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セラミックスの焼結に関する計算機シミュレーション研究

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Academic year: 2021

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全文

(1)

セラミックスの焼結に関する計算機シミュレーショ

ン研究

著者

松本 修次

63

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

学術(環)第269号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00127700

(2)

まつもと しゅうじ

松 本 修 次

博士(学術)

学 位 記 番 号

学 位 授 与 年 月 日

平成

31 年 3 月 27 日

学位授与の根拠法規 学位規則第

4 条第 1 項

研究科,専攻の名称 東北大学大学院環境科学研究科(博士課程)

先進社会環境学専攻

学 位 論 文 題 目

セラミックスの焼結に関する計算機シミュレーション研究

員 東北大学教授 松原 秀彰

論 文 審 査 委 員

主査 東北大学教授 松原 秀彰 東北大学教授 土屋 範芳

東北大学教授 加納 純也

(多元物質科学研究所)

論 文 内 容 要 旨

【第一章 序論】セラミックスは酸化物や窒化物などを加熱処理し焼き固めた焼結体である。セラミッ クスの特徴として強度が高い、熱伝導率が高い、脆いなどの特徴があり、陶器などの材料として用いら れてきた。近年はそのような物理的な特徴だけではなく電気的な特性を生かした製品が製造されている。 例えばチタン酸バリウムは非常に誘電率が高くキャパシタとして利用されている。また圧電セラミック スは電圧を印加すると変位を発生するという特徴を生かしてブザーなどに利用されている。磁性体セラ ミックスはインダクタのコアとして利用されている。半導体セラミックスは抵抗値が温度に依存するこ とをいかし、温度センサなどで利用されている。このようなセラミックスで作製された電子部品は現代 社会の中で欠かせないものであり、例えばパソコンやテレビ、スマートフォンなどに多くの部品が使用 されている。セラミックスは粉末を焼き固めて作製しており、その構造は微細な多結晶体からなってい る。その大きさや残存する空孔(ポア)の量、大きさが電気的な特性に影響を与えることが知られてい る。最近、新しい材料設計手法としてコンピュータシミュレーションが注目されつつあり、焼結材料へ の適用も進められている。取り扱う大きさ材料に応じて様々な手法が提案されており、液相焼結への適 用もされつつある。そこで本研究ではこのようなセラミックス材料や電極材料の焼結に対し液相の特性 がどのように影響するかをシミュレーションを用いて解析し、液相種や量などの最適化ツールとして使 用可能か検討することとした。 第一章ではセラミックス材料、電極材料および液相であるガラス材料について述べたあと、現在の問 題点を示した。第二章ではモンテカルロ法を用いた液相存在下の焼結の計算機シミュレーションについ て、固相表面への濡れ、緻密化速度や焼結組織に与えるSLの影響について考察した。第三章では電子 セラミックス材料の焼結実験を比較対象としてモンテカルロ法を用いた液相存在下の焼結解析を行い、

