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低出力炭酸ガス(C0_2)レーザーを用いた雑種犬による内臓静脈吻合作製の試み

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原 著 〔東女医大誌 第60巻 第2号頁139∼149平成2年2月〕

低出力炭酸ガス(CO2)レーザーを用いた

雑種犬による内臓静脈吻合作製の試み

東京女子医科大学 循環器小児外科学教室(指導 フク チ シン ジ

福 地 晋 治

今井康晴教授) (受付 平成元年10月9日)

Application of a Carbon Dioxide(CO2)Laser Anastomoses for the Splanchnic Veins in Dogs

Shinji FUKUCHI

Department of Pediatric Cardiovascular Surgery(Director:Prof. Yasuharu IMAI)

Tokyo Women’s Medical College

Nine splenorena1(SR)shunts and 8 reimplantations of the right renal veins were performed with

the carbon dioxide(CO2)laser at a power level of 40 mW in mongrels. Medium term follow・up studies up to the 21 months showed the patency rate of 88%(15/17). All of the reimplantations were patent, but two cases of occluded SR shunts were obsered in our early experiments and suspected the causes of occlusion:the extended inflammation from abscess occurred at the surgical silk which ligated the greater omentum in one case and the overstrain at the anastomotic site in the other case. Microscopic

studies demonstrated the degenerated adventita and medial layers of the laser anastomotic site. However the degenerative changes of the intimal layer were minimal and without hypertrophy,

fibrous constriction and aneurysmal dilatation. In order to. find the way to save a time required for

laser allastomoses, the splanchnic vein anastomoses were performed at an increased power and followed 18 months without event.

These preliminary works have that the venous anastomoses with CO21aser can be performed「

with good patency keeping the intimal tissue intact.

This study was supported in part by a Grant in Aid of Scientific Research from the Japanese

Ministry of Education(#60440066). はじめに レーザー光線の持つ種々な物理的特性のなかで 高出力領域の凝固作用(photocoagulation)や蒸 散作用(vaporization)は臨床的に早くから着目さ れ,1964年Patel’)によって発振に成功した高出力 炭酸ガス(CO2)レーザーは,電気メスの次世代を 担うレーザーメスの開発をもたらした.しかし低 出力レーザーの利用はphotoradiationなどに限 られていた.当施設ではミリワット(mW)単位の 低出力のCO2レーザーを用い,微小血管の単純な レーザー吻合にとどまることなく,内胸動脈 αMA)を用いた冠動脈血行再建の急性実験2),続 いて臨床応用をめざした長期生存犬の成績をもと に,レーザーによる血管吻合は理論的に吻合部の 成長が期待できる新しい縫合法と報告3)してき た. しかし静脈に対するレーザー吻合の報告4)は未 だ少なく,今回血管壁の特に菲薄な内臓静脈を対 象に,CO2レーザーによる吻合の適応拡大を目的 に実験的研究を行った.臨床モデルは脾臓摘出後

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の脾静脈一前腎静脈吻合splenorenal(SR)shunt の作製および右腎静脈の下大静脈(IVC)尾側への 再吻合(reimplantation)である.急性実験で術式 を検討した後,生存犬によるレーザー吻合の遠隔 での基礎的な検討を加えた. 方法および実験材料 実験に用いたCO2レーザーは遠赤外線領域の 気体レーザーで,波長10.6μ,作用機序からvapor・ izerに分類される.水に極めて良く吸収され,光 消散長(入射光強度の90%が吸収される光路長) は約100μと短く,熱深達度は浅い.また色調に関 係なくどの臓器へも均一に吸収されることが特徴 である. 使用したCO2レーザー発振装置は東北リコー 社製で,最高光出力120mWまでの低出力専用機 である.反射鏡多関節型マニュプレーターの末端 に焦点距離27㎜の集光レンズを組み込み,生物 学的には非活性で赤色の可視光線であるヘリウ ム・ネオン(He・Ne)レーザーをガイド光とし, 出力1mWでCO2レーザーの光軸に一致させてい る.また光出力,照射時間はそれぞれ1/10mW,1/ 10秒単位で条件を設定し,デジタル表示可能とし た. レーザーによる血管吻合は体重4∼20kgの雑種 犬を用い,交差体外循環による冠血行再建,内臓 静脈吻合を含め,現在まで計50頭に試みた.いず れも予備実験,急性実験に引き続いて生存犬を作 製したが,長期観察犬は一部同一犬を用いて冠血 行再建および内臓静脈吻合を行わざるを得ず,こ れらを含め遠隔期での開法率,組織所見を検討し た. 1.予備実験 CO2レーザーによる静脈吻合の至適照射条件設 定を目的に,予備実験1)∼3)を行った. 1)低出力CO2レーザーの熱エネルギー

