グループ学習による数学的問題解決の認知プロセスに関する研究
103
0
0
全文
(2) はじめに 中学校の数学の授業では、一斉学習や個別学習と共に、グループ学習が導入され ることがある。そのねらいは、生徒に自分の考え方や解き方を自由に出させたり、. それらを練り上げてより洗練された内容に高めるさせたり、あるいは解決過程につ いて相互に教え合いをさせたりするなど様々あるだろう。また、受身的な学習に陥 りやすい一斉学習に代わって、全ての生徒が学習に参加し易い形態として、グルー. プ学習という学習の機会を提供するねらいもあろう。そこには、学力差のある全て の生徒に対して、学習へのその子なりの参加を少しでも保証したいという教師の思 いがあるかもしれない。. 授業は、教師が授けるもの、そして生徒が教師から受けるものといった伝統的な 授業観に対する疑念は、最近私の中で益々強くなってきている。それは、知識には 伝達されるべき知識もあるが、同時に生徒たちが活動を通して構成できる、あるい は積極的に構成すべき知識もあるといった新しい知識観に惹かれるものを感じるか らである。折しも、小学校での「学級崩壊」が象徴するように、学校現場では授業. の成立しない状況が日常化しつつある。また、第3回IEA国際比較(1995)による と、わが国は「数学の成績はトップレベルだが、数学が嫌いな生徒が非常に多い」 ことが報告されている。これらから、生徒理解へのより一層の努力と共に、生徒の 視点に立つ授業づくりへの重要性が高まって来ているように思われる。. ところで、グループ学習は、わが国では以前から班学習や小集団学習として幅広 く実践され馴染みのある学習形態であり、時間がかかり学習効率が悪いといった批 判にも関わらず、生徒同士の話し合いや議論を期待するときなどでは頻繁に導入さ れてきたものである。しかし、そこでは、交流されたアイデアや解き方などの「結 果」には注目されても、それが導かれる「過程」にはあまり注意が払われてこなか ったように思われる。それは、グループ学習の中で起きている生徒のダイナミック. な活動について、多くのことが未だ解明されていないことに原因があるとも考えら れる。. そこで本研究では、数学の文章題の問題解決において、グループ学習の中でどの ようなことが起きているかについて探究することにした。そのために、グループ学 習についての理論的考察と共に、、相互作用とメタ認知の観点から、中学生の事例 調査に基づく実証的分析を行った。本研究によって、グループ学習による数学的問 題解決の認知プロセスについての更なる理解や、仲間との協同的な探究活動として グループ学習を導入することへの新たな意義を見出して頂ければ、筆者にとって大 きな喜びである。. 平成10年12月. 但馬啓吾.
(3) 【目次】. はじめに 第1章本研究の目的 ・一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 1. 1.1研究の目的 ・・・・・・・・… ◎・・・・・・・・・・… ....... 1. 1.1.1数学教育の状況とグループ学習に対する中学生の意識・・・・…. 1. 1.1.2国際比較からみたわが国の数学教育の特徴 ・・・・・・・・・…. 3. 1.1.3グループ学習に関する先行研究の概観と研究の目的・・・・・・…. 6. 1.2本論文の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 10. 第2章グループ学習の理論的背景と分析の枠組み ・一・・・・・…. 12. 2.1グループ学習の様々な特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 12. 2.1.1末吉らの先行研究の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 12. 2.1.2認知的および情意的・社会的特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・…. 16. 2.2グループ学習の理論的背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 18. 2.2.1生徒同士の相互作用とグループ学習 ・・・・・・・・・・・・・・…. 18. (1)Granottによる相互作用の分類・・・・・・・・・・・・・・・・…. 18. (2)Le面n&Zaslavskyによる相互作用の分類 ・・・・・・・・・・…. 21. 2.2.2対話空間を介して行われる対話とグループ学習・・・・・・・・・…. 24. (1)2人の対話モデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 24. (2)グループ学習の対話モデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 25. 2.2.3メタ認知的活動とグループ学習 ・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 26. (1)問題解決におけるメタ認知 ・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 26. (2)間個人的なメタ認知的活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 27. 2.3分析の枠組みとその特性比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 29. 2.3.1Artzt&A㎜our−Thomasによるエピソード分析 ・・・・・・・・・…. 29. 2.3.2条件分析的な発話分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 31. G)相互作用的活動に着目した発話分析・・・・・・・・・・・・…. 31. (2)間個人的なメタ認知的行動に着目した発話分析・・・・・・・・…. 32. 233援助に着目した生徒の理解経路の分析・・・・・・・・・・・・・…. 32. 2.3.4分析の枠組みの特性比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 33.
(4) 第3章認知プロセスにおける相互作用的活動の実証的分析・…・・. 36. 3.2エピソードの共有に関する分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 37 40. 32.1対話的コミュニケーションとしての質問と説明 ・・・・・・・…. 40. 32.2援助・被援助としての質問と説明 ・・・・・・・・・・・・・・…. 41. 32.3メタ認知的活動としての質問と説明 ・・・・・・・・・・・・・…. 42. 3.2.4事例調査に基づく実証的分析・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 44. (1)調査の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. (2)プロトコル解剖図によるエピソード分析 ・・・・・・・・・・…. 44 45. (3)問題解決過程の発話分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 48. (4)援助に着目した理解経路の分析 ・・・・・・・・・・・・・・…. 52. 3.1エピソードの漸進的な変容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 3.3エピソードの変容の契機に関する分析 ・・・・・・・・・・・・・・…. 55. 3.3.1調査の概要とプロトコル解剖図 ・・・・・・・・・・・・・・・…. 55. (1)調査の概要 ・・・・・・・・・・・・・・… ●●’●●●●●●’●●. 55. (2)プロトコル解剖図によるエピソード分析 ・・・・・・・・・・・…. 56. 332課題に関連した質問と説明によるエピソードの変容 ・・・・・・…. 57. 333アイデアの提示と検証によるエピソードの変容 ・・・・・・・・・…. 58. 3.3.4教師の教授的行為によるエピソードの変容 ・・・・・・・・・・・…. 60. 第4章認知プロセスにおけるメタ認知的活動の実証的分析 ・一・・. 62. 4.1詩華人的なメタ認知的活動の機能 ・・・・・・・・・・・・…. 62. 4.1.1間個人的モニタリングと間個人的コントロール ・・・…. 63. 4.1.2発話アイテムのプロトコル分析 ・・・・・・・・・・…. 64 68. 42間個人的なメタ認知的活動の実証的分析 ・・・・・・・・… 42。1エピソードの内容の深化に関する分析 ・・・・・・・…. 68. 4.2.2エピソードの変容に関する分析 ・・・・・・・・・・…. 71. 第5章グループ学習による数学的問題解決の指導への示唆 ・・…. 74. 5.1理論的考察および実証的分析のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・…. 74. 5.1。1グループ学習一般に関する理論的考察のまとめ ・・・・・・・・・…. 74. 5.12認知プロセスに関する実証的分析のまとめ ・・・・・・・・・・…. 75. 5.L3実証的分析に用いた方法論について ・・・・・・・・・・・・・・…. 52グループ学習による問題解決の指導への示唆 ・・・・・・・・・・・…. 77 79. 5.2.1現行の問題解決的な授業に関する一考察 ・・・・・・・・・・・…. 79. 5.2.2グループ学習による問題解決の指導への示唆 ・・・・・・・・・・…. 80. おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 85 87 91. 引用・参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・… .・・・・・・・・・・…. 資 料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・….
