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環境管理 と企業の生活能力

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(1)

環境管理 と企業の生活能力

菅 家 正 瑞

(2)

環境管理 と企業の生活能力

Abs t ract

Thet a s ko fma na ge me nti nmode r nc o r po r a t i onsi st oma i nt a i nc o r po ‑ r a t i o nse t e r na l l y.Andt hus ,a c t i vi t i e so fmo de r nc o r po r a t i o nsa r et he one swhi c he na bl ec o r po r a t i o nst oma i nt a i nt he ms e l ve s .Mo de r nc o r po

r a t i onsa r es oc i ale xi s t e nc ea ndi nf i ni t el i vi nge xi s t e nc e.Cur r e nt l y

,

mo de r nc o r po r a t i o nsmus tha vee t e r na ll i vi nga bi l i t yi nmo de r ns o c i e t y

,

be c a us emo de m c o r po r a t i o nsha vet o,a sas o c i a lbe i ng,l i vee t e r na l l yi n t hemo de r ns o c i e t y.Wha ti sl i vi nga bi l i t ya ndho wc o r po r a t i o nsc a nl i ve i nt hi smo de r ns oc i e t y?

Thi spa pe rwi l lt r yt oe xpl a i nwhymo de r nc o r po r a t i o nsne e dl i vi ng po we ra ndwhyc o r po r a t i o nsc a nl i vei nt hi sc o mpl e xs o c i e t y.Thepo i nt i se nvi r o nme ntmana geme nt ,bec a us eoneoft hemos ti mpor t ant pr o bl e msf o rma i nt a i ni ngt hi ss o c i e t yi sho wwec a ns o l vee nvi r o nme nt a l pr o bl e ms ,e s pe c i a l l ypr o bl e m o fna t ur e. I fmo de r nc o r pr a t i o nsc a nc o n‑

t r i but et os o l vi nge nvi r o nme nt a lpr o bl e ms ,t hel i vi nga bi l i t yo fc o r po r a ‑ t i o nswi l lbemo r epo we r f u

l.

Keywords:‥ nvi r o nme ntMa na ge me nt ,Li vi ngAbi l i t yo fCo r por a t i o n , Na t ur eEnvi r o nme nt .

3 0 7

1

.序

企業管理の課題は企業活動 を合理化 し,その維持 ・存続を志向する 「 企業 維持活動」である と解 される。企業 は,社会的存在 として社会の中で生活す

る生活体であ り,生活 しうるためには企業の 「 生活能力 ( Lebens f 畠hi gkei t ) 」

を維持 ・増大 させなければな らない。それでは, この企業の 「 生活能力」 と は具体的 にいかなる内容を持つ概念なのであろうか( 1 ) 0

本稿の課題は,企業の生活能力について本格的な研究を行 っているミュー ラー ( Chr i s t ofMt i l l er) の見解 を検討することによって,企業の 「 生活能力」

を具体的 に明 らかにすることである ( 2) 0

(3)

注)

( 1 )

藻利重隆 『経営学の基礎 (新訂版

)

』森山書店 昭和4

8

年,2

5

頁‑

2 7

頁 参照。

拙著 『企業管理論の構造』千倉書房 平成

3

年,31頁以下 参照。

( 2 )

本稿で検討するのは, ミューラーの次の著書である。なお,本稿では この文献からの 引用 と参照については,本文中に( )で示すこととする。

C.Mt i l l e r ,St r at e gi s c heLe i s t unge ni m Umwe l t mana ge me nt ‑Ei nAnz at zz urSi c he r un g de rLe b e ns f dhi gk e i td e sUnt e me hme ns

,De ut s c he rUnve r s i t a t s ‑ Ve r l a g

,

Wi e s ba de n1 9 9 5 .

2.ミューラーの研究 目的

( 1 )研究の動機

今 日,企業に とって重要で解決が迫 られている課題の一つ として 「 環境問 題 」( Umwe l t pr o bl 占 m) を指摘することに異論 を挟む者はいないであろう。

2 0 世紀末から 2 1 世寵始めの現代において, 自然環境 に関する様 々な問題が企 業に投げかけ られ,企業にはそれ らの解決が求め られ,企業を研究対象 とす る 「 経営学」には環境問題の解明と,企業への行動指針の提示が求め られて いるのである。 ミューラーの研究動機 もそこにあ る。「この ような要求への 包括的な経営経済的解答を明 らかにする管理構想」( S. 1 . )を提示 しようとす

るのが,彼の研究動機 に他な らない。

しか も,彼の動機 は 「 理想的で もあ り実質的で もある 」( S. 1 . ) 。彼は, こ こ 1 0 年間における多 くの研究成果を 目前 にし,「それ らの発展に どの ように 対応す るか,その可能性 を示す ことに貢献」( S. 1 . )しようとする。そのアプ ローチは決 して悲観的ではな く,シ ュンペーター ( ∫. Sc humpe t e r ) の 「 パイ オニア企業者 ( Pi oni er unt e r ne hmer ) 」 の精神 に基づ き,「 環境管理 ( Um‑

we l t mana ge me nt )

の中にまさに主導的で革新的な新結合を発見 し,革新 的管理を提示 しようとする。彼 によれば,環境管理は企業の生存問題に関連 し, したが って戦略的問題 として実践 されなければな らないのであ る。

(VglリS.

1

.

)

(4)

環境管理 と企業の生活能力 309

( 2) 研究の 目的

ミューラーの研究 目的は , 「 『 戦略的成果要因 ( s t r a t e gi s c he rEr f o l gs f a kt o r )

( 以下 SEF と略記す る)として環境 を確認 し,同 じ く,企業の生活能力 ( Le ‑

be ns f a hi gke i t ) の確保 に役立 つ経営的環境管理 における戦略的活動 を確認す ること

」(S.2.

) である。すなわち,彼の 目的はまず第一 に,環境 を S EF とし て確認することである。 ここで,戦略的成果要因 とは,さしあた り企業の成 果 に決定的影響 を与 える重要な企業 内外 の諸要 因 と理解 してお くこ ととす

る。

第二の 目的は,企業の生活能力を確保するための環境管理の構築である。

これ らの戦略的活動は 「 理想型的方法 ( i de a l t ypi s c heWe i s e ) 」 で叙述 され 科学的解明 とな らんで管理者に対する行動 をも推奨 しようとす る。 したがっ て,彼の研究は何 らかの価値判断を含み,価値 自由の原則 とも関連すること に注意 しなければな らない。彼 は,その考察 を基礎的科学論 か ら始 め る。

(Vg

l

HS.2‑3.)

( 3) 科学の 目標

ミューラーは,ケ ミ‑ レヴ ィッツ ( K.Che mi e l e wi c z ) によりなが ら,科学 的 目標 を,①要素的科学 目標,( ∋理論的科学 目標,③実践的科学 目標,④規 範的科学 目標,の四つに区分 し ( 1 ) ,彼の研究 との関連性 を検討す る。

①が問題 にするりは物事q) エ ッセンスを可能な限 り正確 に概念化 し定義す ることだが, ここでは概念争いに空転する可能性がある。( 参が問題 とするの は法則 と一般的言明の形成であ り因果関係の解 明であるが, 自然科学 と違 っ て社会 ・経済科学では長期的にのみ有用である。( 参は( 丑と反対 に 目標設定 ・

目標達成意 思決定過程 を問題 とし, 目標 ・手段思考 が中心 となる技術論 であ

り,実践的意思決定論 として強 く彼のテーマに関連する。④が問題 にするの

は認識ではな く評価であ り,評価は価値判断であるか ら目標 も結果 も経営哲

学 によって評価 される

。(Vg

l

.,S.7‑9.)

(5)

( 4 ) 規範的科学 目標

経済科学で価値判断を行 う場合 , 「 価値判断 自由 ( We r t u r t e i l s f r e i h e i t )

と いう論議を回避することはできない。彼は,ウエーバー ( M.We b e r ) ,ポパー

( K. R. Po p p e r ) ,ヴ ェ‑エ ( G. W6 h e ) の議論を検討 し ( 2 ) ,しば しば主張され る見解,すなわち経営経済学は価値 自由により企業が追究する目標の判断を すべ きでない, とい う主張に強 く反論する。

彼は,経営経済学は応用科学であ り,研究は応用 によって実践を助けなけ ればならない, と主張する。応用の対象は企業であ り,厳密には企業の未来 である。あ らゆる言明は過去に関連するとしても,それ らは未来の要素を明 確に含んでいる。「その( 企業の一菅家) 発展のため企業を助けることにそれは 役立つべ きである 」( S. 1 0 . ) 。 したがって,その認識対象は不確実な未来 とい う 「 導 出された認識対象 」( S. 1 0. ) であ り,未来は不 明確であ りうるか ら,企 業の発展 に関する言明 と可能性の言明を行 うためには 「 評価」が行われなけ ればな らないのである 。( Vg l リS. 9 ‑

ll.)

