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企業の環境適応 と生活能力

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(1)

企業の環境適応 と生活能力

菅 家 正 瑞

Abs t r a c t

Mo de r nc o r po r a t i o n,a sa na da pt a t i o ns ys t e m t oi t se nvi r o nme nt ,mus tl i vei ni t se nvi r o nme nt e t e r na l l y, be c a us ec o r po r a t i o na sago l ngC O nC e r ni nmo de r ns o c i e t ymus tbede ve l o pe di nt oa ni n‑

f i ni t ee xi s t e nc e,a nda sas o c i a le xi s t e nc e,i nt oa ne t e r na ll i vi ngs ys t e m.Mo de r nc o r po r a t i o n , ho we ve r ,C a nno tl i vei nt hi smo de r ns oc i e t ywi t ho uta nyl i vi nge f f o r t s . Oneo ft hemo s ti mpo r t a nt l i vi nge f f o r t si sapo t e nt i a l f o rl i vi nga bi l i t ya ndma ki ngi t spo t e nt i a l s t r o ng. Wha ti st hes ubs t a nc e o fe t e r na ll i vi nga bi l i t ya ndho wc a nmo de r nc o r po r a t i o nma kel i vi nga bi l i t ys t r o nge r ?

Thi spa pe rwi l lt r yt oe xpl a i nt hes ubs t a nc eo fl i vi nga bi l i t ypo t e nt i a la ndi ns t r ume nt so fe t e r na l l i vi nga bi l i t y.Mos ti mpor t ante l e me nt si nc l udee nvi r onme ntmanageme ntandc or por a t e phi l o s o phy,C o r po r a t ee t hi ca ndc o r po r a t eva l uewhi c ha r epr e c i pi t a t e di nf unda me nt a l so fc o r po ‑ r a t i o n.Wes t ud ye s s e nc eo fe nvi r o nme ntma na ge me nta nds ubs t a nc eo fl i vi ngpo t e nt i a l . Theo b‑

j e c t i veo fe nvi r o nme ntma na ge me nti st oma kec o po r a t i o nl i vei nha r mo nywi t hi t se nvi r o nme nt , a nde t e r na la bi l i t yo fc o r po r a t i o ni st ode ve l o pe nvi r o nme ntma na ge me nta ndmo de r nma na ge 一 me nts ys t e m r a t i o na l l y( i . e. ,a bi l i t yo fl i vi ngpo t e nt i a lo fc o r po r a t i o n).

Ke ywor ds:Envi r o nme ntMa na ge me nt ,Li vi ngPo t e nt i a lo fCo r po r a t i o n,Co r po r a t ePhi l o s o phy.

1 .序

先 に我 々は企業 の 「環境管理 ( Umwe l t ‑ management ) 」 と 「 生活能力 ( Lebens f ahi g‑

kei t) 」 につい て, ミ ュー ラー ( Chri st of Mt i l l e r ) の所論 を検討 し,企業の 「 環境管理」

と「 生活能力」について基礎的考察を行 った。

その際,我 々はその考察の重点を彼の主張す る 「 環境管理」の内容 と 「 生活能力」 に対す る関連性 に置 き,彼が理解する種 々の概念規 定 と両者 についての基本的考察を行 った。彼 の理解する 「 生活能力」を内容的に明 らかに するためには,何 よりもまず彼の所論 を的確 に理解 しなければな らないか らである( 1 ) 0

本稿の課題は,以上の理解 に基づ き , 「 環

境管理」との関連 において企業の 「 生活能力」

を検討 している彼の見解をより明 らかにし, 企業の 「 生活能力」の具体的内容を解明す る

ことにある ( 2) 0

注)

( 1 ) 拙稿 「 環境管理 と企業の生活能 力 」 『 経営 と経済』

第85 巻第 3・4号 長崎大学経済学会 2006 年 参照。

( 2) 本稿で検討す るのは ミュー ラーの次の著書であ る。

なお,本書への参照お よび引用 は本文 中に ( )で 示す こととす る。

C. Mt i l l e r ,St r at e gi s c heLe i s t unge ni m Umwe l t ‑

ma na ge me nt ,Ei neAns at sz urSi c he nmgd e rLe ‑

b e n s f d ' hi gk e i td e sUnt e r ne hme n s . De rDe u t s c he r

Un i v e r s i t 畠 t s ‑ Ve r l a gWi e s ba de n1 9 9 5.

(2)

2. 環境管理における規範的問題

( 1 )環境管理 と基本的概念

ミューラーの課題は企業の 「 生活能力」を 解明することである。 この課題を達成するた めには多 くの準備作業が必要である。そこで 彼はまず,多数の文献を参照 しなが ら企業の 生活能力の解明に必要 と思われる基本的思考 について考察 し,多 くの概念を定義すること か ら出発する。重要な視点は,生活能力 と環 境管理 との密接な関係である。 企業の生活は, 変化する 「 環境 ( Umwe l t ) 」 へ適応 しなけれ ば不可能であるか らである( 1 ) 0

ミュー ラー に よれば ,「環境管理」 の課 題 は ,企 業 が 「環 境 と調和 して生 活 す る ( i nHa r mo ni emi tde rUmwe l tz ul e be n) 」

( S. 24 1 . )とい う目標の実現であ り,これが企 業の生活能力の一般的内容 と解 されている。

この ように,企業の生活能力は環境管理 と強 く結びついていると考 えられている。そこで, 我 々が ここで確認 すべ きこ とは,① ミュー ラーが展開する環境管理の解明 と,( 参環境管 理システムを構成する重要な概念に関するミ ューラーの定義 とそれ らの整合性の検討であ る。

まず, ミューラーは , 「 企業」をあ らゆる

「 利害関係者 ( St a ke ho l de r ) 」 , 「 利害者集団 ( I nt e r e s s e ns gr uppe n)」 あるいは 「 要求集 団 ( Ve r f or de r ungs gr uppe n) 」 か ら成立する

「 連合 ( Ko a l i t i on) 」 として捉える。 これ ら の集団の成員は 「 連合者 ( Ko a l i t i o n畠 r e) 」 と 称 され,企業 内部のそれ らと企業外部のそれ らとに区分 される。 ( 1 ) 企業内部の連合者は,

① 出資者 ( Ka pi t a l ge be r ) ,②協働者 ( Mi t a r ‑ be i t e r ) ( 管理者 ( Ma na ge me nt ) を含む)であ

り, ( 2) 企業外部 の連合者 は,①納入業者 ( Li e f e r a nt e n) ,②顧客 ( Kunde n) ,③競争者 ( We t t be we r b) である。 しか し,企業の外部

連合者はこれのみではない。 これ らは ミュー ラーが取 り入れた概念,すなわち企業の 「 環 システム ( Ums ys t e m)Ⅰ 」の構成者であ り, さらに環システム Ⅰを取 り囲む 「 環システム ( Ums ys t e m)Ⅱ」 が存在 し,それは,①経済 的セグメン ト, ②技術的セグメン ト, ③社会 ・ 文化的セグメン ト,④法律的 ・政治的セグメ ン ト,に区分 される 。 ( V g l ,S.32 f f . u. S.241 ‑ 242. )したがって,我 々は , 「 連合」 としての 企業の外部成員は決 して環システム Ⅰの構成 者だけではな く,環システムⅡの構成者 まで 拡大 される可能性があることに注意 しなけれ ばな らない。

次 に 「環境」 とは,上記の環 システム Ⅱ を取 り巻 く 「 生態的環 システム ( das6kol 0‑

gi s c heUms ys t e m) 」を意味する概念であ り, 簡単 に表現すればそれは 「自然 ( Nat ur )」

その ものに他な らない。企業を取 り巻 く存在 をま とめた概念 として ミュー ラーは 「外界 ( Umf e l d) 」 という用語を使用する。 したが って,彼が述べる 「 環境管理」 とは, 自然あ るいは生態的環システムを管理の対象 とする ものであって,その課題は 「自然」 という環 境を保護 し自然への負荷を軽減することによ って, 自然環境 との均衡を維持することであ り,これが環境 との 「 調和」の より具体的な 内容 となる。 また , 「自然環境」を含む外界 との均衡を維持することが 「 外界 との均衡の 維持」の意味であ り,これは 「 環境管理」の 職分達成の前提条件 と解 されている。具体的 にはそれは,外界の企業連合者の要求に適正 に応 え,彼等の要求を満足化させることであ る ( 2) 0 ( vg l . ,S.4 6 f f . )

ミューラーは,企業の 「 環境管理」を 「 守 りの環境管理 ( def es i vesUmwel t manage ‑ me nt ) 」 と 「 攻めの環境管理 ( o f f e ns i ve sUm‑

we l t manage me nt )」 とに区別す る。企業の

生活能力の増大のためには,環境変化に受動

(3)

