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循環器病の診断と治療に関するガイドライン 年度合同研究班報告 Ⅴ 不整脈 頻脈 徐脈 1391 Ⅵ 急性冠症候群 急性冠症候群の診療と不安定狭心症 非 ST 上昇型心筋梗塞の治療 ST 上昇型急性心筋梗塞 1400 Ⅶ その

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(1)

循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン

Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Cardiovascular Emergency(JCS 2009)

目  次

合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本小児循環器学会,日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,

      日本蘇生学会,日本脳卒中学会,日本麻酔科学会,日本臨床救急医学会,

      日本小児集中治療研究会

班長 笠 貫   宏 早稲田大学理工学術院大学院 班員 相 澤 義 房 新潟大学大学院医歯学総合研究科循

環器学分野

木 村 一 雄 横浜市立大学附属市民総合医療セン ター心臓血管センター

源 河 朝 広 済生会川口総合病院循環器内科 住 友 直 方 日本大学 小児科学系小児科学分野 高 山 守 正 榊原記念病院循環器内科 武 田   聡 東京慈恵会医科大学救急医学講座 中 澤   誠 脳神経疾患研究所附属総合南東北病

院小児科

長 尾   建 駿河台日本大学病院循環器科,蘇生・

救急心血管治療

野々木   宏 国立循環器病センター内科心臓血管部門 三田村 秀 雄 東京都済生会中央病院循環器内科

協力員 圷   宏 一 日本医科大学付属病院集中治療室 菊 地   研 獨協医科大学心臓・血管内科 小 玉   誠 新潟大学大学院医歯学総合研究科器

官制御医学講座 循環器学分野 児 玉 安 司 東京大学医療安全管理学

清 野 精 彦 日本医科大学千葉北総病院内科・循 環器センター

髙 木   厚 東京女子医科大学心臓病センター循 環器内科

田 原 良 雄 横浜市立大学附属市民総合医療セン ター高度救命救急センター 丹 羽 明 博 平塚共済病院循環器科 船 崎 俊 一 済生会川口総合病院循環器内科 横 山 広 行 国立循環器病センター心臓血管内科

外部評価委員

水 野 杏 一 日本医科大学付属病院内科学第一 岡 田 和 夫 日本蘇生協議会

坂 本 哲 也 帝京大学救命救急センター

丸 川 征四郎 医誠会病院 宮 坂 勝 之 長野県立こども病院

(構成員の所属は200910月現在)

Ⅰ.緒言………1362

  1.ガイドラインの背景と考え方 ………1362

  2.循環器救急の現況と課題 ………1364

  3.院外心停止 ………1366

Ⅱ.成人のBLS ………1368

  1.成人のBLS(一次救命処置)について ………1368

Ⅲ.成人のACLS ………1373

  1.成人の二次救命処置(ACLS) ………1373

Ⅳ.症候からみた心血管救急 ………1378

  1.胸背部痛 ………1378

  2.呼吸困難 ………1379

  3.意識障害 ………1381

  4.ショック ………1383

  5.動悸 ………1385

(2)

緒 言

1 ガイドラインの背景と考え方

1 本ガイドラインの背景

 高齢社会を迎えた我が国において心疾患は死因第

2

位 を占め,脳卒中を含めた循環器疾患は癌とほぼ同率の死 亡率となる.成人外来受診患者でも循環器疾患は最も多 いが,循環器疾患の特徴は突然発症し,致死的になりう ることである.これまで我が国における心臓突然死の頻 度は年間約

3

万人と考えられていたが,昨年総務省消防 庁の報告では

2007

年度の心原性心停止は

59,000

人にの ぼる.したがって,循環器専門医にとって心肺蘇生の実 践と心血管救急治療の知識と技能は不可欠といえる.し かし,循環器疾患の発症・急性期における迅速かつ的確 な救急処置・診断・治療は困難なことが多く,処置中に 増悪し致命的になることもまれではない.それには多く の原因がある.すなわち ⑴医学の限界・不確実性 ⑵ 救急医学のエビデンスの限界 ⑶心血管疾患救急の専門 分化と全般研修の問題 ⑷我が国の救急制度の問題 ⑸ 地域の格差と医療機関の格差 ⑹循環器医の過酷な労働 環境 ⑺患者・家族の過大な期待 ⑻インフォームドコ

ンセントの限界 ⑼患者と医師のインフォメーションギ ャップ拡大と信頼関係の低下などと多様である.

 我が国の救急医療においては,産科救急と小児救急が 破綻の危機に瀕し,社会問題となっている.しかし心血 管救急も表面化していないが,同じ状況下にある.例え ば,日本循環器学会救急委員会の調査では,循環器医の 週平均勤務時間は約

69

時間(

80

時間以上が

18

%)であり,

宿直・当直・自宅待機を含めると仕事のない日が月に全 くなしは

18.8

%にのぼる(図1).この循環器医の劣悪 な労働環境を含めて施設の集約化と機能分化等々我が国 における循環器救急の現状は極めて大きな問題を抱えて いる.

 エビデンスに基づいた診療(

EBM

)の重要性が認識 される中で,救急治療においては,

ILCOR

が専門家に よるコンセンサス

CoSTR

5

年ごとに作成し,

AHA

CoSTR2005

に基づく

AHA

ガイドラインを作り,

Basic Life Support

BLS

) お よ び

Advanced Cardiovascular Life Support

ACLS

)のマニュアルを作成した.

2007

年,

日本循環器病学会では専門医試験の受験資格として

AHA

認定の

ACLS

受講を義務付けした.そして一般医 療従事者による

BLS/ACLS

施行後に専門医としての相 談・依頼(

expert consultation

)を受ける立場における循 環器医のための心血管救急全般にわたるガイドラインを 作成することとなった.

2004

年には

AED

の一般市民の 使用が認められ,その後

AED

は急速に普及し,一般市 民のための

BLS/AED

講習会が活発に開催されている.

心肺蘇生・

AED

の重要性が注目されるとともに,循環

Ⅴ.不整脈………1386

  1.頻脈 ………1386

  2.徐脈 ………1391

Ⅵ.急性冠症候群………1393

  1.急性冠症候群の診療と不安定狭心症・     非ST上昇型心筋梗塞の治療 ………1393

  2.ST上昇型急性心筋梗塞 ………1400

Ⅶ.その他の心血管救急………1408

  1.急性大動脈解離 ………1408

  2.急性心不全 ………1411

  3.急性肺血栓塞栓症 ………1414

  4.心タンポナーデ ………1417

  5.急性心筋炎 ………1419

  6.電解質異常 ………1422

  7.救急心疾患治療における中毒学 ………1426

  8.偶発的低体温 ………1430

  9.成人の先天性心疾患 ………1432

Ⅷ.蘇生後の治療………1434

  1.心停止後症候群     (Post cardiac arrest syndrome)の治療 ………1434

  2.体外循環式心肺蘇生法(Extracorporeal     cardiopulmonary resuscitation; ECPR)………1437

Ⅸ.小児のBLSとACLS ………1438

  1.小児の一次救命処置(PBLS)………1438

  2.小児の二次救命処置(PALS)………1440

Ⅹ.循環器救急医療に関する提言………1444

  1.心肺蘇生・蘇生科学に対する本学会の役割 ………1444

  2.循環器救急医療に対する提言 ………1446

Ⅺ.本ガイドラインで使用した薬剤・略語一覧………1446

文献………1449

(無断転載を禁ずる)

(3)

器医は自ら高度な心肺蘇生(

ACLS

)の実施のみならず 心拍再開後の救急治療の実践を求められている.さらに は,心血管救急疾患の特殊性から

ER

における初期治療 から救急治療を担うことが必要となる(図2).