( 5)研究方法

彼は,あ らゆる実践主義的科学 目標を実践志向性の観点から前面に押 し出 す。すなわち, ( 3) で述べ られたあ らゆる科学 目標 を利用する。①は概念 と 研究 目的のために用い られる.( 参は因果論により環境管理の戦略的重要性の 説明のために利用 されるO③は具体的で実践的な管理の行動を推奨するため に用い られる。④ほ こり研究の全ての領域において現れる。

例 えば , 「 倫理」 を導入する場合 , 「 生活能力」を定義す る場合 , 「 企業哲 学」 と 「 企業文化」に関する言明を評価する場合,な どには 「 価値判断」が 行われざるをえない。 これ らの価値判断は,上述の科学的活動 に とって必要 であると同時にその必要性は証明され うるのである。

彼は, この研究の認識対象は 「自然環境 ( n a t d r l i c h eUmwe l t ) 」であるが

ゆえに,価値判断の必要性が明らかになると主張す る。それは,生活する価

(6)

環境管理 と企業の生活能力

31 1

値があ る環境は一般的な社会的価値 を有 し,経営経済学 に とって も価値 があ る, とい うことを意味する。「完全 な環境 は努力 に値 す る 目標 であ り, した がって,第一 に, この 目標 を初めて経済 に引 き入れ 第二 に, この 目標 が達 成 され うるような方法を提示するこ とは,経営経済学 とこの研究の課題 なの である 」 ( S. 1 2. ) 0( Vg l . ,S. 1 卜1 2. )

以上の ミューラーの主張か ら我 々が確認 出来 ることは,まず第‑ に,彼は, 環境管理を企業の存続 にかかわる 「 戦略的管理」 として認識 し,その構築 を 意図 してい るとい うことである。第二 に,彼は,戦略的環境管理 に とって決 定的に重要 な要因は企業の 「 生活能力」であ り,環境管理の 目標 は この 「 生 活能力」の構築 にあ る と認識 してい ることであ る。第三 に,「 環境」 とい う 概念は企業 を取 り囲むすべての諸要因 として理解 されているのではな く,明

らかに 「自然」 とい う要因に限定 されている とい うことである。

荏)

(

1)

Vg l

リK

.Che mi e l e wi c z ,Fws c hun gs k o nZ e Pt i o ne nde rm ' r t s c ha ft s wi s s e ns c ha ft e n ,2 .Auf l . , St ut t ga r t1 9 7 9 ,S. 9・

( 2

)

Vg 1 . , M. We be r ,Ge s ame l t eA

u

f s dt z ez urWl ' s s e ns c ha ft s l e hr e , J . Wi nc ke l ma nn( Hr s g . ) ,3 . Auf l . ,Tt i bi nge n1 9 5 8 .

K

.R.Po ppe r ,Lo gi kd e rFws c hun g ,8 .Auf l. ,Tt i bi nge n1 9 8 4 .

G.W6 he , Ei n fi i hr un gi ndi eAl l ge me i neBe t r i e b s wi r t s c ha j T t s l e hr e ,1 7 .Auf l . , Mt i nc he n1 9 9 0 .

3

.環境管理の基礎概念

ミューラーの研究 目的は,上述 した ように,企業の環境管理 に対 して何 ら

かの提言を示す ことにある.その提言が適切な ものであるか否 かは,彼が構

築 しようとする環境管理が実践 に即 した ものであ ると同時に,その環境管理

モデルが持 つ倫理,文化,哲学 といった基本的価値 に一般妥当性があること

(7)

が必要である。すなわち,客観的な観察 と分析に基づ く企業モデルに加えて, 適切な価値判断 とい う困難な問題の解決が求め られるのである。 ミューラー は, これ らの問題 を解決す るために,その考 察 を企業 が持 つべ き 「倫理

( Et h i k)

の問題か ら始める。

( 1 )倫理 と価値 自由の原則 ( 彰価値判断 と倫理

ミューラーは,「 価値 自由公準 ( We r t f r e i he i t s po s t ul a t )

が緩和 されるこ とによって,経済科学において も倫理 についての議論が可能になった, と言 う。そこで経営経済学がその研究成果 として,何 らかの言明 と推奨を行い う るためには,その判断の基礎に何 らかの客観的価値が,少な くとも一般的に 妥当する価値が存在 しなければな らないであろう( 1 ) 。その ような基礎を求め

るために, ミュー ラーは 「 規範的 ・倫理的アプローチ ( no r ma t i v‑ e t h i s c he r An z a t z ) 」 を取 る。 なぜな らば,「この ような科学的科 目の特別な規範は, 最高の,一般妥当的な価値 か ら引 き出され うる 」( S. 1 5. ) か らである。 このア

プローチの課題 は,一般妥 当的な倫理的基礎 として 「人間の至高善 ( da s h 6 c h s t eme n s c h l i c heGu t ) 」( S. 1 5. ) を導 きだ し,人間が倫理的に行動する規 則を発見することである。

ミューラーは,シ ャッシソグ( L Sc h a s c hi n g) が明確 に述べるように ( 2 ) , 現実感を喪失 しつつある経済科学 と価値論 との統合を主張する。なぜな らば

「 確かな倫理的基礎で しか経済理論の規範的欠陥は克服 され得ないし,人間 化の経済的現実性は導 き出され得ない ( 3 ) J( S. 1 6. )か らである。 この ような倫 理的立場を獲得することが経済哲学の課題である。経済哲学は管理者の持つ 基本的態度,思考あ るいは価値観念 に一 つの意味 を与 えるこ とである。 当 然なが ら,その意味は上述 された倫理的価値 を含む こととなるであろう。

( vg

l

. ,S. 1 5 ‑1 6. )

(8)

環境管理 と企業の生活能力

31 3

②倫理的基本立場

管理者が取 るべ き倫理的価値 を究 明するに際 し, ミューラーは,1 ) 倫理的 基礎主義 ,2) 倫理的相対主義 ,3) 功利主義 ,4) 義務論 ,とい う四つの基本的 理論を検討する。

ミューラーは, 1 )2)3) の主張 を彼の研究 目的にそ ぐわない考 え方であると してこれ らを排 し ,4 ) の 「 義務論 ( di eDe o nt o l o gi e ) 」 を検討する。義務論の 中心的代表者 はカン ト( Ⅰ .Ka nt ) であ り,彼 によれば,純粋 に倫理的な行為 は,合理的 に考 える人間のすべてが服従 す る何 らかの法則 ( す なわち命令 ( I mpe r a t i v ) ) に従い,それは時 と場所 とを問わない。倫理的活動 は ,1 ) 普遍 性 ,2) 自己 目的性 ,3) 理性的行動, とい う三つの特色を持ち,そ こか ら三つ の命令が導 出される。命令の 目的は一般妥当性を持つ規範の設定であ り, こ の規範はあ らゆる人間 と一般的状況 に対 して当てはま り,個人ではな く特定 の場所あるいは時間空間のみな らず,疑 う者に対 して もその妥当性が明確 に 基礎付け られる, とい うものである. この ようにミューラーは,価値判断の 客観性の根拠 をカン トの義務論 に求めるのである ( 4)

0

( vg l . ,S. 1 6 ‑1 9. )

③経済倫理的命令

ミューラーによれば,経済倫理は,一般的な倫理 を礎石 として,そ こか ら 引 き出された経済生活 に当てはまる特殊 な倫理である, と言 う。シ ャッシソ グはカン トの命令に次の三 つの経済的倫理命令を対応 させている。

1 )物的 に正 当な経済 ( Wi r t s c ha f t es a c hge r e c ht ) ,2) 人間的 に正 当な経済 ( wi r t sc haf t emens chenger ec ht ) ,3) 社会的 に正 当な経済 ( Wi r t s c haf t e ge s e l l s c ha f t s ge r e c ht )