的に対応する単なる環境順応 にすぎない 「 守 り」の環境管理ではな く,環境その ものを自 企業 に有利に変化 させ ようとする積極的な環 境適合,すなわち 「 攻め」の環境管理が求め られ,それは企業戦略の一つの現れ として理 解 される ( 3) 。なぜな らば,企業の維持 ・発展 とい う企業の最 も重要 と思われる 目標 に とっ て,環境管理は不可欠の戦略的手段 と解 され るか らである 。( Vg l . ,S.1 6 5 f f . ) そ こで,ミュー ラーは企業 の生活能 力を明 らかにす るため に , 「 攻め」の戦略的環境管理構想の考察か ら出発 し,経営的 「有効性 ( Ef f e kt i vi t a t ) 」 と経営的 「 能率 ( Ef f i z i e nt ) 」 とい う概念を環 境管理の基準 として設定 し ( 4) ,まず経営管理 の 「 倫理 ( Et hi k) 」 の問題 か ら考察 を始め る ( 以下,特別の事情がない限 り 「 環境管理」

とい う表現は 「 攻めの環境管理」を意味する と理解 されたい) 0

( 2) 環境管理の規範的領域 ( 丑 企業 と企業哲学

ミューラーによれば,環境管理はすべての 企業管理 と同 じくまず規範的領域 に関連 し, そ こで確定 された企業倫理か ら管理の形成過 程 が始 まる。「 攻めの環境管理の本質的前提 条件は,規範的領域 に求め られる 」 ( S.1 81 . ) . 環境管理 に限 らず企業管理 とって,規範的領 域 における基礎 は「 企業哲学 ( Unt e r ne hme ns ‑ phi l o s o phi e) 」 である。

環境管理 に関す る意 思決定 に とって大 き な意義 を持 つのは,管理者 の倫理 的 「態度 ( Ei ns t e l l ung) 」 であ る。企業倫理 は , 「 企業 哲学」 と 「 企業文化 ( Unt e r ne hme ns kul t ur ) 」

とに区別 され , 企業哲学」 とは,管理者の 基礎的 ・倫理的態度であ り,管理者の倫理的 な意図的行動 によって生 まれる企業の本質的 な 「 意味 ( Si nn) 」 を示す,準 「 企業倫理」 と

も称 され る概念であ る。「 企業文化」 とは,

時の流れ と共 に企業哲学か ら生まれる,意識 的であれ無意識的であれ,あ らゆる協働者 に よって共有 され,その企業 に とって支配的な

「 企業道徳 ( Unt e r ne hme ns mo r a l ) 」 である。

( Vg l . ,S. 1 81 . )

企業 哲学 とい う概 念 は内容 的 に しば しば

「 理想像 ( Le i t bi l d) 」 と同義 に理解 されるが, 理想像 は企業文化 と企業哲学 の問 に置 かれ る,企業文化を企業哲学 に一致 させ ようとす る 「 用具 ( I ns t r ume nt ) 」である。企業哲学や 企業文化は,あ らゆる企業行動の基礎 にある べ き 「 精神態度 ( Ge i s t e s ha l t ung) 」 であ り用 具ではない。規範的領域では,企業哲学 と企 業文化の内容の一致が努力されなければな ら ないか ら,両精神を架橋 し企業文化 を企業哲 学 に一致せ しめ る具体的 「 用具」が理想像な のである。企業の存在 とその活動 に 「 意味」

を与 え , 「どこへ ( Wo z u)? 」 とい う問題 に応 えるのが企業哲学であ り,それは例 えば 「ビ ジ ョン ( Vi s i o n) 」とい う姿で具体的に現れる。

( vg l リS.1 81 ‑1 8 5. )

この ように,企業哲学は本源的に価値問題 に関連するが,科学は価値の一般妥当性を求 めるか ら,価値 は一般妥当性を持つ倫理的基 礎 を求める。企業哲学では特定の経済倫理が 求め られ 企業哲学か ら経済倫理の本質的 メ ル クマール と決定値 が導 出される。それは,

「物 的 に正 当 な経 済 ( Wi r t schaf t esach‑

ge r e c ht ) 」 , 「 人間的に正当な経済 ( Wi r t s c ha f t e me ns c he nge r ec ht ) 」 , 「 社会的 に正当な経済

( Wi r t s c ha f t ege s e l l s c ha f t s ge r e c ht ) 」 とい う 倫理的命令であ り, これ らが企業の存在 に意 味を与 える価値 である ( 5) 0

企業哲学 とビジ ョンは意図された管理活動

であ り,時の流れの中で成立する企業文化 と

は異なるか ら,両者の間には相違 が生ずる可

能性がある。 この場合 に,企業文化 を企業哲

学の方 向へ形成 してい くことが管理の職分で

(4)

あ り,企業哲学のコミュニケーシ ョンの手段 が 「 理想像」である。 自然環境保護は三つの 経済倫理 と共 に注 目すべ き経済倫理的価値で あ り,企業哲学の価値 カタログに企業の環境 正当性 ( Umwe l t ge r e c h t i c h ke i t ) とい う価値

が加 えられる 。 ( Vg l . ,S.1 85 f f . )

ミューラーは,企業哲学 について最後 に, 次の ように総括する。

「したがって,管理の課題は環境正当的行 動 をも引 き出す企業哲学を作 り出す ことであ る。 これは理想像によって伝達 され,企業文 化 を作 らなければな らない。それ故,規範的 な,価値的な, よって質的な管理の活動 に数 え られなければな らないか ら,管理の特殊な 活動が ここに成立する。 この環境正当的行動 は,その時,管理 によって生 かされ,次いで あ らゆる協働者の思考慣行 になる,あ らゆる 人 々の 自明の規範である 」 ( S. 1 84 ‑1 8 5 . ) 0

( ∋ 環境管理 と企業文化

文化 について ミューラーは次の ように定義 する。「 一般的に 『 文化』は人間集団によって 学習 され,受け入れ られている,そ して, こ の社会集団は明 らかに別の集団か ら区別 され ている,価値観念,行動規範な らびに思考 ・行 動方法の一つのシステムである 」 ( S.1 9 0. ) 0

この文化概念に従 えば,文化は人間の共同 生活 に とって決定的な価値概念であ り,具体 的な人間の共 同生活の場への応用が重要 にな る。企業 とい う共同生活において も,意識的 にあるいは無意識的に形成 された文化,すな わち 「 企業文化」が存在 している。それは企 業の構成員に影響を与 え,企業のアイデソテ テ ィを確認 させ,過去 と現代の非公式的統合 を生みだ し,共 同生活の基礎 を形成する と同 時 に,外部社会 との境界 を作 り出す 。 ( Vg l . , S.1 9 0‑1 91 . )

具体的に表現すれば,企業文化 とは実際に

生 きている価値態度,規範,思考態度 と慣習 が総合 された,企業の現象形態を内外か ら特 質づける 「 準特徴」であ り,企業の重要な道 徳観念が反映 された ものである。企業哲学 と 比較すれば,企業文化は企業の発展の結果 と して無意識的にも成立 し,意識的に形成 され る企業哲学 と一致 しない可能性 も生まれ る。

倫理か ら企業哲学が定義 される とすれば,企 業文化は企業における道徳を示 している。管 理の課題は,企業哲学の倫理的基本立場を企 業文化 に移転することであ り,それは企業文 化が企業の価値 を統合するとい う意義を持つ

ことを意味する。

図 1は, この ような企業哲学,理想像,企 業文化な どの関連性を示 している 。( Vg l リ1 91 . )

企業哲学は,それが企業文化に沈殿 してい なければ何の効果 もない。 しか し , 「プラス の企業文化は,情緒的に印象づけ られ,創造 的で,未来志向的で,外界 ・エネルギー ・社 会意識的である。そこで,規範的活動 によっ て,企業倫理 を企業道徳 に,換言すれば企業 哲学を企業文化 にするべ きである 」 ( S.1 92 ) 0

企業哲学 によって環境管理の必要性が認識 されたな らば,生態的な企業哲学 を生態的な 企業文化 に移行 しなければな らない。その時 問題なのは,環境管理の前提 となる環境志向 的な理想像を確立する といった量的な活動で あ り,多面的で企業特殊的な可能性である。

( Vg l . ,S.1 9 3. )

ミュー ラーはホ ッへソペ ック ( W. Hopf ‑

e nbe c k) ( 6) に よ りなが ら,生態志向的企業哲 学 を生態志向的な企業文化へ と促進する要素 を次の ように示 している。

1 ) 生態 に敏感 な企業指導 :管理者の役割は 手本 を示 す こ とであ る。 それ に よってあ らゆ る階層 で学 習過程 が始 ま り成果 が媒 介 され る。生 き残 り行動 は生態的 な価値