mW単位のレーザーの熱エネルギーを具体的

に体得するため,方眼紙上に出力30mWで20秒間 照射した.直径0.2mm以下の焦点に一致して,僅 かにセルロースの炭化が認められた.時間を一定

とし出力40mWに上げると,長さ2mmの炭化像

を描くことができた.出力50mWでは長さ14mm

鰻纏麟・li

写真1 上大静脈内膜側に照射時間を20秒に固定し, focused beamで照射したもの 出力40mWでは中空矢印で示した内膜側の陥凹に とどまるが,60mW以上では全層貫通し蒸散部分も 広い. SVC:上大静脈, RA:右房 と飛躍的に延長した.60mWでは照射と同時に方 眼紙は発煙したが,紙を穿孔させることなく炭化 した直線は22mmとなった.70mW以上では照射 と同時に焦点部は発火穿孔した. レーザーを吻合に使用するにあたって,これ以 上の出力は注意すべき熱エネルギーを有している ことが判った. 2)レーザー照射による組織変化 雑種犬より摘出した上大静脈(SVC)を用いて 熱変性の波及する範囲を組織学的に検討した.外 膜の結合織を含め静脈を厚さ均一に採取するのは 容易ではなく,SVC内膜側からレーザー照射を 行った. ハンドピースの先端をフリーハンドで把持し,

光出力40mWから80mWまで10mWごとに増

減,組織深達度について検討した.照射時間は20 秒と一定し,レーザー光は一点に収騙するよう努 めた(写真1).レーザー出力40mWでは中空矢印 で示すように,肉眼的な内膜側の浅い陥凹にとど まるが,出力60mW以上では静脈壁全層を貫通し た.従って静脈吻合に至適なレーザーの照射条件 は比較的狭い範囲にあると考えられた. 光出力60mWで照射したSVCの組織変化を, 集束光直下から周辺の健常部に至るまで,50μm 毎に組織切片を作製した(写真2−a,b, c).焦点

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写真2 出力60mWで上大静脈照射部位の光顕像(集 麗麗中心付近部からa,b, cと辺縁方向に向う) afOCUS近位部:レーザー照射により集束光直下の 組織は勲状に蒸散し,辺縁に炭化像が認められ,そ の外側にH・E染色で無構造な赤色の硝子化層が認 められる.内膜から外膜側へほぼ全層にわたって熱 性変化が見られる. bfocusより100μmの部位:蒸散はないが,内膜側 の硝子化に続く組織の基本構造は比較的保たれてい るが,水分の蒸発は染色性の弱い部分(乾固層)ま で続いている. cfocusより150μmの部位:内膜の熱変性,内膜下 の弾性線維の膨化は比較的限局している. 直下では内弾性板を含め組織は蒸散し喫状の欠損 像を呈した.辺縁に炭化層が見られ,これを取り C

