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不登校生徒に見る中学生の葛藤と教師のあり方に関する研究

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(1)   平 成 十 七 年 度  学位論文 不登校生徒に見る中学生の葛藤と教師のあり方に関する研究. 兵庫教育大学大学院修士課程.  学校教育専攻  幼年教育コース.   末光千鶴   MO4050A.

(2)                 【目  次】 序章.  2.不登校について.  3.論文構成.     4     1.  1.A君との出会いから. 1. 第一章 不登校生徒に対する支援の現状と課題:堺市の取組.  1.悶題と目的.  2.研究方法  3.結果と考察.   1)スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN)について.   2)堺市教育委員会   3)堺市教育センター   4)堺市適応指導教室(スプリングポート).  4.結語 第二章 不登校生徒の葛藤について 一ある卒業生とのかかわりを通じて一. …42.  1.問題と目的.  2.研究方法  3.事例と考察 終章. …122.  1.「発達」という視点.  2.A君の葛藤から   1.学校という場での葛藤.    1)小学校時代    2)中学校時代    3)私立高校入学後から現在まで.   2.家庭における葛藤.   3.自我の葛藤  3.中学生に対する教師のあり方について おわりに. 引用文献・参考文献. …143 …147.

(3) 序章 1。A君との出会いから  中学校の教師になって20年余、これまで様々な生徒たちと出会ってきた。  多くの生徒たちが、大過なく中学校時代を過ごし、卒業していく。しかし、他方では、. 授業中に教室に入らない生徒、運動場で焚き火をする生徒、深夜俳徊をする生徒、他校の. 生徒とトラブルを起こす生徒、校舎内で木刀を振り回してロッカーや靴箱をたたき回る生 徒、学校のトイレで喫煙をする生徒、階段や廊下の壁に落書きをする生徒とも関わってき. た。これら学校の内外でいわゆる「問題行動」をとる生徒たちに対して、筆者は彼らがあ. からさまに示す「行動」を正すように指導してきたように思う。そして、実際、一定の成. 果をあげてきた。しかし、そうした指導にどこかしら限界を感じたのは、A君との出会いで あった。.  A君とは、平成13年4月に出会った。筆者が新たに赴任した中学校で1年生を担任する ことになり、その中学校へ入学してきた生徒の中にA君がいた。A君は体格がよく大柄で あったが、ごく普通の生徒だった。それよりも、同じクラスに何人も目立つ生徒がいて、 その生徒たちに気をとられていた。.  中問テストが終わって6月に入ったころ、A君はかぜをひき、数日欠席することになっ たが、その後も引き続き休むようになった。母親もA君が学校へ行くことをぐずるように なり、学校での様子を担任である筆者に問い合わせてきた。それまで、かぜで休んでいる と思っていたし、特に思い当たることもなかったので、クラスに入っている他の教科担当 の先生方に聴き、原因らしき出来事を確認した。(その当時は「原因」らしいと思えたが、. 今はせいぜい「きっかけ」に過ぎなかったのだと考える。実際、筆者自身が目撃したわけ でもなく、したがって、情報としての価値が低い上にA君と他の教師との個人的な事情に. 立ち入ることになるのでここではこの出来事にっいて具体的に述べることは差し控えた い。)母親に連絡をとり、学校での事情を話し、母親には家での様子を聴き、A君が学校へ 来ることができるためにはどのようにすればよいかを話し合った。また、本人に何かあっ. たのか聴こうと家庭訪問し、直接A君に理由を聴いても答えず、「明日は行く」というだけ. であった。母親とは、朝登校をいやがるようであれば迎えに来ることを約束した。何度か 迎えに行き、途中まで筆者の車に乗って行ったこともある。一人で学校へ来る時もあった。.  しかし、ある日、迎えに行ってもA君は部屋から出ず、閉じこもってしまった。ドア越. 1.

(4) しに話をし、無理に学校へ連れて行かないことを約束すると、ドアを開けてくれた。その. 日は、学校を休むとA君が言うので本人の意志を尊重した。  その後のことを相談するために、母親に仕事が終わってから学校へ来てもらうことにレ た。ちょうど、その年から週に1回、スクールカウンセラーが配置されていたので、母親 と相談をし、今後の対応についてスクールカウンセラーに入ってもらうことにした。毎週. 母親が学校へ来てカウンセリングを受けることになったが、A君には最初そのことは知らせ ていなかった。しばらくして、A君にもスクールカウンセラーと話をしてみないかと母親が 勧めたところ、「おれは病気じゃない。カウンセリングなんか必要ない。」と拒否した。そ. こで、母親だけがカウンセリングを受けることになり、時々、筆者も一緒に入り、A君への 対応を考えていった。筆者もプリントを届けたり、様子を見に行ったりと家庭訪問を繰り. 返した。1学期の終業式は、出席できなかったが、みんなが帰った後で登校できた。夏休み の学級登校日では、みんなでプールに入る予定だった。この時は、登校できてみんなと楽 しそうにプールに入っていた。塾もしばらく休んでいたようだが、夏休みは通うことがで. きたようだ。甲子園へも友だちと野球観戦に行くようになっていた。母親とも夏休みも連. 絡をとり、様子を聴いていたので、2学期はなんとか学校へ登校できるかと思っていた。し かし、始業式には出席できたが、その後は続かなかった。体育大会は欠席したが、秋の校. 外学習は参加できた。合唱大会も参加できたが、その後登校できなかった。行事がきっか けとなるのではないかと思ったがそれ以降登校しなくなった。ただし、そう思っていたの は教師だけで、学級の生徒のなかにはそのように思っていない者もいたようだ。そういう 雰囲気をA君は察したのかもしれない。. ・A君が登校しなくなってから、たびたび家庭訪問した。電話をし、これから行くことを伝. えて学校から出るようにしたし、次はいつ来るからと予告をしておいた。母親とは密に連 絡を取り合っていた。できることは全てやったつもりだし、A君との繋がりも感じられた。 しかし、登校できない状態が続いており、それが何故かもつかめなかった。.  そんな中、1年も終わりクラス換えの時期が来て、スクールカウンセラーに相談し、その まま担任を引き受けることにした。母親もその方が話しやすいだろうし、A君との関係も少 しずつできていたからだ。.  2年生になっての始業式には出席できなかった。朝、母親から欠席の連絡をもらったとき に、引き続き担任であることをA君に伝えてもらうようにお願いした。そして、放課後、. 家庭訪問し、クラスのメンバーを載せた学級通信を渡したら、それを見て安心したような. 2.

