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微生物機能を用いた新しい現位置地盤改良技術に関する実験的研究

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Academic year: 2022

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微生物機能を用いた新しい現位置地盤改良技術に関する実験的研究

長野工業高等専門学校 ○非会員 尾曽 友理恵 学生会員 立野 菜緒 正会員 酒井 美月 正会員 畠 俊郎

(独)土木研究所 正会員 稲垣 由紀子

1.はじめに

地球温暖化問題において,CO2排出量の削減に対する 社会的関心が高まっている.日本で排出されているCO2

の約10%が土木分野で,内30%程度がセメント生成時 に排出されている.セメントは地盤改良工法等で一般的 に使用されており,低環境負荷・低コストの新たな技術 開発が急務とされている.現在,海外において地盤強度 の増加を目的とし,土粒子間へ炭酸カルシウム(以下カ ルサイトと称す)を析出させる微生物機能を工学的に活用 する技術に関する検討が進められている.本研究では,

これら海外において得られた知見が日本国内に適用可 能であるかどうかの評価を目的とし,尿素分解酵素(以下

urease と称す)を利用したカルサイト析出による地盤の固

化 技 術 に つ い て 検 討 し て い る . 本 文 で は ,Bacillus

Pasteurii を用いて浸透液を連続的に浸透させる条件で

豊浦砂の固化を行い,浸透液および固化処理後の豊浦砂 を対象とした化学分析を通じて微生物固化の有効性を 評価した室内実験の結果について述べる.

2.着目したメカニズム

本研究で着目した微生物機能によるカルサイト生成 のメカニズムを式-1および2に示す.

) ( 2

)

( NH

2 2

+ H

2

O ¾ ¾ ® ¾ NH

4+

+ CO

32-

pH ­

CO

Ureaze

(式―1)

¯

¾®

¾ +

-

+ 32 3

 

2

CO CaCO

Ca

(式―2)

今回着目した固化メカニズムでは,カルサイト析出に

ureazeが必要不可欠となる.一般土壌内に多数生息して

いる ureaze 活性を持つ微生物のみを用いて結晶化を促

進した場合,液体培養では効果が認められたが,豊浦砂 を対象とした固化処理では短期間で効果を得ることは 困難であった1),2).そのため,本研究では人為的に特定 の微生物を添加する手法について検討することとした.

3.試験の概要

海外において尿素の加水分解活性を用いた微生物固 化に適用可能な微生物種が多数報告されている.本実験 では,有効性が確認されているBacillus Pasteuriiに着目 し,工学的に添加して均質に地盤を固化させる技術につ いて検討することとした2).試験ケース一覧を表-1に 示す.なお,Bacillus Pasteurii量とは純菌を液体培養し

た菌体懸濁液量を示す.浸透液の組成を表-2 に示す.

なお,浸透液はpH=6.0となるよう調整し,豊浦砂と共 に滅菌を行った.供試体は,カラムに浸透液 40ml,

Bacillus Pasteuriiを所定量を入れ,コンタミネーション

に注意しながら攪拌混合した後に,豊浦砂60gを水中落 下法で締固める方法で作成した.その後は,所定量の浸 透液を試験期間中毎日添加することとし,試験開始後1, 3,7 日目に採取した.分析対象には供試体を通過した 浸透液と固化後の豊浦砂の2種類を選定した.それぞれ の分析項目を表-3に示す.酸分解用の供試体は,0,3,

7日後に溶液が浸透可能であれば蒸留水を浸透させ,困 難と判断された場合はそのまま,2日間炉乾燥し,カラ ムから取り出し計量した値を重量として記録した.その 後,0.5MのHClで供試体中に析出したカルサイトを酸 分解し蒸留水で洗浄した後,1日間炉乾燥させ重量を記 録した.最終的には,酸分解する前後の重量差でカルサ イト析出量を算出した(以下,酸分解法と称す)

表-1 試験ケース一覧 試験Case

Bacillus Pasteurii 量(mL)

浸透液 添加量 (mL/day)

豊浦砂(g)

B 0.1 40 60

D 0.2 40 60

表-2 浸透液組成 試薬名 添加量 ポリペプトン 3g

NH4Cl 10g

NaHCO3 2.12g

Urea 25g

CaCl2・2H2O 25g Distilled Water 1L 表-3 分析項目一覧

測定項目 目的 分析対象 測定方法 カルシウム

イオン濃度 固化効果 浸透液 原子吸光

(浄水試験法)