競;簑・藩叢叢

嚢懇’』 欝総

総離鑛霧叢

写真3 写真2cの強拡大像 レーザーの強い直進性のために,水分の蒸発による組 織間隙は縦方向に広がるのに反し,横方向への熱心性 の範囲は限局していることが判る. 囲むように熱変性部分は外膜側に波及していた. 集束光中心より150μm離れた部位の強拡大像(写 真3)でも内膜表面の熱変性像は軽度で,200μm の部では光顕上組織の熱変性像は見出せず,CO2 レーザーの横方向への熱伝達度は比較的限局する ことが判った.これらは肉眼的に照射部位を確認 する必要から,focused beamによる20秒間の長 時間照射としたため,レーザーの熱伝導は一層縦 方向に強調されることになり,熱作用が外膜側へ 波及,貫通した可能性はある. 静脈吻合に使用できるレーザー出力の範囲は 40∼60mWと考え,組織損傷を極力避けるために 最低の40mWでレーザー吻合を試みた. 3)CO2レーザーによる静脈切開部の治癒過程 次いで,レーザーによる静脈吻合の経時的な治 癒過程について組織学的に検討した.

雑種犬の大腿静脈統分に露出し長さ70㎜

の縦切開を加えた.レーザー吻合の手技は単純で, 先ず照射に先立って断端組織の接合を目的に糸間 隔2∼10mm毎の7−Opolypropylene(以下7−O p)糸による単結節縫合を加え支持糸とした.隣り 合った結節糸を180。の方向に軽く引き両断端を密 着させ,この接合線上にレーザーを照射吻合する. また吻合部の炭化を避けるため,予め生理食塩水 を散布し組織の湿潤を保つ必要がある.糸間距離 4∼6mm程度を出力40mWで20秒間照射すると, 外膜の炭化も肉眼的に目立たず,接合部が灰白色

(4)

論灘

嘉ヒ ’へρ

騨、煽

写真4 大腿静脈のレーザー吻合術後7日目のVan Gieson染色像 外膜側(中空矢印)からの照射で偏側に僅かの硝子 様変性と乾固層が見られる.内腔(矢印)には血栓 形成はない.内皮や内弾性板はレーザー照射によっ ても変化はなく,その形成は良く保たれている. に変化する程度にとどまった.静脈のレーザー吻 合でも支持糸の間隔を8mm以上とすると,再度 遮断下に照射を繰り返しても完全な止血は困難で あった. 静脈吻合7日目の組織所見を示す(写真4). Van Gieson染色では内膜,内弾性板の配列は良 好に保たれていたが,局所的に熱変性が高度な部 位や吻合部一側に偏在した熱変性の部も見られ た.前者は結節糸を目標に照射したため実質的な レーザーの曝射時間が長くなったこと,後者では 断端接合線を稜線と仮定すると,ガイド光の入射 方向が吻合線に対して垂直ではなく,谷側に偏位 し易いことなどが明らかになった. これら予備実験1)∼3)での反省点を踏まえ, 臨床応用を目指したレーザーによる内臓静脈吻合 は可能と考えSR shunt,ならびにrenal reim・ plantationを作製した. 2.レーザーによる内臓静脈吻合

雑種犬によるSR shunt, renal reimplantation

の術式を検討するため急性実験を5頭,続いて生 存犬12頭を作製した.飼育頭数の制限からこれら

表1 Laser anastomoses of splanchnic veins with the carbon dioxide laser

No. Splenorenal@ shunt Reimplantation of@ r−renal vein IMA−LCA 1 (11d) 一 一 2 1d 3 12d 4 一 2d 一 5 3mo 6 (lmo) 1mo 7 1mo 1mo 8 2mo 2mo

9 1mo 1mo 2mo

10 6mo 1mo 5mo

11 21mo 10mo零 12

一 12mo 臨

d:day, mo:month,( ):occluded,亭:sequential bypass

写真5 各種マニュプレーターチップ 左は通常の筒型マニュブレーターチップ,右の2つは 45度の反射鏡付チップである. 観察中の12頭に冠動脈血行再建術(sequential by・ passを含む)など延べ21回のレーザー吻合を施行 し,最長21ヵ月にわたって観察した(表1). この間の手術手技上の変更は急性実験初期に7 −Op糸,13mm針を支持に使用したが,菲薄な脾 静側の針穴から出血が見られ,生存犬作製では支 持糸を8−0,7mmの弱変針に変更した.9−0の 非吸収および吸収糸はレーザー照射で切断される ことが多く使用を中止した. また実験の後半では,後壁の吻合時間短縮を 計って,レーザーの光軸に対し45度の反射鏡付照 射チップ(写真5)を試作使用した.レーザー発

