総 説
高分子一溶媒系の相互拡散係数の測定ならびに推算法
小 潮 茂 寿,*熊 田 誠,*荒 井 康 彦 **
MeasurementandPredictionorMutualDiffusionCoefficientsforPolymer‑SolventSystems by
ShigetoshiKoBUCHI†,MakotoKuMADAIandYasuhikoARAIII Abstract
Variousmethodstomeasureandpredictbinarymutualdiffusioncoefficients forpolymer‑solventsystemsarereviewed. Typicalconcentration dependent mutualdiffusioncoefficientsareillustrated and theirfeaturesaredescribed.
Severalmethodstomeasurethem arealsoshown. Inaddition,oneoftheuserul methodsbasedonadissolvedsolidcoordinatetechniqueisexplainedindetail andanexampleisglVenfortheacrylicadhesive‑acetonesystem. Furthermore, threetheoreticalmodelstopredictthemutualdiffusioncoefficientsareintrodu‑ cedandthepredictiveabilityofeachmodelisdiscussed.
KeyWords:MutualDiffusionCoefficient,PolymerSolution,OrganicSolvent
1. は じめに
高分子製造過程 において,高分子中に取 り残 された 微量なモノマーや溶媒 は,高分子成形品の品質 の低下 を もた らすだけでな く,人体 に悪影響を与え るなど安 全性の面か らも問題 とな っている。たとえば,ポリカー ボネー トやポ リア リレー トの原料であるビスフェノー ルAなどは,環境 ホルモ ンと して あげ られ,動物 の 生殖機能 に異常を もた らす ことが最近指摘されている。
平成10年7月13日受付
*山口大学工学部応用化学工学科
〒755‑8611 宇部市常盤台2557
**九州大学大学院工学研究科化学 システム工学専攻
〒812‑8581福 岡市東区箱崎6‑10‑1
IDepartmentofApplledChemlStryandChemical Engineering,FacultyofEngineering,Yamaguchi Universlty,2557Tokiwadai,Ube,755‑8611, ITDepartmentofChemicalSystemsandEngineering,
GraduateSchoolofEngineerlng,KyushuUnlVerSlty, 6‑10‑1Hakozakl,HlgaShi‑ku,Fukuoka812‑8581
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このような有害物質を含む高分子成形品を廃棄す るこ とは,地球の環境汚染 にもつなが る。 したが って,高 分子中に残存す る溶媒 (以下では,モノマーも含 めて 溶媒 と呼ぶ)を 0濃度 まで短時間で効率的 に除去す る 装置の開発 はひとつの重要な課題である。 このような 分離装置の設計 には,相互拡散係数 データが必要不可 欠 となる。
これまで,ポ リスチ レンやポ リエチ レンのような工 業上代表的な高分子 に対 して,比較的多 くの相互拡散 係数データが報告 されている。 しか しなが ら, これ ら 以外の高分子 に対す る相互拡散係数 データの蓄積 は十 分でな く,特 に共重合体系 については,その報告 はほ とんど見当た らない。また,代表的な高分子系でさえ, 温度や濃度範囲が限定 されている現状 にある。 この よ
うなことか ら,広 い温度 な らびに濃度範囲で通用可能 な相関あるいは推算法の開発が強 く望 まれている。
ここでは,濃度依存性を示す高分子 と溶媒か らな る 2成分系の相互拡散係数の測定法な らびに推算法 につ
78 小測茂寿 ・熊田 誠 ・荒井康彦
いて紹介す る。
2.相互拡散係数 の特徴