 そうした背景において本ガイドライン作成とその意義 を確認にしておくことが重要である.すなわち本ガイド ラインの目的は循環器医の専門的知識・技能と,我が国 の限られた人的・物的資源のもとで患者の急性病態とお かれている救急医療環境,患者の価値観や行動およびエ ビデンス(多くは

Best Available Evidence

)を統合して,

患者にとって最も望ましい救急医療を提供することにあ る.換言すれば,医師の意思決定を支援する役割を担う もので,診療を制限したり拘束するものではなく,まし て医療訴訟の判断基準になるものでもない.例えば,急 性冠症候群に対する緊急経皮的冠動脈形成術の施行は医 療機関のみならず地域の格差が大きく,さらに循環器医 の技術や労働環境の格差を考慮すれば,本ガイドライン の推奨度に限界があることは明白である.

2 ガイドライン作成にあたっての考え方

 

BLS/ACLS

およびその後の循環器専門医のための心 肺蘇生・心血管救急ガイドライン(いわゆるエキスパー トコース)作成にあたっての考え方を示す.

●日本循環器学会が専門医資格として義務づけしている

AHA-ACLS

の要旨に加えて,

ACLS

による心肺蘇生 後(心停止後症候群)の専門医へのコンサルテーショ ンとして循環器医のなすべき心血管救急のガイドライ ンである.

●心血管救急疾患の急性期初期診療(おおよそ

24

時間)

における診断・治療について取り上げた.

●循環器診療に当たる循環器医が実際に遭遇する種々の 異なる臨床現場でも役立つことを念頭に置いた.その ために疾患や項目ごとの記載だけでなく,症候からの アプローチや鑑別疾患についても記載した.

●循環器救急疾患は極めて広範にわたるが,これまで

9

つの関連する各分野のガイドラインが作成されてい る.本ガイドラインでは,既存ならびに現在改訂作業 中のガイドラインとの整合性に留意した(表1).紙 面の制限から既存ガイドラインと同じの内容はクラス 分類等要約のみとし,引用文献も省略した.なお

2005

年以前のガイドラインについては文献を追加し た.

●循環器救急の現場で医師が心血管救急全般を迅速に理 解し,重要ポイントを把握し,具体的個別患者に対応 しやすくするため,できるだけ要約を加え,図表を多 くした.

●循環器救急の診断,治療,管理に関して一般に容認さ れる方法をできるだけ根拠に基づいた内容として提供 するが,救急医療では,地域や時間帯ならびに人員等 の異なる環境における救急診療のガイドラインとなる ために専門家のコンセンサスの部分が多く,多分野の 専門家の議論による合意を求めた.また,クラス分類 やエビデンスレベルは従来のガイドラインにならって 記載した.

図 1 循環器救急の現状(学会アンケート調査)

夜間宿直(翌日は通常勤務)

1〜3回 : 49.2%

4〜6回 : 49.2%

0回 : 15.9%

7〜9回: 6.7%

週の勤務時間

61〜70時間 : 21%

81時間〜

: 18% 51〜60時間 : 14%

〜50時間: 7%

オンコール(自宅待機)

1〜3回 : 12.5%

0回 : 25%

71〜80時間 : 14%

16〜回14.6%

13〜15回 : 7.3%

4〜6回 : 15.9%

7〜9回 : 12.5%

10〜12回 : 11.7%

10〜12回 : 11.7%

仕事のない休日

1〜3回 : 45.0%

0回 : 18.8%

4〜6回 : 31.7%

7〜回 4.5%

81時間〜

: 18%

16〜回14.6% 0回

: 18.8%

図 2 循環器専門医に求められる心肺蘇生・心血管救急の概念図

ACLS (循環器専門医義務化)

心血管救急(大動脈解離,心不全,肺 塞栓症,ショック,電解質異常,中毒,

低体温,先天性心疾患等)

専門家としての

ACS対応 専門家としての

不整脈対応 低体温治療 ECPR 小児

ALS 小児 BLS

ICLS(研修医,内科認定医義務化)

BLS(医療従事者,一般市民,医学生)

心停止

CPR AED 頻脈

徐脈

脳卒中 救急外来ACS

(4)

クラス分類

クラスⅠ:手技,治療が有効,有用であるというエ ビデンスがあるか,あるいは見解が広く一 致している.

クラスⅡ:手技,治療の有効性,有用性に関するエ ビデンスがあるか,あるいは見解が一致し ていない.

  Ⅱ

a

:エビデンス,見解から有用,有効である 可能性が高い.

  Ⅱ

b

:エビデンス,見解から有用性,有効性が それほど確立されていない.

クラスⅢ:手技,治療が有効,有用でなく,時に有害 であるとのエビデンスがあるか,あるいは そのような否定的見解が広く一致している.

エビデンスレベル

レベル

A

:複数の無作為介入臨床試験または,メタ 解析で実証されたもの.

レベル

B

:単一の無作為介入臨床試験または,大規 模な無作為介入でない臨床試験で実証され たもの.

レベル

C

:専門家および

/

または,小規模臨床試験(後 向き試験および登録を含む)で意見が一致 したもの.

レベル

D

:無作為介入臨床試験ではないが,専門家 の意見が一致したもの.

●我が国においては,使用できる薬剤やその用量・用法 は欧米と異なるが,日本循環器学会専門医には

AHA- ACLS

の受講が義務化されており,原則としてそれに 準拠したが,できるだけ我が国における実情や医療の 特殊性を考慮したうえで,解説を加えた.

●これまで本学会のガイドラインで取り上げられていな い電解質異常,

Toxidromes

,偶発性低体温について収 載した.

●救急診療において循環器小児科領域の知識も必要であ り,小児の

BLS

PALS

の解説を加え,さらに成人の先

天性心疾患の救急の特徴についても取り上げた(図2).

●我が国において著しく進歩をとげ,

ILCOR

でも注目 されている蘇生後治療(心停止後症候群)についても 別項をおいて記載した.

AHA-ACLS

には脳卒中が含まれるが,それは脳卒中 専門医の扱いとして本ガイドラインでは意識障害で触 れるにとどめた.

●ダイジェスト版の作成においては,ポケットマニュア ルとしての機能を持たせるように工夫し,薬剤一覧も 付けた.

●心血管救急を担う医師や病院の過重な環境等救急医療 の抱える問題点について,社会へのメッセージを発信 するために本学会が取り組むべき課題と解決に向けて の提言について言及した.

●本ガイドラインで使用した略語を表として付けた.

 本ガイドラインは

CoSTR2005

に基づく

AHA

ガイドラ インによる

ACLS

実施後(心停止後症候群)の循環器医 に求められる救急治療および心血管救急疾患全般を網羅 した,循環器医のための心血管救急ガイドラインである.

今後,

ILCOR

による

CoSTR2010

発表後には世界各国の ガイドラインは改訂され

BLS/ACLS

のマニュアルも改 訂される.したがって,本ガイドラインも

5

年以内には 改訂版が作成されることが必要となる.心肺蘇生・循環 器救急蘇生は新しい学際的科学領域であり,また救急で あるが故に高いレベルのエビデンスは極めて少ないが,

今後よりレベルの高いエビデンスおよび専門家の見解の 一致を得るべく努力を重ね,さらに心血管救急システム の改革を図ることを望んでやまない.

2 循環器救急の現況と課題

① 我が国では,複雑外傷・多臓器傷害に重点がおか れ,一次,二次,三次救急の順次搬送システムが 構築された.