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振管内のCO2:N2ガス比によりレーザー出力が 低下する可能性があるため年に一度出力調整を 行った. 内臓静脈吻合の術式はPentobarbita1(30mg/ kg)の静脈麻酔,気管内挿管による調節呼吸下に 皮膚には大きな二品切開を加え正中で開腹, Halothaneの吸入麻酔を追加した. SR shunt作 製は先ず脾動脈各分枝の結紮切断に続いて,膵臓 下縁で脾静脈本幹を遊離した後,末梢血の分岐部 に戻って脾静脈の分枝で切断,脾臓を摘出した. 次いで近接した分枝を切開して遊離端を扇状に形 成,吻合口の拡大を図った.ラクテック液100m1の 急速輸液終了後,フPセマイド1mg/kgを投与し 利尿効果を確認,ヘパリン2mg/kgを全身に投与 した.左腎臓を後腹膜から受動し,腸腰筋膜に再 固定して吻合部の減張を図った.左腎動脈を常温 下で遮断,左腎静脈本幹はIVC流入部で結紮,切 断あるいは側壁を楕円形に切除した. レーザー照射に先だって機械的刺激による血管 の蛮縮,乾燥を防ぐため,1%lidocaineと生理食 塩水を適宜散布した.2倍の手術用拡大鏡下に, 事務用クリップを静脈のスプリントとして断端を 開大し,支持糸刺入点は正確に吻合口を4分割す るよう配慮し,脾静脈腎静脈の端々ないし端側吻 合を行った. ここで作製したSR lshuntは臨床例とは異な り,腎静脈から脾静脈をへて門脈系に流入するが, 腎静脈は血流に富み血管径も太いため,流入側と なる細い脾静脈は分岐部で拡大,吻合部の狭窄を 避けるとともに減張を図った.しかし分枝を切開 した断端は曲線となりやすく,全周を4点の支持 のみでは,レーザー吻合の基本である余剰部分の ない直線的な断端接合面を作るのは繁雑であっ た.出血量と遮断時間短縮のために,SR shuntの 生存犬作製では4∼6mm毎に支持糸を用いた. この断端接合上にCO2レーザーを全周性に照 射するが,先ず後壁の外膜側からレーザーを照射 して裏面の吻合を終了させ,次いで前壁の吻合を 完成させた.遮断解除のまま出血部に熱深達度の 浅いCO2レーザーを照射しても止血は困難で,再 度遮断して無血野とする必要があった.

、、ノ

曳竃

写真6 Right renal reimplantation

8−Opolypropylene糸の4点支持(細矢印)でレー ザー吻合を行った右腎静脈下大静脈端側吻合(二重の 矢印部)である.径9mm径の腎静脈でも,4点の支持 糸で組織を密着させ,中央を極細摂子で把持,最後に この部分を照射して吻合を終了した.写真左側の絹糸 結紮部(太矢印)は腎静脈切断端. A:右腎動脈,Vlreimplantationした右腎静脈, U: 尿管 吻合操作終了後創1ing testを行って,腎静脈か ら脾静脈への血流のあることを確認した. 次いで常温下の腎虚血許容時間内に両側腎静脈 のレーザー吻合が可能か否かを検討する必要か ら,対側右腎静脈のreimplantationを追加した. 方法は再度急速輸液による水負荷を行ってから 右腎動脈を同様に遮断,冠静脈はIVC根部より結 紮切断した.尾側のIVCを部分遮断し,壁の一部 を切除,右腎静脈のreimplantation(写真6)は 4点支持のみで可能であった.一連の手術操作後, 感染予防のため腹腔内を充分に洗浄してアミノベ ンジルペニシリン(AB−PC)を散布して閉山,術 後2日間のみAB−PC 2g/dayを皮下注射したが, 抗凝固剤など他の薬剤は用いなかった. 術後いずれの観察犬も腎機能や肝機能低下に悩 まされることなく順調に経過した.一定期間を経 て腎静脈造影ないし直視下に腸間膜静脈の分枝か ら直接門脈造影を施行し静脈吻合の開存を確認 した.造影後犠牲死させ,組織学的な検索を行っ た. 結 果 実験犬No.1からNo.4は術後2週間以内の短