(5) 表情を見せた。しかし、その後も登校はできなかった。1回だけ、個人懇談に母親と一緒に 教室に来ることができた。時間を少し遅くして、誰とも接触しない時間帯にしたので来る ことができたのかもしれない。.  スクールカウンセラーも同じ人が配置されたので、引き続き母親もカウンセリングを受 けることになった。A君がなかなか動き出さないが、本人がその気になるまで待っていよう. ということになり、気長に待つことにした。しかし、母親にすれば、毎日学校へ登校しな. いで、家に閉じこもっているA君を見ていると、なんとかしなくてはという思いとカウン セラーから待つように言われていることで葛藤が生じ、不安になることもあったであろう。. 筆者は、プリントを渡すという口実で、仕事帰りに学校に寄ってもらって家でのA君の様 子を尋ねる機会をもった。この時期は、母親はA君とよくぶっかっていたようで、実際、 母親があざをつくっていることは珍しくなかった。.  その後、筆者が家庭訪問を続けていくうちに、最初はこちらからの間いかけにうなずく. だけであったが、A君も、少しずつ話せるようになった。ただし、スクールカウンセラーに 待っように言われたので、たびたぴ家庭訪問するより、A君が必要と思ったときに連絡でき るように筆者のメールアドレスを伝えた。筆者はメールで、学校のことや、自分の子ども. のことなどいろいろ書いた。A君もそれに対していろいろと返事をかえしてくれた。たとえ. ば、筆者の息子が少年野球をしていたので、試合の様子や結果を書いて送ると、息子のポ ジションを聴いてくれ、感想を書いてくれた。また、学校での係りの希望を尋ねたり、班. 分けの時も誰と一緒の班がいいか相談すると、係りは国語係りで、班は誰と一緒でもいい よと返事がくる。時には、学校のことをA君の方から尋ねてきたりもした。.  この1年はA君とメールでたくさんの会話をした。しかし、どうして学校へ来ないのか、 来れないのかということに関してはあえて触れなかった。それは、「原因」と思われた生徒. ともクラスを離したにもかかわらず、A君は登校できない。そのことについて話をすること. はA君を責めてしまうことになるようで、A君との関係が悪くなってしまうのではないか という不安があったからだ。関係を悪くすることは、A君を学校からもっと遠ざけてしまう. ような気がしたからだ。つながりを保ちっつ彼が学校に気持ちが向くまで待つ、それは教 師として難しい作業であった。.  しかし、2年生も終わるころ、進路のことでA君と直接話をすることにした。A君の希 望は非常に高いところにあった。そこで、3年になって学校へ来ないとその希望が叶わない. ので、筆者ははじめてA君の前で声をあげて怒った。A君も興奮して「もう来るな」とい. 3.

(6) うので、こちらからは連絡しないから、何かあって連絡したかったらA君のほうからする. ように言って家を出た。母親の方にも、説明をし、A君からの連絡を待つことにした。この. 対応で良かったのか、このままA君との関係が終わってしまわないだろうかと少し不安に なったことも事実である。しかし、1年問じっくり待ち、A君の方から進路にっいて語ると いう前向きな動きが見えていたこともあり、筆者には切れないという確信もあった。.  しばらくして、A君からメールが来て、時間割をあわしたり、朝制服に着替えたりと、学 校へ行こうとしていることがわかった。それから、A君と学校へ来ることについてどうして 欲しいか相談した。この時、A君は自分のカで登校するからと言った。.  3年生でも、引き続き担任を持つことにした。ようやく動こうとしているA君なので、 なんとか最後の1年で登校できるようにしたいという願いもあった。  しかし、依然として登校できない日が続いた。そこで、学校のテストを受けなくては評 価も出せないし、それまでの資料もないので、校外の模擬テストを受けることを勧めた。A 君もなんとか受けることができたが、2年生で塾もほとんど行っていなかったので、結果は A君が思っていた以上に悪く、一気に落ち込んでしまい、投げやりになってしまった。そこ で、学校ではなく、塾で少しずつ勉強をすることを勧めた。夏休みには塾へ行けたが、学 校が始まると塾へも行けなかった。.  2学期に私立高校の校内説明会があり、たくさんのパンフレットをA君にも届けた。A 君はそのパンフレットを熱心に見て、いくつかの高校名をあげたので、その高校を受験す るには実カテストでどれくらいの点数が必要かをA君に提示した。そして、校内で行われ. る実カテストを9月と11月の2回、彼の自宅で筆者が監督のもと受けた。その結果、受験 可能な私立高校も具体的にあがり、ようやくA君も学習に対しての意欲が出てきた。母親. もA君を連れて、私立高校の説明会に出かけて行った。その後も、校外の模擬テストを2 回も受けることができ、1月には受験校を決めた。筆者は高校への事前相談に彼の成績表を. 持っていき、A君の事情を直接高校の先生に説明した。  A君もそれから受験に向けて、塾で必死に受験勉強に取り組んだ。その甲斐もあって、み ごとに私立高校に合格した。高校も決まったことだし、卒業式には出席するよう勧めてみ. た。A君も咄席する」と言ってくれたが、当日は出席できなかった。その日の夜、A君か らr約束やぶってごめんなさい」とメールが届いた。.  A君が選んだ高校に合格できて良かったのだけれど、筆者には後悔の念も残った。もっと. 早く学校へ来れるようになっていたら、A君が最初に希望した高校へ行けたのではないか、. 4.

(7) 最終的にはA君本人がどこの高校を受けるかは決めたが、選択肢が2つではなくもっとい ろいろ選択できるようにできなかったのか。しかし、何を言っても彼が何故学校に来るこ とができなかったのか分からなかったのである。.  スクールカウンセラーから待っように言われて、A君が動きだすまで待っていたが、いっ まで待てばよいのかわからず待つのはとても辛いし、歯がゆさを感じる。もちろん、中学. 校は1日も登校していなくても本人と保護者が望めば進級もするし、卒業もできる。生涯. という単位で見れぱ、A君が3年間中学校に通わずにいるという事実を受け入れ、彼が動 くのを待つというのも必要な作業iなのかもしれない。しかし、やはり、かけがえのない3. 年間である。しかも、筆者は中学校の教師である。その決められた時問の中で、ただ動き. 出すまで待つというのは困難である。そのことに意味があるという見通しが持てれば、あ るいはもう少し楽だったのかもしれない。.  しかし、当時の筆者には何故A君が学校に来なかったのか、ただ待つという対応でよか ったのか全く分からなかったのである。一刻も早くこのような状況から脱したい、そんな 思いでいた。A君の保護者も筆者以上に辛かったと思う。.  今までも、学校へ来ない生徒を担任したこともあるし、ひとりではなく、学年や学校に そのような生徒は複数いた。しかし、今回のA君のように自分のなかで葛藤することは少 なかった。A君が不登校となってしまったことがこれほどまでに自分の中で大きな課題とな ったのはどうしてなのか。.  それは、1年生で自分が担任し、筆者としては、突然の出来事であったということである。. なぜ学校へ来ることができなくなったのか理解できなかったのと同時に、自分は学級の生. 徒たちの何を見ていたのだろうと自分を責めたてた。担任という責任において、A君を学校 へ来させなければならないと思った。A君が学校へ来ないという目の前の状況を改善するこ とだけに捕われ、何を考えて生きているのか、彼が抱えている「心理的葛藤jとでも言う べきものに目を向けられずにいた。.  母親と話をし、不登校の「原因」を作ったであろう生徒と2年生になるとき違うクラス にした。これで学校へ来れるだろうと安易に考えていた。しかし、登校できなかった。原. 因は取り除いたのになぜ学校に来れないのかわからなくなってしまった。自分の中に解決 方法が見当たらないのである。ただ、自分で何とかしなければいけないという思いで焦る ばかりであった。スクールカウンセラーからは「待っjように言われたが、何を待つのか、. どうなれば動き出したと見るのか、そうすることがA君にとって本当によいことなのかわ. 5.

