トマトの新発生害虫トマトウロコタマバエLasioptera sp.の
幼虫に対する薬剤防除効果
齊 藤 美 樹
1,*・馬 着 治 子
2, 4・斯 波 肇
3, 5・岩 崎 暁 生
1Evaluating the Effects of Agricultural Chemicals on Lasioptera sp.
(
Diptera: Cecidomyiidae
)
Larvae, a New Insect Pest of Tomato
Miki SAITO
1,*
, Haruko UMAKI
2, 4, Hajime SHIBA
3, 5and Akeo IWASAKI
1トマトの茎や果頂部,萼基部に寄生し褐色または黒色に変色させ損傷の原因となる新発生害虫トマトウ ロコタマバエLasioptera sp.の幼虫に対し,トマトに作物登録のある殺虫剤(散布剤3剤,土壌施用剤1剤) の防除効果および被害抑制効果を調査した.また,寄生部位に共生し幼虫の餌になると推察される糸状菌 の感染を殺菌剤(散布剤3剤)によって抑制することで幼虫防除が可能であるか検討した.トマト側枝の 切断面に殺虫剤スピネトラム水和剤2,500倍またはフルフェノクスロン乳剤2,000倍を散布した区では, 無処理区に比較して幼虫の寄生頭数や被害側枝率,被害程度が抑制された.殺菌剤ペンチオピラド水和剤 2,000倍散布区では寄生頭数や被害側枝率などについては顕著な抑制効果が認められなかったが,被害程 度指数3以上の重篤な被害を受けた側枝の割合を低下させた.定植時のジノテフラン粒剤植穴土壌混和処 理は,残効期間が短く十分な被害抑制効果を示さなかったが,寄生頭数を抑制した. Key words: larvae, Lasioptera sp., pesticides, tomato
タマバエ類はこれまでトマトの害虫として認識されて こなかったが,近年になり世界各地(東アジア,中央ア ジア,ヨーロッパ)でトマトの果頂部や萼基部,茎に褐 色や黒色の変色や枯死などの被害をもたらすタマバエ類 の発生報告が相次いだ(2, 3, 6, 7).日本でも,2010年 に北海道後志管内の余市町において初めて被害が発見さ れた(4, 10).被害部位の内部は褐変または黒変し,ウ ロコタマバエ属の一種トマトウロコタマバエLasioptera sp.(以下,タマバエと略)の幼虫の寄生が確認された. 本種成虫は植物体の傷口に産卵するため,幼虫は主に摘 心や側枝切除の際に切断した茎の内部で発見される. Lasiopteraに属するタマバエ類は産卵管に釣り針状の構 造をもち(1),これにより共生菌の胞子を運搬して植 物体に植え付け,幼虫の餌として虫えい内に菌を生長さ せることが知られている(9).本種の加害部位にも黒 色の糸状菌の発生が見られる.幼虫の食害および菌の蔓 延が進んで主茎にまで侵入すると株が枯死することがあ る.このため,生産現場では主茎まで菌が到達しないよ う,本来であれば基部から切除するべき側枝を5∼ 10 cm程度残して切断する耕種的防除法を実施している (4, 8).しかし,この方法では株の枯死は避けられるも のの,本種の増殖を許してしまう.発生地域は徐々に拡 大しており,2016年の調査では余市町に隣接する2市 町でも被害が確認された(齊藤,未発表).トマトに寄 北日本病虫研報 70:141–146(2019)
Ann. Rept. Plant Prot. North Japan
1)北海道立総合研究機構中央農業試験場
Central Agricultural Experiment Station, Agricultural Research Department, Hokkaido Research Organization, Naganuma, Hokkaido 069-1395 Japan 2)北海道後志農業改良普及センター北後志支所 3)北海道立総合研究機構技術普及室 4)現在:北海道胆振農業改良普及センター本所 5)現在:北海道胆振農業改良普及センター東胆振支所 *)責任著者(Corresponding Author) 受理日:2019年7月16日(Accepted: July 16, 2019)
