• 検索結果がありません。

環境管理 と 「環境志向の生産管理論」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "環境管理 と 「環境志向の生産管理論」"

Copied!
59
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

経営 と経 済 84巻 第2 2004 9

環境管理 と 「環境志向の生産管理論」

川〜1

Abstract

Moderncorporationasanopenadaptablesystem toitsenvironment musthaveanenvironmentmanagementtoliveeternallyinthemodern civilsociety.So,themostimportanttaskofmanagementistodevelop theitsownenvironmentmanagementsystem.

Thisarticleexplainsthatmoderncorporationmusthaveageneralen‑

vironmentmanagementsystem;whymoderncorporationthreeenviron一 mentmanagementstructures(i.e.,production‑,labour‑andcitizen‑

orientedenvironmentmanagements)musthave;andhow production orientedenvironmentmanagementorenvironmentorientedproduction managementmustbe.

Todevelopamodelofthegeneralenvironmentmanagementsystem, first,Wemustcorrectlyunderstandthefunctionalstructureofcorpora tioninverticalandhorizontalviewpolntS.Next,wemustknow what goalsthreestructuralmanagementsmusthaveandhowtoattainthem.

Finally,becausemoderncorporationcontainsenvironmentalfunctions intotheeveryfunctionofmoderncorporation,inverticalfunctions,top managementhastodecideenvironmentalgoals,strategiesandenviron‑

mentalplan;middlemanagementhastomakeoperationplansfromthis environmentalplan;andlowermanagementhastorealisethisplans.Ⅰn horizontalfunctions(i.e.,productionprocess,lineandstaff,andstruc turefunctions),environmentaltasksmustbesuitablybuiltin.

(2)

Generalenvironmentmanagementhasthreestructuralmanagements (i.e.,production‑,labour‑andcitizen‑orientedenvironmentmanage ments.Wecouldrefertoproduction‑orientedenvironmentmanagement asenvironmentorientedproductionmanagement.Itsmainobjectisto makeitsownproductsmostefficientlyinharmonywitheveryenviron一 mentalfactors(stakeholders).

Keywords:EnvironmentManagement,ProductionManagement, ModernCorporation.

1

企業 は市民社会 で生活 を営む存在 すなわち社会的生活体 として理解 され る。企業管理 とは社会的生活体 としての企業がその生活能力を維持 ・増大せ しめることを課題 とする活動である。それは企業の社会的存在構造の合理化 活動であ り,端的に言 えば環境適応活動その ものであると解 される。 したが って,企業管理は決 して企業内部 にのみ志向する活動ではな く,変化す る環 境に適応することを 目指す環境志向的活動なのであ る(1)。 この ように,環境 への適応 を意識 しそれ を直接的課題 とす る企業管理 を我 々は 「環境管理」

(umweltmanagement;environmentmanagement)と称することがで きる。

ところで,環境管理 についてはさまざまな見解があ り,また企業の環境 に ついて も異なった定義が存在する。 したがって,我 々は環境管理論 とい う言 葉の中に多 くの異なる意見を兄いだ しうるのである。 しか し,企業管理論 を 実践的理論 として展開するためには,それがいかな る環境管理論であれ実践 主体 としての企業の立場か ら環境管理を検討 し,それを企業管理論の体系の 中に組み入れる努力が必要であろう。 この ような観点か ら見 るとき,環境管 理は企業 に とっていかなる意義を有 し, どの ような具体的内容で構成 され, 強 く内部 に志向する従来の企業管理 とどの ような体系的関連を持 つものなの

(3)

環境 管理 と 「環境志 向の生産管理論 」 201

であろうか。

本稿 の課題 は,環 境管理論 を体系 的 に展 開 してい るシ ュテ‑ガ‑ (U.

