理数科教員養成のためのアセスメント実践報告 ― 新世代を先導する理数科教員養成のためのプログラ ム・高大融合による理数科高校教員の養成プログラ ムに関わるアセスメントの実践―
著者 川崎 謙一郎, 伊藤 直治, 河上 哲, 市原 一裕, 石
田 正樹, 藤井 智康, 和田 穣隆, 松山 豊樹
雑誌名 教育実践総合センター研究紀要
巻 17
ページ 275‑281
発行年 2008‑03‑31
その他のタイトル Assessment Practice of Program for Science and Mathematics Teacher Education
URL http://hdl.handle.net/10105/696
1.はじめに
平成17年4月から新世代を先導する理数科教員養成 のためのプログラム (以下、先導理数)、平成18年度 10 月から高大融合による理数科高校教員の養成プログ ラム (以下、融合理数) の2つのプログラム (以下、
理数科教員養成プログラム、そのプロジェクトを理数 科教員養成プロジェクトと略) が奈良教育大学 (以 下、本学) で実行され、本年度がその最終年度にあた る。このプロジェクトでは、小・中・高の理数科の内 容を深く理解し、それらの積み上げを一貫して見通せ る専門性を持った教員の養成を行うことを狙いとして いる。異分野間の密接な交流と徹底的な少人数教育が 可能な本学のポテンシャルを活かし、理科・数学の高 度な専門性と優れた教育実践の力量を持った Super Science Teacher (SST) の養成をめざしている。平 成19年12月4日に、経済協力開発機構 (OECD) は国 際学力テスト「学習到達度調査」(PISA)の 2006年度 実施結果を発表した。平成19年12月5日の主要新聞の 一面を賑わしたように、日本の15歳男女の科学的活用 力、数学的活用力が前回の調査 (2003年度)より低下 したとの報道があった。また、理科学習に関するアン ケートからそれらへの関心・意欲を示す指標などが参 加57 ヶ国のうち最下位となったと報道された。日本の
理数科教育については、現在までいろいろな試みが行 われているが、その情意の部分で改善がみられたとは とてもいえない。本プロジェクトは、理数科の教員有 志が集い、学生の有志が参加して「今までの理数科教 員養成」とはまた別の角度から議論をしあい、教員と 学生が一緒になり理数科教員養成はどのようにあるべ きかを共に考え作り上げて行こうするプロジェクトで あると考えている。発足の段階で、先導理数の大きな 目標は、「(1)先端科学の基礎概念の理数科教育への 還流」、「(2)個の認知過程のアセスメント」、以上の 2点である。
(1)については、先端科学が解明した新しい自然 法則や数理法則が包含する本質的な考え方を理数科教 育の教材・カリキュラムに取り入れ,発想の芽を育て る教育を行うことを唱っている。そして,積極的に学 習者を先端科学の本質に触れさせることによって継続 的に学習意欲を引き出すことを目的としている。
(2)については、本理数科教員養成プログラムに おいて、受講学生が各々の認知過程を把握するために、
1つのアセスメント実践を行っている。そこで行われ ている実践内容は、本理数科教員養成プロジェクト期 間3年間の学習の記録を逐一残していき、いくつかの 発表会開催や学習の記録をまとめた冊子を作成し、参 加学生間やプロジェクト教員間で情報を共有すること
理数科教員養成のためのアセスメント実践報告
新世代を先導する理数科教員養成のためのプログラム・高大融合による理数科高校 教員の養成プログラムに関わるアセスメントの実践
川崎謙一郎・伊藤直治・河上 哲・市原一裕 (奈良教育大学 数学教育講座)
石田正樹・藤井智康・和田穣隆・ 松山豊樹(奈良教育大学 理科教育講座)
Assessment Practice of a Program for Science and Mathematics Teacher Education
Ken-ichiroh KAWASAKI, Naoharu ITO, Satoshi KAWAKAMI, Kazuhiro ICHIHARA
(Department of Mathematics, Nara University of Education)
Masaki ISHIDA, Yutaka WADA, Tomoyasu FUJII, Toyoki MATSUYAMA
(Department of Science, Nara University of Education)
要旨:奈良教育大学において、新世代を先導する理数科教員養成のためのプログラム、および高大融合による理数科 高校教員の養成プログラムの2つのプログラムが、 それぞれ平成17年度、平成18年度から実施されており、平成19年 度がこの 2 つのプログラムの完成年度にあたる。本稿では、理数科教員養成プログラムの中において我々が実践して 来た3年間のアセスメント活動に関して報告する。
キーワード:ポートフォリオ評価 portfolio assessment、DCV (Digital Curriculum Vitae)、自己評価 self-assessment、
構成主義 constructionism、反省的思考 reflective thinking、教員養成 pre-service teacher education.