アンモニア濃度 環境負荷

固化効果 浸透液 1-ナフトール法

(上水試験法)

カルサイト析出量 固化効果 固化後の 豊浦砂

酸分解法

(重量法)

土木学会中部支部研究発表会 (2010.3) VII-038

-617-

(2)

4.実験結果

4.1 アンモニア発生量の推移(浸透液)

試験期間における1-ナフトール法によるアンモニ ア発生量の推移を図-1に示す.培養日数の増加に伴い

尿素の ureaze による加水分解由来と推察されるアンモ

ニアが生成される傾向を確認することができた.培養開 始後1日においてはほぼ同じ値を示したが,その後の傾 向から初期に添加したBacillus Pasteurii 量が多いほど,

発生するアンモニア量が多い傾向が認められた.過剰な アンモニア生成は異臭および硝酸・亜硝酸の原因となる ことから適切な添加量について更なる検討が必要と考 えられる.

図-1 アンモニア生成量の推移

4.2 カルシウムイオン濃度の推移(浸透液)

試験期間における原子吸光光度計によるカルシウム イオン濃度の推移を図-2に示す.培養日数の増加に伴 い,カルシウムイオンが減少する傾向を確認することが できた.培養開始から7日目についてはともに検出限界 以下の値となっていることから,浸透液に含まれるカル シウム分の多くが結晶化したと推察される.

図-2 カルシウムイオン濃度の推移

4.3 酸分解によるカルサイト析出量の推移(豊浦砂)

試験期間における酸分解法によるカルサイト析出量 の推移を図-3に示す.培養日数の増加に伴いカルサイ ト析出量が増加する傾向を確認することができた.

培養開始から7日目に関しては両ケースとも2g以上 のカルサイトが析出している.試験に用いた豊浦砂との

図-3 カルサイト析出量の推移

関係では,重量比で3%以上のカルサイトを微生物機能 により得ることができた.

今回の実験では7日目のカルシウムイオン濃度が検 出限界以下となっている.そのため,カルシウム濃度を 高くした条件での再試験などを通じて最適なカルシウ ムの濃度を明らかにする必要があると考えている.

5.まとめおよび今後の予定

本研究では建設分野における地球温暖化対策のひと つとして微生物機能を工学的に活用する新たな原位置 地盤改良技術の有効性について検討した.試験の結果か ら得られた知見を以下に示す.

· 尿素の加水分解活性を利用してカルサイトの析出 を促進させる効果を確認することができた.これに より,土の固化効果が期待できる.

あわせて,実用化に向けて以下課題が示された.

· 尿素の加水分解に伴い生成されるアンモニア由来 の,硝酸・亜硝酸による環境負荷の評価.

· カルサイト析出量と1軸圧縮強度の関連性評価

· 浸透液の進入口付近から固化が進むため,全域を均 質に固化させることを目的とした施工方法に関す る検討.

現在,アンモニア由来の硝酸・亜硝酸濃度については 分析を進めている.あわせて,針貫入試験による強度評 価も計画中である.これら課題の解決を通じ,建設分野 における地球温暖化対策の推進および低環境負荷の新 たな現位置地盤改良技術としての実用化を目指してい きたい.

参考文献

1) 細尾誠,土屋慧,畠俊郎:微生物機能を用いた土の強度増加 に関する基礎的検討(その1一軸圧縮試験について),平成20 年度土木学会中部支部研究発表会,論文番号III-001,2009 2) 土屋慧,細尾誠,畠俊郎:微生物機能を用いた土の強度増加

に関する基礎的検討(その2一軸圧縮試験について),平成20 年度土木学会中部支部研究発表会,論文番号III-002,2009 3) Victoria S.Whiffin (2004) Microbial CaCO3 Precipitation for the

production on BiocementPhD.Docotrate,Murdoch university.

0 2 4 6 8

0 4000 8000 12000 16000

培養期間(日)

アンモニウム濃度(mg/L)

Case B Case D

0 2 4 6 8

0 4000 8000 12000

培養期間(日)

カルシウムイオン 濃度(mg/L) Case B

Case D

0 2 4 6 8

0 1 2 3

培養期間(日)

カルサイト 析出量(g)

Case B Case D

土木学会中部支部研究発表会 (2010.3) VII-038

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