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オオモンクロナガカメムシに細胞内共生する の共生関連遺伝子

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会, 2020 年 2 月 7 日

オオモンクロナガカメムシに細胞内共生する

Burkholderia

の共生関連遺伝子

応用生物科学専攻 生命分子化学講座 基礎環境微生物学 栗原駿太

1. 背景と目的

多くの昆虫がその細胞内に共生細菌を持ち,緊密な相互作用を行なっている。しかし,それら細胞 内共生の分子基盤はほとんど解明されておらず,昆虫−細菌間の代謝統合メカニズムについては不 明な点が多い。その大きな理由は,共生細菌が宿主の細胞内環境に高度に適応しており,単離培養 が難しく,これにより遺伝子組み換えなどの逆遺伝学的実験アプローチを全く適用できない点にあ る。本研究の対象であるオオモンクロナガカメムシ(Metochus uniguttatus)はBurkholdelia 細菌を土壌から獲得し,中腸の上皮細胞内に共生させる。このBurkholdelia共生細菌は単離培養 可能であり,また遺伝子組み換えが可能である。さらに,宿主であるナガカメムシは体サイズが大 きく飼育が容易で高い繁殖力を示すことから,本共生系は細胞内共生研究の新規モデル系になると 期待される。これまでに発表者は,共生細菌の感染経路や適応度効果,体内個体群動態など基礎的 知見を解明してきた。本研究では,Burkholderia共生細菌の遺伝子変異株の感染スクリーニングを 行い,細胞内共生に関与する遺伝子の特定を目指した。

2.方法と結果

【遺伝子欠損株の感染実験】 本研究室に保存されているBurkholderiaの遺伝子欠損株41株につ いて感染実験を行い,感染率とカメムシの生存率を測定した。孵化直後の1齢幼虫に遺伝子欠損株 を感染させ8日間生育させたのち,各 5 匹を解剖して蛍光顕微鏡で観察することにより感染率を測 定した。生存率については感染個体 20を成虫まで飼育することで測定した。その結果,感染率ま たは生存率が計 12 の株で減少し,共生関連遺伝子の一部を解明することができた。共生異常が見ら れた遺伝子欠損株のほとんどは腸内共生器官に全く到達しないか,単に感染・定着が遅延するもの であった。しかし,共焦点顕微鏡による詳細な組織観察により,bacA遺伝子欠損株がカメムシの細胞 内に共生できないことを発見した。以下に,今回新たな発見となったbacA遺伝子欠損株の共生動態 についてその詳細を報告する。

bacA欠損による適応度の低下】 bacA 欠損株をオオモンクロナガカメムシに感染させ,適応度パ ラメーターを測定した。その結果,生存率・成虫重量・産卵数の大幅な減少が見られ,適応度が顕著 に低下することが明らかとなった。さらに羽化成虫は野生株を感染させた個体より体色が白色化し ており,共生器官への感染着も散逸的であった。この結果から,bacA遺伝子はオオモンクロナガ カメムシへの共生に関わる重要な遺伝子であると結論づけることができる。

bacA 欠損株の共焦点顕微鏡観察】野生株は共生器官の細胞内に安定的に定着していたのに対 し,bacA 欠損株では全く菌の入っていない細胞が数多く観察された。この結果から,bacA 遺伝子は 細胞内共生に必須の遺伝子であり,細胞内への感染不全が宿主カメムシの適応度を減少させたと考 えられる。環境中から獲得される細胞内共生としてはマメ科植物-根粒菌の共生系が有名だが,興味 深いことに根粒菌においても bacA 遺伝子が宿主細胞内における定着・維持に必須であることが知 られている。カメムシ細胞内共生系における本遺伝子の機能についてはまだ不明な点が多いが,根 粒共生系と相似な進化が起きている可能性が高い。

参照

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