Steger)の所論(2)を取 り上げ,今までに得 られた環境管理論 に関す る知見 に 基づ きなが ら,総論的な環境管理論の体系を描 き出し,その体系の中にシ ュ チ‑ガ‑の所論 を 「環境志向の生産管理論」あるいは 「生産志向の環境管理 論」 として位置づけ ることにある。

(1) 拙 稿,「環 境 管理 の成立 」,『経 営 と経 済』 第77巻 第 3号 ,長 崎大 学経 済学 会 , 平成9,148頁 参照。

(2)本稿で検討す る環境管理 に関す るシ ュテ‑ガ‑の所論 は,彼 の次の著書で述べ られ ているものである。

UlrichSteger,Umu)eltmanagement,‑ ErfahrungenundInstrumenteeinerumwelt orientiertenUnternehmensstrategie‑ ,2・Aufl.,Wiesbaden1993.

本書には次の部分訳書がある。

ウル リッヒ ・ス テ ィーガ‑ (飯 田 雅美 訳 ),『企業 の環境戦略』, 日経BP社 , 1997年。

なお,シ ュテ‑ガ‑の所論 については次 も参照の こと。

拙稿,企業環境 と企業行動 ‑シ ュテ‑ガ‑の所論 を中心 として」,『経営 と経済』

80巻第3号,長崎大学経済学会,平成12,83頁以下。

2現代の企業管理の課題

シ ュテ‑ガ‑は 「環境保護」 (umweltshutz)1990年代の企業管理が直 面 している挑戦 として認識する。そ して,企業の環境保護活動 を企業存続の ために必要な企業進化の一 つ として理解 し,環境保護が取 り入れ られた環境 管理 (Umweltmanagement)は 「未来管理」 (Zukunftsmanagement)とし て 「先駆者的役割」 (Pionierrolle)を果たす と主張す る。

(1)進化的企業管理論 と環境保護

シ ュテ‑ガ一によれば,第二次世界大戦後の経済発展は四つの段階 に区分

(4)

され,企業管理論 もそれぞれの発展段階における新 しい挑戦に取 り組んで き たが,環境保護は90年代の企業管理が取 り組むべ き新 しい挑戦であると解 さ れる。すなわち,50年代は大量生産 とコス ト優位の生産が支配 し,それに対 応 した 「科学的管理」の全盛期であ り,60年代はマーケテ イング手法による 市場の拡大 と浸透が優位 とな り,複雑 なマーケテ ィング戦略が発展 し,70 代はオイルシ ョック,通貨危機,飽和的市場 と途上国か らの新 しい競争者の 登場 で特徴づけ られ, この複雑 な関連 に理論 と実践 は 「戦略的企業計画」

(StrategischeUnternehmensplanung)で対応 した。そ して80年代半ばか ら 90年代 は 「グ ローバル化」 (Globalisierung)「技術」 (Technologie)「環 境保護」 とい う言葉 で特徴づけ られ,彼 はそ こに 「テクノクラー ト的企業 管理」(technokratischeUnternehmensftihrung)か ら 「進化的企業管理」

(evolutionareUnternehmensftihrung)への移行 というパ ラダイム変化を見 て取 る(1)0

それでは,シ ュテ‑ガ‑が企業管理の新 しいパ ラダイム と見 る 「進化的企 業管理」 とは どの ような概念なのであろうか。

シ ュテ‑ガ‑は,テイラー (F.W.Taylor)か らアンゾフ (H..Ansoff) にいたる伝統的アプローチを 「テクノクラー ト的企業管理論」 とし,それを 特徴づけるのはその中心的仮説 としての 「テクノクラー ト的虚構」であると 言 う。すなわち,「テクノクラー ト的企業管理論」では, 目標志 向的組織で ある企業は 目標達成のために環境 を制御 しようとして環境 に働 きかけ,例外 がある として も環境 か ら企業への作用 にはほ とん ど注意を払わない。これは, 環境 か らの作用を無視 し, 目標達成は企業 による一方的な環境制御 によって 可能であ るという虚構 に立つもの と解 される。それに対 して,進化論的アプ ローチを とる 「進化的企業管理論」では,企業が存続するためには企業 と環 境 との間に 「流動的均衡」(FlieRgleichgewicht)が成立 しなければな らない とい うことか ら出発す る。そ して,企業 を 「活動の中心」(Aktionszentrum) としてではな く,資源 を機能の遂行のみな らず進化の意味で一層の発展のた

(5)