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期観察例で,No.6からNo.9は左右腎動静脈を 常温下で遮断,一期的にSR shmt, renal reim− plantationを行った.またNo。9からNo.11は開 胸による冠動脈血行再建術(LIMA−LAD吻合)に 続いて,開腹による内臓静脈吻合を施行したもの で,再度の輸血による副作用をみたが手術侵襲に 良く耐えた. 術後2週間以内の短期間生存犬は主としてレー ザー吻合部の血栓の有無を肉眼的に検索したもの である.この4頭中最初に作製したSR shuntは 閉塞したが,他の例に血栓形成はなく開存率75% であった.術後1ヵ月以上経過した内臓静脈吻合 群は13血中12枝扇存(油壷率92%),また1例に造

影で狭窄を認めた.閉塞の2頭はいずれもSR

shunt作製犬であった. N o.1は実験計画に従って 術後11日目,No.6は1ヵ月目の再開腹時に閉塞 が判明したものである.No.1の閉塞の原因は脾 静脈本幹の剥離と左腎の受動が不充分で静脈吻合 部の過度の伸展であった.No.6では大網を結紮 した絹糸を核とした膿瘍が一塊となっており,炎 症が吻合部に波及したもので,左腎には既に空胞 変性と萎縮が見られた.これに反し実験犬No.6 を含め,右腎静脈のreimplantationのレーザー吻 合は全例開存していた. 写真7Aは長期観察犬No。11のSR shunt作製 5ヵ月後の再開腹所見である.腹腔内の癒着は軽 度で脾静脈,腎静脈の剥離は容易であった.端々 吻合で作製したSR shuntは良く開存し,腸間膜 静脈の各分枝は比較的流量の多い腎静脈血が門脈 系に還流するため著明に蛇行拡張していた.腎静 脈を結紮した左腎臓は形態上の変化を認めなかっ た. 本例は術後21ヵ月を経て犠牲死させたが,この 間飼育は容易で,再々開腹時の肉眼所見でもSR shmt(写真7B−1)は依然として良好に機能して いた.腸間膜系静脈の拡張,怒張は予想に反しむ しろ軽減していた.左右の腎臓には萎縮,空胞変 性像はなく,肝臓の色調に変化はなかった(写真 7B−2).写真8左は摘出したこの右腎の全体像で 右は端々吻合SR shunt部の拡大像である.内膜 側には肉眼的に吻合線を思わせる疲痕は不明瞭 写真7 Asplenorenal shunt作製5ヵ月後の再開腹 所見:SR shuntは良く機能していた(矢印は吻合 部).二重の矢印は拡張した脾静脈である.左の腎臓 に肉眼的な変化はなく,下腸間膜静脈(三角印)を はじめ各分枝は著しく拡張蛇行している. B1,2SR shunt作製21ヵ月後の再々開腹所見:遠隔 でも吻合部(太矢印)には静脈瘤様の拡大所見はな く,腎臓も形態上左右差はない.脾静脈(二重の矢 印)は拡張し依然として門脈系は怒張したままであ るが,肝臓に変化はない. で,この部の静脈瘤様の拡張はなく使用した非吸 収糸が散在するのみであった.現在までレーザー による内臓静脈吻合の観察期間最長はこの21ヵ月 例である. 造影所見:生存犬No.10の術後6ヵ月目,下露 間膜静脈分枝より,直視下にカテーテルを挿入し

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Splenorenal shunt with a carbon dioxide laser 写真8 術後21ヵ月のsplenorenal shunt 写真左は摘出した右腎の全体像で,右はその端々吻合 の拡大像である.細い矢印は支とした8−Op糸,二重 の矢印は脾静脈,太い矢印は腎静脈である.吻合部に は狭窄や静脈瘤様の変化は認められず,吻合線に一致 する癩磯部はもはや不明瞭となっている.

