側方拘束力の違いが土の締固めに及ぼす影響
佐賀大学 学 ○ 加藤 晃二 佐賀大学 正 鬼塚 克忠, 正 根上 武仁, 正 陳 佩杭
1. はじめに
古代中国の盛土構造物の構築方法には大きく分けて「堆築」と「版築」がある.「堆築」は,側方を特に拘束す ることなく土を敷き広げ締固めるもので,「版築」は周りを板で囲い,その中に土を入れて,杵で丁寧に層状に突固 める.堆築は長江流域や吉野ヶ里遺跡,版築は黄土地帯の黄河流域でみられる1).このような側方の拘束の有無が 盛土の締固め密度に影響すると考えられるが,この影響の度合いは土の種類や含水状態でも異なるはずである.
本研究では以下に述べるように,とりあえずまさ土を用いて標準のモールドとゴム製のモールドで締固めエネル ギーを変えた締固め試験を行った.側方拘束力の違いが土の締固め特性及ぼす影響を明らかにする.
2.試験方法について
用いた試料は,表―1に示すまさ土である.
各試料を通常締固め試験で使用される鋼の 10cmモールド(ヤング率E=2.0×108kN/m2)とヤング率E=2.0×103kN/m2 で厚さ 3.0mmの板を円筒形にして作製した内径 10cm,高さ 12.7cmのゴムモールドを使用して,1 層当たり 15 回,25 回,50 回の 3 層で締固め試験を行う.写真に示すゴムモールドで締固め試験を行うとモールドの体積が膨張するた め,締固め後の供試体の体積は,水で満たした容器の中にモールドを入れ,水の排出量により測定した.
表-1 まさ土の物理性質
自然含水比(%) 1.2 土粒子の密度(g/cm3) 2.678
液性限界(%) −
塑性限界(%) −
塑性指数 −
礫 13.3 砂 60.6 シルト 20.6 粒土組成
(%)
粘土 5.5
写真-1試験前のゴムモールド 写真-2 試験後のゴムモールド
3. 側方拘束力について
等圧を受ける薄肉円管について,内圧と半径の変化量を圧力と変形の公式から次式で表すことができる.
q= Et/R2・ΔR q:内圧(kN/m2).E:ヤング率(kN/m2).t:厚さ(mm).R:半径(mm).ΔR:半径の変化量(mm).
上式のqとRの関係からEt /R2が円管の硬さを示すパラメータとなる.
ここで,半径 R=10cm(一定)とすると Et(これを硬度係数と呼ぶことにする)の値は円管の拘束の大きさを示 す指標となる.実験で使用するモールドの硬度係数を比較すると鉄鋼とゴムとでは約 20 万倍の差があることが分か る.
表-2 モールドと硬度係数
モールド ヤング率(kN/m2) 硬度係数(kN/m)
標準モールド 2.0×108 1.2×106 ゴムモールド 2.0×103 6.0×100
土木学会西部支部研究発表会 (2008.3) III-011
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4. 実験結果
図-1 と図-2 は各モールドに おける締固め試験結果である.
標準モールドとゴムモールド の結果を比較すると,ゴムモー ルドの方は土に有効に締固め エネルギーが伝わっていない.
また,ゴムモールドでは締固め エネルギーを変化させても乾
0 10 20 30
1.4 1.5 1.6 1.7 1.8
15回/層 25回/層 50回/層
含水比 w(%) 乾燥密度ρs(g/cm3 )
ρs=2.678g/cm3
0 10 20 30
1.4 1.5 1.6 1.7 1.8
含水比 w(%) 乾燥密度ρd(g/cm3 ) ρs=2.678g/cm3
15回/層 25回/層 50回/層
図-1 標準モールドによる締固め試 図-2 ゴムモールドによる締固め試 燥密度にあまり大きな変化が
表-3 モールドと締固めエネルギー変化 見られない.
表-3 は各モールドにおける締固めエネルギーの変化を表し たものである.全体的にゴムモールドでの締固めエネルギーは 通常モールドにおける締固めエネルギーの約 85%となっている.
図-3はBlotzら2)の研究を参考にして,エネルギーの変化にお ける乾燥密度の変化を示したものである.標準モールドは,乾 燥側と最適含水比でエネルギーを大きくすると乾燥密度も大 きくなっている.また,ゴムモールドでは締固めエネルギーを 大きくしても標準モールドの乾燥密度を得るのは困難である ことが分かる.このことから,「堆築」で「版築」と同程度の 乾燥密度を得ることは困難である.
標準モールド ゴムモールド
回/層 エネルギー
Ec(kN/m2)
エネルギー Ec(kN/m2)
15 330 296
25 550 467
乾燥側 (w=10%)
50 1100 873
15 330 309
25 550 479
最適 含水比
50 1100 846
15 330 313
25 550 525
湿潤側 (w=23%)
50 1100 947
5.結論
今回の実験により,側方拘束力の大きさが突固める土の乾燥 密度に影響を与えることが考えられる.
1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9
乾燥側(w=10%) 最適含水比 湿潤側(w=23%) ゴムモールド(破線)
2.4 2.6 2.8 3.0 3.2
締固めエネルギー logEc(kN/m2)
乾燥密度 ρs(g/cm3 ) 標準モールド(実線)
本研究の結果では 1.拘束力が小さいと締固めエネルギー が土に有効に伝わらず,乾燥密度は低くなる.
2.拘束力の変化により締固めエネルギーが 8 割程度に減少 することで,乾燥密度は 9 割程度の大きさになる.
3.これらの結果から拘束をしない「堆築」では,締固め密 度が「版築」ほどには高まらないことが推察できる.今後 は土の種類や含水状態を変えた試験を行い,「堆築」「版築」
の工法と地盤特性との関係をさらに明らかにしていきたい. 図3締固めエネルギーと乾燥密度
参考文献
1.鬼塚克忠, 陳佩杭, Peihua TONG, 根上武仁,早川慶:黄河流域における版築盛土遺跡の構築技術と地盤工学特性,
地盤工学ジャーナル,Vol.2, No.4, pp.287-295, 2007
2.Lisa R.Blotz,Craig H.Benson,and Gordon P.Boutwell:Estimating optimum water content and maximum dry unit weight for compacted clays , Journal of Geotechnical and Geoenvironmental Engineering, September, pp.907-912, 1998
土木学会西部支部研究発表会 (2008.3) III-011
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