である。学友のよりよい実践を知り、情報を共有する ことによって、学習者が自分の学習の経過やその経験 を自己反省し、次に活かすことが可能になる。自分の 学習の記録を残し、自分の記録を定期的に省みること によるセルフアセスメントである。先導理数では、「考 える力」を伸ばすために,ゼミナール形式での抽象・
論理思考力のトレーニングを行う先導基礎ゼミナール が1回生前期後期に開講されたが、これを含め理数科 教員養成プログラムにおいて、こうしたセルフアセス メントを実施した。
他方、融合理数は、一般的な高大連携とは趣が異な り、地域の高等学校と本大学の間で双方向性を持った 指導体制を築いた新しい形の融合型プロジェクトであ る。本稿では、理数科教員養成プログラムに沿った、
その3年間の継続的なアセスメント実践の1例を報告 するものである。
2.理数科教員養成プロジェクトの実際
理数科教員養成プログラムにおける各授業の実際や、
プロジェクト活動内容の詳細については、[松山2008]
を参照のこと。先導理数のカリキュラムは3ヶ年の積 み上げる形をとり、その実践の場を主に小・中学校と した。また、融合理数のカリキュラムは各学年での学 内で行なうサテライトや、学外基幹高校で行なうサテ ライトなどによる単年度別の形態をとり、その実践の 場を主に高等学校・本学とした。
先導理数プログラムの対象学生は、学校教育教員養 成課程の全コースの希望学生、および総合教育課程:
文化財・書道芸術コース、古文化財科学専修、環境教 育コース自然誌専修、科学情報コースの希望学生であ り、ほぼ全学に開く形式をとった。融合理数の対象学 生も同様であるが、主に本学3、4回生を対象とした。
以下は、平成17年度学長裁量経費「理数科教員養成 の た め の カ リ キ ュ ラ ム ビ タ エ 試 験 的 実 践 −Digital Curriculum Vitae実践試案の模索 −」の支援による活 動の内容を含んでいる。
2.1.DCVの概念と、その目標
ここでは、Digital Curriculum Vitae (DCVと略)
とは、主に自分の経歴や自分が今まで行ってきた活動 を電子的に詳細にまとめたもの、もしくはその作業や 活動の総称とした。ポートフォリオ(詳しくは [加藤・
安藤 1999] を参照)の一部と考えられるが、ポートフォ リオの言葉は、筆者の知る限りかなり広い意味で用い られている場合が多い。本報告書では、ある学習過程 を電子記録として残して行く活動もしくはその記録そ のものの意味として、DCVという言葉を使うことにす る。将来、理科・数学教員になるであろう本学の学生 が履修する教育カリキュラムにあてはめるために、学
習記録を取る方法はどのような形がよいか、平成17年 度に学長裁量経費の支援のもと試案を作成し、これを 一部の学生に対して、試験的に実践し、そしてその有 効性について議論した。理数科教育カリキュラム実践 に関するデジタル化を伴ったアセスメント実践試案を 提示することを目標とした(以下、平成17年度のこの 実践をDCVプロジェクトと略)。
2.2.理数科教員養成プロジェクト期間のDCV の目 的と概要
DCVプロジェクトにおいて作成したアセスメント実 践試案を理数科教員養成プログラムに適用させた。そ の目的は、平成17年度に作成した試案をもとに学内に おける学生の具体的な活動を、そしてプロジェクト期 間3ヶ年に渡る活動を、電子媒体を用いて記録し学内 外に本学学生の学習の成果を公開、発信することにあ る。長期的な理数科教育カリキュラム実践計画案を提 示し、それに沿ってアセスメントを実践していった。先 導理数生には、電子文書として記録を取ることはもと より、画像および映像にて記録を取ることを常に意識 するよう指導した。
平成17年度における試案作成においては、学習記録 のよりよい方法を探るため、多くの議論を重ね、まず は準備段階として、5名の学生に対して試行した。試 行により得られた結果を、さらに議論し、改善案を提 示した。