(8) からないまま、自分の中で模索していた。ただ、スクールカウンセラーは専門家だから信 頼しよう、A君との関係をしっかり繋いでおこう、A君との信頼関係を崩さないようにしよ う、母親を支えようということしかなかったように思う。.  どうして学校へ来れないのかわからないまま、3年生になり、進路のことを考えなければ いけない時期になり、A君の進学の意志が固いのと、しかも、定時制や単位制ではなく、全 日制の高校への進学希望が強かったので、それだけは叶えられるように支援していこうと. いう思いにきりかえた。自分で選んだ高校へ合格し、入学すれば、登校するようになるだ ろうと、次に期待した。結局、A君の葛藤が何なのかわからないまま、彼は私立高校にみご と合格し、入学した。しかし、筆者の中では、何一つ解決できていなかった。良かったこ. とといえば、A君との信頼関係が最後まで崩れなかったこと、A君が希望どおり進学できた ことぐらいである。.  そして、自分なりの課題をかかえて、筆者は本校大学院に入学した。A君も高校生活を始 めていた。しかし、A君の高校生活も長くは続かなかった。4月に入り、2週間ぐらいがた った頃、母親からメールをもらい、A君が高校へ行かなくなったことを知らされた。テスト. や行事には参加するが、普段の授業のある日は登校しないようだった。母親には、高校の. 担任とよく相談してほしい、A君の話をよく聴いてほしいと伝えた。  しかし、状況は変らなかった。母親からの依頼もあり、筆者自身課題を感じていたので、. 直接A君と話がしたくなり、彼と会うことにした。A君は筆者の訪問を快く了解してくれ た。そこで会ったA君は、中学校の時のボソボソとした目調とは全く違い、元気でよくしゃ べってくれた。高校へ行っていないことを知らずに会えば、楽しい高校生活を送っている のだろうと思わせるほどの印象を受けた。今なら中学校の時のことを聴けるのではないか。. 中学校のときと、今の状況は同じで、学校へ行っていないのに、どうしてこんなにも印象 が違うのだろうか。A君の中の何が中学校の時と今とでは違うのか。今後、彼は何をどのよ うにしたいのか、新たな疑問や課題が筆者の中に生まれた。.  本冒頭に、A君という一人の生徒についてやや詳しく書き記したのは、本論の目的及び構 成を、彼との出会いなくしては説得力をもって語ることが難しかったからである。.  r不登校」とは一体、何なのか。これに対して、今、どのような対応が必要とされてい るのか。そして、不登校の状態にある生徒は、どのような心理的葛藤を抱えているのか。. これらを検討した上で、様々な葛藤を抱えた中学生に対する視点や支援のあり方、教師の あり方を考察していきたい。. 6.

(9) 2.不登校について  次に、「不登校」に関する先行研究に当たり、研究内容の具体化を図っていきたい。.  現在、文部科学省での不登校の定義は、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社 会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるこ とで、年間30日以上欠席した児童生徒のうち、その理由として、病気や経済的理由やその 他によるものを除くとなっている。.  坂野雄二編『登校拒否・不登校』(1990)によれぱ、わが国において、登校拒否の問題が注 目を浴び始めたのは、昭和30年代のことで、当時は、「学校恐怖症(8chool phobia)jとい. う名称のもと、学校をいやがる、あるいは学校や学校に関する場所を怖がる児童生徒の理. 解と治療・指導の方法に関する研究が行われてきた。しかし、このように学校へ行かない 児童生徒には、必ずしも学校が恐怖の対象になっているとは限らない。むしろ、家庭にお ける親子関係のゆがみや、児童生徒本人の自我や社会性の未発達など、児童生徒の心理的・. 情緒的な要因にその原因が認められるものも決して少なくないことから、「学校恐怖症1と. いう狭いとらえ方ではなく、心理的・情緒的な原因をもつある種の症候群として学校へ行 かない児童生徒を理解しようという傾向がしだいに顕著になり、r登校拒否jという用語が 一般的に用いられるようになってきたのである。.  文部省(当時)は、平成4年に出された学校不適応対策調査研究協力者会議の『登校拒 否(不登校)問題について一児童生徒の「心の居場所」づくりを目指して一栂という報告 の中で、「不登校はどの児童生徒にも起こりうること」とし、学校へ行かないのではなく、. 学校へ行きたくても行けない児童生徒のいることも理解されてきた。そのことを受けて、. 広く学校に行けないあるいは行かない状態を指すものとして「不登校jという用語が一般 化し、文部省(当時)の学校基本調査でも、平成10年度についての調査(調査実施は平成 11年度)から「不登校」という名称を用いるようになり、現在に至っている。.  このように、用語の変化から、不登校の要因・背景の多様化・複雑化を窺う事ができる. のではないだろうか。また、社会や教育環境などの変化により、不登校になる児童生徒へ の対応も変化してきているように思われる。また、児童生徒ひとりひとりは、いずれも異 なった生育史や家庭環境、家族関係、学校環境をもっているのだから、まったく同じ様相 を呈することはない。このことからも、不登校の児童生徒を理解することは困難なことが わかる。.  文部科学省の学校基本調査(平成15年度)によると不登校になった直接のきっかけにっ. 7.

(10) いては表1のとおりである。本論では中学生に注目することから、不登校生徒についての み掲載しておくことにする。この表から、不登校の要因としては「学校生活に起因」(39.8%). が最も多く、ついで「本人の問題に起因」(34.7%)、「家庭生活に起因1(16.9%)の順になっ. ている。また、個別の事項では、rその他本人にかかわる問題」(28.4%)や「友人関係をめぐ. 表1 不登校になった直接のきっかけ. 中学校. 区分    (平成15年度) 友人関係をめぐる問題. 学校生活に起因    (39.8%). 家庭生活に起因    (16。9%). 本人の問題に起因    (34。7%). 22,090人(22.1%). 教師との関係をめぐる問題. 1,491人(1.5%). 学業の不振. 8,486人(8.5%). 部活動等への不適応. 1β87人(1.4%). 学校のきまり等をめぐる問題. 3,063人(舘%). 入学、転編入学、進級時の不適応. 3,157人(3.2%). 家庭の生活環境の急激な変化. 4,990人(5.0%). 親子関係をめぐる間題. 8,191人(8.2%). 家庭内の不和. 3,733人(3.7%). 病気による欠席. 6,292人(6.3%). その他本人に関わる問題. 28,431人(28.4%) 3,175人(3.2%). その他. (注)公立中学校対象  不登校生徒1人につき、主たるきっかけを1つ選択. る問題」(22.1%)の割合が高くなっている。「その他本人にかかわる問題」とは、極度の不安. や緊張、無気力等で他に特に直接のきっかけとなるような事柄がみあたらないものである。. 前節でも述べたように、このことが不登校生徒の理解をさらに難しくしている。.  さらに雷えば、この調査は、都道府県や市町村の教育委員会を通じて、各学校が調査表 へ回答した結果を集計したものである。つまり、これらの報告の数値は、必ずしも不登校 生徒の実態を正確に示すものとは言えない。したがって、実際、生徒たちにどのようなこ とが起って、学校へ来なくなったかを検討する必要があるだろう。(第二章参照).  いずれにせよ、『その他本人にかかわる問題」によって不登校になったと分類される多く. 8.

