非線形性を有する実プラントに対する実用的な制御手法として,スケジューリ ングパラメータに依存する制御対象表現[17, 18]を用いるゲインスケジューリングが研 究され,様々な制御対象への適用が試みられている. 制御器設計のアプローチは 大き く二つに分けられる.一つは Rugh[14, 15]等のアプローチで,他の一つは Gahinet[1, 5], Packard[12, 2],渡辺[20]等のアプローチである. Rugh等のアプローチは, いくつかの点 でパラメータを固定し制御対象を線形時不変システムとする. これら複数の制御対 象それぞれに制御器を設計する.その後,これら制御器をスケジューリングするもの である. 後者のアプローチは 2次安定化条件に帰着させるもので, スケジューリン グパラメータを固定するごとにH制御問題となり, ロバスト性を考慮する制御器 設計法を適用できる[25]. これまでにも多くの研究が行われており,いくつかは次の ようなものである.

Nichols等は, 航空機のフライト制御にゲインスケジューリングを適用する研究を

行っている[11].観測可能な加速度の関数である迎角近似関数とマッハ数に依存する スケジューリングパラメータ用いて制御対象を表現している.制御器設計上重要と 考えられる4つの動作点を設定し,それぞれの状態に対するロバスト制御器を設計し

(11)

第1章 序論

た上で,これら制御器の出力を補間し操作量としている.Corriga[4]等は 搬送物を吊 り下げたクレーンを時変系モデルとして解析している.吊り下げロープの長さをスケ ジューリングパラメータにとり,状態と操作量による2次評価関数を最小化する状態 フィードバック制御器をパラメータを固定(凍結法)して設計している. また,小野 等は車速に従うスケジューリングパラメータを用いて制御対象モデルを表した後,ロ バスト制御設計に極配置拘束条件を付けて各スケジューリングパラメータに対応す る制御器を求めている[27]. そこでは,ロバスト安定性をスピン防止と結びつけた研 究がなされている. 弓場[39]は電動パワーステアリング駆動系設計へ, 土岐等[33]は 片持送水管の安定化へゲインスケジューリングを適用している. ここまでに述べた 方法では,ノミナル制御対象に対するパラメータ変動の端点における複数の制御器出 力を求め, これらを適当な比率で足し合わせるスケジューリングを行っている.

これまでの多くの研究例では,パラメータ変動領域の端点で制御対象を囲み,端点 に対する制御器を設計する方法が採用されている. これら制御器の出力を線形補間 したり, 何らかのスケジューリングを行い操作量を算出している. 従って, どのよう に補間やスケジューリングを行うかという課題が主要な研究テーマとなっている.

さて,電気油圧サーボシステムに対するゲインスケジューリングの研究は少なく,近 年の研究としてFialho等のアクティブサスペンションに関するものがある[9]. ここ では搭乗者に働く垂直方向の加速度を低減するため,油圧シリンダを推力発生装置と 使用している. 平坦な道を走行する場合は, 路面状態の変化に対応できるよう, シリ ンダの可動範囲が最大となる中立点付近で動作させる必要がある. 悪路の場合, 所 定推力を発生するまで変位する. ただし,ボトミングを防ぐ目的から可動範囲には制 約がある.路面状況とシリンダ変位量に依存するスケジューリングパラメータを提案 し, H制御問題の一般化プラントへスケジューリングパラメータに依存する重み関 数を挿入している. そこでは,搭乗者に働く加速度の低減とシリンダ変位量を最小化 する制御器設計という合い反する制御特性をトレードオフする手法を試みている.こ れはゲインスケジューリングの新しい応用を示すもので興味深い.ただし,制御器算 出にあたり動作領域を格子状に分割し, 各格子点に対応する制御器を求めて線形補 間する方法を採用している点では上に述べた手法と同様である.

(12)

第1章 序論

1.3 本研究の目的

前述のように, ここで扱う制御対象 には多くの非線形性と不確かさが存在 する.本研究では主に負荷力変動に起因 する閉ループ系の特性変化について検 討し,これを低減する制御器設計手法を 提案する.これにより,従来の制御手法 では達成が難しかった追従性と目標値 への速やかな収束を実現することを目 的とする.右図1.1に従来のPI制御に よる速度制御結果を示す.速度目標値が 15cm/sから30cm/sへ速くなるに伴い 負荷力が増加する.このため右図のよ うに応答特性に差が生じる.

