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谷口

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Academic year: 2021

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早稲田大学審査学位論文 博士(スポーツ科学)

概要書

Effects of endurance exercise

on serum fibroblast growth factor 21 level

持久性運動が

血清 Fibroblast growth factor 21 濃度に及ぼす影響

2016年1月

早稲田大学大学院 スポーツ科学研究科

谷口 祐一

TANIGUCHI, Hirokazu

研究指導教員: 樋口 満 教授

(2)

1.背景

糖尿病などの代謝性疾病は罹患者数が世界的に上昇しており、その発症予防対策に強い関心が持た れている。代謝性疾患の罹患には肥満が強く関係している一方で、高い心肺持久力は肥満度に関わら ず代謝性疾病の発症率低下につながることが報告されているため(McAuley PA et al. Prog Cardiovasc Dis. 2014)、持久性運動により高い心肺持久力を維持・獲得することが代謝性疾患の予防に重要である と考えられる。また、高い心肺持久力や持久性運動における疾病予防機序の解明は、その機序を標的 とした薬剤療法や栄養・運動処方などにつながり、疾患の発症予防および治療に役立つことが期待さ れている。近年、運動による代謝改善作用を仲介する機序として、サイトカインに強い興味・関心が 寄せられている一方で、サイトカインに関する知見の多くは動物実験によってもたらされており、高 い心肺持久力および持久性運動による疾病予防機序と血中サイトカイン濃度との関係性ついてはこれ までにヒトを対象とした十分なエビデンスが得られていない。

先行研究において、肝臓から分泌されるサイトカインであるFibroblast growth factor (FGF) 21の血中 濃度が一過性の持久性運動によって増加することが示唆されている(Kim KH et al. PLoS One. 2013)。肥 満マウスに対するFGF21の投与が糖・脂質代謝および肥満を改善することが報告されていることから (Kharitonenkov A et al. J Clin Invest. 2005)、この運動誘発性の血中FGF21濃度の増加は運動による健康増 進効果を仲介している可能性が考えられる。しかしながら、安静時における高い血中FGF21濃度が FGF21の代謝改善作用の減弱を示すFGF21抵抗性と関係していることや(Fisher FM et al. Diabetes. 2010)、

安静時の高い血中FGF21濃度が糖尿病などの代謝性疾患の発症リスクと関係することが報告されてい る(Chen C et al. Diabetes Care. 2011)。従って急性運動とは異なり、高い心肺持久力の維持・獲得や定期 的な持久性運動の実施はむしろ安静時の血中FGF21濃度の低下と関係し、このFGF21抵抗性の予防・

改善作用が代謝性疾患の発症リスク低減につながると考えられる。

しかしながら、これまでに心肺持久力および持久性運動とFGF21抵抗性との関係や、血中FGF21濃 度に関わる規定因子については十分な知見が得られていない。そこで本研究は、心肺持久力および持 久性運動と血中FGF21濃度との関係性について明らかとすることとした。

2.研究課題Ⅰ (1) 目的

本研究課題では、心肺持久力と血清FGF21濃度との関係性を検証し、また血清FGF21濃度を規 定する要因を明らかにすることを目的とする。

(2) 方法

166名の日本人中高年男性(年齢:30 - 79歳)を対象とした横断研究を実施し、その後、持久性トレ ーニングが血清FGF21濃度に及ぼす影響を明らかとするために、若年の持久性競技者(21名)と一般 人(25名)との比較を行った。心肺持久力の指標として最高酸素摂取量(VO2peak)を測定した。また、

血清FGF21濃度はEnzyme-linked immuno-sorbent assay (ELISA)法にて検出し、内臓・皮下脂肪面積 はMagnetic resonance imaging (MRI)法にて算出した。

(3) 結果

中高年男性における低持久力群と高持久力群との比較したところ、高持久力群において有意に 低い血清FGF21濃度が認められた(低持久力群: 277.5 ± 118.2 pg/mL vs 高持久力群: 228.6 ± 107.0

pg/mL, p = 0.007)。また相関分析の結果、血清FGF21濃度はVO2peakと有意な負の相関関係を示し

た(r = -0.355, p < 0.001, 図1)。重回帰分析においては、内臓脂肪面積が最も強い関係性を示した一 方で(β = 0.360. p < 0.01)、VO2peakも独立した負の規定因子であることが明らかとなった(β = -0.174, p =0.019)。さらに若年者における比較をしたところ、持久性競技者における血清FGF21濃度が一 般若年者と比較してELISA法における検出下限値を示す頻度が有意に多く認められた(一般若年者:

24.0% vs 持久性競技者: 71.4%, p = 0.001, 図2)。

(4) 考察および結論

本研究の結果から、日本人成人男性において高い心肺持久力が低い血清FGF21濃度と関係して いることが明らかとなった。この関係性は、習慣的に持久性運動を実施することにより高い心肺 持久力を維持・獲得することで、FGF21抵抗性に起因する代謝性疾患の発症を予防することがで きる可能性を示唆している。

(3)

図1(左). 中高年男性における血清FGF21濃度とVO2peakとの相関関係 図2(右). 血清FGF21濃度の分布 (平行線:中央値, 白丸:検出下限値, 黒丸:検出濃度)

3.研究課題Ⅱ (1) 目的

本研究課題では、持久性運動が血清FGF21濃度に及ぼす影響と、血清FGF21濃度の変化と関係 する要因を明らかとすることを目的とする。

(2) 方法

33名の日本人高齢男性(年齢:62-76歳)を対象とし、実験デザインにはランダム化クロスオーバー 比較試験を用いた。エルゴメーターを用いて週に3回の持久性運動を負荷し、運動期間は全体で5 週間とした。運動強度は1週目を60%、2-3週目を70%、4-5週目を75% 最大酸素摂取量(VO2max)と し、運動時間は1-2週目を30分/回、3-5週目を45分/回とした。また、肝内脂肪量はMagnetic

resonance spectroscopy (MRS)法にて算出した。

(3) 結果

5週間の持久性運動の結果、コントロール期間と比較して運動期間の肝内脂肪(コントロール期 間: 0.3 ± 1.2% vs 運動期間: -0.6 ± 1.4%, p = 0.021)および血清FGF21濃度(コントロール期間: 20.4 ± 65.5 pg/mL vs 運動期間: -29.6 ± 65.1 pg/mL, p = 0.026, 図3)の変化量がそれぞれ有意に低い値を示し た。また相関分析の結果、血清FGF21濃度の変化量は肝内脂肪の変化量とのみ有意な正の相関関 係を示した(r = 0.366, p = 0.006, 図4)。

(4) 考察および結論

本研究の結果、5週間の持久性運動が高齢男性の血清FGF21濃度を低下させることと、その血清 FGF21濃度の変化量が肝内脂肪の変化量と有意な正の相関関係を示すことが明らかとなった。従 って一過性運動による影響とは異なり、習慣的な持久性運動は肝内脂肪量の減少に伴うFGF21抵 抗性の改善作用により、代謝性疾患の発症リスクの低下につながると考えられる。

図3(左). 持久性運動が高齢男性の血清FGF21濃度に及ぼす影響 図4(右). 血清FGF21濃度変化量と肝内脂肪変化量との相関関係

参照

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