環境管理 と 「環境志向の生産管理論」 203

めにも投入する 「相互活動の単位」(InteraktionsEinheit)として把握する。

したがって ここでは,ある時点での競争力を確保 する伝統的な 「競争戦略」

(Wettbewerbsstrategie)とな らんで,環境変化 に適応 す る 「進化戦略」

(EvolutionsStrategie)が重要な もの となるのである(2)0

以上のシ ュテ‑ガ‑の所論か ら我 々が確認 しうることは,第‑ に,企業を, 環境に対 して一方的 に働 きかけてそれを制御 しようとする存在ではな くて, 変化する環童 との相互作用の中で生活 し進化 ・発展する 「環境適応的存在」

として把握 していることである。第二 に,企業がその ような存在であるな ら ば,企業管理は現在の環境 に適応す る戦略 とな らんで,将来の環境変化 にも 適応 しうるような進化戦略を展開 しなければな らない とい うことである。す

なわち,企業管理 は企業の将来の発展を 目指 して資源を投入す る 「未来志向 の管理」(einzukunftsorientiertesManagement)でなければな らないのであ る。第三に,企業管理 が未来志向の管理でなければな らない とすれば,それ は環童保護 とい う課題 に取 り組みその解決 に貢献 しなければな らない とい う ことである。

(2)未来志向的管理 と しての環境管理

ところで,シ ュテーガ一によれば,現代の企業管理が直面 している課題は 決 して 「環境保護」のみではない。それは,先 に挙げ られた 「グローバル化」

技術

「環境保護」 とな らんで,「情報(Information)複雑性」(Kom‑

plexitat)学習 もしくは価値変化」(Lernenod.Wertewandel)とい う言葉 か らなる 「六角形」 (Sechseck)をなす挑戦 に直面 している と解 され る。 ここ

,

「グローバル化

技術

環境」は企業 に影響 を及ぼす要因を意味す る と同時に,企業が行動すべ き重要な領域 を規定 している。「情報

複雑性」

学習」は これ らの領域の問題構造 を説 明するのに使用 される言葉であ り, これ らの特徴的状態や性質を表す もの と解 され,鍵 となる言葉はシステム多 様性 として定義 され る 「複雑性」である。 これ らの言葉は図2‑1で示 され

(6)

グ ローバル化

図 2‑1:戦略的星形

複雑性

るように,一体 とな って今 日の企業管理 が挑戦すべ き六角形 の 「戦略的星形」

(strategischerStern)を形作 る(3)0

シ ュテ‑ガ一 に よれば,企業管理 の 「戦略的六角形」(einstrategisches Sechseck)は現代 の企業管理 が直面 す る課題 の複雑性 を示 してい る。しか し, 特 に環境保護 の領域 は企業管理 が優先 的 に取 り組むべ き課題であ る。 なぜな

らば,環境管理 すなわち環境保護 を課題 とす る企業管理 は,次の ように未来 志 向の企業管理 に とって 「先導者 的機能」(Pilotfunktion)を持 つ と解 され

るか らであ る。

生産過程 と消費過程 を環境調和 に向けて構造転換 す るこ とは人類 に とって も企業 に とって も生存問題なのであ るが,決定的なのは現在の環境保護 の分 野では企業 に大 きな欠陥が存在 す る ことであ る。 グ ローバル化 と技術の分野 では企業 はその 目標 と戦略 を差別化 し適応 に よって問題 を克服 しうる状態 に あ るが,環境保護 の領域ではまだその状態 にはな っていない。 しか し,それ では企業 は市場機会 と革新機会 を逃 して しま う。 なぜな らば,製 品の環境調 和性 は環 境 意識 の増 大 に よ ります ます競争優位 を持 つ こ とにな るか らであ

(7)

環境管理 と 「環境志 向の生産管理論」 205

る。 したがって, この領域は優先的 に取 り組 まれなければな らない(4) 同時に,環境保護への挑戦 とい う観点か ら六角形 の他の五つの点を見れば, 環境保護 は他の五つの課題 に密接に関連 しているか ら,環境管理 は環境保護 のみな らず これ らの課題の解決 にも貢献 しうるもの と解 される。そ こか ら環 境管理 を未来志 向的企業管理 の質 を示す 「表示器(Indikator)と見 るこ と が正当化 されるのである(5)0