高分子‑溶媒系 の相互拡散係数 は,温度 に依存す る だけでな く,一般 に濃度 に も依存す る。特 に低濃度域 において は数桁 にわたる変化 を示す場合 も珍 しくはな い。典型的な濃度変化 を示す例 として,ポ リスチ レンー エチルベ ンゼ ン系 の相互拡散係数1)をFi9.1に示 す。
エチルベ ンゼ ンの濃度が低 いところで は,相互拡散係 数が2‑ 3桁 にわた り変化 して い る ことがFig.1よ りわか る。 また,温度 の低下 に伴 い,その変化 が著 し くな っていることがわか る。Fig.2は, スチ レンー ブ タジェ ン共重合体 (SBR)系 の共重合組成 の変化 によ る130℃ における相互拡散係数 の濃度依存性 2〕を示 す。
ルベ ンゼ ン系 とは逆 に,溶媒濃度 の増加 に伴 い相互 拡 散係数 は減少す る傾 向を示 してい る。 また,共重 合体 組成 におけるブタジェ ンの増加 につれ,相互拡散係数 は溶媒濃度 の増加 に伴 い増加す る方向か ら減少す る方 向に変化す る様 子がわか る。高分子 と溶媒 の組み合 わ
ナ ン系 のよ うに,拡散係数が濃度 の増加 と共 に減少 す る特異的な挙動 を示す系 も存在す る。 しか しなが ら,
‑椴 に低濃度域 の相互拡散係数 は濃度の増加 に伴 い増 加 し, しか も大 き く変化す る場合が多 い。 また, 高分
1019
10‑10
‑ ■
▼■I帆
…貞 10‑llll
q
l0‑12
10‑13
0 0.2 0.4 0.6 Massfmctionofethylbenzene l‑I
Flg.1 ConcentratlOndependenceofmutual diffuslOncoefficientsforpolystyrene‑ ethylbenzenesystem
0.00 0.05 0.10 0.15 Massfractionofn‑nonaneI‑]
Fig.2 Influenceofpolymercompositiononcon‑
centrationdependenceofmutualdiffuslOn coefflClentSforStyrene‑butadienerubber (SBR)一n‑nOnaneSystem at130oC
(SBR(30)denotes30mass%styrenein SBR)
子系 の相互拡散係数 は液体系のそれ と比較 して2‑4 桁 はどもその値 は小 さい。 したが って,微量 の溶媒 を 効率的 に除去す るために,乾燥操作 や抽 出操作 などを 行 う分離装置 の設計 において は, この領域での正確 な デー タが特 に重要 とな る。
相互拡散係数 が濃度 に依存す る場合 の測定 は複雑で あ り,濃度域 によ り種々の測定 法 が提 案 されて い る。
そ こで,次節で は相互拡散係数 の測定法 について述 べ る。
3.相互拡散係数の測定法
溶媒 の低濃度域,すなわち高分子 の濃度が高 い領 域 での測定法 には,ガスクロマ トグラフ法,透過法, 濃 度分布測定法,吸収法 などがある。
溶媒 の無限希釈濃度での相互拡散係数を測定す る方 法 と して ガスクロマ トグラフ法3・4)が あ る。 高分子 を 薄膜状 に塗布 したカラムを用意 し,キ ャ リアガス中 に 溶媒 を注入 して得 られ る溶 出曲線 の解析か ら相互拡散 係数 を求 め ることがで きる。Fig.3にガスクロマ トグ ラフを用 いた測定装置の概略図を示す。キ ャ リアガ ス の流量が大 きい場合,短時間で の測定 が可能 で あ る。
第11巻 第2号 (1998) 高分子一溶媒系の相互拡散係数 の測定な らびに推算法
lHydrogen 70veJ1
2Air 8FJameionization 3Helium detector 4FJowcontroJIer 9Recorder 5Injector 10Computer 6Column
Fig.3 Gaschromatographyusedfordetermina‑
tionofmutualdlffusioncoefficent
その反面,カラムの作製条件,キ ャ リアガス流量 等 の 条件 に左右 されやす く,精度 のよいデータを収集す る
には工夫が必要 とされ る。