(5) 第1章本研究の目的 1.1研究の目的 1.1.1数学教育の状況とグループ学習に対する中学生の意識 近年のわが国の学校教育に噴出する様々な問題は、これまでの学習観や教育観 に対して問い直しを余儀なくしているように思われる。従来、教科書に記載され た教材を分かり易く解説し、生徒に知識や技能を系統的に習得させることに重点 が置かれてきたこれまでの伝統的な教育には、効率重視の画一的な教え込みであ るという幅広い社会的な批判がある。. 「今日、算数・数学教育は大きな転機を迎えている」と構成主義的な教授学習 アプローチを提唱する中原(1995)は指摘する。そして、その改革の方向は子ども. による「主体的学習」の創造であるという。同時に、算数・数学教育を通して子 どもの豊かな人間性を育むことは言うに及ばない。このような観点から、算数・ 数学教育はどのように質的な転換を図らなければならないのだろうか。 近年の数学教育の状況を憂慮して、能田(1995)は、「わが国の中等学校の生徒. たちは、教えられることに慣れ過ぎてしまって、自分で考えることをほとんどし ないで、『待ち人間』になっているようである。また、中学校や高等学校の先生 方は、入学試験のためか、または指導時間の減少のためか、数学の知識や技能を 教えるのに急ぎ過ぎて、生徒の考える時間、または考える楽しみや発見する喜び を、いつも奪ってしまってはいないだろうか。そして、先生方は数学を愛するあ まり多くを教え過ぎて、生徒たちは消化不良を起こし、数学嫌いに拍車をかけて いないだろうか」(p.181)と、厳しく批評している。. 教師は数学を愛するあまり生徒に数学を教え過ぎている。その結果、生徒は『待. ち人間』になっている。授業時間数の制約、あるいは入試準備のために、現実の 数学の授業では、生徒が主体的に考える時間は少なく、結果として「生徒の考え る楽しみや発見する喜び」が奪われていると能田は指摘する。そこには、教師の コントロールの下で、生徒が受身的になり、教師の指示を我慢強く待っている生 徒の姿が想像される。それは、生徒による「主体的学習」とはかけ離れた状況で ある。. しかしその一方で、小・中学校の教育実践の中には「新しいものを発見する喜 び、自分を精一杯表現する喜び、そして仲間と共に励む喜び」(武藤・井田・長澤,. 1998,p.40)などを重視する機運が高まりつつある。そうすると、教育には能田が. 指摘しているような「考える楽しみや発見する喜び」という要素が不可欠である. 1.
(6) と思われる。特に、自由な発想が求められ、様々な解法が考えられ得る数学の授 業では、「考える楽しみや発見する喜び」を生徒が充分に享受しなければならな いであろう。. だとすれば、教師は生徒自らが数学的な概念を構成したり、発見的・探究的に 数学的な問題解決に取り組む活動を授業に準備すると共に、そのような活動に対 して主体的に参加するように生徒を励まさなければならない。そこでは、生徒は 「問われる」立場ではなく、自らが「問う」立場に立って課題に取り組み、試行. 錯誤を繰り返しながら思考の探究的なプロセスを経験することが期待できる。そ のような活動の実践を通して、生徒に算数・数学の面白さや発見する喜びを実感 させることができるのではないだろうか。. ところで、Schoe㎡bld(1992)は、数学の問題解決過程に対して影響を及ぼす要. 因に信念システムがあると指摘した。彼は一般の人々が「数学は1人で行う活動 である」という強い信念を持っているという。しかし、学校という特殊な状況を 除けば、数学の問題は1人だけで解決:される必要はないし、実際に社会で数学を. 役立てている専門家は、現実問題の解決に際して他者との共同作業を通して解決 することが多いのではなかろうか(伊藤i,1994)。. 次の2つの表は、平成10年9,月に実施した、兵庫県のH中学校3年生39人 の数学およびグループ学習に関するアンケート調査結果である。まず、表1−1の. 結果を見る限りでは、中学生には、Schoen飼dが指摘したような「数学は1人で 行う活動である」という強い信念を抱いている生徒は少ないように思われる。. 表1−1数学に対する中学生の意識 「数学は、一人で学習する教科である」と思いますか そんな面もある. 強くそう思う. 0. 2. 13. 3. そんなことはない 21. 表1−2 グループ学習に対する中学生の意識 「数学の授業にグループ学習を取り入れた方がよい」と思いますか. 取り入れた方がよい. 16. どちらでもよい. 6. 16. 1. 入れない方がよい 0. 表1−2は、グループ学習に関する調査結果である。この結果を見る限りでは、. 生徒は数学の授業にグループ学習を取り入れることに対して肯定的であると思わ れる。しかし、それを疑問視したり、否定的な生徒の中には、「グループ学習に. 2.
(7) よってみんなで楽しく学習できても、グループの力が全体的に伸びるだけで、一 人ひとりの(数学の)力が確実に付くとは限らない」とか「仲問に頼るようになっ てしまうのではないか」などと心配する意見があった。. 一方、肯定的な意見の多くは、「自分とは違った様々な仲間の考え方や意見を 聞くことができる」、「計算が得意な人、文章問題が得意な人があるから大勢です. ればよい」などであった。中には、「自分の言いたいことが言えるし、学習がお もしろくなるから」とか「分からない人がいたら、すぐに教えてあげられる」と いった意見もみられた。. アンケート調査に寄せられた生徒の意見から、改めて教室での学習活動が複雑 な活動であることを実感した。授業の中で、生徒は知識や技能だけを習得してい るのではない。金本σ998)が指摘するように、授業は社会的あるいは情意的側面. に関わる「他者との関係性」と深く結びついて進展する活動である。上記のよう な生徒の意見は、このような授業の実相を如実に表していると思われる。教師は、 生徒の視点からも授業を捉える努力を怠ってはならないと強く感じた。. これまでのように、教師の立場から如何に効率的に分かり易く教えるかではな く、授業の構成に際して、教師は如何にして生徒の「主体的学習」を実現しかつ 保障するかという問題に重点を置く必要があるのではないだろうか。後述するよ うに、そのためには、端的に言えば、教師は授業活動における教師と生徒および 生徒同士の相互作用あるいは学習の協同性などに関する理解を深める必要がある と思われる。. 本研究はこのような観点から、生徒同士の相互作用や学習の協同性と密接な関 係があると思われる学習形態としてグループ学習を想定し、生徒がグループ学習 によって数学的問題解決に取り組む際に、その内部で起きている解決過程を認知 的側面に焦点化して探究することにした。. 1.1.2国際比較からみたわが国の数学教育の一側面 ここでは、1995年に実施された第3回国際教育到達度評価学会(IEA: Ihtemational Association fbr the Evaluation of Educational Achievement)の調査報告. (国立教育研究所,1997)を基に、わが国の算数・数学教育の状況について幾つかの. 点に焦点を絞って国際比較する。IEAによる今回の調査研究には、過去最高の 46か国/地域の中学校が参加し、そのうちの41か国/地域の結果がまとめられ ている。全体の学校数、生徒数は、中学校1学年が約6,000校、約140,000名と. 3.