(11) の生徒たちは、「学校へ行けないjということをはっきりと訴えることはまずない。彼ら自. 身もそのきっかけが分からずにいるのかもしれない。不登校というかたちであらわれる前 に、彼らは直面している問題にっいて葛藤し、試行錯誤をくりかえしていると考えられる のではないだろうか。その結果、彼らなりに、「学校へ行かない」という行動を選択してし まうのであろう。.  さらに坂野(1990)は、不登校生徒が直面する問題を、単に子ども自身に内在するものとし. てとらえるのではなく、家庭や学校、地域社会といった子どもを取り巻く環境から与えら. れる種々の刺激に対する反応の総合体であると指摘している。このことからも不登校の要 因や背景も一つに特定できないことがわかる。.  では、不登校になってしまった生徒をいかに理解し、どのように対応していけばよいの だろうか。.  まず、不登校に関わる要因が、家庭や学校、地域社会など生徒をめぐる環境が複合的に 絡んだものである以上、不登校生徒への対応もこれらの環境要因を踏まえたものである必 要がある。.  平成15年5月に文部科学省から出された「不登校への対応の在り方にっいて」の中に、 不登校に対する基本的な考え方として、連携ネットワークによる支援(学校、家庭、地域 が連携協力し、不登校の児童生徒がどのような状態にあり、どのような支援を必要として いるか正しく見極め(「アセスメント」)を行い、適切な機関による支援と多様な学習の機. 会を児童生徒に提供することが必要であり、その際には、公的機関のみならず、民間施設 やNPO等と積極的に連携し、相互に協力・補完し合うことの意義が大きい)が必要であり、. 今後は、学校、教育委員会、家庭、地域社会・関係諸機関等が互いに連携し、単なる「情. 報連携』にとどまらずr行動連携」が具体的に実効をあげるよう、一体となった取り組み を進める必要があるとした。.  次に、不登校生徒自身の葛藤に今少し目を向ける必要があるのではないか。彼らの葛藤 への理解なしに適切な対応もあり得ない。.  平成4年3月に文部省(当時)から出された『登校拒否(不登校)問題について』とい う報告において、不登校については、特定の子どもに特有の問題があることによって起こ. ることではなく、どの子どもにも起こりうることとしてとらえ、関係者は、当事者への理 解を深める必要があるという提言がなされている。.  また、平成12年度に行われた、鳴門教育大学の教育・文化フォーラムf第11回『不登. 9.

(12) 校問題の現状と課題』」の中で、坂本は約3分の2の生徒が学校へ行きたくないと思ったこ とがあるという回答をよせているとし、不登校問題というのは、今実際に休んでいる生徒. や児童だけの問題ではないと論じている。また、本間(2000)は、①登校回避願望の高ま りと不定愁訴や心理的不安が欠席を促進する傾向を強めること、②親の圧力を感じながら. 登校している生徒が増加しているとしていること、③その反面、中学生にとって、学校生 活に何らかの魅力を感じて登校することが欠席願望の最大の抑制要因であり、とりわけ男 子において、自分なりの基準(勉強しなければならない、みんなと差がつくから、将来の ためなど)で登校するという意識が欠席願望への抑制力となっていること、以上三点を示 した。これらの研究から発達の途上で中学校生徒の誰もが経験する葛藤に目を向ける必要 があることが分かるだろう。. 10.

(13) 3.論文構成.  これまで述べてきたように、不登校は誰にでも起こりうる現象であり、そこには中学生 の抱える葛藤が包含されているものと考えられる。しかし、だからこそ、不登校には表立 った原因が見当たらないケースも多く、その理解は極めて難しい。特に、不登校生徒は文 字通り「学校に行けない」ことから、教師単独での対応は困難を極める。.  そこで、本論では三つの目的を立てることとした。第一に、現在文部科学省が推進して いる、家庭・学校・地域が連携した不登校生徒への援助の実態を探ることである。第二に、. 不登校生徒が抱える葛藤を、面談を通じて詳細に理解することである。第三に、2つの研 究の成果を踏まえ、中学校教師としてのあり方を自省的に検討することである。.  その一つの目的について今回調ぺていくうちに、不登校に関する国及び大阪府教育委員 会の施策があり、それを受けて堺市教育委員会の取り組みがあることを知った(スクーリ ング・サポート・ネットワーク整備事業:SSN)。文部科学省の『不登校に関する主な施策』. によると、SSNとは、不登校児童生徒の早期発見・早期対応をはじめ、より一層きめ細や かな支援を行うため、教員や指導員の研修、家庭への訪問指導など不登校対策に関する中 核的機能(スクーリング・サ1ドート・センター)を充実し、学校・家庭・関係機関が連携した地域ぐる. みのサポートシステムを整備することとある。この施策の存在を筆者は中学校現場にあり. ながら知らずにいた。もちろん具体的な取り組みとして、スクールカウンセラーの配置や 教育支援センター(適応指導教室)の整備やそこへの通室を出席扱いにすることや、高等. 学校入学選抜に当たっての配慮は知っていた。しかし、これらはあくまで筆者が実際に経 験してきたから知っていることで、特に、高等学校入学選抜に当たっての配慮に関しては、. A君の進路指導をするに当たって、学年・学校で論議となり、それ以前までは行われていな かったのである。このことからも、全ての教師が堺市教育委員会が掲げている教育への取 り組みを把握した上で、学校現場において教育活動を行っているかというと疑問である。.  そこで、学校、教育委員会、関係諸機関の連携について、教育委員会と教育センターと 教育支援センター(適応指導教室)の方々にお話を伺うことにした。これを通じてSSNと. はどのようなもので、堺市ではどのように取り組まれているのか現状を把握することにし た。.  第二の目的については、筆者の教節生活の中で実践上の大きな課題を与え、本論の問題 意識の出発点となった、A君本人から話を聴くことができた。彼との面談を通じてどのよう. な葛藤がA君の中で起こっていたのか内面に迫ってみようと思う。上地(1990)は、一人の. 11.

(14) 生徒、特に問題を持った生徒を個人的に徹底して理解することが、ひいては一般の生徒を 理解することに大いに役立つのであり、個々の生徒の特性に注目し、個別指導能力を高め ることから出発し、個から全体へ発展する視点を重視したうえで、真の個性教育、つまり. 人問尊重の教育を実践する態度が望まれると論じている。こうした点からも、A君との面談 を通じての研究は意義深いものであろう。.  以上、二つの研究を通じて筆者がこれから出会うたくさんの生徒に対してどのような視 点に立ち、接していくべきか自省的に検討していきたい。.  まず、第一の研究を通じて、学校の中に止まるのではなく、家庭や地域の関係諸機関と. 連携をはかりながら、生徒に向き合う教師像を模索していきたい。第二の研究を通じて、A 君との面談を通じて中学生の葛藤を知ることで筆者自身の生徒を見る視野を再構築すると 共に、教師としての実践力を高める方途を探っていきたい。.  学校現場にいると、次々と生徒と出会うかわりに、自分の教師としてのあり方を問い直 す時間がない。しかし、今回はそういった時間が与えられ、地域との新たな繋がりを築く とともに卒業生のA君と繋がっていられたことを嬉しく思う。.  これらのことを検討しながら、不登校生徒に見る中学生の葛藤と教師のあり方について 以下の章立てで論じていく。. 序章.  1.A君との出会いから  2.不登校について.  3.論文構成. 第一章 不登校生徒に対する支援の現状と課題:堺市の取組.  1.問題と目的.  2.研究方法  3.結果と考察.   1)スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN「)について.   2)堺市教育委員会   3)堺市教育センター   4)堺市適応指導教室(スプリングポート). 12.

(15)  4.結語 第二章 不登校生徒の葛藤について一ある卒業生とのかかわりを通じて一.  1.問題と目的.  2。研究方法  3.事例と考察. 終章.  1.f発達∫という視点.  2.A君の葛藤から   1.学校という場での葛藤.    1)小学校時代    2)中学校時代    3)私立高校入学後から現在まで.   2.家庭における葛藤.   3。自我の葛藤  3.中学生に対する教師のあり方について. おわりに. 13.

