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集団間相互作用における健常者の差別的行動についての検討 ―肢体不自由者の差別の経験に焦点を当てて―

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Academic year: 2021

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(1)

ての検討 ―肢体不自由者の差別の経験に焦点を当

てて―

著者

藤村 励子, 野口 和人

雑誌名

東北大学大学院教育学研究科研究年報

68

2

ページ

79-87

発行年

2020-06-30

URL

http://hdl.handle.net/10097/00128382

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 本研究では肢体不自由者を対象にインタビュー調査を行い,健常者との集団間相互作用における 差別の経験について調査するとともに,先行研究で報告された健常者の差別的行動を他の肢体不自 由者も経験したことがあるか確認することを目的とした。その結果,以下のことが明らかになった。 ①肢体不自由者によって集団間相互作用における差別の経験がある者とない者がいた。②差別の経 験があると回答した者は,子ども扱いや無視といった先行研究で報告されているものだけでなく, 明確な悪意は感じられないものの健常者の偏見を感じさせられるような行動を受けていた。差別を 受けた際に肢体不自由者が不快感を明確に示したり何度か接触したりすると健常者の行動が改善さ れるが,意思表示できない・しない者の場合には健常者の行動が改善されにくいことが示唆された。 健常者の行動におけるステレオタイプの影響について議論した。 キーワード:肢体不自由者,集団間相互作用,差別の経験,ステレオタイプ

問題と目的

 平等主義的価値観が普及した現在でも,障害者と健常者の集団間相互作用においては,未だ様々 な差別の問題が生じている。集団間相互作用とは,異なる集団(社会的カテゴリー)に属する個人の 間の相互作用のことをいう。差別・偏見研究では,人種や民族,ジェンダーなどが取り扱われている。 自身が所属する集団のことを内集団,所属しない集団のことを外集団という。障害者と健常者の集 団間相互作用において問題視されている健常者の行動としては,ベビートークの使用等の子ども扱 い(Ryan, Bajorek, Beaman, & Anas, 2005),障害者を無視して介助者にのみ話すといった第三者返 答(オストハイダ,2005),過保護的な援助(Wang, Silverman, Gwinn, & Dovidio, 2015)等が報告さ れている。このような健常者の行動には必ずしも悪意があるわけではなく,無意識的な行動や善意 の行動である場合も多い。従来の露骨に嫌悪感や反感を表明する古典的差別とは異なり,現代の差 別は曖昧でわかりにくい形で表出される。障害者に対する差別を解消させるためには,集団間相互 作用における差別を捉え,その発生機序を明らかにする必要があるだろう。  従来の集団間相互作用における差別・偏見研究では,被験者が内集団成員と外集団成員に接触し

集団間相互作用における健常者の差別的行動についての検討

―肢体不自由者の差別の経験に焦点を当てて―

藤 村 励 子

* 

野 口 和 人

**  *教育学研究科 博士課程後期 **教育学研究科 教授

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た際の行動の違いが検討された(Richeson & Shelton, 2010)。例えば,Kleck らの研究(Kleck, Ono, & Hastorf, 1966;Kleck, 1968)では,障害者と健常者の相互作用を撮影し健常者の行動を分析した ところ,障害者に対しては笑顔やジェスチャーの量が減り,会話をすぐに切り上げる等の回避的行 動をとることが示された。同様に,Gouvier, Coon, Todd, & Fuller(1994)は,障害者との相互作用 における健常者の音声言語の変化に着目し,障害者と話すときには単語数や疑問文等が増加したこ とを報告している。Liesener & Mills(1999)は,健常者が大学生,障害者,子どもと話すときの様 子を撮影した。その結果,障害者に対しては声のトーンが高くなり,単語数が増加した。このよう な特徴は,子どもと話すときにも同様に見られた(Liesener & Mills, 1999)。上記のような研究では, 態度と行動が一貫することが想定されており,障害者に対するネガティブな態度がネガティブな行 動を予測すると考えられていた。しかしながら,差別者の行動には様々な要因が影響しており,そ のような単純な構造ではないことがわかってきた。そのため,2000年代頃からは,差別者の行動を 被差別者との相互作用の結果として捉えるようになり,双方に焦点を当てた研究が行われるように なった(Richeson & Shelton, 2010)。特に,従来ほとんど検討されなかった被差別者の差別の経験 にも焦点が当てられるようになり,様々な集団に属する個人の経験や相互作用への不安について, 数多くの報告がなされるようになった(例えば,Conley, Devine, Rabow, & Evett, 2002)。