図 1.1: PI制御による速度応答

制御弁の出力流量は負荷力変動に対し非線形な特性を持っている.従来は負荷力 変動が単に入出力ゲインを変えるものと考えられ,制御対象の動的な変動要因とは考 えられてこなかった.本研究では制御対象の特性を明確に捉えるため, 推力に依存す るスケジューリングパラメータを導入する.そして制御対象をスケジューリングパラ メータの関数としてLPV(Linear Parameter-varying)システムとして表現する. 本 研究では,制御対象がスケジューリングパラメータ依存の行列多項式を持つ状態方程 式で記述される.この制御対象モデルは,スケジューリングパラメータを固定するご とに一つの時不変線形システムを表す.このような記述を用いることにより,電気油 圧サーボシステムの制御対象モデルが負荷力変動によりどのような影響を受けるか 把握できるようになる. その上で比較的大きなパラメータ変動に対して閉ループ系 の安定性と性能を保証することをねらい, スケジューリングパラメータに依存する ゲインスケジューリング制御を検討する.

本制御対象における負荷力変動は, 系を駆動する推力を観測することで知ること ができる. 一方, LPVモデルを作成するには, 動作領域全体に渡る連続な関係式が必 要となる. しかし既知の流量関係式によれば,推力や圧力の制御で重要となる制御弁 中立点付近の流量特性が不連続となる問題がある. 中立点付近の流量特性を解析す

(13)

第1章 序論

る上でクリアランスと重合度を考慮する渡辺等の研究[42]がある.しかし連続な制御 対象モデルを求める目的からは,流量の変化率も連続となるような補間式が必要とな る. 本研究では境界領域において流量, および流量の変化量が連続となる補間式を 提案し, 動作領域全体にわたり連続なモデル表現を与える.

線形システムのモデル化誤差と閉ループ系のノミナル性能を達成する制御器設計手 法としてH制御が知られている.本研究においてもH制御問題の枠組みを用いる ことから, スケジューリングパラメータに依存する一般化プラントを構成する.一般 化プラントに対するLMI制約問題の安定化解を求めることにより,制御器パラメータ を算出する. 本研究では,制御器設計問題が可解となるための制約条件をスケジュー リングパラメータの最大変化率を考慮する行列不等式条件で記述する. この制約条 件をH制御器設計に表れる2本のリカッチ方程式に対応する線形行列不等式へと 変換し安定化解を求める. この解を用いる出力フィードバック制御器の算出も, H 制御における研究成果を踏まえた方法を提案している.この点において, 提案する 手法は一般性を持った制御器設計となっており, 様々な制御対象への展開が可能で ある.

線形行列不等式は,数値計算により解くことができる.しかし,線形行列不等式の 解はしばしば保守性を持つので,これを小さくするための工夫が必要となる.本研究 では, 制御対象を効率良く包む凸多面体の構成法を採用する. また,線形行列不等式 の安定化解をスケジューリングパラメータの多項式として扱い,保守性の低減を図っ ている.さらに解の保守性低減と閉ループ系の安定化を狙い,スケジューリングパラ メータの最大変化率を考慮する設計法を与えている.これは本研究の一つの特徴で あり, 実機制御時にスケジューリングパラメータが想定した最大変化率を超えるこ とが無ければ安定性が保証されることから, 変化率情報を必要としない簡素な制御 器となる.このような制御器構成により, 制御対象が持つ高い追従性を損なうこと なく, 閉ループ系に対する負荷力変動の影響を低減する新しい制御器設計を開発す ることが本研究の目的である. 本手法を電気油圧サーボシステムに用いられる制御 弁の特性改善と電気油圧サーボ系における速度及び推力の制御に用い有効性を調べ る. 実制御対として射出成形機を使用し,射出シリンダの速度と推力のゲインスケ ジュールド制御器を設計し,シミュレーション結果と実機制御結果から本設計手法の 有用性を示す.

(14)

第1章 序論

1.4 論文の構成

第1章序論では, 本研究の背景と従来の研究を概観する. それらを踏まえ, 本研究 の目的を明らかにし,本論文構成を述べる.

第2章では,制御器設計に必要な幾つかの定義を行い,スケジューリングパラメータ に依存するLPVシステムの表現を与える.この表現を用いて,モデル化誤差と閉ルー プ系の仕様を反映する一般化プラントに対するH制御問題をスケジューリングパ ラメータの最大変化率を考慮する線形行列不等式条件へ帰着する手法を提案する.ま た,線形行列不等式の安定化解から,出力フィードバックによるゲインスケジュール ド制御器の算出法を示す.