(16) 第一章 不登校生徒に対する支援の現状と課題:堺市の取組 1.問題と日的  文部科学省の『最近の児童生徒の問題行動の特徴について』(平成15年度)の報告によ ると、最近の児童生徒の少年非行の状況は、第4の波を迎えているといわれ、特に、凶悪. 犯罪については、平成3年から増加の傾向にある。また近年の特徴として、それまで非行 を犯したことのない少年がいきなり重大な非行に走る場合が見られる。また、暴力行為に. おいても、学校の規則に反発したり、教師に反抗したりということで、校内や校外で暴れ たり、物を壊したりしているが、服装や生活態度が乱れていないにもかかわらず、突然キ レてしまうというようなこともある。.  近年最も関心の高い問題となっている不登校については、その要因・背景が多様である と平成15年5月に文部科学省から出された通知である『不登校への対応の在り方について』. に記されている。筆者としても、学校での様子の変化に気がつかないまま、突然登校しな くなって戸惑うことが多かった。.  文部科学省では現在、“「不登校」とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社. 会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるこ と。ただし、年間30日以上欠席した児童生徒のうち、その理由として、「病気」や「経済 的理由」やrその他」によるものを除く”と定義されている。.  不登校児童生徒(注1)については、文部省(当時)が平成3年度から調査を行い、平成13. 年度まで増加しっづけた。平成13年度には中学生だけで全国で112,193人に及び、これは 中学生全体の2.81%に当たる。平成13年度をピークに平成14年度は、105,383人(2.73%)、. 平成15年度は、102,126人(2.72%)と減少している。それでも平成15年度の人数は37人. に1人の割合で不登校の生徒がいることになる。さらに、都道府県別では、大阪府の不登. 校生徒の数が多く、中学生全体の3.36%の割合を占めている。これは28人に1人の割合で 不登校生徒がいることになる。さらに、大阪府下でも堺市が最も多く、4.68%で、これは 21人に1人の割合で不登校生徒がいることになる。したがって、堺市の不登校生徒の数は 全国、大阪府を大きく上回っていることになる。.  堺市では、この状況を深刻に受け止め、不登校の状況が継続することは、本人の進路や 社会的自立のために望ましいことではなく、このような不登校生徒をいかに学校に目を向 けさせるかということが生徒指導上の最重要課題となっている。. 14.

(17)  つまり、不登校児童生徒への対応は、学校が中心になって取組まなければならない最も 重要な課題なのである。.  しかし、不登校児童生徒への支援だけでなく、学校はすべての生徒を対象とした教育機 関である。また、教師は教育の訓練を受けた人であって、不登校やその他の問題行動に対 して、すべての教師が適切に対応できるとは限らない。もちろん、学校の生徒にかかわる. ことであるから、教師が生徒の指導について責任を感じるのは当然であるが、すべてのこ. とを教師がするには限界がある。さらに、他の問題行動とは違い、指導の対象となる不登. 校生徒は学校の中におらず、教師は直接手立てを講じることが難しい。しかも、前述のよ うにある日突然、来なくなってしまうのである。したがって、教師には、不登校生徒がど. んな理由で学校に来なくなるのか、彼らがどんな心理状態にあるのかを理解することは極 めて難しい。この点については第二章で改めて検討する。.  教師は指導上の責任を感じつつも、学校だけでは指導や処理しきれない現状に直面し、. 困惑状態になっている場合も少なくない。家庭からの要請や期待に応えられないもどかし さとジレンマに苦しみ、有効な手立てが見出せない苛立ちをも感じている。.  そこで、学校のr限界性」を認識し、保護者の理解を得ながら関係機関の助言やアドバ イスを有効に活用し、学校教育を進めていくことが今日求められている。特に、不登校児. 童生徒の指導については、投げ出したり、あきらめたりすることなく、しかし、外部の専 門家の助言・指導を受けつつ、学校の中で教師ができることに努めることが、生徒にとっ て最も必要なことであり、大切なことなのである(神保・石井,1985)。.  しかし、教師自身の情報不足をはじめとして、様々な理由から、まだまだ有効に関係機 関との連携がなされていないようである。平成16年3月の『学校と関係機関との行動連携 を一層推進するために』という報告の中には以下のような節が見られる。“少年の問題行動. 等に関する調査研究協力者会議報告r心と行動のネットワークj(平成13年4月)におい て、単なる情報の交換であるr情報連携jから相互に連携して一体的な対応を行う「行動 連携」へと一歩踏み出した連携の推進が提言されている。しかしながら、児童生徒の問題 行動等が依然として憂慮すべき状況の中、学校と関係機関等との連携が不十分であったと. 指摘される事例が後を絶たない状況にある。学校においては、未だに関係機関等との連携 が教職員個人の努力に任されている傾向が見られる。”すなわち、不登校をはじめとする中. 学生を巡る諸問題が複雑で深刻なケースが多くなってきている今、全教師が関係機関の機 能や、目的、専門性にっいての研修を行い、理解を深め、連携を図っていくことが必要で. 15.

(18) はないだろうか。.  文部科学省は『不登校への対応の在り方について』の中で、“不登校については、その要. 因・背景が多様であることから、教育上の課題としてのみとらえて対応することは困難な. 場合があるが、一方で、児童生徒に対して教育が果たすことができる、あるいは果たすべ き役割が大きいことに着目し、学校や教育委員会関係者等が一層充実した指導や家庭への. 働きかけ等を行うことにより、不登校に対する取組の改善を図る必要がある”という観点 から提言がなされ、“学校、家庭、地域が連携協力し、不登校の児童生徒がどのような状態 にあり、どのような支援を必要としているのか正しく見極め(「アセスメント」)を行い、. 適切な機関による支援と多様な学習の機会を児童生徒に提供することが必要であること、. 保護者を支援し、不登校となった子どもへの対応に関してその保護者が役割を適切に果た せるよう、時機を失することなく児童生徒本人のみならず家庭への適切な働きかけや支援 を行うなど、学校と家庭、関係機関の連携を図ることが不可欠であること”と不登校に対 する基本的な考え方を述べている。.  では、具体的にどのような取組がなされているのだろうか。本論では、「スクーリング・ サポート・ネットワーク整備事業(SSN)」を取り上げる。この事業は、文部科学省が、“不. 登校児童生徒の早期発見・早期対応をはじめ、より一層きめ細かな支援を行うため、教員 や指導員の研修、家庭への訪問指導など、不登校対策に関する中核的機能(スクーリング・. サポート・センター)を充実し、学校・家庭・関係機関が連携した地域ぐるみのサポート. システムを整傭する必要がある”という趣旨で、平成15年度から開始され、全国47都道 府県で展開されている事業である。本研究では、大阪府堺市での取組が具体的にどのよう. に行われているのか、文献調査と関係者からの聴き取り調査によって、明らかにする。そ. の意義としては、以下の二点が挙げられる。第一に、先述のように、大阪府堺市は、全国 的に見て不登校生徒の割合が高く、早急にこの事業を推進すべきであると考えられる点。. 第二に、この事業が平成15年度から行われていながら、筆者自身全く学校現場で知らずに. おり、一教師として、直接関係者から情報を収集することで、身近な地域社会の関係機関 についての理解と知識を備え、連携を図っていくことに繋がる点。すなわち、この研究を. 進めていくことで、不登校生徒及び、その保護者にもっと効果的な支援ができるものと考 えられる。.  以上を踏まえ、本研究では、大阪府堺市の不登校に関してのSSNの取組を知り、関係機 関と学校がどのような連携を行っているのか現状を知り、どの程度機能しているのかを検. 16.