表 1 本ガイドラインに関連するこれまでの日本循環器学会ガイドライン

・心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)

・急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療に関するガイドライン(2008年)

・脳血管障害,腎機能障害,末梢血管障害を合併した疾患の管理に関するガイドライン(2008年)

・急性冠症候群の診療に関するガイドライン(2007年改訂版)

・大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)

・急性心不全治療ガイドライン(2006年改訂版)

・急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン(2004年改訂版)

・肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断・治療・予防に関するガイドライン(2004年改訂版)

・不整脈薬物治療に関するガイドライン(2004年改訂版)

(5)

② 

1980

年代からは内科疾患重症が増加し,心停止 の救命率が低いことが問題となった.

③ 循環器疾患はいつ重症化するか予測が困難であ り,心停止や重症化する前に専門医が初期から関 わる必要があり,順次搬送システムでは対応でき ない.救急搬送の段階で循環器救急に対応できる システムの構築が救命率の向上につながる.

④ 心血管救急疾患に対応するために人的物的資源の 集約化するような心血管救急システムの抜本的改 革が必要である.

⑤ 心血管救急疾患の適切な早期受診に向けて地域住 民の教育啓発が必要である.

1 現状のシステム

 我が国の救急システムは,

1963

年の消防隊による救 急搬送業務の法制化,

1964

年に救急病院・救急診療所 の告示制度から始まり,

1977

年に救急医療対策事業要 綱が発表され,一次,二次,三次救急システムの順次搬 送システムが実施された.これにより重症の複雑外傷・

多臓器傷害例は,人口

100

万人に

1

施設の割合で設置さ れた三次救急医療機関である救命救急センターへの搬送 が勧められた.また,

1980

年代からは内科的疾患の重 症例が増加し,心停止の救命率が低いことが問題となっ た.そのために

1991

年に救急救命士法が制定され,そ の翌年に救急救命士による心停止に対する特定行為〔(気 管挿管,電気ショック,静脈路確保とアドレナリン(エ ピネフリン)使用〕が認められ,救命率の向上対策がと られてきた.今後の救急救命士制度の課題は,心停止前 と心拍再開後の処置の拡大がある.

2 循環器救急増加に対する課題

 近年,疾病救急(急病)が増加し,交通事故の減少と ともにその比率は約

6

割と増加している1),2.なかでも,

循環器疾患は脳卒中と心臓病をあわせると死亡率は癌と ほぼ同率であり,かつ死亡例や重症例の比率が高い(図 3).しかし,疾病,特に循環器疾患の発症時に重症度 の判定は困難なことが多く,搬送中に増悪し致命的にな ることもまれではない.心停止例やショック例等の重症 例のみを三次救急施設へ選別することは,重症化してか ら高度医療機関へ搬送することにもなりかねないため全 体の救命率向上にはつながらない.特に循環器疾患は,

専門医が初期から関わり救急医との密接な連携のもとに 一次から三次まで包括すべきであると考えられる.すな わち,循環器疾患は軽症とみえても,いつ何時急変・重

症化するかをトリアージすることが困難な疾患群といえ る.したがって,心停止前や重症化する前に全症例を循 環器専門医と連携することが重要である.そのためには,

地域でセンター化した基幹病院(総合病院,二次専門病 院,三次救急施設)が全例収容を目指す体制を確立する ことが必要である.

3 循環器救急システムモデルの提言

 急性心筋梗塞や脳卒中の発症数からみて,全国で約

200

か所の三次救命救急センターでの

CCU

あるいは

SCU

のみで全症例の収容は困難である.地域医療計画 やメディカルコントロールにおいて,地域のネットワー ク化を検討する必要がある.急性心筋梗塞を収容可能で あり,緊急の冠動脈カテーテル治療が可能となる基幹病 院と,それを支援する専門病院の連携システムをつくる.

基幹病院は,可能であれば複数のカテーテル治療室を

24

時間体制で運営が可能となるような診療態勢(交替 制勤務が可能となるスタッフ構成)と集約化をはかる.

人口

100

万人に

1

か所から

2

か所の基幹病院(脳卒中救 急センター,心血管救急センター等)を設置する.これ らの病院は二次あるいは三次を問わず地域ごとに設定す る.広域の場合には,ドクターヘリ搬送を検討する必要 がある.胸背部痛,呼吸困難,意識障害,麻痺を有する 症例を地域総合病院併設の二次専門病院と三次施設にお いて全例受け入れを行う体制をつくる.基幹病院に必要 な条件は,

CCU

SCU

機能を有し,専門医が複数体制 で

24

時間・

365

日体制で血栓溶解療法・カテーテル血管 内治療・心大血管および脳血管手術が可能であることで ある.また,通常の待機的診療と急性期から回復期まで の高度医療の提供や集中治療(補助循環・低体温療法)・緊 急外科チームとの連携も理想とされる.そのための人的 体制には,医師のみならず,コメディカルスタッフも含 めた交替制勤務が可能となるような支援が必要である.

死亡・重症

の割合 26% 26% 6% 11% 1% 2%

中等症以下 死亡・重症 350

300 250 200 150 100 50

0 脳

心臓 消化器

呼吸器 精神系

感覚器系

(総務省 平成18年度データ)

搬送人数千人

図 3 救急搬送重症度

(6)

4 地域市民への啓発:

生命危機管理をアピール

 心血管系,脳卒中,胸部症状,四肢の異常等があれば,

センター病院へ早期受診を推奨する.それ以外の不急の 症例は,安易な緊急受診を避けるため救急相談等で日中 の受診を誘導する.また,後期高齢者や介護施設入所症 例では,連携先病院との連携を強め,高度救急医療の適 用となるか,かかりつけ医や担当医と本人・家族とで日 頃から緊急時の対応を十分相談し,在宅医療の適用や機 能等,看取り機能を十分理解しておくことが重要と考え られる.

119

番通報の有効な使用方法を啓発し,不急な 症例と緊急例の区別を啓発する等,救急相談やマスメデ ィアの役割も重要である.

 また,国民全員が救急態勢を重要視し,重症例の不幸 な転帰についても寛容の精神と死生観を持ち,救急医療 を担うシステムを地域で守り育てることも必要であると 考えられる.

3 院外心停止

① 我が国における院外心停止は年間に約

10

万人で あり,そのうち

6

万人弱が心原性である.

② 我が国では世界に類を見ないウツタイン様式(心 停止の専門用語とその定義を定め,国際的に記録 様式を統一した)を用いた全国の疫学調査が進行 中である.

③ 我が国では市民による心肺蘇生法(

CPR

)と

AED

実施率がともに増加し,社会復帰は年々増加して いる.しかし,その社会復帰率は

6

%にしか過ぎ ない.

④ 日本循環器学会は日本蘇生協議会(

JRC

)に参画 し国際蘇生法連絡委員会(

ILCOR

)と連携し,

循環器救急医療における我が国のエビデンスを国 際的に発信し,さらに米国心臓協会と連携して

BLS

および

ACLS

講習を実施している.

⑤ 日本循環器学会の循環救急医療委員会は,日本蘇 生協議会(

JRC

)や国際蘇生連絡委員会(

ILCOR

) のエビデンスを発信することが求められる.

⑥ 院内心停止においては,非

ICU

病棟への

AED

設 置と蘇生行為の質の評価が注目されている.

1 院外心停止

 循環器救急疾患の代表的なものとして急性心筋梗塞が

あげられるが,過去

30

年間に再灌流療法等の導入によ り院内死亡率は低率となり

5

%前後となってきた.しか し,地域発症状況の全国調査では致命率は約

20

%と高 率で,死亡の半数は院外死であることが明らかになった.