 筆者らは不快なかかわりをする他者がいる状況で発話をしない肢体不自由者(以下,A)に対する かかわり手の行動を観察し,発話がない場面での行動を分類した(藤村・郷右近・野口,2017)。そ の結果,かかわり手の行動は,ベビートークの使用や無視,過剰援助といったものだけでなく,健常 者同士ではほとんど見られないような行動が認められた。例えば,対人距離が近い,過剰な身体接触, 仰向けに寝転んでいる A を10名程度の大人が取り囲んで見下ろす等の様子が観察された。さらに, 女性である A の身体を男性が突然触り始め,強制的に動かすこともあった。上記の場面で A と家 族以外は違和感を覚えている様子はなく,日常的にみられる光景であることが推察された。A は明 確な拒否の意思表示をすることはなかったが,その表情は強張り,場合によっては相手を睨むよう な視線を送っていた。しかしながら,かかわり手は自身の行動を止めることはなかった。  藤村ら(2017)の報告は,音声言語による報告が難しい肢体不自由者の差別の経験を,対象者の行 動を観察することにより明らかにした点において意義があると考えられる。しかしながら,一事例 研究であったため,他の肢体不自由者も同様の経験をしているかはわからないという課題があった。 そこで,本研究では言語報告が可能な肢体不自由者を対象に,健常者との集団間相互作用における 差別の経験について調査するとともに,先行研究で報告された健常者の差別的行動を他の肢体不自 由者も経験したことがあるか確認することを目的とした。日常場面での集団間相互作用における差 別的行動を当事者の視点から捉えることで,差別の発生機序の解明の一助となるだろう。

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方法

1.対象者  音声言語によるコミュニケーションが可能な先天性の障害をもつ肢体不自由者7名を対象とした。 性別の内訳は,男性3名,女性4名だった。年齢は,20代3名,30代2名,40代2名だった。障害名は, 脳性麻痺が3名(両上下肢機能障害1名,四肢体幹機能障害1名,下肢麻痺1名),先天性関節硬直症 が1名,骨形成不全症が1名,先天性二分脊椎症が1名,筋ジストロフィーが1名だった。対象者全 員が車椅子を使用している。 2.手続き  X 県内の肢体不自由者団体を通じて,対象者に調査協力の依頼をした。調査への同意を得た上で, 約1時間の半構造化面接を行った。ただし,移動の制限等により直接会って面接をすることが難し い場合には,メールでの調査を行った。主な質問内容は,①日常場面における自身の差別の経験に ついて,② A に対する健常者の差別的行動を自身も受けたことがあるか,の2点である。誰にどの ような状況で,どのようなかかわり方をされたのか,その際にどのように感じ,どのように対処し たのか等,対象者の語りに応じて詳細に尋ねた。②については,藤村ら(2017)の内容を口頭や書面 によって説明し,同様の経験があるかどうかを尋ねた。面接中は IC レコーダーによる録音と調査 者による筆記記録を行い,それらから逐語録を作成した。文字データからエピソードをまとまりご とに抽出し,その内容を先行研究に基づいて分類した。なお,本研究は東北大学大学院教育学研究 科研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した(承認 ID:17-1-002)。