高分 子 フイルムを透過す る溶媒 の透過量 の時間変化 を測 定 し, 相互 拡散 係 数 を求 め る方 法 と して透 過 法5・6)があ る。 この透過法 には,大 別 して異 圧法 と等 圧法がある。異圧法 は,高分 子 フイルムの一方 を高圧 に,他方 を低圧 にす ることで, フイル ムを透過す る溶 媒 の量 を測定す る方法であ る。 この方法 には,透過 量 を圧力変化 と して測定す る圧力法5)がある。Fig.4に 圧力法 による透過実験装置の一例 の概略図を示す。圧 力法で は,得 られ る透過曲線 (時間 に対す る圧力変 化 の曲線)の解析か ら相互拡散係数が求 め られ る。
これに対 し,等圧法6)揺,高分子 フイル ムの両側 の 全圧力を同 じに して,片側 には溶媒を含 む蒸気 をキ ャ リヤーガスと共 に流 し,他方 にはキ ャ リヤーガスのみ を流す ことで,分圧 の差 により生 じる溶媒 の透過量 を 熱伝導度検 出器 などを用 いて測定す る方法である。 こ の方法 は,真空漏れや圧力差 による膜 のふ くれを気 に しな くて済むな どの利点がある。 しか しなが ら, いず
「」コ
タロ β
♂f
く 万
̲̲婆 あ 轟 忘 to,va
⑦ ーく参
⑤ @Jl ト tova
79
①Airbath ⑥ poJym er丘Im
@ Fan @ pressuretransducer
③ vaporsour c e ⑧ pressureindicator
reservoLr @ Receivingtank
@ Ballasttank @ chartrecorder
@ permeationcell
Fig.4 ApparatususedforpermeatlOneXperi‑ mentofpolymerfllm
れの方法 も, フイルムが変形 しない,かな り低 い濃度 域 に しか適用で きない。
高分子中の溶媒 の濃度分布 を測定 し,濃度分布 の解 析 よ り相互拡散係数 を決定す る方法 と して,濃度分布 測定法7・8)がある。 この方法 には, サ ン ドイ ッチ法 や スライス法 などがあるが, いずれ も測定精度があま り 良 くないため,最近で はほとん ど用 い られない。
吸収法91三二.は,一定の温度,圧力 の溶媒 蒸気 中 に高 分子 フイルムを置 き, フイルムに収着 され るあ るいは フイルムか ら脱着 され る音容煤 の質量 を時間の関数 と し て測定す る方法であ る。 この方法 は,測定温度 にお い てかな り高 い蒸気圧を持 ち,対象 とす る高分子 に対 し てあ る程度 の溶解度 を有す る溶媒 に適用 され る。 この 方法 には,石英 スプ リング法9,10)や電 子天秤 法 11)が あ る。Fig.5には,電子天秤法 による測定装置の概略図 を示す。 これ らの方法 は,信頼性 の高 い相互拡散係数 データが得 られ,また溶解度 も同時 に測定がで きるメ リッ トがあ る。吸収法で は,実験 よ り得 られ る質 量変 化 デー タの解析か ら,濃度 に依存す る相互拡散係数 が 決定 され る。決定法 には,種 々の方法が提案 され て い
80 小測茂寿 ・熊田 誠 ・荒井康彦
①constant‑temperature chamber
@ Electrobahnce
@ pressuretransducer
㊨ polymersample
@ stripIChartrecorder
@ Read‑outcontrol electroAics
⑦computer
@ penetrantreservoir
@ constant‑temperature bath
@ Ballasttank
@ counterweights
@ pressurecontroller
Fig.5 SorptlOnapparatususingelectrobalance が,なかで もScboeverら12,13)が用 いた収縮座標系 に 基づ く方法 14,15)が有用であろう。すなわち,実験 にお けるフイルムの厚みの変化が考慮 されているため,正 確な相互拡散係数 を求めることがで きるか らである。
小測 ら16,17)は,収縮座標系 に基づ き,相互拡散係数 の濃度依存 の関数形 にべ き乗を仮定 し,収着な らびに 脱着過程 より相互拡散係数を求め る方法 を提案 した。
収縮座標系 に基づ く拡散方程式 を,初期境界条件の も とに数値的に解 き,みかけの相互拡散係数を与える無 次元化 された濃度ma,。と無次元化 され た平衡濃度me の関係を求めた。そ して,濃度依存の型のべ き数 αを パ ラメータとして線図に表 した。Fig.6は収着,Fig.