現在,我が国における院外心停止は年間に約

10

万人で あり,そのうち

6

万人弱が心原性である.これは米国で も同様であり,急性心筋梗塞症救命対策のフォーカスは 院外にあるといえる3.院外心停止の救命対策には,米 国心臓協会(

AHA

)が提唱している救命の連鎖の確立 が重要であり,非医療従事者と医療従事者が連携して救 命に努めることが重要である.

①院外心停止の現状と対策

 臨床疫学の立場から院外心停止を定義し,国際的に共 通の様式で記録するためのガイドラインが作成され4, その様式は最初の会議の開催地にちなんでウツタイン様 式と呼ばれている.心停止とは「脈拍が触知できない,

反応がない,無呼吸で確認される心臓の機械的な活動の 停止」と定義され,心原性と推測できるものと非心原性 に分けられ,原因が不明な場合には除外診断に基づき心 原性と扱われている.ウツタイン様式の適用のメリット は,国際比較が可能となること,経年変化がわかること があげられる.我が国においても大阪府や東京都でウツ タイン登録が開始され,大規模データベースとなり,そ の報告は世界から注目されている.それによると院外心 停止のうち心原性で目撃のある初期調律が心室細動であ った例の救命と脳蘇生良好(社会復帰)例は年々増加し ている5(図4).この要因は市民の心肺蘇生法(

CPR

) 実施率の増加と通報から除細動実施までの時間短縮であ る.問題点は,院外心停止のうち心室細動率は約

20

% と低率であることである.心停止から心電図記録までの 時間が

3

分以内の場合には

50

60

%と高率に心室細動 が観察されるという東京都の長尾らの報告6から考える

傷病者 社会

復帰率

5万人 10万人

40%

20%

総数

心原性 除細動なし 市民による 除細動あり23.9%

102,738人

56,412人 1.2%

2005 2006 2007 年

29.2%

105,942人

57,982人 1.5%

35.5%

109,461人

59,001人 2.5%

図 4 心停止傷病者数と救命率の推移

総務省消防庁救急企画室心肺機能停止傷病者の救命率等の現況

(7)

と,心室細動率が低いことは,記録に至るまでの経過時 間が長いこと,市民の

CPR

実施率が低いため心静止と なることが大きな因子であると考えられる.

 心停止後,心室細動の状態を長くするためには,

CPR

の実施が有効である.救命の効果を検証した我が国から のエビデンスにより,発見者による胸骨圧迫(心臓マッ サージ)のみでも標準

CPR

と同様5あるいはより効果的7 である.市民の

CPR

実施率が,なお

30

40

%程度であり,

その理由として複雑あるいは口対口呼吸に対する嫌悪感 が あ る. 成 人 の 突 然 の 心 停 止 に 対 し て は,

AHA

hands-only CPR

として,我が国のエビデンスから勧告を 強調した8.しかし,

ILCOR

でのコンセンサスはまだ得 られていない.ただ日本としては

ILCOR

の結論をまち ながら,自動体外式除細動器(

AED

)の普及と市民に よる

CPR

,当面は特に胸骨圧迫(心臓マッサージ)実 施率をあげる方向でよいといえる.我が国では,総務省 により全国的なウツタイン登録が実施され,今後の対策 に重要なデータが蓄積されている9

②院外心停止に対する国際的な取り組み

 国際蘇生法連絡委員会(

ILCOR

)は,院外心停止に 対する国際的登録基準を作成したウツタイン会議のメ ンバーが母体となり

1992

年に設立され,米国,カナダ,

欧州,オーストラリア・ニュージーランド,南アフリカ,

ラテンアメリカの各蘇生協議会が加盟していた,アジ アからは,日本蘇生協議会(

JRC

)が中心となり,日本,

シンガポール,台湾,韓国により,アジア蘇生協議会

RCA

)が

2005

年に設立され,

ILCOR

加盟に加盟して いる(図5).

 

CPR

の 標 準 化 を 目 指 す 国 際 的 な ガ イ ド ラ イ ン は,

ILCOR

AHA

から提唱されている10.その特徴は,大 規模試験によるエビデンスに基づき勧告の優先度が決定 されたこと,

AED

の実施をはじめとする市民の積極的 な関与が謳われていることである.さらに

ILCOR

が蘇 生に関する勧告を国際標準化として発表し,それぞれの 蘇生協議会が地域の状況を加味してガイドラインを作成 することになった11

AHA

と欧州蘇生協議会(

ERC

) からガイドライン改訂の発表が同時になされ12,我が国 では救急蘇生法の指針(

2005

)として発表された13.  

AHA

ERC

は,ガイドライン策定とともに,ガイド ラインに基づいた蘇生教育も実施し,教育方法や教育ツ ールを開発し,その普及に努めている.

AHA

の国際ト レーニング組織(

ITC

)として,標準化された質の高い 一次救命処置(

BLS

)と二次救命処置(

ACLS

)の教育 コース(プロバイダーコース)が行われており,我が国 では

2003

年より始まった.日本では非

AHHA

コースも 成果を上げている.

③日本循環器学会の取り組み

 日本循環器学会では,循環器救急医療にまつわる諸問 題を検討し,循環器疾患の予後の改善を推進するための 方策を提言,実践する循環器救急医療委員会が設置され た(図5).

4

つの小委員会から構成される.

 蘇生科学小委員会は,循環器救急医療における我が国 のエビデンスを国際的に発信し,

JRC

に加盟し,

RCA

を通じて,国際ガイドライン検討組織である

ILCOR

と の連携を行い,国際ガイドライン策定にも協力している.

 循環器救急医療制度小委員会は,我が国の循環器救急 医療の現状を把握し,その課題を学会として広く提言す るための資料を作成する.

International Liaison Committee on Resuscitation 国際蘇生連絡委員会(ILCOR) 1992設立 American Heart Association

Heart & Stroke Foundation of Canada Inter-American Heart Foundation

Australian & New Zealand Committee on Resuscitation Resuscitation Council of Southern Africa

European Resuscitation Council

Resuscitation Council of Asia NRC Singapore NRC Taiwan Korean ACPR Indonesian RC

Japan Resuscitation Council

(日本蘇生協会)

日本循環器学会

International Training Center

AED検討委員会 蘇生科学小委員会 JCS-ITC運営小委員会 循環器救急制度小委員会 日本循環器学会

循環器救急医療委員会 図 5 心肺蘇生に関する世界と日本循環器学会の関係

(8)

 

AED

検討小委員会は,普及啓発委員会から移行した ものであり,さらに普及するために必要な事柄を循環器 専門医の立場から提言することを目的としている.

日本循環器学会は,広く蘇生教育を普及させ,救命 率の向上に寄与することを目的に,専門医の必修条件と して

AHA

ACLS

プロバイダーコース履修を決定し,

2007

3

月に

AHA

ITC

契約を締結した.

JCS-ITC

運 営小委員会を中心に,各支部において,

BLS

および

ACLS

講習を実施している(図5).

2 院内心停止への対策

 心停止をはじめとした院内での急変症例に対する対応 は施設の安全対策の確立として重要なテーマのひとつで ある.現在,公共の場だけでなく院内への

AED

の普及 が進みつつあるが,

AED

を有効に機能させるためには,

職員の認知の向上,心肺蘇生法教育の普及等が必要であ る.さらに,行われている蘇生処置の客観的評価,それ に基づく検証と現場へのフィードバックが不可欠であ り,院内ウツタイン様式に基づき検証することが必要と なる14.しかしながら,我が国では標準的な指針はなお 確立されていない.