結果

 健常者との集団間相互作用において,差別の経験があると回答した者は5名,全くない・ほとんど ないと回答した者は2名だった。差別の経験があると回答した者の中で,A に対するかかわりを自 身も経験したことがあるかと尋ねたところ,全ての対象者が子ども扱いや無視・代行などの行為は 受けたことがあると回答した。しかしながら,初対面にもかかわらず過剰な身体接触をする,寝転 んでいるときに複数名で取り囲んで見下ろされる,相手の意向をうかがわずに身体に触ったり勝手 に動かしたりする等の行動については,全ての対象者が経験していなかった。ただし,対象者の友 人が同様の行動を受けているのを見たことがあるとの言及があった。以下では,差別の経験につい ての具体的なエピソードを述べる。代表的なエピソードを Table 1にまとめた。 1.子ども扱い  初めて銀行に行った際に,窓口の人から赤ちゃん言葉で説明を受けた。その後も,何か質問があ ると私ではなく介助者に尋ねられた。何度か行って会話をすると,そういった対応は止めてくれる ので気にしないようにしているが,「なぜだろう」と不思議に思う。そういう対応に対しては,しっ かりと説明していく必要があると考えている。

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 家族とファミリーレストランに行った際,みんなにはお茶が出されるのに,私にだけ水が出され た。また,子ども用のスプーンとフォークを出された。そういうときには店員の顔をじっと見つめ たり,「いりません」と言ったりするようにしている。そうすると,店員が謝罪してくれたり子ども 扱いのような対応を止めてくれたりする。 2.無視される  学校で,私がいても介助してくれている先生と別の先生が話し始めて,無視されることがよくあっ た。話が終わるまでずっと待っていたり,先に行っていたりしなければならない。腹が立つときも あるが,気にしないようにしている。我慢できないときには母親に言うようにしている。  友人とレストランに行ったときに,店員が「いらっしゃいませ」って友人には言うのに,私には話 しかけてくれないことがある。私も「(車椅子に座っているので)見えなかったかな」と想像する。 でも,テーブルの椅子を外すかどうかも友人に尋ねられる。そこで,「椅子を使うのは私なんだか ら私に聞けよ」と思う。慣れている友人やヘルパーさんだと「本人に聞いてください」と言ってくれ る。そこで初めてお店の人も気付く。お店の人からすると,別に差別しているつもりはないのかも しれない。ただ「この人は話しかけても返ってこなさそうだな」とか,「話しかけてもいいのかな」 と思ったりしているのかもしれない。私も「それが差別となるとお店の人もなかなかつらいよな」 と思って,ジレンマというか,難しいと感じている。 Table 1.差別の経験と具体的なエピソード 差別の経験 具体的なエピソード 1.子ども扱い 家族とファミリーレストランに行った際,みんなにはお茶が出されたのに私にだけ水が出さ れ,子ども用のスプーンとフォークを渡された。その際には,店員の顔をじっと見つめたり,「い りません」と言ったりする。そうすると,店員が謝罪してくれたり子ども扱いのような対応を 止めてくれたりする。 2.無視 友人とレストランに行ったときに,店員が「いらっしゃいませ」って友人には言うのに,私 には話しかけてくれないことがある。私も「(車椅子に座っていて)見えなかったかな」と想 像する。でも椅子を外すかどうかも友人に尋ねられる。慣れている友人やヘルパーさんだ と「本人に聞いてください」と言ってくれる。そこで初めてお店の人も気づく。お店の人は 別に差別しているつもりはないのかもしれない。ただ「この人は話しかけても返ってこな さそうだな」とか,「話しかけてもいいのかな」と思ったりしているのかもしれない。 3. 本人の意に添わな い身体接触や強制 突然身体を触られたり,人形みたいに扱われたりするような経験は私にはないが,人によってはあると思う。私の友人は施設職員にはあまり喋らないので,排泄やごはんを無理やり させられたり,「早くして」と怒られたりしているのを見ることがある。本人は笑って誤魔 化していると話していた。 4.馴れ馴れしい 警備員ですごく馴れ馴れしい人がいる。百歩譲って馴れ馴れしいのは許すけど,(対象者に はため口で話すにもかかわらず)無線で話すときは敬語を使っていて不快に思う。スキン シップとはき違えているように思う。馴れ馴れしくすることで,親しみを持ってもらえる と思っているのかもしれない。 5. 明確な悪意は感じ ないが,健常者の 偏見を感じる行動 街のイベントに参加するため,夜に介助者と共に外出した。すると,面識のない年配の女性 が話しかけてきた。女性は車椅子を押している介助者の方にだけ向かって,「この車椅子の 人のために,こんなところへ,こんな時間まで?大変ですわね。」と大きな声で言った。周り にはたくさんの人がいた。女性の言動に不快感を覚えたが,悪意などが感じられなかった ので,「まあいいや」と自分に言い聞かせて,気にしていないように振る舞った。しかし,こ ういう健常者の声掛けが続くと人を手配して外出するのも億劫になる。