0

1 )物的 に正当な経済 :現代の市場経済 においては,現 に存在 す る経済体

制 に関係な く何 らかの法則の存在 を明 らかにする経済倫理 はないのが

現実であろう。 したがって, この法則が 「 公正である」 と見 られ得 る

ためには,アダム ・ス ミス ( A. Smi t h) が した ように倫理的な全体文脈

が必要 であるが,彼 は これは他の二つの命令 との共鳴において見 るこ

(9)

とが出来 る, と主張する。

2 ) 人間的に正当な経済 :この命令 が意味す ることは , 「 人間的品位の基本 的要求は経済過程 にも要求 され る 」( S. 20. ) とい うことであ る。経済倫 理 は,経済過程 を含む社会的生活 のあ らゆる分野 において妥当性が求 め られなければな らない とい うことか ら引 き出され

,

、この命令の意義 は,経済は人間によって人間のために営まれるとい う事実か ら生ずる。

3) 社会的 に正当な経済 :ここで問題 なのは経済 の公共性の委任であ り, 社会 的責任 に対 す る企業 の意識 であ る。 こ こに,「連帯性原理 ( So

1 i da l i t a t s pr i nz i p) 」 と 「 扶助原理 ( Subs i di a r i t a t s pr i nz i p) 」 とい う最重 要な人間社会の構築原理が現れ る。 これ ら二つの原理は相互 に関連 し, 常 に社会 ・経済倫理の中心原則である。 ここでは,企業の社会的責任

について も述べ られなければな らない 。( Vg l . ,S, 1 9 ‑ 2 1 . )

( 2 ) 命令の意義

①研究の基盤 としての倫理 とその作用

ミューラーによれば, これ らの命令は階層関連的ではな くすべてが同時的 でかつ同列的に問題 を,すなわち企業者的 目標問題 一資本は物的正 しさを, 協働者は人間的正 しさを,外界は社会的正 しさを‑を秩序化 し解消する。彼 は, この ようにカン トの一般的な 「定言的命令 ( ka t e go l i s c heI mpe r a t i ve ) 」

か ら引 き出されたシ ャーデ ィソグの経済倫理的命令 を研究の基礎 に置 くこと によって,彼の研究課題を達成 しようとするのである。 これ らの命令は次の ような意義 を有 している。

検討 に際 して一般的 に確認 されているのは , 「 企業者的行動 は倫理的原則 と一致 しなければな らない 」( S. 2 1 . )とい うことであ る。言明 と行動が一致 し なければ,経済倫理の信頼性が破壊 されるか らである 。( Ⅴg l . ,S. 21 ‑ 2 2. )

1 )企業倫理 :倫理 は企業 に とって常 に十分価値 があ る戦略的活動であ る

と認識す ることが重要であ る。従来外部与件 とされていた要因を有効

(10)

環鼻管理 と企業の生活能力

3 1 5

的な内部条件 として強 く意識する必要がある。社会的責任 を果たす際 には,限 りある経営資源を最 も有効 に利用することが課題 である。倫 理的要求は,公正 さ,正 しさ,正直さ,権力の行使, とい う四つの領 域 に現れ それ らは,任務,倫理的標準,企業戦略,企業の操作的行 動, という四つのレベルで評価 される 。( Vg l . , S. 2 2 ‑ 2 3. )

2 ) 管理倫理 :その行動 と意思決定が個人的価値 と一致 しない, とい うジ レンマに管理者 が陥 ることは多 く見 られる現象である。一方では彼の 人間性が,他方では企業への忠誠心が対立する, とい うようなコンフ リク トの解決は困難で,最悪の場合には解雇 とい う事態を招 く。 この ように,管理者の行動は企業 と社会 との間に基本的で広いコンフ リク トを繰 り返 しもた らして きたか ら, ここに,管理者 に対す る倫理が必 要 となる。管理者は利害の絶 えざる緊張領域の中で生活 し,その中で 自己の利害 と思考をも確保 しようとする。 ここに,管理者への命令が 意味を持ち,一方では企業内外の人間に対す る管理者の態度が,他方 では命令に対す る対立が生ずる ( 5 ) 0

3) 多国籍経済倫理 :これは多国籍企業は各国において どの ような倫理的 原則 にしたがって行動すべ きか, とい う問題である。 この問題 には, i) 企業は母国の倫理的原則を維持する, i i) 企業は進出国の倫理的原 則 にしたがって行動する, とい う両極端な二 つの解決方法があ り,現 時点の行動はそれ らの妥協である。 ここでは認め られた三 つの命令が 役立ち,国際的 にも当然利用 され る。国際的にも統一的 に実現 される 攻めの環境管理 がそれを印象づける。その際,一般的には連帯性 と扶 助性の観点か ら以下の ことが確認 される。

連帯性原理か らは,世界経済では国民 と人間全体 との間には同 じ均 衡 が成立すべ きである, とい う要請 が導 出される。「すなわち,国民 経済は相互対立的ではな く,対立的な取 り決めによる少な くとも大 き

くて完全な相互対立を反省 し,お互いにその道を進む とい う意志をも

(11)

って,確実にす るに必要な装置 が作 られるべ きである 」( S. 2 7. ) 。国の 意思決定者はその ような前提条件を作 る政治的過程 に参加すべ きであ る 。 扶助性の原則か らは,国家 を超 えた地位 に権限を委譲 し,あ らゆ る国家の経済 に必要な補完的努力を為す ようにしなければな らない, とい う規定作成の要請が導 出される。それは,企業が環境責任を果た す ことがで きる国際的な経済の範囲条件を作 るために必要だか らで義 る 。( vg

1

. ,S. 2 4 ‑ 2 8. )

( 彰倫理の効果

1 ) 倫理 と生態系 :上述 された倫理原則によって,経済倫理の観点から, 環境管理の意義 とその必要性の間が架橋 される, とミューラーは考 え る。人間を自由にする西洋的な市民化の発展状態を許す理 由は,原則 的には存在 しない。豊かな社会のみが環境問題を意識 し,そうでなけ れば 目前の生活の維持 しか考 えない。 しかし,人間は環境の一部であ り,環境に配慮 して経済活動を行 う責任を意識 しなければな らない。

2) 人間の責任 :人間の責任は,人間的善を行 うとい う目標 を達成する義 務 である, と定義 される。責任担当者は責任 と交流 しなければな らな い。昔か ら自然 は人間行動の対象でな くその前提であった。 自然 とい う動態的システムは,今 日の人間のためだけでな く,明 日のためにも 意義 をもつ。そ こか ら未来を形成する権力が生まれ,権力は現在だけ でな く未来のためにも責任を負 う。

現在の人間 も将来の人間 も,生活 と資源の利用の権利を持 っている。

したがって,現在の人間は将来の人間に対 して資本の予備 を残 さなけ

ればな らない。 また,今 日の消費者は,化石燃料 を中心 として環境を

危険に晒 し,惑星地球の 自然へ逆行で きない害をもた らしているとい

うことを忘れてはな らない。 ここで重要なのは禁欲ではな く理性であ

る。人間の責任 はポス ト産業的生活に不十分な 自然の秩序 を完全化す

ることであ り,克服することではない。

(12)

環境管理 と企業の生活能力

31 7

3) 経済倫理的命令 :我 々はほ とん どテクノクラー トと名付け ることがで きる技術的支配 の時代 に生活 している。 この時代 に,環境倫理 につい て考慮するな らば,重要なのはやは りカン トの 「 定言的命令」の意味 での一般妥当的な規範の探求であ る。 ミューラーの研究の基礎 にあ る 経済倫理的命令 は この要請を満た し,環境倫理的理解の基礎で もある。

前面 に立つのは , 「 人間的に正 当な経済 」 「 社会的に正当な経済 」 とい う命令 である。環境倫理 は規範 を設定するだけでな く,その利用 を も もた らさなければな らない。

環境管理 について述べ るな らば, これ らの規範 は彼 に とって常 に指 導的命令の基礎 とな るのであ る。再 び言及 すれば,それ らは , 「物的 に正 当な経済」,「人間的に正 当な経済」 , 「 社会的に正当な経済」であ る。

これ らは企業の戦略 と執行 q) 領域 で首尾一貫性 を持たなければな ら ない。 これ らの命令が本質的な影響 を与 えるのは,企業の生活 目標 の 定義 お よび企業哲学の問題 を考察す る際の倫理であ る。長期的に倫理 的 に必要な ことは経済的理性 に反 しない。企業は権力を持 つが,それ は常 に特別な責任 に結びつけ られ,倫理的志 向の行動 は必要だけでは な く,可能で もあるのである ( 6) 0 ( vg l . , S. 2 8 ‑ 3 2. )

