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イ ス ラム問題 の現状 と今 後 の展 開 に 関す る研 究

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(1)

科学研究費補助金

基盤研究A (2)海外 :課題番号18252002(20034〜20063月 ) 研究成果報告書

IT 等 の科 学技術 の視 点 を踏 ま えた

イ ス ラム問題 の現状 と今 後 の展 開 に 関す る研 究

北村 歳 治 編 著

早 稲 田大 学 大 学 院 国 際 情 報 通 信 研 究 科

2007

3

(2)

目次

は じめに 北村 歳治

(資料 1)

WorkshopatKualaLumpuronICTInnovationsandTheirImpactsonSocio‑economicand CulturalEnvironments:DialogueinBorderlessWわrldandIslamicContext,March,2004

KITAMURA,Toshiharu YAMASAKI,Yoshio YOSHIMURA,Sakuji

ON

O,Takahiko HOSAKA,Shuji andHASEGAWA,So

(資料 2)

Workshopon"AdvancedScience&TechnologyandIslam"

atIstanbulTechnicalUniversltyin2005

15

KITAMURA,Toshiharu 25

く総論 >

イス ラムの歴 史 的 な展 開 と今 日のイス ラム問題 北村 歳 治

mpactOHCTinnovations:TheIslamiccontext GhauthJasmon

IslamandICT AhmadZainalAbidin 77

ABriefHistoryofScienceandTechnologyintheOttomanWorld

FezaG屯nergun

<国際 ・経済 >

「文 明の衝突と米 国軍事戦略 テ ロ リズ ム と中東 民主化構想 デ ジタル ・ジハー ドの現在

孫崎 享 孫崎 享 保 坂 修司 中東 の新 たな国造 りのモデル ・ケース とな りつつ あ る ドバ イ

畑 中 美樹 ICTandtheMalayslanEconomy

83

139 MohdGazaliAbas 159 イス ラ ミック ・バ ンキン グ及 び フ ァイナ ンス (IBF)の国際的展 開

北村 歳 治 173

(3)

<社会 ・教育 >

現地調査報告 :マ ラヤ大学学生の意識調査 ‑1997〜 2004年 一 店 田 鹿 文 HigherEducationandICTinMalaysia:FromGederPerspective

193

KAMOGAWA,Akiko 199 イ ン ドネ シア ・ムハ ンマデ ィーヤ全国大会 とその周辺 樋 口 美作 217 サ トーマ レー シアの企業特色 (cI) と民族、宗教 :多民族 ・多宗教 国家 だか らこそ

成功 したサ トー のマ レー シア進 出 藤 田東久夫 、小野 隆彦 227

<歴史 ・文化 >

ヌ ワイ リー による砂糖 きび の栽培法 と砂糖 の製法 佐藤 次高 イ ブン ・アルハ‑ ツジ ュに よる砂糖精製所 の実態 佐藤 次高

エジプ トにおける文化財の保存問題 ‑デルタ地域の事例 ‑ 長谷川 奏、吉村 作治 251 エジプ トにおける文化財の保存問題 一オアシス地域の事例 一長谷川 奏 、吉村 作治 263 古代 の医術 と医療器 具 ‑エ ジプ ト ・ル ク ソール の地方博物館 か ら一

吉村 作治、長谷川 奏 、小野 隆彦 275 中東文化遺産 の公 開手法 とデ ジタル化 一フランス ・ルーブル博物館 ‑

吉村 作治 、長谷川 奏 279 中東文化遺産の公開手法 とデ ジタル化 ‑エジプ トの事例 一吉村 作治 、長谷川 奏 283

く技術 >

PreservlngtheOld"andCreatingtheNew":FormationandDevelopmentofOttomanIdeas onCulturalHeritage MiyukiAOKIGM ELLI 289 マ レー シアの文化 に根 ざ した情報通信技術政策 の展 開 高橋 謙 三 299 コ ミュニケー シ ョン ・エイ ドとしての管楽器 :電力の供給 を必要 としない音声合成器

池畑 光浩、及川 靖広 、永野 桃子 、山崎 芳男 311 高速 1bit信 号 とfO映像 での無形文化遺産等 の記録伝送 システ ム

及川 靖広 、木村 洋介、 山崎 芳男 321 1TinistanbulTechnicalUniverslty TayfunAkgd1 329 OttomanDistanceArchery,BowsandArrows AtillaBir,MustafaKaGar,SinasiAcar333

(4)

北村 歳 治 は じめに

は じめ に

本報告書 は、文部科学省 の科 学研 究費補助金 に よる3カ年研 究 プ ロジェ ク ト 「IT等 の科 学技術 の視点 を踏 まえたイス ラム問題 の現状 と今後 の展 開に関す る研 究」基盤研 究A(2)海 外 :18252002 (20034月〜 20063月) の研 究成果 で あ る

1

. 本 報 告 書 の 執 筆 者

本報告書の執筆者 (以下、継承は省略、肩書 きは20073月時点)は、以下の通 りである。

研 究代表者 :

北村 歳治 (早稲 田大学大学院 ・国際情報通信研 究科 ・教授 ) 研 究分担者 :

吉村 作治 (早稲 田大学 ・人 間科学部 ・教授 ) 佐藤 次高 (早稲 田大学 ・文学部 ・教授 ) 湯川 武 (慶鷹 義塾大学 ・商学部 ・教授 )

山崎 芳男 (早稲 田大学大学院 ・国際情報通信研 究科 ・教授 ) 店 田 鹿 文 (早稲 田大学 ・人 間科学部 ・教授 )

孫崎 亨 (防衛 大学校 ・公 共政策学科 ・教授 )

畑 中 美樹 (財 ・国際 開発 セ ンター ・エネル ギー環境 室 ・室長 ) 長谷川 奏 (早稲 田大学 ・エ ジプ ト学研 究所 ・助教授 )

及川 靖広 (早稲 田大学 ・国際情報通信研 究セ ンター ・講師) また、研 究協力者 と して、

高橋 謙 三 (福 井 大学 ・工学部 ・教授 )

保坂 修 司 (早稲 田大学 ・イス ラム科 学研 究所 ・客員助 教授 ) 鴨川 明子 (日本 学術振興会 ・特別研 究員)

(5)