(8) 中学校2学年が約6,000校、約150,000名の合計約290,000名である。. 次の表1−3は、39か国/地域の内、中学校2年生の数学の平均得点に基づく 上位10か国における、「数学の好き嫌い」に関する調査結果である。(なお、得 点以外の単位は全て%表示である) 表1−3 平均得点と数学の好き嫌い(中学2年生) 順 位 1. 2 3. 国/地域. シンガポール 韓. 国. 琿1、∵. 4 香 港 5 ベルギー(Fl) 6 チ エ コ 7. 8 9. 平均得点. 1. ス ロバニア. ス. イ. ス. 643 607 695 588. スロベニア 上位10国平均. 575 513. 国際平均値. 4 6 、浅1. 565 564 547 545 541 541. 10 オ ラ ン ダ. 好き 嫌い 大嫌い 大好き 生徒の割合 生徒の割合 生徒の割合 生徒の割合. 14 36 』3¢・. 12. 23. 11. 21. 14 15 10. 36 25 22 23 30 27 22. 11. 13 11. 10. 54 44. 43.1. 48 49. 、・. 28 14 pQ 17 18. 41. 8. 49 48 52 50 48 49. 11. 20 14 8. 15 19. 調査項目の質問は、数学の好き嫌いについて「あなたは、数学をどれくらい好 きですか」という形でなされている。数学は、国際的には、「大好き」と「好き」. の国際平均値の合計が70%近い高率(68%)を示しているように、多くの国で好か れている教科である。しかし、わが国のそれは53%で、41か国中、チェコ(49%) に次いで2番目に低い数値である(国立教育研究所,1997)。このことから、調査を. 分析した国立教育研究所は、「わが国では国際的にみて数学が好きな生徒が少な い」(p.78)と結論付けている。. 次の表1−4は、数学について生徒がどのように思っているかを調査した結果で ある。その調査項目は、「数学の勉強は楽しい」、「数学はたいくつだ」、「数学は. やさしい教科である」、「数学は生活の中でだれにも大切だ」、そして「将来、数. 学を使うことが含まれる仕事がしたい」である。表の数値には、それぞれの項目 について、「強くそう思う」と「そう思う」に対する反応率を合計したものが用 いられている(p。81)。. ここでも、わが国の中学生の数学に対する意識には、国際的に見て特徴がある。 すなわち、「数学の勉強は楽しい」(46%)、「数学はやさしい教科である」(13%)、. 「将来、数学を使うことが含まれる仕事がしたい」(24%)などの項目について、. それらの国際平均値がそれぞれ65%、34%、46%であるのに対して、わが国では その何れの数値もかなり低いと言わなければならない。. 4.
(9) 表1−4数学に対する意識(中学2年生) 数学を使う. 順位. 国/地域 1. 2. シンガポール. 韓 国 露』、 本 4 香 港 3. 5 ベルギー(FD 6 チ ェ コ 7. ス ロ バニア ス イ ス 9 ス ロ ベニァ 10 オ ラ ン ダ 上位10国平均 8. 国際平均値. 数学の勉強 数学はたい 数学はやさ 数学は生活 d事をした ュつだ オい教科だ ナ大切だ ヘ楽しい 62 28 78 95 34 18 41 40 20 75 .4:6, 7董 35 24 13、 41 31 66 87 40 35 55 25 85 34 37 38 44 27 97 51 32 97 58 32 57 34 35 40 92 39 37 48 24 92 34 56 77 46 32 37 38 54 87 27 65 38 46 34 92. 「. 国立教育研究所が分析するように、数学に対して「わが国の生徒は、数学は楽 しくなく、生活で大切であるという意識も低い。また、将来数学を使う仕事をし たいという意識も低い」(p.82)のである。. 次の表レ5は学習形態に関する調査結果である。調査された学習形態は、「生 徒が応答し合って学級として一緒に学習する」、「教師の一斉指導で学級として一 緒に学習する」、「教師の助けがあって個別に学習する」、「教師の助けなしで個別. に学習する」、「教師の助けがあって2人かグループで学習する」、そして「教師. の援助なしで2人かグループで学習する」である。表の数値は、これらの学習形 態について、回答教師に対応する生徒(「いつもする」とF殆どする」と回答し た生徒)の割合で表されている。. 表1−5数学の授業での学習形態(中学2年生) 順位. 国/地域. 生徒同士で 学級で学習. 一斉指導で 学級で学習. 2 3. シンガポール 韓. 、臼1. 4 香. 国. 添墜. 港. 生徒の割合 61 15. 39 摂22 , 11. 5 ベルギー(Fl) 6 チ エ コ. 10. 7. スロ バニア. 35 4. スロ ベニァ. 11. 上位10国平均. 16 16. 8 9. 10. ス イ. ス. オ ラ ン ダ. 国際平均値. 教師の援助. で個別学習. なしで個別学. 教師の援助. 教師の援助 なしでグルー. v凸 生徒の割合. 1. 教師の援助. 5. 7. 生徒の割合. 生徒の割合. 48. 89. 41. 78. く27嘆i. 37 59 47 47 48 60 56 58 56. 62 57 72 50 61. 87 65 57 60. 5. 27 30 f5 17. 生徒の割合. :. 20. 生徒の割合 6. 12. 11. :7.. 馳1. 9 6. 4. 3. 42. 13. 8. 31. 8. 7. 25 34 38 26 25. 35 40 49 20 23. 20. 5. 11. 34 11. 10.
(10) 表1−5から、数学の授業での学習形態については、国際的には「教師の一斉指 導で学級として一緒に学習すること」(国際平均値56%)と、「教師の助けがあっ て個別に学習すること」(国際平均値60%)の2つが多く、反面その他ゐ学習形態 は比較的に少ないことが分かる。. 一方、わが国に関しては、「教師の一斉指導で学級として一緒に学習している こと」(78%)の割合がかなり高いことが特徴的である。対照的に、個別学習やグ. ループ学習の割合が国際比較の上からも低いことが分かる。つまり、わが国の学 習形態は、一斉指導の形態が中心であり、個別学習やグループ学習の割合はかな り低いと言えそうである。. 最後に、上述したIEA調査結果の考察は以下のようにまとめられる。 ・表1−3の国際比較から、わが国の生徒は、「数学の成績はトップレベル(調査 国中野3位)だが、数学が嫌いな生徒が非常に多い」。. ・表1−4の国際比較から、わが国の生徒は、「数学は楽しくなく、生活で大切 であるという意識も低い。また、将来数学を使う仕事をしたいという意識も 低い」。. ・表1−5の国際比較から、わが国の数学授業の学習形態は、「一斉指導の形態 が中心であり、個別学習やグループ学習の割合はかなり低い」。. 国際比較から導かれた、わが国の中学生の数学に対するこのようなネガティブ な意識をどのように捉えればよいのだろうか。末吉他(1983)は、「勉強をすれば. するほど勉強が嫌いになるような勉強の仕方をやらせているのが、受験本位の教 育と言ってよい」(p.56)と、当時の教育を批判している。受験本位の教育が諸悪. の根元なのかは判断できないが、わが国の生徒は国際的に成績はトップレベルに も関わらず数学が嫌いな生徒の割合が多いという結果を考えると、「勉強をすれ ばするほど勉強が嫌いになるような勉強の仕方」という学習状況は、現在の数学. 教育の状況にかなり当てはまっているように思われる。この第3回IEA調査は そんなことも示唆しているのではないだろうか。. 1.1.3グループ学習に関する先行研究の概観と研究の目的 「三人寄れば文殊の知恵」のことわざにあるように、我々は少人数のグループ による意思決定の過程に対して、通常高い信頼感や期待感を持っている。自分だ. 6.