以上が 「 倫理問題」 に関するミューラーの主張の概略である。 ここで我 々 が注意 しなければな らない ことは,個人の行動は もちろんの こと,人間か ら 構成 されている企業 も何 らかq) 倫理的行動が求め られ,それは一般妥当性 と い う基準 に よって評価 される, とい うことである。換言すれば,企業は市民 社会の一員 として,一般妥当性 を持 った倫理的行動 が求め られている, とも 表現で きるであろう

経済的にも,人間的にも,社会的にも,企業 には正当 な行動 が求め られ,それ らの社会的要請は企業の 「 生活能力」 に密接 に関連

している と考 えられる。

(13)

荏)

( 1 )

ピュッツ

( T.Pt i t z )

は企業の 目標設定を評価する時

,

客観的に拘束的な 目標

( di e‑ ・ o b j e ki vve r bi nd l i c he nZi e

l)」 という 「あ らゆる経営に一般的に妥当する 目標設定」を 取 り扱 うことによって,価値判断の客観性を確保 しようとしている。

これについては,以下の文献を参照のこと。

T.Pdt z ,Th e o r i ed b rAl l ge me i ne nW l ' r i s c h a ft s Po l i t i kundWi r t s c ha f t s l e nk un g ,Wi e n 1 9 4 8,S. 7 5 .

C.Sa nd i g,Be t n' e b s wi r t s c h a ft s po l i t i k ,2.Auf l . ,St ut t ga r t1 9 6 6 ,S. 3 2 .

拙著 『企業政策論の展開』千倉書房 昭和

6 3

,1 8

頁。

( 2

)

Vg

l.,

J .Sc ha s c hi ng,Re na i s s a nc ede rWi r t s c ha f t s e t hi k

,R

.Es c he nba c h( Hr s g. ),Au f de m We gg um b e s s e y l eUnt e me hmmg ,Os t e r r e i c hi s c he rCo nt r o l l e r t a g1 9 8 8 ,Wi e n

,

S. 7 6 ‑ 8 8.

( 3 ) Sc ha s c hi ng,a. a. 0リS. 7 7.

( 4 ) Vg

l.,

Ⅰ .Ka nt ,Gr undl a ge nz urMe t a pk y s i kd e rSi t i e n

,1

.Aun. ,Wi e s bade n1 7 8 5und Kr i t i kd e rp7 1 a kt i s c he nVe mu

nft,

1 .Auf

l

. ,Wi e s ba de n1 7 8 8.

.

カン ト(著)(波多野精一訳)『実践理性批判』岩波書店

1 9 7 9

年。

( 5 )

ドラ ッカー もこの ような管理者へq)要請を述べている.管理者倫理の基礎にあるのは 企業の倫理的志向であ り,カン ト,シ ャッシソグ とドラッカーの要請が ミューラーの 研究の倫理的基礎 となっている。

Cf "P.F.Dr uc ke r ,TheEt hi c so fRe s po s i bi l i t y,P.Ma ds e n , J . M.Sha f ri t z , Es s e n‑

t i al so fBu s i ne s sEt hi c s ,Ne wYo r k1 9 9 0 ,pp. 2 7 ‑ 3 8.

Vg

l.

,M也l l e r ,a . a.

0

. ,S. 2 5.

( 6 )

ドイツの経営学的研究における倫理問題については,次を参照のこと。

鈴木辰治 「ドイツにおける企業倫理論」鈴木 ・角田(編著)『企業倫理の経営学』

ミネルヴ ァ書房

2 0 0 0

年,第

2

5 5

頁以下。

4.連合としての企業

次に, ミューラーは研究対象である 「 企業」をどの ように理解 しているの

であろうか。 この問題の解明が本節の主要な課題である。ウル リッヒは現代

企業の特質に注 目し,企業を,動態的, 目標志向的,社会的,開放的な複雑

(14)

環境管理 と企業の生活能力

31 9

なシステム と定義 しているが ( vg l . ,S. 3 2 ‑ 3 3 )( 1 ) ,ミューラーは伝統的な社会科 学的アプローチによりなが ら,環境問題を取 り入れることができる拡大 され た意思決定志向的 ・システム志向的アプローチを取 る。すなわち,彼は,企 業を, 意思決定志向的アプローチを基礎 に置 きつつ,システム志向的アプロー チによって企業 を利害関係者 か ら構成 される 「 連合 ( Koa l i t i on) 」 として理 解するのである。研究アプローチ としては,他に,進化論的アプローチ,状 況的アプローチ,労働志向的アプローチな どがあるが,ここではそれ らは評 価 されるだけである 。( Vg l リS. 3 3. )

( 1 )研究アプローチ

①システム ・アプローチ ( Sys t e ma ns a t z )

このアプローチは 1 9 7 0 年代に成立 した特殊な秩序化 されたアプローチであ り,その代表的研究者はウル リッヒ ( H. Ul r i c h) であ り,彼は企業をサイバネ ティックなシステム として捉 える。システム とは , 「 各要素間に何 らかの関 連があ りあ るいは生 じさせ られ うる諸要素の秩序化 された全体 ( 2 ) J( S. 3 4. )と 定義される。

もちろん このアプローチには異論があるが, ミューラーはこのアプローチ を,個 々の科学認識の移転を容易にし,経営経済学の形成 目標を大 きく実現 することに役立つ, として高 く評価する。 これは,全体関連を把握するのに 適切であ り,企業の外 向性の観察方法を決定的 に発展 させたか らである。

( Vg l . ,S. 3 4 ‑ 3 5. )

②意思決定志向的アプローチ ( e nt s c he i d ungs o r i e nt i e r t e rAns a t z )

ミューラーによれば, このアプローチはハ イネ ソ( E. He i ne n) に帰せ しめ

られる実践的で現実的な意思決定論であ り,その意義は,多様な役割 と要求

を持 った人間が理論的認識の中 山に立ち,実践的に内容があ り現実で検証で

きる理論であることに求め られる ( 3 ) 。 このアプローチは ドイツ語圏では極め

て高い動態を含み,多 くの側面か ら刺激を受け,人間の非合理的で限定 され

(15)

た意思決定をテーマ とし,この思考は 「 連合」 とい う組織の基礎モデルに反 映されている 。( Vg l . ,S. 3 5. )

( 2 ) 企業モデル

ミューラーは上述 された二つのアプローチを基礎 にして,次の ような 「 企 業モデル ( Unt e r ne mungs mo de l l ) 」を展開する。

①連合モデル

意思決定志向的アプローチの問題点は,権力問題 を意思決定過程の中に隠 蔽 したことにあると指摘 されている。そこで,企業は,いろいろな要求を持 ち企業 とい う制度に権力を行使する利害者集団 ( Ⅰ nt e r e s s e ns gr uppe n) あるい は利害関係者 ( St a ke ho l de r ) か ら成立す る 「 連合」 と定義 され 企業は自ら の 目標 を追求 しない 「 抽象物 ( Abs t r akt i on) 」 であ り,企業 目標は連合者

( Ko a l i t i o na r e ;利害関係者)によって追求されるが,企業を組織 として維持 するためには,何 らかの共通的な企業 目標を達成 しなければな らず,連合は 企業 とい う制度にま とま らなければならない。

エ ッシ ェンバ ッハは, このモデルを応用 して彼の均衡モデルに取 り入れ, 出資者 ( Ka pi t a l ge be r ) ,協働者 ( Mi t a r be i t e r ) そ して外界 ( Umf e l d) という三 つの連合者のみを区別 した( 4) 。 このモデルはミューラーの研究の基礎をなす もので,管理の課題は企業に求める連合者の要求の間に均衡を達成すること である 。( vg l . ,S. 3 6. )

②均衡モデル ( Gl e i c hge wi c ht s mo de l l )

連合モデルでは企業は抽象物 として理解 され,個人的 目標を追求する連合

者は企業制度に閉 じこめ られる。エ ッシ ェンバ ッハは,管理者 とならんで,

出資者,協働者そ して外界 という中心的連合者を区別することによって,企

業内外の要求集団を分けることができた。 この区別は,有効性志向と能率志

向の給付の秩序化に とって特に重要であると,ミューラーによって高 く評価

され,彼の考察に取 り入れ られる 。( Vg l . ,S. 3 7. )