第3章では, 2章で述べた手法を適用して, 電気油圧サーボシステムに用いられ る制御弁の特性改善を行う. 超磁歪材は, 磁界中で歪む性質を持ち高駆動出力, 高応 答,耐環境性に優れ, 歪み率は圧電素子より一桁程度大きい.制御対象の出力は, コイ ル内側に設置された超磁歪材の歪でコイル電流により制御する. コイルで作られる 磁界中に超磁歪材を設置するだけなので, 電気部と機械構造部を分離した簡潔な構 造にできる利点がある.しかし, 入力電流が小さくなるに従い, ヒステリシスループ の内側で歪量が著しく減少し不感帯が生じる問題がある. 制御対象モデルは物理的 な関係式から求め難いので, 信号の大きさを幾通りに変えて同定実験を行い,入力信 号の大きさに依存するLPVシステムとして表す. この制御対象の入出力特性を直線 化し, かつ分解能を改善するためにゲインスケジュールド制御器を設計する.

第4章では,射出成形機における速度と推力ゲインスケジューリング制御について 述べる. まず, 射出成形機の概要と速度・推力制御適用の目的を説明し, 主な記号と 諸元を示す. 電気油圧サーボシステムに用いられる制御弁の流量計算式として乱流 流れと層流流れに対応するものが知られている.しかし,これら二つの式は境界で不 連続となり, これまでは動作領域全体にわたる連続な制御対象モデルが求められな かった.本研究では流量補間式を提案し,動作域全体にわたる連続なモデルを求めて いる.また,この式を用いることにより制御対象の圧力変化がより現実に近く表現で きる.一方,本制御対象のダイナミック行列要素の幾つかは動作状態に従い変動する ので, 機械的仕様からこれらの値を決めることができない. また, 線形化モデルは陰 関数となり, 関係式から平衡点を直接求めることが難しい. そこで, シミュレーショ ンから平衡状態に近い状態量を算出する. 既に求めた非線形モデルに対してPI制御

(15)

第1章 序論

により閉ループ系を構成する. 閉ループ系の応答性を考慮してランプ信号の傾きを 決め,速度あるいは推力の定格値に至るまで目標値を増加する.そのときの各状態量 を記録する.この状態量を用い,次の手順でLPVシステム表現を求める. スケジュー リングパラメータを負荷力の関数として定義し, 定義式と記録した状態量からスケ ジューリングパラメータとダイナミック行列の要素を算出する.スケジューリングパ ラメータを横軸,要素の値を縦軸にとり対応する点をプロットした後, それらを多項 式で近似してLPVシステムを得る. 制御器設計の段階では, 閉ループ系に要求され る仕様から一般化プラントの重み関数を定める. 2章で述べた手法に従い速度と推 力のゲインスケジュールド制御器を算出し,シミュレーションにより閉ループ系の安 定性と挙動を確認した上で実機の制御へ適用し結果を示す.

第5章では,第4章で求めた速度と推力のゲインスケジュールド制御器を用い, 速 度制御から推力制御へ切換える時の挙動を滑らかにする手法を提案する. 従来,速度 制御中には推力制御器出力を速度制御の操作量に追従させるような機構を設け, 切 換え時点における操作量の不連続性を低減する方法が用いられてきた. しかし切換 え後, 速度の挙動は制御できないことから短時間ではあるが逆向きに大きな速度が 発生することがある.このような問題に対し,これまでの制御手法には調整要素が無 く, もっぱら切換え条件の変更で対応している. ここでは, 切換え開始から推力目標 値へ移行するまでの過渡的な状態にある推力追従性と滑らかな速度の挙動を実現す るため, 速度と推力ゲインスケジュールド制御器出力を適当な比で加え合わせ,切換 え状態における操作量を発生する手法を用いている.