生するタマバエ類の世界的な同時多発が起こった理由 や,日本への侵入経路,移動性などは未解明である.し かし,本種の密度増加によって他産地へのさらなる拡散 も懸念されることから,株の被害を防ぎつつ本種の密度 も低下させる防除法の確立が急がれる. このため,本研究ではトマトに作物登録のある殺虫剤 (散布剤3剤,土壌施用剤1剤)についてタマバエ幼虫 に対する防除効果および被害抑制効果を生産者圃場にお いて検討した.また,共生菌の可能性がある黒色の糸状 菌を2015年秋にタマバエ老齢幼虫の寄生部位から分離 したところ,その特徴からAlternaria属菌の一種と同定 された(齊藤,未発表).本菌の生育を阻害することに よって幼虫を防除できる可能性があると考え, Alter-naria属菌に効果を示す殺菌剤3剤についても同様に圃 場試験を実施した. 本文に先立ち,解析手法等について助言を頂いた道総 研食品加工研究センター(現:道総研北見農業試験場) の五十嵐俊成博士,執筆にあたり的確なアドバイスを頂 いた道総研中央農業試験場の西脇由恵氏に厚くお礼を申 し上げる. 材料および方法 1.側枝切除直後の殺虫剤および殺菌剤散布の効果 2016年に余市町のトマト生産者Aの大玉トマト圃場 (品種「桃太郎あきな」, 7月20日定植,1.8 a, 約450株) および生産者Bの中玉トマト圃場(品種「シンディス イート」,3月25∼26日定植,6.0 a, 約1,500株)におい て,側枝の切断面に殺虫剤または殺菌剤を散布してタマ バエ幼虫に対する直接的あるいは間接的な防除効果を検 討する試験を計4回実施した.生産者Aの圃場では8月 16日(試験I)および22日(試験II)に,Bの圃場では 8月26日(試験III)および31日(試験IV)に,それぞ れ同じ葉位から出た直径が同程度の側枝を基部から5∼ 10 cm程度の部位で剪定ばさみを用いて切除した.側枝 切除直後の側枝の傷口に各薬剤約1 mLをハンドスプ レー(株式会社ミツギロン,ファインスプレー)で散布 した.各試験において供試した側枝数は1薬剤あたり12 ∼16本である.供試した殺虫剤はクロラントラニリプ ロール水和剤(1,000倍),フルフェノクスロン乳剤 (2,000倍)およびスピネトラム水和剤(2,500倍),殺 菌剤はイプロジオン水和剤(1,000倍),ペンチオピラ ド水和剤(2,000倍)およびポリオキシン水和剤(1,000 倍)である.なお,無処理区においても切断面の湿潤程 度を一定にするため,薬液と同じ量の水道水を散布し た.試験IおよびIIでは9月8日に,試験IIIおよびIVで は9月16日に上部を切除した全ての側枝を基部から切 り取り,実体顕微鏡下で解剖して側枝1本あたりの幼虫 寄生頭数(以下,寄生頭数と記述)と幼虫の寄生を受け た側枝の割合(以下,寄生割合と記述)を算出した.ま た,共生菌による内部組織の被害を評価するため,それ ぞれの側枝に被害程度指数0∼4(0:健全,1:褐変や 黒変部位の占める割合が側枝内部組織の10%未満,2: 同10%以上30%未満,3:同30%以上50%未満,4: 同50%以上または空洞化)をあてはめた.なお,指数3 以上を植物体の生育に影響する重篤な被害と位置づけ た.指数1以上および指数3以上の被害を受けた側枝の 割合(以下,被害割合と記述)をそれぞれ算出した. 各処理区の寄生頭数,寄生割合および被害割合につい て,無処理区の寄生頭数を共変数とした共分散分析(5) を用い解析した.各項目の最小二乗平均が無処理区と比 較して有意(TukeyのHSD検定,p<0.05)に抑制され た処理区について,防除効果を最小二乗平均の無処理区 比により評価した.なお,寄生割合および被害割合につ いてはそれぞれアークサイン変換後の数値を解析に用い た.なお,実用上の観点から,無処理区比が10未満の 場合は「効果が高い」,10以上30未満では「効果が認 められる」,30以上50未満では「程度は低いが効果が 認められる」,50以上の場合は「効果が低い」と評価し た.統 計 解 析 に は,統 計 ソ フ トJMP ver. 9.0.0. (SAS Institute Inc., 2010)を用いた. 2.殺虫剤の植穴土壌混和処理の効果 2016年に生産者A圃場において,植穴土壌混和処理 した殺虫剤の本種に対する防除効果を検討した.トマト 定植時の7月19日に20株の植穴土壌にジノテフラン粒 剤2 g/株を混和し処理区とした.8月16日(処理28日 後)および22日(処理34日後)に処理区および無処理 区の側枝をそれぞれ15∼16か所ずつ基部から5∼10 cm 程度の部位で切除した.9月8日に上部を切除した全て の側枝を基部から切り取って実体顕微鏡下で解剖し,寄 生頭数,寄生割合および被害程度を調査した.各調査日 について,各調査項目の無処理区比により防除効果を評 第1図 トマトウロコタマバエ幼虫寄生頭数と被害程度指数の 関係 2016年に余市町生産者AおよびB圃場で実施した試 験I∼IVにおいて得られた全ての処理区および無処理 区の値を用いた.