と相応 しなければな らない。

(5)

図 1 :企業文化の統合作用 ( S.1 9 2 . )

2 ) シンボルの設定 :シンボルは文化 ・芸術 あ るいは人 間行動 とな って現 れ る

には無数の可能性がある。

3 ) 体験 による行動変化 :例示的に掲げれば, 公開表彰,教育計画の変更,会社 イメージ への協働者の誇 りな どがある。

この ように,環境管理の構築 に作用する要 因はた くさん存在する。 しかし,環境管理は ゆっ くりと, しかも企業特殊的に構築 されな ければな らない。成功裏 に伝達 されるのは生 きた文化のみだか ら,企業文化は急速 に形成 されず作用 もしない。

ここで重要なことは,企業哲学,戦略的理 想像,企業文化の内容 を持続的に確認するこ とである。それ らを現実化することが管理の 職分である 。( Vg l . ,S.1 9 3 ‑ 1 9 4 . )

以上が,環境管理の規範的領域 に関するミ ューラーの所論の概要である。

荏)

( 1 )拙稿 「 環境管理 と企業の生活能力」参照。特 に, 6. 企業の 目標 と生活能力 ,3 3 8 頁以下 参照。

( 2) 拙稿 「 上掲論文 」 6. 企業の 目標 と生活能力,特 に 3 3 9 頁以下 参照。

( 3 ) 藻利教授は,ゴットル ( F. Ⅴ. Go t t 1 ‑ 0 t t l i l i e nf e l d) の 見解を基に,企業の環境適応を受動的な環境 「 順応 ( a npa s s ung) 」 と積極的な環境 「 適合 ( e i npa s s ung) 」 とに区分 しているが,前者は 「 守 りの環境管理」に 後者は 「 攻めの環境管理」に対応するもの と解 され

る。 これについては,以下を参照されたい。

藻利重隆 「 企業 と環境 」 『国民経済雑誌』第 1 42 号 第 2 号 神戸大学経済経営学会 昭和 55 年 ,

4 企業 と環境 ,8 頁以下。

( 4 ) 拙稿 「 上掲論文 」 5. 経営経済学 と環境 , ( 2)「有

効性」 と 「 能率」 ,3 3 0 頁以下 参照。

(6)

( 5 ) Vg l リMt l l l e r ,α. α . 0. ,S. 1 9.

拙稿 「 上掲論文 」31 3 頁 ‑ 31 4 頁 参照。

( 6 ) Vg l. , W.Ho p f e n b e c k ,Umwe l t o r i e nt i e r t e sMana ge

me ntandMwk e t i n g ,La n d s b e r g/ Le c h 1 9 9 0 , S. 1 2 8 f f .

3. 環境管理とその用具

( 1 )環境管理の特徴

① 横断職分 としての環境管理

環境管理は一つの完結 した管理システムで はな く,他のあ らゆる完結的管理システムの 全てに貫徹する環境保護思考が具体化 された ものである。それは,あたかも人間の肉体の 一部 を切断 した時に,その切断面 に必ず見出 しうる血管 と流 出する血液のご ときものであ る。血管は,人体のあ らゆる組織 に血液を循 環 させ ることを通 して各組織 を活性化 させ, 人間の肉体を維持 ・強化 しうる重要な機能を 持つ。環境管理は,まさにこの ような生命体 における血管 と血液のご とき役割 りに相当す る機能を持つが故に, ミューラーやシ ュテ‑

ガ‑ ( U. St e ge r ) は環境管理 の役割 を指 し て 「横断職分 ( Que r s c hni t t s a uf ga be) ( 1 ) 」 と 呼ぶ と解 される。血管や血液の循環 が衰 えれ ば,それはやがて人体その ものq) 生命を脅か す と同 じように,環境管理を活性化 させなけ れば企業の生命力 も衰 え,やがて企業の死を 迎 えることは必然である。 ミューラーが 「 環 境管理」の中に企業の 「 生活能力」の鍵 を見 出そ うと試みているのは,まさにこの ような 重要な機能を環境管理が持 っているか らに他 な らない。

② 環境管理の用具

環境管理はその特殊性か ら,環境保護思考 を具体化 し遂行 しうる用具が必要である。用 具な き思考は空虚な企業行動の空転 をもた ら すだけであ り,それ と同様 に思考な き用具の

みの企業行動 もまた迷走 をもた らすだけにす ぎない。環境管理 に とって必要なのは,量的 にも質的にも適切な情報である。まず, 自企 業に関する全体状況を把握 しうる情報が必要 である。 ミューラーによれば,特 に生態的環 境に関する情報が必要であ り,それ らの情報 から得 られるリスク情報 は重要な副次効果で あ る。 これ らの情 報 は , 「環 境 監 査 ( En‑

vi r o nme nt a l ‑ Audi t i ng) 」 に よって獲得 され 発 見 され た リス クは 「リス ク管理 ( Ri s k‑

Ma na ge me nt ) 」 に よって対応せ しめ られ さらに環境管理 を規則化 し操作する 「コソ ト ロー リング ( Co nt r o l l i ng) 」 が, ミュー ラー によって環境管理を支援する大切な用具 とし て挙げ られている 。 ( vg l . ,S.1 9 5. )

( 2) 環境管理の用具 としての環境監査

① 環境監査の必要性

ミューラーによれば, 環境管理の第一歩は, 環境に関する現在の企業状況の確定である。

状況分析か ら生態的 リスクが発見で き,直ち に取 りかかるべ き行動が導出で きる。得 られ た基礎データは,環境管理のあ らゆる方策 に 対する意思決定の基礎 として役立つ。環境監 査は環境管理の導入時のみな らず,継続的に 実施 されるだけでな く,監視 という意味で規 則的に行われる。 しか し,環境監査は,環境 管理の重要な用具 と解 される環境 コソ トロー リング ( Envi r onment ‑ Cont r ol l i ng) とは異 な る特徴を持つことが注意 されなければな らな い 。( Ⅴg l, ,S. 1 9 5. )

環境監査はその提 出先の違 いに応 じて二つ の形態 に区別 され る。 その一 つは 1 )内部的 環境監査であ り, これは トップマネジメン ト

に提 出され,企業内外の専門家 によって実施

され る。 もう一 つは 2) 外部的環境監査であ

り,これは企業外部の組織 ( 保険会社,銀行,

役所な ど)に提出され,通常は企業外部の専

(7)

門家によって実施される 。 ( Ⅴg l. ,S.1 96 11 9 7. ) 外部監査 については国際的統一化のために 既にい くつかの基準が公表 されている。外部 と内部の環境監査は提出先が異なっているか ら,その内容 も異な ってい る。「しか し,結 局,両者 に とって問題なのは,当該企業 にお け る環境管理 の状態 に関す る情報 であ る」

( S. 1 9 7 . ) 。環境管理は環境 に関連する真実の 企業状況が伝達 されることを求めるか ら,そ のためには真実のコミュニケーシ ョンが要求 される 。 ( Vg l リS. 1 9 7‑1 9 8. )

環境監査の必要性はその 目標 によって明確 に示 され る。「あ らゆる環境監査の 目標 は, 一般的には,潜在的な環境被害を回避するた め,あるいは既 に生 じている環境 リスクの原 因を認識するため,次にそれ らを除去するた め,あるいは評価の歩みが遅 くて も企業の生 態的物的関係を もた らしうるためにも,企業 の生 態 的構 成 を調 査 す る こ とで あ る 」 ( S.

1 9 8 . ) 0

② 環境監査の内容 と用具

環境監査の内容は,1 ) 一般的に共通する内 容 と,2) 拡大 された内容の二 つ に分 け られ る。 1 )はその内容が公的機関や政府,あるい は企業 同士 に よる自主的な規則 で決 め られ るもので,企業は これ らに従 って法的妥当性 を持 つ環境監査 を行 わなければ な らない。

2 ) は拡大 された環境監査で,戦略的環境管理 はその戦略 にしたがって企業独 自の内容を持 つ環境監査 を実施する。最初に,環境管理を 実施するか否かの決定が求め られる。決定の ための用具 として ミュー ラーが提案 す るの は ,3) 「チ ェック リス ト方式 ( Chec kl i s t e n‑

ve r f a hr e n) ( 2) 」 である 。 ( Vg l . , S. 1 9 8‑ 2 0 1 , ) また,企業のインプ ッ トとアウ トプ ッ トは 同一 の基準 で検査 されなければな らないか ら, この問題 については, I4 )「 生態的財務諸 義 ( Oko bi l a nz ) 」 が有用である。それは,輿

品の量的 ・質的な視覚化 と環境 における企業 過程 を明 らかにする。生態的財務諸表は,一 方では企業の生態的在高 と監視 に役立ち,他 方では環境情報 システムの中核 とな り,生態 的データベース として役立 つ。 ところで,環 境情報システムの構築は環境 コソ トロー リン グの中心課題の一つであるか ら,生態的財務 諸表は環境監査 と環境 コソ トロー リングの間 にある用具上 の交差点 と解 される 。 ( Vg l . ,S.