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3.本人の意に添わない身体接触や強制  突然身体を触られたり,人形みたいに扱われたりするような経験は私にはない。でも,人によっ てはあると思う。例えば,私の友人は施設職員に対してはあまり喋らない(拒否などの意思表示を しない)ので,トイレやごはんとかは無理やりさせられたり「早くして」と怒られたりしているのを 頻繁に見ることがある。本人は笑って誤魔化していると話していた。 4.馴れ馴れしくされる  警備員ですごく馴れ馴れしい人がいる。百歩譲って馴れ馴れしいのは許すけど,(対象者にはた め口で話すにもかかわらず)無線で話すときは敬語を使っていて不快に思う。スキンシップとはき 違えているように思う。馴れ馴れしくすることで,親しみを持ってもらえると思っているのかもし れない。馴れ馴れしくするんだけど,言葉尻はですます調にするとかだったらいいが,言葉尻も友 達みたいにしていたらおかしいと思う。  福祉施設で生活していたとき,職員が部屋の中に勝手に入ってきて,突然後ろからくすぐられた り驚かされたりした。私が驚いた反応をすると,満足したのか何も言わずに出て行った。嫌がらせ なのかどうかはわからないが,少なくともプライバシーの侵害だと思う。 5.明確な悪意は感じないが健常者の偏見を感じる行動  街のイベントに参加するため,夜に介助者と共に外出した。すると,面識のない年配の女性が話 しかけてきた。女性は車椅子を押している介助者の方にだけ向かって,「この車椅子の人のために, こんなところへ,こんな時間まで?大変ですわね。」と大きな声で笑いながら言った。周りにはたく さんの人がいた。女性の言動に不快感を覚えたが,悪意などが感じられなかったので,「まあいいや」 と自分に言い聞かせて,気にしていないように振る舞った。  普段生活していると,ちょっとしたことなんだけど気になることがある。例えば,駅のホームを 車椅子で進んでいると,少し離れた場所から駅員が「迷惑をおかけします」と大きな声で言った。「ご 協力お願いします」ならまだいいけど,迷惑ってなんだと思う。駅員としては配慮なんだろうけど。 他にも,駐車場の看板に「障害があって困っている人たちをあなたの思いやりで助けてあげてくだ さい」と書いてあった。こういうのって一般の方より福祉の専門家の方が伝わらなかったりする。 公演のときにどう思うか尋ねても,意外に気付かない人が多い。物理的な問題より,こういった問 題にどれだけ敏感になれるかが大事だと思う。

考察

 本研究では言語報告が可能な肢体不自由者を対象としたインタビュー調査を行い,健常者との集 団間相互作用における差別の経験について調査するとともに,先行研究で認められた健常者の差別

