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鉄筋の節性状がコンクリートとの付着に及ぼす影響

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Academic year: 2022

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(1)

鉄筋の節性状がコンクリートとの付着に及ぼす影響

(公財)鉄道総合技術研究所 正会員 ○渡辺 健,高橋 健,田所敏弥,谷村幸裕 前田建設工業(株) 米田大樹

1.はじめに

鉄筋とコンクリートの相互作用にかかわる付着特性 は,時間軸を考慮した構造物の力学特性の評価におい ても,重要な役割を有する.本論文では,鉄筋の節間 隔および節高さが,鉄筋とコンクリートの付着性状に 及ぼす影響を把握するために,実験的研究を行った.

2.実験概要

表-1および図-1に,本実験で使用した,鉄筋の 諸元および加工状況を示す.鉄筋はねじ節棒鋼であり,

節の間隔(10,50,100 mm)および高さ(1.0,2.0 mm)を,

グラインダーで加工したものである.加工したことで ヤング係数はやや低下したが,降伏強度には変化が見 られなかった.また,使用した鉄筋は,これらの指標 を反映させた名称とした.

図-2に,製作した供試体の概要を示す.供試体は 直径550 mm,高さ1260 mmの円筒形を有し,断面中 央には公称直径25.4 mmである異形鉄筋が挿入されて いる.この試験体形状は,既往の文献 1)を参考に,焦 点を節性状にあてるため,付着割裂ひび割れ,および 自由端のすべりが発生しない十分な寸法に設定したも のである.鉄筋の定着長は,1000 mm(鉄筋径の40倍)

である.載荷端近傍のひび割れ発生による付着劣化の 影響を低減するため,アンボンド区間(長さ250 mm) を設けた.使用したコンクリートは水セメント比が 0.65,一軸圧縮強度は載荷試験時(材齢 24 日)に 28.3 N/mm2であった.

載荷は,鉄筋の一軸片引き試験とし,鉄筋が降伏し た段階で載荷を終了した.ひずみゲージは,載荷端か ら300 mmの位置を基準として,100 mm間隔で貼付し た.ひずみゲージは,鉄筋の両面に貼付し,これらの 計測値の平均を3章の検討に用いた.また,自由端の すべりは,変位計を用いて計測した.

3.実験結果

図-3に,M10-2 の引抜試験より得られた,載荷端 からの距離における各荷重時の鉄筋のひずみ分布を,

図-4にM10-2の付着応力分布を示す.全ての試験体 の載荷端から50 mm位置において,すべりの増加に伴 う付着応力の低下がみられた.これは載荷端近傍のひ ずみゲージ貼付間隔が小さかったこと等による影響と

キーワード 鉄筋,劣化,節間隔,節高さ,付着応力

連絡先:〒185-8540 東京都国分寺市光町2-8-38 (公財)鉄道総合技術研究所コンクリート構造 TEL:042-573-7281 表-1 鉄筋諸元

鉄筋名称

鉄筋性状 節間隔

(mm)

節高さ (mm)

降伏強度 (N/mm2)

ヤング係数 (N/mm2) M10-2 10

2.0 533 191

M50-2 50

532 184 M100-2 100

M10-1 10 1.0 532 190

図-3 載荷に伴う鉄筋のひずみ分布(M10-2)

図-1 鉄筋加工状況 100mm 10mm

50mm (a)M10-2

(b)M50-2

(c)M100-2

(d)M10-1(節高さ 1.0mm) 10mm

図-2 供試体概要図(mm) 載荷

0 500 1000 1500 2000 2500

0 200 400 600 800 1000 載荷端からの距離(mm)

30kN 60kN 90kN 120kN 150kN 180kN 210kN 240kN 鉄筋のひずみ(10-6

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑269‑

Ⅴ‑135

(2)

推測される.一方,載荷端からの距離が150 mm以上(≒

6)で は ,付着劣 化は観察さ れなかった .図-5に M50-2の付着応力の分布を示す.M50-2では,自由端 にすべりが生じたため,自由端付近の付着応力が増加 しているが,付着応力の最大値は低下している.