(11) けで打開策や解決策を見出すことも多いが、大きな困難に直面したときなどには、. 身近な人や友人に相談を持ちかけたりする。そうした話し合いから常に適切な結 論が導かれるわけではないが、話し合いを通して疑問点や問題点が整理されたり、. それらの所在が明確にされることはよく経験することであろう。また話し合いの 中で、素晴らしいアイデアが閃くこともある。そのような期待感が、他者との話 し合いや議論などには内在していると思われる。. 数学授業での話し合いや議論の大切さは、コミュニケーション能力の育成の観. 点から言及されることがある。1989年に全米数学教師の会(NCTM:National Council of Teachers of Mathematics)が出版した『学校数学のためのカリキュラムと. 評価の基準』の中で、数学授業におけるコミュニケーション能力が取り上げられ ている。それによると、コミュニケーション能力とは、読む・書き・話す・推論 する・議論する・弁護するという能力、そして様々な形態での表現(記述、口頭 表現、図、表、グラフ、式、具体的モデルなど)を使って考えを表す能力である。. これらのコミュニケーション能力が、数学の意味を理解する能力や抽象する能力 に寄与するということである。. 算数・数学教育におけるコミュニケーションに関する研究は数多い。(例えば、 古藤i,1995;江森1997;金本・小林,1997a;金本・大谷・福島・馬場,1997b;金本,1998;. Leikin&Zaslavsk又1997;Webb,1991)。古藤(1995)は、算数・数学教育でコミュニ. ケーション能力の育成が重要視される理由として、a)表現力育成の視点、 b)よ り確かな理解のため、c);構成主義の見地の3つを挙げている。また、江森(1997). は、数学の学習における情報の伝達過程を、協応連鎖、共鳴連鎖、超越連鎖、 創発連鎖という4種類のコミュニケーション連鎖に類型化している。金本(1998). は、算数・数学学習で用いられるコミュニケーション能力の中で、特に「数理 的な事象に関わるコミュニケーション活動を進めていく能力」(p.32)を数学的コ ミュニケーション能力と規定している。. ところで、数学教育におけるグループ学習には、このようなコミュニケーショ ンや相互作用に関連した次のような指摘がある。例えば、「小グループ設定は、. 生徒間に生じる数学に関する対話やコミュニケーションを増加させる自然な環境 を提供する」(Artzt,1996,p.116)、グループでの話し合い活動はコミュニケーショ. ンを生み出す一つの形態である(金本,1998)、グループの仲間と相互作用する際に. 生徒が用いた認知プロセスは、一人で作業する際の認知プロセスに内面化され活 用される(Bershon,1992)、あるいは「グループの問題解決に伴う社会的相互作用. によって、生徒はある程度自分の発達の最近接領域を拡げられる」(Leikin 他,1997,p。332)などである。. 7.
(12) また、グループ学習一般に関する研究は、わが国では、例えば末吉他(1970,1983). によってかなり以前から行われてきている。彼らは、「様々な思考の自由な交換、. 対立し葛藤する意見の相互批判による止揚、そこに小集団による集団思考の特色 がある」(p.81)と指摘する。このグループ学習という学習形態は、一斉学習や個. 別学習と同様に授業を支える重要な形態であることは、上述したIEAの調査で のグループ学習の位置づけからも示唆され、わが国ではすでに小・中学校の算数・. 数学授業において、班学習や小集団学習と称して広く実践されてきた。 しかし、Webb(1992)が指摘するように、グループ学習の内部で起きているダイ ナミックスについてはあまり研究されていない。グループ学習に関する研究は、 「知識を共同構成するプロセス(the process of coconstructing㎞owledge)についての. 多くの不明確な点およびその性質のために、進むべき研究の領域を見定めること が難しく、事実、社会的相互作用がどのように認知発達を促すかについて習得さ れるべき多くのことが残っている」(Webb&Palincsaら1997,p.841)状況である。. すなわち、グループ学習の研究には、その内部で実際にどのようなことが生じて いるのか、またどのようにして認知的活動が促進されるのかなどについて解明さ れるべき数多くの点があると思われる。. グループ学習による問題解決の文脈でも、数学的な問題解決の認知プロセスに 関する分析的な研究はほとんど行われていない(Artzt&A㎜our−Thomas,1992)。ま. た、グループの規模については、2人組を被験者とする実証的な研究は幾つかあ る(例えば、Schoenfbld,1985;LesteろGarof乞lo,&Kroll,1989;Cai,1994;Goos&Galbraith,. 1996)が、それ以上の人数規模のグループ学習における研究は見あたらない。そ して、1.1.2で概観したように、国際比較の結果からわが国の中学校の数学授業. では、一斉学習の割合が非常に高い一方で、個別学習やグループ学習の割合が低 く、それらのバランスの採れた学習形態の活用の必要性が示唆されている。また、. 筆者の調査では、生徒はグループ学習の導入に対して必ずしも否定的ではなかっ た(1.1.1参照)。そこで筆者は、中学校の数学授業の中で、グループ学習を様々に. 活用する意義は大きいと考えた。それは、グループ学習が、その活用方法を工夫 することによって、生徒の「主体的学習」を支援し、「生徒の考える楽しみや発 見する喜び」を実現させる学習の機会になるかもしれないと考えたからである。. 本研究の目的は、以上の考察を踏まえ、グループ学習による数学的問題解決の 認知プロセスを探究することである。すなわち、グループ学習における生徒同士 の相互作用、対話やコミュニケーション、そしてメタ認知的活動について理論的. 考察を行うと共に、A咽&A㎜ou卜Thomasのエピソード分析、条件分析的な発 話分析、援助に着目した生徒の理解経路の分析によって事例調査の実証的分析を. 8.
(13) 行う。このような一連の分析から、数学的問題解決におけるグループ学習の内的 なダイナミックスが幾らか明らかになると期待される。また、グループ学習に関 するそのような理論的分析および実証的分析の考察から、数学授業におけるグル ープ学習の問題解決指導に対して、幾つか示唆を与えることを目的とする。. 9.
(14) 1.2本論文の構成 本論文の構成は、以下の通りである。. 第1章では、わが国の数学教育の状況等について、第3回IEA国際調査報告 などを基に考察すると共に、グループ学習に関する先行研究の概観から、本研究 の意義と目的について述べる。. 第2章では、先行研究を基にグループ学習一般に関する特徴やグループ学習の 理論的背景について考察すると共に、本研究で用いる分析の枠組みについて記述 する。まず2,1節では、末吉他を中心とした先行研究を基に、認知的側面および. 情意的・社会的側面の2つの側面から、グループ学習一般にまつわる様々な特徴 を整理する。2.2節では、生徒同士の相互作用、対話や対話モデル、そしてメタ. 認知的活動の3つの観点から、グループ学習の理論的背景について考察する。23. 節では、第3章、第4章で行う事例調査の実証的分析に用いる3つの分析の枠組 み、すなわちA丘zt&Armour−Thomasのエピソード分析、条件分析的な発話分析、. 援助に着目した生徒の理解経路の分析について概説し、続いて各分析の枠組みの 特性を簡単に比較整理する。. 第3章では、グループ学習による数学的問題解決の認知プロセスについて、生 徒同士の相互作用の観点を中心に、エピソードの変容過程に関する実証的分析を 行う。そこでは、生徒の発話プロトコルに対して、本研究の分析の中心的な枠組 みとなるArtzt他のエピソード分析と条件分析的な発話分析を適用した。まず3.1. 節では、Ar倣の文献から引用した発話プロトコルを基に、 「エピソードの漸進. 的な変容」について議論する。32節では、中学3年生の事例調査の発話プロト コルを基に、生徒同士の相互作用的活動と見なされる「課題に関連した質問と説 明」に着目し、グループ学習の問題解決過程における仲間との「エピソードの共 有」について実証的分析を行う。3.3節では、中学1年生の事例調査を基に、「エ. ピソードの漸進的な変容」に関連する「エピソードの変容」の契機について実証 的分析を行う。. 第4章では、グループ学習による数学的問題解決の認知プロセスについて、間 判人的なメタ認知的活動の観点から、エピソードの変容過程に関する実証的分析 を行う。まず4.1節では、グループ学習の対話モデル(2.2.2)およびメタ認知に関. する議論(2.23)を踏まえ、間門人的なメタ認知的活動である「問個人的モニタリ. ング」と「間個人的コントロール」について理論的考察を行う。4.2節では、第. 3章の事例調査の発話プロトコルを基に、「間個人的モニタリング」と「間個人 的コントロール」について実証的分析を行う。. 10.
(15) 第5章では、前章までに行った様々な理論的考察および実証的分析を総括し、 それらを踏まえて、数学授業におけるグルビプ学習による問題解決指導に対して 幾つか示唆を述べる。まず5。1節では、グループ学習に関する先行研究の概観や 理論的考察および認知プロセスに関する実証的分析を総括する。また本研究の中 で事例調査の実証的分析に用いた方法論を振り返り、その有効性を検討する。52 節では、現行の問題解決指導の問題点について考察し、5.1節の総括も踏まえて、. 数学授業におけるグループ学習の問題解決指導に対して幾つか示唆を述べる。. ll.