平成18年度には、改善した試案をおよそ全学生に適 用させた。理数科教員養成プログラムに沿って実践し た。
平成19年度は、学生が行なった活動の電子記録の一 部を冊子としてまとめ、参加学生間と参加教員間で情 報を共有する形をとった。
2.3.理数科教員養成プログラムとDCVプロジェク トとの関連
各プロジェクトの関連について、大まかに言ってDCV プロジェクトはアセスメント試案作成の単年度プロジェ クトであり、その長期的アセスメント実践の母体が理 数科教員養成プロジェクトとなる。時系列に沿ったそ の概要を図1(本報告の7ページ)に示した。本理数 科教員養成プロジェクトは3ヵ年の活動である。従っ て、学士課程第4学年のアセスメントとしては、研究 室単位で任意に実行するものとしている。
3.理数科教員養成プロジェクト3ヶ年の アセスメント実践
現時点 (平成19年11月時点) までに継続的に、毎 年入学生から適用させているが、本報告では、その一 例として理数科教員養成プログラム参加学生のうち、
一期生について報告するものである。以下に現れる「先 端科学の基礎概念」、「先導理数教育 Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ, Ⅳ」、「先 導理数基礎ゼミナール Ⅰ, Ⅱ」は、理数科教員養成プ ログラムに組み込まれているプロジェクト授業である
(詳細は [松山2008] を参照)。
3.1.平成17年度アセスメント実践 〜アセスメント試案の作成と試行〜
以下には、時系列に沿った実践の具体を示している。
1)H17年9月29日(木)たたき台DCVファイルを作 成(数学版)し、これを全てのスタートとした。
2)H17年10月5日(水)5:00pmから6:30pmま で、第一回DCV会議、場所 石田研究室、参加者 DCVプロジェクト関係教員3名、
内容の要点:()先導理数基礎ゼミナールⅡで学生 に周知すべきこと、()本プロジェクトの全体を通 した最終的な目標、()H17年9月29日作成のたたき 台である HTML ファイルについての疑問点、改善点 等への指摘があった。また、地学に関するDCVファイ ルを作成した。
3)H17年10月 7 日(金)9:00amか ら10:30amま で、先導理数基礎ゼミナールⅡの初回の授業、場 所 104 教室、
内容の要点:先導理数生へ先導理数基礎ゼミナールⅡ の初回の授業時間内にてDCVプロジェクトの内容を説 明した。以下の計8名の希望者があがった。
数理科学2名、物質科学3名、生命科学2名、地球 科学1名。最終的にこの8名のうち5名の学生が平成 17年度のDCVプロジェクトの協力学生(以下、DCV協 力学生)となった。
4)H17年10月7日(金)1:45pmから3:45pmま で、第二回DCV会議、場所 石田研究室、参加者 DCVプロジェクト教員3名、
内容の要点:()DCV説明会の開催日を10月11日(火)
に決定し、()そこで学生に周知すべきこと、() DCVプロジェクトに関わる購入物品、について決定し た。
5)H17年10月 7 日(水)10:00pmか ら10:45pmま で、第三回DCV会議、場所 川崎研究室、参加者 DCVプロジェクト関係教員2名、
内容の要点:ネットワーク関係について、今後議論す べき課題について検討した。
6)H17年10月11日(火)12:15pmか ら12:45pmま で、先導理数生へのDCV説明会、場所 地学大実験 室、参加者DCVプロジェクト教員3名、協力学生 8名。
内容の要点:DCVの概要についてDCV協力学生へ説明 した。
7)H17年10月14日(金)12:20pmか ら12:40pmま で、「ワードでHTML」説明会、場所 情報処理セ
ンター3F実習室、参加者 DCVプロジェクト代表 1名、参加学生4名、
内容の要点:DCV協力学生へワードを使ってHTML ファイルを作成する簡単な説明を行った。
8)H17年12月9日(金)4:30pmから5:30pmまで、