(19) 討する。さらにそれを踏まえ、学校現場で教師がどのように関係機関と連携していけるの かその手立てを考察することを目的とする。. (注1)文部科学省からの通知ならびに報告、不登校関連の研究は、小学生と中学生を含むr不登校児童生徒」. を封象として行われることが多い。本研究では、中学生のみを対象とするので、それを明示するため、主 として「不登校生徒」という表記を用いることにする。. 17.

(20) 2.研究方法  現在の不登校の状況を把握し、不登校に関わる国の施策及び事業を知り、それを受けて、. 大阪府堺市の状況及び取組を知ることで、教師として不登校生徒たちだけではなくすべて の生徒に対してどのような視点で対応ができるかを考えていくために、不登校に対する国 の主な答申や施策について、インターネットや文献による情報収集を行った。.  また、筆者が学校現場にもどったときに、生徒や保護者への対応および教師の支援も含 め、関係機関と連携していくために、堺市教育委員会では、堺市の不登校児童生徒の状況. や不登校問題への取組や課題について、また、全国的な事業であるSSNについての話を聴 き、堺市教育センターでは、教育相談の窓目があるので、そこでの相談の内容や対応など. について話を聴いた。堺市適応指導教室(スプリングポート)では、実際に不登校児童生. 徒に対して学校への復帰を目的として対応しているので、適応指導教室でどのような取組 をしているのか、また、堺市のSSC(スクーリング・サポート・センター)が適応指導教. 室であることを知ったので、SSCとしての取組や成果および課題について話を聴いた。以 下、各機関での聴き取り調査の日時と話を聴いた担当者である。. ・堺市教育委員会  学校指導課 指導主事 不登校担当者.       2005年4月21日(木)午前9時30分∼午前11時30分ころ ・堺市教育センター 指導主事 面接担当者.       2005年6月4日(土)午後1時30分∼午後2時30分ころ ・堺市適応指導教室(スプリングポート) 指導員(指導主事).       2005年4月27日(水)午後1時30分∼午後2時50分ころ. 18.

(21) 3.結果と考察 1)スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN)について  適応指導教室で提示された、『スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SN:N)』. (平成15年度)の文部科学省の事業内容の“得ようとする効果”については、“全国の各. 市町村において、不登校対策に関する中核的機能が整備されるとともに、現在支援の手が. 届いていない児童生徒へのケアの充実が図られることにより、不登校への適切な対応が可 能となる”であろうと考えられた。そのために、都道府県47箇所に広域スクーリング・サ ポート・センターを作り、事業を委託し、また、都道府県は各市町村に事業の委託をした. のである。図1は、SSNの概要を図式化したものである。. ス嬉ン難ポ赫粥一ク整備事業織N…1.  関係機関 ・児童桐談所 ・精神保健柘辞止センター. ・大学 。ノ、ローワーク. ・養護学校. も. !. ! し,一一一一一一一.一.一.一.一.一.一.一.一.一.一r−1一.一一一一一噸一・一.一・一.一.一■一臼一曾一・一■一冒一9一・一臼一・一・一甲一・一・一辱一トー・一■一噌一・. 図1 スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業の概要.  また、表1は生徒指導関係略年表やインターネットで調ぺた不登校関係の主な答申及び 施策をまとめたものである。不登校児童生徒の数がどのような状況で増加しているかも加 えてある。. 19.

(22) 昭和58年. 表1 不登校にかかわる国の主な答申及び施策 ・登校拒否に関する手引書を作成(生徒指導資料第18集、生徒指導研究資料第12 r生徒の健全育成をめぐる諸問題;登校拒否問題を中心に」. 昭和63年. ・いじめ、登校拒否問題の深刻な中学校に教員の加配措置を講ずる. 平成 元年. ・学校不適応対策推進事業を開始(協力者会議、学校不適応対策全国連絡協議会、地. 平成2年4月 平成4年3月. ぐるみの対策事業「総合推進事業」) ・適応指導教室の設置の推進 ・学校不適応対策調査研究協力会議報告r登校拒否はどの子にも起こりうるものであ.                  ・登校拒否児童生徒が4万人を超す. 。」. 登校拒否問題への対応について(通知)」.                  ・登校拒否児童生徒が7万人を超す. 平成5年3月. ・初等中等教育局中学校課長通知r適応指導教室等の学校外の機関で指導を受ける場 について、一定要件を満たすときは出席扱いにできる。』. 平成7年4月. ・スクールカウンセラーの配置の開始(平成7年度∼平成12年度まで調査研究委託 業、平成13年度∼補助事業化).                  ・登校拒否児童生徒が8万人を超す. 平成8年7月 平成9年11月. ・中央教育審議会第1次答申「登校拒否の指導に当たって、元の仲間や生活に戻るこ のみにこだわるのではなく、…時間をかけて取り組むこと。」 ・高等学校の入学選抜にあたって、不登校生徒については、調査書以外の選抜資料を 用するなど、都道府県教育委員会に通知.                  ・不登校児童生徒が10万人を超す 平成10年4月 平成11年4月. ・心の教室相談員の配置 ・不登校児童生徒の適応指導総合調査研究委託ニスクー夢ング・サホ㌔ト・プログラム(SSP)(平. 14年度まで). 生徒指導総合研修講座の開始.                  ・不登校児童生徒が13万人を超す. 平成13年9月. ・生徒指導総合連携推進事業の開始 ・少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議報告r心とネットワーク」一心のサ ンを見逃すな、r情報連携」から「行動連携」へ一 ・不登校に関する実態調査「平成5年度不登校生徒追跡調査報告書」(現代教育研究. 平成14年3月. ・国立教育政策研究所生徒指導研究センター報告書「問題行動等への地域における支. 平成14年4月 平成14年9月 平成15年4月. ・サぷ一トチーム等地域支援システムづくり推進事業の開始 ・不登校問題に関する調査研究協力者会議の発足 ・不登校に関する調査研究協力者会議報告「不登校の解決の目標は、児童生徒が将来 にも精神的にも経済的にも自立し、豊かな人生を送れるよう、その社会的自立に向. 平成12年4月 平成13年4月. への委託事業). システムについて」. て支援することである。」. 平成15年5月 平成15年8月 平成15年9月. スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業開始 ・文部科学省初等中等教育局長通知「不登校への対応の在り方にっいて」 ・中1不登校生徒調査(中問報告)一不登校の未然防止に取り組むために一 ・文部科学省「児童生徒の問題行動等への対応の在り方に関する点検」.  この表を見る限りにおいて、国がいろいろな答申や施策を出しているが、不登校児童生 徒の数が増える一方である。これらの答申や施策は不登校児童生徒の増加を防ぐために国 の予算を組んでなされている。しかし、少子化という昨今でありながら、不登校児童生徒 がまだ10万人を超えているのはいったい何故なのだろうか。この状況をくい止めるために. 20.

