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第3章 改質触 媒の選定と性能評価

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第3章  改質触媒の選定と性能評価  

 

3.1 はじめに 

化学再生ガスタービンシステムの重要な構成要素である改質器には触媒が充填されており,排熱 回収の元となる燃料の水蒸気改質反応を生じさせる.改質器の設計には触媒の反応速度データが必 須であるが,反応速度は温度,圧力およびS/Cなど様々な条件によって異なるため,実験的に評価す る必要がある.第3章では,数種類の触媒について行った改質試験を基に,反応速度式の各係数を 決定する.得られた反応速度式は改質器の設計コードに組み込まれ,転化率や温度分布,排熱回収 量を決定付ける最も重要な因子となる.

3.2 化学再生における改質触媒選定条件 

化学再生システムの改質器では,燃料を水蒸気改質する触媒が必要となる.第1部で述べたように,

燃料の種類によって改質温度や律速となる反応素過程が異なるため,触媒は対象とする燃料ごとに 選定する必要がある.触媒は化学再生用として市販されているものはないが,通常の化学プラント用と 異なって以下の項目が重要であり,これらの条件をできるだけ満たす触媒を選定することになる.

・ 毒性がなく,取り扱いが容易であること.

・ 自家発の典型的な運用パターンであるDaily Start and Shutdown(DSS)運転に対し,耐えうること.

・ 500℃以下の低温における活性が高いこと.

・ 長寿命であること.(20000時間目標).

・ 固体炭素(コーク)析出が起きにくいこと.また,万一生じてもスチーミングで復帰可能なこと.

・ 圧力損失が小さいこと.

・ 熱伝導率が高いこと.

・ 蒸気でクールダウンが可能で,100℃以下では空気中の保存が可能なこと.

天然ガス用改質触媒としては,ナフサから都市ガスを製造する「MRGプロセス」に用いる酸化ニッケ ル(NiO)系触媒が,第2章に示した式(2-3)および式(2-4)の 500℃付近における炭素析出反応を比較 的抑制できることから,この触媒を選定した.NiO 触媒は酸化状態で供給されるため,空気中の保存 が可能である.また,酸化状態でも活性があり,発生した水素で自己還元するため,特別な還元処理 が不要である.パージガスが必要な場合,数 MW クラスのガスタービンであれば設置スペースにも余 裕があり,触媒パージ用の窒素供給系をパッケージに組み込むことも十分可能であるが,MGT では 窒素供給系のパッケージ化は困難である.このようなことを考慮し,還元処理の不要なルテニウム

(Ru)を2%含むアルミナベースの貴金属触媒も同時に選定した.

(2)

3.3 触媒スクリーニングと基本特性試験の方法 

図 3-1 および図3-2 に試験装置のブロック図および外観写真をそれぞれ示す.本装置は,水供給 部,ガス供給部,蒸発部,過熱部,条件設定部,改質部,冷却部,測定部で構成される.

H2

CH4 N2

Sheathed heaters Reservoir

Weight scale

Liquid pump

Catalyst Alumina balls

Pressure-regulating valve

GC

sam pli ng

Gasmeter Ventilator

Thermocouple

SS Tube

MFC

C hi ll er Ev

a p or a t or Su

p e r h e a t er Gas

conditioner

Adiabatic reactor Gas

supply Water

supply

Catalyst

Fig.3-1 Block diagram of experimental apparatus

Fig.3-2 Apparatus for catalyst test

改質原料となるメタンは,マスフローコントローラで流量制御され,蒸発器へ送られる.一方,所定の S/Cになるように,イオン交換水を,精密定流量ポンプ(最大供給量100ml/min,分解能0.1ml)により,

前述のメタンとともに蒸発器に供給されて蒸発する.イオン交換水の供給速度は,水タンクの重量変 化率を電子天秤とストップウオッチにより測定し,重量ベースの速度として算出した.

(3)

メタン/水蒸気は,条件設定部を通過して改質部へ送られる.条件設定部は,内径 23mm,長さ

500mm の SUS 管と電気ヒータとで構成され,内部には,触媒とアルミナボールが充填されている.実

機の改質管内における局所的な改質ガスを模擬するため,条件設定部内で改質反応を適宜進行さ せることで,改質模擬ガスを生成させた.改質部は,外径3/4インチ,長さ50mmの管を用い,触媒を 長さ20mm充填し,その前後にはアルミナボールを充填した.