7は脱着 にお ける関係 を表 す。 なお,α‑ 1の とき, 収着および脱着 ともこの関係 は,一次式で良好 に表 さ れた。
収着の場合 (1≦ m≦ me)
Tnap。‑0.625me+0.375 脱着の場合 (0≦ m≦ 1)
mapp‑0.649me+0.351
3EI]ddeu 2
1 2 3 4 5
mel‑]
Fig.6 Relationshipbetweenm3,,andmefor sorptlOn
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 mel‑ ]
Fig.7 Relationshipbetweenm。。pandmefor desorptlOn
この方法による相互拡散係数の算 出手順 を示 す と, 次のようになる。
1)初期溶媒含有率u。と平衡溶媒含有率 ueの異 な る フイルムの収着あるいは脱着実験か ら得 られ るフイル ムの時間に対す る質量変化 データか ら,次式で示 され る平均溶媒含有率 古を計算す る。
u ‑㌔ 苧 (3)
ここで,Wtは時間tにおけるフイルムの質量,Ⅳ pは
高分 子のみの フイルム質量である。 また,初期溶 媒含 有率 u。と平衡溶媒含有率 ueを次式 よ り求 め る。
u0‑ ㌔ 芦 (4)
u e‑ 誓 (5)
ここで,W.とWeはそれ ぞれ初 期 フ イル ム質 量 と平 衡時の フイルム質量 であ る。
2)次 に,次式で示 され る√デ とEの値 を計算 し,普 通 グラフにプロッ トす る。収縮座標系では,このプロッ
トを収着 に対 して収着曲線,脱着 に対 して脱着曲線 と 呼ぶ。
げ ‑豊 (6 )
E‑若 菜 ‑三三㌢ (7) ここで,Aはフイルムの面積 で あ る。Fick型 拡散 に 対 して,収着 あるいは脱着曲線 (Evs.vrT の曲線 )
は,初期部分 において直線 とな るので, この部分 よ り 傾 きβ′(‑dE/d√デ )を得 る。
3)先 に求 め たu。と ueよ り,無 次元平 衡溶 媒含 有 率meを計算 す る。 また, グ ラフの図微 分 よ り得 た β′の値か ら,収縮座標系 における見か けの拡 散 係数
(Dps2)印を求 めるo
me‑ue/u。 (8) (Dpg)‑p‑言 β′ 2 (9) 4)Eq.(1)あるいはEq.(2)よ りmeに対応す る みか けの無次元溶媒含有率ma,pの値を第1次近似 (a‑
1を仮定す ることに相当す る) として計 算 し, みか け の溶媒含有率u ap,を次式 よ り求 め る.
u ap,‑ ma。pu。 (10)
5)(DpsZ)a,pと uap,の値 を両対数 グラフに プ ロ ッ ト す る。 この両対数 グラフの傾 きが,べ き数αの値 を与 え るo この傾 きを求 め るには, u。あ るい は ueの異 な る2つ以上 のデータが必要であ る。αの値 が仮定 した aの値 と異 な る場合 は,(Dps2)ap,vs.ua,。の プ ロ ッ ト か ら得 られ る新 しい aの値 に対 す る m叩。の値 を線 図 (Fig.6あるいはFi9.7)よ り第2近似 と して求める。
この操作 を新 しいαの値 と前 回 のαの値 が一致 す る まで繰 り返す。
6)αの値が変化 しな くな った時, ステ ップ5の操 作
81
を終了 し, この時の aの値 に対す るua,,と次式で定義 され るpsの値 を計算す る。
Ps=udsdp
dp+ds 通日ilE ここで,dsと dpはそれぞれ溶媒 と高分子 の密度 で あ る。最後 に,(Dps2)a,,の値をps2で割 ることによ りu a,,
に対す る相互拡散係数Dを求 める。
なお,脱着 に対 して αの値が1と異 な る場合,新 し い aの値 に対す るma,pの値を0.27%以内の平均誤差で, 次式 よ り求 め ることがで きる。
mapp‑meb】+b2(1‑me)ba;0<a≦ 7 (12) b1‑0.837‑0.535a+0.691a89 (13)
b 2 ‑
(孟㌔) 1
98'a (14)b。‑1.183+0.060a‑0.252ao25 (15) 次 に, この方法 による具体的な計算例 を示す。Fig.