2 0 0‑ 2 0 1 . )

( 3)環境管理の用具としての生態的 リスク管理 ( ∋ 環境管理 とリスク管理 ( Vg l リS. 21 0‑21 1 . ) 生活体 としての企業が何 らかの要因によっ て,その生活が脅 かされるのは可能な限 り回 避 されなければな らない。それは企業の 「 生 活能力」の低下 をもた らしうるか らである。

そ こで環境管理は,その ような危険要因すな わち 「リス ク ( Ri s i ko) 」 に対応す る 「リス ク管理」を持たなければな らない。

ミューラーは,環境管理は現在の企業の生 態的 「 実際 ( I s t ) 」 状態 を可能な限 り包括的 かつ正確 に把握 し分析することか ら出発すべ きことを述べたが, この実際状態の分析か ら 除去 されるべ き生態的 リスクが明確 になる。

「リスク」は 「 機会 ( Cha nc e) 」 の対概念で あるか ら, これ らは常 に相互に置 き換 えられ 得 る。そ こで,まず, リスクを認識 し,その 対応策が投入 されてか ら初めて機会志向的な 生態的要請 を考慮することが賢明である。

‑ \̲

② リスク管理の機能 ( vg l . ,S.21 1 ‑ 21 2. ) ミューラーによれば, リスク とは 「 錯乱過 程 に基づ き外界機能の達成を危険にするよう に思われ る数多 くの可能性 」 ( S. 211 . )を指す

「 動態的概念」である。あ らゆる混乱過程は

企業 とその外界 との間の均衡 を妨害 す るか

ら,それは企業の長期的生活を も危険にする

特別 に重要な もの として認識 される。

(8)

「リスク管理の 目標は,企業 目標 を多 くの 成果を もって達成するように保証すること, すなわちそれ ( 企業目標一菅家) と結びついて いる リスクを克服すること 」 ( S. 21 1 . ) である。

重 要 な の は完 全 で は な い として も 「安 全 ( Si c he r he i t ) 」 の達成 であ る。 しか しそれ だけではない。安全は常 に危険 と隣 り合わせ であるか ら,両者の変化の関連を常 に監視 し ていなければな らない。 したが って , 「 企業 は 常 に 均 衡 化 さ れ た 『安 全 性 対 照 表 ( Si c he r he i t s ‑ Bi l a nz ) 』 」 の達成 を求めなけ ればな らない 」 ( S.21 2 . ) 。 リスクは計算可能 な 「 客観的 リスク」 と心理学的な 「 主観的 リ スク」があ り,意思決定者は主観的体験 に基 づ く後者を重要視する傾向があることに注意

しなければな らない。

③ リスクの局面 と方策 ( vg l . ,S.21 2 ‑ 21 4. ) リスク管理 における安全過程は三 つの局面 に分解 され, これ らの局面は常 に流れていな ければな らない, とハーラー ( M.Ha l l e r ) は述べている ( 3 ) 0 1 ) 局面 A では企業者の期待 が意識的に作 られ ,2 ) 局面 B では全体関連 に おけ る リス クが質的 に評価 され意義 づ け ら れ,3) 局面C では具体的な安全方策の意思決 定が行われる。

安全方策は実行 されなければな らないが, リスク克服の段階は,1 )リスク回避 ,2 ) リス ク減少 ,3 ) リスク転嫁 ,4 ) リスク負担 に分け られる。 これ らの段階はそれぞれ一長一短 を 持ち,一つの方策で十分であることはほ とん どないので,その時の リスク状況 に応 じて こ れ らが組み合わされて実行 されるのが普通で ある( 4 ) 0

④ リスク管理 と環境管理

ミューラーによれば,環境管理で利用 され る リスク克服方策は , 「リスク回避」 と 「リ スク減少」である。 さらに,環境監査が認識 する情報 は放棄で きない。確認 もされず意識

もされない リスクには対応の しょうがないか らである 。 ( Vg l . ,S.21 5 . )

戦略的 リスク管理では,まず第一に 「 予測 ( Er wa r t ung) 」 が説 明されなければな らな い。予測は環境管理のみな らず,企業の一般 的な行動 をも基礎づける。 リスク政策では企 業の 「 生活 目標」に とって必要な予測が形成 される。環境 目標は この生活 目標 に とって重 要な立場 にあるので, 自然環境は リスク管理 に とって満たされるべ き予測の一つである。

( V g l . ,S.21 5 . )

生態的 リスクに とって 「 試行錯誤」 という 伝統的原則は利用で きない。保険は,保険を 掛けた企業 に とっては有意義であるが,財務 的な保護 に過 ぎない。 しかし,環境管理構想 に とって,保険は追加的な保護 となることが で きる。あ らゆる可能性 を汲み尽 くす ことは, 大抵環境監査 によって検査 され る 。 ( Vg l . ,S.

21 6 ‑ 21 7 . )

ミューラーは,生態的 リスクの結果につい て 「 事故 ( St o r f a l l ) 」 とい う概念を重視する。

事故に対 して環境管理 には二つの戦略 しかな い。第一は リスクの回避であ り,第二は リス クは減少 させ うるのでポー トフ ォリオ とい う 広い領域に移転 させ ることである。客観的 リ スクに対 して,主観的な リスクも環境領域で は重要な役割を演ずる。両者の相違 を明確 に するために, ここで もポー トフ ォリオ技術が 利用 される 。 ( Vg l . ,S.21 7 1 2 2 1 . )

( 3)環境 コン トロー リングと環境管理 ミューラーは,環境管理 における用具 とし て 「 環境 コソ トロー リング ( 5 ) 」を特 に重視す る。 コン トロー リングは管理 の仕事 ではな く,企業を安全 に未来に導 く管理の仕事を支 援 し補完する活動である。 この活動 も環境管 理のための準備 と位置づけ られる 。 ( Vg l . ,S.

2 2 1 . )

(9)

① 環境 コソ トロー リングの活動領域 彼 によれば,環境管理の戦略的活動 におけ るコソ トロー リング構想の活動領域は,環境 に対する補完的で支援的な活動である。環境 管理 は企業の全体的で統合的な観察方法を求 めるが,同時に企業 と環境の相互依存性は企 業内の環境関連的過程の考察を求める。環境 管理 は企業のあ らゆる個別的な要素によって 実施 されるが,すべての個別的要素は専門的 で組織的な支援が必要である。 さらに全体的 な概観を保証 しうる職位 も形成 されなければ な らない。「その哲学 か ら全体の企業 を包括 するコソ トロー リングの構想は,コソ トロー リングがその環境責任 を保証する場合にも, 専門的で組織 的 に補完 で き支援 で きる よう に,一連 のアプローチ項 目を提供 す る 」 ( S.

2 2 2 . ) 0

ミューラーによれば,コソ トロー リング構 想は,その職能か ら見て環境管理の実現化の 支援 に適 している。 コソ トロー リングはあ ら ゆる管理領域で適用 されるので,環境管理 に 対 して もそれは もっぱ ら専門的で組織的な助 言に よってなされる補完的 ・支援的活動であ る。 また,その職能を保証す るための組織的 対応 も必要である。 コソ トロー リング職位が 設置 され , 「コン トローラー ( Cn t r o l l e r ) 」 あ るいはコン トロー リング部門 として明示化 さ れる。 しかし,コソ トロー リングは職能的概 念なので,環境管理では 「 環境 コソ トロー リ ング」 とい う名の下 にその職能が総括 され, 必ず しも組織 的制度 を必要 とは しないが,

「 環境 コン トローラー」 とい う職位が設置 さ れ うる 。 ( Vg l . ,S.2 2 3‑ 22 4. )

( 参 環境 コン トロー リングの職能

環境 コソ トロー リングの職能は環境監査の 職能 と類似 しているが,それ らは同一の活動 ではない。監査は,現在関連的で,与 え られ た規範 にシステムが相応 してい るかを検査

し, 規則的に内外の専門家 によって行なわれ, コソ トロー リング も検査の対象 となる。 コソ

トロー リングは,方向を示す未来志向的活動 であ り,適切な企業管理の体系を必要 とし, 意思決定を準備 し助力することで,管理 を補 完 し支援す る。 したが って,「コソ トロー リ ン グは常 に利用 され る企業 内部 の計画 ・操 作 ・統制 の構想である 」 ( S.224. ) 。環境 コソ トロー リングは 1 ) 情報機能 ,2) 操作機能 ,3) 調整機能 ,4 ) システム発展機能 とい う四つの 基礎機能 を持 っている 。 ( Vg l . ,S.2 2 4‑2 2 5. )

ここで我 々が強調 しておかなければな らな いのは,環境監査をは じめ環境 コソ トロー リ ングに至 るまで,これ らは環境管理の 「 用具」

であ り,環境管理その ものではない とい うこ とである。換言すれば, これ らの用具の職能 は環境管理 を実施する管理者の意思決定 を準 備 し,支援 し,補完すること,すなわちいわ ゆる 「 促進職能 ( 6) 」 に相当するものであるこ とを我 々は しっか りと認識 しておかねばな ら ない。「 企業の職能的構造 ( 7) 」 におけ る位置 づけを明確 に自覚 しなければ,それは企業活 動の実践 に混乱を招 き,意 に反 してその生活 能力の低下を招来 しかねないか らである。

荏)

( I ) Vg l. , Mt i l l e r ,a . a . 0. ,S.1 8 0.