改質部は,実機の充填層の一部を模擬し,解析で均質モデルを適用するため,触媒粉末ではなく,

数cc程度の小容積の充填層を試験対象として用いる必要がある.試験対象部は,均質,均温であり,

通過するガス組成も一定と見なせることが理想であるが,実際には化学エンタルピ変化の大きいメタン 水蒸気改質反応を生じさせる場合,触媒が少量であっても充填層内には,大きな温度分布が生じる.

反応器を管壁から電気ヒータ等で加熱する外部加熱反応器の場合,軸方向の温度差は,ある程度小 さくなるが,管壁と充填層の熱抵抗が大きいため,半径方向には大きな温度差が生じる. 

一方,ヒータ等で外部から熱を与えない断熱反応器とした場合は,反応熱を自己顕熱で転換する ため,軸方向の温度差は生じるが,外部加熱反応器の半径方向温度差ほど大きくない.また,半径方 向の温度分布は比較的小さい.これらのことを考慮に入れ,本試験では,改質部を断熱反応器とし,

半径方向の温度分布をなくすため改質部全体を2重に断熱材で覆い,充填層内で温度分布がなるべ く小さくなるように工夫した.触媒充填層の入口および出口には,1/8 インチ管ガスサンプリングポート および充填層内温度測定用熱電対を管壁に対し垂直に取り付け,それぞれのガス組成を TCD 式ガ スクロマトグラフにて測定した(1).改質部の出口には高温用保圧弁を設置し,改質部の圧力を所定の 値に保持した.保圧弁の2次側は常圧であり,ガスは約 277K に設定した冷却部を通過して水分を分 離した後,気相のみ測定部へ導入してガスの流量を積算流量計とストップウオッチで測定した.なお,

測定部に導入されるガスの水蒸気分は無視した.また,ガス供給部には,触媒還元用の水素/窒素 混合ガスも供給できるようにした.

試験に用いた触媒は,すべて日揮化学(株)より購入した市販品であり,ニッケル系とルテニウム系 に大別される.表3-1に,試験対象の触媒一覧を示す.

Table 3-1 Catalyst specifications summary

Code name Dimension Base Note

E56-Y

φ3mm×L3mm

Cylindrical shape Alumina Pre-reduction

Equivalent product of N139 Ni

N186 φ3mm×L3mm

Cylindrical shape Alumina Ni > 30% Low temperature activity enhanced type

Ru E51-V φ5mm×L5mm

Cylindrical shape Alumina Ru2%

充填層内の半径方向熱伝導率は,触媒の固体中熱伝導率が大きく関与する(2).表 3-1 の触媒のう ち,E56-Yと同等品のN139について,固体の熱伝導率を測定した.触媒物性の測定方法を表3-2に,

測定結果の一覧を表3-3にそれぞれ示す.なお,表3-2において,水素は,万一漏洩した場合の爆発 限界以下となるよう 3%に設定しており,熱伝導率は,密度,熱拡散率および比熱を実測して,間接的 に求めた.

(4)

Table 3-2 Measurement methods for catalyst properties

Property Method Temperature Atmosphere Error

Density Archimedes method 23oC Ambient ±2%

Thermal

diffusivity Laser flash method 25, 600 oC Vacuum

H2 3%+N2 balance ±7〜8%

Heat

capacity TGA 10 oC /min from 25

to 600 oC H2 3%+N2 balance ±1〜2%

Table 3-3 Summary of measurement results

Atmosphere Temperature

oC

Density kg/m3

Heat capacity J/kg/K

Thermal diffusivity

×10-7m2/s

Thermal conductivity W/m/K

25 2180 1100 7.61 1.82

Vacuum

600 2180 1120 3.87 0.944

25 2180 1100 7.46 1.79

H2 3%+

N2 balance 600 2180 1120 4.14 1.01

熱拡散率が温度の上昇と共に低下するため,熱伝導率も小さくなる.また,雰囲気によっても 5%程 度の影響を受けることがわかる.改質ガス中では水素を含むため,3%水素を含む窒素のデータを採 用した.同表より25℃〜600℃の範囲で熱伝導率λs W/m/Kを直線補間すれば,式(3-1)で表される.

λs= -1.4 × 10-3T + 1.82 (3-1)

3.4 触媒反応速度試験結果 

次に,試験結果について述べる.試験で用いた水蒸気改質触媒全てにおいて,改質後の組成は,

CH4,H2,CO および CO2のみであり,その他の成分は無視できるほど小さかった.また,本試験にお ける条件では,CO の発生量はわずかであり,その量は式(2-2)の水性ガスシフト反応による温度およ び組成を考慮した平衡値にほぼ等しくなった.したがって,式(2-2)は式(2-1)に比べて十分速く,平衡 状態にあると仮定した.