価した.なお,寄生頭数についてはStudentのt検定 (p<0.05)を用いて統計解析を行った. 結 果 1.側枝切除直後の殺虫剤および殺菌剤散布の効果 側枝を切除した切断面に殺虫剤および殺菌剤を散布し たときのタマバエ幼虫寄生抑制効果を第1表に,被害抑 制効果を第2表に示した.各試験間でタマバエの発生量 が大きく異なったため,各試験における無処理区の寄生 頭数(第1表)を共変数とした共分散分析を用いて解析 した.殺虫剤スピネトラム水和剤の2,500倍散布区では, 寄生頭数,寄生割合および指数1以上被害割合につい て,いずれも無処理区と比較して有意(TukeyのHSD 検定,p<0.05)に抑制された.無処理区比はそれぞれ 15.0, 27.5および29.9であり,効果が認められた.重篤 な被害と位置づけた指数3以上被害割合も有意に抑制さ れ,無処理区比7.5と高い効果が認められた.また,殺 虫剤フルフェノクスロン乳剤2,000倍散布区でも,全て の評価項目で無処理区と比較して有意に抑制された.寄 生割合では無処理区比51.6と効果が低かったものの, 寄生頭数,指数1以上および指数3以上被害割合ではそ れぞれ40.0, 43.9および33.8と,程度は低いが効果が認 められた.殺菌剤ペンチオピラド水和剤の2,000倍散布 区では,指数3以上被害割合についてのみ無処理区と比 第1表 殺虫剤および殺菌剤散布のトマトウロコタマバエ幼虫寄生抑制効果 供試薬剤 試験a) 調査 側枝数 寄生頭数 /側枝 SE 最小二乗 平均 SEb) 無処理比 寄生割合 最小二乗 平均 SEc) 無処理比 殺虫剤 I 15 2.2 0.6 2.6 0.4 ab 65.0 0.67 0.64 0.09 ab 70.3 クロラントラニリ プロール水和剤 (1,000倍) II 13 4.2 1.1 0.69 III 15 2.5 0.9 0.60 IV 14 1.6 0.6 0.43 フルフェノ クスロン乳剤 (2,000倍) I 15 1.8 0.5 1.6 0.4 bc 40.0 0.60 0.47 0.09 b 51.6 II 12 2.5 0.9 0.58 III 15 0.6 0.3 0.27 IV 14 1.5 0.7 0.36 スピネトラム 水和剤 (2,500倍) I 15 1.3 0.4 0.6 0.4 c 15.0 0.53 0.25 0.09 b 27.5 II 14 0.4 0.4 0.07 III 15 0.6 0.3 0.27 IV 15 0.1 0.1 0.13 殺菌剤 III 15 3.5 1.0 3.4 0.6 ab 85.0 0.67 0.63 0.13 ab 69.2 イプロジオン 水和剤 (1,000倍) IV 15 2.4 1.2 0.40 ペンチオピラド 水和剤 (2,000倍) I 15 3.7 0.8 2.4 0.4 abc 60.0 0.80 0.68 0.09 ab 74.7 II 13 3.1 0.8 0.69 III 14 2.1 0.9 0.57 IV 16 0.8 0.3 0.44 ポリオキシン 水和剤 (1,000倍) I 15 3.9 0.9 2.4 0.4 abc 60.0 0.80 0.65 0.09 ab 71.4 II 15 2.3 0.7 0.53 III 15 2.3 0.7 0.53 IV 15 1.2 0.5 0.53 無処理 (水散布) I 15 4.2 1.1 4.0 0.4 a 100.0 0.73 0.91 0.09 a 100.0 II 15 5.9 1.3 0.93 III 16 3.4 0.9 0.88 IV 15 2.7 1.0 0.53 a) IおよびIIはA圃場,IIIおよびIVはB圃場で実施した.Iは8月16日,IIは8月22日に薬剤を処理し9月8日に調査した.IIIは8 月26日に,IVは8月31日に薬剤を処理し9月16日に調査した.IおよびIIではイプロジオン水和剤を供試しなかった. b)無処理区の幼虫寄生頭数を共変数とした共分散分析を用い,寄生頭数/側枝の最小二乗平均を算出した.異なるアルファベット はTukeyのHSD検定で有意差(p<0.05)ありを示す. c)無処理区の幼虫寄生頭数を共変数とした共分散分析を用い,アークサイン変換した寄生割合または被害割合の最小二乗平均を算 出した.異なるアルファベットはTukeyのHSD検定で有意差(p<0.05)ありを示す.