以上の彼の論述か ら我 々が確認 しうることは,第一 に,現代の企業管理が 直面 している課題は決 して環境保護だけではな く,環境保護は複雑 に絡み合 い密接 に関連する様 々な課題領域の一つであるとい うことである。 しか し, 第二に,環境保護は企業の現在の状況 と未来の発展 か ら見て特 に優先 される べ き課題領域である ということである。 しか も,第三 に,環境保護 に志向す る環境管理は他の課題 の解決 にも貢献 しうるので,未来志向の管理は環境管 理 として展開されるべ きであることである。すなわち,シ ュテ‑ガ一におい ては,現代の企業管理が挑戦すべ き複雑な諸課題は,企業管理 を環境管理 と

して展開す ることによって解決 され うる と解 されているのである(6)0

この ように,シ ュテ‑ガ‑は環境管理 に関する議論の重点を整理 し,企業 管理が直面す る 「革命的」変化を明 らかにする。 もちろん企業が直面する変 化は環境保護だけではないが,環境保護は 「変化因子」(changeagent)とし て変化を早める触媒 として作用する と主張するのである(7)0

以上を要するに,シ ュテ‑ガ‑は,環境管理を,現代の企業管理が取 り組 むべ き諸課題 と求め られる諸要請 に応 え,環境適応的存在 としての企業が進 化 ・発展するために必要な 「未来管理」 として位置づけているのである。

(1)Vgl.,Steger,Umu)eltmanagement,S.57.

(2)Vgl‥ Steger,α.α.0.,S.5758, (3)Vgl.,Steger,α.α.0S.5859.

これ らの課題の内容 と課題の相互関連については,次を参照のこと。

Steger,α.α.0.,S.5862.

(8)

(4) Vgl.,Steger,α.α.0 S.6263.

(5)Vgl.,Steger,α.α.0.,S.6364.

(6) シ ュテ‑ガーは以上の ように今 日の企業管理の課題 について考察 した うえで,結論 的に次の六 つの要素を企業管理 に要請 す る。企業管理 は環境管理 として展開され るべ きであ るか ら,環境管理は これ らの要請 を取 り入れた もの として形成 されなければな らない と解 され る。それ らは,(ヨシステム志 向的アプ ローチ,②進化 に よる発展,③ 環境保護の企業 目標への統合,④新 たな情報 システム,⑤横断的な組織 ,⑥革新 ,で

ある。Vgl‥ Steger,α.α.0.,S.6466.

(7)Vgl.,Steger,α.α.0.,S.66.

3規範 としての環境保護

この ように,シ ュテ‑ガ‑は未来管理 として環境管理論 を展開するのであ るが,それではその内容は具体的 にはいかなるものなのであろうか。

シ ュテ‑ガ一に よれば,環境管理 とは,企業職分の部分 としての環鼻保 護が企業の 自明の 目標 としてその 目標体系 に統合 され(1)てお り,「この新 しい 目標 を達成 す るため にそ こか ら導 出され るあ らゆ る計画 と実行 の方 (2)を指す もの と解 される。 したがって,それは,第一 に企業 目標 に関す る部分,第二に 目標達成のための計画に関する部分,そ して第三 に計画の実 行に関す る部分 に分け られるもの と解 される。

彼は,「ザンク トガーラ‑管理構想」(St.CallerManagementKonzept)(3)

によりなが ら環境管理論の展開を試 み,環境管理の レベルを,規範的管理」

(dasnormativeManagement),戦略的管理」(dasstrategischeManage ment)そ して 「執行的管理」(dasoperativeManagement)に分け る。規範的 管理 とは企業規範 としての 目標形成 に関わる管理であ り環境保護 を企業の 目 標体系 (企業の規範)に統合する問題 を含み,戦略的管理 とは環境管理の戦 略的局面であ り,執行的管理 とは企業の執行的機能領域における環境保護の 問題である(4)0

まず我 々は,第一の部分である規範的 レベルにおける環境管理,すなわち

(9)

環境管理 と 「環境志向の生産管理論」 207

環境保護を 目標体系へ統合する問題 について検討する。なぜな らば, この間 題は最高管理意思決定 として環境管理 における重要な出発点であ り,「環境 保護が企業職分 として 目標体系に統合 されることな しには,企業 における実 際の変化は達成 されない(5)か らである。