(16) 第2章勿レーフ学習の理論的背景と分析の枠組み グループ学習に関するわが国の先行研究には、末吉他による講座『集団学習』 全三巻(1970)や『集団学習の研究』(1983)などの優れた先駆的研究がある。そこ. での「集団学習」とは、端的に言えば「学級全体の共同化」を目指した学習であ った。そしてグループ学習は、そのような集団学習のための最も有効な学習形態 として位置づけられていた。彼らの先駆的で理論的な分析は、グループ学習一般 についての考察を進める際に多くの示唆を提供すると思われる。そこで本研究で は、最初に、彼らの研究を振り返ることから始める。なお、本研究で対象とする グループ学習は、いわゆる「集団学習」を通して「学級全体の共同化」を目指す ことまでを射程に入れて考察するものではないことを断っておく。. 2.1節では、末吉他の先行研究を中心に他の幾つかの文献を参考にして、認知 的および情意的・社会的な側面から、グループ学習の持つ様々な特徴について概 観し整理する。. 2.2節では、以下の3つの観点からグループ学習の理論的背景を検討する。2.2.1. では、グループ学習での生徒同士の相互作用について、GrarmotやLeikin& Zaslavskyによる相互作用の分類を手掛かりに、中学校の実際の授業で生起しそ うなグループ学習における相互作用のタイプを同定すると共に、相互作用の諸側 面について言及する。次の2.22では、グループ学習における相互作用がどのよう. にして生じるのかについて、対話やコミュニケーション、あるいはコミュニケー ションのネットワークに着目して考察する。そしてグループ学習の対話モデルを 提案する。最後の2.2.3では、メタ認知一般に関する議論を踏まえて、グループ学. 習におけるメタ認知的活動として「間個人的モニタリング」と「間個人的コント ロール」を規定する。. 2.3節では、グループ学習による数学的問題解決の認知プロセスを探究するた. めに用いる3つの分析の枠組みについて概説し、続いて各分析の枠組みの特徴を 比較整理する。. 2.1グループ学習の様々な特徴 2.1.1末吉他の先行研究の概要 末吉他(1970)は、 「教師⇒教材⇒子ども」という図式で表される教科指導. 12.
(17) の形式を伝統的な教育観であるとした。これは、教材を媒介として、教師が生徒 に対して一方的に教授する指導形式である。そこでの生徒は、教師の教授行為に 対して受身的に応答する存在として捉えられている。このような指導形式は、現 在も中等・高等教育の中で広く一般的に見受けられる形式だと思われる。. しかし、教室での学習の実態を重視し、それに即して考えると、上記の図式は. 「教師⇔教材⇔子ども」になると彼らは強く主張する。教育本来の見地か らすると、教師の作用は、子どもからの作用に対する反作用であり、それらは相 互作用の関係にあると考えられるからである。さらに実際の学習の場面では、子 ども同士の間にも何だかの相互作用が働くので、より複雑なコミュニケーション のネットワークが形成されている、と彼らは指摘する。 ここには、学習とは何か、という彼らの深遠な問いが背景にあると思われる。. 彼らは、学習過程には2つの側面があると主張する。すなわち、学習は「他人に 代わってもらうわけにはいかぬという意味で個別的、主体的な過程であると同時 に、教師と子供たちの間および子供たち相互の間における相互作用の過程に他な らぬのである。顕在的にか潜在的にか相互に働きあっているという集団的側面を 抜きにして、学習指導の実態をとらえることはできない」(p.10)ということであ る。. このように、末吉他は、教師が教材を媒介として生徒に対して一方的に働きか けるとする伝統的な指導に疑問を呈し、実際の教室での生徒の学習として教師と 生徒の間および生徒と生徒の間における相互作用に注意を向けたのである。そこ で、彼らはこのような学習の相互作用を重視する立場からウォールバーグの研究 を引用し、学習集団の規模を拡大するとき、それに伴って生起する様々な現象に ついて考察を行っている。図24は、それらの関係を概略的に表した図式である。. なお、ここでは、独立変数として集団規模が設定され、集団規模が大きくなる とき、集団に現れた様々な現象がその従属変数となっている。両者の中間に教師、. 集団そして生徒の役割という媒介変数が介在していると考えられている。 この図式に関する彼らの考察は、以下のように要約できる。. ① 学級の規模が大きくなると、学習指導の場としての集団秩序の維持が難 しくなる。だから、学習目標に生徒の注意を集中させるために、教師は「教. 権の発動」を行うようになる。一斉学習の形態をとれば、必然的に教師の 役割は「権威主義的」となり「独断的」となりやすい。. ② 社会学の観点から、組織が巨大化し複雑になると組織の各部分を「調整」 する必要が出てくる。そのために、教師は「非人格的」役割をとり、画一. 13.
(18) 的に振る舞うようになって、生徒に対して「摩擦」を生みだしたり「親密 性」を失う。. ③ 集団規模が大きくなると、成員相互にコミュニケーションする機会が減 少するので、意思疎通を図る必要が大きくなる。意思疎通の要求を満たす. ために、学級集団は2っの方向に「分化」する。分化した「派閥」や徒党 といった「下位集団」に対して、教師の規制が発動され、また分化した「個 人」に対して、集団が規制的な役割を演じるようになる。. ④ 集団規模が大きくなると、「集団の資源」と考えられる「知識やアプロ ーチ」が増加する共に、その「多様性」が豊かになる。しかし、一方で生 徒は「特殊化」した役割を演ずるようになり、役割の固定化を招き、その 結果、学級集団に「分散」現象が生じる。 独立変数. 媒介変数(教師の役割). 従属変数. +形式性* +目的指向* 一壷 乱*. (集団講一荘派閥. +えこひいき. 一民主的 4集団の資源一レ知識と 月夋` 奪. 生徒の役割). 特殊化→+分. 散*. (山中の*印は有意水準5%以下で統計的に有意であることを示す). 図2−1学級規模と学習環境との関連分析のための図式 彼らは、学級規模の他に、学習環境に影響を及ぼす学級集団の構造的要因には、. 例えば教師のリーダーシップのあり方や生徒との人間関係なども重要な要因であ ると指摘した上で、上記のような考察から、学級規模の拡大の影響に関して、次 のような一般性を指摘している。すなわち、 「学級規模が拡大すれば教師の役割. 行動は、独断的、非人格的になり、小さな下位集団や個人の役割を規制する方向 に走りやすい傾向がある」(p.65)。. そこで、30人から50人規模の学級(学習集団)において、 「このような問題傾向. の発生を避けるためには、媒介変数である教師および生徒の役割に、一定の教育. 14.
(19) 的操作を加えるより他に手がないだろう」(p.65)という。彼らは、その有力な改. 善策として、小集団学習、つまりグループ学習の導入を策定した。 末吉他は、実践事例の研究を基にした分析から、グループ学習(小集団学習)の. 効果について、次の3点を挙げて説明している。彼らの説明内容は以下のように 要約できる。. ① 学習活動への参加度 ・グループ学習では発言回数が一斉学習よりも増加する。また、「まとまつ た発言」に対して「短い応答」が多くなる。しかも、成績下位の生徒も相 づちを打つなどの「短い応答」による学習への参加がみられる。. ・生徒のグループ学習の「良い点」に関する応答として:「自由に発言でき る」(50%)、 「楽な気持ちで話し合える」(35%)、 「わからないところはお. わりまで徹底的に聞くことができる」(17%)などがある。. ②対人関係の変化 ・学級全体を凝集性の高い集団へと組織化するのに役立つ。. ・成績上位者は学習活動の上で他の生徒に助力する機会が増え、相互の問に 感情面での好ましい関係が形成されやすい。. ③集団思考 ・少人数のグループ学習では、生徒は課題に対して無関心でいたり、学習活 動から逸脱しにくい。. ・学習意欲を高め、成績下位者の脱落を防ぎ、知的学習成績を引き上げ、高 い生産性をあげることが期待される。. ・学習者の主体的な活動が中心であるので、相互批判によって認識を深めて いくことが考えられる。. ・集団思考の特徴である「発散的思考」によって豊富に提供された情報が、. 評価作用を受けて一定の方向に「収束」していく。 このようなグループ学習の効果は、グループ学習のポジティブな特徴であると 見なされる。しかし、それらの特徴は別の幾つかの側面からも捉えられる。それ は、端的には、認知的側面および情意的・社会的側面である。これらの側面に注 視して、グループ学習の持つ特徴をある程度、分類整理することができれば研究 上有益だと考える。. 15.