 米国ではウツタイン様式に準じて,全米の病院による ウェブを活用した院内心停止登録が

NRCPR

NatioNal Registry of CPR

)として推進されている15.院内の

VF

に対して,除細動実施までの時間が

1

分遅れるごとに救 命率が数パーセントずつ低下することが明らかとなり,

除細動実施までの時間の遅れの要因が分析され16

200

病院で

7,479

例の院内心停止登録例が調査され,

2

分以

内に除細動が可能だったものは生存退院率が

39

%に対 し,

2

分以上の場合は

22

%と低率であった.個々の症例 の要因に加え,心停止の発生時間が週末や時間外の場合 には救命率が低く17,除細動の遅れの要因としてベッド 数(

200

未満),発生場所(

ICU

以外)があげられた.

訓練された病棟看護師による除細動については,蘇生チ ームと比べて救命率には差はなく,非

ICU

病棟では,

AED

の適用による救命率が有意に高かった.

 また,

AED

を用いた早期除細動とともに,注目され ているのが蘇生の質の客観的な評価とそれによる蘇生処 置の改善である.蘇生処置を客観的に評価したところ,

除細動実施直前の胸骨圧迫の中断が

10

秒以上,胸骨圧 迫の速さが

80

/

分未満,胸骨圧迫による胸部の沈みが

4cm

以下となると除細動成功率が低くなり,除細動前の 良好な質の

CPR

が必要であることが示された18)-20

CPR

の質を評価し,リアルタイムで音声フィードバッ ク可能なシステム(

Q-CPR

)が開発され,その利用に

より院内の救命率が高くなったことが報告された21),22

成人のBLS

1 成人の BLS(一次救命処置)

について

① 心停止の救命を円滑に行うための一次救命処置

BLS

)は,緊急通報と迅速な自動体外式除細動 器(

AED

)の手配,迅速な心肺蘇生(

CPR

),迅 速な電気ショック(除細動)である.これに二次 救命処置(

ACLS

)とあわせて救命の連鎖となる.

② 心停止の患者に対して,胸骨圧迫と人工呼吸によ る

CPR

をできるだけ早期に開始し,自己心拍が 再開するまで絶え間なく行う.

③ 

BLS

の手順は

1

)傷病者が反応のない場合,大声で人を呼び,

緊急通報と

AED

を手配する.

2

)頭部後屈あご先挙上法で気道を確保し,呼吸 を

10

秒以内で確認する.

3

)呼吸がなければ胸が上がるように人工呼吸を

2

回試みる.

4

)頚動脈の触知を

10

秒以内に確認する.

5

)脈が触知できなければ胸骨圧迫

30

回と人工呼 吸

2

回を繰返す.圧迫は強く,早く(約

100/

分),

絶え間なく行い,圧迫解除は胸がしっかり戻 るように行う.

6

AED

のスイッチをいれ,電極パッドを右上前 胸部と左下側胸部に貼る.

7

AED

の心電図解析を待ち,ショックが不要な 場合にはただちに

CPR

を再開する.

8

)ショックが必要であれば電気ショック(除細 動)を

1

回行った後にただちに

CPR

を再開す る.

2

分または

5

サイクルの

CPR

後に

AED

に よる心電図解析することを繰り返す.

●なお,人工呼吸ができない・したくない人は,胸骨 圧迫のみ蘇生を開始する.

1 救命の連鎖

 院外で突然の心停止を発症した傷病者の初回のリズム 解析で,心室細動(

VF

)が

40

%に認められる23),24

VF

である間に迅速な救命処置を行えば救命可能であるが,

いったん心静止に陥るとその成功の見込みが激減す

(9)

25.迅速な救命のために必要な行動を円滑に行うのが,

「救命の連鎖」である26(図 6).⑴緊急通報と自動体外 式除細動器(

AED

)の迅速な手配.⑵迅速な心肺蘇生 法(

CPR

)を行うことで突然の心停止の救命率が

2

倍以 上になる25),27.⑶迅速な電気ショック(電気的除細動): 倒れてから

3

5

分以内に電気ショックと

CPR

を行えば 生存率は上昇する28.⑷資器材や薬剤を使用した二次救 命処置(

ACLS

),さらに蘇生後ケアを行う.

2 BLS(一次救命処置)

 一次救命処置(

BLS

)とは,救命の連鎖のうちの最初 の

3

つの要素を包括する概念である.感染防御具や電気 的除細動のための

AED

以外には,特別な資器材を必要

としない.思春期以降の患者を成人として対応する.図 7に日常的に蘇生を行う者および

ALS

を習得した者が行 う

BLS

のアルゴリズムを示す.

3 心肺蘇生

 心肺停止の患者の呼吸・循環機能を維持する目的で胸 骨圧迫および人工呼吸を行うことを心肺蘇生(

CPR

)と いう.心肺蘇生は心停止発生後できるだけ早期から開始 して,絶え間なく行うことが重要であり,良質で絶え間 ない胸骨圧迫こそが心肺停止患者の救命を大きく左右す る因子である.

①発見時の対応手順(通報と CPR 開始の優先順位)

 肩を叩きながら大声で呼びかけても,何らかの応答 や目的のある仕草がなければ「反応なし」とみなす.

反応がなければその場で大声で叫んで周囲の注意を喚 起する.誰かが来たら,その人に緊急通報(

119

番通報)

AED

の手配を依頼し,自らは

CPR

を開始する.院 内の場合には救急カートも手配する.救助者が一人だ けのときは,自分で緊急通報を行い,

AED

が近くに あればそれを取りに行った後に,

CPR

を開始する.

ただし,呼吸の異常による心停止が疑われる傷病者に 図 6 救命の連鎖

①緊急通報と

 AEDの手配 ②迅速な

 CPR ③電気ショック

 (電気的除細動)④二次救命  処置(ACLS)

Circulation 2005; 112(24 suppl):Ⅳ1-203より

反応なし 気道を確保し,呼吸を確認

呼吸がなければ,胸の上がる人工呼吸を2回行う 脈拍を確信できるか?

(10秒以内)

心電図解析 除細動の適応は?

大声で叫ぶ,緊急通報,AED

脈あり ・5〜6秒ごとに人工呼吸を1回

・2分ごとに脈拍をチェック 脈がないか不確実

準備ができていれば 胸が上がる人工呼吸2回 胸骨圧迫30回+人工呼吸2回を繰返す

(AED装着まで,ALSチームに引き継ぐまで,

または傷病者が動き始めるまで)

圧迫は強く,早く(約100/分),絶え間なく 圧迫解除は胸がしっかり戻るまで

胸骨圧迫の中断を最小限にする AED装着

ショック1回 ただちにCPRを再開

5サイクル(2分)

ただちにCPRを再開 5サイクル(2分)

適応あり 適応なし

図 7 成人の BLS のアルゴリズム

(10)

救助者が一人だけで対応した場合には,緊急通報や

AED

の手配を行う前に

5

サイクルもしくは約

2

分間の

CPR

を行う.

②呼吸の確認

 気道確保のための頭部後屈あご先挙上法,または下 顎挙上法を行い29,呼吸があるかどうかを

10

秒以内 で確認する.反応がなく,かつ呼吸がない場合は心肺 停止である可能性が高い.心停止直後には死戦期呼吸,

いわゆる喘ぎ呼吸が認められることがあるが,呼吸が ないものとして取り扱う.