学術(環)博第269号

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その妥当性の検証をおよび焼結構造の形成メカニズムを推定した。第四章は焼結挙動の異なる異種材料 の組み合わせや、硬質な基板の上に形成された成形体の挙動をモンテカルロ法と有限要素法を連成した シミュレーションで解析した。第五章ではモンテカルロ法や有限要素法に展開することを目的として分 子動力学によるアルミナ粒界に存在するガラス相の解析を行った。第六章では本研究で得られた結果に ついて総括した。 【第二章 モンテカルロ法による液相存在下の焼結の計算機シミュレーション】液相焼結の基本的な機 構は、①液相の固相表面の濡れ、②液相の毛細管力による固相粒子の再配列、③固相粒子の液相への溶 解・再析出による粒成長(Ostwald 成長)からなると理解される。液相焼結の MC シミュレーションと しては、液相焼結の最も基本となる機構(とくに①と②)について十分な検討が行なわれていない。本 研究では、液相焼結のMC シミュレーション技術を新たに開発し、上記の液相焼結の基本的な機構につ いて、①~③について詳しく解析することとした。液相焼結に関係した重要なパラメータ(因子)とし て、固相/液相界面エネルギー、固相粒子の再配列、Ostwald 成長、固相粒子の大きさなどの影響を解 析した。そして本研究で開発したMC シミュレーションが液相焼結プロセスの設計ツールとして有効か どうかを検討・考察した結果を以下に示す。 固相平面および固相粒子表面への液相の濡れはSLの大きさに依存し、SLが小さいほど濡れ広がりや すいことが示された。接触角や固相粒子表面への濡れに及ぼすSLの影響を詳しく調べると、本シミュ レーションでは接触角や濡れの連続的な変化は必ずしも取り扱えないことがわかった。再配列を導入し たシミュレーションを行うと、SLが小さい方が再配列が起こりやすく、相対密度は上昇するが、気孔 が残留することが示された。Ostwald 成長をさらに導入したシミュレーションを行うと、相対密度が全 体的に上昇し、SL が小さい方が相対密度が上昇し、SLの影響がはっきりと表れることがわかった。 Ostwald 成長を導入したシミュレーションでは、固相粒子 の粒成長や接触率に及ぼすSLの影響をはっきりとかつ連 続的に表すことができた。 【第三章 液相焼結材料のシミュレーションと実験との比 較の研究】第二章ではモンテカルロ法が液相焼結の基礎的な 理解に有用であることを示した。本章では、本研究で開発し た液相焼結の MC シミュレーション技術を用いて実際の液 相焼結材料の組織の設計に適用できるかどうかを検討する

Fig.1 Relative density – MCS curves for the simulations by introducing Ostwald ripening in addition to liquid wetting and rearrangement.

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ことにした。具体的には、アルミナ(Al2O3)-ガラス系材料やWC-Co 系材料を選択した。シミュレー ションでは、固液界面エネルギー、液相量、固相粒子径を変化させたシミュレーションを行い、実験結 果(組織)と比較検討した。 液相焼結やOstwald 成長(緻密体)に及ぼすSL、液相量、固相粒子径の影響などを調べた結果、焼 結しやすい条件や粒成長が抑えられる条件などを明瞭に示すことができた。また、粒成長が不均質な組 織が現れる条件なども得られることがわかった。Al2O3-ガラス系材料やWC-Co 系材料の実験結果の比 較は、現在の段階では、緻密化したWC-Co 系材料の二面角と接触率についてシミュレーションで再現 できる内容を明らかにしたが、一部、再現できていない場合もあり、今後さらにシミュレーション条件 を検討する。また、液相焼結による相対密度の変化(収縮挙動)については、実験結果の考察から擬液 相焼結を提案した。それに対し現状のプログラムで対応可能か、新たな機構が必要かを検討を継続して いく。 【第四章 複層体の共焼結および基板拘束の焼結に関するMC-FEM 連成シミュレーション】共焼結や 拘束焼結においては焼結挙動が大きく異なる異種材料の焼結が形状や構造欠陥にどのような影響を与 えるかを理解しておくことは重要である。粘組成有限要素法(FEM)は、金属の塑性加工のシミュレー ションとして発展してきたが、体積収縮を取り扱うことができ、焼結のシミュレーションが可能となっ ている。焼結速度が異なる共焼結や拘束焼結についてシミュレーションを行い、この連成シミュレーシ ョンの妥当性と適用範囲を検討した。結果を以下に示す。 焼結収縮量の差が小さい2 種の材料の共焼結体の焼結挙動はモンテカルロ有限要素法の連成により相 互の影響を考慮したシミュレーションが可能であることがわかった。焼結収縮量に大きな差がある場合 はお互いの収縮量が近づくように塑性ひずみが発生することがわかった。この塑性ひずみの大きさから 層間剥離の発生確率を推定できる可能性があることを見いだせた。拘束焼結のような大きな塑性ひずみ が発生する条件では有限要素法による全ひずみ速度とモンテカルロ法によるひずみ速度が一致するよ うにプログラムを改良した。焼結時の収縮挙動は大矢根・島の降伏条件式のパラメータとして室温での 実験から得られた値ではなく、高温での挙動を再現する値を設定する必要があることがわかった。モン テカルロ法と有限要素法を連成することにより、塑性ひずみの影響を微細組織に反映させることで、相 互作用が働いた状態での焼結の駆動力をモンテカルロ法で算出する可能性があることが見いだせた。 【第五章 分子動力学法によるアルミナ-ガラス系における界面エネルギーと拡散の解析】セラミック スの焼結プロセスを液相存在下(液相焼結)で行う場合、固相/液相あるいは固相/粒界相/固相といった異