基盤 (A) IT等 の科学技術 の視 点 を踏 ま えたイ ス ラム問題 の現状 と今後 の展 開 に関す る研 究

樋 口 美作 (日本 ムス リム協会名誉会長、早稲 田大学 ・イス ラム科学研 究所 ・客員研究員) 藤 田東久夫 (麻 ]サ トー ・代表取締役会長、早稲 田大学アジア太平洋研究科 ・博士課程在学) 小野 隆彦 (早稲 田大学 ・空 間科 学研 究所 ・客員 教授 、[株]サ トー ・社外取締役)

さらに、

GhauthJasmon(PresidentofMultimediaUniversity,Malaysia) AhmadZainalAbidin(Lecturer,MultimediaUniversity,Malaysia)

FezaG由nergun(Professor,DepartmentofHistoryofScience,FacultyofLetters,IstanbulUniversity) TayfunAkgtil(Professor,FacultyofElectricalElectronicsEngineering,IstanbulTechnicalUniversity) AtillaBir(Professor,FacultyofElectricsElectronics,IstanbulTechnicalUniversity)

MiyukiAokiGirardelli(Lecturer;BogaziciUniversity)

は、本研 究 プ ロジェク トの一環 と してマ レー シアのクアラル ンプール及び トル コのイスタ ンブール で ワー クシ ョップ を開催 した時に、それ ぞれ現地 で参加 した研 究協力者 であ る。

2. 本 科 学 研 究 費 プ ロ ジ ェ ク トに よ る調 査 の 成 果

2000年代 に入 って以 降、イス ラムの問題 は様 々な角度 か ら関心 を集 めてい るが、研 究代 表者及び研究分担者 は、3年間においてイス ラム世界 を湾岸地域、東南 アジア地域及び 中央 アジア地域 に3分 して捉 える見地 に立 って、IT等の先端科学 を切 り口にイス ラムの社会、文 化、技術等 の多方 面 の比較調査 等 を行 な ってきた。

これ らの調査 は、マ レー シア、 トル コ等の現地調査 ・意見交換 を含 め、多岐 にわたる活動 か ら成 ってお り、多 くの収穫 を得 る ものであったが、 これ らの調査 ・研究活動 においては、

現代イス ラム ・コ ミュニテ ィにおいて先端科学 が どの よ うに利用 されその影響 ・成果は どの よ うな ものになってい るかを追求す る問題意識 で貫 くことに努 めた。その成果の多 くは、北 村等が運営す るイス ラム科学研 究所 のジャーナルである、イス ラム科学研 究 (WasedaJoumal oflslamicSciences)に投稿 す る形 にす るよ うに努 め、調査研 究 の成 果 の文献 と して残す と

ともに対外発信 す る こ とに努 めて きた。

(1) まず、局部的なイス ラム地域 を越 えて歴史的なイス ラムの全体的な流れ を今 日のイ ス ラム ・コ ミュニテ ィ との関係 とい う文脈 で どの よ うに捉 えるか と問題 意識 について、研究

(6)

北村 歳 治 は じめに

代表者 である北村 は研 究分担者及び研究協力者 との間で積極的に意見交換 し今 日の問題認識 としてある程度共有す ることに努 めた。 この調査研 究の結果は、北村歳治 「イス ラムの歴史 的な展 開 と今 日のイス ラム問題」 に示 され ている。

これ に応 えて、東南 アジア ・イス ラムを代表す るよ うな形でマ レー シア大学関係者か らイ ス ラムの観 点か らITの よ うな先端科学がイ ンターネ ッ トを通 じる知識 ・情報の有がイス ラ ム社会の将来に多様 な発展経路 を提示す る とともに、 コミュテ ィ意識 で支配 されてきたイス ラム社会 に知識 ・情報格差、多様 な価値判断による混迷等 を避 けるために、イス ラムの文脈 でIT等 を どの よ うに位置付 けるか とい うとい う興味ある視点が提示 された。 これは、マ レー シアのマル テ ィメデ ィア大学学長 で あるGhauthJasmon"ImpactofICTInnovations:Thels 1amicContext"に示 され てい る これ を補 足す る形 で若手 の学徒 で あ るAhmadZainalAbidin

"IslamandICT'は、工学技術 が非イス ラム教徒 の手 に よる ものであろ うと "Acceptwisdom, whereveritcomefrom.Mとい うイス ラムの原則 か ら考 えれ ば、所 詮 はイス ラム教徒 の生活 を 正 しく向上 させ るものである限 り積極的に受 け入れ よ うとす る認識 が示 され ている。 また、

中東イスラムに接す る トル コか らの見方は、 ヨー ロッパ化 した現代の トル コの知識層の科学 観 を反映す るものであ り、それ はイス タンブール大学科学史の教授 であるFezaG ergun"A BriefHistoryofScienceandTechnologyintheO批)manWorldMに示 され る よ うに、近代化 の過程

を経 た トル コに とっては、ITは欧米 を中心 とした科学技術 の一環 で あ り、 これ までの受入 れ と同様 、急速 に受容 され てい く可能性 を示 してい る

(2) 具体 的 な分野 にお ける本科研 費 プ ロジェク トに よる調査 の結果 は以 下の通 りであ る。 なお、当該 プロジェク トによる調査 ・研究の成果は、それぞれ の分野 に係 る学会及び早 稲 田大学等 にお ける講義 ・講演等 の場 を利用 して他分野の関係者 を含 めて意見交換 を行い、

その知見の深化 を図 る とともに、その成果 をブラッシュア ップ して記録 に とどめるよ うに努 めて きた。対象 となった分野 は多岐 にわた るが、IT等 の先端科 学 ・技術 がそれぞれ の分野 で どの よ うな影響 をもた らしているか とい う観点か ら、それぞれ の分野の知識 ・情報を共有 す ることに よ りさらに深 い理解 と視野の拡大 を 目指 してい る点では、多分 に共通 してい る。

(i) 政治の分野 においては、IT等 の‑イテ クは一方でイス ラム諸 国の近代化 を急速 に推 進す る と同時に、他方でハイテ クを利用 した米国の武力依存 が中東のイス ラム諸国に強制に よる改革 を迫 ってい る との観 点 か ら、孫崎 亨

『文明の衝突』 と米 国軍事戦略は国際政 治の最 もクルー シャル な側 面を挟 り出 した。 同様の観点か ら、孫崎 亨 「テ ロ リズム と中東

(7)

基盤 (A) IT等 の科学技術 の視 点 を踏 ま えたイ ス ラム問題 の現状 と今後 の展 開 に関す る研 究

民主化構想は、米国 (ブ ッシュ)政権 によるテ ロに対す る戦い と中東民主化政策の矛盾 を 批判的 に レビュー してい る この よ うなIT等 を利用 した政治 ・軍事の分野では、中東イス