(16)

環境管理 と企業の生活能力

3 2 1

( 3 ) 連合モデルの構成者 ( 連合者)

①出資者 ( Ka pi t a l ge be r )

出資者は 自己資本であれ他人資本であれ,企業 に必要な財務的手段を提供 する。彼等の 目標は,長期的で適切な利払い と投下資本の維持お よび収益性 である。投下資本は自己 ・他人資本 に関係な く,決定的なのは資本の内部的 処理である。 したがって 自己資本出資者 も他人資本出資者 も内部的要求集団

に数え られる。

②協働者 ( Mi t a r be i t e r )

協働者はその労働力で企業の将来 を決める重要な要因であるか ら,企業で は決定的役割を演 じる。協働者 とい う人間は企業 と人間的関係を持つ。それ は,従業員だけでな く,その家族,監査機関成員や解雇 された協働者 も同じ である。協働者の要求は労働力の代償であるが,それは物的 ・財務的対価の みならず,非物的な名声, 自己実現な ども含み,具体的で共通的な 目標形成 は極めて困難である。協働者は企業の価値創造過程 を形成するか ら,内部的 要求集団に数 えられる。

③企業者的外界 ( Unt e r ne hme r i s c he sUmf e l d)

企業者的外界 とは, 企業の内部領域 に数えられないあ らゆる関連者である。

外界は,企業存続に対 して,経済的,技術的,社会 ・文化的,法律 ・政治的, 物理的条件 を形成する。外界で重要 な ことは, 目標形成の理想観念 として

「 企業内外の調和」を達成することであろう。外界は企業を取 り巻 くシステ ムであ り,あ らゆる外部的要求集団の上位概念である。決定的な外界は,経 営経済学が今後取 り組 まなければな らない 「自然環境」である。

④管理者 ( Ma na ge me nt )

管理の課題は,連合者の要求の間に均衡をもた らし,個人的 目標を持つ連

合者をあ らゆる利害に相応する共通的方向に動かす ことである。 しかし,企

業 目標は不安定であると認識 され,あ らゆる連合者の共通分母は最後の企業

目標である 「 市場で生 き残 ること ( z ut i be r l e be na m Ma r kt ) 」 であるとも言

(17)

われる。均衡は 目標 ・成果の圧力 と情報不足の下で行われなければな らない。

管理者は協働者の一員で もあるか ら,彼等 も内部の要求集団の部分を構成す る 。( Vg

l

, , S. 3 7 ‑ 4 0. )

ミューラーは彼の研究課題を達成するために,上述 された概念をさらに詳 細 に定義する。 ここでは , 「 外界」 とりわけ 「 環境」について見てみよう。

( 4) 外界 とそのセグメン ト

①外界の定義

外界 とは企業の外部 に存在する全体であるグローバルな上位概念である。

既述 された ように,外界は,経済的,技術的,法律 ・政治的,社会 ・文化的 そして物理的要素に分け られ 主観的要素 も含んだ 「 企業に何 らかの形で手 段的関連 もが成立する,個人 と組織の全体システム」( S. 4 1 , )と定義される。

外界は様 々な要素に細分化されるが,その特徴を, ミューラーは次のように 説明する 。( vg l . , S. 4 1 . )

②外界の特徴

1 ) 相互依存的関連 :外界の構成要因は相互依存的関連を持 っている。オー プンシステム としての企業を強調すれば , 「 依存性がない企業は依存性 がない個人の ように存在 しない」( S. 4 2. ) 。相互依存性は権 力を生み出

し,人間 と同じように企業は外界にその特殊な意義を有 している。

2 ) 複雑性 :外界は常に変化 し,その予測可能性 と影響可能性は,組織化 と統一化 によってますます大 き くな り,外界の複雑性を増大させる。

この複雑性は外界全体の客観的把握 を不可能 にするので,主観的な意

思決定 と重点設定を必要 とさせ る。満足 を求める外界要因を混乱せず

に操作することは実践的に不可能なq) で, ミューラーは操作可能性を

容易にするモデルの構築を試みる 。( vg l . , S. 4 2 ‑ 4 3 . )

(18)

環境管理 と企業の生活能力

32 3

③外界の区分

ミューラーは外界を把握する多 くのアプローチにしたがって,外界を次の ような三つの階層的分野に分ける。

1 ) 環システム ( Ums ys t e m)Ⅰ ( 市場 に関連する外界の集団) ,2) 環システム

Ⅱ( 社会 に関連す る外界の集団) ,3) 生態的環システム ( 6kol og is c hesUm‑

s ys t e m) 0

環システム Ⅰの代表的集団は,納入業者,顧客および琴争者の ように,企 業が直接 に接触する集団であ り,これ らの要求は企業の行動を不利にする。

環システムⅡはあ らゆる市場参加者の経済行動に影響を及ぼ し,それ らは, i) 経済的セグメン ト, i i) 技術的セグメン ト, i i i ) 社会 ・文化的セグメン ト, i v) 法律 ・政治的セグメン トに区分 される 。( V g l . ,S. 4 3 ‑ 4 4. )

④生態的環システム

ミューラーによれば,決定的に重要なことは,企業 と市場関連集団や社会 関連集団は生態的環システムに取 り込まれてお り,相互に影響 しあうという 絶えざる相互作用にある, と認識することである。 このシステム との企業の 関係の 「 重要性」を定義するのは困難だが , 「 企業 に対する環境の本質的特 徴は少な くとも確認す ることがで きる」( S. 44 . ) 。 したがって,「企業管理の 課題は, この影響を確認 し,透明化 させ,結果 として企業に利用すること」

( S. 4 4. ) である 。( vg l リS. 4 4 ‑ 4 5. )

ミューラーは,これ らの関連を次頁の ような図で示 している。

( 5 )環境 とその保護

①環境の定義

ミューラーによれば,環境 とは経営的環外界の部分であ り,それは自然環

境すなわち生態系の全体 と定義 される。 この概念は, 自然の ように生命があ

る全体だけでな く,風景や美的価値の ような自然によって形成 されたシステ

ムをも含む。

(19)

図 1 :外界セグメン ト ( S. 45. )

企業か ら見れば,環境はインプ ッ ト ・アウ トプ ッ トの媒体 として利用 され る対象である。企業 と生態的環境 との問は 自然の資源で特徴づけ られ,一面 ではインプ ット要素 として,他方では生産 ・分配の副作用の媒体 として,他 の要求集団に対立 させ られる 。( vg l . ,S, 46. )

②環境保護 ( Umwe l t s c hut z )

この言葉は現代に作 られた概念なので,確固 とした定義 も明確 な語法 も欠 けている。そ こで, ミューラーは一般妥当的な定義 を試みている。

まず認識 すべ きことは,人間の行動 はすべて 自然 に負荷 を与 えている と

いう事実である。したがって,人間が存在する限 り,人間は自然に影響を及ぼし

続ける。「 環境保護」とい う言葉は しば しば 「 環境保全 ( Umwe l t be wa hr ung) 」

(20)

環境管理 と企業の生活能力

3 2 5

という静的概念 と同一視 される。 しかし,環境はそのままの状態で守 ること はできないか ら,この概念は実現で きない 。( Vg l リS. 4 7 . )

③環境 とエン トロピーの法則 ( Ent r o pi e‑ Sa t z )

環境問題 については熱力学の法則が,特にその第二法則が重要な意味を持 つ ( 5 ) 。それ らの法則は次の様に説明される。

1 ) 第一法則 :人間はエネルギーを作 ることも無 くす こともで きないので, それ らは失われないことを意味 し,この法則によれば生産 と消費は物 質やエネルギーの単なる変形 にすぎない。人間の経済活動 に とってよ

り重要なのは次の第二法則である。

2 ) 第二法則 :閉鎖的システムにおいては,エン トロピーは決 して減少せ ず,それは同一 か時間の経過 とともに増大する.エン トロピー とは無 秩序の度合い と定義 され 利用で きないエネルギーは 自ら増大 し,刺 用で きるエネルギーはゼ ロに向かうことを意味する。 したがって,人 間が利用で きるエネルギーは,いかなる努力をしようとも最終的には 無になることが明 らかになる。