(20) 2.1.2認知的および情意的・社会的特徴 ここでは、2.Llでの議論を踏まえ、さらに他の研究も参考にしてグループ学習. 一般についての特徴を整理する。明確には区別しにくいところもあるが、以下の ように、グループ学習のポジティブな特徴について認知的側面と情意的・社会的 側面の2つに分けて分類整理した。. ① 認知的側面に関するグループ学習のポジティブな特徴 ・発言回数が増加し、生徒間の対話やコミュニケーションが促進される (末吉他,1970;フィリップ,1979)。. ・疑問を発したり説明する活動が増加する(Webb,1991;Leikin他,1997)。. ・自由な雰囲気の中で、自分の考えを言葉にするのに役立つ:言語表現訓練 (フィリップ,1979)。. ・仲間がどのように情報をとらえ解釈するか、また仲間の困難について知る ことができる:他者理解(フィリップ.1979;Vedder,1985)。. ・教師の意図に沿って一つの解決策を探る「三門的思考」に対して、多様な. 視点から可能な解決策を創出する「発散的思考」あるいは「拡散的思考」 が活性化される(末吉他,1970)。. ・相互確認、相互補足、相互誘発、相互葛藤、相互批判などの生徒同士の相 互作用によって、認識の深まりが期待できる(末吉他,1970;徳島大付属中, 1979)。. ② 情意的・社会的側面に関するグループ学習のポジティブな特徴 ・課題に対して無関心であったり、学習活動から逸脱しにくい(末吉他,1970; Leikin他,1997)。. ・学級全体では活動の機会の少ない生徒でも、積極的に活動して成就感や満 足感を得ることが期待できる:学習への参加の促進(末吉他,1970;吉本,1972)。. ・お互いの長所と短所を認め合い、助け合って目標の達成に取り組みやす い:仲間の存在の認知(土屋,1972;成田,1981)。. ・困難に直面したとき、効果的な援助を受けやすい(Webb,1992;:Leikin他,1997)。. ・説明が学習者にとって馴染みのある生徒の言葉で受けられる (Noddings,1985)。. ・学級全体を凝集性の高い集団へと組織化するのに役立つ(末吉他,1970)。. 16.
(21) 次に、グループ学習のネガティブな特徴については、末吉他や土屋(1972)など の研究から以下のように要約できよう。 ・グループ学習では、 「集団の資源」と考えられる「知識やアプローチ」の. 量が減少すると共に、その「多様性」に欠けた状態になる:資源の減少。. ・グループによる学習活動は、構成する生徒の学力や人間関係による影響が 大きい。. ・学習活動に時問がかかり、効率的でない場合がある。. ・自分勝手な主張をしだしたり、また安易に折衷し、妙な妥協案を結果的に 導くことがある。. このように、グループ学習には多くのポジティブな特徴があるだけでなく、ネ ガティブな特徴もあることが分かる。本研究では、グループ学習に関連する認知 プロセスを明らかにするという目的から、上述した様々な特徴の内の認知的側面 に焦点化する。次の2.2節では、上述したような様々な特徴と深く結びついてい ると思われる生徒同士の相互作用や対話などについて検討する。. 17.
(22) 2.2グループ学習の理論的背景 2.2.1生徒同士の相互作用とグループ学習 末吉他も指摘しているように、学習活動には教師と生徒あるいは生徒同士の相 互作用が重要な役割を果たしている。学習活動をこのような様々な相互作用の視 点から分析することは、実際の教室の中での生徒の学習を捉えるために非常に重 要だと考えられる。. 数学教育の文脈でも、相互作用、とりわけ社会的相互作用の視点は重要だと指 摘されている(中原,1997)。社会的相互作用について、中原(1997)は「他者の行為. は、ある個人が何をしょうと考えるかを設定するようになり、そうした計画に反 対したり、妨げたり、計画の改訂を要求したり、全く別の計画を要求したりもす るだろう。こうして他者の行動が、積極的な要因として行動形成の中に、したが って個人の発達の中に入ってくる。それ故に、社会的相互作用はそれ自体として 重要なのである」(p.92)と述べている。このように、他者の行為が個人の行動形. 成、すなわち個人の発達に対して何らかの積極的な役割を果たすという意味で、. 社会的相互作用は生徒の学習活動の重要な要因である。確かに、実際の数学授業 での生徒の学習活動は、教師の教授的行為や生徒相互の学習活動などによる様々 な社会的相互作用を受けて展開されていると見なすことができるであろう。. 教室の中での生徒の学習を実態に則して捉えるには、社会的相互作用の観点を 欠くことはできないと言えよう。ここでは、このような立場から、学習上の様々 な相互作用について、Grano廿(1993)と:Leikin&Zaslavsky(1997)の研究を通して概. 観する。そして、グループ学習に伴う相互作用の性質について検討する。. (1)G旧nottによる相互作用の分類 ここでは、はじめに、このような社会的相互作用を幾つかのタイプに分類整理 しているGrano廿(1993)の研究を振り返る。そして、グループ学習に伴う相互作用、. とりわけ中学校でのそれが、Granottの分類した相互作用の内のどのタイプに該 当するかについて考察する。 さて、社会的相互作用は便宜上、水平的相互作用(H:orizontal interaction)と垂直 的相互作用(Ve丘ical interaction)とに大別される場合がある(佐藤,1996c;小林,1997)。. この分類は、相互作用する相手が自分と比べて発達的に同じ水準にある(水平的 相互作用)か、それとも上の水準にある(垂直的相互作用)かどうかで分けたもので. ある。そのとき、相手の認知的熟達度が高ければ、それだけその相手から指導的 な役割を受けることになる。例えば、水平的相互作用はほぼ同年齢の仲間あるい. 18.
(23) は同程度の発達水準の仲間を、また垂直的相互作用は教師や親を、それぞれ典型 的に相互作用の相手とする分i類である。このように社会的相互作用はパートナー. 間の認知的熟達のズレの大きさによって区分される。と同時に、協同活動の強さ の程度(協同性の程度)によっても区分される。したがって、これら2変数の組合. せ方で、社会的相互作用は図2−2のような9つの相互作用のタイプに分類整理さ れ得る(Gran甜,1993)。 異なった・. 熟達のレ ベノレ. 模 倣. 指導あるい は徒弟制. 足場づくり. 早い模倣. レベルの異な る者同士の対 等な関わり. レベルの異 なる者同士の 協同作業. 熟. 達 の. 程 度 並行活動. ’レベルの向じ ’者同士の対等1. な関わり. 同じ熟達. 相互的な. 協同作業. のレベノレ. 独立した活動. 協同性・二. 協 同 性. 三同性・大. の 程 三. 図2−2協同的な相互作用(c6夏13borative interaction:Granott,1993). この図の縦軸は相互作用の垂直一水平性の次元で、上の方は相手が熟達してい る垂直的相互作用が展開される場合である。横軸は相互作用の協同性の次元で、 協同性のない独立した活動から親密性の高い協同作業に区分されている。. 例えば、パートナーの相手がはるかに熟達し、かつ協同性が高い場合には、 「足場づくり(Sca仔blding)」的な支援活動を中心とした相互作用になる。その典. 型が家族の中の母子関係における子への母の「教え」であると言われている。 「徒弟制(Apprenticeship)」は、学習者自身による活動や学びを中心としながらも、. 指導者が必要に応じて関わるかたちの相互作用である。この典型は、職人の徒 弟制やスポーツのコーチングなどであるとされている。このような垂直的相互 作用の最後は「模倣(lmitation)」である。これは、パートナー問に協同性がほと. んど存在しない場合に一方的に見たり聞く・ことから起こる学習の状況を表して. いる。これら3タイプの相互作用は、何れにしてもパートナー間の認知的熟達 度に大きな差がある場合であり、パートナーの一方からの指導的な活動が強く. 19.