Ⅴg l. ,U.St e ge r ,Umwe l t ma na ge me nt ‑ E da hr un ge undZ ns t 7 mme nt ee i ne rumu J e l t o r i e nt i e r t e nUn‑

t e r ne hme ns s t r at e gi e ‑ ,2.Auf l . ,Fr a nkf ur t 1 9 9 3 ,S. 6 5.

( 2 ) チ ェック リス トおよび生態的財務諸表の詳柵 につ いては以下を参照の こと。

Mdl l e r ,a . a. 0. ,S.2 01f f .

( 3 ) vg l . ,M.Ha l l e r ,Ri s i ko‑ Ma na ge me ntz wi s c he n Ri s i ko ‑ Be he r r s c hungundRi s i kodi a l o g.I n O f W( Hr s g. ) ,Umu J e l t mana ge me nti m S Pan‑

nmgs f e l dz wi s c he nOk o no mi eundOk o l o gi e , Wi e s ba de n1 9 91 ,S.1 7 5f f .

( 4) 環境管理 とリスク管理 については,さ らに次を参

照の こと。

(10)

拙稿 「 環境管理 と 『 環境志向の生産管理論 』 」 『 経 営 と経済』第 8 4 巻第 2 号 ,7 環境戦略 と環 境統制 ,2 3 5 頁 以下。

S t e g e r , a . a . 0. ,S. 2 5 5 1 2 6 0.

( 5) コソ トロー リングについては,以下を参照 された い。

小津優子 「ドイツ企業におけるコン トロー リング の展開」経営学史学会 ( 編)『ガバナンス と 政 策 一経営学の理論 と実践』 文 展 堂 2 0 0 5 ,1 5 0 真一 1 5 8 頁。

( 6 ) 促進職能に関 しては,次を参照されたい。

藻利重隆 『 経営管理総論 ( 第二新訂版 ) 』千倉書

房 昭和 4 0 年, 第七章 経営管理 と管理事務, 3 5 3 頁以下。

( 7 ) 企業の職能的構造 については,以下 を参照 された い。

藻利重隆 『 上掲書』第五章〜第七章 ,2 4 5 頁以下。

拙稿 「 環境管理 と 『 環境志向の生産管理論 』 」 『 経 営 と経済』第 8 4 巻第 2 号 2 0 0 4 年 ,2 4 4 頁。

4 .環境管理 と有効性

( 1 )有効性 と環 システム

① 監視システム と企業戦略

ミューラーは,企業が 「 環境 と調和 して生 活する」 という要求に応 える環境管理の課題 の達成に関連する基準 として,次の二つの概 念を設定する.外界の連合集団の環境関連的 要求の持続的達成を 目標 とする 「 有効性」基 準 と,内部連合者の要求の持続的達成を課題 とする 「 能率」基準がそれである。考察の前 提 として確認 されるべきことは,環境管理 と 企業の基礎戦略 との調和 , 「 攻め」の基礎戦 略 と環境管理,外界を構成する 「 環システム ( Umsystem) Ⅰ」 と 「環 シ ス テム ( Um‑

syst em) Ⅱ」 お よび後者 のセグ メン トであ る( 1 ) 0

ミュー ラーは,外界 をポー ター ( M.E.

Por t er )の戦略的構想を基礎 において考察 ・ 分析する ( 2) 。環システム Ⅰの要請 に相応する

戦 略 的活 動 は 「市 場 関連 的活 動 ( markt‑

be z oge neLei s t ungen) 」 と称 され 環システ ム Ⅱの集 団の要請 に志 向す る戦略的活動 は

「 社会関連的活動 ( gesel l schaf t s bezogene Lei s t ungen) 」 と称 される。 ( vg l . ,S.2 41 ‑ 2 4 2 . )

② 市場関連的活動 と基本戦略

市場関連的活動は,三つの市場関連的外界 集団の要求を満たす ことに役立たなければな らないか ら,生態的構成部分がポーターの分 析に取 り入れ られ,コス トリーダー ( Kos t e n‑

f 血 r e r s c haf t ) 戦略 と差別化 ( Di f f er e nz i e r ung) 戦略に環境保護の方向を持 った環境管理が適 合するか否かが検討される。

顧客には環境正当性を持 った社会の中心的 価値 に相応する製品を提供 し,納入業者から は確かな期 日に製品の環境正当性に対応する 環境正当的な原材料が提供 され,競争者には 体系的な競争遵守 と同等の方策の実施が要請 される。 この ように , 「各企業は製品の戦略 的位置づけに際 して,追加的に環境次元を考 慮 しなければな らない 。 」 ( S. 2 4 4 . ) という生態 的要請 に注 目しなが ら部 門構造 が分析 され

る。

生態的分析に役立つのは,1 ) 現在のあるい は潜在的な顧客は どのような環境関連的要請 を持つのか ? 2) 納入業者の生産 と製品は環 境正当性 に相応す るのか ? 3) 競争者は生産 過程 と製品について どの方向に環境正当性の 活動 を向けるのか ? 4) 企業は環境要請 によ って潜在的競争者 に脅 かされるのか ? 5 ) 企 業には どのような代替的製品があ り,製品は どの ような生態的付加価値 を提供 で きるの か ?とい う問題である。

ミューラーが利用するポーターの戦略は, 1 )コス トリーダー戦略 と 2) 差別化戦略であ る。

1 )コス トリーダー戦略 とは , 「 能力ある協働

者の助力の下,生産性向上の革新並びに重

(11)

要な競争者の水準以下 まで単位 コス トを低 下 させ,低価格政策で競争優位を実現する こと 」 ( S.245. ) である。その際,中心に立 つのは価格であ り,製品の質は保証 されな ければな らない。

2 ) 差別化戦略 とは , 「 価格プレミアムによっ て支援することがで きる追加効用 を競争製 品 と比較 して顧 客 を創 造 す る こ と 」 ( S.

246. )であ る その際,追加 コス ト以上 に 高い価格を持続することが 目標 となる。

ミューラーに とって も我 々に とって も,問 題は, どれほ ど環境管理構想が これ らの戦略 の基本装置 と両立するか,である。結果 とし て示 されるのは,環境管理では持続的な両立 が実現 し,生活 目標 について両戦略は利用可 能である, と言 うことである。その場合,本 質的問題 は,生態戦略的製品管理 ( 6kos t r a‑

t e gi s c he sPr odukt ma na ge me n t )の実現 にあ る 。 ( V g l リS. 242‑246, )

( 2 ) コス トリーダー戦略 と環境管理

① 「 守 り」の環境管理 とコス トリーダー ミューラーによれば,コス トリーダー戦略 は企業の持続的な生存確保をもた らす。 この 戦略は,製品の標準効用 に対する需要が圧倒 的な場合 にのみ有効であるか らである。 しか も,顧客が,生態的追加 コス トに正当な価格 プレミアムを支払 う用意がな く,生態志向的 新製品に低い単位 コス トがもた らされる場合 にのみに限定 され る。「この守 りの構想は こ の研究では もちろん倫理的理 由か らだけでは な く,経済的理 由か らも放棄 される。なぜな らば,環境 とい う SEF の要請 を持続的に追求 しないか らである 」 ( S.248 . ) 0

② 「 攻め」の環境管理 とコス トリーダー

「 攻め」の環境管理の場合には事態は異な る。 この環境戦略構想では,生態戦略的生産 管理 に沈殿す る予防 と革新が行われる。 これ

により,生態的 コス トの削減 よりも多 くの機 会が開かれる。成果力 とコス ト低下力が構築 され,潜在的 リスクが減少する。両戦略の方 向がまだ一致 しない として も,コス ト低下は コス トリーダー戦略 とは少な くとも対立 しな い。環境管理を推進するあ らゆる企業 に とっ て,それは実施が もた らす副次条件の意味で も実用的である。 コス トの最適化努力は,逮 合者 「出資者」の要求を満足 させ るに必要な 副次条件である。環境管理構想 とコス トリー ダー戦略の調和 には, この構想が新製品が低 い単位 コス トの実現を示す必要があるが, ミ ューラーによれば,それは,環境管理の哲学 とそれに関連する時間 ・コス ト定義か ら説明 される . ( Vg l . ,S ,248. )