較して有意に抑制効果が認められた(第2表).このと きの無処理区比は42.5で,程度は低いが効果が認めら れた.これら3剤以外の殺虫剤および殺菌剤ではいずれ の項目でも有意な抑制効果が認められなかった. なお,側枝の寄生頭数と内部組織の被害程度指数の間 には有意(r=0.8582, n=26, p<0.0001)に正の相関が認 められた(第1図). 第3表 定植時に植穴土壌混和処理した殺虫剤粒剤のトマトウロコタマバエ幼虫寄生抑制効果および被害抑制効果 切断月日 供試薬剤 施用量 調査側枝数 寄生頭数/側枝 SE 寄生割合 被害割合 8月16日 ジノテフラン粒剤 2 g/株 15 1.5 0.4 (35.7) * 0.53 (72.7) 0.60 (81.8) (処理28日後) 無処理 ― 15 4.2 1.1 0.73 0.73 8月22日 ジノテフラン粒剤 2 g/株 16 4.9 1.2 (83.1) 0.75 (80.4) 0.75 (80.4) (処理34日後) 無処理 ― 15 5.9 1.3 0.93 0.93 a)括弧内の数字は無処理区比を示す. b)アスタリスクはStudentのt検定において有意差があることを示す(p<0.05). 第2表 殺虫剤および殺菌剤散布のトマトウロコタマバエ被害抑制効果 供試薬剤 試験a) 調査 側枝数 指数1 以上被害割合 最小二乗 平均 SEb) 無処理比 指数3以上 被害割合 最小二乗 平均 SEb) 無処理比 殺虫剤 I 15 0.67 0.67 0.11 ab 62.6 0.20 0.49 0.09 ab 61.3 クロラントラニリ プロール水和剤 (1,000倍) II 13 0.69 0.69 III 15 0.67 0.53 IV 14 0.43 0.43 フルフェノ クスロン乳剤 (2,000倍) I 15 0.47 0.47 0.11 b 43.9 0.27 0.27 0.09 bc 33.8 II 12 0.58 0.42 III 15 0.40 0.20 IV 14 0.36 0.21 スピネトラム 水和剤 (2,500倍) I 15 0.67 0.32 0.11 b 29.9 0.07 0.06 0.09 c 7.5 II 14 0.07 0.07 III 15 0.27 0.07 IV 15 0.20 0.07 殺菌剤 III 15 0.67 0.62 0.16 ab 57.9 0.53 0.53 0.14 abc 66.3 イプロジオン 水和剤 (1,000倍) IV 15 0.47 0.33 ペンチオピラド 水和剤 (2,000倍) I 15 0.87 0.71 0.11 ab 66.4 0.53 0.34 0.09 bc 42.5 II 13 0.69 0.31 III 14 0.57 0.43 IV 16 0.44 0.06 ポリオキシン 水和剤 (1,000倍) I 15 0.93 0.74 0.11 ab 69.2 0.60 0.41 0.09 abc 51.3 II 15 0.53 0.47 III 15 0.60 0.33 IV 15 0.53 0.20 無処理 (水散布) I 15 0.73 1.07 0.11 a 100.0 0.67 0.80 0.09 a 100.0 II 15 0.93 0.93 III 16 0.94 0.81 IV 15 0.87 0.33 a) IおよびIIはA圃場,IIIおよびIVはB圃場で実施した.Iは8月16日,IIは8月22日に薬剤を処理し9月8日に調査した.IIIは8 月26日に,IVは8月31日に薬剤を処理し9月16日に調査した.IおよびIIではイプロジオン水和剤を供試しなかった. b)無処理区の幼虫寄生頭数(第1表に示す)を共変数とした共分散分析を用い,アークサイン変換した被害側枝割合の最小二乗平 均を算出した.異なるアルファベットはTukeyのHSD検定で有意差(p<0.05)ありを示す.