ラム諸国は米国に対抗できる立場ではないが、 しか し、社会 ・経済面では、イ ンターネ ッ ト の浸透 と利用 は、急速 に進 んでいる。保坂修 司 「デ ジタル ・ジ‑‑ ドの現在」は、イスラム 系の ウェブサイ トの実態 を調査す ることを通 じて、国際政治の主要課題 であるテ ロ リズムに 関係す るウェブの背景 の分析 を試みている。経済的な分野においては、中東イス ラム地域の 中で ドバイがイ ンターネ ッ ト ・シテ ィの設立等を通 じて急浮上 してお り、 これ に他の湾岸イ ス ラム諸国が追随 しているが、そのモデル となっている ドバイの実態 を畑 中美樹 「中東の新 たな国づ くりモデル ・ケース とな りつつある ドバイは明 らかに している また、東南アジ ア ・イス ラム諸 国の先端 を走 るマ レー シアについて、早稲 田大学 の博 士課程後期 のMohad GazaliAbasHICTandtheMalaysianEconomy"は、ICT導入 が投資 、生産性 の上昇 を通 じてマ

レー シア経済 に予想 以上のポ ジテ ィブな影響 を与 えてい る とい う知見 を明 らかに した。 ま た、金融の分野では、年 15‑ 20%の高い率で成長 を続 けるイス ラム金融 に対す る関心が急 速 に高 まってお り、主要 な国際金融機 関はIT等 を駆使す る金融技術 と結び付 けてグローバ ルな ビジネス戦略の下に積極的 に取 り込 も うとしている。北村 歳治 「イス ラ ミック ・バ ン

キング及び ファイナ ンス (IBF)の国際的展 開は、 この動 きの分析 を試み ている。

(ll) 社会的な側 面においては、汀は教育面に積極的に取 り入れ られているが、早稲 田大学 人間科学部 の店 田 贋 文 「現地調査報告 :マ ラヤ大学学生 の意識調査 1997〜 2004年」

は、ITを使いなが らこれか らの調査の可能性 を探 っている。 これ とは別 に、鴨川明子 (Akiko

Kamogawa) "HigherEducationandICTinMlaysia"においては、ITがマ レー シアの高等教育 に おいて政府 の推進策 を背景 に急速 に取 り入れ られている状況 を具体的に明 らかに し、その綿 密 な分析 を通 じてITの導入 の成果 は他 の開発途上国に も極 めて示唆 的である、 ことを明 ら

かに している。 また、教育 を含 め社会福祉等 の分野で活躍 を続 けているイスラム組織のムハ ンマデ ィーヤに焦点 を当て、樋 口美作 「イ ン ドネ シア ・ムハ ンマデ ィーヤ全国大会 とその周 辺」は、イ ンターネ ッ トワー クを も駆使す る同組織の全国大会 に参加 した経験 を踏 まえて、

イスラム教徒 自身による社会運動 ・改革運動の実態の分析 を試みている。 さらに、藤 田東久 夫及び小野隆彦 「サ トー ・マ レーシアの企業特色(cI)と民族、宗教 :他民族 ・他宗教国家だ か らこそ成功 したサ トーのマ レー シア進 出は、物流 のIT化 を進 める (秩 )サ トーのケー ススタデ ィを通 じて、 日本企業 がいかに してイスラム社会 に参入 し成功 を収 めていったかの 分析 を試 みてい る

(8)

北村 歳 治 は じめに

(iii) 歴史 ・文化 の分野 においては、下記 の よ うな さま ざまな調査 ・分析 が行 われた。そ こでは、 (現代 のイ ンターネ ッ トに先行す る)地域 ・民族 を超 えたネ ッ トワー ク社会 として 存在 したアラビア語 中心のイス ラム世界の諸成果 を どの よ うに分析 ・評価す るか とい う視点 に立 ってい る。 イス ラム諸国において も、文化遺産 の動 きは、着実 に進展 してい る。文化遺 産の保存 に対す る認識 は、 これ まで各国が置かれた歴史的、文化的な発展経路 に依存 してき たが、今 日のITを中心 とす る先端技術の応用 と国際的な敏速 な情報交換 のネ ッ トワー クは、

新たな展 開 を示 してい る。

イ ス ラム にお け る文化 遺 産 の認識 の変 化 につ い て は、 ボ ア ジチ 大 学 のMiyuki Aoki Girardelli講師か ら、オスマ ン トル コにお ける文化遺産の保存 の伝統 的な認識 とヨー ロッパか

らの影響、その間にあって現代 につながるオスマ ン トル コの文化遺産保存 の方式の形成 とい う貴重 な知見 を得 る こ とがで きた。 これ は、MiyukiAokiGirardelli"Preserinigthè01d'and CreatingthèNew':Fom ationandDevelopmentorOttomanIdeasonCulturalHeritage"に示 され て

いる

文化遺産 のケースス タデ ィは、IT技術 に よるデー タ収集 、分析 を駆使 しなが ら、次の よ うな調査結果が得 られた。佐藤 次高 「イブン ・アルハ‑ ツジュに よる砂糖精製所 の実態 は、エ ジプ トのマムルー ク朝の時代 における砂糖の製法の実態 を さま ざまな視点か ら捉 えた イス ラム法学者 の記述 を通 して、現代のイ ンターネ ッ ト時代 に も名残 が見 られ るビジネス手 法 を明 らかに してい る 佐藤 次高 「ヌ ワイ リー に よる砂糖 きび の栽培法 と砂糖 の製法」

は、イ ン ドか らササ ン朝 を通 じてイスラムの世界に伝 え られた砂糖 の製法 を巡 り、イスラム の知識人の記述 を通 して、マムルー ク朝時の砂糖 きびの耕作、精製 の技術的側面をきわめて 具体 的に明 らかに してい る。

長谷川 奏及 び吉村 作治 「エ ジプ トにお ける文化財 の保存 問題 ‑デル タ地域 の事例‑」

は、‑ レニズム時代、 ビザ ンチ ン時代 か らイスラム時代 にかけて歴史的な都市 としての活動 を行 ってきたア レクサ ン ドリアに焦点 をあてて発掘調査 に係 る諸条件 を明 らかにす る ととも に、文化財の保存の実態 を明 らかに してい る。 また、長谷川 奏及び吉村 作治 「エジ ト にお ける文化財 の保存 問題 ‑オアシス地域の事例 ‑」は、都市 開発 と文化財保護 の関係 につ いて、ナイル川 の西方 に位置す るオアシス地域 に焦点を当て、その実態分析 を行い、現代の イス ラム国にお ける文化財保護 の課題‑の対応 を明 らかに してい る さらに、吉村 作治、