第6章では, むだ時間を考慮した設計を行い, 制御性能の改善を行う. 4章の設計 では, 速度制御の実験結果には大きなオーバーシュートが発生している. また, むだ 時間を考慮することで推力の制御性能の改善も期待される. むだ時間の大きさは, 非 線形モデルへむだ時間要素を加え,実機試験結果を良く再現する値として定め,むだ 時間を制御対象のモデル化誤差として, 一般化プラントへ重み関数として加える. 再 設計した速度制御器により, 速度制御時のオーバーシュートが低減されることを実 験結果より示す. 推力制御器の設計では,むだ時間の考慮と共にロバスト性能を達成 する手法である構造化特異値設計で用いられるDKイタレーションにより, 閉ルー プ系追従性能改善のための重みを求め一般化プラントへ加える. このようにして得 た推力制御器により,追従特性が改善されることを示す.

第7章では, 本件による成果と今後の研究課題を述べる.

(16)

2 章 スケジューリングパラメータの 最大変化率を考慮したゲインス ケジューリング

機械の動作状態に従い制御対象のパラメータが変動するような場合, 一つの動作点 に基づいた制御器を用いるだけでは全動作範囲に渡り所定の制御性を実現すること が難しい. この問題に対し複数の動作点に対する制御器を設計し, これらを切換える スケジューリングが従来から採用されている. しかし, 動作点間の挙動や切換え時に おける安定性の保証や制御特性については直接扱うことができない.

一方, 制御対象をスケジューリングパラメータに依存する線形系で記述するLPV (Linear Parameter-varying)システム表現がShamma等[17, 18]により提案されてい る. これによれば,スケジューリングパラメータを固定するごとに制御対象を線形シ ステムとして扱うことができる. ここでは, 制御対象の変動をとらえるスケジュー リングパラメータにより制御器のパラメータを変更するゲインスケージューリング 制御器の設計法を述べる.

2.1 制御対象の LPV システム表現

スケジューリングパラメータが制御対象の内部信号に依存するか, あるいは外部 信号に依存するかにより2通りの記述がある.外部信号に依存する場合, LPVシス テムは時変システムの一つのクラスを表すと考えられる.しかし,スケジューリング パラメータの値は現時点で与えられるため, 一般の時変システムとは本質的に異な るものとなる.他方,内部信号に依存する場合, LPVシステムは非線形システムの一 つのクラスを表すものと考えられる[22]. 本研究では二つの制御対象, 超磁歪材アク チュエータと電気油圧サーボシステムに対し内部信号に基づくスケジューリングパ

(17)

第2章 θの最大変化率を考慮したゲインスケジューリング

ラメータを用いることから, 次のようなLPVシステムを考える.

ΣLx(t)) :

˙

xl(t) = Alx(t))xl(t) +Blx(t))u(t), xl(0) = 0 y(t) =Clx(t))xl(t) +Dlx(t))u(t)

(2.1) ここで, xl(t) Rnlは制御対象の状態, u(t) Rmは操作量, y(t) Rp は観測量で ある.

以下では,制御対象を非線形システムとして幾つかの定義を行う. 実ベクトルxに 対して xはユークリッドノルム(xTx)12 を表し, また時間 t [0, )で定義され る時間関数ベクトル x(t)の二乗積分が有限確定する時,すなわち

x2 =

0 x(t)2dt

1

2

L2ノルムと呼びx∈L2と表記する.

定義 2.1 正定値, 負定値[29]

V(x, t)はRn×Rの領域

M :x< K, K >0, α < t < β

で定義された実数値をとる連続微分可能な関数とする. x< Kで定義されたxの 実数値連続関数η(x)

η(0) = 0, η(x)>0(x= 0)

であるようなものが存在して, つねに V(x, t)≥η(x)

が成立するとき V(x, t)は正定値であるという. また −V(x, t)が正定値であると き V(x, t)は負定値という.

定義 2.2 正定, 負定[46]

Q(t)Rの領域α < t < βで定義されRn×nに値をとる連続微分可能な関数とす る. このとき

V(x, t) =xQ(t)x, (x, t)∈M

で定義された関数V(x, t)が正定値のとき, Q(t)は正定であるといい, つぎのように 表現する.

Q(t)>0

(18)

第2章 θの最大変化率を考慮したゲインスケジューリング

定義 2.3  漸近安定

システム2.1において, 操作量u(t)u(t)≡0である初期値応答を考える. すなわち,

˙

xl(t) =Alx(t))xl(t) (2.2)

平衡点 xl = 0を含む領域Mの任意の点から出発するシステム2.2の軌跡が平衡点 へ収束するとき, システム2.2の平衡点 xl= 0は領域Mで漸近安定であるという.

定義 2.4  内部安定

システム2.1が内部安定とは, システム2.2の平衡点 xl = 0が平衡点を含む領域M で漸近安定であるときをいう.