8は,アク リル粘着剤‑ アセ トン系の40℃ で の種 々の 初期溶媒含有率 と平衡溶媒含有率 における脱着曲線 の 一例である。 これ らの曲線 は,いずれ も初期部が直線 で,それに続 く部分 が上 に凸 の曲線 で あ る ことか ら Fick型であることがわか る。 したが って, これ ら脱 着曲線 の直線部 の勾配 よ り,各実験 に対す るβ′ の値 を求めた。Fig.9は,各実験 よ り求 め られ た(Dp三)ap, とu ap,のプロ ッ トを示す.Fig.9の白丸 は,篇l近 似 (a‑ 1を仮定 して求 めた (Dp書)BP,とua,,の関係) の 結果 を示すo各 データは 1つの直線上 にまとまって い ることがわか る。ゆえに, この直線 の傾 きよ り,新 し
1.0
0.8
T O・6
叫 0.4
0.2 0.0
0 100 200 300 400
JfT【n2・slr2・kg lI
Fig.8 DesorptlOnCurvesforacrylicadhesive‑ acetonesystem at40℃
82 小測茂寿 ・熊 田 誠 ・荒井康彦
0.01 0.1
uapp【kg‑sol・・kg‑polym /11
Fig.9 RelatlOnShipbetween(Dps2)郷anduapp
foracrylicadhesive‑acetonesystem at 40℃
いαの値 を読 み取 りα‑0.68を得 た。次 に,α‑0.68 に対す るm叩pの値 をEqs.(12)〜(15)を用 いて求め, Eq.(10)よ りuappを計算 し同様 のプロッ トを行 った。
この操作 は3回で終了 し,最終的に得たαの値は,α‑
0.62であ った。Fig.9の黒丸 はa‑0.62での結果 を示 す。 このα‑0.62に対す るu a。。の値 を用 いて,Eq.(ll) よ りpsの値 を求 め,(Dp書)appの値 をp2,で割 ることで 相互拡散係数 を算 出 したOなお, psの計算 に使用 し たアク リル粘着剤 とアセ トンの40℃ での密度 は, それ ぞれ972kg・m3と767kg・m3であ る。
FI'9.10には,決定 され た相互拡 散係数 と溶媒 の濃 皮 (質量分率)の関係 を示 した。 この系で は,相互 拡
0.00 0.04 0.08 0.12 M assfractionofacetonel‑]
Fig.10 Mutualdiffusioncoefficientsforacrylic adhesIVe‑aCetOneSystem at40oC 散係数 の濃度依存性 は比較的弱 い ことがFig.10よ り 確認 で きる。 また,Tablelには,相互拡散 係数 の計 算結果 を示 した。以上 のように して,相互拡散係数 を 決定す ることがで きる。
さて, これまで述べた方法 に比べて,比較的高濃度 域 まで相互拡散係数 を容易 に測定 で きる方 法 と して, 乾燥実験 18ノがある。高分子溶液を等温 下で熱風 な どに よ り乾燥 させ ることで得 られ る乾燥速度曲線 の解析 よ り,相互拡散係数 を求 め ることがで きる。解析方 法 に つ いて は,吸収法 の ところで述べた方法12 15)が適用 で
きる。
その他 の測定法 として は,屈折率法1921つなどがある。
これ らの方法で は, よ り高 い濃度域での相互拡散係数 が得 られ る。
Table1 CalculatedresultsofmutualdiffuslOncoefficientsforacrylicadhesIVe‑aCetOneSystem at40℃
uo [kg‑sol・kg‑polymJ ] 0.0829 uE 」kg‑sol・kg‑polym∴ ] O
me [‑] 0
β′ [kg・m2 ・S12二 4.55×103
(Dpg)a,, [kg2・m4 ・S 1] 1.62×105 mapp(a‑0.62) [‑] 0.314
uar, [kg‑sol・kg‑polym/1] 0.0261 β5 [kg・m3] 941
∽ 1 [‑] 0.0254
D [m2・sl] 1.83×1011
0.115 0.194 0.151 0.182 0 0 0.0461 0.0645 0 0 0.306 0.354 5.00×10 3 5.88×10 3 6.33×10 3 7.09×10 3
1.96×105 2.72×10 5 3.15×105 3.95×105
0.314 0.314 0.542 0.575 0.0360 0.0608 0.0815 0.105 930 902 881 858 0.0347 0.0574 0.0754 0.0948 2.27×1011 3.34×1011 4.05×10 1‑ 5.36×1011 dp‑972kg・m3,ds‑767kg・m3 W 1‑massfractionofsolvent