長谷川 奏及び小野 隆彦 「古代 の医術 と医療器具 ‑エ ジプ ト ・ル ク ソール の地方博物館 か らは、古代エ ジプ トの ミイ ラ製作法か らギ リシャ医学、イス ラム医学‑の系譜 を念頭 に

(9)

基盤 (A) IT等 の科学技術 の視 点 を踏 ま えたイ ス ラム問題 の現状 と今後 の展 開 に関す る研 究

置 きなが ら、 ミイ ラ製作 に係 る副葬品、器具、薬品等のきめ細かな科学的分析 が進 め られて い る状況 とこの よ うな技術的な側面に焦点を当てて公 開す る現代の考古学の潮流 を紹介 して いる 同様 の視点か ら、吉村 作治及び長谷川 奏 「中東文化遺産 の公 開手法 とデ ジタル 化 ‑フランス ・ルーブル博物館 ‑」は、古代オ リエン トの文化遺産のデジタル化 を進めるルー ブル博物館 が様 々なデ ジタル技術 を凝 らした展示法の実態 を調査 しその成果 を示 してい る

(iv)技術 の分野においては、マ レー シアがイス ラム諸国の中で最 も先進 的にITを取 り入れ よ うとして政府 レベル で推進策 を進 め、ITの高度利用 をテ コとして人材 と企業の育成 を図っ ている その長期計画 (OutlinePerspectivePlan)の一環 として、 クア ラル ンプール の近郊 に 広大 なマルテ ィメデ ィア ・スーパー コ リ ドール (MSC)が建設 されているが、 このMSCの 成果を どのよ うに評価す るかは、他 の開発途上のイス ラム諸国に とって も示唆 に富む。高橋 謙 三 「マ レー シアの文化 に根 ざ した情報通信技術政策 の展 開は、MSCを社会政策 の観 点 をも取 り入れ なが ら、IT技術 に焦点 を当てたMSCの展 開を技術専門家 として参加 した経 験 を踏まえ、その発展段階を分析 している。 (「技術」については、以下の3.で この他の論 文について も記述す る)

3.

本科学研 究費プ ロジェク トによるワー クシ ョップの実施 と現地調査等

(1) ワー クシ ョップの実施

この3年間に、研究代表者及び研究分担者 は、マ レーシアのクアラル ンプール あるいは ト ル コのイスタンブール にお けるワー クシ ョップに参加 し、イス ラム と現代の科学技術 に関す

る調査 と議論 を行 い、貴重 な収穫 を得 た。

マ レーシアにおいては、200312月の慎重 な準備態勢 を踏 まえて、20043月 に早稲 田 大学の大学院生の参加 を も募 って、総勢40名 を越 える 日本側の参加者 とな り、サイバージャ ヤのマル チ メデ ィア ・スーパー ・コ リ ドール (MSC)を訪れ 、イス ラム諸 国の先陣 を切 る マ レーシア政府 の情報通信 プ ロジェク トの実態を現地調査 し、意見交換 を行 なった。多民族 国家 として同国のマ レー人 を優先す るブ ミプ トラ政策は往 々に して非難 の対象 になってきた が、融和策 と社会経済開発 を 目指 した長期計画 (OutlinePerspectivePlan)は、情報 ・知識社 会‑の脱皮 を 目指 し、イ ンターネ ッ ト技術の高度利用 をテ コとす る人材、ベ ンチ ャー ・ビジ ネスの育成の問題 に関心が集 ま ってい る。MSCでは、マ レー シアのベ ンチ ャー ・ビジネス

(10)

北村 歳治 は じめに

が外国企業等 と提携 しなが ら、独 自の通信技術や情報処理 の手法 を試み てい るが、マルテ ィ メデ ィア大学 (MMU)では全 国か ら優秀 な若 い人材 を集 め技術者 のみ な らず ITに係 るコン テ ンツ作成者 の育成 に努 めてい る。

このマルテ ィメデ ィア大学 (MMU)で開かれ た ワー クシ ョップでは、既述 のMohadGa祖Ii Abas "ICTandtheMalaysianEconomy"に よる経済分析 の報告 が参加 者 の関心 を集 め る とと

もに、既述 のマ レー シアのマル テ ィメデ ィア大学学長 GhauthJasmon"ImpactofICTInnova tions:TheIslamicContextHのプ レゼ ンテー シ ョンは、イス ラム教徒 と しての 自信 に満 ちた進 取的アプ ローチ と道徳 的規制論 であ り、マ レー シアの学生 を魅 了す る とともに 日本 の参加者

に強烈 な印象 を与 えた。

この ワー クシ ョップでは、MSCを巡 って、既述 の高橋謙 三 「マ レー シアの文化 に根 ざ し た情報通信技術政策 の展 開」 を基 に、MSC計画 の評価 を巡 って活発 な議論 が行 なわれた。 日 本側 の冷静 なMSCプ ロジェ ク ト参加者 であった高橋 のプ レゼ ンテー シ ョンは きわめて説得 力 の あ る もので あ り、 これ にマ レー シア側 の研 究者 、実務者 が真剣 に応 じていた。 一方 、 MMUの熱意 ある教育環境 の雰 囲気 は ワー クシ ョップにお けるMMUの発表者 の活躍 に も反 映 していた。 特 に、既述 の AhmadZainalAbidin氏 のプ レゼ ンテ ー シ ョンHICTandlslam:ad‑

vantagesandProblems"は、イ ス ラム社会 にお けるITの与 えるプ ラスマイ ナ スの影 響 を冷静 に見極 め よ うとす る もので あ り、その後 の質疑 も含 めて印象 的 な内容 となった。

また、 この ワー クシ ョップでは、 自然 のメカニズムを重視す るイ ス ラムの工学技術 に焦点 を当て る とともに、 コー ランすべてを音声化 した音響学 の最近 の成果 を発表 し、マ レー シア の工学 関係者 の関心 を引いた。その成果の一端 は、池畑 光浩、及川 靖広、永野 桃子及 び山崎 芳男 「コ ミュニケー シ ョン ・エイ ドとしての管弦楽 :電力 の供給 を必要 としない音 声合成器 」、及川 靖広 、木村 洋介及び 山崎 芳男 「高速 1bit信 号 とHD映像 での無形文 化遺産等 の記録伝 送 システ ムに示 され てい る