彼 に よれば,環境管理 の 出発 点 は企業 の

「 生活 目標」の持続的実現であ り,時間次元 ノ として, コス トリー ダー とは持続的 な コス ト ・価格 リーダーである と理解 される。 この 場合,コス トとは生産過程で発生する実際の コス トだけでな く,実現 されなかった環境方 策の機会原価 も含んでいる。環境法 と環境設 備が先鋭化 し,環境 コス トの内部化が増大す る と,実際の環境 コス トと機会費用 も増大す る。 また, コス ト地位は環境保護 な しで基礎 づけ られているので,コス トリーダーの地位 は極めて危険になる。両戦略の結合 に とって 重要なのは,環境保護標準までの時間 と規範 の圧力の下で,環境保護要請 とい うマ イナス の コス ト作用の達成の先取 りであ り, これで 環境管理はコス トリーダーの地位 を持続的に 支配す ることがで きる。環境管理はた とえ短 期的 コス トが不利 にな って も, コス トリー ダー戦略 と一致で きる 。 ( Ⅴg l. , S . 249. )

コス トリーダー戦略は調達市場を も引 き入

れなければな らないか ら,両戦略の結合は納

入業者 を も関連 させ る。 また,製品管理 に関

して も,環境正当性は最初か ら製品に 「 組み

(12)

込 まれる」。 この ように,環境正当性は調達 から販売まで確保 されなければな らない。 こ の方が被害への対応 コス トは事後処理 よりも 常に少ないか らである. コス トリーダー戦略 でも,環境管理は生態戦略的製品管理に貢献 する。製品生産過程は環境正当的であ り,こ の環境正当性は製品開発でコス ト最適に実現 されているか らである。「 環境管理は,場合 によっては実施上のコス ト不利が購入時に引 き受け られなければな らない としても,コス トリーダー戦略を持続的に確保することを助 けるので,その活動はコス トリーダーの戦略 に とってもその所を得 る 」 ( S.2 5 0 . ) 0

( 3) 差別化戦略と環境管理

① 差別化戦略の意義

ミュー ラー に よれば,差別化戦略 とは,

「 追加的効用を創造することで,顧客には競 争者製品 と比較 して追加的な価値が作 られ, 市場における競争関連の下で価格プレミアム すなわち競争者 と比較 してより高い価格が支 払われるように,異なる販売需要を競争者 よ りもより良 く正当化 しようとす る 」 ( S ,250‑

25 1. ) こ とで あ る 。 環 境 効 用 は追 加 効 用 ( zus a t z n ut z e n) であ り,環境管理はまさに差別 化戦略 と見事に調和する。差別化戦略の意図 は,市場のセグメン ト化 によって競争的地位 を構築することであるか ら,製品の追加効用 は通常は品質的な長所であるが,環境管理 と 結びついた戦略ではそれは環境正当性への要 請 に志向する追加効用である 。 ( Vg l . ,S.250‑

2 5 1 . )

環境管理は,生態的要求 という機会 とリス クを革新的で攻撃的に結びつけ,製品に新た な品質要素を与え,競争優位を獲得する差別 化へその基礎を与える。差別化の可能性を発 見するには,製品の全体的な 「 生態的製品ラ イフサ イクル ( 6 ko l o g is c he rPr odukt l e be ns ‑

z ykl us ) 」 について研究 しなければな らない から,差別化の実現は生態戦略的な製品管理 によって行われる。差別化は,いかなる局面 であろ うとも潜在的差別化 が成立 しうる。

( Vg l . ,S.25 1 . )

② 生態的製品管理の意味

コス トリーダー戦略であれ,差別化戦略で あれ,環境管理 との結合の解決法は 「 製品管 理 ( Pr odukt mana ge me n t ) 」 にある。環境管 理を実施する場合には,環境正当的な生産過 程の質があってこそ環境正当的な製品が現れ るか ら,製品 と製造は当然なが ら常に統合的 に見 られなければな らない 。 ( Vg l . ,S.25 2. )

差別化の重点は,生態的な製品ライフサイ クルの様 々な局面にある。差別化の市場化で は,顧客は生態的に差別化された製品を認め 価格プレミアムを付けて購入するか ら, 通常, 差別化の重点は製品あるいはサービスについ ての公共性の議論にある 。 ( Vg l . ,S.2 5 2.)

結局,環境管理が差別化戦略の実現に とっ て意味があるのは,顧客に生態的要請から追 加効用 ( 生態的効用)を持 った製品が提示さ れて も,顧客がその製品に求めるのは 「 基本 効用 ( Gr undnut z e n) 」 を満たす製品である, とい うことである。「 差別化は常 に製品開発 の局面で構想 され,生態的製品ライフサイク ルのいろいろな局面で ‑ ‑ 実施 され る」

( S.252‑253 . ) 。環境管理 と差別化戦略は補完 的な関係にあ り,環境管理の結果は差別化戦 略に対立 しないし,さらに精錬化 されて新た な差別化能力が示 される 。 ( Vg l . ,S.2 52 ‑ 2 53 . )

③ 生態戦略的製品管理の課題

このように,生態戦略的製品管理の活動は

環境管理の重要な部分局面である, とミュー

ラーは捉えている。製品戦略は企業戦略から

導出され,環境志向性は常に企業戦略 と統合

された構成部分である。問題なのは , 「 生活

目標」に向け られ結合された環境志向的な企

(13)

業戦略であるか ら,論理的には製品戦略 も環 境 目標に志向する。 戦略的製品管理の中核 は, 次の二点である 。( V g l . ,S.2 5 4 . )

1 ) 生態的製品ライフサイクル と環境管理 生態戦略的製品管理は,製品関連的で生 態的な要請を含んでいる。考察の基礎 とし てポーターの価値連鎖が有用であ り,その 基礎 に置かれている生態的製品ライフサイ クル は拡大 された生態的価値連鎖 に応 じ て, i) 製品開発, i i ) 資源調達, i i i ) 製品 製造 ,i v) 製品利用, V) 廃棄, とい う五つ

の局面 に区分 され る。在庫 と運搬は i i)か らⅤ) までの全局面で発生する。図 2 は こ れ らの局面を示 している 。( Vg l . , S. 2 5 4 ‑ 2 5 5 . )

生態戦略的製品管理は,全局面で環境保 護思考をその構成部分 として統合すること である。その際,「損害発生 ( s c ha d s c h6 p‑

f ung) 」 も注意 されなければな らない。製 品管理によって,損害発生をも含めた製品 の生態的最適化が努力されなければな らな い 。( Vg l . , S.2 5 5 . )

図 2 :生態的製品ライフサイクルの局面 ( S.2 5 5 . )

l研究 .開発 運 ‑搬 と 在 庫

2 ) 生態的製品管理の内容的拡大

生態戦略的製品管理における重要な要求 集団は,環システム Ⅰの要素であるか ら, これ らの要求集団は製品管理 に組み入れ ら れる。生態戦略的製品管理は,環境管理の あ らゆる活動 と関連させ られるか ら,正常 な戦略的製品管理 よりも内容的に生態的構 成要素の分だけ拡大する。 この拡大は,環 境関連的な開発が生む製品 と環境正当的な 製品開発 という形で現れる。その部分的な 歩み として, i) 出発分析の成果集中, i i) 市場 ・競争者分析,i i i ) 製品戦略q) 確定, i v) 環境関連的製品の開発, Ⅴ) 市場参入オ

ブシ ョンq) 考慮,v i)市場参入,が考慮 さ れる 。( Vg l リS.2 5 5 ‑ 2 5 6 . )

以上が,環境管理における有効性に関する ミューラーの見解の概要である。

荏)

( 1 )これ らの概念お よび関連性 については,以下 を参 照 されたい。

Mt i l l e r , a . a . 0 "S. 4 1 f f ,

拙稿 「 環境管理 と企業の生活能力」 ,31 9 頁以下。

( 2 ) cf . ,M.E. Po t e r ,Co mpe t i t i v eSt y l at e g y :Te c hni q u e s f o rAnal ys i n gI ndus t r i e sandCo mpe t e t o r s ,Ne w

Yor k 1 980. ( 土岐 ・中辻 ・服部 訳 『 新訂 競争の

戦略』 ダイヤモン ド社 平成 7 年。)

(14)

5 .社会正当的活動と環境管理

( 1 )各セグメン トの要請 と環境管理

「 社会関連的要求集団」は 「 市場関連的要 求集団」 に影響を与 え,後者を通 して間接的 にあるいは後者を超 えて直接的に企業 に作用 を及ぼす。前者では各セグメン トに応 じて以 下の要請が生ずる,とミューラーは指摘する。