いずれにせ よ,1つの測定法で広 い濃度域 にわたり, 相互拡散係数 を得 ることは不可能である。現在 の と こ ろ, これ らの方法 を併用す ることによ り,広 い濃度域 にわたる相互拡散係数 を求 め る以外 に方法 はないよ う である。
4.相互拡散係数の推算法
種 々の高分 子 と溶媒の組み合わせ が存在 す るた め, 必要 とす る系 の相互拡散係数 データを入手で きること
はまれで,多 くの場合実験 を行 ってデータを得てい る のが現状である。 したが って,相互拡散係数 を純物 質 の入手可能 な物性値な どか ら,計算 によ り求 めること
数 を計算 によ り求 める相関あるいは推算法 と呼ばれ る ものには, 自由体積理論 による方法,分子 の形状 や複 雑 な拡散過程を考慮 した拡散 モデル (分子 モデル) に よる方法 などがあ る。
以下 で は, これ らの方法 について簡単 に紹介す る。
4.1 自由体積理論 による方法
高分 子中 に存在す る自由体積 に着 目 し,分子 の詳細 構造 に立 ち入 らず 巨視的 に拡散 を取 り扱 い,相互拡散 係数 を求 め る方法 として 自由体積理論がある。
自由体積理 論 は藤 田22)によ り提案 され,Vrentas とDuda1 23〕によ り改良 され,発展 させ られて来 て い る。Vrentasらの 自由体積 理論 に よ る2成 分系 (高 分子 と溶媒か らな る) の相互 拡散係 数 β は, 次式 で 表 され る。
刀 ‑かoexp
exp(‑
(1‑か )2(1‑2x¢1)
WIV;+W2EV言
VF、,/γ ) (16)
ここで,D。は定数,Eは1つの分子がその周囲の分 子 か ら受 ける引力 に打 ち勝っために必要 とされ るエネル ギー,Rは気体定数,Tは絶対温度,xはFlory相互 作用パ ラメータである。 また,V;は成分 乙の1ジ ャ
ンプに要す る臨界空孔比体積,Eは高分子 ジャンプ単 位 の臨界 モル体積 に対す る溶媒 の ジャンプ単位の臨界 モル体積 の比,vF、‑は2成分系 の単位質量 あ た りの平 均空孔 自由体積,γは自由体積 の重 な りを補正す るた めのオーバ ーラップファクター, LU,は成分iの質量 分 率であ る。添字1および2はそれぞれ溶媒 と高分子 を 表す。なお,平均空孔 自由体積 は次式 で 与え られ る。
Kll
V FV/γ‑‑γ Wl(K2⊥+T‑ Tg二)
K12
+‑IW2(K22+T‑ Tg2) γ
83
(17) ここで,Klユ,K12,K21,K22は自由体 積 パ ラメー タ, TgLは成分 乙のガラス転移 温度 で あ る。 また, 451は, 成分 1の体積分率であ り,次式 で与 え られ る。
¢ 1
LLllVl
wIVl+W2V2 (18) ここで,V,は成分 iの比 体積 で あ る。Dudaら1)は,
ンゼ ン系 に適用 し,広 い温度 と濃度範囲で良好 な結果 を得ている。岩井 ら22425)は,溶 媒 お よび高分 子 に関 す る自由体積パ ラメータを,Doollttleの提案 した体 積依存型 の粘度式 26)によ り求 め ることで,パ ラメータ 数 を少 な くした推算式 を提案 した。彼 らは,平均 空孔
自由体積 を次式で与 えた。
7' γ1 7'2
ここで, 7,1と γ2は,それぞれ溶媒 と高分子のオ‑バー ラップファクターである。Doolittleの提案 した粘性 方程式 か ら粘度 デー タを用 いて, 臨界空孔比 体積 V;
とオ‑バ ーラ ップファクター7,Lの値 を決 定 した。 岩
ンー炭化水素系 25), スチ レンー ブタジェ ン共重合体 ‑ n‑ノナ ン系2)に適用 し,良好 な結果 を得て い る。 しか しなが ら, これ らの式 は多 くのパ ラメー タを必要 とす るため,パ ラメータを決定す る方法が重要 とな る。
小測 らL727)は,岩井 らの推算式 におけ るパ ラメー タ を溶媒 の物性値 よ り決定す る方法を提案 した。推算式 に含 まれ る8つのパ ラメータの うち,高分子 に関す る パ ラメータV;と 7,2を除 く6つのパ ラメータ,D。,E,
i,x,V;, 7,1は高分子であ るアク リル粘着 剤 に対 して,経験的 に次式で表 され る。
β0‑1.835×1010〟 1‑ 7.753×10 9 (20)
x‑ 2.901‑ 7.160×10 5E。。h (21)
E‑0.1252E"hI2537 (22)
E‑1.671×103vb十 0.2133 (23) MIV;‑5.955×10 2vb+1.1912× 10 2 (24) 7'1‑3.391×103vb+ 0.2581 (25) ここで,M lは溶媒 の分子量,Eechは溶媒 の標 準沸点 での凝集 エネルギー, Vbは溶媒 の標準 沸点 で の モル