DCV中間発表会、場所 情報処理センター2F実習 室、参加者 理数科教員養成プログラム関係教員6 名、参加学生 協力学生4名、
内容の要点:各協力学生に学習の記録ファイルを紹介 した。学生の感想等については、本稿最後に記載した 付録を参照のこと。
9)H18年2月10日(金)9:00am から 10:30am ま で、DCV最終発表会、場所 105教室、参加者 理数 科教員養成プログラム関係教員8名、学生男子13 名、女 子13名、計26名(う ち、発 表 者(学 生): DCV協力学生3名)。
内容の要点:DCV中間発表会で紹介した学習の記録 ファイルをさらに改善し、そのファイルを各DCV協力 学生が紹介した。学生の感想等については付録を参照 のこと。
3.2.平成18年度 アセスメント実践 〜プロジェクト全参加学生への適用〜
以下には、時系列に沿った実践の具体を示している。
1)H18年4月11日(火)先端科学の基礎概念 初回授 業、
内容の要点:この授業内で、先導理数教育Ⅰ(前期)、
Ⅱ(後期)の学習記録について説明した。
2)H18年4月19日(水)2:40pmから4:10pmま で、場所 情報処理センター3F実習室、
内容の要点:ここでDCVの概念とその活動について説 明した。e-mailでの連絡と合わせ、理数科教員養成プロ グラム全参加学生に周知した。
3)H18年5月23日(水)1:00pmから2:00pmまで、
場所 情報処理センター3F実習室、
内容の要点:先導理数教育Ⅰ活動内容の準備状況につ いての経過説明が行われた。第1回チャレンジ・サイ エンス2006 in 曽爾の実施予定日を8月27日(日)から 30日(木)までの3泊4日とした。実施日および当日 の実践に向けて、各自学習の記録を取っていくことを 指示した。
4)H18年8月27日(日)〜30日(木)(3泊4日)先 導理数教育Ⅰ、
内 容 の 要 点:チ ャ レ ン ジ・サ イ エ ン ス 2006 in 曽 爾
(第1回)を実施した。
5)H18年9月15日(金)2:40pmから4:10pmま で、DCV発表会、場所 地学大実験室、
内容の要点:チャレンジ・サイエンス2006 in 曽爾の学 習についてのDCV発表会を行った。
6)H18年10月18日(水)1:15pmか ら 3:30pmま
で、先導理数教育シンポジウム、場所 102教室、
内容の要点:先導理数交流会が行われ、そのなかでDCV の発表会が行われた。
3.3.平成19年度 アセスメント実践 〜冊子化による情報共有〜
以下には、時系列に沿った実践の具体を示している。
1)H19年4月18日(水)3:00pmから4:30pmま で、先導理数教育および学習記録の説明会、場所 情報館3F実習室、
学生に伝えた内容の要点:(1)ハワイの学校教育の 状況視察の報告、(2)先導理数教育Ⅰ, Ⅱ/先導理数教 育Ⅲ, Ⅳについての説明、(3)理数科教員養成プログ ラム参加新2回生は、本年度に本格的に学習の記録作 成、(4)理数科教員養成プログラム参加新3回生は、
昨年度に作成した学習の記録を冊子として作成する予 定である旨、説明した。
2)H19年8月26日(日)〜8月29日(水)、先導理数 教育Ⅰ、場所 曽爾中学校・曽爾小学校、
内容の要点:チャレンジ・サイエンス 2007 in 曽爾を 実施した。
3)H19年10月17日(水)、時間1:00pmから3:00pm まで、チャレンジ・サイエンス 2007 in 曽爾 DCV 発表会開催、場所:情報館3F実習室、
発表形式:チームで発表する。持ち時間1チーム概ね 15分、質疑応答5分。DCVファイルは学生各自、個人 でまとめる。それをチームでまとめ、発表し、作成し たファイルは提出する。
4)H20年3月先導理数・融合理数プロジェクト合同 フォーラム(予定)。
4.理数科教員養成プロジェクトにおける アセスメント活動の内容
理数科教員養成プログラムに沿ったアセスメント活 動を行うにあたって、試行するために多くの議論が必 要であった。以下においては、試行もしくは試行前の 議論と実践を主に紹介することになる。