1 ) 経済的セグ メン ト :企業 は,戦略的で長 期的な生態 と経済 への行動 を可能 にす る, 国内外 において発展 し競争 力あ る公正 な 経済 的範 囲条件 を作 るよう努力すべ きで ある。

2) 技術的セグ メン ト :企業 は,立地の持続 的確保 とい う優位 な 目標 を持 ちつつ,経 営過程 において環境 関連的 な技術 を進歩 をさせなければな らない。

3) 社会的 ・文化的セグ メン ト :企業は,一 般 的 に社会 の価値観念 に相応 しなければ な らない。企業 には積極 的 な環境管理 の 実施 が期待 され, メデ ィア的意味 で重要 なのは,企業 が社会 に よって受 け入 れ ら れるか否かを決定するイメージである。

4) 法律的 ・政治的セグメン ト :企業 は,忠 共 的信頼性 を獲得 す るため に,生態 的責 任 を果 た し,政 治的意 思形成過程 に積極 的に参加 しなければな らない。

そ して,彼は, これ らのセグメン トの要請 は,次の ような管理 とその活動 によって満足 化 されなければな らない, と主張する。それ らは,①生態的協力管理 :経済的状況の満足 化, ②生態的過程管理 :技術的状況の満足化, ( 亘生態的公共活動 :社会的 .文化的状況の満 足化,④生態的政治管理 :法律的 ・政治的状 況の満足化である 。( V g l . , S.2 6 3 ‑ 2 6 4 . )

以下では, これ らに関するミューラーの所 論の概要を述べる。

( 2 ) 各管理の内容 と課題

① 生態的協力管理 ( 6 ko l o g is c he sKo o pe r a ‑ t i o ns ma na ge me nt )

経済的状況の本質的形成要因は,環システ ム Ⅰの構成要素であ り,経済的要請の中心的 要求集団である。 したがって,これ らと経済 的セグメン トの要請 との明確な区別は困難で あるが,重要なのは市場関連的活動 と一致す ることであ り,その特徴は,顧客,納入業者 および競争者 との協調であ り,マクロ経済的 な活動 と上位の責任の積極的実行が要請 され る。規範的局面では 「 社会的に正当な経済」

とい う命令が重要であ り,全体経済的に重要 性 を持 つ企業 には特別 な役割が現れ る。「 企 業の全体経済的な意義が大 き くなればなるほ

ど, それだけ連帯性原理 ( So l i da l i t 畠 t s pr i nz i p) ( 1 ) によってその時 々の企業 に対する社会的正当 性の命令は重要 になる 」( S.2 6 5 . ) 0

大企業の管理課題は, 環境要請 に関 して も, 発展力ある,内外 に競争力ある公正な経済的 範囲条件の方向への積極的影響であ り,影響 可能性が少ない として も特 に環境領域では利 用 されるべ きである。環境管理を持つ企業の 目標は,いつで も環境管理方策 と意思決定の 環境正当性を守 ることであ り,健全な企業の 発展は全体経済的な福祉を可能 にする範囲条 件を予則 させるか ら, これは健全な国民経済

において実現 される 。( Vg l . , S.2 6 5 ‑ 2 6 7 . ) ここで ミューラーが強調するのが 「コモン ズの悲劇 ( Al l me nde ‑ Tr a g6di e) ( 2 ) 」 である。

「 環境管理が直面する最大のマクロ経済的問 題 は, コモンズの悲劇 とい う現象 であ る」

( S.2 6 7 . ) 。 これは,共 同利害 よ りも個人利害 が優先 され,結果 として全体経済の低下をも た らす現象である。政治的権力はその権力で この悲劇 を阻止 しうるが,企業 に とっては

「 協調」 という特別な社会的責任が前提 とな

る。協調は,企業 に経済的で政治的権力がな

(15)

くて も必要な政治的 ・経済的影響 を行使 し得 る唯一の可能性であ り,それは部門内におけ る 「 戦略的同盟 ( s t r a t e gi s c heA l l i a nz e n) 」で ある。環境管理 における方法論的革新は協力 管理 を確立 し,顧客,納入業者そ して競争者 間に戦略的同盟を構築することである。 コモ ンズの悲劇を克服するためには,批判 を乗 り 越え,同盟が可能 となる条件 を作 り出さなけ れば な らない, とミュー ラーは主張 す る。

( Vg l "S.2 6 7 1 2 6 9. )

具体的な同盟 を 目指す場合,重要な要素は 正 しいパー トナーの選択であ り,選択 に必要 な 「フ イッ ト ( Fi t ) 」 が分析 されなければな らない。 フ イッ トには, 1 )基礎 フ イッ ト, 2 ) 戦略フイッ ト ,3 ) 企業文化的フ イッ トがあ るが,何 よりも企業文化的で戦略的なフ イッ トが有意義である。パー トナー間の相互信頼 も同盟の特徴であ り,同盟はさらに進んだ協 力の始 ま りにもな りうる。 ここでは, リスク 管理 は,生活 目標の達成 とその維持のために 持続的に守 られなければな らない 。( Vg l . ,S.

2 6 9 ‑ 2 7 0. )

② 生態的過程管理 ( 6kol og is c he s pr oz eR‑

ma na ge me nt )( vg l . , S. 2 7 2 ‑ 2 7 8 . ) 生態的過程管理は上述の協力管理 と密接な 関係 にあ り,また過程思考 において生態的原 価管理 とも関連する。生態的過程管理の 目標 は,企業がその立地 を環境要請の観点か ら持 続的に確保で きるように,企業の中を流れる 過程 を形成 す るこ とであ る。重要 なの は,

「 統合的技術 ( i nt e gr i e r t eTe c hno l o gi e) ( 3 ) 」

で しか要請は解決で きないか ら,全体の価値 創造 ・損害発生連鎖 にそった技術的で組織的 な問題 であ る。「 統合 された」 とは,資源 ・ 環境負荷が製品 と生産 により事前 に減少 ・回 避 されることを保証する「 用意原則 ( Vo r s o r ge ‑ pr i nz i p) 」 を意味する。

用意原則の実現は立地確保 に役立ち,生態

的製品管理へ統合化 された構成部分である。

あ らゆる素材の流れの過程的把握 と過程原価 計算への数字的転換が必要であ り,経営過程 の生態的最適化が 目指 される。最適化の意味 は価値創造 を守 り被害発生を最小化すること である。 これ らは相互 に結びついた技術的で 組織的な問題であ り,適切な組織形態が設立 されなければな らない。最適化は過程財務諸 表 に数量的に反映 され沈殿する。

ここに,経営過程の生態的最適化 とは生産 過程の生態的最適化 を意味する。 これは,原 料 ・補助材料の処理 と,処理 に必要な方式 と 経営財 とい う二つの問題領域 に分け られ,生 態的 目標方向か ら,資源美化計画,投入物の 高い評価度,損害が少ない生産 と製造 とに向 け られる。

生態的過程管理 には鍵の役割が与 えられて お り,生態的製品管理 と生態的過程管理は環 鏡管理構想では,環境正当的製品 と環境正当 的生産は共通 して実現 されなければな らない か ら,「 製品 とこれに結びついてい る過程 の 統合的観点は,攻めの環境管理構想の実施の 実践 において絶対的に必要である 」 ( S. 包 7 4 . ) . また,「 利用 の前 に回避 ,廃棄の前 に (リサ イクル) 」 ( S. 2 7 6. ) とい う原則は,統合 された 技術 によって しか達成 されない。

③ 生態的公衆活動 ( 6kol ogi s c heOf f ent ‑ 1 i c hke i t s a r be i t )( Vg l リS. 2 8 2 ‑ 2 9 2 . )

ミューラーによれば,公衆活動 とは,一般 的に 「 社会で成立 している価値態度か ら生 ま れる要請 に対す る, 企業の情報的対応の努力」

( S. 23 2. )であ る。彼は, これ と類似 した概 念である「 公衆関係 ( PR;Publ i cRe l a t i o ns ) 」

を同一概念 として取 り扱 う。両者は企業 と公 衆 との間の情報的関連 として特徴づけ られ る か らである。公衆活動 は,消費者あるいは競 争者 に限定 されず,広い公衆 との情報関連 と

して形成 され,絶 えず変化する公衆の価値 に

(16)

志向 しなければな らない。

社会的同意を持つ価値 が企業 に とって どれ ほ ど重要 であ るかは , 「 価値態度 は行動 を準 備 し行動 は再 び価値 態度 を刻 印す る 。 」 ( S.