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的行動を他の肢体不自由者も経験したことがあるか確認することを目的とした。その結果,①肢体 不自由者によって集団間相互作用における差別の経験がある者とない者がいたこと,②差別経験者 が子ども扱いや無視といった先行研究で報告されているものだけでなく,初対面から馴れ馴れしく 振舞われる等の,明確な悪意は感じないものの健常者の偏見を感じさせられるような行為を受けて いたこと,しかしながら,③藤村ら(2017)で報告された,過剰な身体接触,寝転んでいる者を複数 名で取り囲んで見下ろす,相手の意向をうかがわずに身体に触ったり勝手に動かしたりする等の行 為は,全ての対象者が経験していないことが明らかになった。ただし,対象者の友人が似たような かかわり方をされているのを見たことがあるとの言及があった。  従来,障害者に対する差別的行動として,子ども扱い,無視,過保護的な援助などが報告されてき た。本研究の対象者の多くが同様の経験をしていたが,全く経験がないと回答した者もいた。全て の対象者が車椅子を使用しており,見た目で身体障害があるとわかるものの,経験がないと回答し た者には奇形や拘縮といった外見上の特徴はなかった。それに対して,経験があると回答した者は 外見上の特徴がある者や,発話が不明瞭といった特徴のある者がいた。上記の差別的行動には,障 害者は「能力が低い」,「依存的である」といったステレオタイプが影響していると考えられている。 Blair, Judd, & Fallman(2004)によると,プロトタイプに近い(ステレオタイプ的な特徴が強い)方 がステレオタイプを当てはめた判断や評価がされやすい。上述のような対象者の特徴の違いが健常 者の行動にも影響したと考えられる。  差別の経験があると回答した者の中でも,健常者への対処やその後の健常者の行動の変化におい て,違いが生じていた。対処については,相手の目をじっと見つめて不快感を示したり,何度も接 触を重ねて説明したりする者がいる一方で,「悪意はなさそうだから」と気にしていないように振 舞ったり,全く意思表示をしなかったりする者がいた。明確に意思表示する対象者からは,「日常 生活で差別はあるが,何度か通ったり説明したりすることで行動を改めてくれるので,気にしない ようにしている」との言及もあった。しかしながら,明確な意思表示をしない者は頻繁に差別を受 けており「外出するのが億劫になることがある」との言及があった。  人の認知的な情報処理においては,人はまず,他者が所属する集団カテゴリーに関する情報に基 づいてトップダウン的に他者を判断する。この情報の代表的なものがステレオタイプである。相手 がカテゴリー情報に一致しない等,カテゴリーに基づく処理ではうまくいかない場合には,その人 個人についての個別情報に基づいてボトムアップ的に処理する。これに当てはめて考えると,肢体 不自由者がステレオタイプに基づく差別的行動を受けた場合に,明確な拒否反応を示したり何度も 接触してステレオタイプに一致しない情報を提示したりすることで,カテゴリーに基づく処理から 個別情報に基づく処理に移行し,健常者の行動が改善されると考えられる。しかしながら,拒否や 不快感を示す等の意思表示をしなかったり,障害により意思表示できなかったりする場合には,処 理の移行がなされず行動の変化が生じないと考えられる。A や対象者の友人のように,本来であれ ば避けられるべき行動に対しても,肢体不自由者が反応しない・できない場合には,かかわり手は 自身の行動が不適切であるとは認識できず,むしろ強化させるのかもしれない(藤村・野口,2017)。

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 Braithwaite & Eckstein (2003)によると,肢体不自由者は日常的に援助を受けているが,その中 には必要でないものも多く,必要な支援とそうでないものとを管理し,バランスを取ることが自立 において重要であるという。本研究の対象者の言及を踏まえると,相互作用において不快な行動を 受けた場合には,言語等により意思表示をした方が良いと考えられる。その際には,相手との関係 性等を考えた上で様々な方法の中から適切な対処方略を選択する必要がある(Braithwaite & Eckstein, 2003)。しかしながら,肢体不自由者の中には A や対象者の友人のように意思表示できな い者や意思表示しない者もいる。このような肢体不自由者への支援についても,今後検討する必要 があるだろう。ただし,A の場合には発話等による明確な拒否反応はないものの,場合によっては 本研究の対象者と同様に,相手を睨んだり恐怖で強張った表情をしていたりする様子が観察されて いる。また,接触回数の多さは A の発話の有無に影響しないことも確認されている。こうした対 処や接触回数だけでは健常者の行動を変容させることが難しいと考えられる。A に対する健常者 の差別的行動を説明するためには上述の情報処理モデルだけでは不十分である。今後さらなる検討 を進める必要があるだろう。 【文献】

Blair, I. V., Judd, C. M., & Fallman, J. L. (2004) The automaticity of race and Afrocentric facial features in social judgements. Journal of Personality and Social Psychology, 87, 763-778.