(1)価値 と企業文化

企業の 目標設定 とは企業の理想的状態 (規範)を選択する意思決定である か ら,それは企業の基礎 にある望ま しい価値 と規範 に基づ く規範的意思決定 に他な らない。 したがって,企業 目標の設定 と目標体系の形成は,必然的に 価値 と規範 に密接 に関連する。 これ らは企業の最高管理 レベル における問題 であるので,シュテ‑ガ‑は これを規範的管理 と称 しているもの と解 される。

この ように,規範的 レベルの環境管理で問題 とされるのは決 して企業 目標そ の ものだけではな く,それ らが導 き出される企業の基礎的価値 と規範 を も含 むのである。環境管理 は企業に環境保護 とい う価値 と規範が浸透することか ら始 ま り,そ して 「生態的局面が これ らの最高の規範的管理 レベルに係留 さ れた場合にのみ,環境保護が戦略的計画 とプログラムにあたって考慮 される

(6)のであ る。そ こで,彼は,環境保護 目標の検討 を 「企業文化」 (Unter nehmenskultur)の概念によりなが ら価値 と規範の問題か ら始める。

シ ュテーガ一によれば,企業が同一の環境変化 に対 して極めて異なった行 動 を とるという事実 一 環境保護 については特 にそ うである ‑ は,伝統的 な合理的企業行動仮説では説 明で きない。 したがって,企業行動の理論はそ れを首尾一貫 して説 明で きるためには,企業の基礎 にある価値 と規範,企業 哲学 あ るいは企業文化か ら分析 を始 めなければな らない。「価値 と目標 は戦 略だけでな く問題 と見なされるものの認識 をも形成す るのは明 らかである」

か らである。 ここに

,「

企業文化』 とは行動 と認識を特徴づけ る企業のあ ら ゆる価値,規範, 目標の総体」 として理解 される(7)0

シ ュテ‑ガ‑は,企業文化 に関す る 2つのアプローチ,①組織 としての企

(10)

業は 「文化を持つ」 とい う構想 と,②組織 としての企業は 「文化である」 と い う構想を比較 し,環境保護 との関連でその有用性を検討する。

前者 においては,企業文化は組織変数の一つであ り,それは戦略 と同様 に 企業管理 による操作 によって作 り出されるもの と解 される。 このアプローチ では,環境志向は トップマネジメン トが文化を変 えることで導 かれるので, これは 「文化統制的管理」(CultureControllingManagement)として特質づ け られる 「テクノクラー ト的アプローチ」である。 しかし,彼は,企業文化 の 「操作可能性」は疑わ し く, このアプローチは今 日では機能 しえない 「ト

ップダウン」アプローチであって,企業の規範的 レベルが環境保護へ と拡大 される説 明には不適切であると結論す る(8)0

後者 においては,企業文化は組織化 された現実であ り,それは企業構成員 の行動 との相互作用の中で動的 に展開されるものであると考 える。テクノク ラー ト的アプローチ とは異な り, ここでは企業文化は善で も悪で もな く,特 定の機能 を企業の構造 と過程 に及ぼすにすぎないか ら,問題 にな るのはいか なる機能が企業 とその従業員の行動 に影響を与 えるかである。企業管理は企 業文化 を特定の戦略 に合わせて操作で きないか ら,文化統制的管理」では な く 「文化意識的管理」(CultureAwareManagement)が このアプローチの 特徴である。それは,必要な適応のために既存の文化か らの学習過程を引 き 出す ことを意味する。基本原則は,企業文化は相互作用によってのみ展開さ れるのであって,命令によってではない ということである(9)

シ ュテ‑ガ‑は,企業文化を進化的企業発展の部分 として捉 えるこのアプ ローチで,経験 と学習過程 ,政治的あるいは社会的外界の変化 ,市場条件 その他が どれほ ど企業文化への反作用 を生 じせ しめるか」 とい う認識が可能 となると考 える。そ して, このアプローチを高 く評価 して,社会的組織 とし ての企業はその環境変化 か ら逃れ られないか ら,それは 「自分 自身 と広義の 環境 との問の 『流動的均衡』を維持す る」 という企業認識 に適切であると結 論する。 もちろん,彼は, このアプローチで も, トップマネジメン トが環境