3) ェン トロピー法則 と太陽エネルギー :地球は部分閉鎖的システムであ り,太陽のエネルギーが地球 に低いエン トロピーをもた らす。新 しく で きる資源に限 り,エン トロピー法則は経済過程 に とって何の問題 も ない。新 しくない資源を増大的に利用する限 り,エン トロピーは持続 的に高め られる。

そ こで , 「エン トロピー法則 は,人間が設定 しなければな らない特 別 な責任 を基礎づける 」( S. 4 9. )と同時に,エン トロピー増大の回避が 求め られる。「 環境保護」 に意義がある とすれば,それは環境負荷が 最小である代替案を求める 「 環境保存 ( Umwe l t s c ho nung) 」 だが, こ れは 「 攻めの環境管理」の倫理的理解 には不十分である。それでは無 責任なエン トロピー増大が もた らされる可能性があるか らである0

我々の経済行動は,エン トロピー増大か ら逃れ られるのであろうか。

ここに,倫理的行動が求め られる根拠がある 。( Ⅴg l . , S, 4 7 ‑ 4 9. )

(21)

④エン トロピー法則 と環境保護

1 ) 環境正当的行動の必要性 :ミューラーの研究の基礎 に置かれている哲 学は , 「 環境保護 ・環境正当性 ( Umwe l t s c h u t z ‑ Umwe l t g e r e c h t i g ke i t )

とい う概念であ る。あ らゆ る人間行動 は環境利用 と結びつ くか ら,

「人間の行動 は 自然の行動であ らねばな らない」( S. 4 9. ) 。 そのために は , 「自然の過程 と負荷限界を科学的に正確 に把握 し,その時 自然の 循環 の中で最 も摩擦無 く利用す る行動方法を毎 日行 うこと 」( S. 4 9. ) す なわち 「 循環均衡 ( Fl i e 8 g l e i c h ge wi c h t ) 」を達成することである。それ は,エン トロピーの増大 と減少の均衡化であ り,そこに人間の経済活 動の限界値が見出される。

2 ) 人間行動の限界値 :科学は限界値 を定義 しようとする。 この定義はそ の時の科学的知識 と政治的プロセスによって影響 される。科学的限罪 値 には数多 くの問題が結びついているか ら,科学的論争 に対 して政治 は責任を引 き受けなければな らない。 したがって,科学的測定による 限界値は 「 環境保護」 と 「 環境正当性」 とい う概念を限定する補助辛 段 にすぎない。「いつの場合で も,科学的限界値 が 自然的な もののモ デル として責任を持ち得 るためには,倫理的にも基礎づけ られなけれ ばな らない」( S. 5 1 」。それは, 自然 についての最 良の知識 と良 し、 にし たがって許 される 「 環境負荷」の限界であ らねばな らない。

3) 企業行動の環境正当性 :「 理想型的に言 えば,環境正当的行動は自然の 限界値の到達 に努力す る行動 である」( S. 5 1 . ) 。引 き起 こされたエン ト ロピー増大は低いエン トロピーのエネルギー供給 より少な くな くては な らない。実際の限界値 は不明確なので,科学的に測定 され倫理的な 基礎 を持つ限界値 は,環境正当性 と環境保護 を測定する尺度 として有 用である。

「 環境管理の活動は,常に少な くとも企業の環境正当性 とその製品

の環境正当性 を 目標 に持 たなければな らない。企業の 目標体系 が倫

(22)

環境管理 と企業 の生活能力

3 27

理的部分だけ拡 げ られるな らば,それ以上 に環境保護の要求 にも正 当 化が求め られ よう 」( S. 5 2. ) .( Vg l . ,S. 4 9 ‑ 5 2. )

以上が ミューラーによる研究アプローチ と企業理解 に関する主張の概要で ある。

ここで我 々が確認 しておかなければな らないことは,①連合 としての企業 の構成員 ( 連合者)は,出資者, 一協働者 と外界の三要因のみであること,②外 界は企業のあ らゆる外部要因を含んでいる全体であること,③その中で企業 の環境 として把握 されているのは 「自然環境」のみであること,④管理者は 協働者の一員 に数 え られていること,⑤管理者の職分は企業の連合者の間に 均衡 を維持することにあること,⑥倫理的行動の基礎 にあるのは 「エン トロ ピーの法則」 と言われる自然科学的法則であるこ と,⑦エン トロピーの増大 はエン トロピーの減少 によって均衡 させ られなければな らない こと,である。

荏)

(

1 ) Vg l . ,H.Ul r i c h ,Di eUnt e me hmun gal sPy D dukt i v e ss o z i al e sS ys t e m ,Be r nundSt ut t ga r t 1 9 7 0,S.1 5 3f f .

拙著 『企業政策論の展開』千倉書房 昭和

6 3

年,第

4

章 ウル リッヒの企業政策論,

1 1 2

頁以下 参照。

企業管理論の構造』千倉書房 平成

3

年,第 1章 企業管理の構造 ‑ウル リッ ヒの所論を中心 として‑,1頁以下 参照。

( 2 ) Ul r i c h ,α.

α

.

0

リS. 1 0 5.

( 3 ) Vg l .

,

E.He i ne n , Ei n fi i hr un gi ndi eBe t r i b s u ' i r t s c ha ft s l e hr e ,9 . Auf l . , Wi e s ba de n1 9 8 5 ,S.

2 4f f ,undS.21 3f f .

拙著 『企業管理論の構造』第 2章 企業の 目標体系q)構造 ‑ハ イネンの所論 を拠 り 所 として ‑

,4 0

頁以下,第

3

章 企業 目標 と企業組織 ‑ハ イネソの所論を中心 とし

て一,参照。

( 4 ) R. Es c he nbac h,Di ene ueEmot i onar i s i e r ung:Or gani s a t o r i s c heundUnt e r ne h‑

mungs f t i hr ung,Es c he nba c h( Hr s g. ) ,Ne ueTe nde nz e nundWe r k z e u gei m Co nt r o l l ‑

1 n g,Os t e r r e i c hi s c he rCo nt r o l l e r t a ge1 9 8 4 ,Wi e n1 9 8 5 ,S. 9 9.

(23)

( 5 )

エン トロピー法則 と環境保護の関連 については,以下の文献 を参照の こと。

U.St e ge r ,Umwe l t ma na ge me nt ‑E

r

f a hr un ge nandZ n s t nme nt ee i ne rumwe l t o r i e n‑

t i e r t e nUnt e r ne hme n s s t y l at e gi e

,2・Auf l. ,Wi e s ba de n1 9 9 3 ,S. 2 8 ‑ 29undS. 3 6 2.

拙稿

,

企業環境 と企業行動 ‑シ ュテ‑ガ‑の所論 を中心 として

」『経営 と経済』

80

巻第

3

号 長崎大学経済学会

,2 00 0

,8 6

頁。

ジ ェレミ一 ・リフキソ (著)竹 内 均 (釈),『ェソ トロピーの法則 一地球 の環境破壊 を救 う英知 ‑』祥伝社 ,平成2年。

同,『エン トロピーの法則

2‑21

世紀文 明の生存原理 ‑』祥伝社,昭和

5 8

年.

同,『ェソ トロピーの法則

‑21

世紀文 明観の基礎 ‑』祥伝社,昭和

5 7

年。

H.