CO2 1aser anastomosis

響猫

盤夢

Pα6 /

鱗 霧

写真9 端側吻合によるsplenorenal shunt作製後6 ヵ月目の実験犬No.10の門脈造影像 腸間膜静脈の分岐より直接門脈系を造影した.矢印 は脾静脈と左図静脈との吻合部で腎,肝内静脈も良 く造影されている. て行なった門脈造影を示す(写真9).端側吻合で 作製したSR shuntの開存状態は良好であった. 同一犬でreimplantationした腎静脈と,LIMAに

CO2 bser a旧S㎞mgs

雲曝

夢 亀 窪 q P。Oj鍛0.

lMA−LAD anastomosis reimPlantation of「end vein

写真10aレーザーによるIMA・LADによる冠血行 再建吻合部位.b右腎静脈のreimplantation 中空矢印右腎静脈と下大静脈(IVC)吻合部に狭窄像 が認められる. 写真11 レーザー吻合の術後3ヵ月経過例 A強拡大籐で中膜,外膜層は癒合しているのがわか る.内膜層(矢印)の内灘への突出はない,Van Gieson 染色では内弾性板は依然として連続性を欠いている. B同一時期に行った冠動脈吻合では既に術後3ヵ月 目で内弾性板の連続性を回復し修復像が完了している ことが判る.いずれも内膜の反応性の肥厚は見られな い.

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よる冠動脈血行再建部は大腿動静脈より選択的に 造影した.Reimplantationの部位は吻合作製わず か1ヵ月にもかかわらず,吻合部狭窄像を認めた (写真10b中空矢印).狭窄は吻合部上浜にあって, 支持糸と接し肉眼的には接合線上の過剰肉芽の増 生であった.冠動脈血行再建例も含めて,レーザー 吻合を行った生存年例中,他に過剰肉芽の増生な いし二上化による狭窄所見を呈した例は経験しな かった.端々吻合で作製したSR shuntは同様の 方法では門脈系のみ順行性に造影され,吻合部近 位部の直接穿刺以外に門脈腎静脈を同時に描出す る方法はなく検査は断念した. 組織所見:レーザー吻合によるSR shunt 1カ 月後の内臓静脈吻合の組織所見は,冠血行再建の 所見同様,支持糸近位部は他の部に比較してピア リン様変性が高度で,Hematoxylin−Eosin(H−E) 染色では周囲に繊維細胞の増生が見られた.また reimplantation術後3カ,月経過例のH−E染色で は内皮の修復像が見られたが,Van Gieson染色 で内弾性板は依然として連続性を欠いていた(写 真11A).同時期の冠血行再建の組織所見(写真11 個日では内弾性板は連続し修復は完了しているの と異なった所見であった.いずれも内膜層の肥厚, 諸富の突出による狭窄所見はなかった. 考 察 レーザーを利用した血管吻合の試みは1964年 Yahrら5)に始まるが,細動脈の外膜側をadhesive materialで接着, neodylniumレーザー照射によ り吻合を完成させた.この後Jain 19796), Serure 1983ら7)は各々異なったレーザーで血管吻合を試 み,良好な開存率と脂血性狭窄の見られない微小 血管吻合が可能と報告した. レーザー吻合のメカニズムは依然として不明で あるが,熱作用による血管面内のコラーゲンの融 合が挙げられている6).レーザーの熱作用の特性 は旧来のヒーター加熱と全く異なって,熱抵抗を 考慮することなく瞬時に焦点上の組織を蒸散,炭 化させることである.中小動脈の中膜層に多く含 まれるコラーゲンは水と熱によりゲル状となる が,これは3本のアミノ酸凝血からなるhelix− coilが溶解などをきたすためと言われる.レー ザーによる温度上昇が蛋白凝固温度以下にとどま れば,コラーゲン繊維の濃度と組長のスピードに 応じて再び可逆的にコラーゲンとしての特性を取 り戻し(transition),融合した組織はもとの構造 に近い状態に再現8),レーザー吻合が可能とされ るが,フィブリンなど凝固系の関与の指摘もあ る9). 組織透過性の良いヤグ(Nd:YAG)レーザーや argonレーザー10)は,動脈の厚い壁全層を均等に 加熱することになり,tissue weldingによる再癒 合と表現されている. 動脈に比較して,今回対象とした内臓静脈の壁 は特に菲薄で,中膜の平滑筋は疎らであるのに反 し,外膜は良く発達しコラーゲンやエラスチンを 多く含んでいる.熱深達度の極めて浅いCO2レー ザーは静脈の内膜を損傷することなく,外膜側を sealing11)することで,圧負荷の少ない静脈もレー ザー吻合が可能であったと考えられる。 内臓静脈のレーザー吻合のうち,SR shUlnt作 製の初期の2頭に不充分な減張や感染により閉塞 をみたが,吻合の周辺的な問題が関与したもので あり,脾静脈の広範な剥離による吻合部の減張や, 入念な腹腔内洗浄を追加してから閉塞の経験はな い. 生存実験では径9mlnの腎静脈のreimplanta− tionは4点支持の中央部を極細摂子で把持し,こ の両側を照射,最後に中央を照射することでレー ザー吻合を完成させることができた.最近Jain12) は支持糸など補助手段を用いないレーザーの微小 血管吻合,新島ら13)は血管内腔に吸収性のsplint を挿入した無結節の,いずれもYAGレーザーに よる吻合を報告している.内臓静脈吻合など多様 な因子の加味された臨床的な吻合モデルを作製し た経験から,支持糸を用いないレーザー吻合はい たずらに虚血時間の延長となり,臓器保護操作の 追加など手技の繁雑化を招くと考えている.支持 糸を用いた微小血管のレーザー吻合では並列血管 鉗子を翻転するのみで前後壁の照射は容易で,遮 断時間の短縮が大きな利点として挙げられてい る瑚. しかし内臓静脈のレーザー吻合では旧来の連続