回復体位

 反応はないが,呼吸および確実な脈があり,かつ 外傷のない場合は,傷病者を回復体位にして専門家 の到着を待つ.

③人工呼吸

 呼吸がなければ,気道確保のための頭部後屈あご先 挙上法,または下顎挙上法を続けながら人工呼吸を約

1

秒かけて

2

回行う.胸の上がりが見える程度の量を 送気する.なお,口対口人工呼吸を行う際には感染防 護具を使用すべきである.可能な場合には,できるだ け高濃度の酸素で人工呼吸を行う.送気量の目安は,

人工呼吸の方法に関わらず,すべてで「胸が上がるの が見てわかるまで」とする.この送気量は

6

7mL/

kg

に相当する.

1

回目の人工呼吸によって胸の上がり が確認できなかった場合は,気道確保をやり直してか ら

2

回目の人工呼吸を試みる.

2

回の試みが終わった ら,うまく胸が上がらなくてもそれ以上は人工呼吸を 行わず次の手順に進み,心停止が確認されればただち に胸骨圧迫を開始すべきである.

胸骨圧迫のない人工呼吸

 呼吸はないが脈を確実に触知できる場合は人工呼 吸のみを行う.この場合の呼吸数は

10

/

分程度と する.人工呼吸は

1

回につき

1

秒かけて行う.およ そ

2

分ごとに確実な脈拍が触知できることを確認す る.

④心停止の確認

 反応がなく,呼吸がなく,頸動脈が確実に触知でき なければ

CPR

が必要である.脈の確認に

10

秒以上を かけてはならない.

⑤ CPR の開始手順

 心停止と判断した場合は,胸骨圧迫

30

回と人工呼 吸

2

回の組み合わせを速やかに開始する.ただし,人 工呼吸が実施困難な場合は胸骨圧迫を優先し,人工呼 吸は実施が可能になり次第始める.心原性の突発性心 停止では,まだ肺胞内および血液中に利用可能な酸素 が含まれており,人工呼吸よりも胸骨圧迫を開始する 方が良いと考えられる.バッグバルブマスクや感染防 護具が手元にない等,ただちに人工呼吸を行うことが できない場合には,胸骨圧迫のみを開始すべきであ る30.ただし,この肺胞内,血液内の酸素は数分で消 失するために,呼吸の補助を加える余裕ができた時点 で,それを行う体制も考慮する.

⑥胸骨圧迫の方法

 胸骨圧迫の効果を発揮するために,傷病者をバック ボードや床等の硬い平面上に仰臥位に寝かせる.胸骨 圧迫の位置は,「胸の真ん中」あるいは「乳頭と乳頭 を結ぶ線の胸骨上」のいずれかを目安とする.胸骨圧 迫の速さは

1

分間に約

100

回とする.胸骨が

4

5cm

沈むまでしっかり圧迫する.ただし,圧迫の強さや深 さが不十分になりやすいので注意すべきである.圧迫 を解除するときには,掌が胸から離れないように注意 し,しかも胸が元の位置に戻るように充分に圧迫を緩 めることが重要である31

胸骨圧迫の評価

 胸骨圧迫の効果は圧迫の深さや速さで評価すべき であり32,頸動脈では評価すべきでない.

⑦胸骨圧迫と人工呼吸の比

 胸骨圧迫と人工呼吸の回数比を

30

2

とする.胸骨 圧迫の連続回数

30

回はあくまで目標であり,

30

回を 正確に実施することに固執する必要はない.

⑧胸骨圧迫の役割交代と中断時間

 胸骨圧迫の連続回数が増加し,救助者が疲労したこ とを自覚しないまま,胸骨圧迫の深さが不十分になる 可能性があるので注意が必要である.交代可能な場合 には,たとえ救助者が疲労を感じていなくても,胸骨 圧迫の交代要員がいる場合には,胸骨圧迫の担当を

5

サイクル(

2

分)おきに交代することが望ましい.交 代は

5

秒以内に済ませるべきである.

AED

を用いて 除細動する場合や階段で傷病者を移動させる場合等の

(11)

特殊な状況でない限り,胸骨圧迫の中断時間は

10

秒 以内にとどめる.

⑨非同期 CPR

 気管挿管下での

CPR

では,人工呼吸の際に胸骨圧 迫を中断せず,人工呼吸と胸骨圧迫を非同期で行う.

この場合の人工呼吸の回数はおよそ

10

/

分とする.

コ ン ビ チ ュ ー ブ, 食 道 閉 鎖 式 エ ア ウ ェ イ,

LMA

Laryngeal Tube

が挿入された場合も,適切な換気が可 能なら非同期で行う.非同期で

CPR

を行う場合は,

人工呼吸回数が過剰になりがちなので注意が必要であ る.人工呼吸回数の増加によって換気量が増加すると 平均胸腔内圧が上昇するため,静脈還流が減少して心 臓からの拍出量が減り,冠灌流圧の低下も招き,生存 率が低下する可能性が指摘されている33

⑩胸骨圧迫のみの CPR

 ただちに人工呼吸を行うことができない場合や一般 市民が人工呼吸を躊躇する場合には,胸骨圧迫のみの

CPR

を推奨する.

CPR

を行わないときよりも胸骨圧 迫のみを行うほうが生存率が高い34.さらに我が国に おけるコホート研究では,人工呼吸を加えた方法より も胸骨圧迫のみの

CPR

が予後が良いと報告されてい る7

⑪前胸部叩打法

 モニター下で発生した目撃のある心室細動

/

無脈性

VT

で,ただちに除細動器が使用できない場合は,即 座に

1

回だけ前胸部叩打を行ってもよい.拳で約

20cm

の高さから胸骨の下半分を鋭く叩く.ただし合 併症もあるため,訓練を受けた医療者のみが行う.市 民には指導しない.

4 AED による電気的ショック(除細動)

①除細動と CPR の組み合わせ

 早期除細動は突然の心停止から蘇生するために極め て重要である.除細動が実施されるまでの時間は様々 であるが,

AED

の使用前に

CPR

が行われた場合には 生存率が

2

倍から

3

倍になる25),27.バイスタンダーが すぐに

CPR

を実施することで,成人の心室細動の多 くは神経学的機能を損なうことなく蘇生できる可能性 が高くなる.除細動が心停止後,約

5

分以内に行われ た場合は特に転帰が良い28

CPR

と除細動のいずれ の実施が遅れても,突然の心停止からの蘇生の可能性

は低くなる.

②除細動波形とエネルギーレベル

 心室細動の停止において,単相性波形に比べ安全性,

有効性ともに優れている二相性波形が推奨される35. 種々の二相性波形を直接比較した報告はまだない.我 が国では二相性

AED

が導入され始めているものの,

既存の除細動器の多くが単相性である.出力されるエ ネルギー量は装置のタイプにより異なる.

 単相性

AED

を用いる場合のエネルギー量について は,初回のエネルギー量としては最大量

360J

を推奨 する.二相性

AED

を用いる場合のエネルギー量につ いては,メーカーが既定したエネルギー量(

120

200J

)で電気ショック(除細動)を行う.

③ AED の使用と一般市民向け AED プログラム  市民であれ医療従事者であれ,訓練を受けた者が

AED

を使用することは,心停止傷病者の生存率を向 上させるために推奨される.有効な対応計画が整備さ れているなら,心肺停止を目撃する可能性のある場(公 共施設,空港,駅,学校,スポーツ施設等)において,

AED

を迅速に使用できるよう整備することが望まし い.上記の対応計画には,器材のメンテナンス,初期 応答者のトレーニング,地域の救急医療システムとの 連携,プログラムのモニター等が含まれるべきである.