238. ) とい う事実か ら明白であ る。企業活動 に関連すれば,社会の価値行動は顧客行動 に 影響 し需要側か ら企業に作用する, とい う形 で現れ る。環境保護 に関連 させれば , 「 工業 社会 におけ る環境保護 は本質的 な価値 であ り,その際,社会の要求は第一にメディアを通 して述べ られ る 」 ( S.283 . ) 。管理 に不適切だ と思われて も,企業が社会 に受け入れ られる ためには,要求 された環境関連的要請 に応 じ なければな らず,場合によっては消費者をも 責任 に引 き入れ 新たな顧客能力を開拓する ことが求め られ る。環境要請を発言するには 大抵 メデ ィアが役立つ。 この ようなメデ ィア の役割が生まれるのは,生態的要請の発言集 団が情報 を発信するのに有用だか らである。

環境は社会的価値 であるか ら,関連する努 力や企業q) 成果は,環境領域 においては特 に 必要なので公衆活動 に引 き入れ られなければ な らない。「なぜな らば,公衆活動 内で実現 された成果によって,一方では社会 に企業が 受容 され る度合いが本質的に決定 され,他方 では消費者が環境正当的な代替案に注 目する か らであ る 」 ( S.283‑284 . ) . ここで重要なの は 「 生態的に ( 6kol o g is c he) 」 とい う副詞 は 必要ではない, とい うことである。なぜな ら ば,実 りある公衆活動 に とって,あ らゆる外 界集団 との対話,特 に環境 に敏感な集団 との 対話は 自明の事だか らである。

公衆活動 については,以下の ような問題が 考慮 されなければな らない。

1 )イメージの重要性 :公衆 に よって企業 に 付 け られ るイメー ジは,公衆活動 の案 内 値 であ る。「したがって,公衆活動 の職分 は,社会 におけ る企業 の持続的 な受容 を

もた らす イメージで企業 を助 け るこ とで ある 」 ( S.285 . ) 。環境管理 に とって意味が あ るのは,初 めての環境管理 は イメージ の積極的 な伝達 の前 に実施 され るべ きで あ る, とい うこ とであ る。管理 の言 明 と 行動 が一致 しなければ,企業 の信頼性 は 持続的に破壊 され るであろう。

2) 公衆活動の情緒性 :生態的公衆活動 は, 一方 では環境正 当的 な製 品 を提供 し,他 方 では経営過程 を環境正 当的 に形成 す る とい う,持続的 に成立 す る企業 イメージ の創造 とい う目標 を持 つ。そ こで, i) 公 衆的受容の確保 , i i) 新 しい顧客の確保,

とい う本質的な観点が追求され る。

3) 危機 に対す る反応的公衆活動 :環境管理 が実現 すれば問題 は現 れない。現 れた と

して も誠実 で開放 的な公衆活動 は受容問 題 には至 らないが, この リス クを減少 さ せ うる保証 人 はいない。企業 が信頼 を得 ていれば解決時間の認識 も高 いか ら,企 業 は一方 では よ り高 い受容水準 か ら出発 で きる し,他方 では問題解決 に重要 な時 間 を得 る こ とがで きる。 いかな る場合 で も, この行動は,時間的に拡散 曲線上( 4 ) で 急勾配 の上昇 を示 す前 に行 なわれ るべ き であ る。 そ うでなければ イメー ジの低下 が もた らされる。

反応的公衆活動は常に正 しさを企業 に強制 する。危機の原因が除去 されるな らば,正 し い ことを行な うより高い機会が生ず る。その 時は,敏速かつ有効 に反応 しなければな らな い。「なぜな らば,環境正当的企業 の イメー ジの構築は とて も困難でゆっ くりなので,企 業が環境志向的行動 と情報 において失敗者 と な り,あるいは相互に事実上の行動 と伝達 さ れた行動が相応 しないな らば,その ように早 くこの イメージは失 われ うるか らであ る」

( S.2 86. ) 0

(17)

④ 生態的政治管理 ( bkol og is c he sPol i t i k‑

ma na ge me nt ) ( Vg l"S.292‑304. )

ミューラーは,生態的責任を守 る場合,企 業はその時の法律的 ・政治的状況か ら,政治 的意思形成過程 に積極的に関与することを確 認す る。そこで企業は,政治的管理 によって, 公衆的信頼性を生態的公衆活働だけで得 るだ

けでな く,政治的気風の極性化を回避す るた めに,実践的に積み重ね られたノウハ ウの利 用 とい う目的を追求する。政治管理の爆発力 が,環境管理 におけるこの領域の意義を示 し てい る。「なぜな らば,政治管理の概念 に, 権力の概念が密接 に結びつけ られているか ら であ る 」 ( S. 292. ) 。権力の行使,特 に必要以 上の行使による責任が特別に現れる。あるい は,プラスの権力は,その使用を誤 る とマイ ナスの権力に転化する。 これは管理 を律する から, この問題 に関 しては経済倫理的命令 と の関連 で考察 されなければな らない。法律 的 ・政治的セグメン トは,環境管理で考察 さ れるべ き ,1 ) 法律的展望 と ,2 ) 政治的展望 と いう二つの展望を持つ。 ここでさらに以下の 問題 が考察 される。

1 ) 環境法的規範への対応 :法律は,環境領 域 で も無条件 に満 た さなければな らない 外部要 因であ り,法 的条件 への対応 は管 理 の本質的職分 であ る。環境管理 の要請 を満 たすため には,反応 ではな く,法的 規範 を事前 に操作 す る政治的過程管理 で

ある。

2) 生態的政治管理 :企業が直面 す る法的状 況 は,社会 の利害 に よって決定 され る政 治的意 思形成過程 の結果 であ る。政 治的 過程 で重要 なの は利害実行 であ り,管理 者 はその利害 の範 囲内で生産 的社会連合 の指導的 ,利害代表 的政 治家 と見 な され る。政 治的管理 に とって重要 なのは,可 能 な限 り高 い行動 自律性度 を獲得 し確実

にす る こ とであ る。環境政策的過程 は極 めて動態 的で管理 に とって重要 な法的事 実 に流 入す るか ら,政 治的管理 は何 よ り

も重要 であ る。連合者 の要 求 が管理 目標 に補完的 であ る限 り, コンフ リク トの危 険は少ない。

企業が政治に関与することは,企業管理者 が政治的過程 と政治的意思決定の発見をもた らしうる高度の実践的 ノウハウを持つ, とい う動機 か ら有意義である。 環境管理の作用は, 要求集団の環境関連的要請 に応 じようと試 み

ることである。企業がこの要請 をもはや満た せないないな らば, i) 企業 との関連 か らの 脱 出 ,i i) 沈黙 と適合,i i i ) 利害 と闘争の表 明,

とい う選択肢が残 っている。選択は本質的に 企業 が持 つ権力に依存 す る。「 求め られるの は,政治的意思形成過程 に部分的に参加 し, 政治的権力を,それが個別企業であれ共同で あれ,環境 も企業 も良 くなるような規範の展 開 に有利 な ように投入す るこ とであ る 」 ( S.

3 0 4 . ) 0

以上が,社会正当的活動 と環境管理 に関す るミューラーの所論の概要である。

J, l 注 目

「 連帯性原理」 については,次を参照 されたい。

Mt i l l e r , α . α . 0 リS, 1 9 f f .

拙稿 「 環境管理 と企業の生活能力 」 ,31 4 頁。

K. Me l l e r o wi c z ,Unt e r ne hme ns po l i t i k,2. Bd. ,3.

Auf l リFr e i bur gi . Br .1 9 6 5,S. 3 6 8.

拙稿 「企業 の国際化 と国際的環境管理」『東南 ア ジア研究年報』第 47 巻 2 0 0 5 年 ,3 7 頁 注( 7 ) 0

拙著 『 企業政策論の展開』千倉書房 昭和6 3 年 , 第 3 章 処理学 としての企業政策論 ‑ メレロ ヴィッツの所論を中心 として ‑ ,1 09 頁。

( 2) コモンズの悲劇 については,以下 を参照 されたい。

拙稿 「 環境管理 と企業の生活能力」『 経営 と経済』

第 8 5 巻第 3・4 号 ,3 3 6 頁 注( 2 ) 0

( 3 ) 「統合 された技術」 については,以下 を参照 され

たい。

図 1 :企業文化の統合作用 ( S.1 9 2 . ) 2 ) シンボルの設定 :シンボルは文化 ・芸術 あ るいは人 間行動 とな って現 れ る 。 こ こ には無数の可能性がある。 3 ) 体験 による行動変化 :例示的に掲げれば, 公開表彰,教育計画の変更,会社 イメージ への協働者の誇 りな どがある。 この ように,環境管理の構築 に作用する要 因はた くさん存在する。 しかし,環境管理は ゆっ くりと, しかも企業特殊的に構築 されな ければな らない。成功裏 に伝達 されるのは生 きた文化

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