(11)

環境管理 と 「環境志向の生産管理論」 209

志 向を企業文化の一部 として正 当化 す るこ とが必要 であ ることを主張す る が, この正 当化 は決 して環境保護 を 「命令す るこ と」ではな くて,それを

許容す ること」を意味するにすぎない と捉 えるのである(10)0

以上 を要するに,シ ュテ‑ガ一においては,価値 と規範は企業文化の部分 として,環境適応過程の中で学習 される企業の進化 ・発展の一つ として捉 え られる。 したがって,環境保護 とい う価値 と規範 も, トップマネジメン トに よる命令 によって形成 されるのではな く,環境 との相互依存的関係の中か ら 企業へ浸透 してい くもの と解 されるのである。 しか し, この ことは環境保護

における トップマネジメン トの役割 を決 して否定す るものではな く,む しろ 浸透 しつつあるその価値 を積極的に認め形成 してい くとい う重要な役割を担

うものであることが注意 されなければな らない。

(2)環境保護 と理想的企業像

シ ュテ‑ガ一によれば, トップマネジメン トに とって重要な ことは企業者 的価値体系 を環境保護 に向けて さ らに発展 させあ るいは修正す るこ とであ る。その場 合,理想的企業像」(Unternehmensleitbild)が大 きな役割 を果 たす もの として位置づけ られる。すなわち,企業者的価値体系をさらに発展 させ るためには 「理想像」(Leitbild)を変化 させ ることが必要 とされ るので あ る。理想像は無意識的であることが多い企業文化 よりも弾力的 にかつ合理 的議論 によって形成 され うる と同時 に,相互作用過程の中で企業文化を も変 化 させ うる と解 されているか らであ る(ll)0

ウル リッヒ(H.Ulrich)によれば,企業の最高管理意思決定は企業政策的 意思決定 と称 され,その一つをなすのが理想的企業像の決定であ り,それは 将来実現 しようとする企業の理想的観念である。それは,将来の企業の総括 的特色づけ として最 も一般的な企業政策であ り,企業の一般的特性を述べた もので,具体的な企業政策的意思決定 を原則的に総括 し,それ らを一般的で 本質的なものに還元 した ものである。 したがって,理想的企業像は,企業政

(12)

策の第一次的で最 も根源的部分であ り,企業の 自由を一般的に限定 し, 自律 的に制限 し,特定の 目標設定,目標方 向,行動方法を確定するものである(12)

シ ュテ‑ガ一によれば, この ように理解 される指導像は,何が実行でき何 が期待で きるかに関す る質的観念であ り,新 し く努力される状態 を達成する

ように動機づけるべ きもので,次の ような機能を満たす。①協働者を 「同一 方向」に向けさせ,調整 コス トを引 き下げ,エネルギーを戦略 に向けさせる。

②意思決定の新 しい規則 と基準を展開する場合の 「メタ測定板とな りうる 目標点を決める。③ さまざまな 目的を実現する余地がないは ど具体的には作 用 しないq)で,諸動機 を媒介する。(彰危険で企業 との一体化が失 われる 「 命的」でない方法で,古い もの と新 しい ものを結びつける(13)

しかし,この ような調整あるいは方向付けの機能 を持つ理想像の形成は決 して容易な過程ではない。一般的に言 えば,理想像の形成は現状 を変更する ことすべて と同 じように多 くの コンフ リク トを伴 う過程である。革新派 と守 旧派間の権力闘争,企業職能の代表者間の利害対立,意思疎通問題,場合に よっては全体的な混乱が生ずる。そ こで,シュテ‑ガ‑は, ここで 「理念」

(dieldee)の果たす役割 を強調す る。彼 によれば,理想像の変更が行われる のは,新 しいあるノいは修正 された理念が変化への能力を持つ場合のみである。

その場合,たいていは,企業は理想像 についてプラスの経験 を してお り,そ こか ら成功の可能性 と予測で きるマ イナスが回避で きるとい うことが前提 と なっている。 したがって,理念は企業の多 くの指導者 に とってそれだけ魅力 的でなければな らないのである(14)0

