第 6 章 シミュレーションモデルの妥当性の検証
本章では,構築したシミュレーションモデルを用いた計算結果と性能評価実験 結果との比較を行い,シミュレーションモデルの妥当性の検証を行う.
6.1 出口絶対湿度・温度分布
ここでは,標準的な運転条件における,デシカントロータ出口空気のロータ回 転方向についての絶対湿度分布と温度分布について,計算結果と実験結果の比較 を行う.運転条件は
Table 5.5
に示す基準条件である.ロータ体格として厚さ200[mm]
のロータを使用した.Fig.6.1
に処理空気出口のロータ回転方向における絶対湿度・温度分布を示す.これより,角度が小さい領域では,角度が大きくな るにつれて絶対湿度が大きく落ち込み,
30
〜60
°で絶対湿度が最も小さくなる点 が存在し,角度が60
°よりも大きい領域では,角度の増加に伴い絶対湿度が徐々 に増加していっている実験結果を,計算結果が非常によくとらえているといえる.一方,温度分布については,実験結果では,角度が大きくなるにつれて,温度が 低下しており,角度が
40
℃よりも小さい領域では,40
°よりも大きい領域に比 べて,温度低下の割合が大きい.この傾向は,計算結果にも見られ,シミュレー ションが実験結果を良く推定で来ていることを示している.しかし,角度が40
° 以上の領域では,実験と計算では3
〜5
℃程度の差が確認できる.98
0 30 60 90 120 150 180 6
8 10 12 14 16
Humidity ratio g/kg(DA)
0 30 60 90 120 150 180
40 50 60 70 80 90
Temperature
oC
Angle θ deg.
Fig. 6.1 humidity ratio and temperature distribution at the process air outlet
99
6.2 再生温度の影響
Fig. 6.2
およびFig. 6.3
に,再生空気入口温度が処理空気出口温湿度および再生空気出口温湿度に与える影響についての実験およびシミュレーションを比較し た結果を示す.両者を比較すると,全体的によく一致していることが分かる.ま た,再生空気入口温度が
80
℃のときに注目すると,処理空気出口絶対湿度を最 小にする,つまり,除湿量を最大にするローター回転数が存在し,この点につい ても,実験結果をよく再現できていること分かった.さらに,処理空気出口温度 についても,実験結果と同様に,ローター回転数に極致は存在せず,ローター回 転数の増加とともに,上昇していく様子が再現できていると言える.本実験条件の範囲内では,処理空気出口絶対湿度の最大誤差は約
0.7[g/kg(DA)]
であった.また,処理空気出口温度の最大誤差は約
3.0
℃であった.このことか ら,このシミュレーションモデルは,再生空気温度がデシカントローターの除湿 性能に与える影響について精度よく予測できていると言える.100
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 12
13 14 15 16 17 18 19
Process air outlet humidity ratio xpo g/kg(DA)
Wheel rotational speeed N rph Regeneration air inlet temperature oC :
Experiment 80, 70, 60, 50 Calculation 80, 70, 60, 50
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
30 40 50 60 70
Process air outlet temperature Tpo o C
Wheel rotational speeed N rph
Fig. 6.2 Effect of the regeneration air temperature on the process air outlet humidity ratio and temperature
101
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 12
13 14 15 16 17 18 19
Regeneration air outlet humidity ratio xro g/kg(DA)
Wheel rotational speeed N rph Regeneration air inlet temperature oC :
Experiment 80, 70, 60, 50 Calculation 80, 70, 60, 50
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
30 40 50 60 70
Regeneration air outlet temperature Tro o C
Wheel rotational speeed N rph
Fig. 6.3 Effect of the regeneration air temperature on the regeneration air outlet humidity ratio and temperature
102
6.3 空気風量の影響
Fig. 6.4
およびFig. 6.5
に,処理再生空気前面風速が処理空気出口温湿度および再生空気出口温湿度に与える影響についての実験およびシミュレーションを比 較した結果を示す.両者を比較すると,全体的によく一致していることが分かる.
実験条件の範囲内では,処理空気出口絶対湿度の誤差は,空気前面風速が速いと きほど大きく,前面風速が
4.0[m/s]
のときで最大誤差は約1.0[g/kg(DA)]
であった.逆に,前面風速の最も遅い
1.0[m/s]
のときは,実験結果とシミュレーション結果 は非常によく一致しており,誤差はほとんど見られなかった.このことから,こ のシミュレーションモデルは,再生空気温度がデシカントローターの除湿性能に 与える影響について精度よく予測できていると言える.103
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 12
13 14 15 16 17 18 19
Process air outlet humidity ratio xpo g/kg(DA)
Wheel rotational speeed N rph Air superficial velocity m/s :
Experiment 1.0, 2.0, 3.0, 4.0 Calculation 1.0, 2.0, 3.0, 4.0
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
30 40 50 60 70
Process air outlet temperature Tpo o C
Wheel rotational speeed N rph
Fig. 6.4 Effect of the air superficial velocity on the process air outlet humidity ratio and temperature
104
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 12
13 14 15 16 17 18 19
Regeneration air outlet humidity ratio xro g/kg(DA)
Wheel rotational speeed N rph Air superficial velocity m/s :
Experiment 1.0, 2.0, 3.0, 4.0 Calculation 1.0, 2.0, 3.0, 4.0
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
40 50 60 70 80
Regeneration air outlet temperature Tro o C
Wheel rotational speeed N rph
Fig. 6.5 Effect of the air superficial velocity on the regeneration air outlet humidity ratio and temperature
105
6.4 ローター厚さの影響
Fig. 6.6
およびFig. 6.7
に,ローター厚さが処理空気出口温湿度および再生空気出口温湿度に与える影響についての実験およびシミュレーションを比較した結 果を示す.両者を比較すると,全体的によく一致していることが分かる.特に,
ローター厚さが厚くなるほど,最適回転数が低回転数方向に推移していく様子な どもよく再現できている.また,ローター厚さが厚く,かつ回転数が高い領域で,
ローター厚さの違いによる処理空気出口絶対湿度の差はほとんどみられなる傾 向についても再現できていた.このことから,このシミュレーションモデルは,
再生空気温度がデシカントローターの除湿性能に与える影響について精度よく 予測できていると言える.
106
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 8
10 12 14 16 18 20 22
Process air outlet humidity ratio xpo g/kg(DA)
Wheel rotational speeed N rph Wheel thickness mm :
Experiment 20, 50, 100, 200, 400 Calculation 20, 50, 100, 200, 400
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
30 40 50 60 70 80
Process air outlet temperature Tpo o C
Wheel rotational speeed N rph
Fig. 6.6 Effect of the wheel thickness on the process air outlet humidity ratio and temperature
107
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 10
12 14 16 18 20 22 24
Regeneration air outlet humidity ratio xro g/kg(DA)
Wheel rotational speeed N rph Wheel thickness mm :
Experiment 20, 50, 100, 200, 400 Calculation 20, 50, 100, 200, 400
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
30 40 50 60 70 80
Regeneration air outlet temperature Tro o C
Wheel rotational speeed N rph