(23) SSNが開始されたのだと考える。では、この国の施策を受けて大阪府や堺市はどのような 取紐をしているのか見ていこう。.  まず、大阪府教育委員会からの『スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN). 委託要項』(平成15年度)によると、“不登校が憂慮すべき状況にあることを踏まえ、不登. 校児童生徒の早期発見・早期対応をはじめ、より一層きめ細かな支援を行うため、教員や 教育支援センター(適応指導教室)指導員の研修、家庭への訪問指導など、教育支援セン ター(適応指導教室)等を中心とした不登校対策に関する中核的機能(スクーリング・サ ポート・センター(SSC))を充実し、学校・家庭・関係諸機関が緊密に連携した地域ぐる. みのサポートネットワークの整備にかかる実践的な調査研究を行う”ことを趣旨とし、こ. のSSNを市町村教育委員会に委託し、実施した。委託期問は平成15年度から2年間であ った。.  大阪府教育委員会では、市町村教育委員会に対して、平成14年度「不登校児童生徒の適 応指導総合調査研究委託一スクーリング・サポート・プログラム(SSP)一」の継続という こともあり、地域ネットワークとして、25箇所の地域SSCを設けた。その中に堺市も含ま れている。堺市の場合は、このSSCにあたるのが、堺市適応指導教室であった。.  また、大阪府教育委員会のSSN委託要項によると、この地域SSCの機能として、“地域 SSCにおいては、不登校に係る地域の資源を有効活用する観点から、地域ネットワーク内 の学校、教育支援センター(適応指導教室)、関係機関(青少年教育施設、家庭児童相談室、. 児童委員、医師、保健所、少年補導センター等)、民間施設・NPO等と密接な連携を図り つつ、以下の例を参考に、地域の実情に応じた機能を担う”とし、機能の例として、“家庭. にひきこもりがちな児童生徒への訪問指導、保護者への相談対応・助言、教員・指導員へ の研修、不登校児童生徒に関する事例検討会、体験プログラムの実施、補充指導及び教育 相談におけるITの活用及び研究、地域ネットワーク内の教育支援センター(適応指導教室). 同士の交流の支援、民間施設に関する情報収集・提供、ボランティア等の人材バンク”な どが挙げられている。ただし、これらはあくまでも例示であり、個々の事項については、 実施しなければならないものではないということである。.  それを受けて、堺市の場合は、適応指導教室が地域SSCとなり、SSNを行っているのだ が、堺市には、適応指導教室は平成16年度までは1箇所しかなかった(現在、美原町との 合併により適応指導教室が1箇所増えている)。.  表2に示したのは堺市のホームページに載せられている生徒指導に関するもののうち、. 21.

(24) 表2 堺市の最近の主な不登校にかかわる事業. 平成7年度. スクールカウンセラー活用事業実施(19校は年間35回、10校は拠点校として年間30 、10校は対象校として年間5回). 平成11年度. さわやかリーダー派遣事業(小学校への派遣、年間70回). 平成13年度. ハイスクールカウンセラー派遣事業実施(年間35回). 平成14年度. 生徒指導サポート事業(平成16年度で終了〉. 平成16年度. 「心のパートナーj派遣事業(スク沸カウンセラー配置校以外の中学校と対象校、年間90回). 不登校に関する事業であるが、ここにはSSNのことは書かれていない。ということは、平. 成15年度からSSNが始まっているが、情報として流れていないので、現場では知らない 教師がいるのも当然なのかもしれない。しかも、他の事業のように人が学校に派遣される 事業ではないからどのようなものか把握できないだろう。.  生徒を適応指導教室へ通室させている場合、適応指導教室の指導員の方と保護者とは当. 然連絡を取り合っているのだから、SSN以前から不登校生徒の担任と家庭と適応指導教室 との連携はされていた。しかし、それはあくまでも、適応指導教室と学校と家庭の連携で あり、SSNに関する取組ではなかった。.  ただし、適応指導教室には、学校を通じてでないと通室することはできないことから、. 学校と家庭と連携できる、また、連携している機関としては最適であることは事実かもし れない。.  堺市でも現在、学校・家庭・関係機関が連携した地域ぐるみのサポートシステムを整備 するという事業が開始されており、不登校生徒の支援をしてくれるだけでなく、不登校対 策に関する中核的機能を果たしているのが適応指導教室であるということを知ることがで きた。しかし、適応指導教室は不登校生徒の学習支援や人間関係の改善をし、学校復帰を 目的としている。そのような施設が、不登校対策の拠点として機能していけるのだろうか。. 他の機関でSSCとなりうるものはないのだろうか。  以下の、三つの機関での話から、最後にもう一度SSNについての堺市の現状と課題につ いて検討する。. 22.

(25) 2)堺市教育委員会. (質問1)不登校生徒に対する堺市の取組を教えてください. (回答1)堺市での中学生の不登校の原因は、心因性型、あそび・非行型、無気力型とい. うタイプに分けられ、その中でも、あそび・非行型と無気力型を合わせると全体の半分を. 占めている。そのために、学校としての取組は、「わかる授業jが基本になる。生徒にとっ て魅力ある学校というのは、やはり学習内容がわかることである。.  また、不登校生徒に対しては、「家庭訪問」が大事だと思っている。これは、教師と生徒 との人間関係を作るために重要なことである。.  不登校が中学1年生で増えることから、小・中学校の連携というのは、今までは情報連 携であったが、行動連携に変わってきている。それは、中学1年生で不登校になるケース が多く、その場合、中学校の担任と生徒との間に人間関係ができていないので、小学校の 時の担任と一緒に家庭訪問することで人間関係を作っていこうとする小・中学校の連携の ことである。また、中学校の英語の教師が小学校へ行って授業をすることも行動連携の1 つである。また、小学校の教師が中学校へ、中学校の教師が小学校へ転勤する「いきいき 交流jということも行われている。.  非行型の不登校の場合など、家庭訪問しても生徒と会えなかったりすることもあるので、. 地域の行事や夏祭りなどの時に出かけて行って生徒との接点を作って、そこで声をかけた りすることで、つながりを作っていくことも大切である。.  友だち関係を使ってアプローチしていくことも1つの対応策である。不登校生徒と親し くしている生徒に誘いに行ってもらったり、手紙を届けてもらったり、遊びに行ってもら ったりすることで、学校へ登校することができるようになることもある。.  校外の適応指導教室ではなく、校内の空き教室を利用して、校内適応指導教室を設置し ているところである。教室には行けないが、保健室登校や別室登校ができる生徒たちのた めに設置していっている。. 【コメント1】堺市の不登校生徒の半数以上はあそび・非行型と無気力型で、学校へ行く. のが楽しくなく、学校へ行く目的などがわからない生徒たちであるという。これも青年期 における葛藤の現われではないだろうか。青年期になり、自分の高い要求水準に技術性(勤. 23.

(26) 勉さの感覚)がついていかなかったり、社会の中に自分の生き生きとした活動の場所が見 つけられなかったりすると「やろう」とする意欲が急激になくなって無気力になったり、 勉強することや学校へ行くことから無意識に逃避し、どうでもいい活動に没頭してしまい、. 学校外で遊んだり、非行に走ってしまうのではないだろうか。そういう意味においても、. 環境が変わった不安も加わり、中学1年生で不登校生徒が増えるのではないだろうか。  もちろん、「わかる授業」も大切であるが、生徒は自分を「わかってくれる教師」も求め. ているのではないだろうか。生徒も入学早々、不登校にならないだろう。自分のことをわ かってくれる大人を求めているのだ。生徒は、信頼しうる人間や観念を極めて熱烈に求め る時期なのである。そうして、「自分」を確立していくのである。また、自分が他人の目に. どのように映っているのか、どのように見られているのかということが気になる時期でも あるので、教師や友だちとの関係が重要な時期であることは確かである。.  このように考えると、r行動連携」は、中学校の担任が小学校の時の担任と一緒に家庭訪 問し、生徒との人間関係をつくることより、中学校の教師が小学校へ行き、小学生の様子 を見たり、考え方を知ることや、逆に、小学校の教師が中学校へ来て、中学生になると、 どのように変化するのかを知ることではないだろうか。.  したがって、教師の入れ替えや英語の教師だけが行くのではなく、校種間での交流から、. 子ども達の発達について教師が実際に知ることが行動連携に繋がるのではないだろうか。 ひいては、不登校の予防に繋がるのではないだろうか。.  また、校外の適応指導教室ではなく、学校内に教室に行けない生徒たちの居場所をつく. っていっているということだが、場所だけでなく彼らを受け入れてくれる教師も必要であ る。先に述べたように、青年期に入った中学生たちなので、彼らの不安や葛藤について話. ができ、援助していける人問関係を構築しなければ、彼らは教室へ戻って行けないのであ る。そのため、校内で適応指導教室のような機能をした場所を作ることは容易なことでは ないだろう。. (質問2)全国では平成13年度から少しずつ不登校生徒の数は減ってきていますが、堺市. ではどのような傾向を示しているのでしょうか. (回答2)全国でも大阪府が最も多く、大阪府の中でも堺市が最も多い。. 24.