トル コにお いては、2005年 9月 に早稲 田大学の大学院生等 の参加 も得 て、イス タンブー ル を訪れ 、同地 のボア ジチ大学イ ス タンブール 工科大学 関係者 と意 見交換 を行 な うととも に、イス タンブール 工科大学 において ワー クシ ョップを行 なった。意見交換では、 ヨー ロッ パ と中東イス ラムの間に置 かれ た トル コにおいては、オスマ ン トル コ以来の数学 ・天文学の 伝統 に加 えカイ ロに蓄積 され たイス ラム諸学 との交流 を踏 まえて、実務 上の要請 か ら造船技 術、砲術 、金属 工法、地理学等 が (イス ラムの教育 システ ムであ るマ ドラサ 中心 に)発達 し たが、17世紀 以降 は ヨー ロ ッパ の諸学 がオスマ ン トル コ政府機 関 と軍機 関を中心 に導入 さ

(11)

基盤 (A) IT等 の科 学技術 の視 点 を踏 ま えたイ ス ラム問題 の現状 と今後 の展 開 に関す る研 究

れ 、また ヨー ロ ッパ ‑ の留学生派遣 が持 ち帰 った近代科学 の成 果 は、教育 を通 じ20世紀 の トル コの近代化 に大 き く貢献 した。近代 の欧 (莱)科学文化 に直面 した 日本 はその後 目覚 し い進展 を遂 げたが、同様 の立場 に置 かれたオスマ ン トル コは、 ヨー ロ ッパ に直面す るイス ラ ム国 と して特異 な進 路 を取 る こ ととなった。その貴重 な知見 は、既述 のFezaG血 ergunイス タンブール 大学教授 のペ ーパ ー "ABriefHistoryofScienceandTechnologyintheOttomanWorld"

に示 されてい る これ を基 に、 ワー クシ ョップにおいては、 日本 ・トル コ間の比較 の議論 が 活発 に行 なわれ た。 そ の一環 で、ボアジチ大学のMiyukiAokiGirardelli講師 か ら、既述 のオ スマ ン トル コの文化遺産保存 の認識 の変化 と形成 とい う貴重 な知見 を得 ることがで きた。 こ の よ うな貴重 なプ レセ ンテ‑ シ ョンに加 えて、イス タンブール 工科大学 にお けるITの展 開 状況等 を巡 って参加 者 に よる意 見交換 が行 なわれた。

上記 のクアラル ンプール及 びイス タンブール にお けるワー クシ ョッ の概要 については、

英文の ものを本稿 の末尾 に添付 してある。 なお、上記 の ワー クシ ョップにおいては、 日本大 使館 関係者 に も参加 いただき、協力 を得 ることがで きた。特 に、20059月のイスタンブー ル での ワー クシ ョップにつ いて は、 日本 か ら総勢 35名 が参加 し、阿部知之大使 か ら日 ・ト ル コ関係 につ いて特別 講演 をいただいた こ とに深 く感謝 してい る。

上記の ワー クシ ョップの他 、本 プロジェク トによる調査研 究の成果 は、研 究代表者 ・分担 者 が内外 にお ける学会 、講演会等 の場 において援用 され 、今 日の躍動す るイス ラム社会の内 部 の建設 的 な動 きに関心 を払 う必要性 を訴 えてい る また、研 究代表者 の北村 が内外 で行 なってきてい る講義 ・講演等 の場合 、金融論議 の際にイス ラム金融 の議論 を紹介す る形 で欧 米流 の現代 の金融 との対 比 を通 じて論 点 を明確 にす る とか、ITを駆使 す る現代 の金融 工学

の手法 は部分的 に利 子 を禁ず る現代 のイス ラム金融 商品の複雑 な構成 に貢献 してい る。

同様 に、研究分担者 の山崎 は、内外 にお ける学会、講演会等 の場 において、 自然 のメカニ ズムを重視 し人 工的なエネル ギーに依存 しないイス ラムの工学技術 の伝統 に言及 し、新 たな 視点でイス ラムの工学 を見直す必要 を訴 える とともに、イス ラムを含む世界遺産 の保存 にお

ける先端技術 の応用 の具体例 を示 してい る

さらに、研 究分担者 の吉村 は、IT等 の先端科学技術 を駆使 して考古学 の トポ ログラフイ の見直 しの必要性 と中東 にお け る成果 を議論 している。 また、研 究分担者 の長谷川 は、エ ジ プ ト・ギ リシャ /ローマ とイス ラムの繋 ぎ となる時代 に焦点 を当て、本 ロジェク トに よる

(12)

北村 歳 治 は じめに

調査研究の成果 を援用 しなが ら、教育の場で先端技術の利用 に よって見直 され ている発掘技 術や資料収集 、資料分析等 の状況 を伝 えてい る

(2)現地調査

現地調査は、研究代表者 ・分担者それぞれの立場で必要に応 じて実施 し、その成果は調査研 究に反映 してい るが、以下では2‑ 3の点に焦点を絞 って感想 をこめた思い出を記述 したい。

北村 と長谷川 は、2005年 12月 にマ レー シア を中心 に、イス ラム問題 の調査 を行 なった。

内外か ら強い関心を もって見 られているのは、タイ深南部 のイス ラム地域 の問題 である。マ レー シア と国境 を接す るタイの深南部 のマ レー ・イス ラム3県 (パ タニ地域) には、仏教国 のタイの少数派であるイス ラム教徒 (約600‑ 800万人)の多 くが住 んでい る 同地域 は貧困 層 が多数 を占め、教育等 の面で後進地域 とされ、1950年代か ら70年代 にかけて、同地域 は 分離独立 の運動 が激化 した こ ともあった。2004年 のは じめに タイ兵士 が殺 害 され多数の銃 器 が略奪 された事件 が生 じて戒厳令 が敷かれ、また、4月には銃撃戦 の中で 100人以上が殺 害 されたため、パ タニ地域 は国際的 な関心 を集 めるこ ととなった。そ の後 も殺害事件 が続 き、現在 も解決 の見通 しも立 ってい ない。 この よ うなタイ側のイス ラム強硬策 に比べ、北村 と長谷川 が調査 したマ レー シア半島の北東部では、マ レー シア内に住む仏教徒 に対 し宥和的 な政策が採 られている実情 を見聞す ることができた。マ レー シア西部の中国系住民が大多数 を占めるペナ ンで も宗教的に宥和的な政策が とられている と言 われている。東南アジアで も イス ラム問題 は しば しば政治 問題 となって きたが、国際的 に比較すれ ば、尖鋭化 している ケースはむ しろ例外 にな りつつ ある。おそ らく、東南アジアでは、 これ までの民主化の過程 の中で対処 してい くことが十分可能のよ うに思われ る。東南アジア ・イス ラム諸国では、イ ス ラム的な民主化が強 く根付 きつつ ある。それだけに、本プ ロジェク トの よ うな調査 ・研究 活動 を通 じて、イス ラムに対す る的確 な情報の把握 と建設 的な対話路線 は今後 ます ます重要