環境保護 に関 して言 えば,環境保護 という目標は広 く受け入れ られるので, それを企業の理想像 に取 り入れるこ とには誰 も反対 しない と推測 される。 し か し,上述の調整 ・方向付け機能を満たすためには, この理想像は行動へ と 向かうように十分 に具体的でなければな らない。 目標 と動機 を媒 介する環境 志向 と,非現実的な期待を喚起 させない努力のバ ランスの中か ら, よりよい 理想像が形成 されるのである(15)0

(13)

環境管理 と 「環境志 向の生産管理論」 211 企業 における環境保護の議論が外部影響か ら起 きるのであれ, トソプマネ ジメン トによって主導 されるのであれ,環境志向的理想像の公表 で環境保護 目標の形成 と目標体系への統合 とい う環境管理の最初の段階が終了する。 し か し,シ ュテ‑ガ‑は, これは実際の行動変化 に とって必要条件 ではあるが 十分条件ではない と念を押す。やは り必要なのは,(丑トップマネジ メン トが これ は 「時 代 精 神」 (Zeitgeist)へ の 譲 歩 で は な く 「戦 略 的 意 図 」 (strategischeAbsicht)であることを示 し,② この意図は活動 ・計画過程 に 具体化 され転換 されなければな らない ことである。 これ らの条件の下で初め ,企業の長期的な生活能力を確保 し変化 した条件下で も設定 された 目標 を達成する能力を高めるために,新 しい理想像が企業の計画 された 『進化』

と見なされる」のである(16)0

以上のシ ュテ‑ガ‑の所論 か ら我 々が確認で きることは,まず第一 に,環 境管理 の規範的 レベル においては,企業文化の形成 において も企業文化を理 想的企業像へ と転換す ることにおいて も, トソプマネジメン トの果たす役割 が極めて重要である とい うことであ る。第二 には,それ と同時 に, これ らの 価値 と理想像は企業の発展 ・進化のための戦略的意図 として表 明され,具体 的な行動計画の策定 とその実行 に結びつけ られなければな らない とい うこと である。

(1)(2) Steger,Umweltmanagement,S.66.

(3) St.GallerManagemen卜Konzeptとは,ウル リッヒ (班.Ulrich)らによって展開され たシステム志向の管理モデルである。 これについては次を参照のこと。

H.Ulrich,W.Krieg,DasSt.GallerManagementModell,llAufl.,Bern1972・

H.Ulrich,Untemehmungspolitik, 1・Aufl.,BernIStuttgart1978,S.13118.

拙著,企業政策論の展開』千倉書房,昭和63年,第4 ウル リッヒの企業政策論, 113貢‑117貢。

(4)vgl.,Steger,α.α.0.,S.173.

(5)Steger,α.α.0.,S.368.

(6) Steger,α.α.0‥ S.175

(14)

(7)Vgl.,Steger,α.α.0 S.177‑178.

(8)Vgl.,Steger,α.α.0.,S.178‑180.

(9)Vgl.,Steger,α.α.0.,S.180‑181. (10)Vgl.,Steger,a.a.0.,S.1811182, (lB Vgl.,Steger,a.a.0.,S.182.

(1g) Vgl.,Ulrich,Untememungspolitik,S.91ff.

拙著,企業管理論の構造』千倉書房 ,平成3年,第 1章 企業管理の構造 ‑ウル リ ッヒの所論 を中心 として ‑,7‑8頁 参照。

(13) Vgl.,Steger,a.a.0.,S.183.

(14)Vgl.,Steger,a.a.0.,S.183, (15)Vgl.,Steger,a.a.0.,S.184.

(16)Vgl .,Steger,a.a.0.,S.1841185.