反応速度は,CH4の単位時間当たりの消滅モル数を触媒重量で除して定義する.メタンを直接評 価するために反応量を多くすると,触媒層内の温度差が大きくなり,温度を固定した試験が不可能に なる.温度差をある程度に抑えた場合の反応ガスの分析結果は,H2,COおよびCO2の濃度が数%で,

残り90%以上がCH4である.TCDガスクロマトグラフによる定量化では,クロマトのピーク面積から量を 割り出すため,90%以上の CH4を直接測定すれば測定誤差が大きくなる.したがって,数%の CO2, H2,COの定量化測定結果から以下の式(3-2)〜式(3-11)によりCH4の反応速度rMを求めた.

まず,式(2-1)および式(2-2)において,転化率をそれぞれxおよびyとする.S/Cをs,反応前のCH4

を1モルとすれば反応後のCH4,H2O,CO,H2およびCO2は,式(3-2)〜式(3-6)で表される.

(5)

CH4 1 - x (3-2)

H2O s - x - xy (3-3)

CO x - xy (3-4)

H2 3x + xy (3-5)

CO2 xy (3-6)

ガスクロマトグラフで測定したガスはH2Oを含まないので,合計モル数は式(3-7)で表される.

1 + 3x + xy (3-7)

測定されたH2濃度およびCO2濃度は,式(3-5),式(3-6)および式(3-7)から,式(3-8)および式(3-9)でそ れぞれ表される.

xy x

xy x

+ +

= + 3 1

H2 3 (3-8)

xy x xy

+

= + 3

CO2 1 (3-9)

測定されたH2濃度とCO2濃度から,CH4を1モルとした場合の反応量xは,式(3-8)および式(3-9)を 連立させて式(3-10)により求められる.

2 2 2

H 3 3

CO H

= −

x (3-10)

したがって,反応速度rM mol/g-cat/sは,CH4の供給モル流量(ドライ)F mol/sと,反応器に充填した触 媒重量wcat g-cat用いて式(3-11)で求められる.

cat

M w

F

r =x⋅ (3-11)

表3-4に,触媒の充填量および充填層の仕様を示す.

Table 3-4 Packed bed properties summary

Catalyst Weight, g Bulk density, kg/m3 Porosity

E56-Y 4.14 1190.8 0.431

N182 3.55 816.2 0.489

E51-V 2.41 951.7 0.340

なお,図 3-1に示した装置の積算流量計による平均出口流量と,式(3-8)〜式(3-10)で求められた x およびyを用いて算出した予測出口流量はほぼ一致しており,測定精度と反応速度算出式の妥当性 を確認した.

(6)

まず,反応速度に対する流量の影響を見るため,メタン流量をパラメータにして,温度 400℃,

S/C=3.5でN182を用いて試験を行った.図3-3に反応速度とメタン流量との関係を示す.反応機構は,

微視的には流量に依存することはないが,巨視的には触媒充填層空隙の対流による拡散促進が流 速に関与(3)する.流速の影響の少ない流量領域でも反応量に注意を払う必要がある.つまり,充填層 温度が均一と見なせるような反応量であると同時に,ガスクロマトグラフによる測定精度を確保しなくて はならない.このため,適量の触媒と流量を試験条件として選定することが重要である.図 3-3 の試験

では 3.55g の触媒を用いて試験を行ったが,この触媒量に対しては,メタン流量 F を 3.5〜

5.0L/min(ntp)にすれば,流量の反応速度に対する影響も小さく,温度分布が 30℃以下であり,H2 お よび CO2の濃度が数%でガスクロマトグラフの測定精度にも問題ない.したがって,今後の試験では,

供給流量がこの範囲にあることを指標とした.

なお,N182は3.5項で述べる耐酸化性に問題があったため,今後の試験対象から除外した.

次に,温度による影響を調査した.図 3-4 に E56-Y およびE51-V のアレニウスプロット(Arrhenius plot)を示す.縦軸はrMの対数,横軸は1/Tである.表3-4の通り,反応部には触媒を数g充填したが,

触媒層の温度は入口と出口で異なった.反応量の大きい高温試験では,その傾向が特に顕著であり,

最大30℃以上の温度差が付いた.したがって,温度1/Tのデータには入口出口の温度の平均値を用

いた.同図の傾きから求めた活性化エネルギーEを表3-5に示す.