になってい くこ とを確信 した次第で ある。

北村 は、その際にタイ北部 のチ ェンマイにお けるイス ラムの実態 を調査 した。そ こには、

中国の雲南省 か ら移住 してきた北か らの雲南イスラム、またベ ンガル湾 を超 えてきた西か ら のベ ンガル ・イス ラム、そ してマ レー半島を北上 してきた南か らのマ レー ・イス ラムの3 ルー の存在 を確認 で きた。 これ らの3グループは相互の コ ミューにケ‑ シ ョンに乏 しかっ たが、 タイのタクシン政権 によるイス ラム強硬策 を恐れて相互の コ ミュニケー シ ョンを強化 していた時期で もあった。本 プ ロジェク トの調査 ・研究に係 った研究関係者 は、中東イスラ

(13)

基盤 (A) IT等 の科 学技術 の視 点 を踏 ま えたイ ス ラム問題 の現状 と今後 の展 開 に関す る研 究

ム、東南アジア ・イス ラム及び 中央アジア ・イス ラムに 3別 してアプローチす る方式 を とっ たが、イス ラムの実情 は、 さらにきめ細かな理解 と配慮が必要 とい うことを実感 した。イス ラム問題 に対す る注意深 い問題 意識 とアプローチは、対話の内容 を実 りあるもの とす る と同 時に、調査 ・研究 の成 果 の レベル を高 めることを痛感 した次第 である0

中央 アジアについては、諸般 の事情 に よ り調査活動 を注力す ることが困難 な場合 が多 く、

仮 に機会 に恵 まれて もきわめて形式的な情報 ・意見交換に終わって しま う傾 向が強い。北村 と長谷川 は20043月 に中央 アジアを訪れ、同地域 におけるイ ス ラムにかかわる政治経済 情勢 とともにイス ラム文化 を調査 したが、 9世紀 に活躍 した フェル ガナ出身のアフマ ド ・

フェルガーニーがバ グダー ドの 「知恵の館移 り、 さらにカイ ロに移 ってナイル川 の推移測 定所の建設 に従事 した話 を耳に した。 当時は、アラビア語 を中心に したイス ラムの一大ネ ッ

トワー クが西はイベ リア半島か ら東は東南アジア、北は中央アジア奥深 くまで伸び、そ こに 盛 んな知的交流 が行なわれていた ことを垣間見た よ うな印象だった。 しか し、現在の中央ア ジア、特に歴史的 ・民族的に重要な位置 を占めるウズベ キス タンにおいては、 この種の議論 を進 め る余 地 が乏 しい こ と も判 明 した。 (北村 は、通信 情 報 省 (communicationsand Information)MakhsumM.Makhmudov次官 と新設 のTashkentUniversityofInformationTech‑

nologyKasimovSadikdjanSabirovich学長(Rector)等 とも協議 したが、結局、将来 の可能 性 は、タシケ ン トあ るイ ス ラム大学 (IslamicUniversity)、東洋大学 (TashkentStatelnstitute ofOrientalStudies)に絞 られ る見通 しとなった。長谷川 か らは、 この東洋大学 の講師で早稲

田大学 に も客員研 究員 と して在籍す る予定のMsElenaPynova女史 との交流 を通 じ、 日本 に な じみの薄い コ‑カサス地域の民族 とイスラムを含む宗教問題 について、率直な意見 ・情報 交換の機会 を要請 した (これ は今後 の課題 となってい る)。 この時、 タシケン ト市内で爆発 事件 が2件続 き、市内外の交通事情 が困難 になった とい う思 い出 もあ る

中央 アジア諸国のイス ラム問題 は、独立後の 1990年代 と2000年代 に入 ってか らの時期 と では、その性格 が変化 している 特 に、タ リバ ンの影響が中央 アジアにおいて明確 になった 1990年代後半か らは、過激 派 に対す る強 懸念が前面に出て きてお り、イス ラム問題 は即 テ ロ対策 とい う色彩す ら帯び るよ うになった。 中央アジアでは、民主化、市場経済化が もた らす深刻 なひずみ と硬 直的な政治 ・社会体制の問題 が根底 にある。市場経済化 は遅々 として お り、その過程で生ず る所得格差の拡大が もた らす貧困 と腐敗の問題 は、時には政府 に対す る急進的な批判 とな り、時 にはイス ラムの過激 派の議論 と結びつ きやす い。2005年5月の

(14)

北村 歳 治 は じめに

フェルガナのアンデ ィジャンで生 じた暴動 とその鎮圧 は、氷 山の一角であろ う。我々が得た 情報は、きわめて公式的な ものに過 ぎなかったが、その背後 には中央統制的なメカニズムが 複雑 に動いていることを窺 わせ る話 が尽 きない。一般 に、中央 アジア地域では、イスラムは 伝統的に穏や かな生活慣習 に貢献 してきたが、素朴 なイス ラムは急進派の議論 に利用 されや すい面 もある。 この地域 にお けるイス ラムの潜在的な問題 に対す る的確 な知見が必要 と考え た次第で ある

最後 に、 トル コにお けるワー クシ ョップに先立って、本 プ ロジェク ト研究の関係者は、ボ アジチ大学で 日本か ら同行 した大学院生等 をま じえて意見交換 を行 なったが、ボスポ ラス海 峡 を見下ろす大学の庭 園でイス タンブール のイス ラム展 開の歴史、イス ラムの工芸技術、 日 本 とオスマ ン トル コ との関係 の歴 史等 、話題 は尽 きなかった。今 で も懐 か しい思い出であ