4.1.アセスメント活動の準備と試行
4.1.1.アセスメント活動の準備(平成17年度
(初年度))
平成17年度は試行段階と位置付けた。
〇試行前の段階での議論
作成したHTMLサンプルファイルの疑問点、問題点 について、以下に箇条書きに挙げたような議論があっ た。
議論の内容の要点:
1)記録の内容について: HTMLサンプルファイル原
案のように、「予想 → 自分の活動 → 感想」とい う流れや記入項目などのスタイルの標準化、規格 化をするかどうか。
2)各授業毎に記録をとるかどうか、それとも分野毎 に記録をとるかどうか。
3)本試行の目的、その利用の仕方や作成することへ の利点として次のことが議論の中で上げられた:
()先導理数SST 認定の材料として、()教 育委員会等へ情報発信、()学生の自己の評価/
他者への評価として、すなわち1つのアセスメン トとして、()学生の自分の学習についての履 歴書として、()学生時代の思い出として、() ホームページ作成などのOA機器を使う力量の育成 として、()まとめる力の育成として。
4)ウ エ ブ 活 用 に つ い て、WebCT、Net-Commons
(フリーソフト)の適用可能性について議論があっ た。公開各段階によって議論が必要ではないか、
どの段階で公開すべきかどうか、など話しあわれ た。
〇試行前の段階での結論
1)どのような活動でも良いが、1つに絞ってその個 人の1つの活動の追跡記録を作るのがよいという 結論がえられた。以後、3年間この方針に従うこ ととなった。
2)「(予想) → (自分の活動) → (感想)」の順の 形式は、分野によってはそぐわない場合があるの で、試行の段階では規格化はしない。
3)本学授業科目「情報機器操作」では、1回生前期 の後半にホームページの作り方を学習している。
学生の力量としては、それを前提としてDCVの試 案の試行をする。
4)ファイル形式は HTML とするが、OA 機器操作 の習熟度は個人によって違うので、試行段階では それにこだわらない。
4.1.2.試行するための準備
1)学生向けの HTMLサンプルファイルの説明と、各 学生が個人ファイルのスタートファイルを作成す る。HTMLサンプルファイルに記載されている DCVプロジェクト代表の名前を、学生が各自の名 前に変更する。それをスタートファイルとした。
2)後期前半は受講学生の自主性にまかせ、学生が各 自自由な形で記録をとることとした。中間の発表 会後の後期後半はその改善をはかりスタイルの統 一性を検討していった。予定として残りの後期後 半7回を統一したやり方で行い、各学生に感想を 聞き、意見を反映させていく。
3)記録作成のポイントを「いつ、どこで、誰が、何 を、どうしたか」としてこまめに記述して行くこ
ととした。さらに状況によっては、チームでの活 動の別、生徒との活動、活動学友の人数、生徒の 人数(男女別)等も記載する。
4)基本的には、先導理数基礎ゼミナールⅡで行なう 授業内容を中心に記録ファイルを作成するものと した。もし余力があれば、他の授業に関して記録 を残すよう指導した。
5)音声、映像の記録に関しては、今後議論が必要で あり、試行段階では写真を主に取り入れていくこ ととした。
4.1.3.試行段階での作成ファイル作成のための 協力学生への説明の内容
上記の4.1.1、4.1.2の議論をもとに、DCVプ ロジェクト協力学生に説明した内容の要点は以下の通 りである:
1)Zドライブに「DCV」用のフォルダーを作成する。
フォルダー名の例「DCV05」。 2)バックアップを取ることの重要性。
3)HTMLサンプルファイルをダウンロードし、DCV プロジェクト教員の名前を協力学生の名前に変更 後、変更したファイルを添付ファイルとしてe-mail でDCVプロジェクト代表へ送信する。
4)フラッシュメモリの貸与をする。
5)後期を半分に分けて発表会を2回開催予定とする。