Braithwaite, D. O. & Eckstein, N. (2003) How people with disabilities communicatively manage assistance: Helping as instrumental social support. Journal of Applied Communication Research, 31, 1-26.

Conley, T. D., Devine, P. G., Rabow, J., & Evett, S. R. (2002) Gay men and lesbians’ experiences in and expectations for interactions with heterosexuals. Journal of Homosexuality, 44, 83-109.

Gouvier, W. D., Coon, R. C., Todd, M. E., & Fuller, K. H. (1994) Verbal interactions with individuals presenting with and without physical disability. Rehabilitation psychology, 39, 263-268.

藤村励子・郷右近歩・野口和人(2017)肢体不自由者に対する Microaggression に関する事例的検討―発話の有無の選 択的調整に焦点を当てて―.Journal of Inclusive Education, 2, 47-55.

藤村励子・野口和人(2017)かかわり手の不快な行動に対する肢体不自由者の意思表示の抑制に関わる背景要因.日本 発達障害学会第52回大会発表論文集.

Kleck, R. E. (1969) Physical stigma and task oriented interactions. Human Relation, 22, 53-60.

Kleck, R. E., Ono, H., & Hastorf, A. (1966) The effects of physical deviance upon face-to-face interaction. Human Relation, 19, 425-436.

オストハイダ・テーヤ(2005)“ 聞いたのはこちらなのに…”―外国人と身体障害者に対する「第三者返答」をめぐって ―.社会言語科学,7, 39-49.

Liesener, J. J. & Mills, J. (1999) An experimental study of disability spread: Talking to an adult in a wheelchair like a child. Journal of applied social psychology, 29, 2083-2092.

Richeson, J. A. & Shelton, J. N. (2010) Intergroup dyadic interactions. In J. F. Dovidio, M. Hewstone, P. Glick, & V. M. Esses (Eds), The SAGE handbook of prejudice, stereotyping and discrimination. pp. 276-293. SAGE

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Publications.

Ryan, E. B., Bajorek, S., Beaman, A., & Anas, A. P. (2005) “I just want you know that ‘them’ is me”: intergroup perspectives on communication and disability. In J. Harwood & H. Giles (Eds), Intergroup communication: Multiple perspectives. New York: Peter Lang Publishing Group. pp. 117-137.

Wang, K., Silverman, A., Gwinn, J. D., & Dovidio, J. F. (2015) Independent or ungrateful? Consequences of confronting patronizing help for people with disabilities. Group processes intergroup relation, 18, 489-503.

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The purpose of this study was to describe the experiences of discrimination for people with physical disability in intergroup interactions. Qualitative data from semi-structured interviews obtained from seven people with physical disability(three male and four female). Respondents described experiences and reactions to previous interactions with non-disabled people. Most participants experienced discrimination, for example, patronizing behavior(using baby talks), ignored, over-friendly, and so on. Some of the participants hesitated to refuse because non-disabled person’s unsolited and inappropriate behavior would not be malicious intent. The participants who would not hesitate to refuse the inappropriate behavior, that would be gradually improved. On the other hand, the other participants who could not refuse or did not refuse, the inappropriate behavior would not be improved. Results suggested that people with physical disability need to manage with strangers and newer acquaintances. In addition, supports for a people with physical disability who are difficult to refuse will be needed. Further study that explain and reduce the negative behavior of non-disabled people should be conducted.

Keywords: people with physical disability, intergroup interactions, experience of discrimination, stereotype

Experiences of Discrimination for People with Physical

Disability in Intergroup Interactions

Reiko FUJIMURA

(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)

Kazuhito NOGUCHI

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