Table 3-5  Activation energy

E56-Y E51-V 57316 J/mol 43035 J/mol

Methane flow rate, F L/min(ntp)

1 2 3 4 5

Reaction rate, rM mol/g-cat/s x10-6

0 1 2 3 4 5 6

Fig.3-3 Reaction rate vs. methane flow rate (N182,T=400℃,S/C=3.5)

(7)

1/T 1/K

0.0012 0.0013 0.0014 0.0015 0.0016 0.0017 ln(rM)

-12 -11 -10 -9

E56-Y E51-V

Fig.3-4 Arrhenius plot of two catalysts

(E56-Y: P=0.4MPa,S/C=4.5 E51-V: P=0.1MPa,S/C=4.5)

図3-5に圧力の影響を示す.E56-YではT=460℃,E51-VではT=400℃および460℃の二点であり,

S/C=4.5 である.横軸は圧力の対数で示す.同図より,反応速度は圧力に対してあまり影響を受けな

いことが分かる.改質器圧力はMGTクラスで0.6MPa,数MWガスタービンで1.8MPaである.高圧ガ ス保安法の都合上,1.0MPaを超えた試験はできなかったが,1.8MPa以下では圧力の影響は小さいと 判断した.

Pressure, P MPa

0.1 0.5 1.0

Reaction rate, rM x10-5 mol/g-cat/s 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0

E56-Y T=460oC E51-V T=460oC E51-V T=400oC

Fig.3-5 Reaction rate vs. Pressure (S/C=4.5)

図3-6に総流量を一定としてメタンと水の供給量比を変化させた試験結果を示す.横軸はS/Cであ る.E56-Yでは T=460℃および P=0.4MPa,E51-V ではT=400℃およびP=0.1MPa である.同図より S/Cを大きくすると反応速度は小さくなることが分かる.

(8)

S/C

2.5 3.0 3.5 4.0 4.5

Reaction rate, rMx10-5 mol/g-cat/s 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 3.8

E56-Y E51-V

Fig.3-6 Reaction rate vs. S/C

(E56-Y: P=0.4MPa, T=460℃  E51-V: P=0.1MPa,T=400℃)

メタン水蒸気改質反応の反応機構を取り扱った文献は多い.反応流を取り扱った論文や CFDプロ グラムのベンチマーキングにはXuと Fromentの論文(4)に記述された反応速度式が頻繁に引用されて いる.本来,非均質系である触媒反応は,例えばLangmuir-Hinshelwood機構(L-H機構)に代表され る複雑な式を用いて,吸着,脱離,各反応素過程に分解し,仮説の基に律速段階を測定して決定し なくてはならない.本試験では,基礎的な反応機構を明らかにするのではなく,触媒固体と反応ガス が均一の温度,圧力および組成であると見なせる空間におけるメタンの水素への反応量を示す工業 上の反応速度を求め,第4章に述べる数値解析を用いた改質器の設計コードに資することを目的とし ている.設計コードでは,例えば,改質器内で取りうる温度,圧力,組成などをパラメータとして,反応 速度を離散的にテーブル化して配列に入力し,適当な補間を施すことで対応してもよい.ここでは,反 応速度の結果の整理に際しては,式(3-12)に示すGroverの式(5)を基に,圧力パラメータPについてべ き乗則で補正を加える形で表わすようにした.





 −

=

O H p

CO H RT CH

E n

M K P

p p p

e P k r

2 2 4

3 0

(3-12)

式(3-12)は,頻度因子,圧力補正項,アレニウス項および( )内に示される反応駆動力の積で表さ れている.反応駆動力は,CH4,H2,COおよびH2O の4成分がKpで決定される平衡状態とのずれを 表している.これに,式(2-2)のシフト反応の平衡状態式が加わり,局所のH2,CO,CO2およびH2Oの 濃度が決定される.すなわち,平衡に達すれば,( )内の値がゼロになり,反応速度rMもゼロになる.

反応速度式に( )内の反応駆動力項が入っていれば,第3章で述べる改質器設計コードの数値解析 の収束過程において,物理的にあり得ない組成にならないように制限を掛けることができる.( )内の 式を考察すると,ごく反応初期でH2およびCOが存在しなければ,反応速度はCH4分圧のみの関数 となり,S/Cが増加すれば相対的にCH4分圧が低下して反応速度が小さくなるので図3-6の結果を説

(9)

明することができる.図3-5で示したように,圧力依存性はほとんど見られないため,( )内の圧力上昇 による影響をうち消すため圧力補正項 Pn を加えた.したがって,本試験結果による反応速度式として は,式(3-12)に活性化エネルギーEを表3-5で示した値を用いて図3-4,3-5および3-6を整理し,頻 度因子k0および圧力べき乗nとして表3-6に示す値を用いた.