さて, システム2.2の平衡点xl = 0の安定判別において,リアプノフの第2の方法に 基づいた判別法として,

定理 2.1 [10] xl = 0を含む領域Mにおきて, つぎの性質を持つリアプノフ関数V(x) が存在するとき, システム2.2の平衡点 xl= 0は領域Mで漸近安定である.

V(0) = 0

xl= 0以外のMにおいて, V(xl(t))>0 xl= 0以外のMにおいて, d

dtV(xl(t))<0

ただし, dtdV(xl(t))<0はシステム2.2の解軌跡に沿ったV(xl(t))の時間微分を表す.

以後, スケジューリングパラメータθx(t)を表記上の簡潔さから, 単にθと記述する ことにする.

(19)

第2章 θの最大変化率を考慮したゲインスケジューリング

2.2 一般化プラントと出力フィードバック制御問題

定義 2.5  一般化プラント

制御器設計のため, 制御対象LPVシステムへ設計仕様を表す重み関数を加え, オン ラインで入手可能なスケジューリングパラメータθを持つ一般化プラント ΣG(θ)の 状態変数表現を

ΣG(θ) :

˙

x(t) =A(θ)x(t) +B1(θ)w(t) +B2(θ)u(t) z(t) = C1(θ)x(t) +D11(θ)w(t) +D12(θ)u(t) y(t) =C2(θ)x(t) +D21(θ)w(t)

(2.3)

で表す. ここでx(t)∈Rnは一般化プラントの状態, w(t)∈Rwは外乱入力, z(t)∈ Rzは被制御量である. また, 状態空間表現式(2.3)の行列は θp次多項式で記述 される連続な関数を考える.

A(θ) =

p i=0

Ai θi, B1(θ) =

p i=0

B1,i θi, B2(θ) =

p i=0

B2,i θi C1(θ) =

p i=0

C1,i θi, D11(θ) =

p i=0

D11,i θi, D12(θ) =

p i=0

D12,i θi C2(θ) =

p i=0

C2,i θi, D21(θ) =

p i=0

D21,i θi, D22(θ) =

p i=0

D22,i θi (2.4) 定義 2.6  ゲインスケジューリング制御器

一般化プラント ΣG(θ)は, スケジューリングパラメータ θを固定すると1つの線 形システムとなるので, この線形システムを制御するため θに依存して決まる出力 フィードバック制御器を考えることにする. この制御器の状態変数表現を

ΣK(θ) :

˙

xK(t) =AK(θ)xK(t) +BK(θ)y(t), xK(0) = 0 u(t) = CK(θ)xK(t) +DK(θ)y(t)

(2.5)

で表す.

定義 2.7L2ゲイン

システム2.3と出力フィードバック制御器2.5で構成される閉ループ系が内部安定の とき, 外乱入力 w(t)から被制御量 z(t)までの L2ゲインGをつぎのように定義する.

G= sup

wL2∩W,w=0

zL2

wL2

(20)

第2章 θの最大変化率を考慮したゲインスケジューリング

これより, 本研究におけるゲインスケジュールド制御器設計問題は

閉ループ系を内部安定

外乱w(t)から被制御出力 z(t)までの準大域的な L2ゲインが,スケジューリング パラメータ θの変動領域と零初期状態に対して, その上限をある正の実数 γ以下 となることを保証する出力フィードッバク制御器ΣKを求めるものでる. また本研 究では A(θ)AK(θ)の次元が同じ,フルオーダ出力フィードバック制御器を考える.

2.3 ゲインスケジュールド制御器設計

2.3.1 線形行列不等式の可解条件

一般化プラント(2.3)へ式(2.5)の出力フィードバック制御器を用いて構成される 閉ループ系において,外部入力 wから被制御量zまでの伝達関数は

Σcl(θ) : FG,ΣK) = Dcl(θ) +Ccl(θ)(sI −Acl(θ))−1Bcl(θ) (2.6) と書くことができ, それぞれ

Acl(θ) =

A(θ) +B2(θ)DK(θ)C2(θ) B2(θ)CK(θ) BK(θ)C2(θ) AK(θ)

Bcl(θ) =

B1(θ) +B2(θ)DK(θ)D21(θ) BK(θ)D21(θ)

Ccl(θ) = (C1(θ) +C12(θ)DK(θ)C2(θ), D12(θ)CK(θ)) Dcl(θ) =D11(θ) +D12(θ)DK(θ)D21(θ)

(2.7)

である. さらにここでは, 次のようなスケジューリングパラメータ θの集合 Θを考 える.