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なる界面を考えなくてはならない。そのような界面形成は、高温下での原子・分子の複雑な移動(拡散) 現象に基づいて生じるものである。本研究ではanorthite 組成(CaAl2Si2O8)の粒界ガラス相を厚さ約 0.3

から3.0nm の範囲で変化させた 6 種のアルミナ粒界について解析した。原子構造、過剰エネルギー、 ガラス相内の拡散挙動(平均二乗変位)、過剰体積などを主にガラス相厚みとの関係について考察した。 得られた結果をまとめると以下のようになる。 6 種の粒界に挟まれたガラスの量を変化させ、原子構造 や粒界過剰エネルギーについて解析した。basal 、 near 11、random 粒界の場合は、nm オーダー の厚さで粒界過剰エネルギーが極小値をとるが、 3、 7、 13 については極小値を持たないことがわ かった。ガラス厚みが十分に厚い場合、粒界過剰エネルギーはアルミナ結晶のある結晶面と anorthite 組成ガラスの固液界面エネルギーに相当し、結晶面によってガラスとの界面エネルギーに差が存在する ことがわかった。ガラス相中原子の最小二乗変位を解析し、拡散係数を算出したところ、ガラス厚み依 存性があり、near 11 の場合はほぼ直線的に拡散係数が上昇するが、 random 粒界の場合、粒界過剰 エネルギーが極小値をとる付近で拡散係数も極小値をとることが分かった。いずれにしても、ガラス層 厚みが小さい場合の拡散挙動は、厚い場合に比べて小さい傾向にあることが示された。過剰体積率はガ ラス相厚みの増加に従い極大値をとるが、その時のガラス相厚みは粒界によらず 0.2~0.3nm 付近であ る。界面状態に対してMC 計算との連携が重要であることを示した。 【第六章 総括】第一章では電子部品に使用するセラミックス材料についてまとめた。さらに焼成に関 するシミュレーションについて従来の知見をまとめ、現在の問題点を示した。 第二章では液相の固相表面への濡れ、液相の毛細管力による固相粒子の再配列を新たに導入したMC 法を実施し、固液界面エネルギー(SL)が緻密化速度や粒成長速度に大きく影響を与え、また Ostwald 成長に対してもSLが影響していることを見出した。 第三章では『液相焼結材料のシミュレーション と実験との比較研究』について述べた。 第四章ではモンテカルロ法と粘塑性有限要素法を連成させた 焼結シミュレーションについて改良を行い、2 層構造の成形体および基板に拘束された成形体への適用 範囲を示した。 第五章ではα-Al2O3とanorthite 組成のガラスによって形成されるガラス相を含む異 なる粒界の構造を、二体ポテンシャル関数に基づく分子動力学法によって計算し、界面状態に対して MC 計算との連携が重要であることを示した。 第六章では結果を総括し、これら焼結に関するシミュ レーションを関連づけて活用することで、材料・プロセスの最適化に要する時間を短縮化、省力化する ことにより、電子部品の開発、量産化のスピードを飛躍的に向上できる可能性を見いだした。

(6)