Table 3-6  k0 and n

E56-Y E51-V

k0 1.68×100 mol/g-cat/s/MPa0.119 5.93×10-1 mol/g-cat/s/MPa0.113

n -0.881 -0.887

 

3.5 耐酸化試験 

3.2項で述べたように,DSS 運転を想定した場合には触媒の耐熱サイクル性,耐酸化性が必要条 件となるため, E56-Yの同等品であるN139触媒とE51-V触媒について,耐酸化試験を行った.

図 3-7 に N139 触媒による反応速度の推移をそれぞれ示す.反応速度は,圧力 0.4MPa,温度 460℃およびS/C=4.5の条件で測定し,熱サイクルを与えていない初期値を100%とした相対値で示す.

N139の温度条件は,中規模のガスタービンで用いることを想定し,窒素で 200℃まで降温して空気を 混入させ,メタンで再び昇温して 200℃で蒸気を加えて 460℃に到達させるサイクルとした.昇温およ び降温の速度は特に制御せず,昇温速度は加熱ヒータと PID コントローラにより5分程度で所望の温 度に達し,降温速度は断熱材を取り外すことなく自然冷却させたため,約-200℃/hであった. 

Cycles

0 1 2 3

Relative reaction rate %

0 20 40 60 80 100

Fig.3-7 Result of thermal cycle test by N139

表3-7および図3-8にE51-V触媒による昇降温の条件および反応速度の推移を示す.図3-7に見 るように,N139触媒では,約30%の反応速度の低下が見られたが,低下率は収束傾向にある.一方,

図3-8に示したE51-V触媒では全く劣化が見られなかった. MGTクラスでは,電力需要家において 厳密に管理されないことも予測される.このため,触媒中の貴金属である Ru を回収すると考え,初期 コストが多少かかってもRu系の触媒を用いる方が結果的に経済的であると考えられる.

(10)

Table 3-7 Thermal cycle operation for E51-V

Cycle Operation status

0 Initial status 400oC

Cool down to 150 oC by steam → Stop steam → Air leak in → Leave for 30minites and cool down to 100 oC by air

1 Heat up by methane → Add steam at 200 oC → Measure at 400 oC Cool down to 250 oC by steam → Stop steam → Air leak in → Leave for 20minites and cool down to 200 oC by air

2 Heat up by methane → Add steam at 200 oC → Measure at 400 oC Cool down to ambient temperature by N2 → Seal and leave for one day 3 Heat up by N2 → Switch N2 to methane at 200 oC → Add steam at 300 oC →

Measure at 400 oC

Cool down by N2 → Air leak in at 350 oC → Cool down to 200 oC 4 Heat up by methane → Add steam at 200 oC → Measure at 400 oC

Cycles

0 1 2 3 4

Relative reaction rate %

0 20 40 60 80 100

Fig.3-8 Result of thermal cycle test by E51-V

3.6 まとめ 

触媒評価装置を用いて,Ni系およびRu系のメタン水蒸気改質触媒について温度,圧力,S/Cなど をパラメータにして,それぞれの基本特性を把握した.その結果,次のことが分かった.

① メタンの消滅速度を反応速度として整理した結果,温度の影響はアレニウス則で表すことができ,

それぞれの活性化エネルギーを求めた.

②  1.0MPaまで,反応速度の圧力依存性はほとんどなく,S/Cが大きいほど反応速度は小さい.

③ 得られた試験結果を数値解析による改質器設計コードに資するように,反応駆動力を考慮した反 応速度式で表し,頻度因子を求めた.

④ 起動停止を想定した触媒の耐酸化試験によると,Ni 系では 30%程度の活性劣化が見られたが,

Ru系では全く劣化が見られなかった.

(11)

3.7 参考文献 

(1) Nakagaki, T., Ogawa, T., Murata, K. and Nakata, Y., “Development of Methanol Steam Reformer for Chemical Recuperation”, J. Eng. Gas Turbines and Power, 123 (2001), 727-733

(2) Alatiqui, I.M., Meziou, A.M., and Gasmelseed, G.A., “Modeling, Simulation and Sensitivity Analysis of Steam-Methane Reformers”, Int. J. Hydrogen Energy, (1989), 241-56

(3) 触媒学会編,触媒講座 第8巻(工業触媒反応編2),(1985),講談社

(4) Xu, J. and Froment, G.F., “Methane Steam Reforming, Methanation and Water-Gas Shift: I.

Intrinsic Kinetics”, AIChE. J., 35-1 (1989), 88-96 (5) Grover, S. S., Hydrocarbon Process, 49-4 (1970), 109

(12)

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