(9)

吻合に比較して遮断時間を短縮したとは言い難 く,後壁の外膜側からのレーザー照射は支持糸を 翻転するなど操作が繁雑で時間を要した.またガ

イド光に用いるHe・Ne赤色レーザーは出力1

mWでも輝度は高く,薄い内臓静脈の壁を透過し てバレイションし,接合線が往々にして不明瞭と なるなどレーザーの入射方向の選択に手間取っ た.多関節型のマニュプレーターの操作性に難点 のあることも一因であった. レーザー吻合直後の牽引に対する抗張力は縫合 糸による吻合と変わらないとするもの15),1ない し2週間は弱いとの報告16)17)などまだ評価は一定 していない. 短縮しやすいIMAを用いた先の冠血行再建術 の実験(IMA−LAD#6)からも,レーザー吻合直 後の抗張力は充分とは思われず,レーザーでの吻 合部には直接張力が働くことのないような充分な 減張を図る必要があり,レーザー吻合の完了直後 に支持糸を除去する試みは中止した. またレーザー吻合の耐圧性についてぱ,静脈で も一度レーザー吻合が完成すれぽ,吻合部を中心 に両血管を手指で遮断し,吻合部に向かって加圧 しても出血は認められず,圧の上昇には冠血行再 建同様比較的耐えられると判断した. 次にCO2レーザーを用いた静脈吻合の治癒過 程について,Oishi/8)は術後2週, Whiteら3)は術後 3週までの観察で,旧来の吻合方法に比較して異 物反応,搬痕繊維化が少ないものの,弾性線維の 断裂像のみられることを指摘し,McCarthy19)は 術後4週で内膜に軽度の肥厚の見られたことを報 告している. 更に長期の自験例,内臓静脈吻合の術後3ヵ月 目の所見では内膜は平滑で内腔へ突出する肥厚は なかったが,内弾性板の両断端の完全な癒合も見 られなかった.この点は同時期の冠動脈吻合は内 膜に軽度肥厚が見られる一方,内弾性板はすでに 連続性を回復しているのと異なった所見であっ た.いずれも広範な熱変性像は見られないことか ら,中膜層の良く発達した冠動脈と壁の薄い内臓 静脈の熱による組織損傷の差と考えられる.マイ クロサージャリによる動静脈吻合の治癒を検討し たBaxterら20>も静脈の治癒の遅れを指摘してい る. しかしレーザーによる冠血行再建は心拍動下に 照射したものであり,常にspot上の照射とは言い 難い.これに反し静脈吻合では静止野を作り易く, 単位時間の照射距離を延長したが縦方向に熱作用 が高まった可能は否定できない.同一エネルギー でも組織深達度を抑制するためには, E=Watt×T(sec) から光出力を上げて,照射時問を短縮,迅速な吻 合を図ることであるが,高い出力では熱による支 持糸の切断や血管穿孔,横方向への組織破壊など 操作性の低下が問題となる.McCarthyら19)は