仮定1 スケジュリングパラメータはつぎの3式 1. θ∈min, θmax] , ∀t∈ [0, )

2. θ∈ C1

3. ˙| ≤ vmax, ∀t [0, )

を満たすものとする[43, 44]. 仮定1の 1.はスケジュリングパラメータの範囲が既知 であること. 2.3.L2ゲイン性能に基づくコントローラ設計に必要な条件で あり, 3.は制御器の保守性を改善するためにスケジューリングパラメータの変化率

(21)

第2章 θの最大変化率を考慮したゲインスケジューリング

についてその最大値が既知であることを要求している.このような準備のもとに, 閉

ループ系(2.6)の漸近安定性と外部入力 wから被制御量 zまでの L2ゲインが γ

下となることを保証する次の定理が知られている.

定理 2.2 連続微分可能な対称行列関数 Qcl(θ)∈Rn×nで次の条件を満たすものが存 在したとする.

1) Qcl(θ)>0 2) dQcl(θ)0

3) Acl(θ)Qcl(θ) +Qcl(θ)Acl(θ) +Ccl (θ)Ccl(θ)−vmaxdQcl(θ) + (Qcl(θ)Bcl(θ) +Ccl (θ)Dcl(θ))(γ2−Dcl (θ)Dcl(θ))−1

×(Qcl(θ)Bcl(θ) +Ccl (θ)Dcl(θ)) <0

(2.8)

ただし,ここではγ2I−Dcl (θ)Dcl(θ)>0 である. このとき閉ループシステムは漸近 安定であり,かつ FG,ΣK)≤γ (0< γ) を満たす.

証明は文献[45]参照.

定義2.4により, 上の定理2.2は閉ループ系の内部安定も保証している.定理2.2から 次の系が導かれる.

1 一般化プラント(2.3)を考え, 仮定1が成立するものとする. この時,閉ループ 系を内部安定化し, かつ FG, ΣK)≤γ を満たす制御器が存在するためには, 次の 4つの不等式を満たす対称行列関数 X(θ)および Y(θ)が存在することである.

AY(θ) +Y(θ)A+C2(θ)KB+KB C2(θ)−vmax

dY(θ) +

Y(θ)B+KB D21(θ) C

−1 cl

(Y(θ)B+KB D21(θ)) C

<0 (2.9)

X(θ)A+AX(θ) +B2(θ)KC + (B2(θ)KC) +vmaxdX(θ) +

B (CX(θ) +D12(θ)KC)

−1 cl

B

CX +D12(θ)KC

<0 (2.10)

Y(θ) I I X(θ)

>0 (2.11)

(22)

第2章 θの最大変化率を考慮したゲインスケジューリング

dY(θ)

−X−1(θ)dX(θ)

−dX(θ)

X−1(θ) −dX(θ)

0 (2.12)

ただし,

A:=A(θ) +B2(θ)DK(θ)C2(θ), B :=B1(θ) +B2(θ)DK(θ)D21(θ) C :=C1(θ) +D12(θ)DK(θ)C2(θ)

cl :=

γI −Dcl(θ)

−Dcl(θ) γI

(2.13)

である.

定理2.2を以下のように2つの安定化解 X(θ)Y(θ)を求める制約条件へと変形す ることにより系1が得られる. Schur Complementより式(2.8)-3は,

Acl(θ)Qcl(θ) +Qcl(θ)Acl(θ) +Ccl (θ)Ccl(θ)−vmaxdQcl(θ)

Qcl(θ)Bcl(θ) +Ccl (θ)Dcl(θ) (Qcl(θ)Bcl(θ) +Ccl (θ)Dcl(θ)) −γ2I+Dcl(θ)Dcl(θ)

=

Acl(θ)Qcl(θ) +Qcl(θ)Acl(θ)−vmaxdQcl(θ)

Qcl(θ)Bcl(θ) (Qcl(θ)Bcl(θ)) −γ2I

+

Ccl (θ) Dcl(θ)

Ccl (θ)Dcl (θ)

<0 (2.14) いま, 0< γなので

Acl(θ)Qcl(θ)

γ + Qcl(θ)

γ Acl(θ)−vmax1 γ

dQcl(θ)