(27) *不登校生徒の推移(堺市は公立中学校のみ). 大阪府. 全国. 堺市(40校). 平成11年度. 104,180人(2。45%). 8,494人(3.48%). 880人(3.88%). 平成12年度. 107,910人(2.63%). 8,800人(3.72%). 961人(4.37%). 平成13年度. 112,193人(2.81%). 9,701人(生20%). 1,072人(5.03%). 平成14年度. 103,468人(2.68%). 9,009人(402%). 967人(生68%). 平成15年度. 102,126人(227%). 8,655人(3.95%). 930人(4.63%). 小学校6年生から中学校1年生になると不登校生徒は3倍に増える。 H.11→H.12. H.12→H.13. H.13→H,14. 50. 71. 77. 71. 166. 197. 261. 193. H,10→H,11. 小6年 中1年. 【コメント21筆者は、不登校の状況について、新聞報道で増加し、大きな社会問題にな っていることは知っており、実際、筆者の勤める中学校でも不登校生徒はいた。しかし、1 クラスに1人の割合でいることはなく、堺市の現状がこれほどひどいものだと知らされ非. 常に驚いた。全国の人数でいくと、1クラスに1人ぐらいの割合で不登校生徒がいること. になるが、堺市の数は1クラスに2人ぐらいいることになる。このことから、学校全体で 重要課題として扱われている学校もあるのだろうが、筆者が勤務してきた中学校では、そ れほど不登校について取り上げられることはなかったように思う。それより、学校へ来て いる生徒たちの対応に追われていた。スクールカウンセラーも配置されたが、学校へ来て. いる生徒の相談を中心に考えていたので、不登校への対策というよりは、生徒指導上の対 策としてカウンセラーがいたように思う。しかし、筆者も不登校生徒を担任する機会があ ったが、ほとんど担任ひとりが抱えていたように思う。スクールカウンセラーが配置され てからは、カウンセラーに相談できるようになったが、それまでは、自分の経験をもとに 対応するだけであった。.  このような対応で、不登校生徒が減少していかないのは当然であろう。学校へ来ないと. いう行動だけを捉えて対応していては、不登校になってしまった生徒自身の抱えている葛 藤を和らげることはできないのだから。この点に関しては終章で詳しく検討している。. 25.

(28) (質問3)文部科学省が出している「不登校への対応についてjというパンフレットの中. に「2.連携ネットワークによる支援」として「学校や教育行政機関と民間施設やNPO等 との積極的な連携・協力が重要です」と書かれていますが、堺市では民問施設やNPO等と の連携や協力について現在の状況を教えてください. (回答3)堺市にある公的な適応指導教室は1箇所で、平成17年度は堺市が美原町と合併 したことによって、美原町にも適応指導教室があるので2箇所となった。 民問のフリースクールはあるが、詳細は確認していない。. NPOとの連携はない。. 【コメント3】学校と教育行政機関である適応指導教室とは、不登校生徒を通じて連携は. 行われているが、堺市の場合、民問施設やNPO等の連携について、教育委員会は前向きで はないようである。もしくは、そこまで手がまわらないのかもしれない。.  筆者も、民間のフリースクールについての情報はまったく知らない。不登校生徒で、学 習意欲のある生徒は、塾へ通って勉強している場合がある。しかし、塾では学習面での援. 助はしてもらえるが、生徒自身の葛藤を和らげることはできない。そうなると、青年期の 心理・社会的危機であるr同一性対同一性の混乱」において、同一性の混乱が優勢になっ てしまい、「自分」というものを確立できないままになってしまう恐れがある。したがって、. 適応指導教室のような施設が身近にあればよいのだが、堺市の場合、平成16年度までは1. 箇所であった。しかも、そこに通室している生徒は、平成15年度で54人、これは堺市の 不登校生徒の約0.058%にしかならない。そこで、不登校生徒への対応を適応指導教室だけ. ではなく、民間施設やNPOと協力していく必要があるのではないだろうか。. (質問4)H16.421.発行の3月定例府議会各派代表一般質問&答弁(号外)で教育長が「不.  校対策として民間教育機関を活用することにつきましては、市町村の中に学校復帰への. 過程として、そのあり方を模索している事例もありますが、民問教育機関の設置の趣旨  活動内容の実態が多様でありますことから府教育委員会としては、公教育としての義務. 育を補完するものとしてどう位置付けることが可能かという観点から今後とも研究して まいります」と答弁しているが、堺市も同じような考えですか. 26.

(29) (回答4)同じ考えである。. 【コメント4】先に述べたように、堺市には平成16年度までは、適応指導教室が1箇所し かなくて、通いたくても、通うのに不便な地域もあるだろう。その上、利用している生徒 も少なく、公教育の枠内では、不登校生徒を学校復帰させることは困難であるように思わ. れる。そこで、文部科学省が唱えているように、民問施設やNPO等との積極的な連携や協 力が必要ではないだろうか。大阪府や堺市の場合、民問施設やNPO等との連携については これからという段階で、まだまだ情報を収集している段階のようである。不登校という状. 況をつくらないようにすることも大切なことではあるが、現在不登校である生徒の対応も. 十分に考える必要がある。したがって、不登校生徒が学校復帰できるように、早急に民間. 施設やNPO等の趣旨や活動内容の把握をし、連携を進めることを願っている。. (質問5)心因性タイプの不登校児童生徒に対して、「平成15年度からは全ての市町村を. ・象に府内22地域にスクーリング・サポートセンターを設置し、訪問指導や体験的活動プ ログラムを実施するなど、市町村教育委員会に対してより一層支援を行ってまいります」. という教育長答弁がありますが、スクーリング・サポート・センターとはどのようなもの. なのですか。また、堺市には設置していますか。設置しているのなら直接訪問したい。 一置していない場合、設置する予定はありますか。. (回答5)SSC(スクーリング・サポート・センター)は適応指導教室が中心になって活動. していて、そこでは、SSN(スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業)がされて いる。.  しかし、この内容については、教育委員会の管轄ではないので詳しくは、適応指導教室 へ行って聴いて欲しい。.  堺市には、「スプリングポート」と「ユーアイルーム」(美原町)という適応指導教室が ある。. 【コメント5】大阪府の教育長は市町村教育委員会に対して支援するということだが、堺. 市の場合は教育委員会がSSCではなく、適応指導教室がSSCとなり、活動している。適応. 27.

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