(24) なるという共通点を持っている。. それに対して、パートナー間の認知的熟達度に差がない場合には、協同性が 高いと「相互的な協同作業(Mutual collaboration)」になり、協同性のない独立し た活動では「並行活動(Parallel activity)」という相互作用のタイプになる。またそ. の両者の中間が「レベルの同じ者同士の対等な関わり(Symmetric counterpoint)」. になるという。このような水平的相互作用では、垂直的相互作用に見られたよ うなパートナー間の指導的な役割は存在せず、協調的で対等な役割分担がその 中心になると考えられる。. さらに、このような垂直的相互作用と水平的相互作用の中間には、認知的熟 達度の差が比較的小さい相手との相互作用があり、それらは「レベルの異なる 者同士の協同作業(Asymmetric collaboration)」、「レベルの異なる者同士の対等な 関わり(Asymmetric countelpoint)」、そして「早い模倣(Swimmitation)」とされて. いる。ここで「早い模;倣」とは、例えば相手が親や大人と違って、年齢差のあ まりない年上であり、模倣が比較的容易に行われることを表現したものである。. さて、このように社会的相互作用を9タイプの相互作用に分類・整理したと き、グループ学習はどのようなタイプの相互作用に該当するのであろうか。. 実際の教室の授業で想定されるグループ学習は、グループが生徒同士で構成さ れることから考えると、熟達度に関してはパートナー間に差がないか、あるいは 差があっても教師ほどには大きくないだろう。また、協同性に関しては、2.1節 で要約したグループ学習の特徴が有力な手掛かりになる。すなわち、認知的側面 では「仲間がどのように情報をとらえ解釈するかを、また仲間の困難について知 ることができる」、そして情意的・社会的側面では「互いの長所と短所を認め合 い、助け合って目標の達成に取り組める」や、 「困難に直面したとき、効果的な. 援助を受けやすい」などの特徴が指摘されていることから、グループ学習は高い 協同性を前提としている、あるいは期待されていると考えられる。. このように、熟達度と協同性という2変数に関して見たときのグループ学習の 状況から判断すると、グループ学習にあてはまる相互作用のタイプは、水平的相 互作用の中の「相互的な協同作業」、 「レベルの同じ者同士の対等な関わり」、 「レベルの異なる者同士の協同作業」、「レベルの異なる者同士の対等な関わり」. の何れかになると思われる。この点に関連して佐藤(1996a)は、 「グループ活動. としては、相互作用が少ない並列行動と相互作用が活発な協同作業との中間に位 置されるものである」(P.lU)という。つまり「レベルの同じ者同士の対等な関わ. り」がグループ学習の相互作用のタイプに該当すると指摘している。. しかし、実際の中学校の教室では、個々の生徒の認知的熟達度にかなりの開き. 20.
(25) が生じてきており、通常、グループの生徒の構成に際して、教師はグループ間に 成績の顕著な偏りが生じないように配慮することが多い。つまり、中学校では、. 生徒の認知的熟達度にある程度の差があると考える方がより実態に則していると 思われる。. そこで、中学校でのグループ学習には、上述の佐藤の主張とはやや違うが「レ ベルの異なる者同士の協同作業」あるいは、「レベルの異なる者同士の対等な関. わり」という相互作用のタイプが最も相応しいのではないかと考える。これに 対して、生徒の認知的熟達度においてあまり差がないと考えられる小学校での グループ学習の相互作用のタイプは、佐藤が主張するような「レベルの同じ者 同士の対等な関わり」とみるのがより適切な判断かもしれない。このように、. 生徒間の認知的熟達度の違いをどのように判断するかによって、そこでの相互 作用のタイプはやや異なるであろう。. (2)Leikin&Zas1紐vskyによる相互作用の分類 Leikin&Zaslavsky(1997)によれば、次のような5種類の相互作用が、学習過程 には生じる可能性があるという。すなわち、S−S(Student−Student):生徒と生徒、 S−LM(Student−Learning Material):生徒と教材、 S−T(Student−Teacher):生徒と教師、. S−LM−S:生徒と教材と生徒、 S−LM−T:生徒と教材と教師の5種類である。これ らの相互作用の概念的な関係を表したものが、図2−3である。. ここでは、このような5種類の相互作用の内で、生徒が課題に取り組んでい る状況(on task)での相互作用、つまりS−LMタイプ、 S−LM−Sタイプ、 S−LM−Tタイ プの3種i類の相互作用について(以後は、S−LM、 S−LM−S、 S−LM−Tと表記する)、. Leikin他の文献を基にそれぞれの違いと性質を検討する。 まず、S−LMの相互作用は、図2−3から、 S−LM−SとS−LM−Tの相互作用も包含す る広い概念であることが分かる。これらは、教材(Leεming Material)を通して、あ. るいは媒介として相互作用する点で共通している。そして、S一:LMの相互作用と S−LM−SおよびS−LM−Tとの問にある本質的な隔たりは、コミュニケーションの有 無である。. S−LMの中でコミュニケーションを伴わないもの(Noncommunicative)は、例えば. 個々人で問題の解決に取り組むような個別学習や、あるいは板書を写したり、 ノートを整理するような学習活動である(Leikin他,1997)。一方、コミュニケーシ. ョンを伴うもの(Communicative)は、教材を媒介として、仲間の生徒あるいは教. 師との間で対話や議論などによる相互作用をしながら学習活動を展開するよう. な学習活動である。そこでは、生徒あるいは教師とのコミュニケーションが学. 21.
(26) 習活動での相互作用と関連深いことが示唆されている。これは、「課題に関連し た言葉による相互作用が学習結果に密接に結びついている」というWebb(1991) の主張と繋がる。. 生徒の授業活動 Interactive. S−LM. Noninteractive S−S. S−T. 課題に取り組 んでいる. 課題に取り組ん. でいない. Observable. Nonobselv艮bl. 活動的(active). 活動的でない (passive). Noncommunica加ve. Communica重uve. S−LM−S. S・LM−T. [=]生徒の活動のタイプ 援助(help)を伴う. 説明あり. 援助を伴わない. ○相互作用のタイプ. S=生徒、LM=教材、 T=教師. 説明なし. 図2−3生徒の授業活動と相互作用(Leikin他1997). このようにS−LM−SおよびS一:LM−Tタイプの相互作用は、教材を媒介としたコミ. ュニケーションを通して、生徒同士あるいは教師と生徒との間で生起する相互 作用であると考えられる。. ところで、グループ学習にはコミュニケーションと関連して、「小グループ設. 定は、生徒間に生じる数学に関する対話やコミュニケーションを増加させる自 然な環境を提供する」(Artzt他,1996,p.116)、またグループでの話し合い活動はコ. 22.