Qcl(θ) γ Bcl(θ) (Qcl(θ)

γ Bcl(θ)) −γI

+

Ccl (θ) Dcl(θ)

1 γ

Ccl(θ) Dcl(θ)

<0 (2.15) 改めて Qcl(θ) =Qcl(θ)/γ と置くと,

Acl(θ)Qcl(θ) +Qcl(θ)Acl(θ)−vmax

dQcl(θ)

Qcl(θ)Bcl(θ) Ccl (θ) (Qcl(θ)Bcl(θ)) −γI Dcl(θ)

Ccl(θ) Dcl(θ) −γI

<0(2.16)

(23)

第2章 θの最大変化率を考慮したゲインスケジューリング

を得る.再度Schur Complementを用いれば式(2.8)-1,2,3は 1) Qcl(θ)>0

2) dQcl (θ)0

3) Φ= Acl(θ)Qcl(θ) +Qcl(θ)Acl(θ)−vmaxdQcl(θ) +

Qcl(θ)Bcl(θ) Ccl (θ)

×

γI −Dcl (θ)

−Dcl(θ) γI

−1

(Qcl(θ)Bcl (θ) Ccl(θ)

<0 (2.17)

のようなる. ここでは制御対象と制御器の次数が等しいと仮定しているので, 制御器 の状態変数を適当に選ぶことにより, 一般性を失うことなく Qcl(θ) の形を

Qcl(θ) =

Y(θ) Z(θ) Z(θ) Z(θ)

>0 (2.18)

に限定することができる[24].したがって安定化制御器の設計問題は式(2.17)-1, 2, 3 と式(2.18)を満たす AK(θ), BK(θ), CK(θ), DK(θ), Y(θ)および Z(θ)を求める問 題と等価である. いまQcl(θ)>0なので Y(θ)> Z(θ)>0がいえ, Z(θ)を置き換え る新しい行列変数 X(θ)を

X(θ)= (Y (θ)−Z(θ))−1 (2.19)

のように定義することができる.これを用い T(θ)=

I 0 X(θ) −X(θ)

(2.20)

を定義すると T(θ) は正則であり, 式(2.17)-1より T(θ)Qcl(θ)T(θ) =

Y(θ) I I X(θ)

>0 (2.21)

を得る.次に T(θ)と T(θ)を式(2.17)-3の左右から掛けた T(θ)ΦT(θ)を計算する.

まず,

T(θ)Acl(θ)Qcl(θ)T(θ) = T(θ)Acl(θ)T−1(θ)(T(θ)Qcl(θ)T(θ))

=

AY(θ) + (BK(θ)C2(θ))Z(θ),

X(θ)AY(θ) +X(θ)(BK(θ)C2(θ))T(θ)Z(θ)−X(θ)(B2(θ)CK(θ))Y(θ) A

A

(2.22)

(24)

第2章 θの最大変化率を考慮したゲインスケジューリング

T(θ)dQcl(θ)

T(θ) = T(θ)

dY(θ)

dZ(θ) dZ(θ)

dZ(θ)

T(θ)

=

dY(θ)

−X(θ)−1dX(θ)

−dX(θ)

X(θ)−1 −dX(θ)

(2.23)

同様に

T(θ)Qcl(θ)Bcl(θ) =

Y(θ)B+Z(θ)BK(θ)D21(θ) B

(2.24)

T(θ)Ccl(θ) =

C

X(θ)(C −D12(θ)CK(θ))

(2.25)

T(θ)

Qcl(θ)Bcl(θ) Ccl (θ)

−1 cl

(Qcl(θ)Bcl)(θ) Ccl(θ)

T(θ)

=

Y(θ)B+Z(θ)BK(θ)D21(θ) C

B X(θ)(C −D12(θ)CK(θ))

× −1cl

(Y(θ)B+Z(θ)BK(θ)D21(θ)) B

C (C −D12(θ)CK(θ))X(θ)

(2.26)

ここで

T(θ)ΦT(θ) =

φ11 φ12 φ21 φ22

として整理すると

φ11 =Y(θ)A+AY(θ) + (BK(θ)C2(θ))Z(θ) +Z(θ)BK(θ)C2(θ)

−vmaxdY(θ) +

Y(θ)B+Z(θ)BK(θ)D21(θ) C

× −1cl

(Y(θ)B+Z(θ)BK(θ)D21(θ)) C

(2.27)

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