2.殺虫剤の植穴土壌混和処理の効果 定植時に植穴土壌混和処理した殺虫剤ジノテフラン粒 剤2 g/株のタマバエ幼虫寄生抑制効果および被害抑制 効果を第3表に示した.処理28日後に側枝を切除した 区の寄生割合と被害割合はいずれも無処理区比50を大 きく超えており,効果が低かった.一方,寄生頭数は無 処理区と比較して有意(Studentのt検定,p<0.05)に 少なかった.このときの無処理区比は35.7であり,程 度は低いが効果が認められた.なお,処理34日後に側 枝を切除した区では,いずれの項目についても抑制効果 が認められなかった. 考 察 試験開始当初,タマバエ成虫が産卵と同時に植え付け る共生菌は,殺虫剤によって幼虫を死亡させたとしても 組織内部に侵入,蔓延して株を枯死させると推測した. しかし,本試験によって幼虫寄生頭数と内部組織の被害 程度指数には強い正の相関があることが示され,幼虫が 生存していなければ褐変や黒変などの被害は進行しない ことが示唆された.このため,本種の密度抑制および被 害抑制の両面から,幼虫に対し防除効果のある殺虫剤の 散布は有効であると考えられた.側枝の切断面に散布し た殺虫剤の中で最も効果が高かったスピネトラム水和剤 2,500倍は,実用場面でも側枝切除作業の直後に散布す ることで作物体の被害を軽減しつつ本種の密度増加も抑 制できると考えられた.また,フルフェノクスロン乳剤 2,000倍の効果は十分ではなかったものの,他害虫に対 する体系防除の中で活用することで,本種の密度や株の 被害に対しても一定の効果が期待できると考えられた. 一方,幼虫の餌になる共生菌を排除する目的で散布した 3種の殺菌剤のうち1種では重篤な被害に陥る側枝の割 合を減少させられたものの,いずれも殺虫剤ほどの顕著 な抑制効果が認められなかったことから,本種に対する 防除資材としては実用性がないと考えられた.本研究で 防除のターゲットとしたAlternaria属菌はタマバエ幼虫 の加害がかなり進んだ段階で分離されことから,本菌は 成虫の胞子運搬による真の共生菌ではなく,二次感染あ るいはそれ以上の続発感染をした菌である可能性も否定 できない.これまでにAsphondylia属やLasioptera属の タマバエではSphaeropsis属,Macrophoma属,
Clado-sporium属などが共生菌として知られている(9).今後, これらのグループに属する菌が本種の真の共生菌である 可能性も視野に入れ,感染初期の側枝から菌を再分離 し,使用する殺菌剤について精査する必要があるだろ う.殺菌剤散布により共生菌の感染を防ぐことが害虫防 除手段の一つとなり得るか検討していきたい. トマト定植時に処理した殺虫剤ジノテフラン粒剤2 g /株は,一般的に定植時粒剤に期待される残効期間内(1 か月程度)の処理28日後(8月16日)に側枝を切除し た場合でも被害を抑えることができなかった.齊藤ら (8)は,高湿度条件下では側枝の切断面が乾燥しにくく, 少なくとも6日間程度は産卵に適した状態が続くことを 示唆しているが,本試験でも側枝切除から8日間程度断 続的に降雨があったことから(アメダス余市,http:// www.jma.go.jp/jp/amedas/),産卵が長期間にわたり, 見かけの残効期間が短くなったと考えられた.しかし, 生産現場では作業者の身体的な負担を軽くするため,曇 天や降雨時などに側枝切除を実施することが多く,切除 後は本研究での試験と同様に高湿度条件になりがちであ ると想定される.このため,本試験で実施したようにタ マバエの発生量が多くなる7月定植の作型で本剤を施用 しても実用的な被害抑制効果を得るのは難しいと推察さ れた.一方で,本剤を施用した区では寄生頭数が抑制さ れる傾向が見られたことから,成虫初発期(6月上旬頃) (6)に側枝切除作業が実施されるタマバエの発生量が 少ない作型から継続的に使用することで,それ以降の密 度の急増が抑えられる可能性があると考えられた. 今後,防除効果のある薬剤をさらに探索するととも に,殺虫剤および殺菌剤の散布と粒剤施用を組み合わせ た試験を実施し,本種根絶に寄与できる防除体系を検討 したい. 引用文献
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