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生殖細胞での遺伝子組換えのメカニズムの一端を解明

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Academic year: 2021

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生殖細胞での遺伝子組換えのメカニズムの一端を解明

1.発表者:作野 剛士(東京大学分子細胞生物学研究所 講師)

渡邊 嘉典(東京大学分子細胞生物学研究所 教授)

2.発表のポイント:

◆生殖細胞において父方と母方由来の染色体(注1)のDNAが組み換わる“組換え反応”

がどのように開始するか不明な点が残されています。

◆分裂酵母(注2)を用いて、染色体の接着因子コヒーシン(注3)が組換え反応を促進す る分子機構を明らかにしました。

◆組換え反応は精子や卵子の形成に必須であることから、本成果は将来的に生殖医療の発展 に寄与することが期待されます。

3.発表概要:

私たちヒトをはじめとした多くの生物は、精子や卵子といった生殖細胞に両親の染色体(注 1)を正確に半分ずつ分配し、それらを受精により合わせることで遺伝情報を親から子供へと 伝えます。両親の染色体を正確に半分ずつ分配して生殖細胞を作る減数分裂過程では、“組換 え”と呼ばれる反応が起こります。組換え反応では、両親由来の各染色体は互いの情報が混ぜ合 わさると同時に、父方と母方由来の対応する染色体が対を作ることで、染色体が正しく分配さ れます。ヒトではこの過程に異変が生じるとダウン症(注4)や不妊につながると考えられて います。しかしこの組換え反応がどうやって開始されるのか、その機構は長い間不明のままで した。

今回、東京大学分子細胞生物学研究所の作野剛士講師と渡邊嘉典教授は、分裂酵母(注2)

を用いて減数分裂期組換えの開始に関わる機構を解析しました。その結果、染色体上に点在し、

染色体同士を接着させるコヒーシンと呼ばれるタンパク質の複合体(注3)がリン酸化される ことを目印に、減数分裂組換えの開始に必須なさまざまな因子群が染色体上へと次々に集まっ てくる結果、組換え反応が開始されることを明らかにしました。この機構が失われると、減数 分裂期組換えの著しい低下と共に、その後の染色体分配と生殖細胞の形成に異常をきたすこと がわかりました。

コヒーシン複合体やこれをリン酸化する酵素(カゼインキナーゼ)はヒトにも類似する因子 が存在することから、今回明らかになった知見は、将来的に生殖医療の進展に寄与することが 期待されます。

4.発表内容:

遺伝情報を次世代に伝える生殖細胞では、減数分裂という特殊な染色体の分配により、染色 体数が半分になった卵子あるいは精子が形成されます。減数分裂過程では、父方と母方由来の 対応する染色体が対(相同染色体ペア)を作り、この対の間でDNAのつなぎ換えである、組 換え反応が起こります。その結果、両親の遺伝情報が一部交換され生殖細胞の多様性が生み出 されると同時に、組換え反応の結果生じる相同染色体ペアの間の結合が、染色体を正しく分配 する上で大切な役割を果たすことが知られています。先天性疾患のダウン症や早期流産の多く は染色体を正しく分配する過程で生じる異常がその原因であると考えられています。

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減数分裂過程ではまず、染色体DNAが複製された後に組換え反応が起こり、相同染色体ペ アが分配されます。DNAの複製の際、鋳型のDNA鎖と複製された新たなDNA鎖とがバラバ ラになってしまわないようにつなぎとめておく因子がコヒーシンと呼ばれるタンパク質の複合 体です。またコヒーシンは、組換え反応に必要な因子の染色体上への集積に必要であることも 分かっていました。しかし、コヒーシンがどのようにして組換え反応に必要な因子を染色体上 に集めてくるのか、その機構は長い間不明のままでした。

今回、東京大学分子細胞生物学研究所の作野剛士講師と渡邊嘉典教授は、分裂酵母のリン酸 化酵素カゼインキナーゼ(CK1)の減数分裂期における機能を解析した結果、CK1が組換え反 応に必要であり、コヒーシン複合体のサブユニットの一つであるRec11をCK1がリン酸化す ることにより組み換え反応に必要な因子が染色体上に集積することを明らかにしました。また、

このRec11のリン酸化は軸様構造体(注5)の構成因子であるRec10とRec11との結合に必

要であり、この結合を介して軸様構造体が形成されることも分かりました。さらに、コヒーシ ンは、この軸様構造体を形成することにより、組換え反応の開始に必須な因子を染色体へと呼 び込んでいることも明らかになりました(図1)。

今回分裂酵母の解析から明らかになった減数分裂期組換え反応の開始に関わるRec10、

Rec11さらにCK1という因子は、進化的に保存されていて、ヒトにも似た因子が存在します。

したがって、今回明らかになった機構がヒトでも存在する可能性があり、その場合には本研究 の成果は将来的にヒトの不妊あるいはダウン症などの原因解明に寄与すると期待されます。

5.発表雑誌:

雑誌名:「Developmental Cell」

論文タイトル:Phosphorylation of cohesin Rec11/SA3 by casein kinase 1 promotes homologous recombination by assembling the meiotic chromosome axis

著者:Takeshi Sakuno and Yoshinori Watanabe 1月26日出版予定

DOI番号:未定

6.注意事項:日本時間1月9日(金)午前2時 (米国東部標準時間:8日(木)正午12時) 以前の公表は禁じられています。

7.問い合わせ先:

渡邊 嘉典(わたなべ よしのり)

東京大学分子細胞生物学研究所 教授

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 TEL: 03-5841-1466 FAX: 03-5841-1468 E-mail: [email protected]

HP: http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/watanabe-lab/

8.用語解説:

(注1)染色体:遺伝情報を担うDNAとタンパク質の構造体。ヒトの細胞では、父親と母親 に由来する23組46本の染色体をもつことが知られている。

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(注2)分裂酵母:真核生物に属する単細胞生物。有性生殖や減数分裂の根幹の仕組みはヒト と分裂酵母の間で共通なものが多数ある。

(注3)コヒーシン複合体:リング状の形状をした4つのタンパク質からなる複合体で、複合 体を構成するリングの穴に2本の染色体DNAを通すことで、それらの接着を担うと考えられ ている。

(注4)ダウン症:減数分裂の異変に起因して、21番染色体を一本余分に受け継ぐことにより 生じる病気。

(注5)軸様構造体:減数分裂期に形成される特有な染色体の軸状の構造。

9.添付資料:

図1:カゼインキナーゼ(CK1)とコヒーシン複合体による減数分裂期組み換えが開始するた めの分子機構

参照

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