 早期の除細動を実現するには,業務として救急蘇生 にあたる者だけでなく,一般市民によってただちに除 細動が行われるシステムを推進することが重要であ る.市民による除細動(

Public access defibrillation

PAD

)プログラムとして,病院外心停止の発生状況把 握,

AED

の配備計画,救助者の育成,結果の検証が 重要である.

PAD

プログラムは医学的見地に基づい て救急医療サービスの質を管理する体制下で実施され るべきである.我が国においても,製品の誤動作に関 する報告が散見される.設置された

AED

の情報をモ ニターするシステム構築が望まれる.また,

AED

そ のものの研究が必要である.

AED

に関する検証体制 の構築・整備も今後の課題である.人工呼吸のタイミ ングや胸骨圧迫の早さを音声で案内する器具や

CPR

手順の音声ガイド(

AED

等)は

BLS/CPR

を円滑にす るための補助として有用と思われる.

④電極の配置

 

AED

の電極パッドは右上前胸部(鎖骨下)と左下 側胸部(左乳頭部外側下方)に貼付する.貼付の代替

(12)

位置として,上胸部背面(右または左)と心尖部とに 貼付する方法(

apex-posterior

)も考慮される.パッ ドを貼る場所に医療用の植込み器具がある場合には,

器具からパッドを

2

3cm

以上離して貼る.植込み式 除細動器の電気ショックが作動している,すなわち,

体外式除細動がなされているときのように,傷病者の 筋肉が収縮している場合,その作動が完了するまで

30

60

秒待ったあとで

AED

を取り付ける.時に自動

ICD

AED

の解析・ショックサイクルは競合する.

電極パッドは経皮的な薬剤パッチ(ニトログリセリン,

ニコチン,鎮痛薬,ホルモン薬,降圧薬等)や湿布薬 等の上に直接貼るべきではない.貼付場所の薬剤パッ チ等を取り去り,その部位を拭き取った後で電極パッ ドを貼り付ける.胸毛が多い場合には,パッドが密着 しないために

AED

の効果が半減する.電極パッドを 強く押し付けても密着しない場合は,予備のパッドが あれば,最初のパッドで胸毛を剥がした後に新しいパ ッドを貼る.カミソリが入っている場合には胸毛を剃 ってからパッドを貼ってもよい.傷病者の体が濡れて いる場合には,胸の水分を拭き取ってから電極パッド を貼り付ける.

AED

は,傷病者が雪や氷の上に倒れ ているときも使うことができる.

⑤ AED の操作

 ⑴ まず

AED

の電源を入れる.電源スイッチを押す か,モニターのカバーを開く.以降は音声と点滅ラ ンプの指示に従う.

 ⑵ 前述のように電極を貼る.

 ⑶ 

AED

が心リズムを解析する間は,傷病者から離 れる.解析はボタンを押す場合と自動の場合がある.

 ⑷ 電気ショックが必要と判断すると自動的に充電を 開始する.ショックボタンを押す前に,自分,他者 に離れるように勧告し目視で確認する.ショックは 不要ですという音声メッセージの場合には,ただち に

CPR

を再開する.

 ⑸ 

1

回ショック後の

CPR

再開

   対象傷病者に対し,電気ショックを

1

回行った後,

観察なしにただちに胸骨圧迫を行う.

2

分(または

5

サイクル)の

CPR

後に除細動器で心電図を解析す る.以後,必要に応じてショック→

CPR

→心電図 解析を繰り返す(ただし,院内

CPA

で,持続的に モニタリングされている症例に関しては,医師の判 断で連続的なショックを行ってもよい).充分な循 環が戻る,または専門家チームに引き継ぐまで,

CPR

を継続する.

⑥ AED の院内使用

 病院内の早期除細動(目標は虚脱から

3

分以内)を 実現にするために,

AED

の病院内設置も検討されて きた36.スタッフの技能が不足している施設や,除細 動器がめったに使われない部署では特に

AED

の設置 が有用である.早期除細動を実現するためには,現場 の職員が

AED

使用訓練を受け,その使用を許可され ていることが望ましい.病院は病院内心停止の発生状 況を把握し,

AED

の配備計画を立て,職員を訓練し,

その効果を検証することが重要である.

⑦除細動器データ収集

 除細動器の機器データ,つまりエネルギー量や波形 に関する研究データを収集することは重要である.除 細動器使用中の音声・波形等の諸データを収集するこ とは必要である.

5 気道異物

 異物による気道閉塞を認識することが蘇生成功の重要 な鍵となる.気道閉塞のサインは.音のない咳,チアノ ーゼ,声が出ない,息ができないといったサインを呈す る.傷病者自らが,首をわしづかみすることは,万国共 通の窒息のサインである.喉が詰まっているのですかと 尋ねる.今から窒息を解除することを伝えて安心させる.

①気道異物除去:意識のある場合

 気道異物による窒息が疑われる場合は,ただちに緊 急通報(

119

番通報)をするよう誰かに依頼し,救助 者はただちに以下の方法を試みる.ただし,傷病者が 激しく咳き込んでいる場合には,本人の努力に任せる.

救助者が一人だけの場合は,緊急通報する前に以下の 方法を試みる.

 背部叩打法と腹部突き上げ法を併用する37.その回 数や順序は問わない.妊婦,極端な肥満者の場合は(腹 部突き上げ法は行わず),腹部突き上げ法に代えて胸 部突き上げ法を行う.

②気道異物除去:意識のない場合

 反応がなくなった場合は,緊急通報(

119

番通報)

をしていなければ通報し,その後,通常の

CPR

を行う.

ただし,気道確保をするたびに,口の中を覗き,異物 が見え,摘出が容易なら取り除く.盲目的指拭法は行 わない.可能なら喉頭展開下で異物を除去する.

(13)

6 その他の参考事項

①電話を通じての心停止確認

 通信指令は,通報者が死戦期呼吸(いわゆる喘ぎ呼 吸)を「呼吸あり」と誤認する可能性があることに充 分注意する必要がある.通信指令は適切な問いかけに よって,通報者が死戦期呼吸を正常な呼吸と混同しな いように導くべきである.

②口頭指導による CPR の方法

 

CPR

ができるかどうかを尋ね,できないと答えた 場合には胸骨圧迫のみ(人工呼吸を行わない

CPR

) を口頭で指導する.その他の状況においても,プロト コルにしたがって胸骨圧迫のみの

CPR

を口頭指導す ることを考慮してよい.

③口頭指導の質管理

 通報内容から心肺停止状態が疑われる場合,通信指 令は適切な表現方法を用いて,通報者が正確な状況を 把握できるよう導くべきである.心肺停止状態および 気道異物による窒息が疑われる傷病者からの緊急通報 においては,明文化された手順にしたがった口頭指導 が行われるべきであり,その手順について定期的に訓 練を受けることが望ましい.口頭指導の指導実績およ びその効果は指導内容の記録に基づいて科学的に検証 されることが望ましい.

④応答時間その他

 心肺停止に対する応答時間をできるだけ短縮するた めの努力と工夫を継続すべきである.ウツタイン方式 に関わる覚知時刻やバイスタンダー

CPR

の定義は正 しく統一されるべきである.救急活動に関わる時刻を 正確に把握・記録する体制(時計の同調管理を含む)

が必要である.

⑤救急隊における電気ショックと CPR の優先順位  救急通報から救急隊の現場到着までに

4

5

分以上 を要した症例で初期心電図が心室細動であった場合に は,ただちに電気ショックを行う(

Shock-first

)プロ トコルに代えて,約

2

分間の有効な

CPR

を行った後に 電気ショックを行う(

CPR-first

)プロトコルを採用す ることが望ましい.