付着応力は,隣接する3点のひずみを2次放物線で 近似し,ひずみ分布の傾きから算出した.なお,すべ りは,式(1)により算出した.

⊿

 xil

xi dx

S  (1)

ここで,Sxi:xi の位置のすべり(mm),x:鉄筋のひず み,xi:載荷端と計測点間の距離(mm),l:定着長(=900 mm),および:鉄筋下端のすべり(mm),である.

図-6,7に,M10-2およびM50-2の付着応力-す べり関係を,鉄筋軸に沿った位置ごとに示す.付着応 力-すべり関係について,載荷端から150mm以降の位 置では,既往の報告 1)と同様に鉄筋軸に沿った位置に 依存しない傾向を示した.

図-8に,載荷端から150 mmの位置の付着応力-

すべり関係を,鉄筋種類ごとに比較して示す.基準で あるM10-2に対して,節間隔が増加したM50-2および M100-2では,折曲り時の付着応力および付着応力の最

大値が低下した.一方で,すべりの最大値は増加した.

図-9に,基準のM10-2に対する付着応力の比を示 す.付着応力比は,すべり/鉄筋径が0.2%以上の任意の 点において,鉄筋の種類ごとに概ね一定値を示し,節 間隔が増加したM50-2で約40 %,M100-2で約60 %,

節高さが1.0 mmのM10-1で約15%の付着応力の低下 が確認された.今回の実験結果では,載荷端から 150 mm 以降の付着応力-すべり関係は鉄筋軸に沿った位 置に依存していない.したがって,付着応力比は,鉄 筋の節形状のみに依存していると考えられる.供用中 の鉄筋コンクリート部材の力学性能評価における付着 特性の解明のために,今後,ひび割れ発生環境の影響 など併せて検討する必要がある.

4.まとめ

節の間隔および高さの点で,付着性能が劣化した鉄 筋の付着応力は,同一のすべりに対して低下した.こ の低下の割合は,基準であるM10-2に対してすべりお よび計測位置に依存せずに一定値を示した.

参考文献

1) 弘,周 礼良,岡村 甫:マッシブなコンクリートに 埋め込まれた異形鉄筋の付着応力-すべり-ひずみ関 係,土木学会論文集,第378号/V-6,pp.165-174,1987.2

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 すべり/鉄筋径(%)

M50-2 M100-2 M10-1 付着応力比

0 2 4 6 8

0 200 400 600 800 1000 載荷端からの距離(mm)

30kN 60kN 90kN 120kN 150kN 180kN 210kN 240kN 付着応力(N/mm2

0 2 4 6 8

0 200 400 600 800 1000 載荷端からの距離(mm)

30kN 60kN 90kN 120kN 150kN 180kN 210kN 240kN 付着応力(N/mm2

0 2 4 6 8

0.0 1.0 2.0 3.0 すべり/鉄筋径(%)

50mm 150mm 250mm 350mm 450mm 550mm 650mm 750mm 850mm 付着応力(N/mm2

0 2 4 6 8

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 すべり/鉄筋径(%)

M10-2 M50-2 M100-2 M10-1 付着応力(N/mm2

0 2 4 6 8

0.0 1.0 2.0 3.0 すべり/鉄筋径(%)

50mm 150mm 250mm 350mm 450mm 550mm 650mm 750mm 850mm 付着応力(N/mm2

図-8 150mm 位置の付着応力-すべり 関係の比較

図-4 載荷に伴う付着応力分布の推移 (M10-2)

図-6 各計測位置における付着応力-

すべり関係(M10-2)

図-5 載荷に伴う付着応力分布の 推移(M50-2)

図-7 各計測位置における付着応力-

すべり関係(M50-2)

図-9 節性状による付着応力比の 比較

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

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参照

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