論文審査結果の要旨及びその担当者

論文提出者氏名 松本 修次 論 文 題 目 セラミックスの焼結に関する計算機シミュレーション研究 論文審査担当者 主査 松原 秀彰 土屋 範芳 加納 純也

論文審査結果の要旨

セラミックスは、古くから陶磁器として、また現代ではコンデンサー、電子回路基板、工具、耐熱・耐食部品な どの工業材料として広く実用化されており、それらの多くは粉末を焼き固めるという方法、すなわち焼結法によっ て製造される。そして原料粉末、成形、焼結の温度、時間、焼結の機構などに関する極めて多くの因子を制御する ことによって、セラミックス製品の開発や性能向上が行われている。焼結に関する従来の研究では、固相焼結と液 相焼結などの焼結機構をベースとした理論的または実験的な研究が行われてきているが、現実のセラミックス製品 の焼結では数多くの因子が複雑に関係するため、従来の研究手法では工業的な焼結プロセスを精密に理解すること は困難である。 最近、材料科学の分野においても計算機シミュレーションが注目されつつあり、焼結のプロセスや材料への適用 が実用的な観点からも期待されている。例えば、液相焼結などの複合組織の焼結過程、積層体や基板上の粉末の焼 結などの複雑な焼結プロセス、ナノオーダーの界面構造などを計算機シミュレーションによって設計することがで きれば、セラミックスの新製品の開発に有効な手段となることが期待される。そこで本研究では、モンテカルロ(MC) 法、有限要素法(FEM)、分子動力学(MD)法といった物質・材料の分野で広く用いられる計算手法を、セラミック スの焼結を設計する計算機シミュレーション技術として適用させるための研究を行った。本論文は第一~六章から なり、各章で得られた成果は以下のようになる。 第一章では、電子部品を中心としたセラミックス材料の焼結等の従来知見をまとめた。また、MC 法、FEM、MD 法 を用いた焼結に関係するシミュレーションの従来研究についてまとめ、研究課題を明らかにし、本研究の目的を明 確にした。 第二章では、MC 法を用いて、液相の固相表面への濡れ、液相の毛細管力による固相粒子の再配列、Ostwald 成長 を導入した液相焼結シミュレーション技術を開発し、それを用いて緻密化におよぼす要因、とくに固液界面エネル ギーや Ostwald 成長の影響が重要であることを明らかにした。 第三章では、液相焼結の MC シミュレーションを、WC-Co および Al2O3-ガラス系の実験結果と比較する研究を行い、 シミュレーションが適用できる結果とできない結果を明らかにし、かつ新たな液相焼結のプロセスを考察した。 第四章では、MC 法と粘塑性 FEM を連成させた焼結シミュレーションをセラミックスの共焼結(二層構造の成形体 の焼結)および基板拘束下の焼結へ応用し、それぞれの焼結プロセスにおける適用性と課題を明らかにした。 第五章では、MD 法を用いて Al2O3と anorthite 組成のガラスによって形成される界面の構造、界面エネルギー、拡 散係数などを明らかにし、結晶(粒界)方位とガラス層厚みの影響や MC 計算との連携等を考察した。 第六章では、結果を総括し、焼結に関する複数のシミュレーションを関連づけて活用することで、セラミックス の材料構造とプロセスの最適化に要する時間を大幅に短縮化、効率化できる可能性を見いだした。 以上により、MC 法、FEM、MD 法の焼結シミュレーションが、液相焼結による複合組織の焼結過程、積層体や基板 上の粉末焼結などの複雑焼結プロセス、セラミックス-ガラス系などのナノオーダーの界面構造などを設計する強力 な手法となりえることを明らかにした。今後のセラミックスの研究において材料科学的に極めて重要な知見が得ら れており、かつ実際のセラミックス製品の開発や製造等で利用できる重要な知見が得られていると判断される。 よって、本論文は博士(学術)の学位論文として合格と認める。

参照

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