後期前半は、電子文書として学生がめいめい任意 に記録を残していく。後期途中、中間発表会を開 催し意見を集める。後期後半はそのファイルの改 善をはかっていき、後期後半の最後に再度、発表 会を開催する。それらの発表会でどのような記録 の残し方がよいか、作成者や聴衆から意見をもと め、それを今後に反映さえていく。
6)まとめて取るよりは、電子文書として、こまめに 作成していく。
7)HTMLファイルはワードでも作成可能である。
8)デジタルカメラを貸与する。
9)タグファイルの概要について。
4.2.各学年でのアセスメント活動
本稿末尾に、予定も含めて4年間のアセスメント活 動の全体像がわかるようにイメージ図を掲載している。
1)平成17年度(試行)。5名の協力学生に対して、ア セスメント活動について試行を行った。平成17年 度学長裁量経費の援助を得た。
2)平成18年度(全体実施)。基本的には、平成18年度 の実施形態を踏襲したが、理数科教員養成プロ ジェクト参加学生全員に適用した。
3)平成19年度(冊子による情報共有)。冊子による情 報共有をはかった。冊子については [川崎2007.7
−1]、[川崎2007.7−2]を参照のこと。また、平
成19年度末には一期生の冊子を作成する予定とし ている。
5.アセスメント活動3年間の総括
1)予想以上に、数回の呼びかけだけでは学生は行動 しなかった。制度化された単位等の縛りがないか らのようであった。持続的なきめ細かい支援が必 要であった。試行段階でのDCVプロジェクト参加 学生は、当初8名協力を表明したが、試案の試行 を最後まで行ったのは5名であった。
2)第3学年での冊子化にあたって、学生に周知した
(平成19年4月18日に周知)原稿の締めきり(平 成19年5月31日)から冊子(平成19年7月1日付 け発行)が印刷し終えるまで、実際、およそ2ヶ 月の期間を要した。
3)学生がDCV活動として作成した電子記録は、当初 予想していた形とは別のものとなった。発表会を 行なう際や冊子を作成するときの原本のような形 となった。その電子記録をもとに、チームで集約 した。また、体裁を整えて冊子とした。
4)発足当初のDCVの利点と考えられたネットワーク による学外への発信は、主に個人情報保護の観点 から行なわない方が妥当であると判断された。そ のかわりに、3年目には冊子化を行い、入念に チェックして、協力校に冊子を送付した。ただし、
冊子化に当たって個人情報保護には細心の注意を はらった。学生の提出原稿には、特別支援を要す る生徒の実名がそのまま記載されていることもあ り、ホームページ等ネットワークを使って教育委 員会等へ本活動を公開することについては断念を せざるを得なかった。
謝辞
本プロジェクトでは、以下の学校に協力していただ きました。関係者ならびにご協力いただいた方々に深 く感謝申し上げます。
曽爾村立曽爾中学校、曽爾小学校、朱雀小学校、左 京小学校、大和郡山市立郡山中学校、郡山北小学校、
郡山西小学校、郡山南小学校、市立平和小学校、片桐 中学校、昭和小学校、片桐小学校、
奈良市立一条高等学校 (融合理数・基幹校)、奈良 県立奈良北高等学校 (融合理数・基幹校)。
参考文献
[加藤・安藤 1999]「総合学習のためのポートフォリオ 評価」、加藤幸治・安藤輝次 著、黎明書房、1999 年12月1日。
[川崎2007.7−1] 「先導理数- 先導理数一期生平成18 年度活動の記録−新世代を先導する理数科教員養 成プログラム −」、川崎謙一郎・伊藤直治・河上 哲・
市原一裕・石田正樹・和田穣隆・松山豊樹、先導 理数プロジェクト報告冊子、平成19年7月1日、
pp. 1 −99。
[川崎2007.7−2]「融合理数−平成18年度活動の 記録 2006年度『資質の高い教員養成推進プログラ ム (教員養成 GP)』高大融合による理数科高校教 員の養成」、川崎 謙一郎・伊藤直治・河上 哲・市 原 一裕・石田正樹・和田穣隆・松山豊樹、融合理 数プロジェクト報告冊子、平成19年7月1日、pp.