る。 この時 には、 トヨタの トル コ現地法人 の 自動車生産 工場 を見学 し、東南 アジア とは異 なったイスラム教徒 の労働状況 を調査す る予定だったが、学生 に思わぬ怪我人が生 じ、見学 の予定 を取止 め ざるをえなか った苦い思い出 もある

なお、 トル コのイス ラムについては、そ もそ も中東のイス ラム諸 国か らは特異 な 目で見 ら れている。イス ラム諸国に とっては、 トル コは頑 固なまでに政教分離主義、そ してアラビア 語 を中心 としたイス ラムの伝統か ら離れて100年近 くになろ うとしているので、今や共有す るものはあま りない。 しか し、地方 に行 くと敬度なイス ラム教徒 が多 く、イス ラム教徒人 口 の比率は90%を超 えてい る トル コの民主化 は この よ うな多 くのイス ラム教徒 の意見 を反 映 させ ることをも意味 し、イスラム化の方向を強める可能性 もある。 ここで も、中東イスラ ムは、きめ細 か く対処す る必要性 を強 くした。

なお、上記 の現地調査 においては、現地 の研 究機 関のみ な らず 、東南 アジアのマ レー シ ア、タイ、イ ン ドネ シア、中央 アジア諸国及びエジプ ト、湾岸諸 国に 日本 か ら出向いている 研究者 ・教育者 、 日本 のJETROJICA関係者 、そ して 日本 か らの進 出企業 、商社等 にお世 話 になってい る この場 を借 りて、お礼 を申 し上 げたい。

4.

他 の プ ロ ジ ェ ク トとの 連 携

(15)

基盤 (A) IT等 の科学 技術 の視 点 を踏 ま えたイ ス ラム問題 の現状 と今後 の展 開 に関す る研 究

本科研費 プ ロジェク トと並行 的に、2001年 にス ター トしそ の後 も継続 され てい る 「イス ラム とITとい う国際 シンポジ ウムがある これ は、イス ラム科学研究所 (当初、吉村作 治所長 、20064月か ら北村歳治) が中心にな り、早稲 田大学GITS、同大空間科学研 究所 及び同大エ ジプ ト学研 究所 と共催 で進 めてきてい るが、200311月の第 3回シンポジ ウム において、伊東俊太郎国際文明比較学会会長 による基調講演 が行 なわれ た。 (その要 旨 :イ ス ラム文化は、理論 ・論理 の追求 が主であったギ リシャ文化 とは異 な る要素 を持 っていた。

もちろん、ギ リシャ文化 と言 って も、イオニア時代、アテネ時代、そ してア レキサ ン ドリア を中心に した‑ レニズム時代 とでは、性格が少 しずつ異なる。 しか し、基本的には、数学で 言 えば、幾何学、数論 とい うよ うな理論が中心であった。 これ に対 し、イス ラム文化は、得 られ た理論 を実務 ・実験 を通 じて蓄積 してい くとい うもので あった。数学 で も、現代人が 使 っている数字 の元 となるゼ ロを含むアラビア数字 を使 って計算術が進展 した。幾何学で も

量術が伴 った。代数(algebra)もコンピュー タでは当 り前 になったalgorismもその語源 はい ずれ もイス ラム文化 である この よ うに、イス ラム文化は価額 の理論 とその応用 ・技術 とが 車の両輪の よ うに一体 となっていた点に特徴 がある ギ リシャ文化 に対 し、イス ラム文化 は、 「自然に手 を加 え操作 してみ る とい う立場 であった。 この よ うなイス ラム文化が典型 的に具現 したのは 「錬金術であ り、それは ヨー ロッパの 「化学」 につながっていった。イ ス ラム文化で育 まれた科学技術 は、その後、 ヨー ロッパ に引き継 がれてい イス ラムの科 学技術が このよ うな ものであった ことを正 しく理解す る必要 がある。 また、 この よ うなイス ラムの科学技術の背景 は、現代の科学技術に も十分対応 してい るものであ り、そ こか ら将来 の可能性 が導 き出 され るこ とに も思いを致すべ きであろ う。)

この科学史 的な認識 が、2003‑ 2005年度 の本科研 費 プ ロジェク トの科学技術 的 なアプ ローチに大 き く影響 してい る

本科研費のプ ロジェク トは、 この よ うに上記の国際シンポジ ウム と相乗効果 を上げ、多 く の研究者 ・実務者 の関心 を集 めるよ うになっている。本科研費プ ロジェク トの研究分担者で ある保坂、店 田、長谷川等 の調査研究活動 の成果は、 この国際シンポジ ウムのプ レゼ ンテー シ ョン等で も援用 され てい る

なお、 このよ うな相乗効果 は、第 3回国際シンポジ ウムにおける吉村の 「ドバイにおける ITセ ンターの成功 と周辺国‑の影響」、須藤隆也元駐エ ジプ ト大使 の 「ア ラブ ・イス ラムに おけるIT化」、松本慎 二UNESCO文化局エ グゼ クテ ィブ・オ フィス企画担 当官 (早稲 田大学 ・

(16)

北村 歳治 は じめに

客員教授)の 「ア レキサ ン ドリア図書館 の歴 史的経緯 と今 日」等 の議論。

また、200410月の国際 シンポジ ウムにお ける深見奈緒子 (東京大学) 「イス ラム建築に お ける光、音、水、樹木」、北村 歳治 (早稲 田大学) 「イス ラム世界 の金融」、飯塚 正人 (東京外国語大学 AA研) 「イス ラムの生命倫理‑ クロー ン と臓器移植」、滞 田 哲生 (東京 工業大学) 「イス ラム と原子力開発」、菅野 重樹 (早稲 田大学) 「ヒューマ ノイ ド ・ロボ ッ

トは偶像崇拝 か」、酒井 啓子 (アジア経済研 究所) 「イ ラク戦争 とメデ ィア」、高木 徹 (NHK)「9.11とメデ ィア」。

さらに2005年第 5回国際シンポジ ウムにおける佐藤 次高 (早稲 田大学) 「イス ラムの公 益 ・福祉 (マス ラハ)と行政」、A.Shamsuddin(HeadofMuha… adiya,Indonesia)"Muham adiya andPostTsunamiReconstructionMにおいて、直接 、間接 的 に反映 して い る