4企業 目標 と環境保護

環境保護 に志向する理想的企業像は具体的に企業 目標 として転換 ・形成 さ れ,企業の 目標体系の中に統合 されなければな らない。シ ュテ‑ガ‑は,環 境保護 に関す る企業 目標の形成 と統合の問題 を,「戦略的企業計画」 とい う 構想の中で論 じている。戦略的計画 という管理職能の枠組みの中に環境保護

目標 を取 り込む ことによって,環境保護に関する具体的な行動計画の策定 と その実行が保証 され るもの と解 される。

(1)戦略的企業計画

シ ュテ‑ガ一によれば,戦略的企業計画は望ましい企業発展の思考的先取 りであ り,そ こには,戦略的行動 お よび代替案の分析 と,企業の競争優位 (dieWettbewerbsvorteile)を確保するために新 しい 目標 と方策を体系的に導 き出すこ とが含 まれ る。戦略的計画の中心概念をなすのは企業の 「成果能力」

(Erfolgspotential)であ る。すなわち,戦略的計画において重要なのは, 業成果の長期的確保 に役立つ,企業の物的あるいは非物的な能力」 と定義 さ

(15)

環境管理 と 「環境志向の生産管理論」 213

れる成果能力を新たに提示すること,あるいは既存の成果能力を上手 に利用 することである。 この考 え方は,コス トによって競争力を確保 しようとす る 防御的反応 と対立す る。 しかし,彼 によれば,成功 した企業の多 くの例を見 る と,その圧倒的市場地位 は,品質 ,技術 ,製品の付加効用 な どとい った

顧客獲得力」(dasakquisitorischePotential)によって達成 されてお り, し たがって,戦略的計画では,確かにコス トは無視 できない として も,成果能 力の確認 に注意が払われなければな らないのであ る(1)0

この ように,シ ュテ‑ガ‑は,戦略的企業計画の中心概念にコス ト競争力 ではな く 「顧客獲得能力」 としての成果能力を置 き,それによる競争優位の 確保 を重視する。 この ような競争優位は何 よりも革新 によって得 られるもの であることが注意 されなければな らない。

シュテ‑ガ一によれば,戦略的計画の成果は次の四つの要因に依存する。

それ らは,①要求は高いが達成可能な 目標を形成すること,②傾 向の破壊や 新たな機会 とリスクを早期 に示す情報 システムを持つこと,③企業の全体 と 部分職能領域 に戦略を慎重 に組み込む こと,④転換 された戦略を,経験,成 莱 ,環境変化 に照 らして監視す る こ と (戦略的統制)(strategischesCon‑

trolling)お よび学習 ・進化過程のためのフ ィー ドバ ック過程であ る戦略的計 画全体 を監視するこ と,である(2)0

計画」‑遂行」‑統制」 とい う管理の過程的職能か らこれ らの要因を 見れば,① は計画の内容その もの,②は計画策定の前提 となる情報収集,③ は計画の遂行過程,④は統制過程 における成果要 因, として位置づけること がで きる。要するに,戦略的計画が成果あるためには,それをその遂行 と統 制 とい う一連の管理過程の中で一体的に捉 えなければな らないのである。

さて,シ ュテ‑ガ一によれば,戦略的計画は環境の変化を新たなあるいは 修正 された企業戦略 に転換す る とい う 「連結機能」(scharnierfunktion) 持つ。 図4‑1(3)は,戦略的企業計画の この機能 と,環境管理 における戦略 的計画,遂行 および統制の関連を示 している。

参照

関連したドキュメント

【背景・目的】 プロスタノイドは、生体内の種々の臓器や組織おいて多彩な作用を示す。中でも、PGE2

暑熱環境を的確に評価することは、発熱のある屋内の作業環境はいう

実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる

概要・目標 地域社会の発展や安全・安心の向上に取り組み、地域活性化 を目的としたプログラムの実施や緑化を推進していきます

「欲求とはけっしてある特定のモノへの欲求で はなくて、差異への欲求(社会的な意味への 欲望)であることを認めるなら、完全な満足な どというものは存在しない

基本目標2 一人ひとりがいきいきと活動する にぎわいのあるまちづくり 基本目標3 安全で快適なうるおいのあるまちづくり..

○事業者 今回のアセスの図書の中で、現況並みに風環境を抑えるということを目標に、ま ずは、 この 80 番の青山の、国道 246 号沿いの風環境を

 此準備的、先駆的の目的を過 あやま りて法律は自からその貴尊を傷るに至