(27) ミュニケーションを生み出す一つの形態である(金本・小林,1997)などの指摘があ る。. このような指摘から、グループ学習における相互作用のタイプは、生徒同士 のコミュニケーションに基づくS−LM−Sタイプの相互作用であるという側面を持 っていると考えられよう。. しかし、2.Llで見たように、実際の教室では、生徒たちはより複雑なコミュ ニケーションのネットワークを形成している(末吉他,1983)との指摘があるように、. そこでのグループ学習の相互作用も、複雑なコミュニケーションのネットワー クを介した生徒同士の相互作用に成り得ることが期待される。グループ学習に おけるこのような相互作用は、理想的には、Artzt他(1992)が提示した図2−4のB の概念図(メンバー全員が相互依存の関係を結んでいる)で表現されるものになる と考えられる。. B相互依存の活. A孤立した活動. ㊨. ●. ㊧. !. 父. ◎. D複合した活動. C ワンマンの活. ● 玉. ⑫ ⑱ ⑭. 図2−4グループ活動の相互作用のパターン(A酋zt他,1992). 23.
(28) 2.2.2対話空間を介して行われる対話とグループ学習 (D2人の対話モデル これまでの議論から、グループ学習での相互作用は、中学校ではGrannotの図 式(図2−2)において中程度以上の生徒相互の協同性を前提とした「レベルの異な. る者同士の協同作業」に近いタイプであり、またコミュニケーションのネットワ ークに基づく教材を媒介とした相互作用であると考えられる。ここでは、グルー プ学習での相互作用がどのようにして生じるのかについて、グループ内で交わさ れる生徒同士の対話やコミュニケーションに注目して考察を進める。. そのために、まず基本となる2人の対話の場合を取り上げる。このとき佐藤 (1996a,1996c)の提案する「2人の対話モデル」を援用する。. 図2−5が示すこの2人の対話モデルは、. 相互作用の中で展開される情報の流れと. Person. 方向を端的に表現している。佐藤(1997). B. β. ω. 霧. は、この対話モデルを用いて2人の対話. i賜. 銘. を次のように説明している。すなわち、. F難霧. 「それぞれの個人から出された発話はま ず、個人のモノローグ(つぶやき,独り言). W『. として出されるが、これは一定の「対話 i萎 =葦.. 空間」の中で2つのダイアローグ(対話) 霊ii. となって、結果的には自己に再度戻って 言諸内ダィァ・一グ アローグ. モノ. 一グ. 話者間ダイアローグ. くる。一つは話者内の対話で、自分のモ ノローグは即座に自分がもう一度聞き自. 分との対話をおこす。もう一つのダイア. ω α. Pelson. A. ローグは、まさに対話空間の中で新しく. つくられた発話で・それぞれの話者が出 したα、βという発話内容は全く新しい. 図2.52人の対話モデル (佐藤,19963). ωとなってそれぞれの話者の中に入って いく。いわば相互作用における創造的な過程である」(p.110.)。. このように、対話(コミュニケーション)は、話者のモノローグが共有される「対. 話空間」を介して相互作用しながら、2つのダイアローグを生成する創造的な 過程を伴うと考えられる。. 24.
(29) (2)グループ学習の対話モデル このような「対話空間」は、グループ学習の場合でも存在すると考えられる。. グループの構成人数が5人ならば、その時の対話空間は5人に共有されるような より大きな空間になると想像され得る。そこでの対話空間は、「君も僕たちの話 しの輪の中に入って∼緒に議論しようよ」と言った場合の「話しの輪」のイメー. ジにかなり近い。しかし、2人以上が同時に発話するときは、対話そのものが有 効に機能しにくいと思われる。実際、グループ学習では対話している2人の他に 聞き役の生徒も観察される。この点は、グループ学習における対話が上述の2人 だけの対話の場合と相違するところであろう。. そこで、グループ学習における対話モデルの作成に際しては、そのような点に. 留意することである。たとえば5人構成のグループ学習の対話モデルを構築する. 場合では、グループ内の2人が対話をし、残り3人は彼らの対話を見たり聞いて いるという対話のパターンが最も基本的なものになるであろう。. すなわち、5人構成のグループの対話 モデルは、上述の2人の対話モデルを基. Person−B 本にして、そこに対話を見たり聞いてい. β. る残り3人を加えたものになる。それを. Person. C. 概念的に表したものが図2−6である。こ. lii騨. ω. こでは、Person−AとPerson−Bの2人の対. W. 話は、2人モデルの場合と同様に、対話 空間の中で新しいωとなって2人の話者 に戻る。このとき、対話を見たり聞いて. このように仮定されたグループ学習の. ω. Person. E. ω. いる残り3人も彼らと同一のωを同時に 獲i得すると仮定される。. Person. D. α. ω. Pe聡on−A. 対話モデルを想定することによって、2 人の話者が獲得したものと同一のωを基. 図2−6グループ学習の対話モデル. に、直接に対話に参加していない仲間も、. 対話空間を介して様々な相手との間で新たな対話を展開させ得る状況をある程 度説明できると考える。グループ学習での対話やコミュニケーションの中で放 たれた発話は、対話空間を介して仲間相互に共有されて、生徒同士の言葉によ る相互作用の源になると考えられる。その意味で、グループ学習での対話空間 はグループ内の生徒同士の相互作用を媒介する重要な機能を持っているのであ る。. 25.
(30) 2.2.3メタ認知的活動とグループ学習 (D問題解決におけるメタ認知 認知は、狭い意味で知覚と同じように考えられるものであり、例えば計算す る、測定する、作図する、グラフを書くなどの直接的な数学的活動に働く知識 や技能である。これに対して、メタ認知(metacognition)は、知識や技能がうまく. 活用されているかなど、その認知を調整する作用を意味するもので、一般的に. は「認知についての認知というものである。すなわち、メタ認知とは、問題 解決者としての自分自身に意識的に気づくことであったり、自分の心的過程を モニターしコントロールする作用である。またそれは「内なる教師(inner teacher)」. (重松,1990)という擬人的な表現で呼ばれることもある。このようなメタ認知は、 問題解決における推進力(driving forces)としての役割を果たすと考えられている (岩合他,1990)。. そして、認知とメタ認知の関係を示唆する有効な一つの観点は、Garofalo& Lester(1985)による「認知は行い(doing)の中に含まれているが、それに対してメ. タ認知は、為すべきこと(what to do)を選択したり計画すること、および為され ていること(what is doing done)をモニターすることの中に含まれている」(pl 164). という記述の中にある。. 問題解決におけるメタ認知に関連する研究には多くのものがある (例えば Schoenfbld,1985;Artzt&Armour−Thomas,1992;Cai,1994;Goos&Galbraith,1996; 岩合他,1990;重松,1990;加藤1997;清水・山田,1997;山田・清水,1998など)。このメタ. 認知は、一般的に「メタ認知的知識」と「メタ認知的技能」の2つの側面から 捉えられている。さらに、メタ認知的知識は、人、課題、方略のそれぞれに関 するメタ認知的知識に分けられ、メタ認知的技能はモニター(モニタリング)、自 己評価、コントロールに分けられている(岩合他,1990)。それらの関係を図示する と、図2−7のようになる。. 人に関するメタ認知的知識 モ. メ即下. 課題に関するメタ認知的知識 方略に関するメタ認知的知識. メタ認知 モニター(モニタリング). 自己評価. コントロール 図2−7 問題解決におけるメタ認知の類型化(岩合他,1990). 26.
Outline
関連したドキュメント
社会,国家の秩序もそれに較べれば二錠的な問題となって来る。その破綻は
HORS
ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配
なお、相続人が数人あれば、全員が必ず共同してしなければならない(民
( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。
【その他の意見】 ・安心して使用できる。
筆記試験は与えられた課題に対して、時間 内に回答 しなければなりません。時間内に答 え を出すことは働 くことと 同様です。 だから分からな い問題は後回しでもいいので
神はこのように隠れておられるので、神は隠 れていると言わない宗教はどれも正しくな