ヘンダーソン (著)田中幸夫 ・土井利彦 (釈),『ェソ トロピーの経済学』 ダイヤ モン ド社 ,昭和

5 8

年。

N.ジ ョージ ェスク ・レ‑ゲン (著)高橋正立ほか(訳),『エン トロピー法則 と経済 過程』みすず書房 ,平成

5

年。

内藤 勝,『自然 とエン トロピーの経済学』高文堂出版社,平成11年。

5

.経営経済学 と環境

( 1 )生産要素 としての環境

①環境の定義

環境は これまで 「自由財 ( f r e i eG伽e r ) 」 と見なされてきたので,生産要素 としての環境は低 く評価 されて きた傾 向があった。経営経済学が環境問題 と 関連を持ち始めたの も最近であった( 1 ) 。経営経済的な環境志向性は,国家的 規制やコス トが発生する時にしか示 されなかった。「 生産要素 環境の一般的 考察はその頭文字的特徴か らもちろん既 に本質的な前進である 」( S. 60 . ) 。環 境は次第にコス トとして現れる財になったが,企業は次第に環境を統合され た構成部分 として理解 し始めた。ここにミューラーは規範的仮説 を設定する。

すなわち , 「 環境はいかなる場合で も注意 されるべ き生産要素であ り,それ はコス ト的見解か らのみ評価 されてはな らない 」( S. 6 1 . )とい うものである。

( Vg

l

リS. 5 9 ‑ 6 1 . )

(24)

環境管理 と企業の生活能力

3 2 9

( 参環境財の一般的特徴

ミューラーによれば,生産要素 環境は原則的に,1 ) 公共的消費財 として, 2 ) 有害な材料の受容媒体 として,3 ) 原料供給 として,利用することができる。

潜在力的観点から見 る と,環境財は,非分割性,非移動性,限界性,代替的 利用性 という潜在的要素の基準を広 く満た している。 しかし,さらに検討す る と環境財は 「 環境費消 ( Umwe l t ve r b r a u c h) 」 とい う観点か ら見 るのが よ り適切 であ る。 さらに,生産要素 環境 は,1 )分割希少性 ,2) 累積的希少 性 , とい う特 徴 を持 つ。環境 財 が公共財 として見 られ よ う と 「有価財

( me r i t o r i s c h eG也 t e r ) 」 として見 られ ようと,コモンズの悲劇 ( Al l me nd e ‑ Tr a g6 d i e ) ( 2 ) 的現象が現れる危険が生 じ,現実の環境問題の本質的原因はそ

こに存在する 。( Vg l . ,S. 6ト6 2. )

③環境問題へのアプローチ

環境の持つ特別性か らミューラーは次の様 に述べている。「 近代的経営経 済学に とって,環境 とい う新たな本質的研究対象は,コス ト的観点か らのみ 考察 されることはで きない 」( S. 6 2 . ) 。アルバ ッハ ( H.Al b a c h) も,経営経済 学では今 日 「自然」あるいは 「 環境」 とい う生産要素を体系的に取 り入れる

こと無 しにはもはや講義できない, と述べている。経営経済学に環境を取 り 入れる努力は7 0 年代の初めに行われた。そのような試みに挑戦 したのは,1 ) ハ イネソを代表 とする 「 意思決定志 向的アプローチ」 ,2) ウル リッヒを中心

とする 「システム志向的アプローチ」 ,3 ) ザンク ト .ガ‑ レン大学で2) をさ らに発展 させた 「 進化論的アプローチ」 ,4)「コンテソジ ェソシー ・状況的 アプローチ」,である。

これ らのアプローチによって,伝統的経営経済学 に環境 という生産要素を

取 り扱 う基礎が作 られた。 これ らのアプローチは しば しば純粋 に規範的特徴

を持 つ シス テム改善 とい う 目標 を追求 す るが,「生態志 向的経 営経済学

( 6 ko l o g ie o r i e n t i e r t eBe t r i e b s wi r t s c h a f t s l e h r e ) 」 の新たなアプローチが どれ

ほど展開されるかが待ち望まれるところである。

(25)

ミューラーが採用するのは,伝統的アプローチを基礎 に置いた意思決定志 向的アプローチである。特に,連合 ・均衡モデル という基本モデルの意義を明 らかにしようとし,そこにはもちろん規範的要素が存在する 。( vg l リS. 6 2 ‑ 6 4. )

( 2) 「有効性」 と 「能率 」 ( 3 )

既述の ようにミューラーは,企業 を内外の利害関係者 ( 要求集団 ・利害者 集団)か ら構成 される 「 連合」 として捉 える。企業が維持 ・発展するために は,各利害関係者が掲げる目標が企業 によって満足 されなければな らない0 そ うでなければ彼等は 「 連合」か ら抜け出すか らである。 したがって , 「 連 合モデル」では 「 連合老」の 目標満足度が決定的に重要になる。

それでは彼等の利害満足度は どの ようにして測定されるのであろうか。そ もそも測定 しうる基準が存在するのであろうか。 この素朴な疑問に答えるた めにミューラーが用意 している概念が① 「 有効性 ( Ef f e kt i vi t a t )

と② 「 能 率 ( Ef f i z i e n z ) 」である 。( Vg l . ,S. 6 4 ‑ 6 5. )

「 両者を区別する要因は企業の 目的 ・目標志向にある。 目的 とは企業がそ の外界で満たす具体的機能であ り,企業者的 目標システムは外界制限 と企業 制限 との調和化の過程か ら生ずる。 このような関連の中で,有効性 と能率は しば しば機能充足のあるいは 目的達成の尺度 と見なされる。 したがって,有 効性はアウ トプ ット志向の値であ り,能率はインプ ットとアウ トプットの関 係を規定する 」( S. 6 5. ) 0

①有効性の概念

有効性 とは外部の利害者集団への関連の良し悪 Lを表す概念である。企業

が継続的に生存する能力を有するためには,企業か ら生ずる内部の効果が外

部の集団の要求に対 して十分でなければな らない。 したがって,有効性は企

業の生存能力の指標である。 この概念を均衡モデルに適応すれば,有効性 と

は外界か ら企業 にもた らされ る要求 にどれほ ど応 えうるかを示 す指標であ

る 。( Ⅴg l. ,S. 6 5 ‑ 6 6, )

(26)

環境管理 と企業の生活能力

3 31

②能率の概念

能率は企業の 「内部の」機能力の尺度である。能率性は内部の要求集団間 に対立 が可能な限 り存在 しない関連 に依存する。その成果はその職分を尺度 的に満たす ことに依存するので,能率 とは 目標達成の度合い と定義 される。

インプ ッ ト/アウ トプ ッ トの関係で表現すれば,所与の インプ ッ トで最大の アウ トプ ットを,あるいは所与のアウ トプ ットを最小のインプ ッ トで達成す るな らば,それは最大の能率性 を意味する。均衡モデルに適応すれば,能率 とは出資者 と協働老q) 要求に相応に応 えることである 。( Vg l . , S. 6 6. )

③企業管理の課題

管理 の課題は,要求集団の 目標間に均衡 を作 ること,すなわち,企業の有 効性 と能率を確保することである。有効性 と能率は対概念 として理解 される べ きであ り, ミューラーは , 「‑ ‑ 物事 を正 し く行 うこと( 能率性の改善)

よ りも,正 しい こ とを行 うこ と( 有効性の改善)の方 が重要 であ る 」( S. 6 6. ) とい う ドラ ッカー ( P.F.Dr uc ke r ) の言葉 を引用 して,有効性が意味す るの は 「 正 しい ことを行 うこと」であ り,能率が意味す るのは 「 物事 を正 しく行

うこと」である, と説 明 している。

企業が持続的に存続 しうるためには,いかなる場合で も有効性 目標 と能率 目標 とを考慮 しなければな らない。両者は,階層的関係に立つのではな く, 相互依存的関係にあ り, この依存性 を認識 し両者を均衡的に形成す ることが 管理の課題である。特 に, 自然環境 は企業外部要因であるか ら,環境管理は 有効性 志 向の考察 か ら 「戦略的成 果要 因 ( SEF) 」 であ る と確認 され る。

( Vg l . , S. 6 6 ‑ 6 8 . )

( 3 )管理 と給付

①経営経済的な給付概念

経営経済学では しば しば 「 給付 ( Le i s t ung) 」 とい う言葉が使用 され その

内容には様 々な意味が込め られてい る, 極めて暖味な概念である。ミューラー

(27)

はこの給付 とい う概念をも明確 に定義 し,そ こか ら管理の給付の内容を定義 することを試みている。特 に,管理の戦略的給付概念に焦点が当て られる。

ミューラーによれば,給付 とは,時間単位に関連 し,測定可能 な成果を持 った概念であ る。物理学では,給付 ‑実行 された活動/ 必要時間, と定義 さ れる。 しか し, この物理学的給付概念を経営経済学 に直接的に導入すること は困難である。特 に問題は管理給付である。

経営経済学で定義 され る給付概念 は もっぱ ら経営経済的利用 に制限 され る。測定可能性 もここでは本質的要因である。 ミューラーは,給付 とは時間 的に累積 された 「 職分 ( Auf ga be) 」 である, と定義す る。多 くの研究者 らが 給付概念の定義を試みたが, ミューラーはヒュ‑ブナ‑ ( C .Hdbne r ) の給付 概念を使用 し,それは,特殊化 された時間単位 における職分遂行の測定可能 な成果である, とし,戦略的給付の 目標は企業の生活能力の確保 である, と 結論する 。( vg l リS. 6 8 ‑ 7 0. )