5. 結 語

本科学研究費プ ロジェク トによる調査研究活動は、多分野 にわた る研 究者 ・実務経験者の 参加 の下に、今 日にITを中心 とす る先端科学技術の視点か ら、イス ラム問題 を多角的に取 上げることを 目指 して きた。イス ラムは、 日本 では一般 的にITの よ うな先端科学技術 とは 縁が薄い と見な され がちである しか し、長期的な観点に立てば、イス ラムがっい3‑ 4世 紀前 まで高度な科学技術 を作 り上げてきた経緯があ り、今 日的な科学技術 に対す る受容性 は きわめて高い。最近の2‑ 3世紀の植 民地時代の不幸な歴史がそれ を押 しつぶ してきた と言 えな くはない。 この よ うな見方か らすれ ば、伝統的な宗教 あるいは民族 とい う切 り口による イス ラム問題 ‑ のアプ ローチ には 自ず と限度 がある と考 え ざるをえない。

2003年度 か ら2005年度 にかけての調査研究活動 は、イ ンターネ ッ ト時代 の恩恵 を十分 に 享受 で きる環境 に置 かれ て きた。 それ は、単にデー タ管理や相互 の連絡調整等 に とどま ら ず、情報 ・デー タの源 の補充 ・拡大 、最近 時の研究活動状況 の把握等 、多岐 にわたってい る。本 プロジェク トに参加 した関係者 は、 もちろん各 自手法 は異 なるに して も、今 日的な出 来事、背景等に係 る情報 についてイ ンターネ ッ トを通 じて即座 に知 りかつ比較 し、その 1次 情報 を様 々な角度 か ら吟味、検討す ることがで きる立場 を多分 に利 用 で きる

さすがにイス ラム問題 の全体的な流れ に係 る議論 (上記 2. (1))等 については、 これ ま でのペーパー媒体 による考察が主 となっているが、それで も近時の問題 になれ ばなるほ どイ

(17)

基盤 (A) IT等 の科学 技術 の視 点 を踏 ま えたイ ス ラム問題 の現状 と今後 の展 開 に関す る研 究

ンタ‑ネ ッ トに依存 す る度合 いが高 まってい る 各論 にお ける各分野 の調査研 究活動 、特 に、2.(2)(i)の保坂 の成果 はその典型 であろ う。 また、2.(2)(i)の北村 、2.(2)(ii)の鴨川 、 また、おそ らく2.(2)(iii)の高橋 の研 究 の成果等 は、イ ンターネ ッ ト情報 を大 な り小 な り 取 り入れ ざるをえなかった こ とを窺 わせ る。その他 の成果 も、何 らかの形 でイ ンターネ ッ ト の恩恵 を受 けてい るこ とは否定 で きない。 この よ うな傾 向は、我 々が接触 したイス ラム関係 者 について もほ とん ど同 じ傾 向にあった。言語のバ リアを超 えれ ば、イス ラム問題 の議論 は ほぼ同一次元 で展 開す る道 が開 けつつ ある

しか し、同時に、イ ンターネ ッ ト情報は、文献による綿密 な確認 のみな らず、現地 に足 を 踏み入れ現地の人 々 と直接議論 を戦 わせ ることによって、真実 に一歩 で も近づ くことができ る と確信 してい る。 その意味では、長谷川 、保坂等の現地調査 に よるデー タ ・情報収集 とイ ンターネ ッ ト情報 の確認及び現地 の研究者 ・実務者等 との議論 は、特 に重要だった と考 え ら れ る。 また、そ うい う調査活動 を踏 まえた現地での ワー クシ ョップは、研 究の度合いの深化 及び教育効果 において、国内でのシンポジ ウに勝 る とも劣 らない成果 を上 げることがで きた

と考 えてい る

なお、本報告書の記述 内容 は、あ くまで も執筆者 の個人的 な見解 であって、その所属す る 組織 の見解 ではない こ とを念 のた めに書 き添 えてお きたい。

20073月 研 究 メンバ ー を代表 して 北村歳治

(18)

KITAMURA,T.eta1.,WorkshopatKuala Lumpur

(資料 1)

Wor ks hopatKual aLumpuronI CTI nno vat i onsand The i rI mpac t sonSoc i o‑ e c onomi candCul t ur al

Envi r onme nt s

.

'Dialoguein BorderlessWorldandIslami ccontext

,

March,2004

KITAMU

RA,

Toshiharu+YAMASA

XI ,

Yoshio++YOSHmm

A,

Sakuji什+

ONO

,

Takahiko★HOSAK

A,

Shuj

i ' '

andHASEGAWA

,

So'*'

I

ntroduction

The3rdworkshoplentitled"WorkshoponICTInnovationsandTheirImpactson Socio‑economicandCulturalEnvironments:DialogueinaBorderlessWorldandIslamic Context,MwasheldatMultimediaUniversity(MMU)inMalaysia,underthekind understandingofProf.Dr.Jasmon

,

PresidentofMMU onMarch3and4

,

2004.

MalaysiaiswellknOwn asaMuslim countryamongthemulti‑ethnicity (Pl.1,2). PrimeMinisterMahathirhasbeentakinginitiativeinpromotingsince1996,and thisGoverrmentplanismostdeeplyrelatedtotheMultimediaSuperCorridor(MSC)

,

whichwasalsofbcusedoninthisworkshopfわritsimpactonthesociety.

Wわrkshopsite

TheworkshopsiteatCyberjayaislocatedbesidePutraJaya,andthelocation includingtheairportandKualaLumpurisasfわllows(Fig.1).MSCisa15‑km‑

wide

,

50‑km‑longreglOnthatconnectsthisKualaLumpurcity, wherethetwin towersandshoppingmolesstandsidebyside(Pl.3,4),andKualaLumpurlntemational Airport(KLIA).CyberjayaandPutrajaya,towhichthecapitalisplannedtobe transferredandwhereconstructionisproceeding,arelocatedinthisreglOn.

InthisMMU,theFacultyofCreativeMultimedia(Pl.5,6)

,

whichwasusedas thesiteforthisworkshop,isespeciallyrelatedtoadvancedtechnology.Toteach studentsadvancedtechnolog

y

,thisfaculty ischaracterizedbyteachingstaffcollected from verywide‑ranglngfields

,

includingcopywriters,screenwriters

,

broadcast

Tabl e2:Di ve r s i f i c a t i onofExpor t s ,1 960‑ 2000
Tabl e4:Thewor l d , Mal a ys l a,ASEAN+5,s omebas i ccompar i s ons ,2000 Wor l d Ma la ys l a AS EAN AS EA

参照

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