レーザー出力を70mWに上げて家兎IVCを吻合

し,術後8週まで観察しているが,静脈瘤形成の 頻度は50%と報告し手縫い吻合と比較して著しく 高頻度であり中膜の組織損傷が疑われている. 今回の内臓静脈吻合では最長21ヵ月までの遠隔 期の観察で静脈瘤形成は全く認められず,著老の 実験結果と先の報告の差はMcCarthyらの高出 力に起因しているものと考えている.組織深達度 の極めて限無しているCO2レーザーを用いた内 臓静脈吻合は遠隔でも良好な打陣性を保ってい た. 補助に用いた支持糸については4点ないし8点 の結節であっても,糸間隔4∼9mrnと従来の糸面 による吻合法と比較して機械的損傷は遙かに少な く,内膜を温存した吻合が原則的に可能21)で,面面 狭窄を来さず吻合部の成長も期待できる点にあ る. しかしCO,レーザーでの内臓静脈吻合は微小 血管吻合の場合と異なって吻合時間を短縮したと は言い難く,この点を改善する目的で,出力を50 mWに上げて吻合時間の短縮を図って作製した IMA−LADと内臓静脈吻合の生存犬も各々18ヵ月 を経過している. 高出力では中膜層の損傷による吻合部瘤形成の 可能性が指摘されているので,遠隔期の組織的所 見の検討が必要であり,現在継続して飼育観察中 である.

(10)

結 語

光消散長の極めて短いCO2レーザーによる血 管吻合の適応拡大を目的に,雑種犬を用いて血管 壁の特に菲薄な内臓静脈を対象に臨床応用を目的

としたsplenorenal shunt, right renal reim−

plantationを出力40mWで作製し,急性期,遠隔 期について検討した. 遠隔21ヵ月までの野外率は88%(15/17)であっ た.閉塞例はレーザー吻合初期の2例で,静脈吻 合部の過緊張の例と腹腔内膿瘍の感染の波及の関 与が考えられた. 断端組織の接合の補助として用いた支持糸は吻 合時間の短縮,広い吻合径の確i保,sealingされた 吻合部への緊張の軽減など現時点では必要と考え られた. 術後3ヵ月目に犠牲死させた内臓静脈吻合では 依然として内弾性板の断裂像が認められたが,術 後21ヵ月までの追跡で静脈瘤の形成は認めなかっ た. 従って内膜への損傷は少なく,組織深達度の限 局しているCO、レーザーは,血管壁の薄い内臓静 脈吻合にもmW単位の低出力で使用し,レーザー 吻合が可能であると言える. 稿を終えるにあたり,終始御指導ならびに御校閲を 賜った今井康晴教授に深謝します. なお本論文の要旨は第24回日本人工臓器学会,第27 回日本脈管学会総会,第87回日本外科学会総会および 第1回日本血管内視鏡,第3回大学と科学公開シンポ ジウムにおいて発表した. 本研究は昭和60,61年度文部省科二二(課題番号 60440066)の援助を受けた. 文 献

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