( 参管理給付

管理給付の評価は,その精神的 ・非物質的性格 と複雑性 によって極めて困 難である。 また,測定 と強化 に先だ って,例 えば環境管理 とい う職分領域が 確認 されなければな らない。その場合の本質的特徴付けは企業 目標 との関連 である。克服 されるべ き企業者職分・ か ら出発 し,職分克服のための可能性が 確認 され る。 この職分克服の成果が給付 と称 される。環境管理の給付を確認 する場合で も克服 され るべ き職分か ら出発する。

戦略的給付の 目標は企業の 「 生活能力」の確保である。これ らの給付はグー テンベルク( E . Gut e nbe r g) のい う 「 処理的給付」に数え上げ られ それ らは 経営 目的に直接志向す る管理給付を 目指す。

ミューラーによれば,管理概念 には,1 ) 機能 としての管理 と ,2 ) 制度 とし ての管理 ,とい う二つの意味がある。1 )の中心は意思決定過程の全体であ り, 2 ) は管理者 とい う人間集団であ り, 管理職分の認識 が委ね られた人間である。

したがって,2 ) は1 )を導 く関係が成立する。意思決定は,最高管理,中間管

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環境管理 と企業の生活能力

3 3 3

理,下層管理 とい う階層的段階を経 て実現 される。環塙管理 をは じめ企業の 戦略的責任が最高管理 にあることは言 うまで もない。環境管理の給付 ( 成果) は,企業の能率の確保の もとでその有効性 を増大することにあ る 。 ( vg l リS.

7 0 ‑ 7 3. )

( 4)戦略 と外界

①戦略的企業管理

ミューラーによれば,戦略的管理 とは,十分 に高 く確実な成果潜在力 ( Er ‑ f ol gs pot e nt i a l )を最高 に実現 し利用す ることを意味する。潜在力 とは,あ ら ゆる企業の存続 目標 に とって基本的に重要な様 々な種類の成果源泉である。

企業の鍵概念である成果潜在力を新 たに得 るべ く絶 えず努力することは,企 業の生活 に とって不可避である。

多 くの研究者たちが戦略的企業管理 を とりあげたが,クーノ ・ピュソピン ( C.Pdmpi n) は 8 0 年代初めに 「 戦略的成果ポジシ ョン ( SEP) 」 とい う概念を 定義 し,成果潜在力を機能的 レベル まで拡大 した。 しかし, この構想 は成果 潜在力の定義に暖昧 さがつ きま とっていた( 4 ) 0

これ らのあ らゆる戦略的構想の問題点は,市場 で 「 生活す る( z u l e be n) 」 あるいは 「市場で生 き残 る( z ut i be r l e be na m Ma r kt ) 」 とい うことが,最終 的な企業 目標の前提条件である, とい うことにある 。( vg l . ,S. 7 4 ‑ 7 5. )

( 参戦略的成果要因

成果潜在力を開花 させ るためには,企業は有効性 と能率の条件 を満たさな

ければ な らない。有効性 と能率の基準 を考 える場 合 に,「戦略的成果要 因

( SEF) 」 という潜在力の事前操作値 が確認で きる 。SEF は ミュー ラーの研究

の基礎要因であるが,競争者に対 して戦略的差別化 はで きない。差別化は戦

略的展望の初期 においては可能であ り,それは潜在力の開花,確保 そ して利

用 に関 して行われる。 したがって,企業の生活能力の確保 に とって ,SEF か

ら企業 に対 して生ず る要求を満たす ことが必要だが, これだけでは生活能力

(29)

の確保に とっては不十分な条件なのである。

ミューラーは SEF を均衡モデルの 目標規定か ら定義する。それ らは,1 ) 質 本の処理 自由性 ,2) 企業における努力に値する職場の存在 ,3) 外界 と調和 し て生活する能力そして 4 ) 管理者の力,である。企業 において ,SEF がより良 く刻印されればされるほど,それだけ潜在力はより良 くより多 く開拓される ことがで きる.そこで , 「 環境 と調和 して生活する能力 ( Fa hi gkei t ,i nHa r ‑ mo ni emi tde rUmwe l tz ul e be n . ) 」( S. 7 6 . ) が SEF として確認 され る。後述さ れるように , 「 攻めの環境管理」は企業の生活能力を確保するだけではな く, 典型的な環境潜在力の開拓 も可能にするのである 。( V

g

l . , S. 7 4 ‑ 7 6 . )

③戦略的管理の意義

戦略の意義はまず企業の生活能力の確保 にあ り,戦略的管理は増大する動 態的な外界において常に必要 になる。管理は永久に変化する外界を追求する ために,戦略的管理を必要 とする。問題は,複雑性 と不明確性 にもかかわら ず我 々が企業を上手 く目標へ と操作で きるか,なのである。戦略的管理の議 請では,外界の特別な意義が認識で きる。外界 とその要素の一つである環境 の持つ戦略的意義に基づ き, ミューラーは経営的環境管理に対 して戦略的ア プローチを選択する と同時に,管理者の直感の重要性にも言及す る.「 成功 した管理者は論理 ( Logi k) と直感 ( I nt ut i o n) を結びつけることがで きる 」( S・

7 9 . ) 。すなわち , 「 戦略的計画過程 と直感の支援力によって,企業の管理は その固有の個別的戦略を見つけることができる 」( S. 8 0. ) のである 。( Vg l . ,S. 7 7 ‑

8 0. )

以上が,環境問題の分析 と考察にあたって必要な概念に関するミューラー の見解の概要である。我 々は彼の概念規定か ら,以下の ような注意すべき見 解を指摘することがで きるであろう。

①特別な生産要素 としての 「 環境」:彼の環境概念の定義は先 に示 したよ

うに 「自然環境」のみであ る。それは 自然環境が環境適応 システムの

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環境管理 と企業の生活能力

3 3 5

企業 に とって,戦略的に決定的な要因 として取 り扱われているか らで あ り,それは自然環境を 「 戦略的成果要因 ( SEF) 」 と定義 してることか らもうかがい知 ることがで きる。 しか もそれだけではない。彼 は企莱 管理 における倫理性 を強調す るのであるが,その倫理の必要性は 自然 環境 に対する熱 力学的法則すなわちエン トロピー法則か ら生み出され た ものなのであ る。人類 が永久 に存続すべ き存在 であるな らば,企業 は 自然環境を保護する倫理的責任を負わなければな らないか らである。

( 参有効性 と能率 :企業が上述の ような存在であるな らば , 連合」 として

理解 される企業 は適合者の要求 に適切 に応 える事 によってその存在 を 確保 しなければな らないであろ う。そのためにはその適切性 を測定 ・ 判断す る基準が必要 となる。そ こで, ミュー ラーは 「 有効性」 と 「 能 率」 とい う紛 らわ しい概念を導入 し,連合者の要求の満足度 を測定 し

ようとする。 しか し, この基準 について も表現が変 わっただけで何が どの ようになった ら適切なのか, とい う基本的問題は依然 として残 さ れているのではなかろうか。

( 勤管理の課題 :管理の課題については文脈の違 いに応 じていろいろな表現 がなされているが,それ らは結局企業の 「 生活能力」を維持 ・拡大する ことによって企業の 「 存続確保」あるいは 「 企業維持」を 目指す, とい うことに他な らないであろう。我 々に とっての問題は, ミューラーの主 張をさらに究明し,企業の 「 生活能力」 とは一体 どの ような ものなので あるかを,具体的に解明しなければな らない ことにある。

④戦略的環境管理の構築 :上述の課題は特殊な生産要素 とされている 「 環

境」を戦略的成果要因 ( S EF) として取 り入れた戦略的環境管理を適切に

構築 し,企業全体 として環境志向的な管理活動 を展開 してい くことに見

出す ことができるであろう。環境管理の本質は物理的な 「 仕組み」では

な く,彼 も述べるように企業成員の 「 精神保持」にあるのであって,そ

れが 「 横断職分」 といわれる環境管理の特質をなすのである。

図 1 :外界セグメン ト ( S. 45. ) 企業か ら見れば,環境はインプ ッ ト ・アウ トプ ッ トの媒体 として利用 され る対象である。企業 と生態的環境 との問は 自然の資源で特徴づけ られ,一面 ではインプ ット要素 として,他方では生産 ・分配の副作用の媒体 として,他 の要求集団に対立 させ られる 。( vg l

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