1−47。
[松山 2008]「新世紀の理数科教育シスチームの開 発−先導理数、融合理数GP、そして新理数へ−」松 山豊樹、奈良教育大学教育実践総合センター紀要、
投稿中。
付録: 平成17年度2回の発表会での意見とコメント
試行段階でアセスメント活動の一貫として平成17年 度に2回の発表会を開催した。以下、その時の学生の 声と、発表会の記録である。今後の参考になると考え られるので、以下に添付する。
1)平成17年度DCV中間発表会内容の要点
中間発表会が行われ、以下のような発表学生か らのコメント、聴衆からのアドバイス・意見があっ た。
()A学生のコメント
各日でファイルを作成した。実験が好きだが、文書 を書くのが苦手である。自分にとって見やすい点、分 かりやすい点を重視して考えた。そのようにすれば、
他の人が見ても見やすいし、分かりやすいと思う。説 明をもっと分かりやすくすれば良かったと思う。(記 録を取るのを) ためると苦痛である。写真の貼り付け は簡単だった。写真を撮ることに熱中しすぎて、肝心 の実験がおろそかになった。
()B学生のコメント
写真は自分の携帯電話の写真機能で撮った。自分の 時間割を作成してそこからリンクを張るようにした。
作っていて楽しかった。復習になった。人に見せる自 覚、見られる自覚を持って作成した。表の作成はどの ようにして良いか分からず苦痛であったが、苦痛を乗
りきったときは楽しい。ショッキングな色は避けたほ うが良い。
()C学生のコメント
ワード、エクセル、パワーポイントで作成した。パ ワーポイントは時間がかかった。その日の記録はその 日の内に。ためないように、こまめにとる。字を大き めにして行きたい。日ごと、項目ことに記録を取った。
具体性に欠けた。
()D学生のコメント
先導理数生以外の人でもでも見られるように注意し た。普段からまとめておくことが大切である。パワー ポイントはすぐに作成できた。公開するので、見やす さ読みやすさを考えてもらいたい。パワーポイントは 長文を載せない方がよい。単語、文きりで載せて、自 分が話すのがよい。
2)平成17年度DCV最終発表会内容の要点
最終発表会が行われ、以下のような発表学生から のコメント、聴衆からのアドバイス・意見があっ た。
()B 学生のコメント
授業時間割等からリンクを張るようにして、工夫を した。
()C 学生のコメント
達成感はあった。こまめにまとめていくことが大切。
公開をするほうが、その意識があるとちゃんとしたも のを作ろうとする。
()A学生のコメント
授業日ごとにファイルを作成してリンクを張る形式 をとった。
()参加者から出された質問・コメント等: ビル ダーとはなにか? 作成する時間を取ってもらえるの か?写真は携帯の写真で大丈夫か?失敗談を載せてい たのはよかった。
これらを踏まえて、毎週水曜日1:00pm から 2:
30pmまで、理数科教員養成プロジェクトのDCV活動の 時間と空間として本学情報館3F の実習室を確保した。
図1 時系列によるアセスメント実践の概要