CPR-first

プロトコルの有用性お よび

CPR-first

プロトコルにおいて電気ショック前に 行うべき

CPR

の時間,対象とすべき傷病者等につい

ては,各地域の医学的見地に基づいて救急医療サービ スの質を管理する体制下で今後さらなる検証を行うこ とが望ましい.

⑥病院内 Medical Emergency Team

 院内救急蘇生チームは,病院内の心肺停止件数,死 亡数,予期せぬ

ICU

入室を減少させるために有効と 考えられる.

⑦頸損疑いの気道確保

 頸椎(髄)損傷を疑う傷病者の気道確保では,下顎 挙上法による気道確保が第一選択である.下顎挙上法 が無効なら頭部後屈・あご先挙上法による気道確保を 試みる.

⑧頸椎の非動化

 外傷のある傷病者に対して頭頸部を非働化する場 合,人手がある限り用手的方法を優先する.

成人のACLS

1 成人の二次救命処置(ACLS)

① 二次救命処置(

ACLS

)では,心停止に対してそ の背景疾患を鑑別診断しながら,質の高い心肺蘇 生に除細動器や薬剤等を併用する.

② 

ACLS

では電気ショック(除細動)が必要な心室 細動(

VF

),無脈性心室頻拍(

pulseless VT

)と 電気ショック(除細動)が不要な無脈性電気活動

PEA

),心静止(

Asystole

)の

2

つのアルゴリズ ムがある.質の高い

CPR

は,

BLS

での

CPR

に加 えて高度な気道管理を併用する.

③ 電気ショック(除細動)は,二相性を推奨する.

単相性では

360J

,二相性では

120

200J

1

回行 う.

④ 静脈路を確保し血管収縮薬(アドレナリン,バソ プレシン)を使用する.

⑤ 血管収縮薬を含む

CPR

でも

VF

が持続する場合に 抗不整脈薬(アミオダロン,リドカイン,ニフェ カラント,硫酸マグネシシウム)を考慮する.

(14)

⑥ 無脈性電気活動(

PEA

)は,心臓の電気活動は認 められるが脈拍が触れない状態と定義される.

⑦ 

PEA

,心静止に対して電気ショック(除細動)は 行わず,

CPR

を行う.

⑧ 

PEA

,心静止に対して静脈路を確保し薬剤を投与 する(アドレナリン,バソプレシン,アトロピン).

⑨ 心停止の原因を検索し治療する.

1 二次救命処置(ACLS)の意義

 二次救命処置(

ACLS

)では,心停止に対して

AED

以外に高度な気道管理や薬剤等の資材を用いて処置と治 療を行う.その際には心停止の原因と背景疾患を鑑別診 断する.こうして心停止と非心停止が連続性を持つこと を認識する中で,心停止の予防と心停止からの回帰を図 る方法が学習される.心停止を来たす病態を学び心停止 治療の適切なアルゴリズムを示す(図8).アルゴリズ ムは蘇生行為を迷うことなく確実に行うための手順をエ

ビデンスを吟味して整理したものであり,蘇生を行うも のは個人がこれを実践できるようにするとともに蘇生に 参加する全員がこれを共有することが重要である.しか しながら,現実の蘇生現場においては人的資源や機材等 での様々な制限があり,アルゴリズムは状況に応じて臨 機応変に改変され得るものである.

2 ACLS における心停止の 2 つの アルゴリズム

(図8)

 脈を触れない心停止は,

VF

,無脈性

VT

PEA

,そし て心静止(

Asystole

)の

4

つに分けられる.しかし目撃 された成人

collapse

(卒倒)患者では

VF

・無脈性

VT

を 念頭におき対応すべきである.なぜなら目撃された心停 止の多くが

VF

あるいは無脈性

VT

であり,しかも電気 ショック(除細動)により回復できる可能性が高いから である23),24),38),39.大血管で脈が触れない無脈性

VT

VF

と同等な病態として扱われその治療方法も同様であ る.したがって,心停止リズムはショックが有効な

VF/

ただちにCPRを再開 5サイクル(2分)

高度な気道確保を考慮 末梢静脈路を確保し薬剤投与  アドレナリン1mg,3〜5分おき

 徐脈性PEA,心静止に対して

 アトロピン1mg,3〜5分おき,3mgまで

原因を検索し治療する(6H6T他)

循環血液量減少 hypovolemia 低酸素血症 hypoxia

低・高カリウム hypo/hyperkalemia アシドーシス hydrogen ion 低体温 hypothermia 低血糖 hypoglycemia

緊張性気胸 tension pneumothorax 心タンポナーデ tamponade 毒物 toxins

血栓症(冠,肺動脈) thrombosis 外傷 trauma

心不全,大動脈解離,心筋炎等 ショックを行う,ただちにCPRを再開

抗不整脈薬を考慮 (iv/io)

 アミオダロン初回150~300mg,追加150mg

 リドカイン初回1〜1.5mg/kg,追加0.5〜0.75mg/kg,最大3mg/kg  ニフェカラント0.1〜0.3mg/kg

 低Mg血症が疑われる場合 マグネシウム 1〜2g ショックを行う

二相性 120~200J 単相性 360J ただちにCPRを再開

心リズムをチェック:ショックの適応か?

ショックを行う,ただちにCPRを再開 末梢静脈路を確保し薬剤投与

 アドレナリン1mg,3〜5分おき

電気活動あれば脈拍チェック 脈拍触知良好なら,蘇生後ケアへ

心リズムをチェック:ショックの適応か?

心リズムをチェック:ショックの適応か?

心リズムをチェック:ショックの適応か?

CPR (30:2),除細動器/心電図装着

ショックの適応か?

VT・VFへ 反応なし

無脈性心停止

VT・VF 心静止・PEA

ショック適応 不要

CPR5サイクル(2分)実施

適応

CPR5サイクル実施

CPR5サイクル実施 適応

いいえ

いいえ

いいえ 適応

CPR5サイクル(2分)実施

適応

図 8 心停止へのアルゴリズム

表 5 意識障害の分類 JCS (Japan coma scale)
表 6 意識障害の分類 Glasgow Coma Scale (GCS)
図 16 発作性上室頻拍の停止 ー静注ー ベラパミル  2.5〜5.0mg を 2 分かけて静注 * 無効例では 5mg を 15〜30 分ごとに総量 20mg. ジルチアゼム  15〜20mg を 2〜3 分かけて静注 * 無効例では 20〜25mg を 3 分かけて追加. Na チャネル遮断薬 を考慮 DC ショック 高頻度ペーシング ー急速静注ーATP10mg 無効の場合には20mgを2 回まで DC ショック 50〜100J から漸増高頻度ペーシングa)Valsalva手技,頚動脈洞マッサージ *保
図 19 非 ST 上昇 ACS への初期診療アルゴリズム 救急隊員による対応と病院選定 ・モニター装着,気道・呼吸・循環のサポート ・必要に応じ酸素を投与 ・傷病者が求めれば本人の持つ硝酸薬舌下を補助 ・緊急 PCI を施行できる施設を選定 初期救急医療機関の対応と救急車の要請・バイタルサインと身体所見を評価・12誘導心電図を記録し評価 ・末梢静脈路を確保し,MONA(モルヒネ,酸素,硝酸薬, アスピリン)を考慮 ・緊急 PCI を施行できる病院を選定し搬送を救急隊に指示 病院救急部門での評価(10 分以
+2

参照

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